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特開2022-14284接点構造物および接点構造物の製造方法
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  • 特開-接点構造物および接点構造物の製造方法 図1
  • 特開-接点構造物および接点構造物の製造方法 図2
  • 特開-接点構造物および接点構造物の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014284
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】接点構造物および接点構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/22 20060101AFI20220112BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220112BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220112BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20220112BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H05K3/22 A
H05K1/02 J
G02F1/13 101
G02F1/1343
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116542
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田ノ岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杜忠雷
(72)【発明者】
【氏名】裴克
(72)【発明者】
【氏名】青木 聡
(72)【発明者】
【氏名】趙前根
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H192
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
2H088FA14
2H088FA30
2H088HA02
2H088HA08
2H088MA20
2H092GA24
2H092HA06
2H092KB01
2H092NA15
2H092NA29
2H192AA24
2H192HA23
2H192HB37
2H192HB48
5E338AA20
5E338BB19
5E338CD01
5E338EE32
5E343AA02
5E343BB08
5E343BB16
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD01
5E343DD75
5E343ER36
5E343ER44
5E343ER45
5E343GG11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな接点構造物の提供をする。
【解決手段】接点構造物9は、焼成メタルインク配線を備える。焼成メタルインク配線は、他の配線11または電極を覆う接点112を有しており、接点112における焼成メタルインク配線の表面21には、凹部28が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成メタルインク配線を備え、
前記焼成メタルインク配線は、他の配線または電極を覆う接点を有しており、
前記接点における前記焼成メタルインク配線の表面には、凹部が形成されていることを特徴とする接点構造物。
【請求項2】
請求項1の前記接点構造物を備えた製品。
【請求項3】
次の(工程1)および(工程2)を含む接点構造物の製造方法。
(工程1)基板上の他の配線または電極にメタルインクを塗布し、接点上のメタルインクの表面に、凹部が形成された接点を作成する工程
(工程2)次いで、前記メタルインクを焼成して焼成メタルインク配線とすることで、前記接点における前記焼成メタルインク配線の表面に、前記凹部が形成された接点構造物を作成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルインクを用いた配線の接点構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムなどを主材料とする配線など、配線の素材には様々な材料が用いられてきた。近年、回路の微細化に伴い、より低抵抗の金属を主材料とする配線にシフトしつつある。特許文献1のように配線を基板上に形成するのに適した、銀、金、銅といった金属ナノ粒子を溶剤に分散したメタルインクが開発されている。そして、メタルインクを用いた場合、焼成工程が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-43346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属はナノ粒子となることにより融点が劇的に下がることが知られている。その性質を利用して、メタルインクを焼成し、溶剤を蒸発させ、金属ナノ粒子をバルク化することで導電性を有する配線となる。しかしながら、融点が低いとはいえ、焼成工程により基板や接点に対する熱の影響が懸念されてきた。
本発明は、新たな接点構造物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、焼成メタルインク配線を備え、前記焼成メタルインク配線は、他の配線または電極を覆う接点を有しており、前記接点における前記焼成メタルインク配線の表面には、凹部が形成されていることを特徴とする接点構造物とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
新たな接点構造物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】メタルインクの焼成工程の説明図(A)焼成用レーザの走査による焼成メタルインク配線の焼結工程概念図(B)メタルインクの拡大図(C)焼成メタルインクの拡大図
図2】実施例1の説明図(A)TFT液晶パネルの拡大正面図(B)、図2(A)の枠内の拡大図
図3図2(B)A-A間の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における
同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
(実施例1)
実施例1は、焼成メタルインク配線27を配設する対象として、有機膜71など種々の材料を用いるTFT液晶パネル1を用いたものである。
【0010】
以下、焼成前のメタルインクは単に「メタルインク2」といい、焼成後のメタルインクは「焼成メタルインク23」や「焼成メタルインク配線27」などということで区別する。
【0011】
[メタルインクの焼成工程]
図1はメタルインクの焼成工程の説明図であり。図1(B)メタルインク2の拡大図である。メタルインク2は、金、銀、銅などの導電性の高い金属をナノ粒子化し、有機溶媒26に溶かしたものである。金属はナノ粒子化することにより融点が劇的に下がる。金属ナノ粒子24の表面には、有機物25が吸着されており、この有機物25により、金属ナノ粒子24同志が凝集することなく有機溶媒26中に分散される。図1(A)は焼成用レーザの走査による焼成メタルインク配線27の焼結工程概念図である。メタルインク2に焼成用レーザ3を当てて加熱すると、有機溶媒26が蒸発するとともに、金属ナノ粒子24表面の有機物25が脱離し、金属ナノ粒子24同志が凝集し、溶融することで金属となり導電性を持つようになる。図1(C)は焼成メタルインク23の拡大図であり、互いに融着し金属塊となっていることが分かる。焼成用レーザ3が照射された部位のみが、焼成され焼成メタルインク23となり、導電性を有する焼成メタルインク配線27となる。焼成用レーザ3は、矢印で示すようにメタルインク2に沿って左右に走査され、メタルインク2を焼成し、焼成メタルインク配線27を作ってゆく。
なお、焼成は、赤外線等を照射することや、大気雰囲気で低温焼成するなどでも行うことができ、焼成用レーザ3に限られるものではない。
【0012】
図2は実施例1の説明図であり、図2(A)は、TFT液晶パネル1の拡大正面図である。TFT液晶パネル1には、電界効果型トランジスタ12を結ぶ数々の配線11(他の配線)が設けられており、図示はしていないが基板7の上には有機膜71などが設けられている。
図2(B)は、図2(A)の枠内の拡大図である。前述したように、TFT液晶パネル1の基板7には有機膜71や電界効果型トランジスタ12などが設けられている。メタルインク2を配線11として使用する場合、低温で焼成可能とはいえ近くに有機膜71や電界効果型トランジスタ12があるので、それらに影響を与える可能性があった。温度の影響を避けるため焼成用レーザ3の照射時間を短くすることもできるが、焼成用レーザ3が照射された部位、すなわち、メタルインク2の表面から焼成が始まるため、一見すると焼成されているように見えても、内部は焼成されていない可能性が残る。図1のように単に焼成メタルインク配線27として使用するだけであれば、表面が焼成されていれば導電性が確保され十分機能する。しかしながら、電極(図示せず)や他の配線11との接点112においては、完全に焼成されてないと抵抗値が上昇し、悪ければ断線状態となる。
【0013】
図2(B)から観て取れるように、TFT液晶パネル1の配線11(他の配線)には欠陥111(断線)がある。このままでは不良品として廃棄されてしまう。実施例1では、欠陥111を修復し製品歩留まりを良くするために、欠陥111を迂回する迂回回路15を設けることとした。欠陥111が生じた原因は色々とあり得るが、銅の配線11(他の配線)を作成する際にゴミが付着したことによる場合があり得、欠陥111を直接繋ぐこともできるが、ゴミ等が残っている可能性があるためあえて迂回回路15としている。もちろん、直接欠陥111を直接繋いで配線11(他の配線)を修復してもよいことは言うまでもない。
メタルインク2を用いた迂回回路15は図示していない焼成用レーザ3で焼成され、焼成メタルインク配線27となっている。配線11(他の配線)は銅を主成分とする。
メタルインク2は、銅の配線11(他の配線)を覆うように設けられる。これにより、焼成メタルインク配線27は、他の配線11との接点112を持つこととなる。
銅の配線11(他の配線)と焼成メタルインク配線27との接点112は、焼成後確実に導電性が担保されるように、敢えて広い領域にわたって設けられている。接点112において、焼成メタルインク配線27の上には、凹部28が設けられており、下の銅の配線11(他の配線)が見えるまで掘り下げられている。凹部28は、必ずしも下の配線11(他の配線)が露出するまで深く設けられる必要はない。凹部28の底部282にメタルインク2が残っている場合、接点112の面積が、銅の配線11(他の配線)が見えるまで掘り下げられている場合より大きくなる。また、掘り下げられている分、銅の配線11(他の配線)への熱伝導も、銅の配線11が見えるまで掘り下げたときと同様に期待できる。
【0014】
[凹部の機能]
凹部28は、焼成前のメタルインク2に対して、226nmのフェムト秒パルスレーザからなる除去用レーザ(図示せず)を用いて作成される。焼成前、メタルインク2は銅の配線11(他の配線)との接点112の全面を覆うように銅の配線11(他の配線)に付着されている。除去用レーザをガルバノスキャンミラーおよび20倍対物レンズにより走査し、メタルインク2を弾き飛ばし、くりぬくように凹部28を形成する。
図3は、図2(B)のA-A間の断面図である。矢印は、熱が伝わる様子を示している。次いで、焼成について説明する。メタルインク2の吸収波長は、金属の種類と粒径によって異なるが実施例1で用いる20nm粒径の銀を主成分とする金属ナノ粒子24を含むメタルインク2では、400nm付近である。そのため、焼成用レーザ3は、当該吸収波長付近の波長を有する連続発振半導体レーザである。焼成用レーザ3からのレーザ光はメタルインク2の表面21に当たり、表面21から焼成が始まる。加えて、凹部28の側壁281もレーザ光が当たり加熱されるため、当該側壁281からも焼成が始まる。さらに、凹部28の底部の銅の配線11(他の配線)が露出した部分もレーザ光が当たり加熱されるため、熱伝導性の良い銅の配線11を伝わりメタルインク2と銅の配線11(他の配線)の接触面1121も加熱され、焼成が始まる。
最終的に、接点112を覆う焼成メタルインク配線27は、満遍なく焼成が進み、良好な導電性を示すようになる。また、様々な方向から焼成が進むため、短時間で焼成が終了するので、基板7に与える熱負荷を軽減できる。さらに、焼成が終了した直後、凹部28があるため、即座に放冷され基板7への熱負荷を軽減できる。
【0015】
以上のように、実施例1の焼成メタルインク配線27は、他の配線11を覆う接点112を有しており、接点112における焼成メタルインク配線27の表面に、特有の凹部28が形成された接点構造物9(接点112)となる。
【0016】
他方、凹部28を設けない場合、メタルインク2の表面21からのみ、焼成がなされるため、肝心の他の配線11とメタルインク2の接触面1121まで焼成が及ばないことがあったところ、実施例1では、特に、銅の配線11(他の配線)とメタルインク2の接触面1121や凹部28の側面も加熱されるため、確実に焼成がなされる。
【0017】
(実施例1の変形例)
メタルインク2に凹部28を形成するのに、実施例1では除去用レーザを用いたが、メタルインクを配線状に描画するのにも除去用レーザを用いることもできる。
さらに、除去用レーザを用いることなくインクジェットなどにより、直接凹部28を設けることもできるし、メタルインク2の配線も描画できる。メタルインク2の配線の描画手段は問わない。
また、これまで他の配線11との接点112について説明してきたが、電極(図示せず)との接点112にも適用できる。電極に適用した場合、焼成メタルインク配線27は、電極を覆う接点112がつくられることとなる。そして、接点112における焼成メタルインク配線27の表面に、特有の凹部28が形成され接点構造物9となる。電界効果型トランジスタ12の電極)の接点112に不良がある場合などに用いることができる。
【0018】
(接点構造物の製造方法)
以上の製造工程を要約すると、次の(工程1)および(工程2)を備えた接点構造物9の製造方法となる。
(工程1)基板7上の他の配線11または電極(図示せず)にメタルインク2を塗布して、他の配線11または電極を覆う接点112を作成する。インクジェットなどを用いて塗布と同時か、塗布後に除去用レーザを用いるなどして、接点112上の、メタルインク2の表面に凹部28が形成された接点を作成する工程。
(工程2)
(工程2)次いで、前記メタルインク2を焼成して焼成メタルインク配線27とすることで、前記接点112における前記焼成メタルインク配線27の表面に、前記凹部28が形成された接点構造物9を作成する工程。
【0019】
以上のように、少なくとも(工程1)および(工程2)を行うことで、接点構造物9を製造することができる。
【0020】
以上、本発明に係る実施例1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施例1や変形例は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 TFT液晶パネル
11 配線(他の配線)
111 欠陥
112 接点
1121 接触面
12 電界効果型トランジスタ
15 迂回回路
2 メタルインク
21 表面
23 焼成メタルインク
24 金属ナノ粒子
25 有機物
26 有機溶媒
27 焼成メタルインク配線
28 凹部
281 側壁
282 底部
3 焼成用レーザ
7 基板
71 有機膜
9 接点構造物
図1
図2
図3