(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142882
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ホルダーチューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/08 20060101AFI20220926BHJP
A61B 50/30 20160101ALI20220926BHJP
【FI】
A61M39/08
A61B50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043133
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大田 徹
(72)【発明者】
【氏名】山下 昂輝
(72)【発明者】
【氏名】浅香 俊成
(72)【発明者】
【氏名】安井 真人
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066NN20
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で医療用具の内面への接触面積を減らすことのできるホルダーチューブを提供する。
【解決手段】渦巻き状に巻かれた中空状のチューブ本体20を有し、チューブ本体20には、少なくとも長さ方向の一部の領域に、内表面と外表面とを貫通する独立した貫通孔25が、長さ方向に沿って複数配置されているホルダーチューブ10である。また、貫通孔25は、チューブ本体20の長さ方向と直交する断面の周方向において、チューブ本体20の渦巻き状の中心側と反対側以外の領域に配置されている
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻き状に巻かれた中空状のチューブ本体を有し、
前記チューブ本体には、少なくとも長さ方向の一部の領域に、内表面と外表面とを貫通する独立した貫通孔が、長さ方向に沿って複数配置されているホルダーチューブ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記チューブ本体の長さ方向と直交する断面の周方向において、前記チューブ本体の渦巻き状の中心側と反対側以外の領域に配置されている請求項1に記載のホルダーチューブ。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記チューブ本体のうち渦巻き状の外側に位置する長さ方向一部の領域に配置されている請求項1または2に記載のホルダーチューブ。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記チューブ本体のうち渦巻き状の内側に位置する一部の領域に配置されている請求項1または2に記載のホルダーチューブ。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記チューブ本体の全長に渡り長さ方向に沿って配置されている請求項1または2に記載のホルダーチューブ。
【請求項6】
開口面積の異なる複数の前記貫通孔が前記チューブ本体の長さ方向に沿って配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載のホルダーチューブ。
【請求項7】
前記チューブ本体のいずれかの端部に、収納する医療用具の先端部を覆うカバー部を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のホルダーチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な医療用具を保護するホルダーチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルやガイドワイヤなどの長尺な医療用具は、使用前の状態において、螺旋状あるいは渦巻き状に巻かれたホルダーチューブに収納されて保護されている。医療用具の使用時には、ホルダーチューブから医療用具が引き出される。
【0003】
医療用具の表面に親水性コーティングが施されている場合には、医療用具がホルダーチューブの内面に張り付いて抜けにくくなることがある。ホルダーチューブの内部に生理食塩水等を注入してプライミングを行い、医療用具を引き抜くこともあるが、この場合でも、ホルダーチューブの内面に張り付いた医療用具が抜けにくい場合がある。このため、ホルダーチューブに多数の屈曲部を設けて、医療用具とホルダーチューブとの接触面積を減らし、それによって医療用具が抜けにくさを抑制することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多角形状のホルダーチューブを製造するのは難しく、コストが高くなるため、より製造しやすい構造で医療用具の抜けにくさを抑制したホルダーチューブが求められている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、簡単な構造で医療用具の内面への接触面積を減らすことのできるホルダーチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係るホルダーチューブは、渦巻き状に巻かれた中空状のチューブ本体を有し、前記チューブ本体には、少なくとも長さ方向の一部の領域に、内表面と外表面とを貫通する独立した貫通孔が、長さ方向に沿って複数配置されている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成したホルダーチューブは、貫通孔により、チューブ本体に収納した医療用具の接触面積を小さくすることができるので、医療用具を引く抜く際の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、ホルダーチューブを液体中に浸漬することで、チューブ本体の内部を容易にプライミングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態におけるホルダーチューブの正面図である。
【
図2】ホルダーチューブを渦巻き状の中心側から見た拡大斜視図である。
【
図3】医療用具を収納したホルダーチューブの正面図である。
【
図4】チューブ本体のうち渦巻き状の外側にのみ貫通孔を設けた場合の、医療用具を収納したホルダーチューブの正面図である。
【
図5】チューブ本体のうち渦巻き状の内側にのみ貫通孔を設けた場合の、医療用具を収納したホルダーチューブの正面図である。
【
図6】貫通孔の配置を変更したホルダーチューブを渦巻き状の中心側から見た拡大斜視図である。
【
図7】ホルダーチューブを液体が満たされたトレーに浸漬する前の状態における両者の断面図である。
【
図8】ホルダーチューブを液体が満たされたトレーに浸漬した状態における両者の断面図である。
【
図9】変形例に係る貫通孔を有するチューブ本体の側面図であって、(a)は貫通孔を四角形状とした場合を、(b)は貫通孔を長孔状とした場合を、それぞれ示す図である。
【
図10】端部にカバー部を有するホルダーチューブの医療用具を収納した状態の正面図である。
【
図11】チューブ本体の長さ方向に沿って異なる径を有する複数の貫通孔が形成されたホルダーチューブの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
本実施形態のホルダーチューブ10は、内部に医療用具50を収納するために用いられる。医療用具50を収納したホルダーチューブ10は、密封包装体に包装されて輸送、保管される。
【0012】
図1に示すように、ホルダーチューブ10は、渦巻き状に巻かれたチューブ本体20を有している。チューブ本体20は、長さ方向に沿う内腔を有した中空状であり、全体がほぼ同じ外径および内径のチューブである。チューブ本体20の渦巻き状の外側の端面には外周側開口21が、渦巻き状の内側の端面には内周側開口22が、それぞれ形成されており、外周側開口21と内周側開口22は連通している。
【0013】
チューブ本体20には、内表面と外表面とを貫通する独立した貫通孔25が、長さ方向に沿って複数配置されている。貫通孔25は、チューブ本体20の全長に渡って配置されている。貫通孔25の中心は、チューブ本体20の長さ方向と直交する断面の周方向において、チューブ本体20の渦巻き状の中心方向に向かうように配置されている。
【0014】
図2に示すように、複数の貫通孔25はいずれも同形状の丸孔であり、同じ開口面積を有している。また、貫通孔25は、同ピッチで長さ方向に沿って配置されている。貫通孔25の径dは、チューブ本体20の外径Dに対する割合d/Dが、0.1~0.8の範囲となるように設定される。
【0015】
チューブ本体20の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン等のある程度の可撓性を備える樹脂が使用される。
【0016】
チューブ本体20は、構成材料となる樹脂を押出成形し、長さ方向に沿って貫通孔25を形成することにより作製される。チューブ本体20の長さとしては、収納される医療用具50によって相違するが、400~4500mm程度であることが好ましい。また、チューブ本体20の内径は、1~4mm、特に、2~3mmであることが好ましい。また、チューブ本体20の外径は、2~5mm、特に、3~4mmであることが好ましい。
【0017】
図3に示すように、ホルダーチューブ10に収納される医療用具50は、長尺なシャフト部51と、シャフト部51の基端部に設けられるハブ52とを有したカテーテルである。ホルダーチューブ10には、シャフト部51が収納される。シャフト部51の先端部51aは、チューブ本体20のうち渦巻き状の外側の端部に位置し、ハブ52は、チューブ本体20のうち渦巻き状の内側の端部から露出している。
【0018】
医療用具50を使用する際には、ハブ52を引っ張ってシャフト部51をホルダーチューブ10から引き抜く。チューブ本体20は貫通孔25を有しているので、シャフト部51がチューブ本体20の内面に接触する面積が小さい。このため、シャフト部51がチューブ本体20の内面で摺動する際の摩擦抵抗が小さくなり、シャフト部51をチューブ本体20から引き抜きやすくすることができる。
【0019】
シャフト部51の表面に親水性コーティングがされている場合に、貫通孔25によってシャフト部51のチューブ本体20の内面に対する接触面積が小さいことで、シャフト部51がチューブ本体20の内面に張り付きにくいので、シャフト部51を容易に引き抜くことができる。特に、シャフト部51の表面に親水性コーティングが施されている場合、親水性コーティングが吸湿することにより引き抜きの際の抵抗が大きくなりやすいため、シャフト部51のチューブ本体20の内面に対する接触面積が小さいことによる効果が大きい。
【0020】
表面が親水性コーティングされている医療用具50を引き抜く際には、シャフト部51の先端部51aが配置されたチューブ本体20の外周側開口21に取付けられたプライミング用のハブから、生理食塩水等の液体を注入してプライミングを行う場合がある。本実施形態のホルダーチューブ10は、チューブ本体20が長さ方向に沿って複数の貫通孔25を有しているので、医療用具50を収納したホルダーチューブ10を、トレー等に満たした液体中に浸漬することで、液体を貫通孔25からチューブ本体20の内部に浸入させることができる。このため、プライミングを簡単に行うことができる。
【0021】
貫通孔25は、チューブ本体20の長さ方向において、収納される医療用具50の表面に親水性コーティングがされている領域にのみ設けられてもよい。
図4の例において、医療用具50のシャフト部51には、中間より先端側の領域にのみ親水性コーティングが施されている。ホルダーチューブ10は、チューブ本体20のうち渦巻き状の外側に位置する長さ方向一部の領域(図中矢印の範囲)に、貫通孔25を有している。これにより、収納された医療用具50のうち、親水性コーティングを有する部分がチューブ本体20の内面に張り付くことを防止できると共に、プライミングも容易にすることができる。
【0022】
医療用具50は、チューブ本体20の外周側開口21から挿入されていてもよい。
図5に示すように、この場合、チューブ本体20の渦巻き状の外側端部にハブ52が位置し、チューブ本体20の渦巻き状の内側端部にシャフト部51の先端部51aが位置する。また、シャフト部51のうち中間より先端側の領域にのみ親水性コーティングが施されていることから、貫通孔25は、チューブ本体20のうち渦巻き状の内側に位置する長さ方向一部の領域(図中矢印の範囲)を含むチューブ本体20の一部の領域に配置されている。
【0023】
貫通孔25は、チューブ本体20の渦巻き状の中心側以外に向かうように配置されてもよい。貫通孔25は、チューブ本体20の長さ方向と直交する断面の周方向において、チューブ本体20の渦巻き状の中心側と反対側以外の領域に形成することができる。これにより、チューブ本体20に医療用具50を挿入していく際に、医療用具50が貫通孔25からチューブ本体20の外部に飛び出すことを防止できる。
図6に示すように、貫通孔25は、チューブ本体20の周方向において複数の方向に向かうように配置することができる。特に、チューブ本体20の長さ方向と直交する断面で、渦巻き状の中心から外側に向かう方向に対して直交する方向に向かうように、複数の貫通孔25を有すると良い。
図7に示すように、医療用具50を収納したホルダーチューブ10は、プライミングのため液体Wが満たされたトレーに対して、ホルダーチューブ10の渦巻き状の形状が面する方向Dに沿って浸漬される。このとき、
図8に示すように、浸漬する方向Dに沿って、チューブ本体20の両側に貫通孔25が位置するので、チューブ本体20の一方側の貫通孔25から液体が浸入し、他方側の貫通孔25から空気が流出しやく、チューブ本体20の内部を素早く液体で満たすことができる。
【0024】
貫通孔は、丸孔以外の形状を有していてもよい。
図9(a)に示すように、貫通孔26は四角形状でもよい。貫通孔26のチューブ本体20の長さ方向の長さLの、チューブ本体20の直径Dに対する割合L/Dは、0.1~0.8の範囲内とされる。また、貫通孔26のチューブ本体20の周方向の長さは、前記長さLより短い長さとされる。また、貫通孔27は、
図9(b)に示すように、チューブ本体20の長さ方向に長い長孔状であってもよい。
【0025】
図10に示すように、ホルダーチューブ10の端部に、収納する医療用具60の先端部を覆うカバー部29を設けてもよい。収納される医療用具60は、長尺なシャフト部61と基端部のハブ62とを有し、シャフト部61の先端部61aは屈曲した形状付けがされている。この形状を保護するために、カバー部29が設けられる。
【0026】
この場合、カバー部29によってチューブ本体20の外周側開口21が塞がれているので、外周側開口21から液体を注入するプライミングは困難であるが、チューブ本体20が貫通孔25を有していることにより、液体にホルダーチューブ10を浸漬することで、容易にプライミングを行うことができる。
【0027】
複数の貫通孔25は、チューブ本体20の長さ方向に沿って、径が変化していてもよい。
図11に示すように、複数の貫通孔25は、チューブ本体20の渦巻き状の外周側から内周側に向かって、開口径が小さくなるように形成されている。これにより、チューブ本体20の長さ方向に沿って、収納する医療用具の摺動抵抗を変化させることができ、医療用具の特性等に応じてよりチューブ本体20から引き抜きやすくすることができる。
【0028】
また、チューブ本体20の長さ方向に沿って、貫通孔25の形状やピッチなどを変化させるようにしてもよい。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るホルダーチューブ10は、渦巻き状に巻かれた中空状のチューブ本体20を有し、チューブ本体20には、少なくとも長さ方向の一部の領域に、内表面と外表面とを貫通する独立した貫通孔25が、長さ方向に沿って複数配置されている。このように構成したホルダーチューブ10は、貫通孔25により、チューブ本体20に収納した医療用具50の接触面積を小さくすることができるので、医療用具50を引く抜く際の摩擦抵抗を小さくすることができる。また、ホルダーチューブ10を液体中に浸漬することで、チューブ本体20の内部を容易にプライミングすることができる。
【0030】
貫通孔25は、チューブ本体20の長さ方向と直交する断面の周方向において、チューブ本体20の渦巻き状の中心側と反対側以外の領域に配置されているようにしてもよい。これにより、チューブ本体20に医療用具50を挿入していく際に、医療用具50が貫通孔25からチューブ本体20の外部に飛び出すことを防止できる。
【0031】
貫通孔25は、チューブ本体20のうち渦巻き状の外側に位置する長さ方向一部の領域に配置されているようにしてもよい。これにより、収納される医療用具50のうち親水性コーティングを有する部分がチューブ本体20の渦巻き状の外側に配置される場合に、当該部分がチューブ本体20の内面に張り付きにくくすることができる。
【0032】
貫通孔25は、チューブ本体20のうち渦巻き状の内側に位置する一部の領域に配置されているようにしてもよい。これにより、収納される医療用具50のうち親水性コーティングを有する部分がチューブ本体20の渦巻き状の内側に配置される場合に、当該部分がチューブ本体20の内面に張り付きにくくすることができる。
【0033】
貫通孔25は、チューブ本体20の全長に渡り長さ方向に沿って配置されているようにしてもよい。これにより、収納される医療用具50の種類によらず、医療用具50の接触面積を小さくすることができる。
【0034】
開口面積の異なる複数の貫通孔25がチューブ本体20の長さ方向に沿って配置されているようにしてもよい。これにより、チューブ本体20の長さ方向に沿って、医療用具の摺動抵抗を変化させることができるので、医療用具の特性等に応じてよりチューブ本体20から引き抜きやすくすることができる。
【0035】
チューブ本体20のいずれかの端部に、収納する医療用具50の先端部を覆うカバー部29を有するようにしてもよい。これにより、医療用具50の先端部をカバー部29で保護しつつ、貫通孔25からプライミングを実施することができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。ホルダーチューブ10に収納される医療用具は、上述の実施形態のようにカテーテルには限られず、例えばガイドワイヤなどであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ホルダーチューブ
20 チューブ本体
21 外周側開口
22 内周側開口
25 貫通孔
26 貫通孔
27 貫通孔
29 カバー部
50 医療用具
51 シャフト部
51a 先端部
52 ハブ