(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142810
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220926BHJP
B28B 3/00 20060101ALI20220926BHJP
B30B 11/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/34 B
B28B3/00 102
B30B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043008
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】井尾 謙介
(72)【発明者】
【氏名】杉内 幸也
【テーマコード(参考)】
4G054
4K029
【Fターム(参考)】
4G054AA05
4G054AC00
4G054BE05
4G054BE07
4K029DC07
4K029DC09
4K029DC12
4K029DC13
(57)【要約】
【課題】成形用の型の変形強度を向上して粉末材料の密度ムラを防ぎ、粉末材料を均等に加圧して高品質の成形体を製造する。
【解決手段】底面部及び該底面部の周囲から立ち上がる側面部を備え、上端に開口部を有する段ボール製型枠を準備する型枠準備工程と、型枠内に開口部から粉末材料を充填する材料充填工程と、粉末材料を充填した型枠の開口部に段ボール製蓋体を被せて型を構築する型組立工程と、型の外周囲に真空パックを施して密封状態とする真空パック形成工程と、真空パックを施した型を冷間等方圧加圧法により加圧する加圧工程とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部及び該底面部の周囲から立ち上がる側面部を備え、上端に開口部を有する段ボール製型枠を準備する型枠準備工程と、前記型枠内に前記開口部から粉末材料を充填する材料充填工程と、前記粉末材料を充填した前記型枠の前記開口部に段ボール製蓋体を被せて型を構築する型組立工程と、前記型の外周囲に真空パックを施して密封状態とする真空パック形成工程と、前記真空パックを施した前記型を冷間等方圧加圧法により加圧する加圧工程とを備えることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
前記加圧工程では、真空パックされた前記型の前記底面部の外底面と前記蓋体の上面とに硬質材料で形成した補強板を当接させた状態で加圧することを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記材料充填工程では、前記型枠の内面を離型紙で覆った状態で前記粉末材料を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記型枠は、前記底面部が四角形に形成されるとともに、該底面部の各辺から立ち上がる四つの前記側面部を有しており、前記蓋体は、前記側面部の上に載置される四角形に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記型枠は、前記底面部の周囲から立ち上がる前記側面部が筒状に形成されるとともに、該側面部の内側にリング状空間をあけて柱状の芯材が前記底面部上に設けられており、前記充填工程では、前記芯材と前記側面部との間の前記リング状空間に粉末材料を充填することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記成形体は、スパッタリングターゲット用成形体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料を等方圧加圧法により加圧して、スパッタリングターゲット等に用いられる成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末材料からスパッタリングターゲットを製作する場合には、粉末材料を加圧して成形体を製造し、その成形体を焼成することが行われる。この場合、高密度の成形体を得るための成形方法として、冷間等方圧加工法(Cold Isostatic Pressing法)が用いられることが多い。冷間等方圧加工法では、変形抵抗の少ない材料で形成された成形型の中に粉末材料が密封され、この成形型の周囲より流体圧が加えられることで、成形体表面が一様の加圧力を受けて、方向性なく圧縮成形される。
【0003】
このような冷間等方圧加工法(以下、CIP法と称す)により成形体を成形する製造方法として、例えば、特許文献1が開示されている。この成形体の製造方法では、成形型がウレタンゴム、シリコーンゴム、アメゴム、天然ゴムから選択されるゴム材料で形成され、この成形型の中にセラミックス粉末とバインダとからなる粉末材料が充填される。そして、CIP法により、成形型の周囲に等方的に圧力を加えるように成形体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、成形型をゴム材料とした場合には、粉末材料を充填したときに、成形型の側面が膨らんだり、底面がたわむなどの変形が生じることがある。そして、その変形時に粉末材料が成形型内で偏って配置されるなどにより、充填密度にムラが発生することがある。この密度ムラにより、CIP法で成形加工した後に成形体が変形したり、また、成形後の成形体を焼結したときに割れが生じて、所定の品質の製品が得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、成形用の型の変形強度を向上して粉末材料の密度ムラを防ぎ、粉末材料を均等に加圧して高品質の成形体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形体の製造方法は、底面部及び該底面部の周囲から立ち上がる側面部を備え、上端に開口部を有する段ボール製型枠を準備する型枠準備工程と、前記型枠内に前記開口部から粉末材料を充填する材料充填工程と、前記粉末材料を充填した前記型枠の前記開口部に段ボール製蓋体を被せて型を構築する型組立工程と、前記型の外周囲に真空パックを施して密封状態とする真空パック形成工程と、前記真空パックを施した前記型を等方圧加圧法により加圧する加圧工程とを備える。
【0008】
本実施形態における型枠及び蓋体を構成する段ボールは、ライナと波形の中芯とを一体化したトラス構造の断面を有している。このため、型の面方向に直交する方向の外力に対する変形強度が高く、粉末材料を充填したときに加わる力を分散して変形を抑えることができる。その反面、面方向に沿う外力に対して容易に変形させることができる。したがって、この段ボール製の型枠及び蓋体を用いることにより、材料充填工程での型枠等の変形を防止し、型内での粉末材料の移動を抑制して密度ムラを防ぐことができる。この状態で真空パック形成工程で密封状態とすることで、型の保形性を維持して粉末材料を均一な充填状態に保ち、加圧工程時には、粉末材料に追従するように収縮変形して、粉末材料全体に均等に力を加えることができ、均一な密度の成形体を製造することができる。
【0009】
成形体の製造方法において、前記加圧工程では、真空パックされた前記型の前記底面部の外底面と前記蓋体の上面とに硬質材料で形成した補強板を当接させた状態で加圧するとよい。
【0010】
補強工程を施すことにより、真空パックされた型を補強板で補強してその形状を保持でき、反りや変形をより確実に抑えて高精度な成形体を製造することができる。
【0011】
また、前記材料充填工程では、前記型枠の内面を離型紙で覆った状態で前記粉末材料を充填するとよい。型枠の内面を離型紙で覆った後に粉末材料を充填することにより、加圧工程の後に型から成形体が取り出しやすくなり、成形体の割れや欠けの発生をより確実に防止することができる。
【0012】
前記成形体は、スパッタリングターゲット用成形体とすることができる。密度のムラや変形を抑えて品質にばらつきのないスパッタリングターゲットに適した高品質の成形体を安定して製造できる。
そして、そのスパッタリング成形体に焼結工程を施して、必要な仕上げ工程を施すことにより、スパッタリングターゲットが製造される。
【0013】
成形体の製造方法の一つの実施態様として、前記型枠は、前記底面部が四角形に形成されるとともに、該底面部の各辺から立ち上がる四つの前記側面部を有しており、前記蓋体は、前記側面部の上に載置される四角形状に形成されている。
【0014】
この型枠により平板状の成形体を製造することができ、平板状であっても、段ボールの優れた剛性により型の変形を防止して、内部の粉末材料の移動を抑制し、密度ムラや割れ、角部の欠け、反り等のない均質な成形体を製造することができる。
【0015】
成形体の製造方法の他の一つの実施態様として、前記型枠は、前記底面部の周囲から立ち上がる前記側面部が筒状に形成されるとともに、該側面部の内側にリング状空間をあけて柱状の芯材が前記底面部上に設けられており、前記充填工程では、前記芯材と前記側面部との間の前記リング状空間に粉末材料を充填する。この製造方法では筒状の成形体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形用の型を段ボールで形成することで変形強度を高め、粉末材料の密度ムラを防ぎ、粉末材料を均等に加圧して高品質の成形体を製造することができる。しかも、段ボールにより型を作製するので、その取扱いも容易で、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の製造方法によって製造されるスパッタリングターゲットを示す斜視図である。
【
図3】
図1の型枠及び蓋体に用いられている段ボールを示す断面図である。
【
図4】型枠内に粉末材料を充填して蓋体を装着する状態を示す斜視図である。
【
図5】型に真空パックを施した状態を示す斜視図である。
【
図6】真空パック品に補強版を配置する状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の製造方法で製造されるスパッタリングターゲットを示す斜視図である。
【
図9】型枠に粉末材料を充填して蓋体を装着する状態を示す斜視図である。
【
図10】真空パック品に補強板を配置する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の製造方法で製造されるスパッタリングターゲットを示している。このスパッタリングターゲット1は、金属、あるいは酸化物、炭化物、窒化物等のセラミックス、もしくはこれらの混合物により形成されている。例えば、Cu、ZnO、CuGa、ITO(In
2O
3-SnO
2)、IGZO(InGaZnO
4)、AZO(Al
2O
3-ZnO)、ZrO
2-SiO
2-In
2O
3、Cr-CrO
2、Ta-SiO
2、Al
2O
3、SiO
2、GaN、SiCなどが用いられる。
また、
図1に示す例では、平面視が正方形の平板状に形成されている。大きいものでは、例えば600mm×300mmの平面サイズを有する。
【0019】
このスパッタリングターゲット1は、段ボールで形成した型21内に粉末材料2を充填し、真空パックした後、加圧することにより、圧粉体である成形体を製造し、その後、焼結工程、後加工工程を経て製造される。
成形体の製造工程は、型枠準備工程、材料充填工程、型組立工程、真空パック工程、加圧工程の順に実施される。
【0020】
型21は、
図2に示すように、段ボール製の型枠22と、同じく段ボール製の蓋体23と、必要に応じて設けられる離型紙24とを備えている。型枠22は、正方形状の底面部25と、底面部25の各辺から立ち上がる四つの側面部26と、開口部27とを有し、上方を開口した箱状に形成されている。蓋体23は、その型枠22の側面部26の上端に載置し得る正方形状に形成され、型枠22の開口部27を閉塞する。
【0021】
これら型枠22及び蓋体23を構成する段ボール31は、
図3に示すように、ライナ32と中芯33とを一体化したトラス構造の断面を有している。ライナ32は段ボール31の表裏に用いられる板紙であり、中芯33は波形に形成された板紙である。JIS規格では、段ボール31は、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Eフルート、Fフルート、Gフルートが規定され、Gに近づくほど細かい波形となる。いずれも中芯33が波板状に形成されていることから、内部が三角形を連ねたトラス構造に形成されており、外部より面方向と直交する方向に力が加わったときには、このトラス構造により力が分散されて剛性が確保される。一方、面方向に沿って外力が作用したときには、中芯を折りたたむように容易に変形することができる。
【0022】
本実施形態に使用する段ボール31としては、後述する真空パック形成工程後まで強度が保たれる程度であればよく、Eフルートが使用される。Eフルートは、
図3に示すように、両面ライナ32の間に、波形の段の数が30cmの範囲で93±5個の中芯33が配置され、ライナ32及び中芯33を合わせた厚さが約1.5mmに規定される。
【0023】
離型紙24は、例えば防湿紙や普通紙などからなり、型枠22及び蓋体23の内面を覆うように設けられる。
図2に示す例では、複数枚の半透明の離型紙24を組み合わせて型枠22の内面を覆い、また、充填された粉末材料の上面にも重ね得る大きさに設定されている。この離型紙24を型枠22及び蓋体23の内面を覆うように設けることにより、成形後の圧粉体である成形体が離型しやすくなり、成形体の欠け等が防止される。成形体に欠け等が生じ難い場合は、離型紙24は使用しなくてもよい。
【0024】
(型枠準備工程)
まず、型枠準備工程において、前述の型枠(段ボール製型枠)22を用意する。必要に応じて、底面部25と側面部26との角部、側面部26どうしの角部の外面にテープ等を貼り付けて補強してもよい。
次に、型枠22の内面に離型紙24を配置する。
【0025】
(材料充填工程)
次に、型枠22の開口部27まで粉末材料Pを充填する。この粉末材料Pは、金属粉末材料、酸化物粉末、又は窒化物粉末等からなり、酸化物粉末や窒化物粉末からなる場合は、原料粉末にバインダー等が混合される。
例えば、酸化物粉末としてZnO粉末は、メディアミルとしてはボールミル、バスケットミル、ビーズミル等を用いられ、分散材としてポリカルボン酸、ナフタレン、スルホン酸等を用い、水を溶剤として湿式粉砕混合により、粒径(D50)が0.1~50μm、純度99%以上の粉末に作製される。このZnOの原料粉末にバインダーとしてポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂を混合し、スプレードライ方式により250μm以下に分級される。
金属性の粉末材料は、例えばCu粉末の場合は乾式混合機により作製することができる。
【0026】
(型組立工程)
粉末材料Pを型枠22の開口部27まで充填した後、
図4に示すように、その上に離型紙24及び蓋体23を被せることで開口部27を閉塞し、型21を構成する。
(真空パック工程)
続いて、内部に粉末材料Pが充填された型21の外側を覆うように樹脂フィルム35により真空パックを施す。これにより、型21の内部が密封された状態となり、真空引きにより粉末材料P中の空隙がほぼなくなることから、硬い真空パック品36が形成される。この真空パック品36は、
図5に示すように、型21の外形に合わせた平板状となり、硬く固まっているため、保形性が良く、持ち運び等の取り扱いも容易である。
【0027】
(加圧工程)
図6に示すように、真空パック品36の両面に、硬質材料からなる補強板37を当接状態に配置し、これらをゴムバンドやバネ等で結束することにより、両補強板37によって真空パック品36を挟持した状態に保持する。補強板37は例えばアルミニウム合金、塩化ビニール等により形成され、真空パック品36を挟持することで、反りの発生が防止される。補強板37はアルミニウム合金以外の金属材料、塩化ビニール以外の樹脂材料、あるいは金属、樹脂以外の材料によって形成されていてもよい。
【0028】
そして、この補強板37によって補強された真空パック品36は、冷間等方圧加圧法により加圧されることで、粉末材料Pが一体に圧縮成形され、成形体に形成される。
冷間等方圧加圧法においては、真空パック品36が加圧されることから、体積比で例えば70%~80%程度の大きさに収縮する。このとき、型21を構成している段ボールは粉末材料Pとともに収縮する。特にEフルートの段ボールの場合、薄いために収縮もしやすく、粉末材料Pの収縮に追従するように収縮することにより、型21内での粉末材料Pの偏りが抑制され、密度ムラのない均質な成形体を得ることができる。また、粉末材料Pの収縮に追従することから、局部的に応力集中することが抑制され、欠けや割れの発生も防止される。
【0029】
冷間等方圧加圧がなされた後、圧力を開放し、型21から成形体(この場合、CIP成形体)が取り出される。型21は収縮しているので、1回の冷間等方圧加圧ごとに使い捨てとなる。型21から取り出した成形体は、表面を洗浄して汚れ等が取り除かれ、スパッタリングターゲット用成形体となる。
【0030】
(焼結工程)
次いで、スパッタリングターゲット用成形体を焼結炉(図示略)内に投入して、窒素ガス、不活性ガス、あるいは還元ガス等の雰囲気下で加熱され、焼結されることにより、焼結体が製造される。
(後加工工程)
その後、焼結体の表面を研削するなどにより、反りやしわを除去し、所望の厚さのスパッタリングターゲット1を作製する。
【0031】
上述したように、この製造方法は、等方圧加圧工程前に、段ボールで作製した型21内に粉末材料Pを充填した上で真空パックしているので、型21内で粉末材料Pが移動して、型21内で偏って配置されたり、型21の側面部26が膨らんだり、撓み等が生じることが抑制され、密度ムラを抑えて、均質な成形体を得ることができる。
また、その真空パック品36を補強板37で補強して等方圧加圧しているので、加圧作業時の変形も防止することができ、高品質のスパッタリングターゲット用成形体を製造することができる。
【0032】
なお、枠体22の底面部24及び蓋体23を正方形に形成したが、正方形以外にも、長方形等の四角形、円形等の形状とすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態で製造される成形体は、
図7に示す円筒形スパッタリングターゲット11のための成形体である。
この実施形態で用いられる型41は、
図8に示すように、段ボール製の型枠42及び蓋体43と、柱状の芯材44とから構成される。
【0034】
型枠42は、円板状の底面部45と、その周囲から立ち上がる円筒状の側面部46とにより、上部が開口部47とされた有底円筒状の容器として構成されている。芯材44は、S45C(炭素鋼)、SUSなどのFeよりも硬質の金属材料により中実に設けられ、型枠42の側面部46により構成される円柱よりも小さい半径で、側面部46と同じ高さの円柱状に形成される。さらに、芯材44の外周面には、離型性を良くするために硬質Crめっき皮膜などの離型材皮膜が形成される。
【0035】
そして、まず型枠準備工程において、型枠42の側面部46により囲まれた空間の中心部に芯材44を側面部46と同心状に配置する。これにより、側面部46と芯材44との間にリング状の充填用空間が形成される。また、必要に応じて、型枠42の内面に離型紙を設けてもよい。
次に、
図9に示すように、この型枠42と芯材44との間のリング状の充填用空間内に粉末材料Pを充填し(材料充填工程)、蓋体43により開口部27を閉塞する(型組立工程)。その後、この粉末材料Pが充填された型41の全面を樹脂フィルム51で被覆するように真空パックする(真空パック工程)。
【0036】
次いで、真空パック品52において型枠42の底面部45の裏面と蓋体43の表面とを円板状の硬質の補強板49で挟み込むようにして型41を補強する。補強後、第1実施形態と同様、冷間等方圧加圧法による加圧工程が実施される。この加圧工程において、粉末材料Pが収縮する際に型枠42及び蓋体43がその収縮に追従するように収縮することにより、粉末材料Pの偏りが抑制され、密度ムラのない均質な成形体(この場合、CIP成形体)を得ることができる。また、粉末材料Pの収縮に型枠42等が追従することから、局部的に応力集中することが抑制され、欠けや割れの発生も防止される。
【0037】
冷間等方圧加圧がなされた後、圧力を開放し、型41から成形体が取り出される。このとき、段ボール製の型枠42は容易にばらすことができる。成形体は、収縮により芯材44の外周面を圧迫しているが、芯材44の外周面に離型性皮膜が形成されていることから、軸方向に力を加えて離脱することができる。型41をばらした後、洗浄することで、円筒状のスパッタリングターゲット用成形体が形成される。
その後、スパッタリングターゲット用成形体を所定の条件で焼結し(焼結工程)、後加工工程を経て、スパッタリングターゲット11が製造される。
【実施例0038】
本発明の製造方法の実施例として両面段ボールのEフルートを用い、比較例としてゴム材料を用いて、これらの各材料により第1実施形態の平板状成形体用、第2実施形態の円筒状成形体用の型をそれぞれ構築した。ゴム材料を用いた型は、型枠と同じ形状のゴム製の型枠に粉末材料を充填した後、そのゴム製の型枠にゴム製の蓋体を接着して構成される。円筒状成形体用の型には、S45C製の芯材の外周面に硬質Crめっき皮膜を形成した。
【0039】
粉末材料としては、酸化物材料として、粒径(D50)が0.1~50μm、純度99%以上のZnO粉末、金属材料として、粒径(D50)が0.1~50μm、純度99%以上のCu粉末を用いた。
ZnO粉末は、ボールミルを用い、分散材としてポリカルボン酸を用い、水を溶剤として湿式粉砕混合により作製した。このZnO粉末にバインダーとしてポリビニルアルコールを用い、スプレードライ方式により250μm以下に分級した。
Cu粉末は乾式混合機により作製した。
【0040】
ZnO粉末のCIP法による加圧工程は、100MPa以上の圧力を付与した。その後、550℃まで昇温速度20℃/hr程度で徐々に昇温させながら脱脂した後、200℃/hrの昇温速度で1300℃まで昇温し、その温度に5hr保持することで焼成した。
【0041】
Cu粉末のCIPによる加圧工程は、100MPa以上の圧力を付与した。その後、窒素雰囲気で200℃/hrの昇温速度で950℃まで昇温し、その温度に5hr保持することで焼成した。
【0042】
これらの成形体について焼成工程で割れの有無を調べた。
その結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
この表から明らかなようにゴム型を用いた例では成形体に割れが認められたが、段ボールを用いた型においては割れが認められなかった。