(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014273
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】保温庫
(51)【国際特許分類】
A47J 39/02 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A47J39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116514
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】511033748
【氏名又は名称】株式会社ツカサ精密
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 清司
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA05
4B066AB08
4B066BA16
4B066BB01
4B066BD01
(57)【要約】
【課題】デリバリーサービス等に利用され、保温対象物の温度を維持した状態で配達先に届けることが可能な保温庫を提供する。
【解決手段】保温庫1は、断熱壁よって形成された保温庫本体1aと、保温庫本体1a内に設けられ、保温対象物としての調理済み食品が盛り付けられた食器を載置する少なくとも1つのトレイ50と、保温庫本体1aの内面側に設けられた放熱パネル31と、放熱パネル31を加熱するヒータ80とを備え、放熱パネル31の少なくとも一部を凝灰岩からなる石板31bによって形成したので、料理を保温庫本体1aに収容することにより、配達先に料理の調理直後の温度を維持したまま配達することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁よって形成された保温庫本体と、
保温庫本体内に設けられ、保温対象物を載置する少なくとも一つのトレイと、
保温庫本体の内面側に設けられた放熱パネルと、
放熱パネルを加熱するヒータとを備え、
前記放熱パネルの少なくとも一部を凝灰岩からなる石板によって形成した
ことを特徴とする保温庫。
【請求項2】
前記保温庫本体は前面を開口するとともに、前面開口部を開閉する前面部を有し、
前面部は上下方向に配列された複数の開閉部からなり、開閉部ごとに保温庫本体の全面開口部を開閉可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の保温庫。
【請求項3】
前記各開閉部は前記トレイごとに設けられ、それぞれトレイとともに前後方向にスライド自在に形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の保温庫。
【請求項4】
前記保温庫本体の少なくとも一部が断熱壁と前記放熱パネルとの二層構造からなる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の保温庫。
【請求項5】
前記断熱壁と前記放熱パネルとの間に空気層を設けた
ことを特徴とする請求項4記載の保温庫。
【請求項6】
前記トレイの底面に、保温対象物を収容する容器が係合する係合部を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の保温庫。
【請求項7】
前記トレイは、周縁に載置部を残して底面が開口したトレイ本体と、トレイ本体の載置部に着脱自在に載置される底面板とからなる
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の保温庫。
【請求項8】
前記ヒータに電力を供給する発電機と蓄電池とを備え、
発電機からヒータへの給電と蓄電池からヒータへの給電とを切替可能に構成した
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の保温庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、調理済み食品のデリバリーサービスに使用される保温庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば中華料理の出前やデリバリーピザなどの調理済み食品のデリバリーサービスが利用されている。昨今のデリバリーサービスは、スマートフォンなどの携帯端末を用いて容易に注文できるようになったため、利用頻度が増加している。注文された調理済み食品は、バイク等の配達車両に搭載された保温容器に積み込まれ、配達先に順次届けられる。レストラン等の一般的な飲食店では、客に提供するときが料理の味や食感の面で最適となるように調理している。そのため、デリバリーサービスでは、調理直後の仕上がり温度をそのまま維持し、食品の味や食感を損なうことがないように配達することが重視されている。調理済み食品の保温容器としては、容器内に蓄熱材などを収容することで、容器内の温度を維持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、一般に普及しているデリバリーピザの配達バイクに搭載されている保温箱は、周囲が断熱材で囲われることにより、ピザを保温するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、配達箇所が多い、配達距離が長い、あるいは予期せぬ交通事故や渋滞に巻き込まれた場合は、配達にかかる時間が長くなり、前述した蓄熱材や断熱材のみでは充分な保温効果が得られないことがあった。また、保温箱の内部において上方と下方の間で温度差が生じることもあり、料理が配達先に届く頃には、仕上がり温度を下回り、味や食感が損なわれることがあった。この場合、配達先で再加熱をすることもあるため、手間がかかるという問題点が生じることになる。
【0005】
また、前述した保温容器では、例えば品数の多い料理や高級料理店の料理の配達には適さないものであった。料理店では、料理の外観や料理の配置などの美観も重視しているため、料理を小分けにして配達したり、食器をプラスチック容器等のような使い捨てのものにして提供したりすることは、料理の価値を落とすことになる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デリバリーサービス等に利用され、保温対象物の温度を維持した状態で配達先に届けることが可能な保温庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保温庫は前記目的を達成するために、断熱壁よって形成された保温庫本体と、保温庫本体内に設けられ、保温対象物を載置する少なくとも1つのトレイと、保温庫本体の内面側に設けられた放熱パネルと、放熱パネルを加熱するヒータとを備え、前記放熱パネルの少なくとも一部を凝灰岩からなる石板によって形成したことを特徴とする。
【0008】
これにより、ヒータを駆動して、保温庫本体内の温度を所定の温度まで加熱することにより、保温対象物が保温される。また、凝灰岩の遠赤外線効果および蓄熱効果により、保温庫本体内の温度の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば調理済みの料理を仕上がり直後の温度を維持したまま配達することができるので、一品料理だけでなく、高級料理、または、品数が多い料理においても、調理直後の仕上がり温度を維持した状態で、飲食店内で客に提供する温度で配達先に届けることができる。また、凝灰岩の遠赤外線効果により、保温庫本体内を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】本発明の他の実施形態を示すトレイの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図6は本発明の一実施形態を示すもので、例えば、保温対象物としての調理済み食品のデリバリーサービスに使用される保温庫を示すものである。
【0012】
本実施形態の保温庫1は、
図1に示すように、直方体状に形成された保温庫本体1aと、保温庫本体1aを形成する断熱壁としての上面壁10、底面壁20、側面壁30および背面壁40と、食品を収容する複数のトレイ50と、保温庫本体1aの前面に開閉自在に設けられた前面壁60と、各トレイ50を前後方向にスライド可能に支持するスライドレール70と、保温庫本体1a内を加熱するためのヒータ80と、保温庫本体1a内の温度を制御するための温度制御装置90とを備えている。
【0013】
上面壁10、底面壁20、左右の側面壁30および背面壁40は、
図2に示すように、前面を開口した立方体状の保温庫本体1aを形成している。上面壁10、底面壁20、側面壁30および背面壁40は、例えばステンレスからなる外面板によって中空状に形成され、その内部にグラスウール等の断熱材を充填することにより形成されている。
【0014】
側面壁30の内側には、
図3に示すように、側面壁30とほぼ同等の大きさに形成された放熱パネル31が設けられ、側面壁30と放熱パネル31によって二層構造の断熱壁が形成されている。側面壁30と放熱パネル31は、ボルト33とナット34によりスペーサ35を介して連結されている。放熱パネル31は、例えばステンレスからなる外面板31aによって中空状に形成され、その内部には、例えば大谷石等の凝灰岩からなる石板31bが収容されている。また、側面壁30と放熱パネル31は互いに厚さ方向に間隔をおいて配置され、側面壁30と放熱パネル31との間には空気層32が設けられている。石板31bには、後述するヒータ80を配置するための空間31cが形成されている。
【0015】
トレイ50は、周縁部が鉛直上方に屈曲した板状の部材からなる。トレイ50には、それぞれ異なる食材が盛りつけられる複数の食器Aが所定の位置に載せられており、レストラン等の飲食店での配膳と同様の状態で食器Aが載置されるようになっている。この場合、食器Aを配置する箇所に食器Aが係合する凹部または貫通孔(図示せず)を形成することで、食器の位置ずれを防止するようにしてもよい。
【0016】
前面壁60は、
図4に示すように、トレイ50ごとに設けられた複数の開閉部61からなり、開閉部61は保温庫1前面の開放部の横幅寸法よりも長いブロック状に形成され、トレイ50の前端部に接合されている。前面壁60は、各開閉部61を高さ方向に配列したときに、保温庫本体1aの前面開口部の高さ寸法よりも大きく、かつ各開閉部61の間に隙間が発生しない高さ寸法に形成されている。トレイ50を保温庫本体1a内に収納した際、各開閉部61は保温庫本体1aを密封する扉をなすようになっている。各開閉部61は、例えば、ステンレスからなる外面板によって中空状に形成され、その内部にグラスウール等の断熱材を充填することにより形成されている。
【0017】
また、各開閉部61の前面には、トレイ50をスライド操作するための把持部62と、開閉部61をロックするためのロック機構63が設けられている。
【0018】
スライドレール70は、放熱パネル31の内面に前後方向に水平に設けられたレール部71と、トレイ50の周縁部に前後方向に水平に設けられたスライド部72とからなる。スライドレール70は、レール部71とスライド部72とが複数のボール73を介して互いに噛み合うことにより、トレイ50を前後方向にスライド自在に支持するようになっている。
【0019】
ヒータ80は、例えばフィンヒータ等の周知の加熱器からなり、各放熱パネル31の内部に前後方向に水平に2本埋設されている。ヒータ80は、保温庫本体1aの前端側で上下方向に180度折り返すようにU字状に形成されており、石板31bに形成された空間31c内に配置されている。
【0020】
温度制御装置90は、ディスプレイ91や温度設定スイッチ92を備えたものであり、上面壁10の上面に設けられている。上面壁10の下面には、温度制御装置90に接続された温度センサ93が設けられており、温度センサ93は、保温庫本体1a内の温度を測定し温度制御装置90に温度情報を送信するようになっている。保温庫本体1a内の温度はディスプレイ91に表示され、保温庫本体1a内の温度が設定温度になるようにヒータ80が制御される。
【0021】
また、保温庫本体1aの下部には、複数の免震ゴム100が設けられ、配達時における保温庫本体1aへの振動や衝撃を吸収するようになっている。
【0022】
さらに、前記保温庫1は、
図5に示すように、ヒータ80に電力を供給するための発電機3および蓄電池4を備えている。発電機3および蓄電池4は、それぞれヒータ80および温度制御装置90に接続され、切り替えスイッチ94によって切り替え操作をすることにより、発電機3および蓄電池4のいずれかを使用するか選択できるようになっている。例えば、車両停止時や初期加熱時は発電機3を使用し、車両走行時は蓄電池4を使用する。
【0023】
以上のように構成された保温庫1は、
図6に示すように、食品の配達車両2に発電機3および蓄電池4とともに搭載されて使用される。配達車両2は、レストランなどの食品を提供する飲食店から調理済み食品を受け取り、保温庫本体1a内に収容し、配達先に配達する。調理済み食品を保温庫本体1a内に収容する前に、発電機3によってヒータ80を駆動し、予め保温庫本体1a内を料理の保温に適した温度まで加熱する。配達時は、蓄電池4によってヒータ80を駆動して、保温庫本体1a内の温度を所定の温度に維持することにより、調理済み食品を保温する。また、保温庫本体1aの全ての壁面が断熱材を有することにより、保温庫本体1a内の温度の低下を抑制している。
【0024】
保温庫本体1aの側面壁30の内側には、ヒータ80が埋設された凝灰岩の石板31bが収容された放熱パネル31が設けられていることから、ヒータ80からの放熱により石板31bの全面が加熱される。加熱された石板31bは、凝灰岩の遠赤外線効果により、遠赤外線帯の波長の熱波を放出する。これにより、保温庫本体1a内は、放熱パネル31の全面から均一に放熱されることにより温度ムラを生ずることなく温められる。また、凝灰岩が備える蓄熱効果により、一旦温められた石板31bは温度が長時間維持されることから、ヒータ80の稼働を抑えることができる。
【0025】
また、保温庫本体1aの前面壁は、複数の開閉部61に分割されており、各開閉部61がトレイ50と接合されているため、料理を保温庫1から取り出す際は、料理が収容されたトレイ50の開閉部61のみを引き出せば、他の開閉部61の部分から熱が放出されることはない。そのため、最小限の開放で料理を取り出すことができ、保温庫本体1a内の温度の低下が抑制される。
【0026】
このように、本実施形態の保温庫1によれば、断熱壁よって形成された保温庫本体1aと、保温庫本体1a内に設けられ、保温対象物を載置する少なくとも1つのトレイ50と、保温庫本体1aの内面側に設けられた放熱パネル31と、放熱パネル31を加熱するヒータ80とを備えているので、保温庫本体1aに収容された料理を所定温度で保温することができ、配達先に料理の温度を維持したまま配達することができる。
【0027】
また、放熱パネル31の少なくとも一部を凝灰岩からなる石板31bによって形成したので、保温庫本体1a内に温度ムラが生ずることがなく、高さ位置の異なるトレイ50に収容された料理を均一に保温することができる。さらに、凝灰岩の蓄熱効果によりヒータ80の稼働を抑えることができ、節電効果が得られる。
【0028】
さらに、保温庫本体1aは前面を開口するとともに、前面開口部を開閉する前面部60を有し、前面部60は上下方向に配列された複数の開閉部61からなり、開閉部61ごとに保温庫本体1aの全面開口部を開閉可能に形成されるとともに、各開閉部61はトレイ50ごとに設けられ、それぞれトレイ50とともに前後方向にスライド自在に形成されているので、最小限の開放で料理を取り出すことができ、保温庫本体1a内の温度低下が抑制される。これにより、開放時の保温庫本体1a内の温度低下を抑えることができ、節電効果が得られる。
【0029】
また、保温庫本体1aの少なくとも一部が断熱壁と放熱パネル31との二層構造からなるので、断熱壁によって放熱パネル31から保温庫本体1aの外部への放熱を遮断することができ、効率よく保温庫本体1a内を温めることができる。
【0030】
また、断熱壁と放熱パネル31との間に空気層32を設けたので、熱伝導率の小さい空気層32によって断熱効果を高めることができ、より効率よく保温庫本体1a内を温めることができる。
【0031】
さらに、トレイ50の底面に、保温対象物を収容する容器が係合する係合部としての凹部または貫通孔を設けたので、容器の位置ずれを防止することができる。
【0032】
またに、ヒータ80に電力を供給する発電機3と蓄電池4とを備え、発電機3からヒータ80への給電と蓄電池4からヒータ80への給電とを切替可能に構成したので、配達待機時は発電機3でヒータ80を駆動し、配達時は蓄電池4に切り替えることにより、配達時の配達車両2からの振動や衝撃によって発電機3に不具合が生ずることを防止することができる。
【0033】
本発明の他の実施形態として、例えばトレイ50の構成を変化したものを以下に説明する。なお、前記実施形態の構成と同一の構成は、同一の符号を用いて示す。
【0034】
本実施形態のトレイ110は、
図7に示すように、周縁にフランジ状の載置部111aを残して底面を開口するように形成されたトレイ本体111と、トレイ本体111の載置部111aに載置される底面板112とからなる。ラーメン鉢のような高さ寸法の大きい食器Bの場合、食器Bの上部が上方のトレイ110に達することもあるため、このような場合は、
図8および
図9に示すように、その上方のトレイ111には底面板112を載置せず、高さ寸法の大きい食器Bに二段分のトレイ110を使用する。
【0035】
これにより、上方のトレイ110のトレイ本体111の開口部111bが開放されることから、開口部を通じて上方のトレイ110の高さまで食器Bを配置することができる。その際、トレイ110の引き出しまたは収容時には上下二つの開閉部61を同時に操作する必要があるため、例えば上下の開閉部61を連結する連結部(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、
図10および
図11に示すように、トレイ110の底面板112には、食器Cに係合する係合部を設けるようにしてもよい。例えば、
図10に示すように、食器Cに係合する係合部としての凹部112aおよび貫通孔112bを設けることで、食器の位置ずれを防止することができる。また、
図11に示すように、底面板112に食器Cを挿通する挿通孔112cを設けることで、二段分のトレイ110を使用して高さ寸法の大きい食器Bを載置した際に、上方の底面板112の挿通孔112cによって食器Bの転倒を防止することができる。
【0037】
以上本発明の実施形態について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
また、前記実施形態では、食品を保温対象物として保温するようにしたものを示したが、食品以外の保温対象物を保温するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…保温庫
1a…保温庫本体
2…配達車両
3…発電機
4…蓄電池
10…上面壁
20…底面壁
30…側面壁
31…放熱パネル
31a…外面壁
31b…石板
31c…空間
32…空気層
40…背面壁
50…トレイ
60…前面壁
61…開閉部
70…スライドレール
71…レール部
72…スライド部
80…ヒータ
90…温度制御装置
93…温度センサー
100…免振ゴム
110…トレイ
111…トレイ本体
112…底面板