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特開2022-142815放射性物質の拡散防止及び除染のための小型ダムシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142815
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】放射性物質の拡散防止及び除染のための小型ダムシステム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/22 20060101AFI20220926BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20220926BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G21F9/22 Z
G21F9/12 501F
G21F9/12 501D
G21F9/12 501B
G21F9/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043018
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 紀之
(72)【発明者】
【氏名】長洲 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】安食 貴也
(57)【要約】
【課題】未除染区域又は再汚染区域からの流入物に含まれる放射性物質が、雨水又は流水によって人里の除染済み生活環境区域へ移動し拡散することを防止又は抑制するため、効率的で確実な放射性物質の捕集が行える小型ダムシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯と人里との間に設けることにより、雨水又は流水に溶存態又は懸濁態の状態で含まれる放射性物質の拡散防止又は除染を行うための小型ダムシステム1であって、不透水性の層を有する底部4と、(A)放射性物質吸着剤5、及び(A)放射性物質吸着剤を凝集沈殿させるためのイオン性凝集剤(B)又は(C)の少なくともいずれかを収納するための収納部6と、雨水又は流水8の人里への流出を一時的に堰き止めるため、人里の側に形成された壁部材7と、を有する小型ダムシステム用ユニット3を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中にイオンで又は低分子有機物と結合して溶存する溶存態、及び水中で懸濁物として存在する懸濁態、の少なくともいずれかの状態で雨水又は流水に含まれる放射性物質の拡散防止及び除染を行うための小型ダムシステムであって、
前記小型ダムシステムが、
不透水性の層を有する底部と、
次の(A)、(B)及び(C)、すなわち
(A)前記溶存態の状態で含まれる放射性物質を吸着するための放射性物質吸着剤、
(B)前記懸濁態の状態で放射性物質が含まれる前記懸濁物を凝集させるために前記懸濁物の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、及び
(C)前記小型ダムシステムの上流側であらかじめ散布された前記(A)の放射性物質吸着剤を凝集させるために前記(A)の放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、の少なくともいずれかの捕集材を収納する収納部と、
山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する前記雨水又は流水が人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有する小型ダムシステム用ユニットを備え、
前記小型ダムシステム用ユニットを、第一の小型ダムシステム用ユニットとして、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯と前記人里との間に設置し、前記雨水又は流水を前記収納部に一時的に滞留させることによって、前記(A)、(B)及び(C)の少なくともいずれかの捕集材で前記雨水又は流水に含まれる放射性物質の捕集を行うことを特徴とする小型ダムシステム。
【請求項2】
前記小型ダムシステムにおいて、前記該第一の小型ダムシステム用ユニットの下流に位置する前記人里の側に、前記第一の小型ダムシステム用ユニットと直列して第二の小型ダムシステム用ユニットを設け、
前記第二の小型ダムシステム用ユニットが、
不透水性の層を有する底部と、
次の(D)、(E)、及び(F)、すなわち
(D)前記(A)の放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
(E)前記(B)のイオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、及び
(F)前記(C)のイオン性の凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
の少なくともいずれかの捕集材を収納する収納部と、
前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する雨水又は流水が前記人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の小型ダムシステム。
【請求項3】
前記小型ダムシステムにおいて、前記第二の小型ダムシステム用ユニットの下流位置する前記人里の側に、前記第二の小型ダムシステム用ユニットと直列して第三の小型ダムシステム用ユニットを設け、
前記第三の小型ダムシステム用ユニットが、
不透水性の層を有する底部と、
(G)前記(D)のイオン性凝集剤極性とは逆の極性を有する別のイオン性凝集剤を放射性物質の捕集材として収納する収納部と、
前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する雨水又は流水が前記人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有することを特徴とする請求項2に記載の小型ダムシステム。
【請求項4】
前記小型ダムシステムにおいて、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に設置される前記第一の小型ダムシステム用ユニットが、前記放射性物質移行抑制エリア内の一部を溝掘又は開渠することによって形成される凹部内に設置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項5】
前記小型ダムシステム用ユニットにそれぞれ備わる前記収納部が、不透水性の層を有する底部と、底部の両側に設ける2つの側壁と、前記2つの側壁の間に設けられ、地表から所望の高さを有するように最上部が地表から突出する壁部材とを有し、これら閉じられた4面以外の2面を開口することによって形成される空間を、前記捕集材の収納用場所として使用することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項6】
前記小型ダムシステムにおいて、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に設置される前記第一の小型ダムシステム用ユニットが、前記底部において前記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側に位置する端部に、前記底部を形成する面よりも下部方向の斜めに傾けて設けられた誘導板を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項7】
前記誘導版が、前記小型ダムシステム用ユニットの端部との接続若しくは接合によって、又は前記小型ダムシステム用ユニットとの一体成形によって形成され、前記底部を形成する面よりも下部方向に30~90度の角度で傾いた形状を有することを特徴とする請求項6に記載の小型ダムシステム。
【請求項8】
前記小型ダムシステム用ユニットの複数が、前記放射性物質移行抑制エリア内で、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から前記人里に向けて直列又は並列に設置されることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項9】
山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向かう方向に対して垂直又は斜めの方向に、前記小型ダムシステム用ユニットの複数を並列に配置するため、前記小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記小型ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を有することを特徴とする請求項8に記載の小型ダムシステム。
【請求項10】
山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から人里に向かう方向に沿って、前記小型ダムシステム用ユニットの複数を直列に配置するため、前記小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記小型ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の小型ダムシステム。
【請求項11】
前記捕集材は、透水性又は通水性の袋に内包された状態で使用されることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項12】
前記(A)の放射性物質吸着剤が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイト、モンモリロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上の無機粒子であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【請求項13】
前記(A)の放射性物質吸着剤がベントナイトであることを特徴とする請求項12に記載の小型ダムシステム。
【請求項14】
前記イオン性凝集剤が、カチオン性高分子、アニオン性高分子、カチオン性高分子とアニオン性高分子を有し、且つ、前記カチオン性高分子とアニオン性高分子との電荷比が1から外れるように配合して調製した高分子凝集剤、及び1分子中にカチオン性の単量体構造単位とアニオン性の単量体構造単位を有し、且つ、前記カチオンとアニオンとの電荷比が1から外れるように調整して合成した両性高分子凝集剤の群からなる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の小型ダムシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質及び前記放射性物質を吸着した放射性物質吸着剤の少なくとも何れかを含む雨水又は流水が、山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から人里へ流入して前記放射性物質が拡散するのを防止するとともに、前記放射性物質の除染を大きな手間をかけないで効率的に行うための小型ダムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電関連施設内及び何らかの原因で原子力発電関連施設から外部へ漏れたり飛散したりする放射性物質は、周辺の環境を汚染し、人体に対して甚大な悪影響を与えることが予想される。平成23年3月に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故は、広範囲にわたって放射性セシウムで周辺地域が汚染される状況に到った。この状態からの早急な復旧を図るため、広範囲に及ぶ放射性物質の除染を行うことが必要であり、まず優先的に人の生活環境に深く結びついた居住地及び田畑等の除染作業が進められた。その結果、居住地及び田畑等の除染はほぼ完全に行われているが、森林や里山(雑木林を含む)については、面積が広大であること、及び除染作業が居住地や田畑等の平地の場合と比べて効率性及び経済性の点から困難であることから、いまだ除染が進んでいない地域が残っているのが現状である。
【0003】
セシウム等の放射性物質は半減期が数十年以上に及ぶものもあり、この被害は放射性物質の飛散や漏洩が発生した時点だけではなく、その後もずっと続くことになる。そのため、除染が行われていない森林や里山(雑木林を含む)からセシウム等の放射性物質が居住地及び田畑等へ移行し、せっかく除染を行ったこれら住環境地域が再度汚染される可能性がある。
【0004】
また、除染作業が既に完了した森林や里山(雑木林を含む)であっても、除染作業の困難さから放射性物質を完全に除去できない場合がある。その場合にも、森林や里山(雑木林)に残存した放射性物質、及び時間の経過とともに蓄積した放射性物質によって住環境地域が再汚染される可能性がある。再汚染が頻繁に起こると、住民の生活及び健康が脅かされるとともに、再汚染の度に除染作業を行う必要があるため、手間及び費用において相当の負担がある。
【0005】
以上の点から、森林や里山(雑木林を含む)等の未除染区域又は汚染区域からの流入物によって居住地及び田畑等の除染された生活環境区域が再汚染されることを防止又は抑制するため、これまでも様々な方法が提案されていた(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0006】
前記特許文献1~4に開示された除染方法では、放射性物質の移動を防止又は抑制するため、未除染区域又は汚染区域と、除染された生活環境区域との境界域に放射性物質吸収剤を設置する場所を設けることが提案されている。前記放射性物質吸収剤は、再汚染を防止又は抑制を行う期間中に取扱いや交換が容易になるように、袋や繭玉に詰め入れや封入が行われたり、吸着性シートに含有させる方法が採用されている。また、前記放射性物質回収剤を所望の場所に固定して設ける際に、開渠又は溝、止め柵及び杭等によって前記放射性物質回収剤の固定が行われている。
【0007】
一方、森林や里山(雑木林を含む)等の除染方法については、前記特許文献1~4以外にも別の方法が提案されている。例えば、特許文献5には、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯と居住地又は田畑との境界に、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯であらかじめ放射性物質を吸着した無機粒子を凝集させるための凝集剤を含有する緩衝地帯を設ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-142320号公報
【特許文献2】特開2014-139553号公報
【特許文献3】特開2014-182006号公報
【特許文献4】特開2014-115273号公報
【特許文献5】特許第6651113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~4には、放射性物質吸収剤を含む袋、繭玉又は透水性吸着シートが土壌の上にそのまま据付けられる方法が開示されているだけで、放射性物質が放射性物質吸収剤を設けた場所の底部から漏れ出して地面へ侵入することについては十分な認識がされているとは言えなかった。前記特許文献1~4に記載の従来技術では、放射性物質が放射性物質吸収剤に完全に吸収又は吸着される前に、放射性物質を含んだ状態の流入物が放射性物質吸収剤を設けた場所の底部から漏れ出て地面に到達し、地面内に侵入しやすくなる。地面内に侵入した流入物は、その後、地表へ現れてくる可能性が高いため、放射性物質が生活環境区域へ拡散するという問題の発生がどうしても避けられない。したがって、放射性物質が放射性物質吸収剤を設けた場所から漏れ出した後、除染が完了した生活環境区域へ流出しないようにするためには、放射性物質の拡散を確実に食い止めるための方策を別に講ずる必要があった。
【0010】
また、上記の先行技術の中で前記特許文献3には、図4において放射性吸着物質を含む透水性吸着シートを溝の内法に貼付ける方法が記載されているが、該透水性吸着シートは厚さが薄く、設置面積が広くとれないだけでなく、そもそも前記透水性吸着シートに吸収又は吸着することができる放射性吸着物質の絶対量に限界がある。そのため、放射性物質の吸収又は吸着が完了しない段階で放射性汚染水が前記溝の上方を通過し、除染が完了した生活環境区域の方へ流れ出る放射性汚染水の量が多くなる。したがって、前記特許文献3の図4に記載の方法でも、再汚染の防止又は抑制の効果を十分に得ることが困難であった。
【0011】
さらに、前記特許文献1~4に開示されている除染方法は、放射性物質吸収剤又は放射性物質吸着剤を含む袋や繭玉を一つづつ交換したり、また、吸着性シートを交換する場合はシート全面を貼り代える必要があり、交換作業等を含めてメンテナンスを行うために相当の手間と費用が必要になる。今後、広範囲に及ぶ除染を行うには、前記放射性物質吸収剤の設置を簡便な方法で効率的に行うだけでなく、交換作業も含めてメンテナンス費用の低減が求められている。
【0012】
一方、前記特許文献5に記載の除染方法及びそのシステムは、森林や里山の少なくとのいずれかと居住地又は田畑との境界に緩衝地帯を設けることが記載されているだけであり、放射性物質を吸着する無機粒子が前記緩衝地帯で凝集する前に下流に流出したり、また、前記無機粒子との凝集が十分に行われる前に凝集剤そのものの流出もみられるため、放射性物質の居住地又は田畑へ移行することが避けられない場合があった。そのため、放射性物質を吸着する無機粒子を凝集させる方法で行う除染方法及びそのシステムにおいても、放射性物質を吸着する無機粒子による再汚染を防止又は抑制することが求められていた。
【0013】
加えて、森林や里山(雑木林を含む)等の未除染区域又は再汚染区域からの流入物は、常に一定の量で流入するわけではなく、大雨や洪水又は部分的な山崩れ等の何らかの原因によって大量に流入することがある。しかしながら、前記特許文献1~5に開示されている方法は、そのような非常又は異常の事態を含めた除染が想定されたものとは言えなかった。そのため、あらゆる状況や環境においても放射性物質による再汚染の防止又は抑制の機能を従来以上に発揮し得る方法の確立が求められている。
【0014】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、山林や里山等の未除染区域又は汚染区域から流入物である雨水又は流水を堰き止めるための小型ダムを設けるとともに、該小型ダムの内部で前記放射性物の捕集又は固定が確実にできる構成と構造を採用し、前記雨水又は流水が前記小型ダムから簡単に漏れ出すことを抑制することにより、前記流入物に含まれる放射性物質が、既に除染されている生活環境区域へ移動して拡散することを防止又は抑制できる小型ダムシステムを提供することを目的とする。さらに、前記放射性物質の捕集及び固定の方法を、従来から使用されている放射性物質吸収剤(又は放射性物質を吸着する無機粒子)だけに限定しないで、さらに、様々な材料と捕集方法とを組み合わせた態様で放射性物質の捕集確度を高めることにより、前記放射性物質の捕集に大きな手間をかけないで効率的な除染を行うことができる小型ダムシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、未除染区域又は再汚染区域からの流入物である雨水又は流水を堰き止める機能と、前記雨水又は流水を一時的に滞留させることによって前記放射性物質の捕集及び固定が確実にできる時間を十分に確保できる機能とを有する小型ダムの構造と構成を採用し、さらに、前記放射性物質の捕集及び固定を行うため、放射性物質吸収剤を使用するだけでなく、前記放射性物質を吸収した放射性物質吸収剤を凝集及び沈殿させるためのイオン性凝集剤を使用する微小ダムシステムを構築することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0016】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、水中にイオンで又は低分子有機物と結合して溶存する溶存態、及び水中で懸濁物として存在する懸濁態、の少なくともいずれかの状態で雨水又は流水に含まれる放射性物質の拡散防止及び除染を行うための小型ダムシステムであって、
前記小型ダムシステムが、
不透水性の層を有する底部と、
次の(A)、(B)及び(C)、すなわち
(A)前記溶存態の状態で含まれる放射性物質を吸着するための放射性物質吸着剤、
(B)前記懸濁態の状態で放射性物質が含まれる前記懸濁物を凝集させるために前記懸濁物の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、及び
(C)前記小型ダムシステムの上流側であらかじめ散布された前記(A)の放射性物質吸着剤を凝集させるために前記(A)の放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
の少なくともいずれかの捕集材を収納する収納部と、
山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する前記雨水又は流水が人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有する小型ダムシステム用ユニットを備え、
前記小型ダムシステム用ユニットを、第一の小型ダムシステム用ユニットとして、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯と前記人里との間に設置し、前記雨水又は流水を前記収納部に一時的に滞留させることによって、前記(A)、(B)及び(C)の少なくともいずれかの捕集材で前記雨水又は流水に含まれる放射性物質の捕集を行うことを特徴とする小型ダムシステムを提供する。
[2]本発明は、前記小型ダムシステムにおいて、前記第一の小型ダムシステム用ユニットの下流に位置する前記人里の側に、前記第一の小型ダムシステム用ユニットと直列して第二の小型ダムシステム用ユニットを設け、
前記第二の小型ダムシステム用ユニットが、
不透水性の層を有する底部と、
次の(D)、(E)、及び(F)、すなわち
(D)前記(A)の放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
(E)前記(B)のイオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、及び
(F)前記(C)のイオン性の凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
の少なくともいずれかの捕集材を収納する収納部と、
前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する雨水又は流水が前記人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有することを特徴とする前記[1]に記載の小型ダムシステムを提供する。
[3]本発明は、前記小型ダムシステムにおいて、前記第二の小型ダムシステム用ユニットの下流に位置する前記人里の側に、前記第二の小型ダムシステム用ユニットと直列して第三の小型ダムシステム用ユニットを設け、
前記第三の小型ダムシステム用ユニットが、
不透水性の層を有する底部と、
(G)前記(D)のイオン性凝集剤極性とは逆の極性を有する別のイオン性凝集剤を放射性部物質の捕集材として収納する収納部と、
前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する雨水又は流水が前記人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、前記人里の側に形成された壁部材と、を有することを特徴とする前記[2]に記載の小型ダムシステムを提供する。
[4]本発明は、前記小型ダムシステムにおいて、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に設置される前記第一の小型ダムシステム用ユニットが、前記放射性物質移行抑制エリア内の一部を溝掘又は開渠することによって形成される凹部内に設置されることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[5]本発明は、前記小型ダムシステム用ユニットにそれぞれ備わる前記収納部が、不透水性の層を有する底部と、底部の両側に設ける2つの側壁と、前記2つの側壁の間に設けられ、地表から所望の高さを有するように最上部が地表から突出する壁部材とを有し、これら閉じられた4面以外の2面を開口することによって形成される空間を、前記捕集材の収納場所として使用することを特徴とする前記[1]~[4]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[6]本発明は、前記小型ダムシステムにおいて、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に設置される前記第一の小型ダムシステム用ユニットが、前記底部において前記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側に位置する端部に、前記底部を形成する面よりも下部方向の斜めに傾けて設けられた誘導板を有することを特徴とする前記[1]~[5]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[7]本発明は、前記誘導版が、前記小型ダムシステム用ユニットの端部との接続若しくは接合によって、又は前記小型ダムシステム用ユニットとの一体成形によって形成され、前記底部を形成する面よりも下部方向に30~90度の角度で傾いた形状を有することを特徴とする前記[6]に記載の小型ダムシステムを提供する。
[8]本発明は、前記小型ダムシステム用ユニットの複数が、前記放射性物質の移行抑制エリア内で、前記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から前記人里に向けて直列又は並列に設置されることを特徴とする前記[1]~[7]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[9]本発明は、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向かう方向に対して垂直又は斜めの方向に、前記小型ダムシステム用ユニットの複数を並列に配置するため、前記小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記小型ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を有することを特徴とする前記[8]に記載の小型ダムシステムを提供する。
[10]本発明は、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向かう方向に沿って、前記小型ダムシステム用ユニットの複数を直列に配置するため、前記小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記小型ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を有することを特徴とする前記[8]又は[9]に記載の微小ダムシステムを提供する。
[11]本発明は、前記捕集材が、透水性又は通水性の袋に内包された状態で使用されることを特徴とする前記[1]~[10]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[12]本発明は、前記(A)の放射性物質吸着剤が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイト、モンモリロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上の無機粒子であることを特徴とする前記[1]~[11]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
[13]本発明は、前記(A)の放射性物質吸着剤がベントナイトであることを特徴とする前記[12]に記載の小型ダムシステムを提供する。
[14]本発明は、前記イオン性凝集剤が、カチオン性高分子、アニオン性高分子、カチオン性高分子とアニオン性高分子を有し、且つ、前記カチオン性高分子とアニオン性高分子との電荷比が1から外れるように配合して調製した高分子凝集剤、及び1分子中にカチオン性の単量体構造単位とアニオン性の単量体構造単位を有し、且つ、前記カチオンとアニオンとの電荷比が1から外れるように調整して合成した両性高分子凝集剤の群からなる少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記[1]~[13]のいずれかに記載の小型ダムシステムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の小型ダムシステムは、山林地帯や山里(雑木林を含む)等の未除染区域又は再汚染区域と除染された生活環境区域との間に小型ダムシステム用ユニットを設けるときに、未除染区域又は汚染区域から流入する雨水又は流水が前記生活環境区域へ簡単に流出しないように一時的に滞留させるような小型ダムシステム用ユニットの構成と構造を採用することにより、前記雨水又は流水に含まれる前記放射性物質が、放射性物質吸着剤、又は該放射性吸着剤を凝集沈殿させるイオン性凝集剤によって確実に吸収又は捕集され、固定される時間を十分に確保することができる。それにより、前記放射性物質が除染された生活環境区域へ移動し、拡散することを、従来技術に比べてより確実に、且つ、効率的に防止又は抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、前記放射性物質の捕集及び固定を行うときの方法を従来から使用されている放射性物質吸着剤の使用によって放射性物質を吸収又は吸着させる方法に限定しないで、前記放射性物質を吸着した放射性物質吸着剤の凝集沈殿作用を利用して前記放射性物質を固定化できる機能を有するイオン性凝集剤を使用する方法にまで広げることにより、前記放射性物質の捕集に大きな手間をかけないで効率的な捕集を行うことができる微小ダムシステムを提供することができる。特に、前記イオン性凝集剤を使用する方法は、イオンの状態で溶存する放射性物質だけでなく、前記放射性物質を吸収又は吸着した放射性物質吸着剤を、イオン結合等によって短時間で凝集及び沈殿させることができるため、前記放射性物質の移動及び拡散を効率的に防止又は抑制することができる。
【0019】
また、本発明の小型ダムシステムは、前記小型ダムシステム用ユニットの複数を前記放射線物質の移行抑制エリア内で直列状又は並列状の一列に配置することにより、簡便な方法で放射性物質の除染を確実に行うことができるだけでなく、除染費用の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態による小型ダムシステムの概要を示す断面図である。
図2】山林斜面から採取した水に含まれるセシウム(Cs137)濃度の測定例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態において、放射性物質の捕集方法(ケース1~3)に応じて収納部に収納する捕集材が異なる場合を示した図である。
図4】本発明の第2の実施形態において、放射性物質の捕集方法(ケース4~6)に応じて収納部に収納する捕集材が異なる場合を示した図である。
図5】本発明の第3の実施形態において、放射性物質の捕集方法(ケース7)に応じて収納部に収納する捕集材が異なる場合を示した図である。
図6】本発明の第4の実施形態において、溝掘又は開渠の凹部内に、小型ダムシステム用ユニットを1以上で設置したときの小型ダムシステムの例を断面図で示す。
図7】小型ダムシステム用ユニットにおいて、底部、側壁及び壁部材によって形成される空間を捕集材の収納場所として有する小型ダムシステム用ユニットの具体的な形状例を示す断面図である。
図8】山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に位置する底部の端部に誘導板を設けた小型ダムシステム用ユニットの例を示す断面図である。
図9】小型ダムシステム用ユニットの例として用いるプラスチック製テミの複数個を連結した状態の例を示す斜視図である。
図10】収納部に捕集材を内包する袋を2段で積み上げて構築したプラスチック製テミを有する小型ダムシステムの例を示す図である。
図11】本発明の実施例1において、放射性物質としてCs137が含まれる山林の斜面に第1及び第2の小型ダムシステム用ユニットを配置したときの様子を示す図及びその配置模式図である。
図12】本発明の実施例1による小型ダムシステムを説明するための図である。
図13】本発明の実施例2による小型ダムシステムを説明するための図である。
図14】本発明の実施例3による小型ダムシステムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
本実施形態による小型ダムシステムの概要を、図1に示す断面図を用いて説明する。図1の(a)、(b)及び(c)に示すように、小型ダムシステム1は、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯と人里との間に位置する放射性物質移行抑制エリア2内に設けられる小型ダムシステム用ユニット3(後述の第一の小型ダムシステム用ユニットに相当するもの)を備える。そして、小型ダムシステム用ユニット3は、不透水性の層を有する底部4、放射性物質吸着剤及び放射性物質吸着剤を凝集及び沈殿させるためのイオン性凝集剤の少なくともいずれかの捕集材5を収納するための収納部6、及び壁部材7を有する。ここで、図1の(a)、(b)及び(c)は、降雨等によって雨水又は流水8が山林又は里山から小型ダムシステム用ユニット3に流れ込み始める状態、雨水又は流水8が小型ダムシステム用ユニット3の収納部6に溜まり始めて壁部材7の上部頂点に到達し始める状態、及び雨水又は流水8が壁部材7の上部頂点を乗り越えて人里の方向へ流れ出す状態をそれぞれ示す図である。
【0022】
図1の(b)に示すように、小型ダムシステム用ユニット3の壁部材7は、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から流入する雨水又は流水8が人里に流出するのを一時的に堰き止めるため、放射性物質移行抑制エリア2の人里の側に形成される。本発明の実施形態による小型ダムシステム1においては、図1の(a)から(c)に示す状態に至るまで雨水又は流水8が収納部6に滞留する。小型ダムシステム用ユニット3の底部4は不透水性の層を有するため、図1の(a)から(c)を経る間に、流入する雨水又は流水8に含まれる放射性物質が、放射性物質吸着剤及びイオン性凝集剤の少なくともいずれかの捕集材5に吸着又は捕集されるようになる。それにより、放射性物質が人里に移動し、既に除染されている生活環境区域へ拡散するのを防止又は抑制することができるため、放射性物質の拡散防止及び除染を確実に行うことができる。
【0023】
図1に示す小型ダムシステム用ユニット3において、仮に、底部4に設ける層が不透水性ではなく透水性である場合には、収納部6に入った雨水又は流水8はそのまま底部4の下側の土壌にまで侵入してしまうため、放射性物質が放射性物質吸着剤に吸着されるときの時間が短くなる。また、放射性物質吸着剤を、該放射性物質吸着剤の極性と逆の極性を有するイオン性凝集剤と凝集及び沈殿させる場合でも、放射性物質吸着剤とイオン性凝集剤との接触時間が短くなる。底部4に設ける層が、仮に難透水性を有する場合であっても雨水又は流水8の浸入を完全に遮断することができず、また、長期間使用に伴って劣化等もみられるため遮水性を維持することが困難である。このように、難透水性の層では程度の差があるだけで根本的な解決を図ることができず、雨水又は流水8に含まれる放射性物質を、放射性物質吸着剤及びイオン性凝集剤の少なくともいずれかの捕集材5に十分に吸着又は沈殿及び凝集させて捕捉することができないため、放射性物質が人里へ移動し、既に除染されている生活環境区域への拡散が避けられない。この問題は、小型ダムシステム用ユニット3において壁部材7が無い場合でも起きる。したがって、本発明の実施形態による小型ダムシステム1は、小型ダムシステム用ユニット3が、不透水性の層を有する底部4及び壁部材7を備えることが必須の構成となる。
【0024】
一方、小型ダムシステム用ユニット3の側部については、該ユニット3の形状をコンパクトにすることによって運搬性と設置性の向上を図るとともに、捕集材5の収納性も同時に高められることから、側壁を設けることが好適である。しかしながら、次の場合には省略してもよい。例えば、側壁を有しない小型ダムシステム用ユニット3を並列状に連続的に配置する場合、又は小型ダムシステム用ユニット3の幅を放射性物質移行抑制エリア2の幅と同程度まで広げて設置する等の場合である。それらの場合では、小型ダムシステム用ユニット3の幅方向両端において、放射性物質の捕集の機能が側壁を有する場合に比べてやや劣ることもあるが、そのような機能低下がみられる領域は狭いことから捕集効果の大幅な低下がみられない。
【0025】
そもそも山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から流れてくる雨水又は流水8には、セシウム等の放射性物質がイオン(例えばセシウムCsイオン)の形態で溶存する状態又は低分子有機物と結合して水中に溶存する状態、及び懸濁物として水中に含まれた状態の2つの状態で存在する。本発明においては、前者及び後者を、それぞれ溶存態及び懸濁態と呼ぶ。前記溶存態は、放射性物質のイオンの状態又はそれが微小な有機物に結合した状態で存在しており、0.45μmフィルタを通過するもののして取り扱う。また、前記懸濁態は、森林等の腐食物質等との結合によって水中のナトリウムイオン等と交換して水中に溶け出す交換態、及び土壌中に既に存在していた粘土鉱物等に吸着・固定される固定態の少なくとも何れかの様態であり、容易に水中に溶け出せない状態のことを意味する。
【0026】
水中に含まれる放射性物質が、溶存態及び懸濁態でそれぞれ含まれることを検証した結果について一例を図2に示す。図2は、放射性物質としてセシウムで汚染された2か所の山林斜面(GA及びGB)の地表又は腐葉土中を流れると考えられる水の約1カ月の全量をそれぞれ採取し、0.45μmフィルタを用いて溶存態及び懸濁態にそれぞれ分離し、それぞれに含まれるセシウム(Cs137)濃度を測定した結果である。図2に示すように、2か所の山林斜面においてセシウム(Cs137)は水中に溶存態及び懸濁態の状態で存在しており、各状態において検出可能な濃度でセシウム(Cs137)が検出されることが確認された。
【0027】
本実施形態による小型ダムシステムにおいて、収納部6に収納される捕集材5は、雨水又は流水8に含まれる放射性物質の捕集方法に応じて、その種類を選択することができる。そこで、放射性物質の捕集方法に応じて選択する捕集材5の種類を、図3図4及び図5を用いて説明する。図3は、図1に示すものと基本的に同じ構成を有する小型ダムシステム用ユニット3において、放射性物質の捕集方法(ケース1~3)に応じて、収納部6に収納する捕集材5が異なる場合を示した図である。
【0028】
図3に示す第1のケースは、捕集材5として(A)放射性物質吸着剤を収納部6に収納するときの捕集方法である。(A)放射性物質吸着剤は、雨水又は流水8に溶存態として存在する放射性物質を吸着し、固定するために使用される。イオン性の放射性物質及び微小な有機物に結合した放射性物質は、(A)放射性物質吸着剤によって捕集される。
【0029】
第2のケースは、捕集材5として(B)イオン性凝集剤を収納部6に収納するときの除染方法である。放射性物質が雨水又は流水8中に懸濁態として存在する懸濁物に含まれる場合、前記懸濁物を(B)イオン性凝集剤によって凝集及び沈殿させることによって放射性物質を捕集することができる。ここで、(B)イオン性凝集剤は、前記懸濁物との固着がイオン結合を利用して行われるため、前記懸濁物の極性とは逆の極性を有する。
【0030】
第3のケースは、捕集材5として(C)イオン性凝集剤を収納部6に収納するときの除染方法である。このケースでは、小型ダムシステム用ユニット3の設置場所よりも上流、すなわち山林地帯及び里山の側に、あらかじめ放射性物質を吸着又は固着することができる(A)放射性物質吸着剤を散布する場合に(C)イオン性凝集剤が使用される。(C)イオン性凝集剤によって(A)放射性吸着剤を凝集及び沈殿させることによって、結果的に放射性物質を捕集することが可能になる。ここで、(C)イオン性凝集剤は、(A)放射性吸着剤との凝集がイオン結合を利用して行われるため、(A)放射性吸着剤の極性とは逆の極性を有する。なお、小型ダムシステム用ユニット3の設置場所よりも上流側で散布される放射性吸着剤は、(A)放射性物質吸着剤と同じ機能を有するものであればよく、別種の放射性物質吸着剤を使用してもよい。
【0031】
本発明の実施形態においては、雨水又は流水8に溶存態及び懸濁態の両状態で存在する放射性物質者を捕集することを目的に、例えば、小型ダムシステム用ユニットとして(A)放射性物質吸着剤を収納部6に収納するものと、(B)イオン性凝集剤を収納部6に収納するものとに分離し、それぞれを放射性物質移行抑制エリア2内で直列に配置してもよい。その場合、小型ダムシステム用ユニットのそれぞれの配列順序は固定されるものではなく、配置及び施工のし易さ、並びに除染の効率及び効果に応じて任意に選ぶことができる。また、小型ダムシステム用ユニットとして(C)イオン性凝集剤を収納部6に収納する場合は、小型ダムシステム用ユニット3の設置場所よりも上流側であらかじめ散布される放射性物質吸着剤(例えば、(A)放射性物質吸着剤)によって溶存態で含まれる放射性物質が除去されるため、小型ダムシステム用ユニット3だけを配置するのが実用的である。
【0032】
以上のように、本発明の第一の実施形態によれば、図3に示す小型ダムシステム用ユニット3を、第一の小型ダムシステム用ユニットとして放射性物質移行抑止エリア2内に設置し、雨水又は流水8を収納部6に一時的に滞留させ、前記(A)、(B)及び(C)の少なくともいずれかの捕集材によって雨水又は流水8に含まれる放射性物質の捕集を行うことができる小型ダムシステムを提供することができる。その場合、第一の小型ダムシステム用ユニットとしては、小型ダムシステム用ユニット3が1つだけでなく、ユニットの形状と大きさ及び除染区域の面積に応じて、放射性物質移行抑制エリア2内に、2以上のユニットを山林地帯又は里山の方向に向けて直列又は並列に設置する場合も含まれる。また、上述したように、小型ダムシステム用ユニット3の複数を用いて、(A)放射性物質吸着剤を収納部6に収納するものと、(B)イオン性凝集剤を収納部6に収納するものとに分けて両者のユニットを直列に配列して配置してもよい。
【0033】
なお、小型ダムシステム用ユニット3の形状、並びに(A)放射性物質吸着剤、(B)イオン性凝集剤及び(C)イオン性凝集剤については、以下の第2、第3及び第4の実施形態の後、詳細に説明する。
【0034】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を、図4を用いて説明する。図4は、上記の第一の小型ダムシステム用ユニット3による放射線物質の捕集機能に対応するように、放射性物質移行抑制エリア2において、第一の小型ダムシステム用ユニット3の下流に位置する人里の側に、さらに、第二の小型ダムシステム用ユニット9を配置するときの小型ダムシステムの概要を示す断面図である。
【0035】
図4に示すように、第二の小型ダムシステム用ユニット9は、不透水性の層を有する底部10と、次の(D)、(E)、及び(F)、すなわち
(D)前記(A)の放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
(E)前記(B)のイオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、及び
(F)前記(C)のイオン性の凝集剤の極性とは逆の極性を有するイオン性凝集剤、
の少なくともいずれかの捕集材11を収納する収納部12と、前記人里の側に形成された壁部材13とを有する。ここで、不透水性の層を有する底部10、収納部12及び壁部材13の構成は、第1の小型ダムシステム用ユニット3とは基本的に同じであるが、収納部12に収納される捕集材11が、第1の小型ダムシステム用ユニット3の場合の捕集材5とは異なる。
【0036】
本実施形態による小型ダムシステムにおいては、雨水又は流水8に含まれる放射性物質の捕集方法(ケース4~6)に応じて、収納部12に収納される捕集材11が以下に述べるように選択して収納される。ケース4~6の捕集方法では、図3に示す第1の小型ダムシステム用ユニット3を配置し、引き続き、第二の小型ダムシステム用ユニット9を直列に配置することによって、捕集材5の種類に対応して選択される捕集材11を用いて放射性物質の捕集が行われる。
【0037】
図4に示すケース4は、第二の小型ダムシステム用ユニット9で使用する捕集材11として(D)イオン性凝集剤を収納部12に収納するときの捕集方法である。この第4のケースは、前記第1の小型ダムシステムを設置したときのケース1による放射性物質の捕集が行われた後、引き続き下流側に向けて流れる水又は流水8に含まれる(A)放射性物質吸着剤を(D)イオン性凝集剤によって凝集及び沈殿させ、(A)放射性物質吸着剤が人里まで流れ込むのを防止又は抑制できる方法である。ここで、(D)イオン性凝集剤としては、(A)放射性物質吸着剤との凝集がイオン結合を利用して行われるため、(A)放射性物質吸着剤の極性とは逆の極性を有するものを使用する。それにより、(A)の放射性物質吸着剤に含まれる放射性物質が人里にまで拡散するという問題を回避することができるため、人里地域の再汚染を効率的に、かつ、確実に回避することができる。
【0038】
ケース5は、第二の小型ダムシステム用ユニット9で使用する捕集材11として(E)イオン性凝集剤を収納部12に収納するときの除染方法である。この第5のケースは、第1の小型ダムシステム用ユニット3を設置することによってケース2による放射線物質の捕集が行われた後、引き続き下流側に向けて流れる雨水又は流水8に含まれる(B)イオン性凝集剤を(E)イオン性凝集剤を用いて凝集及び沈殿させることによって、(B)イオン性凝集剤が人里まで流れ込むのを防止又は抑制できる方法である。ここで、(E)イオン性凝集剤としては、(B)イオン性凝集剤との凝集がイオン結合を利用して行われるため、(B)イオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するものを使用する。ケース5による除染方法は、雨水又は流水8の懸濁態に含まれる懸濁物と凝集した(B)イオン性凝集剤が、第二の小型ダムシステム用ユニット9において(E)イオン性凝集剤と凝集及び沈殿するため、前記懸濁物に含まれる放射性物質が人里にまで移動し、拡散するという問題を、ケース2に比べてより確実に回避することが可能になる。それにより、人里地域の再汚染を効率的に、かつ、より確実に防止又は抑制することができる。
【0039】
ケース6は、第二の小型ダムシステム用ユニット9で使用する捕集材11として(F)イオン性凝集剤を収納部12に収納するときの除染方法である。この第6のケースは、第1の小型ダムシステム3を設置したときのケース3による放射性物質の捕集が行われた後、引き続き下流側に向けて流れる水又は流水8に含まれる(C)イオン性凝集剤を(F)イオン性凝集剤を用いて凝集及び沈殿させることによって、(C)イオン性凝集剤が人里まで流れ込むのを防止又は抑制できる方法である。ここで、(F)イオン性凝集剤としては、(C)イオン性凝集剤との凝集がイオン結合を利用して行われるため、(C)イオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するものを使用する。ケース6の除染方法においては、あらかじめ第一の小型ダムシステム用ユニットの上流側で散布した(A)放射性物質吸着剤と凝集した(C)イオン性凝集剤が第一の小型ダムシステム用ユニット3から下流側に流出する場合であっても、第二の小型ダムシステム用ユニット9の(F)イオン性凝集剤によって(C)イオン性凝集剤を凝集及び沈殿させることが可能になる。それにより、(C)イオン性凝集剤と凝集した(A)放射性吸着剤に含まれる放射性物質が人里にまで移動し、拡散するという問題を、ケース3に比べてより確実に回避できる。このように、ケース6では、人里地域の再汚染を防止又は抑制する効果をケース3より高めることができる。
【0040】
図4に示す第二の小型ダムシステム用ユニット9は不透水性の層を有する底部10及び壁部材13の構成を有するため、図3に示す第一の小型ダムシステム用ユニット3の場合と同様に、雨水又は流水8が収納部12に滞留する時間をある程度確保することができる。この滞留時間によって、(D)イオン性凝集剤による(A)放射性物質吸着剤の凝集及び沈殿(ケース4)、(E)イオン性凝集剤による(B)イオン性凝集剤の凝集及び沈殿(ケース5)、及び(F)イオン性凝集剤による(C)イオン性凝集剤の凝集及び沈殿(ケース6)を、より確実に行うことができる。さらに、これらのイオン凝集剤による凝集及び沈殿に要する滞留時間は、雨水又は流水8の流量と流速、並びに微小ダムシステム用ユニットの形状と大きさに依存するものの、人手をかけずに放置するだけで捕集を行うことができるため、本発明の実施形態による小型ダムシステムによる捕集を省力化して図ることができる。
【0041】
また、本実施形態による小型ダムシステムは、第一の小型ダムシステム用ユニット3の場合と同様に、第二の小型ダムシステム用ユニット9を1つだけでなく、前記ユニットの形状と大きさ及び除染区域の面積に応じて、その2以上を山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から人里に向けて、放射性物質移行抑制エリア2内に直列又は並列で設置してもよい。その配置方法によれば、第二の小型ダムシステム用ユニット9の2以上を用いて放射性物質の捕集率の向上が図れる小型ダムシステムを構築することができる。
【0042】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態を、図5を用いて説明する。図5は、第二の小型ダムシステム用ユニット9による放射線物質の捕集機能に対応するように、その下流に位置する人里の側に、さらに、第三の小型ダムシステム用ユニット14を設ける小型ダムシステムの概要を示す断面図である。図5に示す小型ダムシステムにおいては、第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット3、9及び14がこの順で、放射性物質の移行抑制エリア2内において上流側から下流側に向けて直列に配置される。
【0043】
図5に示すように、第三の小型ダムシステム用ユニット14は、不透水性の層を有する底部15と、捕集材16として(G)前記(D)のイオン性凝集剤極性とは逆の極性を有する別のイオン性凝集剤を放射性物質の捕集材として収納する収納部17と、人里の側に形成された壁部材18とを有する。ここで、不透水性の層を有する底部15、収納部17及び壁部材18の構成は、第1及び第2の小型ダムシステム用ユニット3、9と基本的に同じであるが、収納部17に収納される捕集材16が、第2の小型ダムシステム用ユニット9で使用する捕集材11とは逆極性を有するイオン性凝集剤である点で異なる。
【0044】
本実施形態による小型ダムシステムにおいて、雨水又は流水8に含まれる放射性物質の捕集方法(ケース7)に応じて、収納部17に収納される捕集材16の種類が以下に述べるように選択して使用される。ケース7の捕集方法は、図3に示す第一及び第二の小型ダムシステム用ユニット3、9のそれぞれを配置し、引き続き、第三の小型ダムシステム用ユニット14を直列に配置することによって、捕集材11の種類に対応して選択される捕集材16を用いて放射性物質の捕集が行われる。
【0045】
図5に示すケース7は、第二の小型ダムシステム用ユニット9を設置したときのケース4による捕集が行われた後、引き続き、下流側に向けて流れる雨水又は流水8に含まれる(D)イオン性凝集剤を(G)イオン性凝集剤によって凝集及び凝集させ、(D)イオン性凝集剤に含まれる放射性物質が人里まで流れ込むのを防止又は抑制できる方法である。ここで、(G)イオン性凝集剤としては、(D)イオン性凝集剤との凝集がイオン結合を利用して行われるため、(D)イオン性凝集剤の極性とは逆の極性を有するものを使用する。ケース7の除染方法においては、(A)放射性物質吸着剤と凝集した(D)イオン性凝集剤が第二の小型ダムシステム用ユニット8から下流側に流出する場合であっても、第三の小型ダムシステム用ユニット14の(G)イオン性凝集剤によって(D)イオン性凝集剤を凝集及び沈殿させることが可能になる。それにより、(D)イオン性凝集剤と凝集した(A)放射性吸着剤に含まれる放射性物質が人里にまで移動し、拡散することを、ケース4に比べてより確実に回避できる。それにより、人里地域の再汚染を防止又は特性する効果をケース4より高めることができる。
【0046】
図5に示す第三の小型ダムシステム用ユニット14は不透水性の層を有する底部15及び壁部材18の構成を有するため、図3及び4に示す第一及び第二の小型ダムシステム用ユニット3、9の場合と同様に、雨水又は流水8が収納部17に滞留する時間をある程度確保することができる。この滞留時間によって、ケース4によって(A)放射性物質吸着剤と凝集した(D)イオン凝集剤を、さらに(G)イオン性凝集剤によって凝集及び沈殿させることが確実にできる。さらに、これらの凝集及び捕捉に要する滞留は人手をかけずに放置するだけで行うことができるため、省力化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態による小型ダムシステムは、第一及び第二の小型ダムシステム用ユニットの場合と同様に、第三の小型ダムシステム用ユニット14が1つだけでなく、前記ユニットの形状と大きさ及び除染区域の面積に応じて、2以上のユニットを山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向けて、放射性物質の移行抑制エリア2内に直列又は並列で設置してもよい。その配置方法であれば、第三の小型ダムシステム用ユニット14の2以上を用いて放射性物質の捕集率の向上が図れる小型ダムシステムを構築することができる。
【0048】
<第4の実施形態>
図3図5に示すように、雨水又は流水8が放射性物質移行抑制エリア2に流れ込んで、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に設置される第一の小型ダムシステム用ユニット3に流入するとき、それらの水は放射性物質移行抑制エリア2内の斜面表面を流れる地表水としてだけでなく、地表の下部近傍(地表から3~10cm未満の範囲)にも浸透して下流側に流れるのが一般的である。そのため、地表の下部近傍に浸透した水を含め、第一の小型ダムシステム用ユニット3に流入する水のできるだけ多くを誘導し、放射性物質を含む雨水又は流水8の導入の際の漏れ(取りこぼし)を出来るだけ少なくすることが放射性物質の捕集効果を高める上で有効である。そのため、放射性物質の移行抑制エリア2内の一部に溝掘又は開渠を設け、前記溝掘又は開渠の凹部内に第一の小型ダムシステム用ユニット3を設置する形態の小型ダムシステムを構築してもよい。
【0049】
図6に、放射性物質移行抑制エリア2内の一部に設けた溝掘又は開渠の凹部19内に、少なくとも第一の小型ダムシステム用ユニット3を含め、1以上の小型ダムシステム用ユニットを設置したときの小型ダムシステムの例を断面図で示す。図6の(a)及び(b)には、(a)捕集材5を第一の小型ダムシステム用ユニット3の収納部6に収納する場合、及び(b)捕集材5を第一の小型ダムシステム用ユニット3の収納部6に収納した後、さらに斜面土壌等を用いて収納部6を埋設する場合、の小型ダムシステムの例をそれぞれ示している。また、図6の(c)には、複数の小型ダムシステム用ユニットを溝掘又は開渠の凹部19に設置する例として、第一及び第二の小型ダムシステム用ユニット3及び9の2つを設置する小型ダムシステムを示している。ここで、捕集材5、11は、後述するように、透水性又は通水性の袋に詰められた状態で収納されていてもよい。
【0050】
図6の(a)及び(b)に示すように、少なくとも第一の小型ダムシステム用ユニット3を溝掘又は開渠の凹部19に設置することにより、地表及び地表から3~10cm未満を流れる雨水又は流水8を第一の小型ダムシステム用ユニット3の収納部6に誘導することが可能になる。また、溝掘又は開渠の凹部19が放射性物質移行抑制エリア2の地表からより深く設けられる場合は、地表から10cm以上の部分に浸透して流れる水も、同時に収納部6に誘導することができる。前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に位置する端部の境界部分には腐葉土が多く存在する場合があり、溝掘又は開渠の凹部19は、前記境界部分での地表水のロスの抑制を図ることができる。それとともに地表及び地表から下部に存在する斜面土壌に流れる水を高効率で取り込むことができるため、放射性物質の捕集を効率的に、且つ、確実に行うことができる。それにより、捕集効率の高い小型ダムシステムの構築が可能になる。
【0051】
なお、小型ダムシステム用ユニット3を、溝掘又は開渠の凹部19の内部に設置する場合、下流側に設けられる壁部材7の高さは、後述するように、地表から下部に埋設される部分の高さ(H2)を除いた高さ(H1)で設定する。前記埋設される部分の高さ(H2)は、地表水のロスの抑制、並びに地表及び地表から下部に位置する斜面土壌に流れる水の誘導効果と関係するものであり、雨水又は流水8を収納部6に一時的に滞留させる効果に対してほとんど貢献しないためである。前記H2は、地表水のロスの抑制と斜面土壌に流れる水の高効率の取り込み並びに施工時の作業性の点から、2m以下にするのが実用的であり、さらに1m以下にするのがより好ましい。
【0052】
図6の(c)に示すように、第一及び第二の小型ダムシステム用ユニット3及び9の2つを設置する場合は、捕集材5及び11が、小型ダムシステム用ユニット3及び9の収納部6及び12にそれぞれ収納されている。本実施形態では、溝掘又は開渠の凹部19内に配置される小型ダムシステム用ユニットの種類及び数は、第一及び第二の小型ダムシステム用ユニット3及び9には限定されず、第三の小型ダムシステム用ユニット14も同時に含めた形で配置してもよい。また、第一の小型ダムシステム用ユニット3に加えて、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット9及び14の少なくとも何れかを複数のユニットとして配置する場合においても、同じ一つの溝掘又は開渠の凹部19内に配置してもよい。さらに、放射性物質移行抑制エリア2内の異なる場所に溝掘又は開渠の凹部19を複数個所設けることによって、第一の小型ダムシステム用ユニット3に加えて、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット9及び14の少なくとも何れかの複数を、前記分離して設けられた溝掘又は開渠の凹部19にそれぞれ個別に単数又は複数で配置する方法を採用してもよい。このとき、溝掘又は開渠の凹部19の一か所に配置される第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット3、9及び14の数と設置場所は、それら各ユニットの大きさ及び放射性物質移行抑制エリア2の面積に応じて決めることができる。
【0053】
次に、上記第1~第4の実施形態で使用する第1、第2及び第3の小型ダムシステム用ユニットの構成と設置方法、並びに捕集材の収納方法と種類について以下に説明する。
【0054】
<小型ダムシステム用ユニットの形状>
図3図5に示す第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット3、9、14の形状について説明する。第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット3、9、14は、それぞれ不透水性の層を有する底部4、10、15と、上記(A)放射性物質吸収剤、並びに(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の各イオン性凝集剤の少なくともいずれかの捕集材を収納するための収納部6、12、17と、壁部材7、13、18とを有することが基本的な構成である。それら基本的な構成に加えて、さらに、底部の4、10、15の両側にそれぞれ設ける2つの側壁を有し、前記2つの側壁の間に設けられる壁部材7、13、18は、その最上部が地表から突出するとともに地表から所望の高さを有する形状で形成することが実用的である。そして、第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニット3、9、14において、それぞれの底部、2つの側壁及び壁部材によって構成される4面以外の2面を開口することにより形成される空間を、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の少なくともいずれかの捕集材の収納場所として使用することが実用的である。
【0055】
そのような底部、2つの側壁及び壁部材によって構成される4面以外の2面を開口することにより形成される空間を前記捕集材の収納場所として有する小型ダムシステム用ユニットについて具体的な形状例を図7に斜視図で示す。図7において(a)及び(b)は、壁部材20が2つの側壁21の両側21a及び21bに対して直線状の面で形成されるともに、両側の側壁21a及び21bがそれぞれ三角形及びテーパ形状を有する四角形で形成される小型ダムシステム用ユニットの例である。図7の(c)は、壁部材20が2つの側壁の両側21a及び21bに対して曲線状の面で形成され、両側の側壁21a及び21bがそれぞれ三角形で形成される小型ダムシステム用ユニットの例である。また、図7の(d)は、壁部材20と2つの側壁の両側21a及び21bとが一体となった構造を有するものである。図7の(d)に示す形状を有するユニットとしては、例えば、脱穀用具バケットとして使用される手箕(テミ)等で代用してもよい。本発明の実施形態において小型ダムシステム用ユニットは図7に示すものは限定されず、底部、側壁及び壁部材としてそれぞれの機能に相当する形状を有するものを使用することができる。
【0056】
形状例として図7に示す小型ダムシステム用ユニットは、前記ユニットを土壌に設置したときに地表から最上部までの壁部材20の高さが、前記収納部に雨水又は流水8を一時的に滞留させることができる程度であればよく、実用的には30mm以上であり、さらに50mm以上であることがより好ましい。前述したように、小型ダムシステム用ユニットを、放射性物質移行抑制エリア2内の一部に形成される溝掘又は開渠の凹部19内に設置する場合は、地表から下部に埋設される部分(図6の(a)においてH2の高さで示す部分)が、壁部材17の高さとして規定する「30mm以上」の範囲から除かれる。雨水又は流水8を前記収納部に一時的に滞留させる機能を高めるためには、一度流入した雨水又は流水8を下流側に流出させないことが好ましいが、前記埋設される部分はこの機能と無関係であるためである。
【0057】
小型ダムシステム用ユニットの壁部材20の高さが地表から30mm未満の場合は、小型ダムシステム用ユニットに流入する雨水又は流水8が壁部材20を容易に乗り越えて短時間に下流側に流れるため、前記収納部に雨水又は流水を一時的に滞留させる効果が十分に得られない。壁部材20の高さの上限値は、雨水又は流水を一時的に滞留させる効果の点から特に規定されるものではないが、小型ダムシステム用ユニットの搬送性、施工性及び設置後の安定性と耐久性の点から1.5m以下にするのが実用的である。また、壁部材20の幅及び底部22の面積については、小型ダムシステム用ユニットの搬送性及び施工性の点から当業者が適宜行う設計的事項の範囲内で設定することができる。仮に、底部22の面積が小さい小型ダムシステム用ユニットを使用する場合は、その台数を2以上に増やして、山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から人里に向けて、放射性物質の移行抑制エリア内に直列又は並列で設置すればよい。
【0058】
本発明で使用する小型ダムシステム用ユニットとしては、加工性、取扱い性及び耐久性の点から金属製又はプラスチック製のものを使用することが実用的である。小型ダムシステムは、例えば、図7に示す例において、壁部材20、2つの側壁21a、21b及び底部22の各パーツを溶接、接着、融着、加締め、ボルト締め及び溶融成形等のいずれかの方法によって接合して作製してもよい。その場合、前記各パーツのいずれか2つをあらかじめ一体で成形することもできるし、また、各パーツのすべてを一体成形によって作製してもよい。さらに、図7の(d)に示すように、既存又は市販のものを代用してもよい。小型ダムシステム用ユニットの底部は不透水の層を有することが必須であるが、貫通孔を有しない平滑な面を有する金属又はプラスチックであれば、底部22がそのまま不透水の層を兼ねる。同様に、壁部材20、2つの側壁21a、21bについても貫通孔を有しない平滑な面を有することが、雨水又は流水を一時的に滞留させる機能を維持する上で実用的である。また、底部22が1以上の貫通孔を有する場合は、その底部22の上下部のどちらかに不透水性の金属又はプラスチックのシートを配置することによって底部22に不透水の層を形成する方法を採用してもよい。壁部材20、2つの側壁21a、21bが貫通孔を有する場合も、同様の方法で不透水性の層を形成することにより、雨水又は流水を一時的に滞留させる機能を高めることができる。
【0059】
本発明の実施形態による小型ダムシステムは、放射性物質移行抑制エリア2内において、少なくとも前記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側に向けて最初に設置される第一の小型ダムシステム用ユニット3の収納部に、地表及び該地表の近傍(地表から3~10cm未満)に流れる雨水又は流水をより深い場所から誘導し、放射性物質を含む雨水又は流水8の誘導の際の漏れ(取りこぼし)を出来るだけ少なくすることが放射性物質の捕集効果を高める上で有効である。そのための小型ダムシステムとして、例えば、図6に示す構成を採用することができる。それ以外にも、溝掘又は開渠の凹部19をあらかじめ形成しないで、第一の小型ダムシステム用ユニットを放射性物質移行抑制エリア2内の斜面土壌上に直に配置する場合(図3図5に示す小型ダムシステムを採用する場合)に、小型ダムシステム用ユニットそのものの形状及び構造を変更することによって、図6に示すものと同等以上の機能と効果が得られる小型ダムシステムを構築してもよい。具体的には、前記山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯の側に向けて最初に位置する第一の小型ダムシステム用ユニット3の底部の端部に、該ユニットの底部を形成する面よりも下部方向の斜め方向に傾けて設けられた誘導板を有するものである。
【0060】
図7の(a)に示すものと同じ形状を有し、前記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側に位置する底部22の端部に誘導板24を設けた第一の小型ダムシステム用ユニット23の例を図8に断面図で示す。図8の点線枠内には、底部22の端部に誘導板24を設けたユニット23の拡大図を斜視図で示している。図8に示す例は、第一の小型ダムシステム用ユニット23が図7の(a)に示すものと類似の構造を有するが、底部22の端部に誘導板24を設ける点で異なる。
【0061】
図8に示すように、誘導板24は、第一の小型ダムシステム用ユニット23の底部を形成する面よりも下部方向に傾斜角度(θ)で斜めに傾けて設けられる。それにより、地表及び地表から3~10cm未満を流れる雨水又は流水8を第一の小型ダムシステム用ユニット23の収納部25に誘導するとともに、雨水又は流水8が底部22の最下面より下を流れるのを抑えることができる。第一の小型ダムシステム用ユニット23の底部22において、記山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側に位置する端部の境界部分には腐葉土が多く存在する場合があり、傾斜角度(θ)を有する誘導板24により、誘導板24を有しない場合に比べて、前記境界部分での地表水のロスを抑制することができるだけでなく、さらに、底部22の直下部分及び下流側への流出防止を図ることができる。それにより、効率的な除染を行う小型ダムシステムを構築することができる。
【0062】
誘導版24の傾斜角度(θ)は、前記境界部分での地表水のロスの抑制、及び底部22の直下部分及び下流側への流出防止の点から、第一の小型ダムシステム用ユニット23において底部22を形成する面と平行の軸を角度0度とするとき、30~90度の範囲に含まれるいずれかの角度で設定するのが実用的である。傾斜角度(θ)が30度未満であると、地表から深い部分を流れる水を堰き止める効果がほとんど得られない。その意味では、傾斜角度(θ)は大きくする方が良いが、90度を超えると、第一の小型ダムシステム用ユニット23の底部22を形成する面に対して鈍角となるため、逆に、地表から深い部分を流れる水の誘導効果が小さくなる。
【0063】
また、誘導板24は、奥行方向の長さ[奥行長(D)]が、底部22の端部から前記山林地帯又は里山に向けて3~30cm、好ましくは5~20cmになるように設けることが実用的である。ここで、誘導板24を底部22へ取付けるときの取付け部分の長さは、奥行長(D)として規定する3~30cmの範囲から除かれる。前記奥行長(D)を3~30cmに設定することにより、地表から深い部分を流れる水の誘導効果が十分に得られる。前記奥行長(D)が3cm以下である場合は、地表の雨水又は流水8しか誘導できず、誘導版24を設けない場合とほぼ同じ誘導効果しか得られない。一方、地表及び地表から3~10cm未満を流れる雨水又は流水8を誘導する誘導板24による効果は、奥行長(D)が30cmを超えても飽和する傾向にあり、逆に、土壌斜面への第一の小型ダムシステム用ユニット23の設置及び据付等の施工作業が煩雑になるだけである。なお、誘導板24の幅については、第一の小型ダムシステム用ユニット2の幅に合わせて設定すればよい。
【0064】
誘導板24は、金属製又はプラスチック製の薄板で作製することができる。前記小型ダムシステム用ユニットの底部への誘導板24の装着は、両者を対向させる箇所に小穴を開けて、ボルト締めによって行うことができる。また、前記底部22と誘導体24の両者が金属製であれば、溶接、融着及び加締め等の何れかの方法によって両者を接合してもよい。それら以外にも、底部の端部に誘導板を備える小型ダムシステム用ユニットとしてプラスチックによる一体成形を行う方法、又はプラスチック製の小型ダムシステム用ユニットに金属製の誘導板をインサート成形する方法等を使用してもよい。
【0065】
ちなみに、第一の小型ダムシステム用ユニット23の形状と大きさを同じにし、(A)放射性物質吸着剤として後述のベントナイトを収納した状態で第一の小型ダムシステム用ユニット23を山林斜面のほぼ同じ場所に同じ期間だけ設置したとき、誘導板24(例えば、傾斜角度(θ)が45度で、奥行長(D)が15cmである誘導板)を設けた場合と設けない場合とを対比すると、前者は後者に比べて、ベントナイトに吸着して捕集されたCs137の測定量が高くなる傾向にあった。これは、誘導体24が、地表及び地表から3~10cm未満を流れる雨水又は流水8を第一の小型ダムシステム用ユニット23の収納部25に誘導する機能を十分に有することを意味しており、誘導体24の効果が確認された。
【0066】
上記のように、誘導板24は、第一の小型ダムシステム用ユニット23を放射性物質の移行抑制エリア2内の斜面土壌上に直に配置する場合において有効な地表及び地表から3~10cm未満を流れる雨水又は流水8を第一の小型ダムシステム用ユニット23の収納部に誘導するためだけではなく、小型ダムシステムを最上流の斜面土壌に固定を行うときの固定治具としても使用することができるという利点を有する。
【0067】
図8に示す誘導体24は、第一の小型ダムシステム用ユニット23を放射性物質移行抑制エリア2内の斜面土壌上に直に配置する場合において好適な構成であるが、図6に示すように、放射性物質移行抑制エリア2内の一部に設けた溝掘又は開渠の凹部19内に第一の小型ダムシステム用ユニットを設置する場合にも、水の誘導又はユニット固定のための付加的な構成として適用してもよい。
【0068】
<小型ダムシステム用ユニットの設置>
上述したように、本発明の実施形態による小型ダムシステムは、第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットが1個だけでなく、前記ユニットの形状と大きさ及び除染区域の面積に応じて、2以上のユニットを山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯から人里に向けて直列又は並列に設置してもよい。並列に配置する場合、山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯に対して垂直方向だけでなく、状況に応じて45度以下の斜め方向に配置してもよい。その場合、前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記小型ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を設けてもよい。それにより、前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの配置するときの位置合わせが容易になり、さらに据付作業の省力化を図ることもできる。また、前記連結部は、配置及び据付の後、使用中に前記ユニットを複数で設置したときのそれぞれの向きが個別で勝手に変わらないように、2以上の前記ユニットを固定して同じ方向に揃える役目を担うことができる。
【0069】
また、放射性物質移行抑制エリア2において、山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向かう方向に沿って、前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの少なくともいずれかの複数を直列に配置する場合は、並列の場合と同じように前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの側方両側に2つの側壁を設け、前記2つの側壁の少なくともどちらか一方に、前記微小ダムシステム用ユニットを互いに締結可能にするための連結部を設けてもよい。
【0070】
本発明で使用する小型ダムシステム用ユニットの例として図7の(d)に示す構造を有するプラスチック製テミを用いて、前記プラスチック製テミの複数個を連結した状態の例を図9に斜視図で示す。図9の(a)~(c)には、前記プラスチック製テミの複数個を山林地帯及び里山の少なくともいずれかを含む地帯から人里に向けて並列に配置するとき、それぞれ連結部の構造が異なる例を示している。また図9(d)は、前記プラスチック製テミの複数個を並列だけでなく直列に配置するときの連結部の例を示す図である。
【0071】
図9(a)に示す連結部26は、断面が下に開口を有する「コ」の形状を有している。前記プラスチック製テミは、その側壁を突き合わせた状態でその側壁に連結部26を挿入することにより互いを連結する。図9(b)に示す連結部27は、前記プラスチック製テミの片側側壁に設けた断面L字状の突起部分27aを、別の前記プラスチック製テミの片側側壁に設けた断面凹状の突起27bの凹部に挿入することにより互いを連結する。また、図9(c)に示す連結部28は、前記プラスチック製テミの片側側壁に設けた突起部分28aを、別の前記プラスチック製テミの片側側壁に設けた断面凹部28bの内部に挿入することにより互いを連結する。
【0072】
図9(d)は、前記プラスチック製テミの間に連結部29として機能する支持台29aを配置し、前記プラスチック製テミの片側側壁のそれぞれに設ける突起29b及び29bを、突起29a及び29bに対向する位置にそれぞれ設けた支持台29aの穴部に挿入することにより、前記プラスチック製テミの複数を並列及び直列に配置する。その場合、支持台29aは、複数の前記プラスチック製テミを配置するとき互いに干渉しないような形状及び大きさで作製することが必要である。支持台29aとしては、例えば、断面が四角形、多角形、円形又は楕円形の棒状の支持台を使用することができる。
【0073】
図9には、前記プラスチック製テミの3台を並列、及びその6台を並列及び直列に連結して場合の例をそれぞれ示しているが、本発明の実施形態による配置方法及び連結台数、並びに配置のときに使用する連結具は図9に示す例に限定されるものではない。例えば、連結部としてはボルト及びナットを使用するボルト締めの構成であってもよいし、マジックテープ(登録商標)、接着テープ又は粘着テープによって貼り合わせる方法、又は金属細線やプラスチック製の紐等を前記プラスチック製テミの側壁に設けた小穴に通して固定する方法等によって複数のユニットを連結してもよい。また、図9(d)においては、連結部29を前記プラスチック製テミの直列方向に一列だけ配置する方法によって直列方向だけに配列させて配置してもよい。
【0074】
図9の例として示す連結部26、27、28及び29等を設けることにより、前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの配置するときの位置合わせと連結が容易になり、据付作業の省力化も図ることができる。また、これらの連結部26、27、28及び29等は、配置及び据付の後、使用中に前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの少なくともいずれかを複数で設置したときのそれぞれの向きが個別で勝手に変わらないように、2以上の前記ユニットを固定して同じ方向に揃える役目を担う。特に、除染地域が広く、且つ、小型のユニットを多数配置して短時間に連結するときには、前記ユニットが備える2つの側壁の少なくともどちらか一方に連結部を設けることが、効率的な組立を行うことができるため有効である。また、前記連結部は、雨水又は流水8の流路を邪魔しない限り、前記連結部を側壁だけでなく、ユニットの底部又は壁部材の一部に設けてもよい。
【0075】
図9において例として示す連結部26、27、28及び29等と同じ機能を有する連結部は、図6に示すように、放射性物質の移行抑制エリア2内の一部に設けた溝掘又は開渠の凹部19内に、前記前記第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットの少なくともいずれかを1以上で設置する場合にも適用することができる。その場合は、溝掘又は開渠の凹部19の形状と大きさに応じて、連結部の形状及び数を当業者の設計的事項の範囲内で選択することができる。
【0076】
<捕集材の収納方法>
本発明の実施形態において、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の少なくともいずれかの捕集材を小型ダムシステム用ユニットの収納部に収納するときの収納方法について以下に説明する。
【0077】
前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の少なくともいずれかの捕集材は、小型ダムシステム用ユニットの収納部に任意の量を投入する方法を採用することができる。このとき、前記捕集材が外部に飛び散らないように、前記捕集材の上部からメッシュ状の布や繊維等で覆ってもよい。また、前記捕集材をもみ殻やウッドチップ等に混合した形態で小型ダムシステム用ユニットの収納部に投入してもよい。もみ殻やウッドチップは、前記収納材の内部で前記捕集材を分布させ、体積的に広く点在させるために使用するものである。もみ殻やウッドチップとの混合物は、小型ダムシステム用ユニットに流入する雨水または流水中に含まれる放射性物質と前記捕集材との接触回数又は接触時間が増やす効果が期待できるため、放射線物質の捕集効果が向上するだけでなく、前記捕集材の投入量を相対的に少なくできるという利点を有する。
【0078】
また、前記捕集材は、水に分散させた分散水溶液又はコロイド溶液の形態で前記収納部の内部に塗布又は散布して投入してもよい。このときの分散水溶液又はコロイド溶液の粘度は、前記収納部への投入量及び塗布又は散布のための作業効率の点から当該分野の技術者が通常行う設計的事項の範囲内で設定することができるが、室温(1~30℃)において2~10000mPa・sに調製するのが実用的である。
【0079】
さらに、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の少なくともいずれかの捕集材は、透水性又は通水性の袋に詰められた状態で、前記収納部において1段で、又は2段以上に積み上げられた態様で使用されてもよい。小型ダムシステム用ユニットとして図7の(d)に示すものと同じ構造を有するプラスチック製テミ30を用いて、プラスチック製テミ30を放射性物質の移行抑制エリア内に設置した後、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の少なくともいずれかの捕集材を内包する袋31を2段に積み上げて構築した小型ダムシステムの例を図10に示す。図10の点線枠内には、プラスチック製テミ30の収納部に捕集材を内包する袋31を積み上げた例を拡大して斜視図で示している。捕集材を内包する袋31としては、放射性物質が溶存態及び懸濁態の状態で含まれる雨水又は流水が容易に通過する一方で、前記捕集材が外部へ漏洩しないような素材、又は微小な穴又は孔を有する網状又はメッシュ状の素材を使用する。例えば、フレコンパックの作製等で使用される柔軟性を有する繊維状の布製のものが取扱い性に優れるため実用的である好適に使用されるが、軟質又は硬質のクラスチック成形品や薄状の金属シートであってもよい。
【0080】
捕集材を内包する袋31は、取扱い性及び搬送性に優れるため放射性物質の捕集作業を効率的に行うことができるだけでなく、使用済の前記捕集材のいずれかを新品のものと交換するときの取扱い性及び搬送性に優れるだけでなく、捕集材を一括で廃棄できるという点でも好都合である。さらに、前記捕集材をもみ殻やウッドチップ等と混合した状態で袋31に内包することにより放射性物質の捕集効果の向上及び前記捕集材の投入量の低減を同時に図ることができる。
【0081】
図10では捕集材を内包する袋31を2段に積み上げた例を示したが、本発明の実施形態においては捕集材を内包する袋31の積み上げ段数が1段又は3段以上であっても良く、小型ダムシステム用ユニットの収納部を占める体積に応じて、捕集材を内包する袋31の大きさと数、及び積み上げ段数を設定することができる。
【0082】
<捕集材の種類>
本発明の実施形態による小型ダムシステムにおいて、(A)放射性物質吸着剤、並びに(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の各イオン凝集剤については、例えば、前記特許文献5(特許第6651113号公報)に記載された各材料を参照して使用してもよい。具体的な材料として、例えば、以下に示す通りである。
(1)放射性物質吸着剤
本発明で使用する(A)放射性物質吸着剤としては、放射性物質の吸着機能を有する(a)無機粒子を使用してもよい。例えば、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイト、モンモリロナイト、イライト及びカオリロナイトが挙げられ、これらの群から選ばれる1以上を使用することができる。これらの無機粒子は、一般的に多孔質であり、その表面には正(+)又は負(-)の電荷を有するため、放射性物質の吸着能だけでなく、本発明で使用する各凝集剤によって凝集される機能を有するものである。
【0083】
前記(a)無機粒子の平均粒径は0.01~20μmの範囲にあるものが使用できるが、好ましくは1~2μmである。また、これらの無機粒子の最大粒径は100μm以下、好ましくは50μm以下である。平均粒径が0.01μm未満であると、無機粒子の凝集が起こりやすく、固定化溶液の調整や塗布等における作業性の低下が顕著になる。また、平均粒径が20μmを超えると大きな径を有する無機粒子が混在するようになるため、放射線物質吸収の効率がやや低下する傾向にある。同じ理由から、これらの無機粒子の最大粒径は、100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0084】
本発明では、上記の(a)無機粒子の中で、放射性物質吸着剤としての実績、取扱い性及び低コスト等の点から一般的に負(-)の電荷を有するベントナイトが好適である。ベントナイトは、乾燥することにより周辺土壌等の水分を吸収する効果(サンクション効果)が他の無機粒子よりも優れ、Cs等の放射性物質のベントナイトへの吸着が促進されるため、特に有用である。ベントナイトは、層間にNa、K+、Ca2+,Mg2+等の交換性陽イオンを持ち、イオン交換によって放射性物質であるCsを吸着及び保持する機能を有する。そして、アルミナ層のAl3+がMg2+等に置換されているため、ベントナイトの表面は負電荷を有する。また、ベントナイトは、ベントナイト鉱山で採掘した状態のものから粗粒分を除き、最大粒径を100μm以下、好ましくは50μm以下に調整したものをそのまま使用できるため、安価に入手できる。
【0085】
放射性物質吸着剤として使用する前記(a)無機粒子は、本発明の実施形態による小型ダムシステム用ユニットの収納部に収納されるが、あらかじめ森林及び里山の少なくとも何れか場所に任意の量で散布して投入してもよい。前記(a)無機粒子の散布量が少ない場合は、山林地帯又は里山を汚染する全ての放射性物質量を吸着することができないため、山林地帯又は里山において放射線量測定を臨時で又は定期的に行うことにより、その測定値に基づいて前記小型ダムシステム用ユニットの収納部への投入量又は投入回数を増やして対応する。また、その上流部の山林地帯又は里山であらかじめ散布する場合は、散布量又は散布回数を増やして対応する。仮に、散布量が多くなっても、前記(a)無機粒子は人体にほとんど無害であるため、収納部又は森林にそのまま放置されてもほとんど問題は起きない。さらに、自然的に発生する雨水又は人工的な散水による流水や噴水によって前記(a)無機粒子が下流側に押し流されても、上述したように、少なくとも(C)又は(D)の各イオン凝集剤によって前記(a)無機粒子を凝集及び沈殿できるため、人里への流出を抑制することが可能になる。それにより、田畑や住環境地域に対する影響を小さくすることができる。
【0086】
前記(a)無機粒子は、そのままの状態で投入又は散布してもよいが、分散液又は懸濁液の形態で塗布若しくは散布及び注入を行うときは、水系媒体を100質量部としたときに0.1~20質量部にすることが好ましく、より好ましくは0.5~5重量部である。前記(a)無機粒子の含有量が0.1質量部未満であると、分散液又は懸濁液の塗布量又は散布量が大量となり、除染作業の効率が大幅に低下する。また、前記(a)無機粒子の含有量が20質量部を超えると、無機粒子の分離が顕著になり、均一な塗布若しくは散布を行うことが困難であるだけではなく、除染作業の効率が大幅に低下する。
【0087】
(2)イオン性凝集剤
上記(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)のイオン性凝集剤としては、(b)カチオン性高分子、(c)アニオン性高分子、(d)カチオン性高分子とアニオン性高分子を有し、且つ、前記カチオン性高分子とアニオン性高分子との電荷比が1から外れるように配合して調製した高分子凝集剤、及び(e)1分子中にカチオン性の単量体構造単位とアニオン性の単量体構造単位を有し、且つ、前記カチオンとアニオンとの電荷比が1から外れるように調整して合成した両性高分子凝集剤の群からなる少なくともいずれか1種を使用してもよい。前記(b)、(c)、(d)及び(e)の各イオン凝集剤の具体例は以下の通りである。
【0088】
(b)カチオン性高分子
カチオン性高分子としては、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0089】
(c)アニオン性高分子
アニオン性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0090】
(d)カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように調整した高分子凝集剤
(d)カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤は、カチオン性高分子とアニオン性高分子とを含む水溶液において、どちらかの高分子を第1の高分子とし、もう一方の高分子を第2の高分子としたときに、前記第1の高分子が前記第2の高分子よりも電荷比で過剰に配合することによって得られる分散型高分子凝集剤である。この分散型高分子凝集剤は、沈殿物を生成せずに長期間安定した均一のコロイド水溶を形成しながら、前記無機粒子との混合では大きな凝集力を有するため、本発明の実施形態において好適に使用される。
【0091】
前記(d)高分子凝集剤は、「不透明又は乳白色」のコロイド水溶液において、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の添加量を等電荷比にしないで、どちらかの方が電荷比で過剰になるように添加することによって沈殿物の生成を抑制した材料であり、従来技術のように一液性のポリイオンコンプレックスを得るために不可欠な塩をコロイド水溶液中に積極的に加える必要がない。しかしながら、イオン性高分子はもともと対イオンが微量含まれており、本発明で使用するコロイド水溶液には実質的に微量の塩が含まれる場合があるが、これらの対イオンは無機粒子の沈殿物の生成に対してほとんど影響を与えない。対イオンを形成するための塩としては、使用するイオン性高分子の種類に応じて異なるが、一般的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムから選択される塩の少なくとも1種が使用される。
【0092】
前記(d)高分子凝集剤に含まれるカチオン性及びアニオン性の両イオン性の高分子において、両者のイオン性高分子の電荷比とは、イオン性高分子が有する「イオン当量質量」によって以下のように定義されるものである。
【0093】
本発明で使用するどちらか一方のイオン性高分子(b1)の分子量をM、そのイオン当量質量をEWとする。イオン性高分子(b1)のイオン当量質量(EW)は、そのイオンを有する構成単位の割合が100モル%であると、そのイオンを有する構成単位の分子量(m)と同じになる。例えば、イオンを有する構成単位の割合が50モル%でイオンを有しない構成単位の割合が50モル%の場合は、イオン当量質量は、イオンを有する構成単位の分子量(m)とイオンを有しない構成単位の分子量(m)との和(m+m)となる。このように、イオン当量質量は、イオンを有する構成単位とイオンを有しない構成単位とのモル比で決まる。もう一方のイオン性高分子(c1)の場合も、イオン性高分子(c1)の分子量をM、そのイオン当量質量をEWとすると、同様にしてイオン当量質量が求まる。
【0094】
本発明のコロイド溶液に含まれるイオン性高分子の中でどちらか一方のイオン性高分子(b1)の配合量をCとし、もう一方のイオン性高分子(c1)の配合量をCとする。その場合、コロイド溶液には、イオン性高分子(b1)が(C/M)モル、イオン性高分子(c1)が(C/M)モルの濃度で含まれる。したがって、コロイド溶液には、イオン性高分子(b1)及びイオン性高分子(c1)に含まれる各イオンによる電荷数が、それぞれP(当量)=(C/M)×(M/EW)及びP(当量)=(C/M)×(M/EW)となる。
【0095】
仮に、P=P(総電荷がゼロ)となる場合は、C/EW=C/EWとなる。他方、コロイド水溶液の総電荷がゼロでない場合は、P/P=(C/EW)/(C2/EW)>1となり、(C/EW)/(C/EW)>1の関係を満たす。P及びPは、アニオン性高分子及びカチオン性高分子のどちらかに特定されず、逆の場合であってもよい。したがって、本発明においては、(C/EW)/(C/EW)>1の関係を満たすように、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を配合することによって、どちらか一方のイオン性高分子を電荷比で過剰に加えたコロイド水溶液を調製することができる。
【0096】
前記(d)高分子凝集剤を本発明の実施形態で使用する場合は、「不透明又は乳白色」のコロイド状水溶液から溶媒である水を溜去した後に沈殿物として得られるものをそのまま使用して投入又は散布してもよい。また、コロイド状水溶液をして使用する場合は、前記コロイド状水溶液の粘度を、収納部へ投入又は散布のための作業効率の点から、4~30℃の温度域で2~4000mPa・sの範囲に調整するのが実用的である。粘度が2mPa.s未満では、各凝集剤の配合量が少ないため、塗布又は散布のための作業効率が大幅に低下する。また、粘度が4000mPa・sを超えると、コロイド状水溶液の粘度が顕著に増大するため、塗布又は散布が困難になる。
【0097】
前記(d)高分子凝集剤は、前記コロイド溶液に新たに塩化ナトリウム等の無機塩を添加しなくても沈殿物が発生しないコロイド状水溶液を形成できるため、前記収納部の内部にコロイド状水溶液を塗布又は散布して投入する場合、無機塩を含まないという点で放射性移行抑制エリア2の植物生育等に与える悪影響を最小限にすることができる。
【0098】
一方で、前記(b)カチオン性高分子又は(c)アニオン性高分子を分散水溶液又は懸濁水溶液として投入する場合は、通常、前記無機塩を新たに添加して使用されるため、植物生育等に対する悪影響の点から、塗布又は散布する範囲を人里から離れた放射性移行抑制エリア2だけに限定することが好ましい。このように、塗布又は散布する範囲がほとんど減退されないという点で、前記(d)高分子凝集剤のコロイド状水溶液は、前記(b)カチオン性高分子又は(c)アニオン性高分子の単独系と比べて、環境に対する負荷を小さくできることから使い勝手に優れるという利点を有する。
【0099】
(e)カチオンとアニオンとの電荷比が1から外れるように調整して合成した両性高分子凝集剤
前記(e)両性高分子凝集剤は、少なくとも上記カチオン性高分子の構成単位を有する単量体の1種又は2種以上及びアニオン性の構成単位を有する単量体の1種又は2種以上の共重合によって得られるが、必要に応じてノニオン性単量体の1種又は2種以上を含む3元共重合としてもよい。共重合は、前記の各種単量体混合物の水溶液を過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の水溶性開始剤を使って溶液重合する方法、又は光増感剤を使って光重合する方法等のような常法によって行うことができる。
【0100】
本発明の実施形態において使用する(e)両性高分子凝集剤は、前記放射性物質吸着剤、又は、他のイオン性凝集剤のそれぞれが有する極性と逆極性を有する単量体の共重合比率を多くするような形で電荷比を変えて製造することができる。そのようにして、それぞれ逆極性を有する単量体の電荷比が1から外れるように調製したカチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子の何れか1種又は2種以上を併用して使用する。(e)両性高分子凝集剤は、同じ極性を有するものであれば、前記(b)カチオン性高分子、(c)アニオン性高分子、及び(d)高分子凝集剤の少なくともいずれかと併用してもよい。
【0101】
前記(e)両性高分子凝集剤は、新たに塩化ナトリウム等の無機塩を添加しなくても沈殿物が発生しない分散水溶液又は懸濁水溶液が得られる。そのため、前記(d)高分子凝集剤と同じように、放射性移行抑制エリア2の植物生育等に与える悪影響を最小限にし、環境に対する負荷を小さくすることができることから使い勝手に優れるという利点を有する。
【実施例0102】
本発明を実施例によって説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
<実施例1>
図4に示すケース6の小型ダムシステムを用いて、雨水又は流水8に含まれる放射性物質(Cs137)の移行抑制効果を検証した。図11に、ケース6の小型ダムシステムの例として、福島県に所在し、放射性物質として放射性Cs137が含まれる山林の斜面において、放射性物質移行抑制エリア2に第1及び第2の小型ダムシステム用ユニットを配置して行った実験例を示す。第一及び第二の小型ダムシステム用ユニットとしては、図7の(d)に示すものと同じ構造を有するプラスチック製テミを用いた。図11の(a)及び(b)は、それぞれ、プラスチック製テミの複数を山林斜面に並列方向の3列及び直列方向の2列で配置したときの様子を示す図、及びそれらを上部からみたときの配置を模式的に示す配置図である。
【0104】
図11の(a)及び(b)に示すように、上流側の山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯には、放射性物質吸着材として表面に負(-)の電荷を有するベントナイト(株式会社ボルクレイ・ジャパン商品名ベントナイトドンミン:図において、BCと表示)を散布した。また、山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯の側の下流に位置する放射性物質移行抑制エリア2には、上流側に並列で配置する3個のプラスチック製テミ32に、カチオン性高分子(図において、PIC(+)と表示)の捕集材をウッドチップと混合した状態で投入した。さらに、下流側(人里の側)に並列で配置する3個のプラスチック製テミ33に、アニオン性高分子(図において、PIC(-)と表示)の捕集材をウッドチップと混合した状態で投入した。ここで、PIC(+)としてはポリジアリルアンモニウム塩酸塩(センカ株式会社商品名ユニセンスPRA1001L:分子量10~50万)を使用し、また、PIC(-)としてはアルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(ダイセル化学工業株式会社商品名CMCダイセル1220:分子量16万~38万)を使用した。捕集材であるPIC(+)及びPIC(-)は1か月毎に採取し、再度、交換する操作を行い、この操作を3か月続けた。この操作は、放射性物質吸着材として散布するベントナイト(BC)の散布量を変えた3系統(ベントナイトの散布量:10g/m、50g/m及び100g/m)について行い、1か月毎にプラスチック製テミ32、33の収納部に投入されたPIC(+)及びPIC(-)の捕集材を採取後、それぞれの捕集材に捕集された放射性セシウム(Cs137)の濃度を測定した。放射性セシウム(Cs137)の濃度は、CsI(TI)シンチレーション検出器を用いて測定を行い、捕集材1kg当たりの放射線量(ベクレル(Bq)/kg)で表した。
【0105】
実験開始月を4月とし、5月及び6月の3カ月分について、それぞれ1か月毎に測定したCs137濃度の測定結果を図12に示す。図12の(a)は、ベントナイト(BC)の散布量が10g/m、50g/m及び100g/mである3系統について、3カ月の各月にわたってPIC(+)及びPIC(+)に捕集されたCs137の全濃度の測定結果を示す図である。ここで、Cs137の全濃度は、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の各濃度を合わせたものである。そこで、図12の(a)に示す測定結果の中で、5月及び6月でそれぞれ測定された2カ月分について、Cs137の全濃度を、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の各濃度として分離した形で図12の(b)及び(c)に示す。図12の(b)及び(c)には、ベントナイト(BC)の散布量を変えた3系統について、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれに捕集されたCs137濃度の測定値が示されている。
【0106】
図12の(a)に示すように、ベントナイト(BC)の散布量が多くなるほど、PIC(+)及びPIC(+)の両捕集材に捕集されたCs137の濃度が低くなる傾向にあった。これは、ベントナイト(BC)の散布量が多くなる場合、PIC(+)を収納する下流側のプラスチック製テミ32へ移行せず、そのまま凝集した状態で残留するベントナイト(BC)の量が多くなるため、Cs137の移行抑制エリア2への移行が結果的に遅れたためであると考えられる。
【0107】
また、図12の(b)及び(c)から分かるように、Cs137を吸着したベントナイト(BC)は、まずプラスチック製テミ32に収納されるPIC(+)によって凝集及び沈殿されて捕捉される。引き続き、Cs137を吸着したベントナイト(BC)を補足したPIC(+)の一部は、下流側のプラスチック製テミ33に流出し、プラスチック製テミ33に収納されるPIC(-)によって凝集及び沈殿されて捕捉されるが、他方で、プラスチック製テミ33の方へ流出しないでPIC(+)と凝集及び沈殿したままでプラスチック製テミ32内に残量するベントナイト(BC)においても、ある程度の量で存在するCs137が確認された。
【0108】
このように、小型ダムシステムによる放射性Cs137の捕集という点では、ベントナイト(BC)の散布濃度(汚染地域の単位面積当たりの散布量)が小さいほうがダムとしての機能を高くすることができる。一方で、ベントナイト(BC)の散布を高濃度で行う場合は放射性Cs137の下流側への移行を遅くできる。そのため、放射性Cs137をより上流側で留めておきたい場合、例えば、放射性Cs137の量が非常に多く、除染が困難な地域では、より上流側において多重に散布及び注入する方法等によってベントナイト(BC)の散布濃度を高くする小型ダムシステムを構築すればよい。
【0109】
以上のように、放射性物質移行抑制エリア2においてPIC(+)及びPIC(-)の両者を使用する本実施例の小型ダムシステムは、放射性Cs137の捕集率を向上することができるため、放射性Cs137が人里にまで移動し、拡散することを確実に回避することが可能になる。
【0110】
なお、図11において、PIC(-)を使用しないで、プラスチック製テミ32に収納されるPIC(+)だけでCs137が吸着したベントナイト(BC)を凝集及び沈殿させる方法は、図3に示すケース3の小型ダムシステムに相当するものである。本実施例の検討結果から、前記ケース3の小型ダムシステムにおいても、放射性Cs137を補足する効果がある程度得られることは容易に推察される。前記ケース3の小型ダムシステムは、本実施例によるケース6の小型ダムシステムに比べると、放射性Cs137の捕集率の向上という点で同じような効果を有しないものであるが、装置及び設備を小型にすることができるだけでなく、設置費用も安価にできることから、狭小地域で簡便に除染を実施する場合には好適な小型ダムシステムである。
【0111】
<実施例2>
図5に示すケース7の小型ダムシステム(雨水又は流水8に溶存態として含まれる放射性Cs137を捕集するための小型ダムシステム)を用いて、雨水又は流水8に含まれる放射性物質(Cs137)の移行抑制効果を検証した。図13に、前記ケース7の小型ダムシステムの例として、福島県に所在し、放射性物質としてCs137が含まれる山林の斜面(ただし、実施例1と異なる山林斜面)の放射性物質移行抑制エリア2において、山林又は里山の側から人里の側に向けて順に第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットを配置して行った実験例を示す。第一、第二及び第三の小型ダムシステム用ユニットとしては、実施例1の場合と同じ構造を有するプラスチック製テミを用いた。図13の(a)は、プラスチック製テミの複数を山林斜面に直列方向の3列で配置したときの上部からみたときの配置模式図である。平行方向については1列だけの配置図を示しており、それ以外の列については図13の(a)に示すものと基本的に同じ構成であるため省略した。
【0112】
図13の(a)に示すように、上流側の山林地帯及び里山の少なくとも何れかを含む地帯には放射性物質吸着材を散布しないで、放射性物質の移行抑制エリア2に直列に配置する3個のプラスチック製テミの中で、最も上流側に配置するプラスチック製テミ34に、実施例1の場合と同じベントナイト(BC)を投入した。そして、直列方向の第2列目に配置するプラスチック製テミ35には、実施例1と同じカチオン性高分子(PIC(+))の捕集材を籾殻と混合した状態で投入した。さらに直列方向の第3列目に配置するプラスチック製テミ36に、実施例1の場合と同じアニオン性高分子(PIC(-))の捕集材を籾殻と混合した状態で投入した。
【0113】
捕集材であるベントナイト(BC)、PIC(+)及びPIC(-)の採取は、実施例1と同じように1か月毎に採取し、再度、交換する操作を行い、この操作を4か月続けた。この操作において、プラスチック製テミ34、35及び36の各収納部に投入されたベントナイト(BC)、PIC(+)及びPIC(-)の各捕集材を1か月毎に採取後、それぞれの捕集材に捕集された放射性セシウム(Cs137)の濃度を実施例1と同じ方法で測定した。
【0114】
実施例1と同様に実験開始月を4月とし、それ以降の5月、6月及び7月を合わせて4カ月分について、それぞれ1か月毎にPIC(+)及びPIC(+)に捕集されたCs137の全濃度の測定結果を、各月の地域降水量と合わせて図13の(b)に示す。他方、捕集材の中で、ベントナイト(BC)に捕集されたCs137の濃度についても測定を行い、山林斜面の中央部に配置したプラスチック製テミ34に収納されたベントナイト(BC)の測定結果を図13の(c)に示している。また、図13の(b)に示す測定結果の中で6月分及び7月分については、Cs137の全濃度を、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の濃度として分離した形で図13の(d)に示す。
【0115】
図13の(b)に示すように、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の各濃度を合わせた全濃度は、地域降水量が増えるとともに高くなっている。図13の(c)に示すベントナイト(BC)に捕集されたCs137の濃度についても、同様の傾向が観測された。これは、降水量が増加すると、山林又は里山の斜面から流出し、放射性物質の移行抑制エリア2に流れ込むCs137の量も多くなることを意味している。
【0116】
また、図13の(d)から分かるように、プラスチック製テミ34においてCs137を吸着したベントナイト(BC)は、プラスチック製テミ35に収納されるPIC(+)によって凝集及び沈殿されて捕捉される。引き続き、Cs137を吸着したベントナイト(BC)を補足したPIC(+)の一部は、下流側のプラスチック製テミ36に流出し、プラスチック製テミ36に収納されるPIC(-)によって凝集及び沈殿されて捕捉されるが、他方で、プラスチック製テミ36の方へ流出しないで、プラスチック製テミ35内に残量するPIC(+)にもある程度の量で存在するCs137が確認された。
【0117】
このように、本実施例は、山林又は里山の斜面からのCs137の移行抑制に有効な小型ダムシステムであることが確認できた。したがって、ベントナイト(BC)、PIC(+)及びPIC(-)からなる3つの捕集材によって放射性Cs137の捕集率を大幅に向上することができるケース7の小型ダムシステムを構築することができる。それにより、放射性Cs137の人里への移動及び拡散をより確実に回避することができる。
【0118】
なお、図13において、PIC(+)及びPIC(-)の捕集材を使用しないで、プラスチック製テミ34に収納されるベントナイト(BC)の単独で放射性Cs137を吸着させて捕集する構成を採用する場合は、図3に示すケース1の小型ダムシステムに相当するものができる。また、図13において、PIC(-)を使用しないで、プラスチック製テミ34に収納されるベントナイト(BC)及びプラスチック製テミ35に収納されるPIC(+)を併用して放射性Cs137を捕集する構成を採用する場合は、図4に示すケース4の小型ダムシステムに相当するものである。本実施例の検討結果から、前記ケース1又はケース4の小型ダムシステムにおいても、放射性Cs137の捕集効果がある程度得られることは容易に推察される。
【0119】
前記ケース1又はケース4の小型ダムシステムは、本実施例によるケース7の小型ダムシステムに比べると、放射性Cs137の捕集率の向上という点で同じような効果を有しないものであるが、装置及び設備を小型にすることができるだけでなく、設置費用も安価にできることから、狭小地域で簡便に除染を実施する場合には好適な小型ダムシステムである。
【0120】
また、実施例1でも説明したように、放射性Cs137の量が非常に多く、除染が困難な地域では、ベントナイト粘土(BC)の散布濃度を高くすることにより、放射性Cs137の捕集をより効率的に行うことができる。その場合は、例えば、前記ケース1の小型ダムシステムを用いて、それを直列方向に多重に配置することによってベントナイト粘土(BC)の散布濃度を高くする方法を採用してもよい。それにより、除染が困難な地域での除染を簡便に行うときに好適な小型ダムシステムを構築することができる。
【0121】
<実施例3>
図4に示すケース5の小型ダムシステム(雨水又は流水8に懸濁態として含まれる放射性Cs137を捕集するための小型ダムシステム)を用いて、雨水又は流水8に含まれる放射性物質(Cs137)の移行抑制効果を検証した。図14に、前記ケース5の小型ダムシステムの例として、福島県に所在し、放射性物質としてCs137が含まれる山林の斜面(実施例2の場合と同じ山林斜面)の放射性物質移行抑制エリア2において、山林又は里山の側から人里の側に向けて順に、実施例1の場合と同じ構造を有するプラスチック製テミの複数を山林斜面に直列方向の3列で配置したときの上部からみたときの配置模式図を示す。平行方向については1列だけの配置図を示しており、それ以外の列については図14の(a)に示すものと基本的に同じ構成であるため省略した。
【0122】
図14の(a)に示すように、放射性物質移行抑制エリア2の最上流に配置したプラスチック製テミ37には放射性物質吸着材が投入されておらず、プラスチック製テミ37は山林又は里山から流れてくる雨水又は流水8の通路を形成するだけである。プラスチック製テミ37は、前記実施例2に説明した小型ダムシステムとの機能及び効果の対比を行うため、雨水又は流水8の流量調整用として採用したものである。したがって、プラスチック製テミ37の下流に配置されるプラスチック製テミ38及び39が、ケース5の小型ダムシステムを構成する第一及び第二の小型ダムシステム用ユニットに相当する。プラスチック製テミ38には、実施例1と同じカチオン性高分子(PIC(+))の捕集材を籾殻と混合した状態で投入した。さらに下流側に配置するプラスチック製テミ39に、実施例1と同じアニオン性高分子(PIC(-))の捕集材を籾殻と混合した状態で投入した。
【0123】
捕集材であるPIC(+)及びPIC(-)の採取は、実施例2と同じように1か月毎に採取し、再度、交換する操作を行い、この操作を4か月続けた。この操作において、プラスチック製テミ38及び39の各収納部に投入されたPIC(+)及びPIC(-)の各捕集材を1か月毎に採取後、それぞれの捕集材に捕集された放射性セシウム(Cs137)の濃度を実施例2と同じ方法で測定した。
【0124】
実施例2と同様に実験開始月を4月とし、それ以降の5月、6月及び7月を合わせて4カ月分について、それぞれ1か月毎にPIC(+)及びPIC(+)に捕集されたCs137の全濃度の測定結果を、各月の地域降水量と合わせて図14の(b)に示す。また、図14の(b)に示す測定結果の中で6月分及び7月分については、Cs137の全濃度を、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の濃度として分離した形で図14の(c)に示す。
【0125】
図14の(b)に示すように、PIC(+)及びPIC(+)のそれぞれの捕集材に捕集されたCs137の各濃度を合わせた全濃度は、地域降水量が増えるとともに高くなっている。これは、降水量が増加すると山林又は里山の斜面から流出し、放射性物質の移行抑制エリア2に流れ込むCs137の量も多くなることを意味している。
【0126】
また、図14の(c)から分かるように、懸濁態として含まれるCs137は、プラスチック製テミ38に収納されるPIC(+)によって凝集及び沈殿されて捕捉される。引き続き、Cs137を吸着した懸濁物を補足したPIC(+)の一部は、下流側のプラスチック製テミ39に流出し、プラスチック製テミ39に収納されるPIC(-)によって凝集及び沈殿されて捕捉されるが、他方で、プラスチック製テミ39の方へ流出しないで、プラスチック製テミ38内に残量するPIC(+)にも、ある程度の量で存在するCs137が確認された。本実施例は、Cs137を含む懸濁物が表面に負(-)の電荷を有するものとして説明したが、前記懸濁物が仮に正(+)の電荷を表面に有する場合は、プラスチック製テミ38にPIC(-)を収納し、プラスチック製テミ39にPIC(+)を収納すればよい。
【0127】
このように、本実施例は、山林又は里山の斜面からのCs137の移行抑制に有効な小型ダムシステムであることが確認できた。したがって、PIC(+)及びPIC(-)からなる2つの捕集材によって、雨水又は流水8に懸濁態として含まれる放射性Cs137の捕集率を大幅に向上することができるケース7の小型ダムシステムを構築することができる。それにより、放射性Cs137の人里への移動及び拡散をより確実に回避することができる。
【0128】
なお、図14において、PIC(-)の捕集材を使用しないで、プラスチック製テミ38に収納されるPIC(+)の単独で、前記Cs137を含む懸濁物を凝集及び沈殿させてCs137を捕集する構成を採用する場合は、図3に示すケース2の小型ダムシステムに相当するものを構築することができる。本実施例の検討結果から、前記ケース2の小型ダムシステムにおいても、放射性Cs137の捕集効果がある程度得られることは容易に推察される。
【0129】
前記ケース2の小型ダムシステムは、本実施例によるケース5の小型ダムシステムに比べると、放射性Cs137の捕集率の向上という点では同じような効果を有しないものであるが、装置及び設備を小型にすることができるだけでなく、設置費用も安価にできることから、狭小地域で簡便に除染を実施する場合には好適な小型ダムシステムである。
【0130】
以上のように、本発明の実施形態による小型ダムシステムは、山林や山里(雑木林を含む)等の未除染区域又は再汚染区域と除染された生活環境区域との間に設けることにより、雨水又は流水に含まれる放射性物質(例えば、Cs137)を、放射性物質吸収剤、又は該放射性吸収剤を凝集沈殿させるイオン性凝集剤で確実に吸収又は捕集するための時間を十分に確保することができる。それにより、放射性物質が除染された生活環境区域へ移動し、拡散することを、従来技術に比べてより確実に、且つ、効率的に防止又は抑制することができる。
【0131】
さらに、小型ダムシステム用ユニットの複数個を連結する方式を採用することにより、次のような効果が得られる。
(1)大がかりな土木工事が不要であるだけでなく、小型ダムシステム用ユニットの設置や撤去が、機械機器に頼らず、人力だけでも行うことができる。
(2)地形に応じて柔軟な形状に設置することができる。
(3)雨水又は流水8による流出水の状況に応じて、小型ダムシステム用ユニットごとに最適な捕集材を選択することが可能であり、かつ、前記捕集材の取り換え及び変更が容易である。
【0132】
そして、前記イオン凝集剤として、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の少なくとも何れか一種に代えて、カチオン性高分子とアニオン性高分子との電荷比が1から外れるように配合して調製した高分子凝集剤、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位とアニオン性の単量体構造単位を有し、且つ、前記カチオンとアニオンとの電荷比が1から外れるように調整して合成した両性高分子凝集剤を使用することにより、山林斜面への環境負荷を低減することが可能になる。
【0133】
したがって、本発明の実施形態による小型ダムシステムは、居住地及び田畑等の生活環境区域への放射性物質の移行を省力化しながら、継続的に抑制又は防止することができる。そのため、将来的に安全で、安心感の持てる生活空間を提供することが可能となることから、その技術的有用性が極めて高い。
【符号の説明】
【0134】
1・・・小型ダムシステム
2・・・放射性物質移行抑制エリア
3,23・・・第一の小型ダムシステム用ユニット
4,10,15,22・・・不透水性の層を有する底部
5,11,16・・・捕集材
6,12,17,25・・・収納部
7,13,18,20・・・壁部材
8・・・雨水又は流水
9・・・第二の小型ダムシステム用ユニット
14・・・第三の小型ダムシステム用ユニット
19・・・溝堀又は開渠の凹部
21・・・側壁
24・・・誘導板
26,27,28,29・・・連結部
30,32,33,34,35,36,37,38,39・・・プラスチック製テミ
31・・・捕集材を内包する袋
図1
図2
図3
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図5
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