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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142727
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】食品の処理装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/28 20060101AFI20220922BHJP
   A23B 7/015 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A23L3/28
A23B7/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200871
(22)【出願日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2021042076
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 純
(72)【発明者】
【氏名】田内 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
【テーマコード(参考)】
4B021
4B169
【Fターム(参考)】
4B021LA01
4B021LP10
4B021LT03
4B021MC01
4B021MP10
4B169AA02
(57)【要約】
【課題】収納部における紫外線の透過率が変化した場合であっても、適切な処理を行うことができる食品の処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る食品の処理装置は、紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品に、前記紫外線を照射する食品の処理装置である。食品の処理装置は、前記紫外線を照射する光源を有し、前記収納部の内部に収納された食品に前記紫外線を照射する照射部と;前記照射部と、前記収納部の内部に収納された食品と、の相対的な位置を移動させる移動部と;前記照射部と、前記移動部と、を制御するコントローラと;を具備している。前記コントローラは、前記収納部における紫外線の透過率に応じて、前記照射部から照射される紫外線の照射量、および、前記移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、前記食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品に、前記紫外線を照射する食品の処理装置であって、
前記紫外線を照射する光源を有し、前記収納部の内部に収納された食品に前記紫外線を照射する照射部と;
前記照射部と、前記収納部の内部に収納された食品と、の相対的な位置を移動させる移動部と;
前記照射部と、前記移動部と、を制御するコントローラと;
を具備し、
前記コントローラは、前記収納部における紫外線の透過率に応じて、前記照射部から照射される紫外線の照射量、および、前記移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、前記食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする食品の処理装置。
【請求項2】
紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品に、前記紫外線を照射する食品の処理装置であって、
前記紫外線を照射する光源を有し、前記収納部の内部に収納された食品に前記紫外線を照射する照射部と;
前記照射部と、前記収納部の内部に収納された食品と、の相対的な位置を移動させる移動部と;
前記照射部の紫外線の出射部分と、前記収納部との間の距離を変化させる駆動部と;
前記照射部、前記移動部、および前記駆動部を制御するコントローラと;
を具備し、
前記コントローラは、前記収納部における紫外線の透過率に応じて、前記照射部から照射される紫外線の照射量、前記移動部による相対的な移動速度、および、前記距離の少なくともいずれかを制御して、前記食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする食品の処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記照射部から照射される紫外線の照射量が以下の式を満足するように前記照射部を制御する請求項1または2に記載の食品の処理装置。
X(mJ/cm)=Z(mJ/cm)×100(%)÷Y(%)
X(mJ/cm)は、前記照射部から照射される紫外線の照射量、
Y(%)は、前記収納部における紫外線の透過率、
Z(mJ/cm)は、要求された、前記食品の表面における紫外線の照射量である。
【請求項4】
前記コントローラは、前記移動部による前記処理物の相対的な移動速度が以下の式を満足するように前記移動部を制御する請求項1または2に記載の食品の処理装置。
Va(m/min)=V(m/min)×Y(%)÷100(%)
Va(m/min)は、前記移動部による前記処理物の相対的な移動速度、
V(m/min)は、前記収納部における紫外線の透過率が100%の場合の、前記移動部による前記処理物の相対的な移動速度、
Y(%)は、前記収納部における紫外線の透過率である。
【請求項5】
前記照射部の紫外線の出射側に設けられ、前記収納部の紫外線の透過率を測定する測定器をさらに備えた請求項1~4のいずれか1つに記載の食品の処理装置。
【請求項6】
前記光源は、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の前記紫外線を照射する請求項1~5のいずれか1つに記載の食品の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、食品の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品市場においては、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)などへの対応により食品に対する安全意識が高まっている。また、食品市場には、腐敗などによるフードロスなどの問題もある。
【0003】
この場合、食品に保存料を添加したり、食品を加熱殺菌したりすれば、食品の消費期限を延ばすことができる。しかしながら、この様にすると、健康に対するリスクが生じたり、食品の旨味や風味が損なわれたりするという新たな問題が生じる。
そこで、収納部の内部に収納された食品に、収納部の外部から紫外線を照射する技術が提案されている。この場合、収納部が、紫外線を透過可能な材料から形成されていれば、収納部を透過した紫外線により、食品の表面に付着している細菌や微生物などを殺菌することができる。
【0004】
ところが、収納部の材料が変わったり、材料の厚みが変わったりなどした場合には、紫外線の透過率が変化する場合がある。収納部における紫外線の透過率が変化し得る場合に、紫外線の照射量を一定にすると、食品の鮮度維持や品質維持が図れなくなるおそれがある。例えば、収納部における紫外線の透過率が低くなると、食品の表面における紫外線の照射量が減って、殺菌が不充分となるおそれがある。例えば、収納部における紫外線の透過率が高くなると、食品の表面における紫外線の照射量が増えて、食品が変質したり、色が変わったり、旨味や風味が悪くなったりするおそれがある。
【0005】
そこで、収納部における紫外線の透過率が変化した場合であっても、適切な処理を行うことができる食品の処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6716291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、収納部における紫外線の透過率が変化した場合であっても、適切な処理を行うことができる食品の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る食品の処理装置は、紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品に、前記紫外線を照射する食品の処理装置である。食品の処理装置は、前記紫外線を照射する光源を有し、前記収納部の内部に収納された食品に前記紫外線を照射する照射部と;前記照射部と、前記収納部の内部に収納された食品と、の相対的な位置を移動させる移動部と;前記照射部と、前記移動部と、を制御するコントローラと;を具備している。前記コントローラは、前記収納部における紫外線の透過率に応じて、前記照射部から照射される紫外線の照射量、および、前記移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、前記食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、収納部における紫外線の透過率が変化した場合であっても、適切な処理を行うことができる食品の処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る食品の処理装置を例示するための模式図である。
図2】照射部を例示するための模式断面図である。
図3図2における照射部をA-A線方向から見た模式平面図である。
図4】収納部の材料と、紫外線の透過率との関係を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る食品の処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、食品の処理装置1(以下、単に、処理装置1と称する)は、例えば、供給部10、移動部20、照射部30、収容部40、およびコントローラ50を有する。
【0013】
供給部10は、移動部20の搬入側の端部の近傍に設けることができる。供給部10は、処理対象となる処理物100を内部に複数収容し、収容されている処理物100を移動部20に1つずつ供給する。例えば、供給部10は、複数の処理物100を積層状に収納したホッパと、内部に収容されている処理物100を取り出して移動部20に供給する供給装置とを有することができる。
なお、供給部10の構成は例示をしたものに限定されるわけではない。供給部10は、処理物100同士が重ならないようにして、処理物100を移動部20に供給することができるものであればよい。
【0014】
また、供給部10は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。供給部10を省く場合には、例えば、作業者が、処理物100を移動部20に供給すればよい。
【0015】
ここで、処理物100は、紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品とすることができる。すなわち、処理装置1は、紫外線を透過可能な収納部の内部に収納された食品に、紫外線を照射する。
【0016】
収納部は、紫外線を透過可能な包装フィルム、トレー、容器などとすることができる。例えば、収納部は、ポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニルなどから形成することができる。
【0017】
食品は、例えば、農産物、精肉素材、鮮魚素材、加工食品などである。
なお、「農産物」は、例えば、人為的に栽培され収穫される植物、あるいは、自然界において生育し収穫される植物とすることができる。「農産物」は、栽培植物を計画的に栽培し収穫する農耕、自然界で自生している植物の採取(野生植物の採取)、栽培と野生の中間的な状態で生育し収穫するいわゆる半栽培などにより得られたものであってもよい。「農産物」の用途には特に限定がなく、例えば、食用、薬用、観賞用などの様々な用途が考えられる。
「加工食品」は、例えば、総菜、弁当、サラダなどである。
【0018】
また、食品は、例示をしたものに限定されるわけではなく、例えば、消費期限を有するものであればよい。
【0019】
移動部20は、処理物100(収納部の内部に収納された食品)を移動する。例えば、移動部20は、処理物100の供給位置から、収容部40への排出位置まで処理物100を移動する。移動部20は、例えば、ベルトコンベアやローラコンベアなどとすることができる。
【0020】
なお、移動部20が、処理物100を水平方向に移動する場合を例示したが、移動部20が、処理物100を水平に対して傾斜した方向に移動してもよい。
また、移動部20がコンベアの場合を例示したが、例えば、移動部は、水平方向に回転する円板などであってもよい。
また、処理物100を移動する移動部20を例示したが、照射部30を移動する移動部としてもよい。すなわち、移動部は、例えば、照射部30と、処理物100(収納部の内部に収納された食品)と、の相対的な位置を移動させるものであればよい。
【0021】
照射部30は、紫外線を照射する光源を有し、収納部の内部に収納された食品に紫外線を照射する。光源は、紫外線を照射するものであれば特に限定はない。例えば、光源は、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子であってもよいし、水銀ランプやバリア放電ランプなどの放電ランプなどであってもよい。
以下においては、一例として、光源が発光素子である場合を説明する。
照射部30は、処理物100の一方の側に設けることができる。例えば、図1に示すように、照射部30は、処理物100の上方に設けることができる。
図2は、照射部30を例示するための模式断面図である。
図3は、図2における照射部30をA-A線方向から見た模式平面図である。
図2に示すように、照射部30は、例えば、発光モジュール31、冷却部32、回路基板33、および筐体34を有する。
【0022】
図2および図3に示すように、発光モジュール31は、複数設けることができる。複数の発光モジュール31は、例えば、処理物100の移動方向に交差する方向に並べて設けることができる。複数の発光モジュール31は、筐体34の内部に設けることができる。なお、発光モジュール31の数は、処理物100の大きさに応じて適宜変更することができる。すなわち、発光モジュール31は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0023】
この場合、所定の大きさの発光モジュール31が複数設けられるようにすれば、異なる大きさの処理装置1に対して、同じ発光モジュール31を用いることが可能となる。また、紫外線を放射する光源として、例えば、発光素子31bが故障などした際に、故障などが発生した発光素子31bが設けられている発光モジュール31のみを交換することができる。そのため、製造コストの低減、在庫管理の容易化、メンテナンス性の向上、メンテナンス費用の低減などを図ることができる。また、発光モジュール31の大きさが過度に大きくなることがないので、発光モジュール31の製造が容易となったり、発光モジュール31の取り扱いが容易となったりする。
【0024】
発光モジュール31は、例えば、基板31a、および、紫外線を照射する光源として複複数の発光素子31bを有する。
基板31aは、板状を呈している。基板31aの平面形状は、例えば、四角形とすることができる。基板31aの材料は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などとすることができる。この場合、発光素子31bにおいて発生した熱の放熱を考慮すると、基板31aは、熱伝導率の高い材料を用いて形成することが好ましい。例えば、基板31aは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、高熱伝導性樹脂、メタルコア基板などから形成することができる。なお、高熱伝導性樹脂は、例えば、PET(polyethylene terephthalate)やナイロンなどの樹脂に、酸化アルミニウムなどを含むフィラーを混合させたものである。
【0025】
図3に示すように、基板31aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて、放熱部32aに取り付けることができる。この場合、基板31aと放熱部32aとの間に、弾性を有する伝熱シートを設けたり、シリコーングリスからなる層などを設けたりすることができる。弾性を有する伝熱シートや、シリコーングリスからなる層などを設ければ、基板31aと放熱部32aとの間に隙間が生じるのを抑制することができる。そのため、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなるので、発光素子31bの温度が最大ジャンクション温度を超えるのを抑制することができる。
【0026】
発光素子31bは、高圧水銀ランプなどに比べて寿命が長いが、経時的に光量が減少する。また、発光素子31bが故障することも考えられる。締結部材により、基板31aが放熱部32aに着脱自在に設けられていれば、発光モジュール31の交換などが容易となる。
【0027】
また、基板31aは、例えば、熱伝導率の高い接着剤などを用いて、放熱部32aに接着することもできる。熱伝導率の高い接着剤を用いて、基板31aが放熱部32aに接着されていれば、基板31aとベースとの間に隙間が生じるのを抑制することができるので、発光素子31bにおいて発生した熱が放熱部32aに伝わり易くなる。また、発光モジュール31の構成が簡易化なものとなる。
【0028】
複数の発光素子31bは、基板31aの、放熱部32a側とは反対側の面に設けられている。複数の発光素子31bは、基板31aの表面に設けられた配線パターンに電気的に接続されている。複数の発光素子31bの光の出射面は、筐体34に設けられた窓34eに向けられている。複数の発光素子31bから出射した紫外線は、窓34eを介して照射部30の外部に照射される。
【0029】
複数の発光素子31bは、並べて設けられている。例えば、図3に示すように、複数の発光素子31bは、マトリクス状に並べて設けることができる。複数の発光素子31bの配設形態や数は、図3に例示をしたものに限定されるわけではなく、処理物100の種類、大きさ、平面形状などに応じて適宜変更することができる。
【0030】
紫外線を放射する光源である発光素子31bは、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の紫外線を照射可能なものであれば特に限定はない。例えば、発光素子31bは、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の紫外線を照射可能な発光ダイオードや、レーザダイオードなどとすることができる。
なお、紫外線を放射する光源は、ピーク波長が、200nm以上、300nm以下の紫外線を照射可能な、水銀ランプやバリア放電ランプなどの放電ランプなどであってもよい。
【0031】
複数の発光素子31bは、例えば、チップ状の発光素子とすることができる。この場合、複数の発光素子31bは、COB(Chip On Board)により、基板31aに設けられた配線パターンに実装することができる。また、複数の発光素子31bを覆う封止部を設けることができる。
【0032】
複数の発光素子31bは、例えば、表面実装型の発光素子とすることもできる。複数の発光素子31bは、例えば、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできる。
ただし、複数の発光素子31bがチップ状の発光素子であれば、狭い領域に多くの発光素子31bを設けることができる。そのため、発光モジュール31の小型化、ひいては照射部30の小型化を図ることができる。
【0033】
冷却部32は、例えば、放熱部32a、および送風部32bを有する。
図3に示す様に、放熱部32aは、例えば、複数設けることができる。複数の放熱部32aが設けられる場合には、例えば、複数の放熱部32aを処理物100の移動方向に交差する方向に並べて設けることができる。
【0034】
なお、複数の放熱部32aが設けられる場合を例示したが、1つの放熱部32aを設けるようにしてもよい。すなわち、放熱部32aは、少なくとも1つ設けることができる。 ただし、所定の大きさの放熱部32aが複数設けられるようにすれば、異なる大きさの処理装置1に対して、同じ放熱部32aを用いることが可能となる。そのため、製造コストの低減や在庫管理の容易化などを図ることができる。また、放熱部32aの大きさが過度に大きくなることがないので、放熱部32aの製造が容易となったり、放熱部32aの取り扱いが容易となったりする。
【0035】
放熱部32aは、例えば、発光モジュール31が取り付けられるブロック状のベースと、複数のフィンを有する。放熱部32aは、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い材料から形成することができる。
【0036】
送風部32bは、放熱部32aに設けられた複数のフィンに気体Gを供給する。気体Gは、例えば、処理装置1が設置された雰囲気に含まれている気体Gとすることができる。気体Gは、例えば、空気などである。
【0037】
図2に示すように、送風部32bは、筐体34の内部に設けられている。送風部32bは、例えば、ブラケットを介して、筐体34の内壁に取り付けることができる。送風部32bは、放熱部32aの、発光モジュール31側とは反対側に設けられている。
【0038】
なお、送風部32bは、例えば、筐体34の外部に設けることもできる。ただし、送風部32bが筐体34の内部に設けられていれば、送風部32bと放熱部32aとの間の距離を短くすることができるので、冷却効率を向上させることができる。また、送風部32bから排出された気体Gを、筐体34の内壁により放熱部32aに導くことができる。すなわち、送風部32bから排出された気体Gが拡散するのを抑制することができる。そのため、送風部32bから排出された気体Gを、放熱部32aに設けられた複数のフィンに効率よく供給することができる。
【0039】
送風部32bには、特に限定はないが、例えば、軸流ファンとすることができる。送風部32bが軸流ファンであれば、気体Gの供給量を多くすることができるので、冷却効率を向上させることができる。
【0040】
送風部32bは、例えば、1つの放熱部32aに対して少なくとも1つ設けることができる。送風部32bの数は、放熱部32aの大きさや、発光モジュール31における発熱量などに応じて適宜変更することができる。
【0041】
図2に示すように、回路基板33は、筐体34の内部に設けられている。回路基板33は、例えば、筐体34の内部の、発光モジュール31が設けられる側とは反対側の端部の近傍に設けることができる。回路基板33は、例えば、筐体34の内壁に取り付けることができる。
【0042】
回路基板33は、例えば、複数の発光素子31bの点灯と消灯とを切り替えたり、複数の発光素子31bに印加する電力を制御したり、放熱部32aによる気体Gの供給と供給の停止とを切り替えたりする。
【0043】
筐体34は、箱状を呈し、内部に、例えば、発光モジュール31、冷却部32、および回路基板33を収納する空間を有する。筐体34の外観は、例えば、略直方体や、略立方体とすることができる。
【0044】
筐体34の側面には、複数の排気口34aを設けることができる。複数の排気口34aは、冷却部32と対峙する位置に設けることができる。
また、筐体34の、発光モジュール31が設けられる側とは反対側の端部には、コネクタ34b、コネクタ34c、およびフィルタ34dなどを設けることができる。
【0045】
コネクタ34bは、例えば、照射部30の外部に設けられた電源などと、回路基板33とを電気的に接続するために設けることができる。コネクタ34bは、例えば、電力用のコネクタなどとすることができる。
コネクタ34cは、例えば、コントローラ50と、回路基板33とを電気的に接続するために設けることができる。コネクタ34cは、例えば、通信用のコネクタなどとすることができる。
【0046】
フィルタ34dは、少なくとも1つ設けることができる。送風部32bによる送風が行われると、筐体34の外部にある気体Gが、フィルタ34dを介して筐体34の内部に導入される。フィルタ34dが設けられていれば、照射部30が設置された雰囲気に含まれているゴミなどが、筐体34の内部に侵入するのを抑制することができる。また、筐体34の内部にゴミなどが侵入するのを抑制することができれば、照射部30からの排気にゴミなどが含まれるのを抑制することができる。そのため、ゴミなどが、処理物100に付着するのを抑制することができる。
【0047】
窓34eは、筐体34の、発光モジュール31が設けられる側の端部に設けられている。窓34eは、紫外線を透過し、紫外線に対する耐性を有する材料から形成される。透光部45bは、例えば、紫外線透過ガラス(ultraviolet transmitting glass)、アクリル樹脂などから形成することができる。
【0048】
なお、照射部30は、処理物100の下方に設けることもできる。例えば、照射部30は、移動部20の上方および下方の少なくともいずれかに設けることができる。また、照射部30は、複数設けることもできる。
【0049】
照射部30が、上方にある処理物100に向けて紫外線を照射する場合には、照射部30に設けられた窓34eが上方を向くことになる。そのため、窓34eの上にゴミなどが付着し易くなる。窓34eの上にゴミなどが付着すると、複数の発光素子31bから照射された光がゴミなどに遮られて、処理物100に到達する光の強度が弱くなる。
【0050】
そのため、照射部30が、上方にある処理物100に向けて紫外線を照射する場合には、窓34eに空気を吹き付けるエアブロー装置などを設けることができる。この場合、エアブロー装置は、所定のタイミングで空気を噴射してもよいし、処理装置1の稼働中に常時空気を噴射してもよい。
なお、エアブロー装置は、照射部30が、下方にある処理物100に向けて紫外線を照射する場合にも設けることができる。
【0051】
また、図1に示すように、処理物100の位置を検出するセンサ35をさらに設けることができる。センサ35は、例えば、照射部30による照射のタイミングを求めたり、照射の開始と照射の停止の切り替えを行ったりするために設けることができる。例えば、センサ35は、照射部30の上流側であって、照射部30の近傍に設けることができる。
センサ35の形式には特に限定がない。センサ35は、例えば、光センサ、超音波センサ、近接センサなどとすることができる。
【0052】
収容部40は、処理済みの処理物100aを収容する。収容部40は、例えば、移動部20の排出側の端部の近傍に設けられたコンテナなどとすることができる。また、収容部40には、移動部20からの処理物100aの排出を促進させるための振動装置などを設けることもできる。
【0053】
コントローラ50は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ50は、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムなどを格納することができる。また、記憶部には、後述する「収納部における紫外線の透過率」のデータを格納することができる。
【0054】
例えば、コントローラ50は、センサ35により、照射部30の照射領域に処理物100が搬入されたことが検出された場合には、照射部30を制御して、照射部30に紫外線を照射させる。
【0055】
照射部30から照射された紫外線は、処理物100の収納部に入射する。前述したように、収納部は、紫外線を透過可能な材料から形成されているため、収納部に入射した紫外線は、収納部を透過して食品の表面に到達する。そして、食品の表面に到達した紫外線により、例えば、食品の表面に付着している細菌や微生物などが殺菌される。
【0056】
ここで、例えば、収納部の材料が変わったり、材料の厚みが変わったり、材料の表面形状や表面性状が変わったりなどして、収納部における紫外線の透過率が変化する場合がある。
図4は、収納部の材料と、紫外線の透過率との関係を例示するためのグラフである。
図4から分かるように、収納部の材料(フィルムA~C)が変わると、収納部における紫外線の透過率が変化する。紫外線の透過率が変化すると、食品の表面に到達する紫外線の強度が変化する。
また、前述したように、照射部30(発光素子31b)から照射される紫外線のピーク波長は200nm以上、300nm以下である。この様な波長範囲においては、図4から分かるように、収納部の材料が変わると、収納部における紫外線の透過率が大きく変化する。
【0057】
収納部における紫外線の透過率が変化すると、食品の表面における紫外線の照射量(積算光量)が変化して、食品の鮮度維持や品質維持が図れなくなるおそれがある。例えば、収納部における紫外線の透過率が低くなると、食品の表面における紫外線の照射量が減って、殺菌が不充分となるおそれがある。例えば、収納部における紫外線の透過率が高くなると、食品の表面における紫外線の照射量が増えて、食品が変質したり、色が変わったり、旨味や風味が悪くなったりするおそれがある。
【0058】
そこで、本実施の形態に係る処理装置1においては、収納部における紫外線の透過率に応じて、照射部30から照射される紫外線の照射量、および移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにしている。
また、後述するように、照射部30の紫外線の出射部分(例えば、窓34e)と処理物100(収納部)との間の距離Lを変化させる駆動部37がさらに設けられている場合には、収納部における紫外線の透過率に応じて、照射部30から照射される紫外線の照射量、移動部による相対的な移動速度、および距離Lの少なくともいずれかを制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにしている。
【0059】
なお、移動部による相対的な移動速度は、照射部30と、処理物100(収納部の内部に収納された食品)と、間の相対的な移動速度である。例えば、コンベアなどの移動部20により処理物100が移動する場合には、移動部による相対的な移動速度は、処理物100の移動速度となる。移動部により照射部30が移動する場合には、移動部による相対的な移動速度は、照射部30の移動速度となる。
【0060】
例えば、照射部30から照射される紫外線のピーク波長が280nmである場合、図4に例示をしたフィルムAの紫外線の透過率は82.8%、フィルムBの紫外線の透過率は47.2%、フィルムCの紫外線の透過率は22.5%である。
【0061】
そのため、殺菌などのために要求された、食品の表面における紫外線の照射量を20mJ/cmとする場合、フィルムAにより形成された収納部を有する処理物100には、照射部30から照射される紫外線の照射量を24.2mJ/cm(20mJ/cm×100%÷82.8%)とすればよい。フィルムBにより形成された収納部を有する処理物100には、照射部30から照射される紫外線の照射量を42.4mJ/cm(20mJ/cm×100%÷47.2%)とすればよい。フィルムCにより形成された収納部を有する処理物100には、照射部30から照射される紫外線の照射量を88.9mJ/cm(20mJ/cm×100%÷22.5%)とすればよい。
すなわち、要求された、食品の表面における紫外線の照射量をZ(mJ/cm)とし、収納部における紫外線の透過率をY(%)とすると、照射部30から照射される紫外線の照射量X(mJ/cm)は、「X(mJ/cm)=Z(mJ/cm)×100(%)÷Y(%)」とすればよい。
【0062】
照射部30から照射される紫外線の照射量は、例えば、前述した回路基板33により、複数の発光素子31bに印加する電力を変化させることで制御することができる。
【0063】
また、例えば、照射部30から照射される紫外線の照射量を一定とし、移動部による相対的な移動速度を制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにすることもできる。
例えば、収納部における紫外線の透過率が100%の場合の、移動部による処理物100の相対的な移動速度をV(m/min)とすると、フィルムAにより形成された収納部の場合には、移動部による処理物100の相対的な移動速度Vaを、「V(m/min)×82.8%÷100%」とすればよい。フィルムBにより形成された収納部の場合には、移動部による処理物100の相対的な移動速度Vaを、「V(m/min)×47.2%÷100%」とすればよい。フィルムCにより形成された収納部を有する処理物100の場合には、移動部による処理物100の相対的な移動速度Vaを、「V(m/min)×22.5%÷100%」とすればよい。
【0064】
すなわち、収納部における紫外線の透過率が100%の場合の、移動部による処理物100の相対的な移動速度をV(m/min)とし、収納部における紫外線の透過率をY(%)とすると、移動部による処理物100の相対的な移動速度Vaは、「Va(m/min)=V(m/min)×Y(%)÷100(%)」とすればよい。
処理物100の相対的な移動速度は、例えば、移動部20などの移動部を制御することで変化させることができる。
【0065】
また、例えば、照射部30から照射される紫外線の照射量、および、移動部による処理物100の相対的な移動速度を制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにすることもできる。
【0066】
なお、収納部における、特定の波長の紫外線に対する透過率は、予め求めることができる。収納部における紫外線の透過率のデータは、コントローラ50の記憶部に格納することができる。収納部における紫外線の透過率のデータは、作業者がコントローラ50に入力してもよいし、ホストコンピュータなどからコントローラ50にデータが転送されるようにしてもよい。
【0067】
また、図1に示すように、収納部の紫外線の透過率を測定する測定器36を、処理装置1に設けることもできる。測定器36は、照射部30の紫外線の出射側に設けることができる。処理装置1による処理を行う際には、処理を行う処理物100に用いられている収納部を、照射部30と測定器36との間に置き、照射部30から紫外線を照射させるとともに、測定器36により紫外線の透過率を測定する。測定された紫外線の透過率のデータは、コントローラ50の記憶部に格納される。この様にすれば、処理を行う処理物100に用いられている収納部における紫外線の透過率を正確、且つ迅速に知ることができる。
【0068】
コントローラ50の演算部は、記憶部に格納されている、収納部における紫外線の透過率に応じて、照射部30から照射される紫外線の照射量、および、移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする。
【0069】
また、図1に示すように、処理装置1には、照射部30の紫外線の出射部分(例えば、窓34e)と処理物100(収納部)との間の距離Lを変化させる駆動部37をさらに設けることもできる。駆動部37は、移動部20および照射部30の少なくともいずれかに設けることができる。図1に例示をした駆動部37は、照射部30に設けられ、処理物100に対する照射部30の位置を変化させる。また、例えば、駆動部37は、移動部20に設けられ、照射部30に対する処理物100の位置を変化させるようにしてもよい。駆動部37は、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0070】
ここで、照射部30(窓34e)と処理物100(収納部)との間の距離Lが短くなれば、処理物100の表面における紫外線の照射量が増加する。距離Lが長くなれば、処理物100の表面における紫外線の照射量が減少する。そのため、距離Lを変化させることで、処理物100の表面における紫外線の照射量、ひいては、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにすることができる。
なお、距離Lと、処理物100の表面における紫外線の照射量との関係は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。また、距離Lと、食品の表面における紫外線の照射量との関係を、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることもできる。
【0071】
また、距離Lは、処理物100の厚みに応じて変化する。そのため、処理を行う処理物100の厚みを予め測定し、例えば、測定された処理物100の厚みのデータをコントローラ50の記憶部に格納することができる。コントローラ50の演算部は、記憶部に格納されている処理物100の厚みのデータに基づいて、距離Lの変化量を演算することができる。
【0072】
また、前述したセンサ35に、距離Lの測定機能を持たせることもできる。例えば、センサ35を、光学式距離センサ、電波式距離センサ、超音波式距離センサなどとすれば良い。なお、前述した処理物100の有無や位置を検出するセンサ35と、距離Lを測定するセンサを別々に設けてもよい。測定された距離Lのデータは、コントローラ50の記憶部に格納することもできるし、紫外線の照射量の制御の演算に直接用いることもできる。
【0073】
照射部30の紫外線の出射部分と処理物100との間の距離Lを変化させる駆動部37が設けられている場合には、コントローラ50の演算部は、記憶部に格納されている、収納部における紫外線の透過率に応じて、照射部30から照射される紫外線の照射量、移動部による相対的な移動速度、および、距離Lの少なくともいずれかを制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにする。
【0074】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る処理装置1によれば、収納部における紫外線の透過率に応じて、照射部30から照射される紫外線の照射量、および、移動部による相対的な移動速度の少なくともいずれかを制御して、食品の表面における紫外線の照射量が所定の値となるようにすることができる。
そのため、収納部の紫外線の透過率が変化した場合であっても、適切な処理を行うことが可能となる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 処理装置、10 供給部、20 移動部、30 照射部、31 発光モジュール、31b 発光素子、36 測定器、40 収容部、50 コントローラ、100 処理物
図1
図2
図3
図4