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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142794
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】背部支持ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20220922BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220922BHJP
   A41C 1/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A41D13/05 131
A41D13/05 112
A41D13/05 125
A41C1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022105225
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2021500557の分割
【原出願日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】102018211431.5
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】511180639
【氏名又は名称】バウアーファインド アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Bauerfeind AG
【住所又は居所原語表記】Triebeser Str. 16, 07937 Zeulenroda-Triebes, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シールマイスター,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ホルター,トニ
(72)【発明者】
【氏名】バウアーファインド,ハンス ベー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腰痛の治療および予防のための背部装具において、着用が容易であり、着用中の骨盤フレームの移動が防止される背部支持ベルトシステムまたは横臥用装具を提供する。
【解決手段】骨盤ベルト30と、そこから伸長する2つの個別の左ショルダストラップループ24および右ショルダストラップループ22とを備える。それらショルダストラップループは、背面および胸郭領域において互いに交差し、骨盤ベルトとショルダストラップループに同時に張力を付与するために、張力ストラップ介して骨盤ベルトに接続されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の骨盤に装着される伸縮可能で、装着状態において腰椎/仙骨領域に配置することができる中央部分(31)と、そこから横方向に伸長し、左の骨盤ベルト端部(33)を有する左の側部(32)と、そこから横方向に伸長し、右の骨盤ベルト端部(35)を有する右の側部(34)とを有し、前記骨盤ベルト端部(33、35)が装着のために張力付与下で互いに接続可能である骨盤ベルト(30)と、
前記着用者の右肩の上に装着され、その第1の端部(23)とその第2の端部(26)を経由して前記骨盤ベルト(30)の前記左の側部(32)にのみ接続される右ショルダストラップループ(22)と、
前記着用者の左肩の上に装着され、その第1の端部(25)とその第2の端部(27)を経由して前記骨盤ベルト(30)の前記右の側部(34)にのみ接続される左ショルダストラップループ(24)と、
を備え、
前記右および左のショルダストラップループ(22、24)は、それぞれ第1の張力ストラップ(52、54)を経由して少なくともそれらの第1の端部(23、25)において前記骨盤ベルト(30)に接続され、
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)は、前記左の側部(32)に配置されている少なくとも1つの第1の左偏向要素(62)を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト(30)上に沿ってまたは前記骨盤ベルト(30)の中を前記骨盤ベルト端部(33、35)に向かってスライド方式で延び、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)は、前記右の側部(34)に配置されている少なくとも1つの第1の右偏向要素(64)を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト(30)上に沿ってまたは前記骨盤ベルト(30)の中を前記骨盤ベルト端部(33、35)に向かってスライド方式で延びる背部装具。
【請求項2】
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)が、前記左の側部(32)に配置されている第1の左偏向要素(62)を経由して延び、前記中央部分(31)を横切り、前記骨盤ベルト(30)の前記右の側部(34)上に沿ってまたは前記右の側部(34)の中を前記右の骨盤ベルト端部(35)に向かってスライド方式で延び、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)が、前記右の側部(34)上の第1の右偏向要素(64)を経由して延び、前記中央部分(31)を横切り、前記骨盤ベルト(30)の前記左の側部(32)上に沿ってまたは前記左の側部(32)の中を前記左の骨盤ベルト端部(33)に向かってスライド方式で延びる、請求項1に記載の背部装具。
【請求項3】
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)が、前記左の側部(32)に配置されている第1の左偏向要素(62)を経由して延び、前記第1の左偏向要素(62)から、前記中央部分(31)方向に、前記中央部分(31)に配置されている第2の左偏向要素(63)まで延び、そこから前記左の側部(32)に沿って前記左の骨盤ベルト端部(33)まで延び、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)が、前記右の側部(34)に配置されている第1の右偏向要素(64)を経由して延び、前記第1の右偏向要素(64)から、前記中央部分(31)方向に、前記中央部分(31)に配置されている第2の右偏向要素(65)まで延び、そこから前記右の側部(32)に沿って前記右の骨盤ベルト端部(33)まで延びる、請求項1に記載の背部装具。
【請求項4】
前記右ショルダストラップループ(22)および前記左ショルダストラップループ(24)が、前記装着状態で背側中央上部の交差点(41)において、前記装着状態で背側中央下部の交差点(43)において、および前記装着状態で2つの横の交差点(42、44)において互いに交差する、請求項1から3のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項5】
前記張力ストラップ(52、54)がそれぞれ、前記張力ストラップ(52、54)に張力を付与するために、前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに直接固定することができる張力ストラップの自由端(55)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項6】
前記ショルダストラップループ(22、24)が、前記張力ストラップ(52、54)を介して張力を付与可能であり、スライド方式で前記側部(32、34)上を延び、前記背部装具が装着されて前記骨盤ベルト(30)が閉じられたとき、前記骨盤ベルト(30)の伸長を介して前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに固定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項7】
前記ショルダストラップループ(22、24)が、前記張力ストラップ(52、54)を介して個別に張力を付与可能であり、前記背部装具が前記装着状態にあって前記骨盤ベルト(30)が閉じられたとき、前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに固定することができる、請求項1から6のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項8】
前記閉じられた骨盤ベルト(30)が、前記背部装具の装着状態において、前記ショルダストラップループ(22、24)の前記張力ストラップ(52、54)を介して付加的にさらに張力を付与可能である、請求項6または7のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項9】
前記ショルダストラップループ(22、24)の前記第2の端部(26、27)がそれぞれ、左横および右横のアンカー(72、74)において前記左および右の側部(32、34)のそれぞれに接続され、前記左横および右横のアンカー(72、74)は、前記骨盤ベルト(30)が装着状態にあるとき、前記着用者の左および右腸骨稜(クリスタ腸骨)の領域上またはその領域の中に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項10】
少なくとも1つの偏向要素(62、64、63、65、66、67)が、個別に形成され、前記骨盤ベルト(30)に位置可変方式で接続可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項11】
前記ショルダストラップループ(22、24)の一端と前記張力ストラップ(52、54)との間に弾性ストラップ部分(80)が形成され、前記弾性ストラップ部分(80)の弾性が前記ショルダストラップループ(22、24)自体の弾性より高い、請求項1から10のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項12】
並行方式で案内される少なくとも1つの低弾性または非弾性ストラップ部分の形態の付加的な伸長リミッタが、前記弾性ストラップ部分(82、84)に形成される、請求項11に記載の背部装具。
【請求項13】
伸縮可能なベストまたはジャケット(90)と、請求項1から12のいずれか一項に記載の背部支持ベルトシステムと、を備え、
前記ショルダストラップループ(22、24)および前記骨盤ベルト(30)が、少なくとも部分的にベストまたはジャケット(90)に装着され、それに堅固に接続される防護服。
【請求項14】
背面への有害なストレスに対する保護のための請求項1から12のいずれか一項に記載の前記背部装具または請求項13に記載の前記防護服の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背部支持ベルトシステム、とりわけ腰痛の治療および防止用の背部装具または横臥用装具に関する。本システムは、骨盤ベルトとそこから伸長する2つの別個の左ショルダストラップおよび右ショルダストラップとを備え、それらのショルダストラップは、背面および胸郭領域で互いに交差し、骨盤ベルトおよびショルダストラップに同時に張力を付与するために、張力ストラップを介して骨盤ベルトに接続されている。
【背景技術】
【0002】
背部支持ベルトシステムは、上半身をまっすぐにするために、すなわち、例えば、骨粗鬆症の場合において、悪い姿勢および湾曲した脊椎の治療および矯正のために使用される。既知の背部支持ベルトシステムおよび装具は、患者、または広く着用者の骨盤または腰全体に張力が付与された状態で閉じることができ、その次に、背面に力を印加するための基盤を形成することが意図されている骨盤ベルトから基本的に構成されている。既知のシステムは、骨盤ベルトから伸長し、的を絞って力を印加することによって脊椎と空間的に関係する肩または脊椎下部との関連で脊椎上部を再配置または支持することが意図されているストラップまたはサポートレールも含む。これらの要素の相互作用により、着用者の脊椎が支持されて機械的に安定化され、とりわけ、肩および上部胸椎の領域でまっすぐにされる。ショルダストラップに張力をより付与するほど、肩がより後方へ引っ張られ、それによって、上半身をまっすぐにすることができると考えられている。
【0003】
背部支持ベルトシステムは、特に肩の領域で生成された力を意図的に吸収し、分散するので、荷を持ち上げて運ぶとき背面にかかるストレスを低減する、特に、過度のストレスの回避を増進することも目的としている。荷を持ち上げて運ぶとき、サポートベルトは、腕と肩を介して主に上半身に作用する力を直接骨盤または胴体に伝達することを目的としている。こうして、脊椎はバイパスされて軽減されると考えられる。さらに、背部支持ベルトシステムは、上半身の姿勢が過度に悪い場合に、着用者に有害で負担が大きい軽減姿勢をとっていることを気付かせて、安心感と安定感とを与えることを目的としている。そのため、背部支持ベルトシステムは、健常者の労働安全性をも目的としている。それと同時に、背部支持ベルトは、荷を持ち上げて運ぶとき、背面に対して好ましくない悪い姿勢を回避するために、制御された方法で動きをガイドし、制限すると考えられている。このことは、労働安全、リハビリテーション、および特定のスポーツ活動において役立つ。
【0004】
この種の既知の背部支持ベルトシステムまたは背部装具の不利な点は、構造が複雑であることであり、着用者が装着することを困難にしており、間違った使用をほとんど排除できていない理由となっている。サポート要素およびストラップを有する既知の帯具はたいてい剛性のある設計となっているので、サポート効果を達成するが、特定の適応状況、特別な治療要件および/または着用者の身体構造上の状況に対する個別の適合は、十分にはできていない。特に、特定のストレスがある場合、または装着中または装着後、背部支持ベルトシステムに張力を付与したときでさえも、ユーザの移動が、着用快適性に大きな悪影響を及ぼし、装具を実質的に無効にする可能性がある位置への背部支持ベルトシステムの身体上での好ましくない滑り(移動)という、特定の移動フェーズを引き起こす。特に、可動性に制限がある患者にとって、そのようなベルトシステムを着用すること、さらにサポート要素および骨盤ベルトが着用された後でも、サポート要素および骨盤ベルトに必要な張力を生成することは実際には困難である。十分なサポートのためにすでに設定されている装具、すなわち、予め張力を付与された装具をその張力付与の下で着用することも困難な場合がある。予め張力を付与されたショルダストラップは、着用中でも、それらが接続されている骨盤ベルトを不利に上方に、特に胸郭下部方向の腰部上部の中に引っ張る場合があるため、骨盤に機能的にフィットさせることがもはや達成できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が対処する技術的な課題は、このような背部支持ベルトシステムまたは横臥用装具等の背部装具を改善するという技術的な課題であり、その背部支持ベルトシステムは、そこから伸長する力導入ショルダストラップを有する骨盤ベルトフレームを含む基本的な構造に少なくとも基づいているので、着用者にとってそれを着用することがより容易であり、さらに、着用するとすぐにまたは使用中、特に、着用者が移動する間、そのシステム、特に骨盤フレームの移動が効果的に防止される。その結果、このようなシステムのサポート効果と軽減効果とが改善されると考えられるとともに、着用期間全体を通して維持することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的課題は、特許請求の範囲に従った新しいタイプの背部支持ベルトまたは背部装具の設計により完全に解決される。背部装具または背部支持ベルトシステムは、少なくとも以下の要素を備える。着用者の骨盤の周りに装着される少なくとも部分的に伸縮可能な骨盤ベルトは、装着状態において腰椎/仙骨領域に配置可能な中央部分と、そこから横方向に伸長し、装着時腹側に引っ張られる左の側部および右の側部と、本発明に従って、着用者の右肩の上に装着される、骨盤ベルトの左の側部のみから伸長する右ショルダストラップループと、本発明に従って、着用者の左肩の上に装着される、骨盤ベルトの右の側部のみから伸長する左ショルダストラップループとを有する。従って、ショルダストラップループの両方の端部が、対向する(反対側に位置する)骨盤ベルト側で始まる、すなわち、着用者の胴体を、背面と(背側で)着用者の腹部または胸部領域内の両方で横切るように設けられている。この場合、右ショルダストラップループと左ショルダストラップループとは、装着状態で背側中央上部の交差点において、装着状態で背側中央下部の交差点において、および特に、装着状態で2つの横の交差点においても、とりわけ胸郭または腰の領域においても互いに交差するように特に設けられている。
【0007】
本発明に従って、2つのショルダストラップループは、好適には、少なくとも1つの第1の偏向要素を介して、骨盤ベルトの側部のそれぞれに延びて方向変更される非弾性の張力ストラップを介して、それぞれ、それらの少なくとも一端において骨盤ベルトに接続されている。その結果、装備が装着されたとき、それは、スライド方式で骨盤ベルト上に沿ってまたは骨盤ベルトの中においても、骨盤ベルト端部のそれぞれに、すなわち、腹部に延びる。張力ストラップ(従って、それに接続されているショルダストラップループのそれぞれ)は、張力を付与可能であり、特に、骨盤ベルト端部のそれぞれに固定することができる。
【0008】
従って、本発明の第1の態様において、背部装具は、着用者の骨盤に装着される伸縮可能で、装着状態において、腰椎/仙骨領域に配置することができる中央部分と、そこから横方向に伸長して左の骨盤ベルト端部を有する左の側部と、そこから横方向に伸長して右の骨盤ベルト端部を有する右の側部と、を有し、前記骨盤ベルト端部が、装着のために張力付与下で互いに接続可能である骨盤ベルトと、着用者の右肩の上に装着され、その第1の端部とその第2の端部の両方を経由して、すなわち、専用に経由して、前記骨盤ベルトの前記左の側部にのみ接続される右ショルダストラップループと、着用者の左肩の上に装着され、その第1の端部とその第2の端部の両方を経由して前記骨盤ベルトの前記右の側部にのみ接続される左ショルダストラップループとを備え、ここで、前記右および左のショルダストラップループは、それぞれ、第1の張力ストラップを経由して少なくともそれらのそれぞれの第1の端部において前記骨盤ベルトに接続され、前記右ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップは、前記左の側部に配置されている少なくとも1つの第1の左偏向要素を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト上に沿ってまたは前記骨盤ベルトの中を前記骨盤ベルト端部に向かってスライド方式で延び、前記左ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップは、前記右の側部に配置されている少なくとも1つの第1の右偏向要素を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト上に沿ってまたは前記骨盤ベルトの中を前記骨盤ベルト端部に向かってスライド方式で延びるように設けられている。
【0009】
このために、第1の実施形態において、前記右ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップが、少なくとも前記左の側部に配置されている第1の左偏向要素を介して延び、前記中央部分を横切り、前記骨盤ベルトの前記右の側部上に沿ってまたは前記右の側部の中をスライド方式で前記右の骨盤ベルト端部に向かって延び、また、前記左ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップが、少なくとも前記右の側部上の第1の右偏向要素を介して延び、前記中央部分を横切り、前記骨盤ベルトの前記左の側部上に沿ってまたは前記左の側部の中をスライド方式で前記左の骨盤ベルト端部に向かって延びるように設けられている。
【0010】
前記第1の実施形態に代わるさらなる実施形態において、前記右ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップが、前記左の側部に配置されている前記少なくとも1つの第1の左偏向要素を経由して延び、前記第1の左偏向要素から、前記中央部分方向に、前記中央部分に配置されている少なくとも1つの第2の左偏向要素まで延び、そこから、前記左の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部まで延び、前記左ショルダストラップループの前記第1の張力ストラップが、前記右の側部に配置されている前記少なくとも1つの第1の右偏向要素を経由して延び、前記少なくとも1つの第1の右偏向要素から、前記中央部分方向に、前記中央部分に配置されている少なくとも1つの第2の右偏向要素まで延び、そこから、前記右の側部に沿って前記右の骨盤ベルト端部まで延びるように設けられている。
【0011】
本発明に従って、「張力ストラップ」は、主として、実質的に非弾性ストラップ、すなわち、織物ベルトの形態の耐引張性を有する可撓性のあるストラップを指す。チェーンまたはリンクベルト、可撓性ポリマーの固体材料から作られるストラップおよび金属バンド等の機能的に同等な設計品も本明細書中に含まれる。代わりに、個別のまたはパラレルコードまたは織り交ぜコードを組み合わせたテンションロープまたはテンションコードも指す。特に、前記張力ストラップが、特に前記ショルダストラップと比較して、伸縮可能ではない、すなわち、実質的に非弾性で耐引張性を有するように設けられている。
【0012】
本発明に従って、「偏向要素」は、主として、ストラップまたはロープを通過させて案内するアイレットまたはリングを指すが、取り付けられたローラまたはローラーブロックをも指す。用途の対象および特定の張力ストラップガイドによっては、滑り止めまたは滑りを改善するコーティングが設けられる場合がある(下記参照)。
【0013】
本事例において、「着用者」は、例えば、作業時、特に、荷を運ぶとき過度のストレスまたは悪い姿勢を防止するために、労働安全対策の一環として、本発明に係るベルトシステムを装着して使用する、すなわち着用する人を指す。また、例えば、以前に損傷し、疾患のある筋骨格系の過度のストレスまたは誤った姿勢を抑制するまたは疾患のある筋骨格系のための治療の意味での目標を絞った運動指導を可能にするための治療法の一環として、本発明に係るベルトシステムを装着して使用する、すなわち着用する患者も指す。
【0014】
本発明に従って、特に、装具が着用者に装着されている間または装着された後、前記骨盤ベルトが引き延ばされたとき、前記ショルダストラップループに張力を付与可能であり、すなわち、それぞれ、前記張力ストラップによって促進することができるように、前記張力ストラップは、その長手方向伸長部に沿って前記骨盤ベルト上または前記骨盤ベルトの中を案内される。前記ショルダストラップループは、装着された状態において、前記骨盤ベルト上で前記張力ストラップを介して個別に張力を付与可能となるように特に設けられている。
【0015】
前記骨盤ベルト上の前記ショルダストラップに、すなわち、前記ショルダストラップループに接続されている前記張力ストラップのそれぞれに張力を付与することによって、特に、前記装具が着用者に装着されている間または装着後において、前記骨盤ベルト自体も張力を付与される、すなわち、さらに張力を付与することも可能であるようにも設けられている。
【0016】
第1の実施形態に従って、前記張力ストラップの張力に起因して、前記2つの横および中央の偏向ポイントが互いに向かって移動するので、前記ショルダストラップの張力付与と共に前記骨盤ベルトも有利に張力が付与される。第2の実施形態において、前記骨盤ベルトと前記ショルダストラップは、別個に張力を付与可能である。これは、可動性に制限がある高齢の患者にも特に可能となる。特に、前記ショルダストラップの前記張力ストラップの端部は、それぞれ、前記骨盤ベルトに、例えば、ベルクロ(登録商標)要素によって、直接固定することができる、および/または前記側部の個別の張力付与デバイスによってそこで張力を付与可能なので、本発明に係る前記背部支持ベルトシステムが着用されている間でも、前記ショルダストラップの張力を迅速かつ容易に調整することが可能である。
【0017】
前記骨盤ベルトが、前記2つの骨盤ベルト端部を閉じることによって、着用者の骨盤または腰の周り、特に着用者の腹部領域に、張力付与下で装着された場合、前記ショルダストラップに張力を付与するために、本発明に係る前記骨盤ベルトに沿って案内される前記ショルダストラップループの前記張力ストラップに張力が付与されるので、本発明の当該態様に従って、前記骨盤ベルトにさらに張力を付与する、すなわち前記骨盤ベルトをさらに締め付けることができる。前記骨盤ベルトの張力は、ショルダストラップの張力の増加に比例して増加させることができることが示されており、その結果、前記骨盤ベルトがより良くフィットし、より良く保持されることになる。前記ショルダストラップに張力を付与するときの前記骨盤ベルトの好ましくない移動は、こうして回避することができる。
【0018】
このために、前記張力ストラップは、それぞれ、張力を付与するために前記骨盤ベルト端部のそれぞれに直接固定することができる張力ストラップの自由端を有するように特に設けられている。これは、解放可能な接続要素を用いて元来知られている方法で達成することができる。フックおよびアイレット、または代わりにまたは付加的に、特に前記張力ストラップの自由端の側のベルクロ(登録商標)フックと特に前記骨盤ベルト端部の側のベルクロ(登録商標)の対の要素、特にベロアが好ましい。前記張力ストラップ端部は、張力と張力の方向とを別個に調整できるようにするために、前記骨盤ベルト端部でまたは前記骨盤ベルト端部上で位置が変更可能に配置できることが好ましい。これは、具体的には、ベルクロ(登録商標)の対の要素を有する、骨盤ベルト端部に形成される大きな表面によって、または互いに間隔を置いて配置される複数の表面によって達成される。
【0019】
こうして、本発明は、前記装具の装着時または使用時、実質的に2つのステップの張力付与を特に可能にする。一旦、骨盤ベルト端部が閉じられると、場合によると、初期の張力付与下で、前記張力ストラップの自由端を用いて、第1の張力付与工程において前記骨盤ベルトをさらに締め付けることができる、この第1ステップにおいて、張力導入により、最初に、着用者の腰または骨盤の周りで半径方向に作用する張力が好適にもたらされるため、前記骨盤ベルトがより良くしっかりと装着される。張力付与工程の第2ステップにおいて、他の2つの横方向に位置する前記張力ストラップの自由端を介して、前記2つのショルダストラップループに再度張力を付与可能である。両方の張力付与工程は、1つの張力付与ステップで同時に、または特に、前記張力ストラップと前記骨盤ベルト上の前記偏向要素の特定の配置および案内に基づいた、ならびに前記偏向要素上のおよび前記骨盤ベルトに沿った、固定されたまたは延びるストラップの静止および摺動摩擦条件に基づいた、前記骨盤ベルトおよび前記ショルダストラップに対する力の作用および/または張力付与効果により、明確に区別することができるいくつかの分離された張力付与ステップで実行することができる。
【0020】
前記ショルダストラップのスライド式に案内される前記張力ストラップにより特に可能となる、前記骨盤ベルト上での、前記ショルダストラップの動的力の分布のために、局所的な過度の張力従って前記背部装具の好ましくない移動を引き起こすことがなく、着用者の移動の状態に依拠して、張力を前記背部装具において有利に動的に分布させることができる。特に、本発明に従う配置により、着用者の骨盤または腸骨稜上の静止摩擦により前記骨盤ベルトを保持する、張力を付与する力が、前記ショルダストラップの張力を付与する力と適切で常に調整された関係にあることを可能にし、それによって、前記骨盤ベルトの保持力(静止摩擦)を低減する、前記ショルダストラップの過度の張力を効果的に回避することができる。その結果、前記骨盤ベルト従って前記背部装具の好ましくない移動が防止される。
【0021】
この場合、有利なことに、着用者に装着されたとき、前記2つの側部に張力を付与して閉じるために弾性の前記骨盤ベルトが引き伸ばされ、それによって、前記骨盤ベルトに沿って、特に前記側部のそれぞれと中央の骨盤ベルト部分との間で延びる、特にテンションベルトおよび/またはテンションロープまたはテンションコードの形態の前記張力ストラップが、同様に、両側で同時に引き伸ばされ、その結果、前記骨盤ベルトが装着されて前記2つのストラップ端部が張力付与下で閉じられたとき、前記骨盤ベルトとの関連で前記ショルダストラップに自動的に張力が付与され、それによって、必要な張力が容易に生成され、特に、レクリネーションのために必要な肩への力の導入を可能にすることができる。
【0022】
各張力ストラップは、前記骨盤ベルトの背側中央部の領域の少なくとも1つの中央の偏向要素と前記側部のそれぞれの前方(腹側)に向かってより遠くに位置する横領域に配置されている少なくとも1つの横偏向要素との間で、前記骨盤ベルト上または前記骨盤ベルトの中を個別に案内される。前記装具の中の、本発明に係る動的引張力の分布に対して、前記骨盤ベルト上の前記ショルダストラップの経路と配置は、前記装具のベルトシステムの所望の機能に対して特に重要である。それは、使用目的、治療目的または着用者の要求に基づいて選択することができる。ある場合には、例えば、労働安全の分野で使用されるとき、特にショルダストラップの緩和効果が目的とされ、別の場合には、可動性に制限がある骨粗鬆症患者に対して効果的で容易に装着可能な横臥用装具が望ましい。従って、本発明は、張力ストラップガイドについていくつかの変形例と設計とを備える。
【0023】
第1の変形例において、前記右ショルダストラップループの背側第1の端部から来る前記張力ストラップは、前記中央部分の左に配置されている第1の左偏向要素から前記左の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部まで延び、前記左ショルダストラップループの背側第1の端部から来る前記張力ストラップは、前記中央部分の右に配置されている第1の右偏向要素から前記右の側部に沿って前記右の骨盤ベルト端部まで延びる。これは、対向する前記ショルダストラップループの前記入ってくる張力ストラップは、横偏向要素のみを介して、前方(腹側)に向けて直接案内されることを意味する。
【0024】
別の変形例において、前記右ショルダストラップループの背側第1の端部から来る前記張力ストラップは、前記中央部分からより遠い距離にある第1の左偏向要素から前記中央部分の方向の前記左の側部に沿って前記中央部分により近い距離にある第2の左偏向要素まで延び、そこから、前記左の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部に向けて延び、前記左ショルダストラップループの背側第1の端部から来る前記張力ストラップは、前記中央部分からより遠い距離にある第1の右偏向要素から前記中央部分の方向の前記右の側部に沿って前記中央部分により近い距離にある第2の右偏向要素まで延び、そこから、前記右の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部に向けて延びる。
【0025】
これは、各張力ストラップが、前記少なくとも1つの中央の偏向要素と前記少なくとも1つの横偏向要素との間で案内されることを意味する。第1の変形例では、反対側の身体の半分の前記ショルダストラップループから横断して来る前記張力ストラップは、前記骨盤ベルトの中央部分の方向の前記横偏向要素によって案内され、そこから、中央により近く配置されている前記偏向要素に案内される。前記より中央の偏向要素から、前記張力ストラップは、前記骨盤ベルトの同じ側の前方(腹側)に向けて案内される。別の変形例では、前記入って来る張力ストラップは、複数の横偏向要素および少なくとももう1つの中央に配置された偏向要素によって方向を変えて、具体的には、ウェストに沿って、数回前後に案内され、ここで、前記偏向要素は、ブロックを形成し、前記張力ストラップは、それぞれランナーを形成する。
【0026】
前記骨盤ベルトを装着すると、前記ショルダストラップの張力ストラップの導入場所は、前記骨盤ベルトの背部/背側領域に位置するが、常に前記中央部分と前述の側部との間にある。このために、引っ張りまたは張力による前記骨盤ベルトの長さの有効な変動が前記張力ストラップへの引っ張りまたは張力をもたらし、効果的にその長さを短縮するように、前記偏向要素は、前記骨盤ベルトの伸縮可能(弾性)部分の領域上またはその領域の中に案内される。特に好適な実施形態において、前記張力ストラップは、この場合、横の骨盤ベルト部分からより中央の骨盤ベルトまで戻され、そこから、前記横の骨盤部分に沿う方向に再度戻るように案内される。前記張力ストラップのこの「Z」形状の方向変更/方向転換により、単一または場合によっては多数のプーリー方式で力/長さの変換が達成される。例えば、屈曲時、前記ショルダストラップを単に引っ張ると、前記骨盤ベルトに対する張力が2倍または数倍に増大することになる。逆に、装着時、前記骨盤ベルトを引っ張ると、前記ショルダストラップに2倍または数倍の有効な短縮がもたらされる。後者は、意図するサポート機能を達成するために、前記骨盤ベルトを装着するとき、特に、最初に前記ショルダストラップをゆるく装着し、次に張力を付与することにより好都合なかなりの程度まで短縮することができるので、本発明に係る背面ストラップシステムの装着に対して特に有利である。
【0027】
好適な実施形態において、前記骨盤ベルトが装着された状態にあるとき、前記ショルダストラップ端部の最初の外側出発点が、腸骨稜の領域、好適にはちょうど腸骨稜(クリスタ腸骨)上に配置されるようにさらに設けられる。これにより、前記骨盤ベルトに、すなわち、着用者、すなわち使用者の身体の身体構造上の前額面の中に取り付けられている、前記ショルダストラップループのそれぞれの第2の端部の長さが、移動時、特に背中を曲げるとき、受動的に大幅に変動しないことが有利に確保される。本発明に係る前記ショルダストラップの身体上の特定の経路との組み合わせにより、移動中に、付加的に前記骨盤ベルトの移動を引き起こす可能性がある好ましくない付加的な横方向の力を防止する「中立点」が達成される。前記骨盤ベルトの前記各ショルダストラップループの引張力導入のフロントポイントは、従って、前記身体構造上の前額面の中に好適に位置する。このように、前記ベルトシステムは、屈曲中においてもその張力を保持する。
【0028】
本実施形態の第1の変形例において、前記右および左のショルダストラップループの第2の端部は、それぞれ、左横のアンカーおよび右横のアンカーにおいて前記側部のそれぞれに接続され、前記骨盤ベルトの装着状態において、前記左横のアンカーおよび右横のアンカーは、それぞれ、着用者の左腸骨稜および右腸骨稜の領域上またはその領域の中に配置されている。前記ショルダストラップループの前記第2の端部は、特に、長さ調整可能な、固定張力ストラップを介して直接的または間接的のいずれかで前記アンカーに接続することができる。このために、このような張力ストラップは、アンカーとして機能するアイレットにより本質的に既知の方式で案内し、長さ調節のためにそれら自体を用いてバックルでクランプすることができる。
【0029】
本実施形態の別の変形例において、前記右および左のショルダストラップループの前記第2の端部は、第2の張力ストラップを経由して前記骨盤ベルトに接続され、前記右ショルダストラップループの前記第2の張力ストラップは、少なくとも1つの左横偏向要素を介して、前記左の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部に向けてスライド式に延び、前記左ショルダストラップループの前記第2の張力ストラップは、少なくとも1つの左横偏向要素を介して、前記左の側部に沿って前記左の骨盤ベルト端部に向けてスライド式に延び、前記骨盤ベルトの装着状態において、前記左偏向要素および前記右横偏向要素は、それぞれ、着用者の前記左腸骨稜および前記右腸骨稜の領域上またはその領域の中に配置されている。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、前記ショルダストラップと前記連結されている張力ストラップとの間の移行部を形成する、前記ショルダストラップループの少なくとも1つの端部は、特に弾性ストラップ部分として設計されている。
【0031】
本発明に従って、「弾性ストラップ部分」は、主として、引張応力により引き伸ばすことができる弾性バンド、すなわち、特に織物ベルトの形態の可撓性バンドを指している。機能的に同等な設計、好適にラバー、シリコンラバー、ポリウレタン等で作られる、特にエラストマーストリップも、従って含まれる。代わりに、これは、エラストマー繊維で作られるインサート品を有する弾性張力付与ロープも指している。前記弾性ストラップ部分は、特に前記ショルダストラップループのその他の部分と比較して、より弾性がある、すなわち、張力の下でさらに引き伸ばすことができるように設けられている。好適な変形例において、前記弾性ストラップ部分は、前記装具が適切に使用されたとき、とりわけ背中を曲げたときに発生する可能性がある引張力の下で引き伸ばされる、すなわち、長くなる、前記ショルダストラップの唯一の構成部品である。前記弾性ストラップ部分は、+60%の長手方向伸長において、7Nから55Nまで,特に、20Nから40Nまでの力対伸長範囲を好適に有する。
【0032】
当該弾性ストラップ部分は、後部の背面上部全体を肩に向けて上側に引っ張る前記ショルダストラップループの端部に好適に配置される。背中を曲げたときの長さの変動は、身体の当該領域で特に顕著であるため、前記領域に配置されている前記特に弾性ストラップ部分は、前記ストラップへの過度の張力を低減することができる、すなわち、屈曲中、その固有の伸長によりそれを相殺することができる。その弾性により、前記弾性ストラップ部分は、前記ショルダストラップにより前記骨盤ベルトの中に導入される張力の引張力を制限するために使用され、それにより、前記骨盤ベルトの移動が防止される。これに加えて、屈曲中の背面の長さの変動も相殺することができるため、前記ショルダストラップを肩の上の所定の位置に保持し、移動の自由を与え、かつ前記背面ベルトシステムの装着快適性および有効性を向上する。
【0033】
本実施形態の変形例において、前記弾性端部には、前記弾性部分に対して並行に案内される、個別に形成される機械的伸長リミッタが付加的に設けられている。前記伸長リミッタは、前記弾性部分のそれぞれの端部に接続される少なくとも1つの低弾性または非弾性のバンドとして設計することができる。これは、所望の治療目的または前記システムの使用目的に依拠して、屈曲中の制御されたモーションコントロールのために用いることができる。特に、背面の過度の屈曲が防止されると考えられ、治療上、例えば、術後リハビリテーションにおいてまたは荷を持ち上げるときの労働安全の分野において、レクリネーション、姿勢の改善、および結果として生じる背面における負荷移転の改善のために必要とされる場合がある。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明に係る前記サポートベルトシステムは、少なくともショルダストラップループの交差点において個別の交差ガイドで案内される。交差ガイドは、交差するショルダストラップを正しい位置に保持するので、着用者または使用者に対する背部装具の装着を簡単化するために特に用いられる。少なくとも1つのこのような交差ガイドが上部、中央部、および後部の交差点に好適に設けられる。
【0035】
本発明に係る前記背部支持ベルトシステムは、上半身の間違った姿勢、すなわち、具体的には、前方に胴体を大きく曲げる場合および最悪の場合、曲げた位置で背面をさらに回転させる場合に、着用者に穏やかな姿勢、すなわち、具体的には直立の姿勢を取るように促すことを可能にする。脊椎を曲げて荷を持ち上げるとき、荷重が椎体の腹側柱の前部に移る。脊椎をまっすぐにして膝から持ち上げる(直立姿勢)ことにより、荷重が腹側柱の全体領域に有利に分散する。上半身を前方に曲げたとき、特に、前記着用者が本発明に係る前記ショルダストラップシステムを介して増大する引張力を受けたとき、着用者は直立姿勢を取ることができる。この場合、前記骨盤ベルトは、「アンカー」として作用し、前記ベルトシステムを介して背側方向に、肩の移動から力を生成するために用いられる中央固定点を確立する。本発明に係る前記背部支持ベルトシステムの前記ぴったりフィットして、張力が付与される骨盤ベルトのさらなる副効果は、前記システムの着用者に対して安心感と安定感を与えることである。
【0036】
特定の実施形態において、本発明に係る前記背部支持ベルトシステムは、従って、弾性ベストまたは弾性ジャケットに装着され、前記ショルダストラップおよび/または前記骨盤ベルトは、少なくとも部分的に前記ベストまたはジャケットに固定される。本発明の主題は、従って、特にベストまたはジャケットの形態の防護服でもあり、伸縮可能なベストまたはジャケットと本明細書中で説明した本発明に係る前記背部支持ベルトシステムとを含む。
【0037】
最も簡単な場合、前記背部支持ベルトシステムは、前記ベストまたはジャケットに縫い合わされる。代替の変形例において、サポートストラップは、前記ベストまたはジャケット上のループで案内される。ベストまたはジャケットの設計により、容易な装着と取り外しが可能となり、例えば、労働安全の分野において、特に、前記背部支持ベルトシステムの短期間の繰り返し使用に対して非常に有用である。使用される前記ベストまたはジャケットは、伸縮性のある生地または編み生地で作られる。代わりに、安全ベストとして本質的に知られているもの等の可撓性バストを本発明に係る前記背部支持ベルトシステムに装着することができる。
【0038】
最後に、本発明の主題は、また、背面にかかる有害なストレスからの保護のための、本発明に係る背部装具または本発明に係る防護服の使用方法でもある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る背部装具の第1の実施形態の正面斜視図である。
図2】開いた状態にある、本発明に係る背部装具の別の実施形態の後面斜視図である。
図3】着用者に装着された形における、図2に係る背部装具の後面斜視図である。
図4】着用者に装着された状態における、図1に係る実施形態の正面斜視図である。
図5A図2または図3に係る実施形態の代替の変形例を示す。
図5B図2または図3に係る実施形態の代替の変形例を示す。
図6図1の描写に類似した正面図において背部装具のさらなる代替の実施形態を示す。
図7図2の描写に類似した描写で、図1に準じて本発明に係る背部装具のさらなる実施形態を示す。
図8】防護服としての、本発明のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の特定の実施形態により本発明を詳細に説明する。ここで、実施形態は限定を意味するものではない。
【0041】
図1は、本発明に係る背部装具の第1の実施形態の正面斜視図である。左肩に装着可能な左ショルダループ24は、骨盤ベルト30の右の側部34の後部中央部分31を有する骨盤ベルト30に取り付けられ、右肩に装着可能な右ショルダループ22は、骨盤ベルト30の左の側部32に取り付けられている。左ショルダストラップループ24の(背側の)端部25は、着用状態において、背面上を延び、弾性ストラップ部分80を経由して実質的に非弾性の張力ストラップ54に接続されている。張力ストラップ54は、本実施形態では、アイレット、リングまたは簡単なバックルとして設計されている右偏向要素64を経由して、骨盤ベルト30の中央部分31の右まで延び、中央部分31を横切って、自由端55で終わる骨盤ベルト30の左の側部32に沿って、前方に向かって案内されている。この場合、張力ストラップ54の自由端55は、左の骨盤ベルト端部32に固定することができる。これに対称的に対応して、右ショルダストラップループ22の後端23は、弾性ストラップ部分80を経由し、対応する左偏向要素62を経由して骨盤ベルト30まで延びる張力ストラップ52まで延び、同様に中央部分31を横切り、右の側部34に沿って延び自由端55で終わる。張力ストラップ52の自由端55は、右の骨盤ベルト端部35に固定することができる。ショルダストラップループ22、24のそれぞれの他の端部26、27は、図示の実施形態において、さらに側方にある、すなわち、中央部分31から遠くに離れている側部32、34の領域にしっかりと接続されている。このために、右ショルダストラップループ22の第2の端部26は、左アンカー72において、骨盤ベルト30の左の側部32にしっかりと接続されている。左アンカー72は、左の側部32の領域に配置されていて、装具が着用者に装着されたとき、着用者の左腸骨稜上またはそれの上方に位置している。左ショルダストラップループの第2の端部27も、右アンカー74を経由して骨盤ベルト30の右の側部34にしっかりと接続されている。右アンカー74は、同様に、右の側部34の領域に配置されていて、装具が着用者に装着されたとき、着用者の右腸骨稜上またはそれの上方に位置している。本発明に従って、骨盤ベルト30上のショルダストラップループ22、24の端部23、25、26、27の締め具を、身体の対向側に配置しているために、ショルダストラップループは、4つの交差点、すなわち、後部中央上部の交差点41、後部中央下部の交差点43、左横の交差点42および右横の交差点44において互いに交差している。装具が着用者に装着されるとき、鎖骨および肩甲骨の領域に延びるショルダストラップの上部に、付加的な、特に部分的に弾性のあるおよび/または当てものがされたショルダストラップ28が任意に形成されている。
【0042】
図2は、開いた状態にある、本発明に係る背部装具の別の実施形態の後面斜視図である。図1に示されている特徴に対応する構成部品とは異なり、図2に係る実施形態は、対応する部品に加えて、代替の張力ストラップガイドを有する。右ショルダストラップループ24および左ショルダストラップループ22の張力ストラップ52、54は、それぞれ第1の横方向の左偏向要素62および右偏向要素64において骨盤ベルト30に入る。そこから、それらは、中央部分31の方向に最初に方向変更され、そこで、それらは、中央に配置されている、すなわち、中央部分31により近い第2の左偏向要素63および右偏向要素65に入る。そこで、張力ストラップ52および54は、方向が変更され、続いて、それぞれ、左の骨盤ベルト端部33および右の骨盤ベルト端部35の方向に引っ張られる。図1の実施形態に加えて、ショルダストラップループ22および24のそれぞれの第2の端部26、27をアンカーポイント72および74で固定するために、調整可能な第2の張力ストラップ56、57が図2に係る実施形態に設けられ、この場合、ショルダストラップの長さ調節を実現するために、張力ストラップ56、57のそれぞれは、バックル58にそれ自体と共に締め付けられている。
【0043】
図3は、着用者に装着された形における、図2に係る背部装具の後面斜視図である。第1の偏向要素62、64が弾性骨盤ベルト30の領域において補強要素36上に配置され、特にそれに直接接続されていることも示されている。第2の偏向要素63、65が配置され、特にそれらが直接接続されている、補強要素として設計されている、骨盤ベルト30の中央部分31も見ることができる。
【0044】
図4は、着用者に装着された状態における、図1に係る実施形態の正面斜視図であり、参照符号は図1に従って付されている。
【0045】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、図2または図3に係る実施形態の代替の変形例を示し、第1の偏向要素62、64は、補強要素36に固定することができるかまたは固定されていて、第2の偏向要素63、65は、補強要素として設計されている、骨盤ベルトの中央部分31に可変位置で固定することができるか、または固定されていて、骨盤ベルト30の偏向要素で案内されるそれぞれの張力ストラップ52、54の代替的に構成される配置をもたらす。図5Aは、骨盤ベルト30の上側端部上の第1の偏向要素62および64の第1の配置および中央部分31の高さの中央にある第2の偏向要素63、65の第1の配置を示す。図5Bは、骨盤ベルト30の中央領域における第1の偏向要素62および64の代替的配置および中央部分31の下側領域における第2の偏向要素63、65の代替的配置を示す。
【0046】
図6は、図1の描写に類似した正面図において背部装具のさらなる代替の実施形態を示す。図1に係る実施形態、また図2に係る代替の実施形態とも異なり、実施形態の当該図示された変形例において、2つのショルダストラップループ22、24の第2の自由端26および27は、それぞれ、左横偏向要素66および右横偏向要素67で案内され、右ショルダストラップループ22の第2の端部26は、第2の張力ストラップ56で終わり、左ショルダストラップループ24の第2の端部27は、第2の張力ストラップ57で終わることが付加的に設けられている。それらは、また、それぞれ、それらの張力ストラップの自由端55を介して左の骨盤ベルト端部33および右の骨盤ベルト端部35に固定することができる。本実施形態において、それぞれのショルダストラップループの両端部23、25、26、27は、このように、個別に割り当てられている張力ストラップ52、54、56、57を介して個別に張力を付与可能である。
【0047】
図7は、図2の描写に類似した描写で、図1に準じて本発明に係る背部装具のさらなる実施形態を示す。同じ参照符号は、同じまたは機能上同一の要素を示す。
【0048】
図8は、防護服としての、本発明のさらなる実施形態を示す。図2に係る実施形態に類似した背部支持ベルトシステムは、弾性ベスト90に装着される。少なくとも部分において、右ショルダストラップループ22と左ショルダストラップループ24および骨盤ベルト30は、ベスト90にしっかりと接続される。こうして、背部装具は、ベスト90と一緒に直接かつ直ちに装着することができる。
【符号の説明】
【0049】
右ショルダストラップループ(22)
右ショルダストラップループの第1の端部(23)
左ショルダストラップループ(24)
左ショルダストラップループの第1の端部(25)
右ショルダストラップループの第2の端部(26)
左ショルダストラップループの第2の端部(27)
ショルダストラップ(28)
骨盤ベルト(30)
中央部分(31)
左の側部(32)
左の骨盤ベルト端部(33)
右の側部(34)
右の骨盤ベルト端部(35)
補強要素(36)
中央上部の交差点(41)
左横の交差点(42)
中央下部の交差点(43)
右横の交差点(44)
右ショルダストラップループの第1の張力ストラップ(52)
左ショルダストラップループの第1の張力ストラップ(54)
右ショルダストラップループの第2の張力ストラップ(56)
左ショルダストラップループの第2の張力ストラップ(57)
ベルトバックル(58)
第1の左偏向要素(62)
第2の左偏向要素(63)
第1の右偏向要素(64)
第2の右偏向要素(65)
左横偏向要素(66)
右横偏向要素(67)
左アンカー(72)
右アンカー(74)
弾性ストラップ部分(80)
ジャケット(90)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の骨盤に装着される伸縮可能で、装着状態において腰椎/仙骨領域に配置することができる中央部分(31)と、そこから横方向に伸長し、左の骨盤ベルト端部(33)を有する左の側部(32)と、そこから横方向に伸長し、右の骨盤ベルト端部(35)を有する右の側部(34)とを有し、前記骨盤ベルト端部(33、35)が装着のために張力付与下で互いに接続可能である骨盤ベルト(30)と、
前記着用者の右肩の上に装着され、その第1の端部(23)とその第2の端部(26)を経由して前記骨盤ベルト(30)の前記左の側部(32)にのみ接続される右ショルダストラップループ(22)と、
前記着用者の左肩の上に装着され、その第1の端部(25)とその第2の端部(27)を経由して前記骨盤ベルト(30)の前記右の側部(34)にのみ接続される左ショルダストラップループ(24)と、
を備え、
前記右および左のショルダストラップループ(22、24)は、それぞれ第1の張力ストラップ(52、54)を経由して少なくともそれらの第1の端部(23、25)において前記骨盤ベルト(30)に接続され、
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)は、前記左の側部(32)に配置されている少なくとも1つの第1の左偏向要素(62)を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト(30)上に沿ってまたは前記骨盤ベルト(30)の中を前記骨盤ベルト端部(33、35)に向かってスライドし、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)は、前記右の側部(34)に配置されている少なくとも1つの第1の右偏向要素(64)を経由して延び、それに張力を付与しかつそれに固定できる位置で、前記骨盤ベルト(30)上に沿ってまたは前記骨盤ベルト(30)の中を前記骨盤ベルト端部(33、35)に向かってスライドし、
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)が、前記左の側部(32)に配置されている第1の左偏向要素(62)を経由して延び、前記中央部分(31)を横切り、前記骨盤ベルト(30)の前記右の側部(34)上に沿ってまたは前記右の側部(34)の中を前記右の骨盤ベルト端部(35)に向かってスライドし、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)が、前記右の側部(34)上の第1の右偏向要素(64)を経由して延び、前記中央部分(31)を横切り、前記骨盤ベルト(30)の前記左の側部(32)上に沿ってまたは前記左の側部(32)の中を前記左の骨盤ベルト端部(33)に向かってスライドする、あるいは、
前記右ショルダストラップループ(22)の前記第1の張力ストラップ(52)が、前記左の側部(32)に配置されている第1の左偏向要素(62)を経由して延び、前記第1の左偏向要素(62)から、前記中央部分(31)方向に、前記中央部分(31)に配置されている第2の左偏向要素(63)まで延び、そこから前記左の側部(32)に沿って前記左の骨盤ベルト端部(33)まで延び、前記左ショルダストラップループ(24)の前記第1の張力ストラップ(54)が、前記右の側部(34)に配置されている第1の右偏向要素(64)を経由して延び、前記第1の右偏向要素(64)から、前記中央部分(31)方向に、前記中央部分(31)に配置されている第2の右偏向要素(65)まで延び、そこから前記右の側部(34)に沿って前記右の骨盤ベルト端部(35)まで延び、
少なくとも1つの偏向要素(62、64、63、65、66、67)が、個別に形成され、前記骨盤ベルト(30)に接続可能である背部装具。
【請求項2】
前記右ショルダストラップループ(22)および前記左ショルダストラップループ(24)が、前記装着状態で背側中央上部の交差点(41)において、前記装着状態で背側中央下部の交差点(43)において、および前記装着状態で2つの横の交差点(42、44)において互いに交差する、請求項1に記載の背部装具。
【請求項3】
前記張力ストラップ(52、54)がそれぞれ、前記張力ストラップ(52、54)に張力を付与するために、前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに直接固定することができる張力ストラップの自由端(55)を有する、請求項1または2に記載の背部装具。
【請求項4】
前記ショルダストラップループ(22、24)が、前記張力ストラップ(52、54)を介して張力を付与可能であり、前記側部(32、34)上をスライドし、前記背部装具が装着されて前記骨盤ベルト(30)が閉じられたとき、前記骨盤ベルト(30)の伸長を介して前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに固定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項5】
前記ショルダストラップループ(22、24)が、前記張力ストラップ(52、54)を介して個別に張力を付与可能であり、前記背部装具が前記装着状態にあって前記骨盤ベルト(30)が閉じられたとき、前記骨盤ベルト端部(33、35)のそれぞれに固定することができる、請求項1から4のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項6】
前記閉じられた骨盤ベルト(30)が、前記背部装具の装着状態において、前記ショルダストラップループ(22、24)の前記張力ストラップ(52、54)を介して付加的にさらに張力を付与可能である、請求項4または5に記載の背部装具。
【請求項7】
前記ショルダストラップループ(22、24)の前記第2の端部(26、27)がそれぞれ、左横および右横のアンカー(72、74)において前記左および右の側部(32、34)のそれぞれに接続され、前記左横および右横のアンカー(72、74)は、前記骨盤ベルト(30)が装着状態にあるとき、前記着用者の左および右腸骨稜(クリスタ腸骨)の領域上またはその領域の中に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項8】
前記ショルダストラップループ(22、24)の一端と前記張力ストラップ(52、54)との間に弾性ストラップ部分(80)が形成され、前記弾性ストラップ部分(80)の弾性が前記ショルダストラップループ(22、24)自体の弾性より高い、請求項1から7のいずれか一項に記載の背部装具。
【請求項9】
並行方式で案内される少なくとも1つの低弾性または非弾性ストラップ部分の形態の付加的な伸長リミッタが、前記弾性ストラップ部分(80)に形成される、請求項8に記載の背部装具。
【請求項10】
伸縮可能なベストまたはジャケット(90)と、請求項1から9のいずれか一項に記載の前記背部装具と、を備え、
前記ショルダストラップループ(22、24)および前記骨盤ベルト(30)が、少なくとも部分的にベストまたはジャケット(90)に装着され、それに堅固に接続される防護服。
【外国語明細書】