(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142807
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電力変換回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043005
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】516080563
【氏名又は名称】株式会社フコク東海
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹根
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB03
5H006CB07
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】交流電力を直流電力に変換する電力変換回路における整流素子としてMOSFETのボディダイオードを利用する場合において、出力側の負荷の変動に対応した、最適なMOSFETのスイッチング制御を可能とし、電力変換に伴う損失の発生を低減する回路を提供する。
【解決手段】整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられている。MOSFETを制御するゲート駆動回路は、MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する。また、整流素子が複数設けられており、それぞれのゲート駆動回路は、個々のMOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、
前記整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられており、
前記MOSFETを制御するゲート駆動回路は、
前記MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、
前記MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換回路において、
前記整流素子が複数設けられており、
複数の前記MOSFETを制御する複数の前記ゲート駆動回路は、
個々の前記MOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられている
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換回路において、
前記ゲート駆動回路は演算増幅器を備え、
前記MOSFETのソース電極は、抵抗R1を介して前記演算増幅器の非反転入力端子に接続され、
前記MOSFETのドレイン電極は、抵抗R2を介して前記演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記演算増幅器の出力端子は、前記MOSFETのゲート電極に接続されている
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換回路において、
前記演算増幅器の出力端子はフィードバック抵抗RFを介して、前記演算増幅器の反転入力端子に接続されている
ことを特徴とする電力変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流の電力を直流の電力に変換する電力変換回路に関し、詳しくは整流素子による電力の損失を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等における動力の電動化が進んでおり、電力の変換に伴う損失低減が大きな課題となっている。中でも、商用の交流電力を用いて電池に充電を行ったり、モーターを駆動したりする際には、交流―直流の変換が不可欠となっており、このような電力変換回路で用いられる整流素子の損失低減が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ブリッジ回路を用いた整流回路における電圧降下を低減する発明が開示されている。これは、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオード(特許文献1では寄生ダイオードと表現されている。)を整流素子として利用し、入力側の交流電圧に同期させた制御信号でMOSFETをスイッチングさせて整流することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す通り、特許文献1に開示されているMOSFETのボディダイオードを利用した整流回路を用いることで、従来のダイオードを用いた整流の際に生じる1.0V~2.0Vの電圧降下を生じさせないようにすることが可能であり、電力変換回路全体の損失の低減を図ることが可能となる。
【0006】
ここで、特許文献1に開示されている回路においては、
図6に示す通り、MOSFETのスイッチングの制御を入力側の交流電圧に同期させていることから、商用の交流電力を入力とする場合には、出力側の負荷の変動にかかわらず、MOSFETのオンとオフはそれぞれ一定の周期(50Hzや60Hz)で制御されることになる。
【0007】
しかしながら、出力側の負荷が増加した場合は、平滑回路に蓄えられた電荷量が急激に減少するため、MOSFETのスイッチONのタイミングは早めることが必要であり、また、出力側の負荷が低下した場合は、平滑回路に蓄えられた電荷量はあまり変化しないため、MOSFETのスイッチONのタイミングは遅くしなければ、損失の低減効果が限定的になってしまう。従来のゲート駆動回路では、そのような出力変動に対応したスイッチングの最適制御をすることはできなかった。
【0008】
本発明の目的は、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路における整流素子としてMOSFETのボディダイオードを利用する場合において、出力側の負荷の変動に対応した、最適なMOSFETのスイッチング制御を可能とする回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられており、MOSFETを制御するゲート駆動回路は、MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力することを特徴とする電力変換回路である。
【0010】
MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得してゲート電圧を決定するため、負荷の変動にリアルタイムで対応した最適なスイッチング制御を行うことが可能となる。
【0011】
上述した課題を解決するための請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力変換回路において、整流素子が複数設けられており、複数のMOSFETを制御する複数のゲート駆動回路は、個々のMOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられていることを特徴とする電力変換回路である。
【0012】
本発明は、複数のMOSFETを組み合わせて整流回路を構成することが可能であり、例えば単相ブリッジ整流回路や三相ブリッジ整流回路など、様々な用途で本件発明を適用することができる。
【0013】
上述した課題を解決するための請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電力変換回路において、ゲート駆動回路は、演算増幅器を備え、MOSFETのソース電極は、抵抗R1を介して演算増幅器の非反転入力端子に接続され、MOSFETのドレイン電極は、抵抗R2を介して演算増幅器の反転入力端子に接続され、演算増幅器の出力端子は、MOSFETのゲート電極に接続されていることを特徴とする電力変換回路である。
【0014】
本発明によると、個々のMOSFETに最適化した制御を、複雑な回路構成を用いることなく、簡易なゲート駆動回路で実現することが可能となる。
【0015】
上述した課題を解決するための請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電力変換回路において、演算増幅器の出力端子はフィードバック抵抗RFを介して、演算増幅器の反転入力端子に接続されていることを特徴とする電力変換回路である。
【0016】
本発明によると、演算増幅器をフィードバック制御して用いることで、ゲート電圧の立ち上がりや立ち下がりのタイミングを正確に設定し、MOSFETのスイッチング時に生じるサージやリンギングの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1に係る電力変換回路である単相半波整流回路を示す図
【
図2】実施例2に係る電力変換回路である単相半波整流回路を示す図
【
図3】実施例3に係る電力変換回路である単相ブリッジ整流回路を示す図
【
図4】実施例4に係る電力変換回路である三相ブリッジ整流回路を示す図
【
図5】出力側の負荷が変動した場合における最適なスイッチング制御を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる電力変換回路を、図を参照して説明する。
【実施例0019】
図1は、実施例1に係る電力変換回路を示す図である。電力変換回路10は、交流電源11から入力される交流電力を、MOSFET14のソース・ドレイン間のボディダイオードを用いて整流し、平滑コンデンサ12などからなる平滑回路を介して、負荷13に直流の電力を出力する単相半波整流回路を構成している。
【0020】
MOSFET14のゲート端子には、ゲート駆動回路15が接続されており、ゲート端子に入力する電圧を制御することで、スイッチング制御が行われる。ゲート駆動回路15はMOSFET14のソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、それぞれ演算増幅器151の非反転入力端子、反転入力端子に入力されている。
【0021】
MOSFET14のソース電極と演算増幅器151の非反転入力端子との間には抵抗R1が設けられ、ドレイン電極と反転入力端子との間には抵抗R2が設けられるとともに、演算増幅器151の出力端子はフィードバック抵抗RFを介して、演算増幅器151の反転入力端子に接続されている。
【0022】
ここで、フィードバック抵抗RFを設けない場合でも、演算増幅器151はコンパレータとして機能するので、適切なタイミングでMOSFET14のスイッチングを制御することが可能であるが、フィードバック抵抗RFを設けてゲート電圧の立ち上がりや立ち下がりのタイミングを正確に設定することで、スイッチング時に生じるサージやリンギングの発生を抑制することが可能となる。
【0023】
図1のような演算増幅器151を用いた簡易な回路構成によって、負荷13に接続されるMOSFET14のドレイン電極の電圧が、交流電源11に接続されるMOSFET14のソース電極の電圧を下回ったタイミングでMOSFET14がオンすることで、ダイオードによる電圧降下を回避することが可能となる。
【0024】
ここで、MOSFET14のドレイン電極は、負荷13に接続されていることから、負荷13の変動によって、最適なMOSFET14のスイッチングのタイミングも変化する。この点について、
図5を用いて説明する。
【0025】
図5は出力側の負荷13が高負荷の場合と低負荷の場合における最適なスイッチング制御を示す図である。出力電圧V
оutは、平滑コンデンサ12の作用によって、負荷13が低負荷の時より、高負荷の時の方が早く降下することになる。
【0026】
出力電圧Vоutの電圧降下の速度が速くなると、出力電圧Vоut(MOSFET14のドレイン電極の電圧と同じ)が、交流電源11に接続されているMOSFET14のソース電極の電圧を下回るタイミングは、低負荷のときよりも早いタイミングとなる。すなわち、MOSFET14をオンにする最適なタミングtonは、低負荷時よりも高負荷時の方が早くなるのであって、かかる負荷13の変動を加味したスイッチング制御をしないと損失低減効果は限定的となってしまう。
【0027】
本発明の電力変換回路によると、このような負荷13の変動を考慮し、その変動に応じてtonのタイミングを決定することができるので、整流素子による電圧降下に起因する電力損失を従来以上に低減することが可能となる。