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特開2022-142743除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142743
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20220922BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20220922BHJP
   B01D 47/00 20060101ALI20220922BHJP
   B01D 53/85 20060101ALI20220922BHJP
   A01K 1/00 20060101ALI20220922BHJP
   A01K 1/035 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B01D53/38 100
C02F1/00 V ZAB
C02F1/00 W
B01D47/00 Z
B01D53/85
A01K1/00 C
A01K1/035 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016928
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021042187
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520009323
【氏名又は名称】ヨシモトアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】横島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕明
【テーマコード(参考)】
2B101
4D002
4D032
【Fターム(参考)】
2B101AA01
2B101AA07
2B101BB04
2B101BB09
2B101BB10
2B101DA01
2B101DA03
4D002AA13
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA14
4D002BA17
4D002CA13
4D002DA59
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB06
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB11
4D032AB07
4D032CA01
(57)【要約】
【課題】施設内から施設外へ排出される空気中の臭気成分を有効に減少させつつ、水槽部への悪影響を防止する除塵脱臭システム等を提供する。
【解決手段】施設内から施設外へ向かう気流を形成して施設内の空気を施設外へ排出する際に用いられる除塵脱臭システムであって、前記気流の上流側から順に配され、除塵及び/又は脱臭を行う複数のフィルターと、前記フィルターに対応する複数のユニットと、を備えており、少なくとも一つの前記フィルターには、脱臭に有用な微生物による生物膜が形成されており、前記ユニットが、前記フィルターに散水する散水部と、前記フィルターから落下する水を貯留する水槽部と、前記水槽部に貯留した水を前記散水部に送る水移送部と、前記水槽部に貯留した水を排出する排出部と、前記水槽部に貯留した水の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する水質測定部と、を有している除塵脱臭システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内から施設外へ向かう気流を形成して施設内の空気を施設外へ排出する際に用いられる除塵脱臭システムであって、
前記気流の上流側から順に配され、除塵及び/又は脱臭を行う複数のフィルターと、
前記フィルターに対応する複数のユニットと、を備えており、
少なくとも一つの前記フィルターには、脱臭に有用な微生物による生物膜が形成されており、
前記ユニットが、
前記フィルターに散水する散水部と、
前記フィルターから落下する水を貯留する水槽部と、
前記水槽部に貯留した水を前記散水部に送る水移送部と、
前記水槽部に貯留した水を排出する排出部と、
前記水槽部に貯留した水の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する水質測定部と、を有しており、
前記排出部が、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、前記水を排出する、除塵脱臭システム。
【請求項2】
前記排出部が排出する水の量である排水量が、複数の段階に設定されており、
前記測定値と、前記排水量と、が関連付けられている、
請求項1に記載の除塵脱臭システム。
【請求項3】
前記水移送部が送る水の量である水移送量と、前記測定値と、が関連付けられている、
請求項1又は2に記載の除塵脱臭システム。
【請求項4】
前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する通信部をさらに備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の除塵脱臭システム。
【請求項5】
前記排出部が排出する水の量である排水量を測定する排水量測定部をさらに備えており、
前記通信部が、前記排水量の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する、
請求項4に記載の除塵脱臭システム。
【請求項6】
前記水素イオン指数の測定値を補正する補正部をさらに備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の除塵脱臭システム。
【請求項7】
前記水質測定部が、前記複数のユニットのうち少なくとも一つに備えられている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の除塵脱臭システム。
【請求項8】
前記排出部が、前記フィルターによるアンモニア成分の除去率に基づいて、前記排出部が排出する水の量を増加又は減少させる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の除塵脱臭システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の除塵脱臭システムを備える畜舎。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の除塵脱臭システムを用いる除塵脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法に関する。より詳細には、複数のフィルターを備え、一又は複数のフィルターには、有用微生物による生物膜(バイオフィルム)が形成されている除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産や農業などで発生する悪臭が問題になることが多い。例えば、養豚業などの場合、市街地周辺で養豚業などを営んでいる場合も多く、悪臭が問題となりやすい。
【0003】
それに対し、例えば養豚農家では、臭気対策として、豚舎の床面の清掃や乾燥化に努める、糞尿の分離を速やかに行う、などの手段を採用している。また、その他の脱臭手段として、吸着剤により臭気成分を吸着する方法、化学薬剤・酵素・オゾンガスなどを用いて脱臭を図る方法、などが検討されている。
【0004】
例えば特許文献1では、畜舎などの施設内から施設外へ排出される空気中の臭気成分を、簡易、低廉、かつ、有効に減少させる除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-341249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されている技術は、空気中の埃などを取り除き、空気中の臭気成分を低減させるには有用な技術である。
【0007】
しかし、近年の技術開発において、特許文献1で開示されている技術を用いると、水槽部に貯留した水の酸性が強くなることにより、前記水槽部に悪影響を及ぼすおそれがあることが明らかになった。
【0008】
そこで本発明では、畜舎などの施設内から施設外へ排出される空気中の臭気成分を、簡易、低廉、かつ、有効に減少させつつ、水槽部への悪影響を防止する除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、施設内から施設外へ向かう気流を形成して施設内の空気を施設外へ排出する際に用いられる除塵脱臭システムであって、前記気流の上流側から順に配され、除塵及び/又は脱臭を行う複数のフィルターと、前記フィルターに対応する複数のユニットと、を備えており、少なくとも一つの前記フィルターには、脱臭に有用な微生物による生物膜が形成されており、前記ユニットが、前記フィルターに散水する散水部と、前記フィルターから落下する水を貯留する水槽部と、前記水槽部に貯留した水を前記散水部に送る水移送部と、前記水槽部に貯留した水を排出する排出部と、前記水槽部に貯留した水の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する水質測定部と、を有しており、前記排出部が、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、前記水を排出する、除塵脱臭システムを提供する。
前記排出部が排出する水の量である排水量が、複数の段階に設定されており、前記測定値と、前記排水量と、が関連付けられていてよい。
前記水移送部が送る水の量である水移送量と、前記測定値と、が関連付けられていてよい。
前記除塵脱臭システムは、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する通信部をさらに備えていてよい。
前記排出部が排出する水の量である排水量を測定する排水量測定部をさらに備えており、前記通信部が、前記排水量の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信してよい。
前記除塵脱臭システムは、前記水素イオン指数の測定値を補正する補正部をさらに備えていてよい。
前記水質測定部が、前記複数のユニットのうち少なくとも一つに備えられていてよい。
また、本発明は、前記除塵脱臭システムを備える畜舎を提供する。
また、本発明は、前記除塵脱臭システムを用いる除塵脱臭方法を提供する。
【0010】
本発明において、「有用微生物」は、粉塵や臭気成分などを分解などする微生物である。本発明に係る有用微生物には、サイトファーガ群の細菌、硝化細菌などが包含される。なお、これらの細菌は、畜舎などの施設内外に常在する。
【0011】
「サイトファーガ群」は、細菌の分類群の名称であり、複数の属の細菌を含む。サイトファーガ群の細菌のうち、主要な属に属する細菌は、好気性であり、多糖(セルロース又はキチン)を分解して生育することが知られている。
【0012】
「硝化細菌」は、好気的条件下で還元型無機窒素化合物(NH4+、NO2-)を酸化する一群の細菌の総称であり、例えば、アンモニア酸化細菌及び亜硝酸酸化細菌などを包含する。アンモニア酸化細菌は、Nitrosomonas属菌、Nitrosospira属菌など、アンモニアを酸化して亜硝酸にする独立栄養細菌である。亜硝酸酸化細菌は、Nitrobacter属菌など、亜硝酸を硝酸に酸化する独立栄養細菌である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、畜舎などの施設内から施設外へ排出される空気中の臭気成分を、簡易、低廉、かつ、有効に減少させつつ、水槽部への悪影響を防止する除塵脱臭システム、畜舎、及び除塵脱臭方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示す側面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAが記憶するデータテーブルの一例である。
図5】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示す側面模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
図12】本発明に係る除塵脱臭システムAを、畜舎に設置する場合の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付した図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されることはない。また、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0016】
本発明の説明は以下の順序で行う。
1.本発明に係る第1の実施形態(除塵脱臭システムの例1)
(1)本システムの概要
(2)フィルター
(3)本システムの構成
2.本発明に係る第2の実施形態(除塵脱臭システムの例2)
3.本発明に係る第3の実施形態(除塵脱臭システムの例3)
4.本発明に係る第4の実施形態(除塵脱臭システムの例4)
5.本発明に係る第5の実施形態(除塵脱臭システムの例5)
6.本発明に係る第6の実施形態(除塵脱臭システムの例6)
7.本発明に係る第7の実施形態(畜舎)
【0017】
<1.本発明に係る第1の実施形態(除塵脱臭システムの例1)>
<(1)本システムの概要>
本発明に係る除塵脱臭システムは、施設内から施設外へ向かう気流を形成して施設内の空気を施設外へ排出する際に用いられる。本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムの構成について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示す側面模式図である。
【0018】
図1に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、前記気流の上流側から順に配され、除塵及び/又は脱臭を行う複数のフィルターを備える。前記複数のフィルターの数は特に限定されないが、例えば2つであってよい。本実施形態では、除塵脱臭システムAは、第1のフィルター11と、第2のフィルター21と、を備える。
【0019】
また、除塵脱臭システムAは、前記フィルターに対応する複数のユニットを備える。本実施形態では、除塵脱臭システムAは、第1のユニット1と、第2のユニット2と、を備える。
【0020】
少なくとも一つの前記フィルターには、脱臭に有用な微生物による生物膜が形成されている。
【0021】
第1のユニット1は、第1のフィルター11に水W11を散水する第1の散水部12と、第1のフィルター11から落下する水W12を貯留する第1の水槽部13と、第1の水槽部13に貯留した水W13を第1の散水部12に送る第1の水移送部14と、第1の水槽部13に貯留した水W13を排出する排出部16と、第1の水槽部13に貯留した水W13の電気伝導率及び/又は水素イオン指数(pH)を測定する水質測定部15と、を有している。
【0022】
排出部16は、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、水W13を排出する。
【0023】
第2のユニット2は、第2のフィルター21に水W21を散水する第2の散水部22と、第2のフィルター22から落下する水W22を貯留する第2の水槽部23と、第2の水槽部23に貯留した水W23を第2の散水部22に送る第2の水移送部24と、を有している。
【0024】
なお、図示を省略するが、第2のユニット2は、第2の水槽部23に貯留した水W23を排出する第2の排出部を有していてもよいし、第2の水槽部23に貯留した水W23の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する第2の水質測定部を有していてもよい。
【0025】
また、散水部(12、22)、水槽部(13、23)、及び水移送部(14、24)のそれぞれは、ユニットごとに設けられていなくてよく、それぞれのユニットが共有するように設けられていてもよい。ただし、第1のフィルター11と第2のフィルター21では、生物膜が形成された際の微生物叢やフィルター内の環境などが異なる。そのため、ユニットごとに設けられている方がより好適である。
【0026】
除塵脱臭システムAの動作について説明する。排気ファンなどにより、施設内から施設外へ向かう気流Xが形成される。気流Xは、第1のフィルター11及び第2のフィルター21を順に通過する。第1のフィルター11及び第2のフィルター21は、気流Xに対して含まれる除塵及び/又は脱臭を行う。
【0027】
気流の上流側に配される第1のフィルター11は、主に、粉塵を吸着及び/又は分解し、並びに、アンモニアを硝酸性窒素に変換する。第2のフィルター21は、主に、アンモニアを硝酸性窒素に変換し、並びに、他の臭気成分を吸着及び/又は分解する。これにより、施設内から施設外へ排出される臭気成分(空気中に排出される悪臭)が減少する。
【0028】
<(2)フィルター>
第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれには、有用微生物などによる生物膜が形成及び定着される。例えば、豚舎や鶏舎などの畜舎、堆肥化施設、汚水処理施設などにこの除塵脱臭システムAが用いられる場合、フィルターの環境(例えば温度、水分、酸素、炭素源、その他の栄養源など)を適度に保ちながら除塵脱臭システムAが稼動することにより、施設内に存在する有用微生物が第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれに自然に生物膜を形成して定着する。
【0029】
その他、本システムの設置箇所などに応じて、例えば、有用微生物を含有させた溶液が、貯留した水W13や水W23などに添加されてもよい。あるいは、有用微生物の粉体生菌剤などが、第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれに散布されてもよい。
【0030】
本システムでは、好気的な条件下で生物学的処理を行うため、脱臭に関与する有用微生物を優先的に繁殖させることができる。
【0031】
サイトファーガ群を中心とした有用微生物は、生物膜を形成して好気的にフィルターに定着及び/又は増殖できる。そして、有用微生物は、粉塵など高分子の有機物を生物膜に吸着させ、生物膜に吸着した粉塵などを徐々に分解する。そのため、有用微生物は、フィルターと粉塵などとの接触時間が短くても、粉塵などを十分に吸着及び/又は分解できる。そのため、脱臭能力が高い。
【0032】
Nitrosomonas属菌やNitrosospira属菌などの硝化細菌は、アンモニアなどの臭気成分を微生物体内に取り込み、臭気成分を酸化分解などして、二酸化炭素、水、硝酸イオン、硫酸イオンなどに変換することにより、脱臭する。
【0033】
第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれは、生物膜を形成可能なものであれば適用可能であり、その材質や構造などによって限定されない。第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれは、例えば、不織布、紙(ペーパー)、プラスチック、多孔質材料、メッシュ状網体などを含んでいてよい。特に、ハニカム状のペーパーフィルターは、例えば、有用微生物などによる生物膜が形成されやすく有用微生物が定着しやすい点、表面積が大きいため気流Xとの気液接触により循環水の溶存酸素量を増大させやすい点、同じく表面積が大きいため臭気成分と微生物が接触しやすい点、生物膜内の好気的条件を保持しやすい点などから特に好適である。
【0034】
なお、本発明に係る除塵脱臭システムは、3つ以上のフィルターを備えていてよい。例えば、気流の最も下流側などに光触媒フィルターが備えられていてよい。このとき、例えば、光触媒フィルターを太陽光の当たる場所に設置したり、別途、光照射手段(ブラックライトなど)を備える構成にしたりできる。
【0035】
光触媒フィルターとして、例えば、フィルターの材質(不織布など)に予め光触媒物質(酸化チタンなど)を添加などして作製したものや、フィルターの表面などに光触媒物質を塗布などして作製したものを用いることができる。
【0036】
例えば、気流の最も下流側に第3のフィルターとして光触媒フィルターを設置する場合、第1のフィルター11及び第2のフィルター21の通過後に残存した微量の臭気成分などを光触媒作用により分解及び/又は除去できる。そのため、除塵及び/又は脱臭効果を増大できるという利点がある。
【0037】
特に、光触媒物質は、一般的に、目的の物質が微量の場合にその物質をより有効に分解する。従って、この構成にすることにより、第1のフィルター11及び第2のフィルター21において大部分の粉塵や臭気成分などを予め分解及び/又は除去などできるため、光触媒フィルターにおいて、残存した臭気成分などを、より有効に分解できる。
【0038】
その他、気流の最も下流側に光触媒フィルターを設置する場合、第1のフィルター11及び第2のフィルター21により粉塵や臭気成分などを予め分解及び/又は除去などできるため、光触媒フィルターの目詰まりや劣化を防止でき、光触媒作用を長期間持続させることができるという利点がある。
【0039】
第1の散水部12は第1のフィルター11に水W11を散水する。第2の散水部22は第2のフィルター21に水W21を散水する。これにより、第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれに定着した微生物の生育環境を良好に保つことができる。また、これにより、生物膜に吸着しなかった粉塵や、第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれに定着した微生物の代謝産物(不要産物)などを循環及び/又は除去できる。
【0040】
一般に、硝化細菌やサイトファーガ群の細菌は、比較的高温で、湿度が高く、好気的な条件下で、良好に増殖する。この除塵脱臭システムAは、第1の散水部12及び第2の散水部22が適温の高溶存酸素水を散水できるため、第1のフィルター11及び第2のフィルター21のそれぞれを、好気的かつ湿度の高い状態で保持できる。従って、生物膜の形成や保持、及び、有用微生物の定着や増殖に有効である。
【0041】
なお、一般的に、畜舎内の温度は動物の生育に適した温度に調節されている。そのため、この除塵脱臭システムAを畜舎に用いる場合、除塵脱臭システムA内の温度は、微生物の至適温度を自然に保持できる場合が多い。その他、例えば、第1の散水部12及び第2の散水部22のそれぞれに加熱手段(図示せず)などが取り付けられて、散水する水W11及び水W21の温度調節が行われ、第1のフィルター11及び第2のフィルター21が至適温度条件に調節されてもよい。
【0042】
<(3)本システムの構成>
第1の散水部12及び第2の散水部22のそれぞれから散水された水は、循環し、再利用される。これにより、生物膜を最適な状態に維持することができ、また、水の使用量を大幅に削減できる。
【0043】
なお、第1の水移送部14及び第2の水移送部24のそれぞれは、例えば、ポンプ(図示せず)と通水管(第1の通水管141及び第2の通水管241)を備える構成であってよい。このとき、ポンプで汲み上げられる水は、通水管を介して、第1の散水部12及び第2の散水部22のそれぞれに送られることができる。
【0044】
ここで、除塵脱臭システムAの構成について図2を参照しつつ説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。
【0045】
図2に示されるとおり、除塵脱臭システムAは、水質測定部15と、演算部41と、記憶部43と、制御部42と、を含むことができる。
【0046】
水質測定部15は、第1の水槽部13に貯留した水W13の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する。演算部41は、水質測定部15において測定される値に基づいて、排水量を演算する。記憶部43には、この演算に必要な情報が記憶されている。排出部16は、演算された排水量の水を排出する。制御部42は、それぞれの構成要素の動作を制御する。なお、演算部41や制御部42などは、例えばコンピュータが備えるCPUなどが用いられることにより実現できる。
【0047】
排出部16は、第1の水槽部13に貯留した水W13を排出する。特に、排出部16は、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、水W13を排出する。あるいは、排出部16は、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、既に排出している水W13の排出量を変動する。
【0048】
このことについてさらに図3を参照しつつ説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図3に示されるとおり、水質測定部15は、第1の水槽部13に貯留した水W13の電気伝導率(EC:Electrical Conductivity)を測定する(ステップS11)。次に、水質測定部15は、第1の水槽部13に貯留した水W13の水素イオン指数(pH:potential of Hydrogen)を測定する(ステップS12)。
【0050】
なお、水質測定部15は、EC及びpHのうちいずれか一方の値のみを測定してもよい。また、水質測定部15は、第2の水槽部23に貯留した水W23のEC及び/又はpHを測定してもよい。以下のフローチャートについても同様である。
【0051】
次に、演算部41は、測定されたEC及び/又はpHが所定の範囲外であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0052】
そして、測定されたEC及び/又はpHが所定の範囲外であるとき(ステップS13:Yes)、排出部16は水W13を排出する(ステップS14)。あるいは、図示を省略するが、排出部16は、既に排出している水W13の排出量を変動してもよい。なお、厳密には、制御部42が排出部16に対して水W13の排出を指示する。以下のフローチャートについても同様である。
【0053】
電気伝導率に基づいて水W13が排出されることにより、循環水の汚濁度などを監視又は調節できる。
【0054】
さらに、水素イオン指数に基づいて水W13が排出されることにより、例えば水槽部がコンクリートを含む場合に、コンクリートの腐食を防止できる。コンクリートは、水素イオン指数が12~13であり、非常に強いアルカリ性である。そのため、水槽部に貯留した水の水素イオン指数が低下すると、コンクリートが腐食するおそれがある。本発明によれば、水槽部に貯留した水の水素イオン指数が適切に保たれるため、コンクリートの腐食が防止される。
【0055】
前記排出部が排出する水の量である排水量が、複数の段階に設定されており、前記測定値と、前記排水量と、が関連付けられていてよい。
【0056】
このことについて図4を参照しつつ説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAが記憶するデータテーブルの一例である。図4に示されるとおり、測定値であるpHと、排水量と、が関連付けられている。このデータテーブルは、例えば記憶部43に記憶されることができる。あるいは、データベースとして記憶部43に記憶されてもよい。
【0057】
例えば測定されたpHが6.0以上であるときは、異常が発生していない状態であるため、通常の排水量が設定される。pHが5.0以上6.0未満であるときは、パターン1として設定される排水量よりも多い排水量が設定される。pHが4.0以上5.0未満であるときは、パターン2として設定される排水量よりも多い排水量が設定される。pHが4.0未満であるときは、パターン3として設定される排水量よりも多い排水量が設定される。なお、図4に示されるデータテーブルは一例であるため、pHの値やパターンの数はこれに限られない。
【0058】
このように複数の段階で排水量が設定されていることにより、循環水の水質の急激な変化を防止できる。
【0059】
なお、この例ではpH及び排水量が関連付けられているが、EC及び排水量が関連付けられていてもよい。さらに、pH及びECを組み合わせた指標及び排水量が関連付けられていてもよい。
【0060】
水質測定部15は、前記複数のユニットのうち少なくとも一つに備えられていてよい。本実施形態においては、第1の水槽部13及び第2の水槽部23のそれぞれに水質測定部15が備えられていてもよいが、例えば第1の水槽部13のみに水質測定部15が備えられていてよい。
【0061】
ただし、水質測定部15の設置箇所は、例えば、気流Xの最も上流側に位置する第1の水槽部13又は通水管141などが好適である。また、排出部16の設置箇所は、例えば、気流Xの最も上流側に位置する第1の水槽部13が好適である。
【0062】
一般的に、気流の上流側に配される第1のフィルター11において、粉塵などが最も多く吸着及び/又は分解される。そのため、気流の上流側に配される第1の水槽部13に貯留した水W13が最も汚濁しやすい。そこで、水質測定部15及び排出部16が、気流Xの最も上流側に配される第1の水槽部13などに設けられることにより、除塵脱臭システムA内を循環する循環水の汚濁度をより効率的に監視及び/又は調節できる。
【0063】
なお、例えばポンプなどが用いられることにより、第2の水槽部23に貯留した水W23が、第1の水槽部13に流入されてよい。これにより、1つの水質測定部15が、複数の水槽部のそれぞれに貯留した水の水質を測定できる。その結果、コストが低減される。
【0064】
除塵脱臭システムAは、水供給部25を備えていてよい。水供給部25は、例えば、排出部16による水W13の排出により、第1の水槽部13に貯留した水W13の水位が一定以下になった場合、水槽部に水を供給する。
【0065】
本実施形態では、気流Xの下流側に配される第2の水槽部23に、水供給部25が備えられている。水供給部25から第2の水槽部23に新規の水Y1が供給されると、第2の水槽部23に貯留する水W23があふれ、水Y2が第1の水槽部13に移動することにより、第1の水槽部13にも水が供給される。これにより、一つの水供給部で、第1の水槽部13と第2の水槽部23の両方に水を供給できるため、システム構成を簡略化できる。
【0066】
また、この構成には次のような利点がある。一般に、第1の水槽部13に貯留した水W13の方が、第2の水槽部23に貯留した水W23よりも汚濁しやすい。従って、本実施形態のように、第1の水槽部13に貯留した水W13を排出し、新規の水を第2の水槽部23に供給する構成にすることにより、より効率的に、水槽部内の汚濁を低減できる。
【0067】
なお、第1の水槽部13及び第2の水槽部23に分けられる構成ではなく、共有の水槽部が用いられる構成である場合は、例えば、共通の水槽部内に水質測定部15及び排出部16が設けられてよい。
【0068】
その他、本発明に係る除塵脱臭システムAを、フィルターを洗浄するフィルター洗浄手段を備える構成にしてもよい(図示せず)。これにより、フィルター面に形成された生物膜の活性を維持し、また、フィルターの通気抵抗を低減させることができる。従って、フィルターの耐久性の向上、畜舎などにおける排気ファンなどの空調設備への負荷の低減、電気代などの維持コストの低減などを図ることができる。
【0069】
また、本発明に係る除塵脱臭システムAを、例えば、水の供給・散水・循環・排水、及び、電気伝導率の測定などを自動制御する制御手段を備える構成にしてもよい(図示せず)。これにより、本システムを自動運転させることができる。
【0070】
除塵脱臭システムAを適用することには、以下のような利点がある。この利点は、後述する他の実施形態においても同様である。
(1)薬剤などを用いず、硝化細菌など自然界に広く存在する微生物も用いて脱臭を行うため、環境負荷が少なく、安全性が高い。
(2)前記の通り、薬剤を用いずに除塵及び/又は脱臭を行うことができ、また、発生する汚泥量も少ないため、通常の浄化槽などを用いて簡易に汚水処理を行うことができる。(3)畜舎などの場合、畜舎内に存在する微生物を用いて脱臭処理を行うことができるため、簡易かつ低廉に、この除塵脱臭システムAを設置及び/又は導入できる。
(4)前記の通り、この除塵脱臭システムAは、生物処理により脱臭を行うため、加圧・減圧、加温・冷却などの複雑な工程が必要なく、高価な触媒などを用いる必要もない。加えて、水や電気(エネルギー)の使用量も少なく抑えることができる。従って、ランニングコストを低く抑えることができる。
(5)前記の通り、この除塵脱臭システムAは、フィルターに生物膜を形成させた構成であり、複雑な装置構成を必要としないため、メンテナンスが比較的容易である。
(6)この除塵脱臭システムAは、除塵も行うため、施設内の環境を良好に保つことができる。従って、例えば、この除塵脱臭システムAを畜舎などに適用する場合、農場内外などの動物(牛、豚、鶏など)に対する伝染病の拡散リスクを低くすることができ、また、農場内外などの動物の健康状態を良好に保つことができる。
【0071】
<2.本発明に係る第2の実施形態(除塵脱臭システムの例2)>
水移送部14が送る水の量である水移送量と、前記測定値と、が関連付けられていてよい。このことについて図5を参照しつつ説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
【0072】
図5に示されるとおり、水質測定部15は、第1の水槽部13に貯留した水W13のpHを測定する(ステップS21)。
【0073】
次に、演算部41は、測定されたpHが閾値以下であるか否かを判定する(ステップS22)。特に、演算部41は、強い酸性であるか否かを判定する。
【0074】
そして、測定されたpHが閾値以下であるとき(ステップS22:Yes)、制御部42は、第1の水移送部14が送る水移送量を減少させて、第1のフィルター11への水移送量を減少させる(ステップS23)。
【0075】
また、制御部42は、第2の水移送部14が送る水移送量を増加させて、第2のフィルター21への水移送量を増加させる(ステップS24)。
【0076】
なお、水移送量の増加とは、フィルターへ散水される時間を長くすることでありうる。水移送量の減少とは、フィルターへ散水される時間を短くすることでありうる。
【0077】
気流Xの下流側に配される第2の水槽部23に貯留した水W23は、pHが低下する傾向にある。しかし、本発明によれば、気流Xの下流側に配される第2のフィルター21に対して、アンモニアが含まれる空気が流れやすくなる。その結果、第2の水槽部23に貯留した水W23のpHが上昇することが促進される。
【0078】
<3.本発明に係る第3の実施形態(除塵脱臭システムの例3)>
本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する通信部をさらに備えることができる。
【0079】
このことについて図6を参照しつつ説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。図6に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、通信部44をさらに備えることができる。
【0080】
通信部44は、例えばWi-Fi、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)等の通信技術を利用して、情報通信ネットワークを介して通信する機能
を有する。
【0081】
情報通信ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)等の有線ネットワーク、無線LAN(WLAN:Wireless Local Area Network)又は基地局を介した無線WAN(WWAN:Wireless Wide Area Network)等の無線ネットワーク、あるいはTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルを用いたインターネット等により実現できる。
【0082】
例えば本発明に係る除塵脱臭システムAが畜舎に備えられている場合、家畜伝染病の防疫のため、ヒトが畜舎に入って除塵脱臭システムAの定期メンテナンスができないという問題がある。しかし、通信部44が、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信することにより、遠隔地において測定値の監視が可能になる。この効果は、後述する他の実施形態においても同様に生じる。
【0083】
なお、遠隔地に設置されているコンピュータが、受信した測定値に基づいて、除塵脱臭システムAを自動的に制御してもよい。
【0084】
<4.本発明に係る第4の実施形態(除塵脱臭システムの例4)>
本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、前記排出部が排出する水の量である排水量を測定する排水量測定部をさらに備えており、前記通信部が、前記排水量の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信することができる。
【0085】
このことについて図7を参照しつつ説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。図7に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、排水量測定部45をさらに備えることができる。
【0086】
通信部44は、排水量測定部45が測定した排水量を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信することができる。これにより、例えば排出部16の故障などが検知できる。
【0087】
なお、通信部44が送信する情報は上記のものに限られない。例えば、通信部44が水供給部25に関する情報を送信することにより、水供給部25の故障などが検知できる。
【0088】
<5.本発明に係る第5の実施形態(除塵脱臭システムの例5)>
本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、前記水素イオン指数の測定値を補正する補正部をさらに備えることができる。
【0089】
このことについて図8を参照しつつ説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示すブロック図である。図8に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAは、補正部46をさらに備えることができる。補正部46は、前記水素イオン指数の測定値を補正する。
【0090】
補正部46が行う手順について図9を参照しつつ説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
【0091】
図9に示されるとおり、水質測定部15は、第1の水槽部13に貯留した水W13の水素イオン指数(pH)を測定する(ステップS31)。
【0092】
次に、演算部41は、記憶部43に記憶されている情報を参照する(ステップS32)。特に、演算部41は、真水に関する水素イオン指数を参照する。
【0093】
そして、補正部46は、記憶部43から得られた情報に基づいて、測定した水素イオン指数を補正する(ステップS33)。
【0094】
これにより、除塵脱臭システムAは、測定した水素イオン指数のずれを補正できる。
【0095】
なお、除塵脱臭システムAは、例えば、前記施設内で飼育されている家畜に関する情報や、測定値の推移傾向や、施設内の空気中のアンモニア残留濃度などの情報を用いることができる。
【0096】
<6.本発明に係る第6の実施形態(除塵脱臭システムの例6)>
除塵脱臭システムAは、施設内の空気中のアンモニア残留濃度を用いて、排出部16が排出する水の量をコントロールできる。
【0097】
施設内の空気中のアンモニア残留濃度の測定手法について図10を参照しつつ説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの構成を示す側面模式図である。
【0098】
図10に示されるとおり、第1の配管51と、第2の配管52と、第3の配管53と、第4の配管54と、が配されている。第1の配管51と、第2の配管52と、第3の配管53と、第4の配管54と、のそれぞれは、空気槽55に接続されている。
【0099】
施設内の換気を行う排気ファンB5によって、施設内の空気は第1のフィルター11及び第2のフィルター21をこの順に経由して施設外に向かう。
【0100】
第1の配管51は、第1のフィルター11より施設内側に配されている。第2の配管52は、第1のフィルター11と第2のフィルター21との間に配されている。第3の配管53は、排気ファンB5より施設外側に配されている。第4の配管54は、第2のフィルター21と排気ファンB5との間に配されている。
【0101】
施設内の空気は、第1の配管51を経由して空気槽55に送られる。第1のフィルター11と第2のフィルター21との間の空気は、第2の配管52を経由して空気槽55に送られる。排気ファンB5より施設外側の空気は、第3の配管53を経由して空気槽55に送られる。空気槽55内の空気は、第4の配管54を経由して排気ファンB5に引き寄せられる。特別な送風機や吸引機などを必要とせず、排気ファンB5の陰圧を利用して、それぞれの配管における空気の流れを実現させている。
【0102】
第1の配管51には、第1の配管51の内部の空気の流れを制御する第1の電磁弁61が設置されている。第2の配管52には、第2の配管52の内部の空気の流れを制御する第2の電磁弁62が設置されている。第3の配管53には、第3の配管53の内部の空気の流れを制御する第3の電磁弁63が設置されている。
【0103】
空気槽55には、空気中のアンモニア濃度の測定するセンサ56が設置されている。例えば第1の電磁弁61が開いており、第2の電磁弁62及び第3の電磁弁63が閉じているとき、センサ56は、施設内の空気中のアンモニア濃度を測定できる。あるいは、第3の電磁弁63が開いており、第1の電磁弁61及び第2の電磁弁62が閉じているとき、センサ56は、施設外の空気中のアンモニア濃度を測定できる。
【0104】
第1の配管51を経由して得られた空気中のアンモニア残留濃度をCとし、第3の配管53を経由して得られた空気中のアンモニア残留濃度をCとするとき、第1のフィルター11と第2のフィルター21によるアンモニア成分の除去率Xは、例えば下記の式(1)で示される数式により算出される。
【0105】
X=(C-C)÷C ・・・(1)
【0106】
なお、この除去率の算出には、第2の配管52を経由して得られた空気中のアンモニア残留濃度Cが用いられてもよい。第1のフィルター11によるアンモニア成分の除去率Xは、例えば下記の式(2)で示される数式により算出される。
【0107】
X=(C-C)÷C ・・・(2)
【0108】
排出部16は、フィルター(第1のフィルター11若しくは第2のフィルター21又はその両方)によるアンモニア成分の除去率に基づいて、排出部16が排出する水の量を増加又は減少させることができる。このことについて図11を参照しつつ説明する。図11は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAの手順の一例を示すフローチャートである。
【0109】
図11に示されるとおり、センサ56は、空気中のアンモニア濃度を測定する(ステップS41)。
【0110】
次に、演算部41は、上記の式(1)又は式(2)で示される数式などを用いて、アンモニア成分の除去率を算出する(ステップS42)。
【0111】
次に、排出部16は、この除去率が所定の閾値以上であるとき(ステップS43:Yes)、水W13若しくは水W23又はその両方の排出量を増加又は減少させる(ステップS44)。その結果、フィルター面に形成された生物膜の活性を高めることができる。
【0112】
<7.本発明に係る第7の実施形態(畜舎)>
図12は、本発明の一実施形態に係る除塵脱臭システムAを、畜舎に設置する場合の一例を示した模式図である。
【0113】
図12に示されるとおり、畜舎Bは、動物B1を収容する飼育室B2と、飼育室B2内に空気を送る入気孔B3及びインレットB4と、飼育室B2内の換気を行う排気ファンB5と、本発明に係る除塵脱臭システムAと、を備える。排気ファンB5により、飼育室B2内が陰圧になり、飼育室B2から畜舎Bの外B6へ向かう気流Xが形成される。なお、本実施形態に係る除塵脱臭システムAは、生物膜を形成した第1のフィルター11及び第2のフィルター21と、気流Xの最も下流側に位置し、光触媒物質を少なくとも含有する第3のフィルター31と、を備える構成を有する。
【0114】
飼育室B2内に存在する粉塵や臭気成分などは、排気ファンB5によって形成された気流Xにより、除塵脱臭システムAに送られる。粉塵は、その大部分が第1のフィルター11の生物膜に吸着し分解される。臭気成分は、第1のフィルター11及び第2のフィルター21に存在する有用微生物により酸化及び/又は分解などされる。以上の工程により、畜舎Bの外B5へ排出される臭気成分が、大幅に減少する。加えて、第3のフィルター31が、光触媒作用により残りの臭気成分を分解するため、脱臭効果が高まる。
【0115】
例えば、排気ファンB5を用いて、飼育室B2内から畜舎Bの外B6へ向かう気流を形成し、飼育室B2内に存在する有用微生物を、粉塵や臭気成分とともに、第1のフィルター11及び第2のフィルター21に接触させる。すると、第1のフィルター11及び第2のフィルター21において、脱臭に関与する有用微生物が優先的に繁殖する。これにより、第1のフィルター11及び第2のフィルター21に有用微生物などによる生物膜が自然に形成される。その結果、有用微生物が自然に定着する。
【0116】
なお、除塵脱臭システムAにおける各ユニット又は各フィルターの設置箇所は、図2の場合のみに限定されない。即ち、排気ファンB5を駆動することにより、飼育室B2が陰圧になり、気流Xが形成される構成であれば、施設などの目的、大きさ、構造などに応じて適宜設計変更が可能である。
【0117】
例えば、排気ファンB5よりも気流Xの上流側に各フィルターが設置されてもよい。また、例えば、排気ファンB5よりも気流Xの上流側又は下流側に第1のフィルター11及び第2のフィルター21などが設置され、第3のフィルター31が太陽光の多く当たる箇所などに設置されてもよい。その場合、例えば、排気ファンB5又は第2のフィルター21の下流側に所定のバルブ(図示せず)などを設置して気流Xを第3のフィルター31に誘導する構成であってよい。
【0118】
本発明に係る除塵脱臭システムAは、畜舎に設置される場合のみに狭く限定されない。即ち、畜舎(牛舎、豚舎、鶏舎など)のほか、堆肥化施設、汚水処理施設、ごみ処理場などでは、有用微生物が自然に存在するため、そのまま、除塵脱臭システムAを適用できる。
【0119】
また、本発明に係る除塵脱臭システムAは、食品工場、化学工場などにも適用可能である。その場合、上述の通り、例えば、有用微生物を含有させた溶液を循環水に添加などしたり、有用微生物の粉体生菌剤などを第1のフィルター11及び/又は第2のフィルター21に散布などしたりすることにより、有用微生物を各フィルターに導入することができる。
【0120】
なお、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
施設内から施設外へ向かう気流を形成して施設内の空気を施設外へ排出する際に用いられる除塵脱臭システムであって、
前記気流の上流側から順に配され、除塵及び/又は脱臭を行う複数のフィルターと、
前記フィルターに対応する複数のユニットと、を備えており、
少なくとも一つの前記フィルターには、脱臭に有用な微生物による生物膜が形成されており、
前記ユニットが、
前記フィルターに散水する散水部と、
前記フィルターから落下する水を貯留する水槽部と、
前記水槽部に貯留した水を前記散水部に送る水移送部と、
前記水槽部に貯留した水を排出する排出部と、
前記水槽部に貯留した水の電気伝導率及び/又は水素イオン指数を測定する水質測定部と、を有しており、
前記排出部が、前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値が所定の範囲外の値であるとき、前記水を排出する、除塵脱臭システム。
[2]
前記排出部が排出する水の量である排水量が、複数の段階に設定されており、
前記測定値と、前記排水量と、が関連付けられている、
[1]に記載の除塵脱臭システム。
[3]
前記水移送部が送る水の量である水移送量と、前記測定値と、が関連付けられている、
[1]又は[2]に記載の除塵脱臭システム。
[4]
前記電気伝導率及び/又は前記水素イオン指数の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する通信部をさらに備える、
[1]~[3]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システム。
[5]
前記排出部が排出する水の量である排水量を測定する排水量測定部をさらに備えており、
前記通信部が、前記排水量の測定値を、情報通信ネットワークを介して前記施設外へ送信する、
[4]に記載の除塵脱臭システム。
[6]
前記水素イオン指数の測定値を補正する補正部をさらに備える、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システム。
[7]
前記水質測定部が、前記複数のユニットのうち少なくとも一つに備えられている、
[1]~[6]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システム。
[8]
前記排出部が、前記フィルターによるアンモニア成分の除去率に基づいて、前記排出部が排出する水の量を増加又は減少させる、
[1]~[7]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システム。
[9]
[1]~[8]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システムを備える畜舎。
[10]
[1]~[8]のいずれか一つに記載の除塵脱臭システムを用いる除塵脱臭方法。
【符号の説明】
【0121】
1 第1のユニット
11 第1のフィルター
12 第1の散水部
13 第1の水槽部
14 第1の水移送部
15 水質測定部
2 第2のユニット
21 第2のフィルター
22 第2の散水部
23 第2の水槽部
24 第2の水移送部
41 演算部
42 制御部
43 記憶部
44 通信部
45 排水量測定部
46 補正部
51 第1の配管
52 第2の配管
53 第3の配管
54 第4の配管
55 空気槽
56 センサ
A 除塵脱臭システム
B 畜舎
B5 排気ファン
X 気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12