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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142760
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】高分子処理用工程液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220922BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20220922BHJP
   C11D 7/28 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L21/304 622P
C11D7/50
C11D7/28
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038233
(22)【出願日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0033882
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン・スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ハン-ビョル
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソン-シク
(72)【発明者】
【氏名】キム・テ-ヒ
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
【Fターム(参考)】
4H003DA05
4H003DB03
4H003EB19
4H003EB22
4H003EB24
4H003ED30
4H003ED31
4H003ED32
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA16
5F057AA04
5F057AA28
5F057BA11
5F057BA30
5F057BB40
5F057CA25
5F057CA36
5F057DA40
5F057EC29
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】半導体製造工程において、ウエハの回路面に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも多様な種類の金属に対するダメージは防止できる高分子処理用工程液組成物を提供する。
【解決手段】高分子処理用工程液組成物は、フッ素化合物;ケトン系溶媒;および極性非プロトン性溶媒を含み、前記ケトン系溶媒は、化学式1または化学式2で表される化合物からなる群より選択される1種以上である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物;
ケトン系溶媒;および
極性非プロトン性溶媒を含み、
前記ケトン系溶媒は、下記化学式1または下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される1種以上である、高分子処理用工程液組成物。
【化1】

(前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、RとRは、環を形成してもよい。)
【化2】

(前記化学式2において、
およびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、
は、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項2】
前記ケトン系溶媒は、炭素数の合計が3個以上30個以下の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項3】
前記ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合比率は、1:9~9:1であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項4】
前記ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter)値の範囲は、次を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
δ:15.5~19.0[MPa1/2
δ:7.5~15.5[MPa1/2
δ:4.5~9.5[MPa1/2
【請求項5】
前記ケトン系溶媒は、2-ブタノン、ジシクロプロピルケトン、シクロプロピルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、3-ペンタノン、2-ペンタノン、3-メチル-2-ペンタノン、アセチルアセトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、3-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジシクロケトン、1-シクロペンチルエタノン、3-メチル-2-ヘキサノン、2-メチル-3-ヘキサノン、イソアミルケトン、アミルケトン、4-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-ヘプタノン、5-ノナノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、エチル-イソブチルケトン、3,5-ジメチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、3-オクタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘプタノン、3-メチル-4-ヘプタノン、2,5-ジメチル-3-ヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘキサノン、2-ウンデカノン、および2,6-ジメチル-4-ヘプタノンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項6】
前記フッ素化合物は、フッ化アルキルアンモニウム、フッ化アルキルホスホニウム、およびフッ化アルキルスルホニウムから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項7】
極性非プロトン性溶媒は、アミド系溶媒、モルホリン系溶媒、ピロリジン系溶媒、ピロリドン系溶媒、ウレア系溶媒、ラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホスフェート系溶媒、オキサゾリドン系溶媒、およびピペラジン系溶媒から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項8】
組成物の総重量に対して、
前記フッ素化合物0.1~30重量%;および
前記ケトン系溶媒5~90重量%を含む、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【請求項9】
前記高分子処理用工程液は、網状型高分子および線状高分子を除去するものである、請求項1に記載の高分子処理用工程液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層の損傷を最小化できる高分子処理用工程液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程において、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」ともいう)の表面に電子回路などを形成した後、ウエハの厚さを薄くするためにウエハの裏面研削(バックグラインディング)を行う場合がある。この場合、ウエハの回路面の保護、ウエハの固定などのために、通常、ウエハの回路面にシリコーン高分子などの接着ポリマーを介在して支持体を付着させる。支持体をウエハの回路面に付着させると、ウエハの裏面研削後に厚さが薄くなったウエハを補強することができ、ウエハの研削面に裏面電極などを形成することもできる。
【0003】
前記ウエハの裏面研削、裏面電極形成などの工程が完了すれば、ウエハの回路面から支持体を除去し、接着ポリマーを剥離して除去し、ウエハを切断してチップを作製する。
【0004】
一方、最近は、ウエハを貫通して設ける貫通電極(例えば、シリコン貫通電極)を用いたチップ積層技術が開発されている。このチップ積層技術によれば、従来のワイヤの代わりに、貫通電極を用いて複数のチップの電子回路を電気的に接続する。したがって、チップの高集積化、動作の高速化を図ることができる。このチップ積層技術を利用する場合、複数のチップが積層された集合体の厚さを薄くするためにウエハの裏面研削を行う場合が多く、それによって、支持体や接着ポリマーを用いる機会が増加する。
【0005】
ところが、通常、ウエハの回路面に接着ポリマーを介在して支持体を付着させた後、前記ウエハと支持体との強固な付着のために熱硬化を実施するため、接着ポリマーを剥離する場合、硬化した接着ポリマーが支持体およびウエハの回路面に残存する場合が発生する。そのため、前記ウエハの回路面に残存する硬化した接着ポリマーを効率的に除去しながらもウエハや金属膜に対する損傷は防止できる手段が必要である。
【0006】
一方、米国登録特許第6,818,608号は、(a)有機-フッ素成分、(b)可溶性アミン成分、および前記成分aおよびbのための溶媒を含む硬化性重合樹脂溶解用組成物に関する発明である。しかし、前記文献によれば、アミン化合物の使用によって時間によるER dropが発生し、網状型高分子に対する除去速度が遅かったり、線状高分子の除去性が低下し、金属層の損傷が発生する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国登録特許第6,818,608号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を改善するためのものであって、半導体製造工程において、ウエハの回路面に残存する網状型高分子および線状高分子などの接着ポリマーを残留物なしに優れた速度で除去しながらも金属層の損傷を最小化し、優れた相安定性を示すことができる高分子処理用工程液を提供することを目的とする。
【0009】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フッ素化合物;ケトン系溶媒;および極性非プロトン性溶媒を含み、前記ケトン系溶媒は、下記化学式1または下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される1種以上である、高分子処理用工程液組成物を提供する。
【化1】

(前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、RとRは、環を形成してもよい。)
【化2】

(前記化学式2において、
およびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、
は、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基である。)
【0011】
一実施例として、前記ケトン系溶媒は、炭素数の合計が3個以上30個以下の化合物を含むことを特徴とする。
【0012】
一実施例として、前記ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合比率は、1:9~9:1であることを特徴とする。
【0013】
一実施例として、前記ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter)値の範囲は、次を満たすことを特徴とする。
δ:15.5~19.0[MPa1/2
δ:7.5~15.5[MPa1/2
δ:4.5~9.5[MPa1/2
【0014】
一実施例として、前記ケトン系溶媒は、2-ブタノン、ジシクロプロピルケトン、シクロプロピルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、3-ペンタノン、2-ペンタノン、3-メチル-2-ペンタノン、アセチルアセトン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、3-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジシクロケトン、1-シクロペンチルエタノン、3-メチル-2-ヘキサノン、2-メチル-3-ヘキサノン、イソアミルケトン、アミルケトン、4-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-ヘプタノン、5-ノナノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、エチル-イソブチルケトン、3,5-ジメチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、3-オクタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘプタノン、3-メチル-4-ヘプタノン、2,5-ジメチル-3-ヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘキサノン、2-ウンデカノン、および2,6-ジメチル-4-ヘプタノンから選択される1種以上であることを特徴とする。
【0015】
一実施例として、前記フッ素化合物は、フッ化アルキルアンモニウム、フッ化アルキルホスホニウム、およびフッ化アルキルスルホニウムから選択される1種以上であることを特徴とする。
【0016】
一実施例として、極性非プロトン性溶媒は、アミド系溶媒、モルホリン系溶媒、ピロリジン系溶媒、ピロリドン系溶媒、ウレア系溶媒、ラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホスフェート系溶媒、オキサゾリドン系溶媒、およびピペラジン系溶媒から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0017】
一実施例として、組成物の総重量に対して、前記フッ素化合物0.1~30重量%;前記ケトン系溶媒5~90重量%;および前記極性非プロトン性溶媒残量;を含むことができる。
【0018】
一実施例として、前記高分子処理用工程液は、網状型高分子および線状高分子を除去するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、半導体製造工程において、ウエハの回路面に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属層のダメージは防止できる高分子処理用工程液組成物を提供する。具体的には、本発明の高分子処理用工程液組成物は、特定構造のケトン系溶媒を用いる時、極性非プロトン性溶媒とシナジー効果を示すことにより、網状型高分子および線状高分子を残留物なしに優れた速度で除去可能であり、バンプボールダメージも最小化できるだけでなく、Ni、Cu、Alなどの金属層のダメージを防止することができ、優れた相安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、フッ素化合物、ケトン系溶媒、および極性非プロトン性溶媒を含む、高分子処理用工程液組成物に関し、半導体ウエハの回路面や金属層上に残存する接着ポリマーに対する除去力を向上させながらも金属に対するダメージは防止することができる。
【0021】
前記接着ポリマーは、シリコーン系樹脂を含むものであって、線状の非反応性ポリジメチルシロキサン系高分子だけでなく、硬化により網状型高分子を形成するポリオルガノシロキサン樹脂を含むことができる。
【0022】
本発明において、高分子処理用工程液組成物は、高分子洗浄液、高分子剥離液、および高分子エッチング液を含むもので、高分子洗浄液が最も好ましい。
【0023】
本願明細書全体において、アルキル基とは、単結合によって連結された炭化水素基を意味する。
【0024】
<高分子処理用工程液組成物>
本発明の高分子処理用工程液組成物は、フッ素化合物;ケトン系溶媒;および極性非プロトン性溶媒を含むことができ、その他の添加剤をさらに含むことができる。本発明の高分子処理用工程液組成物は、フッ素化合物に、特定化学式構造のケトン系溶媒および極性非プロトン性溶媒をすべて含み、特に、特定構造のケトン系溶媒を用いる時、極性非プロトン性溶媒とシナジー効果があることに特徴がある。
【0025】
本発明は、前記2種の溶媒の比率調節により溶解度パラメータを調節することができ、溶解度パラメータの範囲を満たす時、特に本発明の効果が向上する。
【0026】
本発明において、ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合比率は、1:9~9:1であり、前記1:9~9:1の混合比率を有する混合溶媒のハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter)値の範囲は、次の条件を満たす場合がさらに好ましい。
δ:15.5~19.0[MPa1/2
δ:7.5~15.5[MPa1/2
δ:4.5~9.5[MPa1/2
【0027】
本明細書全体において、δは、分散力による溶解度パラメータを意味し、δは、双極子-双極子引力による溶解度パラメータを意味し、δは、水素結合力による溶解度パラメータを意味する。
【0028】
前記混合溶媒のハンセン溶解度パラメータ値は、各構成溶媒の体積分率から下記式により計算される。
δblend=Σ[φcomponent×δcomponent
【0029】
本発明の前記ケトン系溶媒と極性非プロトン性溶媒とが一定比率で混合される場合、組成物に存在する水分子とフッ素化合物との水素結合を抑制することにより、洗浄時に露出する金属膜質に対する腐食性を抑制する役割を果たす。
【0030】
また、本発明による高分子処理用工程液は、人為的に水が投入されないものであって、実質的に水を含まないことが好ましい。ただし、必要に応じてフッ素化合物の水和物が使用可能であり、これにより、結果的に少量の水を含むことができる。この場合、前記少量の水は、組成物の総重量に対して4重量%未満で含まれ、水を任意に投入する場合、シリコーン樹脂などの高分子に対する除去性が低下し、金属膜の損傷は増加する問題が発生しうる。
【0031】
また、本発明の高分子処理用工程液は、アルコール系化合物などのように分子構造内にヒドロキシド(-OH)グループを含む化合物を含まないことが好ましい。分子構造内にヒドロキシドグループを含む場合、フッ素化合物の活性を阻害してシリコーン樹脂の除去性を低下させる問題が発生しうる。
【0032】
(a)フッ素化合物
本発明の高分子処理用工程液は、1種以上のフッ素系化合物を含み、前記フッ素系化合物は、シリコーン高分子の環を切って分子量を減少させる役割を果たす。
【0033】
本発明のフッ素系化合物は、フッ化アルキルアンモニウム、フッ化アルキルホスホニウム、およびフッ化アルキルスルホニウムからなる群より選択される化合物を1種以上含むことができる。
【0034】
前記フッ化アルキルアンモニウムは、下記化学式3または4で表される化合物を含むものであってもよい:
【化3】

前記化学式3において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数3~10のアルキル基である。前記R~Rが炭素数2以下のアルキル基の場合、溶媒に対するフッ素系化合物の溶解度が低下して、混合してすぐに析出が発生したり、やや時間が経過した後に析出が発生する問題が発生する。
【化4】

前記化学式4において、R10~R12は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である。
【0035】
例えば、前記フッ化アルキルアンモニウムとしては、テトラブチルアンモニウムビフルオライド(TBAF・HF)、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、テトラオクチルアンモニウムフルオライド(TOAF)、またはベンジルトリメチルアンモニウムフルオライド(BTMAF)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、前記フッ化アルキルアンモニウムは、フッ化アルキルアンモニウムフルオライド・n(HO)のように水和物形態で存在することができ、ここで、nは、5以下の整数である。その例としては、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドハイドレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライドトリハイドレート、またはベンジルトリメチルアンモニウムフルオライドハイドレートなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0037】
さらに、前記フッ化アルキルホスホニウムは、下記化学式5で表される化合物を含むものであってもよい:
【化5】

前記化学式5において、R13~R16は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、または炭素数6~20の芳香族炭化水素である。
【0038】
例えば、前記フッ化アルキルホスホニウムとしては、テトラブチルホスホニウムフルオライド、トリエチルオクチルホスホニウムフルオライド、またはセチルトリメチルホスホニウムフルオライドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、前記フッ化アルキルスルホニウムは、下記化学式6で表される化合物を含むものであってもよい:
【化6】

前記化学式6において、R17~R19は、それぞれ独立して、炭素数1~22の脂肪族炭化水素、炭素数6~20の芳香族炭化水素である。
【0040】
例えば、前記フッ化アルキルスルホニウムとしては、トリブチルスルホニウムフルオライド、トリオクチルスルホニウムフルオライド、またはn-オクチルジメチルスルホニウムフルオライドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記フッ素化合物は、前記高分子処理用工程液組成物の総重量に対して0.1~30重量%含まれ、好ましくは0.5~20重量%含まれる。前記フッ素化合物が0.1重量%未満で含まれる場合、電子部品などに付着したシリコーン系樹脂を効果的に除去できない問題が発生し、30重量%を超える場合は、経時による水分含有量が増加して、むしろシリコーン樹脂の除去性能の低下が懸念され、フッ化物の増加による金属膜質の腐食を制御しにくい問題が発生しうる。
【0042】
(b)ケトン系溶媒
本発明において、ケトン系溶媒は、シリコーン高分子を膨張させ、フッ素化合物と分解されたシリコーン高分子を溶解させる役割を果たし、後述する極性非プロトン性溶媒との組み合わせにより多様な種類の金属に対する腐食抑制効果を向上させることができる。特に、本発明の特定構造を有するケトン系溶媒は、UVまたは熱によって硬化したシリコーン高分子表面の浸透性を向上させる役割に優れている。
【0043】
前記ケトン系溶媒は、下記化学式1または下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される1つ以上であってもよい。本発明のケトン系溶媒は、ケトン官能基を中心に両側のアルキル基(炭化水素基)と酸素原子の非共有電子対によって双極子モーメントを有する。求核体と水素結合をしない極性非プロトン性溶媒を用いて求核体の反応性が確保され、当該求核体とケトン基の分極現象による相互作用が追加的に発生して求核体が腐食を誘発する結合形態を作らないように抑制する役割を果たす。これは、ケトン系溶媒の中でも特定構造に限って現れる効果である。
【0044】
【化7】

前記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、RとRは、環を形成してもよい。RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、同一であることがより好ましい。
【化8】

前記化学式2において、RおよびRは、それぞれ独立して、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基、またはC3~C18の環状脂肪族炭化水素基であり、Rは、C1~C18の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基である。RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、同一であることがより好ましい。
【0045】
ケトン系溶媒は、炭素数の合計が3個以上30個以下の化合物を含むことが好ましく、その中でも、炭素数の合計が3個以上10個以下の化合物の方が、フッ素化合物の溶解、極性非プロトン性溶媒との混和性、シリコーン高分子に対する浸透性を考慮する場合、さらにより好ましい。特に、前記ケトン系溶媒は、前記化学式1または2の構造が左右対称をなす方が、相安定性の面でさらに好ましい。例えば、前記化学式1で表される化合物の場合、ケトン官能基を中心に左右対称をなすことが好ましく、前記化学式2で表される化合物の場合、Rを中心に左右対称をなすことが好ましい。
【0046】
例えば、前記ケトン系溶媒は、2-ブタノン、3-メチル-2-ブタノン、ジシクロプロピルケトン、シクロプロピルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、3-ペンタノン、2-ペンタノン、3-メチル-2-ペンタノン、アセチルアセトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、3-ヘキサノン、2-ヘキサノン、1-シクロペンチルエタノン、3-メチル-2-ヘキサノン、2-メチル-3-ヘキサノン、イソアミルケトン、アミルケトン、4-ヘプタノン、3-ヘプタノン、2-ヘプタノン、5-ノナノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、エチル-イソブチルケトン、3,5-ジメチルシクロヘキサノン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、3-オクタノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘプタノン、3-メチル-4-ヘプタノン、2,5-ジメチル-3-ヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘキサノン、2-ウンデカノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンなどがあり得、好ましくは、2-ブタノン、3-メチル-2-ブタノン、ジシクロプロピルケトン、シクロプロピルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、3-ペンタノン、アセチルアセトン、4-ヘプタノン、5-ノナノン、5-メチル-2-ヘキサノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記ケトン系溶媒は、高分子処理用工程液組成物の総重量に対して5~90重量%含まれ、好ましくは10~85重量%含まれる。前記ケトン系溶媒が10重量%未満で含まれると、フッ素化合物による金属膜質が腐食を抑制する効果が不足し、追加的にシリコーン高分子の浸透性が不足して目標とする除去性を達成しにくい。ケトン系溶媒の含有量が90重量%を超える場合には、金属膜質の腐食を抑制できない問題が発生しうる。
【0048】
(c)極性非プロトン性溶媒
シリコーン高分子を膨張させ、フッ素化合物と分解されたシリコーン高分子を溶解させる役割を果たし、当該溶媒は、特にフッ素化合物によって分解されたシリコーンオリゴマーを溶解させる役割に優れている。
【0049】
前記極性非プロトン性溶媒は、高分子処理用工程液組成物の総重量に対して、ケトン系溶媒とフッ素化合物を除いた残量で含まれる。
【0050】
前記極性非プロトン性溶媒は、アミド系溶媒、ピリジン系溶媒、モルホリン系溶媒、ピロリジン系溶媒、ピロリドン系溶媒、ウレア系溶媒、ラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホスフェート系溶媒、オキサゾリドン系溶媒、ピペラジン系溶媒などに含まれるものであってもよい。その中でも、アミド系溶媒、ピリジン系溶媒、ピロリドン系溶媒、ラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホスフェート系溶媒、オキサゾリドン系溶媒がさらにより好ましい。
【0051】
前記アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルブチルアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、またはN,N-ジブチルプロパンアミドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記ピリジン系溶媒は、下記化学式7で表される化合物を含むものであってもよい:
【化9】

前記化学式7において、R20~R22は、それぞれ独立して、水素、C1~C10の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)、アルデヒド基(-CHO)、アセトアルデヒド基(-COCH)、C1~C4のアルコキシ基、ビニル基、アセチレン基、シアノ基(-CN)、またはメチルスルフィド基(-SCH)であってもよい。
【0053】
例えば、前記ピリジン系溶媒としては、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、4-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、4-イソプロピルピリジン、4-アミルピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、または2,4,6-トリメチルピリジンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0054】
前記モルホリン系溶媒は、下記化学式8で表される化合物を含むものであってもよい:
【化10】

前記化学式8において、R23は、水素;C1~C6の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基;ビニル基;シアノ基(-CN);3級アミンによって置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基;C1~C4のアルキル基、シアノ基(-CN)、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br、I)、またはアルデヒド基(-CHO)によって置換されたフェニル基またはピリジン基であり、Xは、酸素または-NR24-であり、R24は、C1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0055】
例えば、前記モルホリン系溶媒としては、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-アリールモルホリン、N-ブチルモルホリン、N-イソブチルモルホリンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記ピロリジン系溶媒としては、例えば、1-エチルピロリジン、1-プロピルピロリジン、1-ブチルピロリジン、タートブチルピロリジン、1-(1-フェニルペンタン-2イル)ピロリジン、1-(シクロヘキセン-1-イル)ピロリジンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記ピロリドン系溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、またはN-ビニルピロリドン(NVP)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記ウレア系溶媒は、下記化学式9で表される化合物を含むものであってもよい:
【化11】

前記化学式9において、Xは、酸素または-NR24-であり、R24およびR25は、それぞれ独立して、C1~C6の直鎖、分枝鎖もしくは環状脂肪族炭化水素基;またはビニル基、フェニル基、アセチレン基、メトキシ基、またはジメチルアミノ基が置換されたC1~C4の脂肪族炭化水素基である。
【0059】
例えば、前記ウレア系溶媒としては、テトラメチルウレア、テトラエチルウレア、テトラブチルウレアなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記ラクトン系溶媒としては、例えば、ベータブチロラクトン、ガンマブチロラクトン、ガンマカプロラクトン、ガンマヘプタノラクトン、ガンマオクタノラクトン、ガンマノナラクトン、ガンマデカノラクトン、デルタカプロラクトン、デルタヘプタノラクトン、デルタオクタノラクトン、デルタノナラクトン、デルタデカノラクトン、デルタドデカノラクトンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0061】
前記スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、またはメチルフェニルスルホキシドなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記ホスフェート系溶媒は、下記化学式10で表される化合物を含むものであってもよい:
【化12】

前記化学式10において、R26~R28は、それぞれ独立して、C1~C8の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素基;隣接する酸素と共に環を形成するC3~C8の2価の脂肪族炭化水素基;非置換またはC1~C4の脂肪族炭化水素基によって置換されたフェニル基;ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)によって置換されたC2~C4の脂肪族炭化水素基またはハロゲンによって置換されたフェニル基である。
【0063】
例えば、前記ホスフェート系溶媒としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、トリアリールホスフェート(triallyl phosphate)などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記オキサゾリドン系溶媒としては、例えば、2-オキサゾリドン、3-メチル-2-オキサゾリドンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記ピペラジン系溶媒としては、例えば、ジメチルピペラジン、ジブチルピペラジンなどがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0066】
(d)その他の添加剤
本発明の高分子処理用工程液の高分子除去性能を阻害しない範囲で、前記成分のほか、この分野にて通常使用される腐食防止剤、界面活性剤などの成分をさらに含むことができる。
【0067】
前記腐食防止剤は、樹脂の除去時、金属含有下部膜の腐食を効果的に抑制するために使用されるものであって、一般的に各種供給源から商業的に入手可能であり、追加の精製なく使用可能である。
【0068】
前記界面活性剤は、洗浄特性強化のために使用できる。例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を用いることができるが、その中でも特に、湿潤性に優れ、気泡発生がより少ない非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、これらは、1種または2種以上を混合して使用可能である。
【0069】
本発明の高分子処理用工程液組成物を用いる場合、デバイスウエハを薄くするために、キャリアウエハとデバイスウエハとの間にシリコーン接着剤とシリコーン離型層を形成して半導体基板を薄くする工程において、シリコーン離型層は、工程後にキャリアウエハを除去する過程で分離が起こる位置でデバイスウエハの破損を引き起こさない。前記シリコーン接着剤は、デバイスウエハとキャリアウエハとを接着するもので、硬化過程を経たものであってもよい。
【0070】
また、本発明の高分子処理用工程液組成物は、前記工程でデバイスウエハ上にシリコーン残留物を除去するためのもので、本発明の高分子処理用工程液組成物の除去対象は、シリコーン系樹脂であってもよく、網状型高分子および線状高分子のうちの1つ以上であってもよいし、具体的には、線状の非反応性ポリジメチルシロキサン系高分子だけでなく、硬化により網状型高分子を形成するポリオルガノシロキサン樹脂を含む。
【0071】
さらに、本発明は、本発明による高分子処理用工程液組成物を用いたデバイスからの高分子除去方法を提供する。本発明による高分子除去方法は、本発明による高分子処理用工程液組成物について述べた内容をすべて適用することができ、重複する部分については詳細な説明を省略したが、その説明が省略されたとしても同一に適用可能である。
【0072】
具体的には、前記高分子除去方法は、デバイスウエハを薄くする工程で使用されるシリコーン接着剤のような高分子を除去するためのものであって、デバイスウエハを薄くする工程は、キャリアウエハとデバイスウエハとの間にシリコーン接着剤とシリコーン離型層を形成して半導体基板を薄くする工程を含む。前記シリコーン離型層は、工程後、キャリアウエハを除去する過程で分離が起こる位置でデバイスウエハの破損を引き起こさない。前記シリコーン接着剤は、デバイスウエハとキャリアウエハとを接着するものであって、硬化過程を経る。このような工程後、硬化した高分子を本発明による高分子処理用工程液組成物を用いて除去する。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は下記の実施例によって限定されず、多様に修正および変更可能である。本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲の技術的思想によって定められる。
【0074】
実施例1~15および比較例1~5:高分子処理用工程液組成物の製造
下記表1に記載の成分および組成比によって高分子処理用工程液組成物を調製した。
【0075】
【表1】
【0076】
<フッ素化合物>
A)TBAF・HF:テトラブチルアンモニウムビフルオライド
B)TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオライドトリハイドレート
C)BTMAF:ベンジルテトラメチルアンモニウムフルオライドハイドレート
D)テトラブチルホスホニウムフルオライド
E)トリブチルスルホニウムフルオライド
【0077】
また、前記実施例1~15および比較例1~5の高分子処理用工程液組成物のハンセン溶解度パラメータ値は、下記表2にまとめた。
【0078】
【表2】
【0079】
実験例
前記実施例および比較例の高分子処理用工程液組成物に対してそれぞれ次の方法で実験を進行させて、その結果を下記表3に示した。
【0080】
実験例1:薄膜基板の除去性評価1(網状型高分子)
硬化したシリコーン高分子が50μmの厚さにコーティングされたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを1分間浸漬し、IPA洗浄後、乾燥した。評価後、SEMで硬化したシリコーン高分子の膜厚を測定した。その後、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で残存するシリコーン系樹脂の膜厚を測定して、除去速度を下記数式1のように算出して、下記の評価基準により表3にまとめた。
【0081】
[数式1]
除去速度(μm/min)=[評価前の厚さ(μm)-評価後の厚さ(μm)]/評価時間(min)
<評価基準>
○:除去速度20μm/min以上
△:除去速度10μm/min以上20μm/min未満
X:除去速度10μm/min未満
【0082】
実験例2:薄膜基板の除去性評価2(線状PDMS)
ポリジメチルシロキサンのプレポリマーと硬化剤とを所定の質量比で混合したブレンドをシリコンウエハ上にスピンコーティングし、2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意させたサンプルを1分間浸漬し、IPA洗浄後、乾燥した。評価後、光学顕微鏡とSEMでウエハ表面の残留物を観察した。
【0083】
残留物の発生の有/無により、以下のように下記表3に表記した。
<評価基準>
○:残留物無し
X:残留物有り
【0084】
実験例3:金属膜の腐食評価1(バンプボールダメージ)
本発明の高分子処理用工程液組成物が防食効果を示す金属は、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Ag-Cu合金を含むSn合金であるか、Sn/Cu、Sn/Ni、Sn/Ni/Cu、Sn-Ag/Cu、Sn-Ag/Ni、Sn-Ag/Ni/Cu、Sn-Au/Cu、Sn-Au/Ni、Sn-Au/Ni/Cu、Sn-Ag-Cu/Ni、Sn-Ag-Cu/Ni/Cu、Sn-Ag-Cu/Cuなどで構成された二重膜または三重膜、またはCu単独からなる金属膜であってもよいし、これに限定されない。
【0085】
代表的に、Sn-Ag/Cuで構成されたバンプボール(Bump ball)が形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを60分間浸漬した後、IPA洗浄後、乾燥した。評価後、SEMでBump ball damageの個数を確認し、ダメージの発生個数を下記の基準により下記表3にまとめた。
<評価基準>
○:5個未満
△:5個以上20個未満
X:20個以上発生
【0086】
実験例4:金属膜の腐食評価2(金属膜ダメージ)
また、ニッケルめっき膜、銅薄膜、アルミニウム薄膜がそれぞれ形成されたウエハを2×2cmの大きさに切断して用い、25℃の組成液を400rpmで回転させながら用意されたサンプルを60分間浸漬し、IPA洗浄後、乾燥した。そして、評価後、光学顕微鏡でパッドディフェクト(Defect)を確認した後、下記の基準により下記表3に表記した。
<評価基準>
○:表面モルフォロジー変化および変色無し
△:変色有り
X:変色および表面モルフォロジー変化有り
【0087】
実験例5:相安定性評価
フッ素化合物と溶媒混合物の相安定性を判断するために、40℃の条件で1週間保管後、層分離または析出物の発生の有無を追加確認して、下記の基準により下記表3に表記した。
<評価基準>
○:相安定性問題無し
△:時間経過時に析出物発生
X:層分離または析出物発生
【0088】
【表3】
【0089】
表3を参照すれば、本発明の実施例1~15の高分子処理用工程液組成物は、特定構造のケトン系溶媒を用いる時、極性非プロトン性溶媒とシナジー効果を示すことにより、網状型高分子および線状高分子を残留物なしに優れた速度で除去可能であり、バンプボールダメージも最小化できるだけでなく、Ni、Cu、Alなどの金属層のダメージを防止することができ、優れた相安定性を示すことを確認することができる。
【0090】
これに対し、ケトン系溶媒および極性非プロトン性溶媒とのシナジー効果を期待できない比較例1~5の場合、高分子除去性能が低下したり、バンプボールダメージまたは金属層のダメージを示すことを確認することができる。具体的には、比較例1は、極性非プロトン性溶媒を用いずにケトン系溶媒のみ使用したもので、比較例2はおよび3は、ケトン系溶媒を用いずに極性非プロトン性溶媒のみを使用したものであり、いずれも金属ダメージが増加した。特に、本発明の溶解度パラメータの範囲を大きく外れる比較例3の場合、高分子除去性能も著しく低下した。比較例4は、極性非プロトン性ではない一般の溶媒を用いたものであって、網状型および線状高分子の除去性能が著しく低下し、金属のダメージも大きくなった。2種の極性非プロトン性溶媒が用いられた比較例5の場合、網状型高分子の除去性能が低下し、金属ダメージも大きいことを確認することができた。