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特開2022-142964脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142964
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/90 20060101AFI20220926BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20220926BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B01D53/90
F23J15/00 A ZAB
B01D53/86 222
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043262
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 聡
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【テーマコード(参考)】
3K070
4D148
【Fターム(参考)】
3K070DA02
3K070DA14
3K070DA22
3K070DA25
3K070DA72
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA23Y
4D148BA27Y
4D148CC61
4D148DA01
4D148DA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡素な構成で還元剤の供給量を適切に調節することが可能な脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラムを提供する。
【解決手段】脱硝装置の制御装置は、ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御装置であって、還元剤供給部は、複数のノズルと複数のノズルへの還元剤の供給量を調節するための複数の第1バルブとを含み、ボイラの複数の運転状態に対応する複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部と複数の開度パターンのうち、現在のボイラの運転状態に対応する開度パターンを記憶部から取得するように構成された開度パターン取得部と開度パターン取得部で取得された開度パターンに基づいて、複数の第1バルブの各々の開度を調節するように構成された第1バルブ制御部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御装置であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部と、
前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを前記記憶部から取得するように構成された開度パターン取得部と、
前記開度パターン取得部で取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するように構成された第1バルブ制御部と、
を備える脱硝装置の制御装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、前記排ガス流路内にて排ガス流れ方向から視て異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成される
請求項1に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項3】
前記複数の開度パターンは、前記ボイラの運転負荷に応じて異なる複数の開度パターンを含む
請求項1又は2に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項4】
前記複数の開度パターンは、ボイラで燃焼させる燃料の種類に応じて異なる複数の開度パターンを含む
請求項1乃至3の何れか一項に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項5】
前記複数の開度パターンは、前記排ガス流路に設けられる伝熱管をバイパスするように前記排ガス流路から分岐して設けられるバイパス流路における排ガスの流量を調節するためのダンパの開度に応じて異なる複数の開度パターンを含む
請求項1乃至4の何れか一項に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項6】
前記還元剤供給部は、
前記複数のノズルに供給される前記還元剤が流れる還元剤供給ラインと、
前記還元剤供給ラインに設けられる第2バルブと、を含み、
前記排ガス流路における前記脱硝装置よりも下流側の位置における窒素酸化物濃度に基づいて、前記第2バルブの開度を調節するように構成された第2バルブ制御部を備える
請求項1乃至5の何れか一項に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項7】
前記第2バルブ制御部は、前記排ガス流路から排ガスを排出するための煙突の入口における窒素酸化物濃度に基づいて、前記第2バルブの開度を調節するように構成された
請求項6に記載の脱硝装置の制御装置。
【請求項8】
燃料を燃焼するための燃焼炉を含むボイラと、
前記ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置と、
前記脱硝装置を制御するように構成された請求項1乃至7の何れか一項に記載の制御装置と、
を備えるボイラ設備。
【請求項9】
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御方法であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得するステップと、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するステップと、
を備える脱硝装置の制御方法。
【請求項10】
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御プログラムであって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得する手順と、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節する手順と、
をコンピュータに実行させるための脱硝装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼設備からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、還元剤と反応させて無害な窒素と水に分解することにより除去又は低減する脱硝装置が知られている。このような脱硝装置において、還元剤の供給量が過少であると排ガス中の窒素酸化物を十分に低減することができず、また、還元剤の供給量が過剰であると、未反応の還元剤によって機器に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、脱硝装置における還元剤の供給量を適切に調節するための構成が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ボイラからの排ガス中に還元剤としてのアンモニアを注入するアンモニア注入装置と、排ガス流路においてアンモニア注入装置の下流側に設けられる脱硝触媒と、アンモニア注入装置からのアンモニア注入量を調節するための調節手段と、を備えた脱硝システムが開示されている。上述の調節手段は、脱硝触媒の出口側での排ガス流路断面におけるNOx濃度分布に基づいて、脱硝が不十分の領域(即ちNOx濃度が比較的高い領域)により多くのアンモニアが供給されるように、還元剤供給量を調節するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-100630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の脱硝システムでは、排ガスの流路断面におけるNOx濃度分布に基づいて、流路断面内の各領域におけるアンモニア(還元剤)の供給量を調節するようになっている。この場合、NOx濃度分布を求めるために、流路断面内の多数の位置でNOx濃度を必要に応じて常時又は定期的に計測する必要がある。このため、装置構成が複雑となり、あるいは、装置コストが増大することになる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、簡素な構成で還元剤の供給量を適切に調節することが可能な脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置の制御装置は、
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御装置であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部と、
前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを前記記憶部から取得するように構成された開度パターン取得部と、
前記開度パターン取得部で取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するように構成された第1バルブ制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るボイラ設備は、
燃料を燃焼するための燃焼炉を含むボイラと、
前記ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置と、
前記脱硝装置を制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置の制御方法は、
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御方法であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得するステップと、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するステップと、
を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置の制御プログラムは、
ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部を含む脱硝装置を制御するための制御プログラムであって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズルと、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブと、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得する手順と、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節する手順と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、簡素な構成で還元剤の供給量をボイラの運転状態に応じて適切に調節することが可能な脱硝装置の制御装置、ボイラ設備、脱硝装置の制御方法及び脱硝装置の制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るボイラ設備の概略構成図である。
図2図1に示すボイラ設備における脱硝装置の概略構成図である。
図3】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
図4】一実施形態に係る脱硝装置の制御方法のフローチャートである。
図5】一実施形態に係る脱硝装置の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
(ボイラ設備の構成)
図1は、幾つかの実施形態に係る制御装置又は制御方法の制御対象となる脱硝装置を含むボイラ設備の概略構成図である。図1に示すボイラ設備1は、燃料を燃焼するための燃焼炉3を含むボイラ2と、ボイラ2に接続される煙道4と、煙道4内を流れる排ガスから窒素酸化物(NOx)を除去又は低減するための脱硝装置40と、を備える。煙道4は、燃焼炉3からの排ガス(燃焼ガス)が導かれる排ガス流路6を形成する。また、ボイラ設備1は、脱硝装置40を制御するための制御装置50を備える。
【0015】
ボイラ2は、蒸気を生成するように構成される。ボイラ2は、排ガス流路6に設けられる伝熱管12,14を含み、伝熱管12,14に供給される流体(水や蒸気等)が、排ガス流路6を流れる排ガスとの熱交換により加熱されるようになっている。ボイラ2で生成された蒸気は、発電機(不図示)と接続する蒸気タービン(不図示)を駆動するために用いられてもよい。
【0016】
脱硝装置40は、排ガス流路6に還元剤を供給するための還元剤供給部20と、排ガス流路6にて還元剤供給部20の下流側に設けられる触媒部30と、を含む。還元剤供給部20及び触媒部30は、排ガス流路6において、上述の伝熱管12,14よりも下流側に設けられていてもよい。
【0017】
還元剤供給部20は、排ガス流路6に、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元する作用を有する還元剤を供給するように構成される。還元剤は、アンモニア、尿素又はそのどちらかを含む化合物を含んでいてもよい。排ガス中の窒素酸化物は、還元剤との反応により、窒素と水に分解される。還元剤供給部20は、液滴状又はガス状の還元剤を排ガス流路6に供給するように構成されていてもよい。還元剤供給部20のより具体的な構成については後述する。
【0018】
触媒部30は、排ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を促進するための脱硝触媒を含む。脱硝触媒は、担体と、担体に担持される触媒成分と、を含む。触媒成分は、窒素酸化物と還元剤との反応を促進する作用を有する物質であり、例えば、バナジウムやタングステンを含む。
【0019】
脱硝装置40で窒素酸化物が除去又は低減された排ガスは、排ガス流路6のうち脱硝装置40よりも下流側に位置する部分及び煙突8を介して外部に放出されるようになっている。排ガス流路6内にて脱硝装置40の下流側に、排ガスとの熱交換により流体等(例えば空気)を昇温する空気予熱器10が設けられていてもよい。また、排ガス流路6内にて脱硝装置40の下流側に、排ガスに含まれる燃焼灰等のばいじんや硫黄酸化物(SOx)等を除去又は低減する装置が設けられていてもよい。
【0020】
図1に示すボイラ設備1は、排ガス流路6から分岐して設けられるバイパス流路16と、バイパス流路16に設けられるダンパ18と、を備えている。バイパス流路16は、伝熱管14の上流側の位置にて排ガス流路6から分岐するとともに、伝熱管14よりも下流側、かつ、脱硝装置40の触媒部30よりも上流側の位置にて排ガス流路6に合流するように設けられる。すなわち、バイパス流路16は、排ガス流路6に設けられる伝熱管14をバイパスするように設けられる。なお、図1に示すように、バイパス流路16は、伝熱管12の下流側かつ伝熱管14の上流側の位置にて排ガス流路6から分岐するように設けられていてもよい。
【0021】
ダンパ18が閉じられている場合、燃焼炉3からの排ガスの全部が、伝熱管14を通過して触媒部30に流入する。このため、伝熱管14での熱交換を経て温度が低下した比較的低温の排ガスが触媒部30に流入する。一方、ダンパ18が開いている場合、燃焼炉3からの排ガスの一部が伝熱管14を通過して触媒部30に流入するとともに、排ガスの残部は伝熱管14をバイパスして(伝熱管14を通過せずに)触媒部30に流入する。したがって、ダンパ18が閉じられている場合に比べて高温の排ガスを触媒部30に流入させることができる。また、ダンパ18の開度を調節することで、流路合流後に触媒部30へ流入する排ガスの温度を調節してもよい。
【0022】
ボイラ設備1の起動時又は低負荷運転時等には、触媒部30に流入する排ガスの温度が高温になり難く、このため、触媒部30において、窒素酸化物と還元剤との反応速度が十分に大きくならない場合がある。このような場合にダンパ18を開けておくことで、比較的高温の排ガスを触媒部30に流入させることができる。これにより、触媒部30に流入する排ガスの温度を上昇させて、窒素酸化物と還元剤との反応を促進することができる。また、ボイラ設備1の起動時又は低負荷運転時等から通常負荷運転時へ移行する際、ダンパ18の開度を調節することで触媒部30へ流入する排ガスの温度を触媒の使用可能温度(例えば、300℃)以上に昇温することができる。これにより、触媒部において、触媒へ悪影響を与える酸性硫安等の析出を抑制することができる。
【0023】
ボイラ設備1は、排ガス流路6において脱硝装置40よりも下流側の位置における排ガス中の窒素酸化物(NOx;二酸化窒素(NO)又は一酸化窒素(NO)等)の濃度を計測するように構成されたNOx濃度計測部64をさらに備えている。図1に示す例示的な実施形態では、NOx濃度計測部64は、煙突8の入口(煙突8の内部)におけるNOx濃度を計測するように構成される。一実施形態では、NOx濃度計測部64は、脱硝装置40の触媒部30の出口近傍におけるNOx濃度を計測するように構成されてもよい。NOx濃度計測部64は、流路断面内の複数の位置におけるNOx濃度を計測し、これら複数の計測値の平均を、排ガス中のNOx濃度として取得するようにしてもよい。
【0024】
なお、排ガス中のNOx濃度は、例えば、化学発光方式NOx計(JIS B 7982)を用いて、又は、亜鉛還元ナフチルエチレンジアミン吸光光度法(Zn-NEDA法)により、JIS K 0104に従って計測することができる。
【0025】
図2は、図1に示す脱硝装置40の還元剤供給部20の概略構成図であり、図1のA-Aに沿った矢視図である。なお、図2は、排ガス流れ方向から視た煙道4の内部を模式的に示す図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、還元剤供給部20は、還元剤を貯留するための還元剤貯留部22と、還元剤貯留部22からの還元剤を排ガス流路6内に供給するようにそれぞれ構成された複数のノズル28A~28F(以下、ノズル28)と、を含む。還元剤貯留部22と複数のノズル28との間には、還元剤貯留部22に接続される還元剤供給ライン24と、還元剤供給ライン24から分岐して設けられる複数の分岐ライン26A~26F(以下、分岐ライン26)が設けられる。複数のノズル28には、複数の分岐ライン26をそれぞれ介して還元剤が供給されるようになっている。
【0027】
還元剤供給ライン24には、還元剤供給ライン24における還元剤の流量を調節するための第2バルブ25が設けられる。複数の分岐ライン26A~26Fには、各ラインに少なくとも1つ以上のノズル28A~28Fと、ノズル28A~28Fへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブ27A~27F(以下、第1バルブ27)がそれぞれ設けられる。すなわち、複数のノズル28への還元剤の総供給量は、第2バルブ25の開度に応じたものとなる。また、複数のノズル28には、該複数のノズル28に対応する複数の第1バルブ27の開度に応じた分配比で還元剤が供給されるようになっている。
【0028】
なお、図1には、紙面の都合上、図2に示す複数の分岐ライン26、複数の第1バルブ27及び複数のノズル28のうち一部のみが示されている。また、図2において、それぞれ6個の分岐ライン26、第1バルブ27及びノズル28が示されているが、複数の分岐ライン26、複数の第1バルブ27及び複数のノズル28の個数はこれに限定されない。
【0029】
図2に示すように、複数のノズル28は、排ガス流路6内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ還元剤を供給するように構成される。複数のノズル28は、排ガス流路6内にて、排ガス流れ方向から視て格子状に配列されるように設けられていてもよい。
【0030】
図3は、一実施形態に係る制御装置50の概略構成図である。図3に示すように、制御装置50は、NOx濃度取得部52と、運転状態取得部54と、開度パターン取得部56と、第1バルブ制御部58と、第2バルブ制御部60と、記憶部62と、を含む。
【0031】
制御装置50は、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶部及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置50は、インターフェースを介して、NOx濃度計測部64から、NOx濃度の計測値を示す信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の各機能部(NOx濃度取得部52、運転状態取得部54、開度パターン取得部56、第1バルブ制御部58又は第2バルブ制御部60等)の機能が実現される。
【0032】
制御装置50での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは記憶装置に展開される。プロセッサは、記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0033】
記憶部62は、制御装置50を構成する計算機の主記憶部又は補助記憶部を含んでもよい。あるいは、記憶部62は、該計算機とネットワークを介して接続される遠隔記憶装置を含んでもよい。
【0034】
NOx濃度取得部52は、NOx濃度計測部64による排ガス中のNOx濃度の計測値を取得するように構成される。NOx濃度取得部52は、NOx濃度計測部64からの上述の計測値を、規定のサンプリング周期毎に受け取るように構成されていてもよい。
【0035】
運転状態取得部54は、ボイラ2の現在の運転状態を取得するように構成される。運転状態取得部54は、ボイラ2の運転制御装置(上位制御装置)からボイラ2の現在の運転状態を示す信号を受け取ることにより、現在の運転状態を取得してもよい。あるいは、制御装置50の記憶部62にボイラ2の現在の運転状態が格納されるようになっており、運転状態取得部54は、記憶部62に記憶された現在の運転状態を読み出すようになっていてもよい。
【0036】
運転状態取得部54は、ボイラ2の運転状態として、ボイラ2の運転負荷、ボイラ2での使用燃料の種類、又は、ダンパ18の開度を取得するように構成されていてもよい。なお、ボイラ2の運転負荷は、煙道4の特定の位置における排ガス流量で表されたものであってもよい。また、ボイラ2の運転負荷は、ボイラ2の発生蒸気量、発電量やボイラ2に供給される入熱量、燃料量、空気量、給水量などで表されたものでもよく、ボイラ2の運転制御装置から送信されるそれらの指令値で表されたものでもよい。
【0037】
開度パターン取得部56は、記憶部62に記憶された複数の開度パターンのうち、運転状態取得部54で取得された運転状態(即ち現在の運転状態)に対応する開度パターンを読み出して取得するように構成される。ここで、開度パターンとは、還元剤供給部20の複数の第1バルブ27(27A~27F)の開度の組合せを示すものである。
【0038】
第1バルブ制御部58は、開度パターン取得部56で取得された開度パターン(即ち現在の運転状態に対応する開度パターン)に基づいて、還元剤供給部20の複数の第1バルブ27(27A~27F)の各々の開度を調節するように構成される。第1バルブ制御部58は、開度パターンに基づく開度指令信号を複数の第1バルブ27の各々に送出するようになっていてもよい。
【0039】
第2バルブ制御部60は、NOx濃度取得部52により取得された排ガス中のNOx濃度に基づいて、還元剤供給部20の第2バルブ25の開度を調節するように構成された第2バルブ制御部を備える。第2バルブ制御部60は、NOx濃度取得部52により取得された排ガス中のNOx濃度に基づいて第2バルブ25の開度指令値を算出し、該開度指令値を示す開度指令信号を第2バルブ25に送出するようになっていてもよい。NOx濃度取得部52によるNOx濃度の計測値と、NOx濃度の目標値との差分(偏差)がゼロに近づくように、第2バルブ25の開度指令値を算出するようになっていてもよい。なお、NOx濃度の目標値は、例えば一実施形態に係るボイラ設備の属する国もしくは地域において定められたNOx排出量に関する法令に沿う任意の値である。
【0040】
なお、複数の第1バルブ27及び第2バルブ25の少なくとも何れかは、空気圧、電力、油圧又は電磁力等を用いたアクチュエータにより、開度を自動制御可能なバルブであってもよい。あるいは、複数の第1バルブ27及び第2バルブ25の少なくとも何れかは、手動弁(既設のバルブ等)に制御機構(モータ、ギア等を含むハンドル回転機構等)を追設することで制御可能としたバルブであってもよい。
【0041】
記憶部62には、ボイラ2の複数の運転状態にそれぞれ対応する複数の第1バルブ27の複数の開度パターンが記憶される。ボイラ2の運転状態に対応する複数の第1バルブ27の開度パターンとは、その開度パターンに基づき複数の第1バルブ27の各々の開度を設定して排ガス流路6に還元剤を供給することで、排ガス流路6における脱硝装置40の下流側の位置でのNOx濃度分布が均一化される開度パターンである。排ガス流路6における脱硝装置40の下流側の位置でのNOx濃度分布が均一化されることにより、排ガス流路6の流路断面内における複数のノズル28に対応するそれぞれの領域において、排ガス中のNOxを適切に低減することが可能になるとともに、未反応還元剤によるボイラ設備1への悪影響(例えば、酸性硫安の発生による触媒部30の触媒性能低下や、空気予熱器10の閉塞による差圧上昇等)を抑制することが可能となる。
【0042】
記憶部62には、ボイラ2の運転状態としての、ボイラ2の運転負荷、ボイラ2での使用燃料の種類、又は、ダンパ18の開度に応じた複数の開度パターンが記憶されていてもよい。
【0043】
一実施形態では、記憶部62には、ボイラ2の運転負荷に応じた複数の開度パターンが記憶される。例えば、ボイラ2の運転負荷範囲を2つに分割して得られる高負荷帯と低負荷帯のそれぞれに対応する2つの開度パターンが記憶部62に記憶されていてもよい。
【0044】
一実施形態では、記憶部62には、煙道4の特定の位置における排ガス流量に応じた複数の開度パターンが記憶される。例えば、上述の排ガス流量の範囲を複数に分割して得られる複数の排ガス流量帯にそれぞれ対応する複数の開度パターンが記憶部62に記憶されていてもよい。
【0045】
一実施形態では、記憶部62には、ボイラ2での使用燃料(ボイラ2で燃焼させる燃料)の種類に応じた複数の開度パターンが記憶される。例えば、ボイラ2での使用燃料がガス燃料と油燃料とで切り替え可能である場合、ガス燃料使用時に対応する開度パターン、及び、油燃料使用時に対応する開度パターンが記憶部62に記憶されていてもよい。
【0046】
一実施形態では、記憶部62には、ボイラ2の排ガス流路6から分岐して設けられるバイパス流路16における排ガスの流量を調節するためのダンパ18の開度に応じた複数の開度パターンが記憶される。例えば、ダンパ18の開状態に対応する開度パターン、及び、ダンパ18の閉状態に対応する開度パターンが記憶部62に記憶されていてもよい。あるいは、例えば、ダンパ18の開度範囲を複数に分割して得られる複数の開度帯にそれぞれ対応する複数の開度パターンが記憶部62に記憶されていてもよい。
【0047】
記憶部62には、ボイラ2の運転実績等に基づいて予め取得された複数の開度パターンが記憶されるようになっていてもよい。
【0048】
(脱硝装置の制御フロー)
以下、幾つかの実施形態に係る脱硝装置40の制御フローについて説明する。図4及び図5は、一実施形態に係る脱硝装置の制御方法のフローチャートである。なお、以下において、上述の制御装置50を用いて一実施形態に係る脱硝装置の制御方法を実行する場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いて脱硝装置の制御方法を実行してもよく、あるいは、幾つかの実施形態では、以下に説明する手順の一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、図4に示すフローチャートに従って第2バルブ25の開度を調節するとともに、図5に示すフローチャートに従って複数の第1バルブ27の開度を調節する。図4に示すステップS2~S4と、図5に示すステップS12~S16とは、同時並行で行われてもよい。
【0050】
以下の説明では、記憶部62には、ボイラ2の複数の運転状態に対応する複数の開度パターンとして、ボイラ2の運転負荷に応じた2つの開度パターン、すなわち、高負荷帯での運転状態に対応した開度パーンと、低負荷帯での運転状態に対応した開度パターンが記憶されていることを前提とする。
【0051】
一実施形態では、図4に示すように、NOx濃度計測部64を用いて、排ガス流路6において脱硝装置40よりも下流側の位置における排ガス中のNOx濃度を計測し、NOx濃度取得部52により該NOx濃度の計測値を取得する(S2)。NOx濃度取得部52は、NOx濃度計測部64からのNOx濃度の計測値を、規定のサンプリング周期毎に受け取ってもよい。
【0052】
次に、第2バルブ制御部60により、ステップS2で取得されたNOx濃度に基づいて、還元剤供給部20の第2バルブ25の開度を調節する(S4)。ステップS4では、ステップS2で取得されたNOx濃度に基づいて第2バルブ25の開度指令値を算出してもよい。また、該開度指令値を示す開度指令信号を第2バルブ25に送出するようにしてもよい。
【0053】
上述のステップS2~S4の手順は、繰り返し行われる。これにより、脱硝装置40よりも下流側の位置における排ガス中のNOx濃度が目標値に近づくように、第2バルブ25を介して適切な総量の還元剤が複数のノズル28に供給される。
【0054】
また、図5に示すように、運転状態取得部54により、ボイラ2の現在の運転状態を取得する(S12)。ステップS12では、ボイラ2の運転制御装置(上位制御装置)又は記憶部62から、ボイラ2の現在の運転状態を取得してもよい。ここでは、ボイラ2の現在の運転状態として、高負荷帯での運転状態であることを示す信号が運転制御装置から得られたとする。
【0055】
次に、開度パターン取得部56により、記憶部62に記憶された複数の開度パターン(高負荷帯での運転状態に対応した開度パーン、及び、低負荷帯での運転状態に対応した開度パターン)のうち、ステップS12で取得された運転状態、即ち、高負荷帯での運転状態に対応する開度パターンを読み出して取得する(S14)。
【0056】
そして、第1バルブ制御部58により、ステップS14で取得された開度パターン(即ち高負荷帯での運転状態に対応する開度パターン)に基づいて、還元剤供給部20の複数の第1バルブ27(27A~27F)の各々の開度を調節する(S16)。ステップS16では、開度パターンに基づく開度指令信号を複数の第1バルブ27の各々に送出するようにしてもよい。
【0057】
このようにして、複数のノズル28には、該複数のノズル28に対応する複数の第1バルブ27の開度に応じた分配比で還元剤が供給される。その結果、排ガス流路6における脱硝装置40の下流側の位置でのNOx濃度分布を均一化することができる。
【0058】
上述のステップS12~S16の手順は、ボイラ2の運転状態が変更される度に繰り返し行ってもよい。すなわち、例えば、運転状態取得部54が受け取ったボイラ2の運転状態を示す信号(例えば、運転負荷を示す信号等)に変更があったとき、これをトリガーとして、ステップS14~S16の手順を行うようにしてもよい。これにより、ボイラ2の運転状態が変更されても、排ガス流路6における脱硝装置40の下流側の位置でのNOx濃度分布を均一化することができる。
【0059】
従来の脱硝システムのように、排ガスの流路断面におけるNOx濃度分布に基づいて、流路断面内の各領域におけるアンモニア(還元剤)の供給量を調節する場合、NOx濃度分布を求めるために、流路断面内の多数の位置でNOx濃度を計測する必要がある。このため、装置構成が複雑となり、あるいは、装置コストが増大することになる。
【0060】
この点、上述の実施形態に係る制御装置又は制御方法によれば、排ガス流路6に設けられる複数のノズル28への還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブ27についての複数の開度パターンが記憶部62に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブ27の各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路6におけるNOx濃度分布を必要に応じて常時又は定期的に計測しなくても、複数の第1バルブ27の各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0061】
また、上述の実施形態では、脱硝装置40よりも下流側の位置におけるNOx濃度に基づいて第2バルブ25の開度を決定するようにしたので、排ガス中の窒素酸化物の還元に必要十分な量(総量)の還元剤を、複数のノズル28に供給することができる。
【0062】
また、上述の実施形態では、煙突8の入口におけるNOx濃度を取得する。すなわち、排ガス流路6での流動を経て、より均質化された排ガスの窒素酸化物濃度を取得するようにしたので、より上流側の位置でNOx濃度を取得する場合に比べて正確なNOx濃度(平均濃度)を取得することができる。よって、このように取得したNOx濃度に基づいて、第2バルブ25の開度をより適切に調節することができる。
【0063】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0064】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置(40)の制御装置(50)は、
ボイラ(2)からの排ガスが導かれる排ガス流路(6)に還元剤を供給するための還元剤供給部(20)を含む脱硝装置を制御するための制御装置であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズル(28A~28F)と、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブ(27A~27F)と、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部(62)と、
前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを前記記憶部から取得するように構成された開度パターン取得部(54)と、
前記開度パターン取得部で取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するように構成された第1バルブ制御部(58)と、を備える。
【0065】
上記(1)の構成によれば、排ガス流路に設けられる複数のノズルへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブについての複数の開度パターンが記憶部に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路における窒素酸化物(NOx)濃度分布を計測しなくても、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0066】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記複数のノズルは、前記排ガス流路内にて排ガス流れ方向から視て異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成される。
【0067】
上記(2)の構成によれば、排ガス流路に設けられる複数のノズルへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブについての複数の開度パターンが記憶部に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路における窒素酸化物(NOx)濃度分布を計測しなくても、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0068】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記複数の開度パターンは、前記ボイラの運転負荷に応じて異なる複数の開度パターンを含む。
【0069】
ボイラの運転負荷に応じて、排ガス流路内における排ガスの流動特性(流速分布、組成分布、温度分布など)が変化することがある。この点、上記(3)の構成によれば、ボイラの運転負荷に応じて異なる複数の開度パターンの中から、現在の運転負荷に対応する開度パターンを取得するようにしたので、運転負荷に応じた適切な量の還元剤の供給を可能とする複数の第1バルブの開度を容易に決定することができる。
【0070】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記複数の開度パターンは、ボイラで燃焼させる燃料の種類に応じて異なる複数の開度パターンを含む。
【0071】
ボイラで燃焼させる燃料の種類に応じて、排ガス流路内における排ガスの流動特性が変化することがある。この点、上記(4)の構成によれば、燃料の種類に応じて異なる複数の開度パターンの中から、現在の使用燃料に対応する開度パターンを取得するようにしたので、使用燃料に応じた適切な量の還元剤の供給を可能とする複数の第1バルブの開度を容易に決定することができる。
【0072】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記複数の開度パターンは、前記排ガス流路に設けられる伝熱管をバイパスするように前記排ガス流路から分岐して設けられるバイパス流路(16)における排ガスの流量を調節するためのダンパ(18)の開度に応じて異なる複数の開度パターンを含む。
【0073】
排ガス流路から分岐する上述のバイパス流路に設けられるダンパの開度に応じて、排ガス流路内における排ガスの流動特性が変化することがある。この点、上記(5)の構成によれば、上述のダンパの開度に応じて異なる複数の開度パターンの中から、現在のダンパの開度に対応する開度パターンを取得するようにしたので、ダンパの開度に応じた適切な量の還元剤の供給を可能とする複数の第1バルブの開度を容易に決定することができる。
【0074】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記還元剤供給部は、
前記複数のノズルに供給される前記還元剤が流れる還元剤供給ライン(24)と、
前記還元剤供給ラインに設けられる第2バルブ(25)と、を含み、
前記制御装置は、
前記排ガス流路における前記脱硝装置よりも下流側の位置における窒素酸化物濃度に基づいて、前記第2バルブの開度を調節するように構成された第2バルブ制御部(60)を備える。
【0075】
上記(6)の構成によれば、脱硝装置よりも下流側の位置における窒素酸化物濃度に基づいて第2バルブの開度を決定するようにしたので、排ガス中の窒素酸化物の還元に必要十分な量(総量)の還元剤を、複数のノズルに供給することができる。
【0076】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第2バルブ制御部は、前記排ガス流路から排ガスを排出するための煙突(8)の入口又は内部における窒素酸化物濃度に基づいて、前記第2バルブの開度を調節するように構成される。
【0077】
上記(7)の構成によれば、煙突の入口又は内部における窒素酸化物濃度を取得する。すなわち、排ガス流路での流動を経て、より均質化された排ガスの窒素酸化物濃度を取得するようにしたので、より上流側の位置で窒素酸化物濃度を取得する場合に比べて正確な窒素酸化物濃度(平均濃度)を取得することができる。よって、このように取得した窒素酸化物濃度に基づいて、第2バルブの開度をより適切に調節することができる。
【0078】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係るボイラ設備(1)は、
燃料を燃焼するための燃焼炉を含むボイラ(2)と、
前記ボイラからの排ガスが導かれる排ガス流路に還元剤を供給するための還元剤供給部(20)を含む脱硝装置(40)と、
前記脱硝装置を制御するように構成された上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の制御装置(50)と、
を備える。
【0079】
上記(8)の構成によれば、排ガス流路に設けられる複数のノズルへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブについての複数の開度パターンが記憶部に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路におけるNOx濃度分布を計測しなくても、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0080】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置の制御方法は、
ボイラ(2)からの排ガスが導かれる排ガス流路(6)に還元剤を供給するための還元剤供給部(20)を含む脱硝装置(40)を制御するための制御方法であって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズル(28A~28F)と、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブ(27A~27F)と、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部(62)から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得するステップ(S14)と、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節するステップ(S16)と、
を備える。
【0081】
上記(9)の方法によれば、排ガス流路に設けられる複数のノズルへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブについての複数の開度パターンが記憶部に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路におけるNOx濃度分布を計測しなくても、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0082】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硝装置の制御プログラムは、
ボイラ(2)からの排ガスが導かれる排ガス流路(6)に還元剤を供給するための還元剤供給部(20)を含む脱硝装置(40)を制御するための制御プログラムであって、
前記還元剤供給部は、前記排ガス流路内にて空間上異なる複数の位置にそれぞれ前記還元剤を供給するように構成された複数のノズル(28A~28F)と、前記複数のノズルへの前記還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブ(27A~27F)と、を含み、
前記ボイラの複数の運転状態にそれぞれ対応する前記複数の第1バルブの複数の開度パターンが記憶される記憶部(62)から、前記複数の開度パターンのうち、現在の前記ボイラの運転状態に対応する開度パターンを取得する手順と、
取得された前記開度パターンに基づいて、前記複数の第1バルブの各々の開度を調節する手順と、
をコンピュータに実行させる。
【0083】
上記(10)の構成によれば、排ガス流路に設けられる複数のノズルへの還元剤の供給量をそれぞれ調節するための複数の第1バルブについての複数の開度パターンが記憶部に予め記憶されており、該複数の開度パターンのうち、現在の運転状態に対応する開度パターンが取得される。これにより、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。すなわち、排ガス流路におけるNOx濃度分布を計測しなくても、複数の第1バルブの各々の開度を適切に決定することができる。よって、簡素な構成で、還元剤の供給量を適切に調節することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0085】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0086】
1 ボイラ設備
2 ボイラ
3 燃焼炉
4 煙道
6 排ガス流路
8 煙突
10 空気予熱器
12 伝熱管
14 伝熱管
16 バイパス流路
18 ダンパ
20 還元剤供給部
22 還元剤貯留部
24 還元剤供給ライン
25 第2バルブ
26,26A~26F 分岐ライン
27,27A~27F 第1バルブ
28,28A~28F ノズル
30 触媒部
40 脱硝装置
50 制御装置
52 NOx濃度取得部
54 運転状態取得部
56 開度パターン取得部
58 第1バルブ制御部
60 第2バルブ制御部
62 記憶部
64 NOx濃度計測部
図1
図2
図3
図4
図5