IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フコク東海の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換回路 図1
  • 特開-電力変換回路 図2
  • 特開-電力変換回路 図3
  • 特開-電力変換回路 図4
  • 特開-電力変換回路 図5
  • 特開-電力変換回路 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142807
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電力変換回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043005
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】516080563
【氏名又は名称】株式会社フコク東海
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹根
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB03
5H006CB07
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交流電力を直流電力に変換する電力変換回路における整流素子としてMOSFETのボディダイオードを利用する場合において、出力側の負荷の変動に対応した、最適なMOSFETのスイッチング制御を可能とし、電力変換に伴う損失の発生を低減する回路を提供する。
【解決手段】整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられている。MOSFETを制御するゲート駆動回路は、MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する。また、整流素子が複数設けられており、それぞれのゲート駆動回路は、個々のMOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、
前記整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられており、
前記MOSFETを制御するゲート駆動回路は、
前記MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、
前記MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換回路において、
前記整流素子が複数設けられており、
複数の前記MOSFETを制御する複数の前記ゲート駆動回路は、
個々の前記MOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられている
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換回路において、
前記ゲート駆動回路は演算増幅器を備え、
前記MOSFETのソース電極は、抵抗Rを介して前記演算増幅器の非反転入力端子に接続され、
前記MOSFETのドレイン電極は、抵抗Rを介して前記演算増幅器の反転入力端子に接続され、
前記演算増幅器の出力端子は、前記MOSFETのゲート電極に接続されている
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換回路において、
前記演算増幅器の出力端子はフィードバック抵抗Rを介して、前記演算増幅器の反転入力端子に接続されている
ことを特徴とする電力変換回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流の電力を直流の電力に変換する電力変換回路に関し、詳しくは整流素子による電力の損失を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等における動力の電動化が進んでおり、電力の変換に伴う損失低減が大きな課題となっている。中でも、商用の交流電力を用いて電池に充電を行ったり、モーターを駆動したりする際には、交流―直流の変換が不可欠となっており、このような電力変換回路で用いられる整流素子の損失低減が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ブリッジ回路を用いた整流回路における電圧降下を低減する発明が開示されている。これは、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオード(特許文献1では寄生ダイオードと表現されている。)を整流素子として利用し、入力側の交流電圧に同期させた制御信号でMOSFETをスイッチングさせて整流することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-108464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す通り、特許文献1に開示されているMOSFETのボディダイオードを利用した整流回路を用いることで、従来のダイオードを用いた整流の際に生じる1.0V~2.0Vの電圧降下を生じさせないようにすることが可能であり、電力変換回路全体の損失の低減を図ることが可能となる。
【0006】
ここで、特許文献1に開示されている回路においては、図6に示す通り、MOSFETのスイッチングの制御を入力側の交流電圧に同期させていることから、商用の交流電力を入力とする場合には、出力側の負荷の変動にかかわらず、MOSFETのオンとオフはそれぞれ一定の周期(50Hzや60Hz)で制御されることになる。
【0007】
しかしながら、出力側の負荷が増加した場合は、平滑回路に蓄えられた電荷量が急激に減少するため、MOSFETのスイッチONのタイミングは早めることが必要であり、また、出力側の負荷が低下した場合は、平滑回路に蓄えられた電荷量はあまり変化しないため、MOSFETのスイッチONのタイミングは遅くしなければ、損失の低減効果が限定的になってしまう。従来のゲート駆動回路では、そのような出力変動に対応したスイッチングの最適制御をすることはできなかった。
【0008】
本発明の目的は、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路における整流素子としてMOSFETのボディダイオードを利用する場合において、出力側の負荷の変動に対応した、最適なMOSFETのスイッチング制御を可能とする回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、整流素子と平滑回路からなり、交流電力を直流電力に変換する電力変換回路であって、整流素子として、MOSFETのソース・ドレイン間のボディダイオードが用いられており、MOSFETを制御するゲート駆動回路は、MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、MOSFETのゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力することを特徴とする電力変換回路である。
【0010】
MOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得してゲート電圧を決定するため、負荷の変動にリアルタイムで対応した最適なスイッチング制御を行うことが可能となる。
【0011】
上述した課題を解決するための請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力変換回路において、整流素子が複数設けられており、複数のMOSFETを制御する複数のゲート駆動回路は、個々のMOSFETを個別に制御できるように、独立して設けられていることを特徴とする電力変換回路である。
【0012】
本発明は、複数のMOSFETを組み合わせて整流回路を構成することが可能であり、例えば単相ブリッジ整流回路や三相ブリッジ整流回路など、様々な用途で本件発明を適用することができる。
【0013】
上述した課題を解決するための請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電力変換回路において、ゲート駆動回路は、演算増幅器を備え、MOSFETのソース電極は、抵抗Rを介して演算増幅器の非反転入力端子に接続され、MOSFETのドレイン電極は、抵抗Rを介して演算増幅器の反転入力端子に接続され、演算増幅器の出力端子は、MOSFETのゲート電極に接続されていることを特徴とする電力変換回路である。
【0014】
本発明によると、個々のMOSFETに最適化した制御を、複雑な回路構成を用いることなく、簡易なゲート駆動回路で実現することが可能となる。
【0015】
上述した課題を解決するための請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電力変換回路において、演算増幅器の出力端子はフィードバック抵抗Rを介して、演算増幅器の反転入力端子に接続されていることを特徴とする電力変換回路である。
【0016】
本発明によると、演算増幅器をフィードバック制御して用いることで、ゲート電圧の立ち上がりや立ち下がりのタイミングを正確に設定し、MOSFETのスイッチング時に生じるサージやリンギングの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る電力変換回路である単相半波整流回路を示す図
図2】実施例2に係る電力変換回路である単相半波整流回路を示す図
図3】実施例3に係る電力変換回路である単相ブリッジ整流回路を示す図
図4】実施例4に係る電力変換回路である三相ブリッジ整流回路を示す図
図5】出力側の負荷が変動した場合における最適なスイッチング制御を示す図
図6】従来の整流回路のスイッチング制御を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる電力変換回路を、図を参照して説明する。
【実施例0019】
図1は、実施例1に係る電力変換回路を示す図である。電力変換回路10は、交流電源11から入力される交流電力を、MOSFET14のソース・ドレイン間のボディダイオードを用いて整流し、平滑コンデンサ12などからなる平滑回路を介して、負荷13に直流の電力を出力する単相半波整流回路を構成している。
【0020】
MOSFET14のゲート端子には、ゲート駆動回路15が接続されており、ゲート端子に入力する電圧を制御することで、スイッチング制御が行われる。ゲート駆動回路15はMOSFET14のソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得して、それぞれ演算増幅器151の非反転入力端子、反転入力端子に入力されている。
【0021】
MOSFET14のソース電極と演算増幅器151の非反転入力端子との間には抵抗Rが設けられ、ドレイン電極と反転入力端子との間には抵抗Rが設けられるとともに、演算増幅器151の出力端子はフィードバック抵抗Rを介して、演算増幅器151の反転入力端子に接続されている。
【0022】
ここで、フィードバック抵抗Rを設けない場合でも、演算増幅器151はコンパレータとして機能するので、適切なタイミングでMOSFET14のスイッチングを制御することが可能であるが、フィードバック抵抗Rを設けてゲート電圧の立ち上がりや立ち下がりのタイミングを正確に設定することで、スイッチング時に生じるサージやリンギングの発生を抑制することが可能となる。
【0023】
図1のような演算増幅器151を用いた簡易な回路構成によって、負荷13に接続されるMOSFET14のドレイン電極の電圧が、交流電源11に接続されるMOSFET14のソース電極の電圧を下回ったタイミングでMOSFET14がオンすることで、ダイオードによる電圧降下を回避することが可能となる。
【0024】
ここで、MOSFET14のドレイン電極は、負荷13に接続されていることから、負荷13の変動によって、最適なMOSFET14のスイッチングのタイミングも変化する。この点について、図5を用いて説明する。
【0025】
図5は出力側の負荷13が高負荷の場合と低負荷の場合における最適なスイッチング制御を示す図である。出力電圧Vоutは、平滑コンデンサ12の作用によって、負荷13が低負荷の時より、高負荷の時の方が早く降下することになる。
【0026】
出力電圧Vоutの電圧降下の速度が速くなると、出力電圧Vоut(MOSFET14のドレイン電極の電圧と同じ)が、交流電源11に接続されているMOSFET14のソース電極の電圧を下回るタイミングは、低負荷のときよりも早いタイミングとなる。すなわち、MOSFET14をオンにする最適なタミングtonは、低負荷時よりも高負荷時の方が早くなるのであって、かかる負荷13の変動を加味したスイッチング制御をしないと損失低減効果は限定的となってしまう。
【0027】
本発明の電力変換回路によると、このような負荷13の変動を考慮し、その変動に応じてtonのタイミングを決定することができるので、整流素子による電圧降下に起因する電力損失を従来以上に低減することが可能となる。
【実施例0028】
図2は、実施例2に係る電力変換回路20を示す図である。この回路は、実施例1の場合と異なり、MOSFET24が負荷23の下流側に設けられた単相半波整流回路を構成している。本実施例の動作は実施例1と対称になっているため、実施例1の記載を読み替えることで詳細は理解できる。
【実施例0029】
図3は、実施例3に係る電力変換回路を示す図である。実施例1と実施例2の回路を組み合わせることで、単相ブリッジ整流回路30を構成している。
【0030】
本実施例では、負荷33の上流側に2つのMOSFET(34,35)が設けられ、負荷33の下流側にも2つのMOSFET(36,37)が設けられている。個々のMOSFETのゲート電極端子には、それぞれのMOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得してゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する、独立したゲート駆動回路(341,351,361,371)が接続され、それぞれの4つのMOSFET(34,35,36,37)のスイッチングのタイミングを独立に最適制御することが可能となっている。
【0031】
入力側の交流電源31が単相の交流電源の場合は、本実施例の回路構成を用いることで、負荷の変動を加味した最適なスイッチング制御を行うことが可能となり、高効率の電力変換を実現することができる。
【実施例0032】
図4は、実施例4に係る電力変換回路を示す図である。実施例1と実施例2の回路を組み合わせることで、三相ブリッジ整流回路40を構成している。
【0033】
本実施例では、負荷43の上流側に3つのMOSFET(44,45,46)が設けられ、負荷43の下流側にも3つのMOSFET(47,48,49)が設けられている。個々のMOSFETのゲート電極端子には、それぞれのMOSFETのソース電極の電圧と、ドレイン電極の電圧とを取得してゲート電極に付与するゲート電圧を決定して出力する、独立したゲート駆動回路(441,451,461,471,481,491)が接続され、それぞれの6つのMOSFET(44,45,46,47,48,49)のスイッチングのタイミングを独立に最適制御することが可能となっている。
【0034】
入力側の交流電源41が三相の交流電源の場合は、本実施例の回路構成を用いることで、負荷の変動を加味した最適なスイッチング制御を行うことが可能となり、高効率の電力変換を実現することができる。
【0035】
実施例1~4で説明した実施態様は、電動車両等への給電で必要となる電力変換において大きな効果を発揮する。実際、電動車両等へ給電を行う際には、100V~200Vの商用交流電力を用いて10kW~20kWの電力変換を行うことになる。さらに、バスなどの大型電動車両の場合は100kWクラスの電力変換が必要になる。このような大電力の電力変換においては、ダイオードによるわずかな電圧降下であっても、それによる電力の損失は極めて大きく、その損失は、電力変換効率の低下のみでなく、放熱の課題や電子デバイスの寿命の課題を顕在化させることにつながる。本発明は、このような利用シーンで特に有益であり、電力の変換効率の向上と、それに伴う発熱の低減に向けた有望な解決手段となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。本願で開示した技術的思想の範囲において、様々な変更や修正を加えた例に想到し得ることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0037】
10,20 単相半波整流回路
11,21 交流電源
12,22 平滑コンデンサ
13,23 負荷
14,24 MOSFET
15,25 ゲート駆動回路
151,251 演算増幅器
152,252 フィードバック抵抗R
153,253 抵抗R
154,254 抵抗R
155,255 保護用クランプダイオード
16,26 直流電源
30 単相ブリッジ整流回路
31 単相交流電源
32 平滑コンデンサ
33 負荷
34,35,36,37 MOSFET
341,351,361,371 ゲート駆動回路
40 三相ブリッジ整流回路
41 三相交流電源
42 平滑コンデンサ
43 負荷
44,45,46,47,48,49 MOSFET
441,451,461,471,481,491 ゲート駆動回路


図1
図2
図3
図4
図5
図6