(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142970
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】作物栽培施設内の作物に振動を与える方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/22 20110101AFI20220926BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220926BHJP
A01H 6/00 20180101ALN20220926BHJP
A01H 6/34 20180101ALN20220926BHJP
A01H 6/74 20180101ALN20220926BHJP
A01H 6/82 20180101ALN20220926BHJP
【FI】
A01M29/22
A01G7/00 604C
A01H6/00
A01H6/34
A01H6/74
A01H6/82
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043268
(22)【出願日】2021-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、イノベーション創出強化研究推進事業「害虫防除と受粉促進のダブル効果!スマート農業に貢献する振動技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000222048
【氏名又は名称】東北特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇裕
【テーマコード(参考)】
2B030
2B121
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD20
2B030CB02
2B121AA11
2B121DA49
2B121DA62
2B121EA26
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】作物栽培施設内において栽培される作物に、害虫防除や受粉に資する振動を、効率的に与える方法を確立し、提供すること。
【解決手段】作物栽培施設内の作物を振動させる方法であって、
該作物栽培施設は、
該施設内に延伸する線状部材、
該線状部材の2ヶ所又は3ヶ所以上の部位において線状部材と接する2つ又は3つ以上の植物支持部材、ならびに
前記植物支持部材に支持された2つ又は3つ以上の作物
を備え、
以下の工程を含む、方法:
(1)線状部材が前記延伸された方向と略同じ方向に振動させる縦波の振動を、前記線状部材に与えること、
(2)前記線状部材に与えられた振動を線状部材全体に伝播させることにより前記2つ又は3つ以上の植物支持部材を振動させ、該振動により、各植物支持部材に結合された前記2つ又は3つ以上の作物を振動させること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物栽培施設内の作物を振動させる方法であって、
該作物栽培施設は、
該施設内に延伸する線状部材、
該線状部材の2ヶ所又は3ヶ所以上の部位において線状部材と接する2つ又は3つ以上の植物支持部材、ならびに
前記植物支持部材に支持された2つ又は3つ以上の作物
を備え、
以下の工程を含む、方法:
(1)線状部材が前記延伸された方向と略同じ方向に振動させる縦波の振動を、前記線状部材に与えること、
(2)前記線状部材に与えられた振動を線状部材全体に伝播させることにより前記2つ又は3つ以上の植物支持部材を振動させ、該振動により、各植物支持部材に結合された前記2つ又は3つ以上の作物を振動させること。
【請求項2】
線状部材の長さが5m以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
線状部材が、
作物栽培施設の枠部を構成する枠部材の一つであり、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤであるか、又は
前記枠部とは異なる部位に設置された、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
枠部とは異なる鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤが、
上方から懸下されているか、又は
2つ以上の植物支持部材に支持されている、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
植物支持部材が、
線状部材から懸下された針金、金属棒もしくはひもであるか、又は
地面に設置された支柱又は誘引治具である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
作物に与えられる振動の周波数の範囲が30~3000Hzであり、該振動の加速度の範囲が1m/s2以上である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
振動として加振機により発生された振動が用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
植物支持部材がワイヤー、ひも、支柱又は誘引治具である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
加振機が1つの線状部材に1つ設置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加振機が磁歪材料、ボイスコイル、超磁歪素子、又は圧電素子である請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
振動により作物の受粉が促進されるか、又は害虫の防除がなされる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
作物がトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、パプリカ又はイチゴである請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
作物栽培施設がビニルハウス又はガラスハウスである、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物栽培施設内の作物に振動を与える方法において、振動をより効率的に与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫において、振動は、忌避行動を引き起こし、あるいは誘引、交尾、摂食、産卵等の行動に対する阻害を引き起こす、重要かつ普遍的な信号であることがわかっている。したがって、振動信号を人工的に制御することで、様々な害虫の行動を制御することが可能となり得る(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献4に示されるとおり、作物栽培施設内の作物を振動させることにより、作物の受粉を促すことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5867813号公報
【特許文献2】特開2001-252002号公報
【特許文献3】特開2018-093831号公報
【特許文献4】特開2011-244750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり振動は、作物栽培施設内において栽培される作物の害虫防除や受粉に有用である。しかしながら、作物栽培施設内において栽培される作物に振動を効率的に与える方法についての知見はない。
本発明は、作物栽培施設内において栽培される作物に、害虫防除や受粉に資する振動を、効率的に与える方法を確立し、提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、振動の与え方を変更することによって作物に適用される振動の利用効率が変化することを見出した。かかる知見をもとに、本発明者らは、さらに鋭意研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]
作物栽培施設内の作物を振動させる方法であって、
該作物栽培施設は、
該施設内に延伸する線状部材、
該線状部材の2ヶ所又は3ヶ所以上の部位において線状部材と接する2つ又は3つ以上の植物支持部材、ならびに
前記植物支持部材に支持された2つ又は3つ以上の作物
を備え、
以下の工程を含む、方法:
(1)線状部材が前記延伸された方向と略同じ方向に振動させる縦波の振動を、前記線状部材に与えること、
(2)前記線状部材に与えられた振動を線状部材全体に伝播させることにより前記2つ又は3つ以上の植物支持部材を振動させ、該振動により、各植物支持部材に結合された前記2つ又は3つ以上の作物を振動させること。
[2]
線状部材の長さが5m以上である、[1]に記載の方法。
[3]
線状部材が、
作物栽培施設の枠部を構成する枠部材の一つであり、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤであるか、又は
前記枠部とは異なる部位に設置された、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
枠部とは異なる鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤが、
上方から懸下されているか、又は
2つ以上の植物支持部材に支持されている、
[3]に記載の方法。
[5]
植物支持部材が、
線状部材から懸下された針金、金属棒もしくはひもであるか、又は
地面に設置された支柱又は誘引治具である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
作物に与えられる振動の周波数の範囲が30~3000Hzであり、該振動の加速度の範囲が1m/s2以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
振動として加振機により発生された振動が用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
植物支持部材がワイヤー、ひも、支柱又は誘引治具である、[7]に記載の方法。
[9]
加振機が1つの線状部材に1つ設置される、[8]に記載の方法。
[10]
加振機が磁歪材料、ボイスコイル、超磁歪素子、又は圧電素子である[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
振動により作物の受粉が促進されるか、又は害虫の防除がなされる、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
作物がトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、パプリカ又はイチゴである[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
作物栽培施設がビニルハウス又はガラスハウスである、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば野菜や園芸作物といった作物を生育させている施設において、作物栽培施設を構成する線状部材に縦波(
図1)による振動を与え、もって作物を振動させることにより、振動により行動が制御される害虫をより効率的に防除したり作物の受粉を促進したりすることができる。その結果本発明によれば、作物の収量を増大させ、美観に優れた高品質な作物を供給することができる。
振動発生装置(加振機)として、磁歪クラッド素子を包含する磁歪素子(磁化によって大きな外形変化を生ずる磁性材料を用いた振動子で、希土類金属-鉄系合金やコバルト-鉄系合金などがある。このまわりに巻線コイル161を設置し、交流電流を流すことで振動を発生できる。)を用いることにより、広範囲から選択した周波数にて、大きな加振力を発生させることが可能になり、一層高い効果が奏される。
【0008】
理論に拘泥するものではないが、本発明の方法により害虫をより効率的に防除したり作物の受粉を促進したりすることができるのは、振動として縦波による振動を与えることにより、作物の重量による振動の減衰を小さくできたことによると考えられる。すなわち、例えば特許文献4に示されるように従来の振動の与え方の場合、振動が横波により与えられ振動の方向が略鉛直方向であったため、とくに生育が進んだ作物においては該作物の重量の影響により振動が減衰されやすかったのに対し、本発明の方法においては振動の方向が略水平方向であるため、上記のような作物の重量による影響を振動が受けづらくなったことが、上記のような効果が奏される理由の一つであると推測される(
図1)。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の振動と従来技術における振動の相違を模式的に示す図である。白抜きの矢印は与えられた振動の方向(向き)を表し、黒塗りの矢印は振動が伝播される方向を表している。
【
図2】本発明の方法が適用される作物栽培施設の概要を、模式的に示す斜視図である。縦波の振動が、各枠部材とは異なる線状部材に付与され伝播され、植物支持部材に伝達され各作物を振動させる。
【
図3】本発明の方法の例を示す図である。左の図((a))は本発明の方法を実施するための、加振機が設置された線状部材、植物支持部材及び植物体の側面図であり、右の図((b))は加振機が設置された線状部材のみについての平面図である。白抜きの矢印は与えられた振動の方向(向き)を表すために示したものである。線状部材については、中間部位を割愛して示した。右の図((b))においては、懸下部材の記載を省略した。
【
図4】線状部材を設置する構成及び用いられる部材の例を示す側面図である。本態様における線状部材は枠部材とは異なる線状部材である。
【
図5】線状部材を設置する構成の例を示す側面図である。上の図は、枠部材(111)とは異なる線状部材(112)を枠部材から懸下し、該枠部材とは異なる線状部材に加振機(160)を設置するとともに同部材に植物支持部材(130)の一端を結合して懸下し、他端を作物の植物体(140)に接触させて、加振機が発生した振動を該作物の植物体に伝達する態様を示す。下の図は、加振機が枠部材又はその近傍に設置され、植物支持部材の一端を枠部材に懸垂し、他端を作物の植物体に接触させて、加振機が発生した振動を該作物の植物体に伝達することを含む態様を示す。線状部材については、中間部位を割愛して示した。
【
図6】実施例1の試験における比較例(従来技術)における加振機の設置の状態を示す側面図である。白抜きの矢印は与えられた振動の方向(向き)を表すために示したものである。線状部材については、中間部位を割愛して示した。
【
図7】実施例1の試験(室内試験)の結果を示すグラフである。
【
図8】実施例2の試験の結果を示すグラフである。2つの折れ線のうち、上の折れ線は金属パイプ(鋼管)上の加速度を示し、下の折れ線は金属パイプに接触した植物体(トマト)の茎の先端部における加速度を示す。
【
図9】実施例3の試験の結果を示すグラフである。点線は、10m/s
2の加速度を示す。2つの折れ線のうち、上の折れ線は加振装置として用いた加振機から2.5mの地点における加速度の経時的変化を示し、下の折れ線は加振装置として用いた加振機から7.5mの地点における加速度の経時的変化を示す。〇は横波方式(従来技術:比較例)についての、1畝当たりの果実重量が約30kgに達した時点における加速度(2m/s
2未満)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(定義)
本明細書において「振動」とは、空気以外の基質を媒体として該媒体内を伝播し、他の部材等に伝達されるものを意味する。したがって、本発明における「振動」には、空気のような気体を媒体とする、聴覚への刺激である音自体は包含されないが、音を生ぜしめる原因となる媒体における振動は包含される。
本明細書において「縦波」の振動とは、当該振動が媒質である線状部材に与えられてこれらの部材が振動する際に振動する方向が、振動の波の進む向きと同じである振動を意味する(
図1)。
【0011】
本発明は上記のとおり、以下の発明に関する:
作物栽培施設内の作物を振動させる方法であって、
該作物栽培施設は、
該施設内に延伸する線状部材、
該線状部材の2ヶ所又は3ヶ所以上の部位において線状部材と接する2つ又は3つ以上の植物支持部材、ならびに
前記植物支持部材に支持された2つ又は3つ以上の作物
を備え、
以下の工程を含む、方法:
(1)線状部材が前記延伸された方向と略同じ方向に振動させる縦波の振動を、前記線状部材に与えること、
(2)前記線状部材に与えられた振動を線状部材全体に伝播させることにより前記2つ又は3つ以上の植物支持部材を振動させ、該振動により、各植物支持部材に結合された前記2つ又は3つ以上の作物を振動させること。
【0012】
本発明は、上記の構成により、害虫防除及び/又は作物の受粉をより効率的に行うことを可能とするのである。
本発明において、「作物栽培施設」には、ビニルハウス、ガラスハウス、及び植物工場といった、作物を栽培するためのあらゆる施設が包含され、その規模や種類は限定されない。例えば、露地物栽培施設(設備)である、簡易的にパイプなどでアーチを作り雨除けしている程度の設備も、「作物栽培施設」に包含される。
以下において本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の方法においては、害虫防除及び/又は作物の受粉を行うために、害虫の生息媒体及び/又は受粉の対象であるトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、パプリカ及びイチゴなどの、誘引(作物の地上部を特定の方向に導き安定させ、生育を補助すること)及び/又は支持を必要とする野菜・果物といった作物に振動を与える。作物に振動を与える方法は、振動が付与される起点としての線状部材110に縦波の振動を与え、該振動を伝達し作物に振動を与える方法であれば限定されないところ、例えば以下のようにして与えることができる(
図3):
1.線状部材110が延伸された方向と略直交し、かつ水平面と略平行な方向に振動方向を有する、縦波の振動を、加振機160から、上記害虫が生息しているか又は生息が予測される作物栽培施設100、又は受粉を行う作物が栽培されている作物栽培施設100、を構成する枠部材111又は畝120の上方に該畝120に並行して設置された線状部材110に与え、
2.該振動を、線状部材110(枠部材とは異なる線状部材112)において伝播させ、線状部材110から直接、ワイヤー、支柱、もしくはひも(テープを包含する)等の部材(植物支持部材130)を2つ又は3つ以上の作物(植物体140)の上部に結合すること、もしくは隣接する作物140を相互に接続する棒状(支柱)又は帯状の部材(振動伝達部材として機能する)を略水平方向に設置すること、により、上記植物支持部材130を振動させることにより伝達し、
3.上記2.における植物支持部材130に伝達された振動を作物に伝達させて、所望の振動を作物(植物体140)に与える。
本発明の方法は、イチゴにおいて用いられるベリーウィング(商品名)とともに用いられるロープやネットを線状部材110に固定し、ロープやネットを介して、作物(イチゴ)に振動を伝達してもよい。ベリーウィング(商品名)及び前記ロープやネットは、イチゴの果実の重みにより垂下し、枝折れしやすくなった枝を支えて枝折れを防ぐための資材である。
【0014】
本発明の方法において用いられる部材について
本発明の方法においては、一般的な農業用資材を各部材として用いてよい。より具体的には以下のとおりである。
<線状部材>
本発明における線状部材110は、作物の植物体140を結びつけて固定するために用いられる、長細形状を有する部材である(
図2)。
線状部材110は、該線状部材110内における振動の伝播、及び他の部材や植物体140への振動の伝達が可能な、枠部材111であってよい。本発明における枠部材111とは、作物栽培施設100を構成する枠組みのあらゆる部分を意味し、側壁を構成するための部分、天井部を構成するための部分、及び梁を包含する部材であってよい(
図2)。
枠部材111に用いられる部材の材質は、振動を該部材において伝播し、他の部材に伝達するものであれば限定されない、枠部材111が金属性のパイプ(金属パイプ、鋼管)、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤである本発明の方法は、好ましい。
【0015】
線状部材110は、枠部材111とは別途に設けられた、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤといった振動の伝播・伝達が可能な、枠部材111とは異なる線状部材112(振動伝達部材として機能する)であってよい(
図2)。
当該枠部材111とは異なる線状部材112を設置する方法は限定されないところ、線状部材112が、
上方から懸下されているか、又は
2つ以上の植物支持部材130に支持されている、
本発明の方法は好ましい。
【0016】
枠部材111とは異なる部材が上方から懸下されている場合、懸下の方法や懸下に用いられる部材の材質や形状は限定されない。
懸下は、枠部材111等の上方に位置する部材から垂下されたひも(懸下部材170)に、枠部材111とは異なる部材を直接結合させて行ってよい。
懸下はまた、枠部材111等の上方に位置する部材から垂下されたひも(懸下部材170)に枠部材111とは異なる線状部材112を載置できる載置部材180(S字フック等)を前記ひも(懸下部材170)に結合し、枠部材111とは異なる線状部材112を載置して行ってもよい(
図4)。ひも(懸下部材170)の素材は限定されず、麻やゴムが例示される。ひも(懸下部材170)の素材として、枠部材111から伝達される振動を所望の部材以外の部位又は部材に伝わらせにくい部材は好ましい。
【0017】
本発明の方法において、線状部材110の長さや作物(植物体140)の列当たりの本数は限定されず、作物栽培施設100の大きさや栽培されている作物の植物体140の本数に応じて設定してよい。
本発明の方法が適用される作物栽培施設100の種類は限定されず、ガラス温室やビニルハウスが例示される。
【0018】
本発明の方法が適用される作物栽培施設100の大きさも限定されないところ、本発明の方法は、比較的大きい作物栽培施設100に適用し得る効果を奏する。
本発明の方法のうち、線状部材110の長さが5m以上である方法は好ましく、7.5m以上であるものはより好ましく、10m以上であるものは最も好ましい。
本発明の方法において、作物栽培施設100内のすべての作物の植物体140を振動させることは好ましいが、不可欠ではない。
【0019】
<植物支持部材>
本発明における植物支持部材130は、伸長した植物(作物)の植物体140の茎、葉、花及び/又は果実といった部位に接触又は結合されて植物体140を支持し、該植物体140の自立を補助する部材である(
図3)。本発明における植物支持部材130は、線状部材110に伝達された振動により同部材自体が揺動されて振動し、直接又は間接的に該振動を作物の植物体140に伝達する、さらなる振動伝達部材としても機能する。
【0020】
植物支持部材130は、線状部材110に加えられ、線状部材110に伝達された振動を植物体140に伝達する物であれば、その形状や材質は限定されない。
植物支持部材130が、線状部材110から懸架された針金(ワイヤー)、金属棒もしくはひもであるか、又は
地面150に設置された支柱又は誘引治具である本発明の方法は好ましい。
【0021】
本発明における植物支持部材130として針金、金属棒又ははひもが用いられる場合、これらの長さは限定されず、例えば約10cm~約250cmであってよく、作物の植物体140の高さや植え付けの範囲に応じて改変してよい。
ひもの材質は限定されず、プラスチック、麻が例示される。
【0022】
植物支持部材130として、植物体140を支持する支柱が用いられる場合、該支柱は線状部材110に接し得るようにするか、又は複数の支柱をひも等により相互に結合し、該ひもに線状部材110からの振動を伝達してよい。
【0023】
本発明における誘引治具とは作物の植物体140の地上部を特定の方向に導き安定させ、生育を補助するための器具を意味する。誘引治具として金属性のものは好ましく、かかる好ましい誘引治具としてクリッパーやたなたな君(商標)、及びローラーフックが例示される。
【0024】
なお、一般的な上記植物支持部材130に加重して、振動伝達部材を別途設けられた部材も、伸長した植物体140の茎、葉、花及び/又は果実といった部位に接触又は結合されて植物体140を支持し、該植物体140の自立を補助する部材であれば本発明における植物支持部材130に包含される。
【0025】
<振動の発生及び加振機>
本発明の方法において、振動を発生させる方法や装置は限定されず、振動の所望の周波数の範囲及び加速度の範囲の振動を厳密にコントロールできる加振機160やアクチュエータ等を用いてよい。本発明の方法において、加振機160として磁歪素子(磁歪材料)を用いることは好ましい。
【0026】
加振機160が用いられる場合、加振機160は線状部材110に接触して設置されてよく、又は、線状部材110の近傍に加振機160を設置するための部材を介して設置されていてもよい。すなわち、本発明の方法において、加振機160は、線状部材110に与えられた振動を伝達可能な態様で設けられた、加振機160を設置するための資材のような他の部材を経由して間接的に、上記いずれかの植物支持部材130(振動伝達部材として機能する)に設置してよい。
【0027】
加振機160は線状部材110に実質的に直接、又は他の資材を用いて線状部材110に設置してよい。
枠部材111とは異なる線状部材112を枠部材111から懸下し、該枠部材111とは異なる線状部材112に加振機160を設置するとともに同部材にワイヤー、ひも(懸下部材170)、支柱又は誘引治具(植物支持部材130)の一端を結合して懸下し、他端を作物の植物体140に接触させて、加振機160が発生した振動を該作物の植物体140に伝達することを含む本発明の方法は好ましい(
図5上)。
かかる態様において、加振機160を枠部材111のみに、又は枠部材111とは異なる線状部材に112設置された前記加振機160に加重して枠部材111に、設置してよい。
【0028】
加振機160が、枠部材111(ハウスフレーム190)又はその近傍に設置され、植物支持部材130であるワイヤー、ひも(懸下部材170)、支柱又は誘引治具(植物支持部材130)の一端を枠部材111に懸垂し、他端を作物の植物体140に接触させて、加振機160が発生した振動を該作物の植物体140に伝達することを含む本発明の方法も好ましい(
図5下)。
【0029】
設置される加振機160の台数は限定されず、作物栽培施設100の1棟当たり1台又は2台以上であってよい。外枠部又は線状部材110の30m以下の長さあたり1台の加振機160を設置することは好ましい。
また、1つの線状部材110に1つの加振機160を設置することは、設置作業の簡便さ及びコストの面から好ましい。
設置される加振機160の台数は作物の種類や生育ステージ、作物栽培施設100の大きさ、及び防除対象害虫の生息媒体の数に応じて調整してよい。例えば、(1)作物(植物体140)に果実がなり植物体140全体が重くなっている、(2)作物栽培施設100が比較的大きい、あるいは(3)防除対象害虫の発生が比較的多い、といった事象が生じている場合には、(1)~(3)の事象が生じる前と比較して、より多い台数の加振機160を用いることは好ましい。
【0030】
振動を発生させる場所、すなわち加振機160を設置する場所は、線状部材110の1つ又は2つの端部付近であってよいし、線状部材110の中央付近であってもよいし、あるいは1つ又は2つの端部付近及び中央部付近を含むその他の端部以外の箇所であってもよい。加振機160を設置する場所は、作物栽培施設100の大きさや加振機160の振動発生出力等を勘案して決定してよい。
加振機160が発生する振動の強度は、加振機160に与える電圧により調整してよい。かかる電圧として、10V~50Vが例示される。
【0031】
加振機160に与えられた振動を伝達するための部材同士の接続を、振動の減衰が小さくなるように行うことは好ましい。振動の減衰が小さくなるように部材同士の接続を行うために、パイプつなぎ治具(ストレートジョイント)を用いることは好ましい。
【0032】
本発明の方法における加振機160の種類は限定されないところ、磁歪材料(磁歪クラッド鋼162)、ボイスコイル161、偏心モーター、超磁歪素子、又は圧電素子が例示される。
磁歪素子を用いる加振機160は、従来のボイスコイル161や圧電素子による装置よりも、耐久性、耐水性、耐候性において優れているばかりでなく、本発明においては、上記各害虫の防除に用い得る特定の振動を発生させるための制御装置と電子回路により、家庭用電源やソーラーパネルを用いて、かかる振動を発生させる上記加振機160を用いることができる。また、磁歪素子を用いることにより、加振対象資材や防除対象作物の植物体140に十分な加振力を与えることができるばかりでなく、より広い周波数制御範囲により、周波数の制御をより厳密に行うことができる点において、現在多く用いられているボイスコイル式や偏心モーター式の電磁加振機160に対する優位性を有する。また、圧電素子方式は駆動するためには高電圧が必要なのに対し、磁歪材料は低電圧で駆動可能であるといった点において、磁歪材料は圧電素子に対しても優位性を有する。
磁歪材料とは磁化により外形変化を生ずる磁性材料であり、これにより、防除と受粉に最適な周波数での大きな振動を発生させる。磁歪材料にコバルト-鉄系合金を使用することで、加工しやすく、かつ製造コストを抑えることになる。更に望ましくは、国際公開番号WO2018/230154A1の発明である磁歪材料と軟磁性材料或いは異符号の磁歪材料(例えば、コバルト-鉄系合金に対しニッケル系合金)とを接合して磁歪効果を増幅したクラッド構造の磁歪材料を磁歪素子に用いることにより、効率よく高トルクの加振を行うことができる。家庭用電源を用いて、特定の振動を発生させるための制御装置と電子回路を有するものは好ましい。
本発明の方法においては加振機160として希土類金属-鉄系の超磁歪素子を用いることもできる。
【0033】
<本発明の方法において用いられる振動について>
本発明の方法において用いられる振動は、線状部材110に与えられてこれらの部材が振動する際に振動する方向が、振動の波の進む向きと同じである、縦波の振動である。
本発明の方法においては、防除対象害虫の特定の行動を誘発又は抑制する、作物(植物体140)における振動の周波数の範囲及び/又は加速度の範囲を決定する工程、あるいは対象作物の受粉を促進をする、作物(植物体140)における振動の周波数の範囲及び/又は加速度の範囲を決定する工程含むことは、好ましい。害虫防除又は受粉に好適な振動の周波数の範囲及及び/又は加速度の範囲を決定することにより、害虫防除又は受粉をより効率的に行うことが可能になるからである。
【0034】
振動の周波数の範囲及び加速度の範囲を決定する工程において、与える振動の持続時間はとくに限定されず、適宜設定してよい。振動を与える回数も、とくに限定されず適宜設定してよい。振動を与える回数は、2回以上が好ましい。
【0035】
振動を2回以上与える場合、個々の振動の持続時間及び与える間隔はとくに限定されず適宜設定してよい。また、前記持続時間及び与える間隔は、各振動ごとに同一でも異なってもよい。
与える振動の波形は限定されず、サイン波ならびに矩形波、三角波、ノコギリ波等の非正弦波のいずれでもよい。これらの波形は、受粉のための振動においても同様であってよい。
【0036】
本発明の方法において用いられる振動の周波数の範囲はとくに限定されず、防除対象害虫の種類、作物の種類や生育ステージ、振動を与える目的(害虫防除及び/又は受粉)に応じて設定してよい。周波数の範囲として約30~約3000Hzが例示され、かかる範囲の周波数の振動を線状部材110に与えることにより、害虫防除及び/又は作物の受粉を行ってよい。また、スイープやノイズと定義される、これらの周波数帯を全て又は一部含むものも有効であり好ましい。
さらに、2種類以上の周波数を組み合わせると、順応回避に有効であるため好ましい。
【0037】
なお、測定機器の制限から加速度として加速度の測定が困難である場合には、振動中の媒体の振動の速度及び周波数から換算した加速度の値を求めることができる。すなわち、速度(v)と加速度(a)及び周波数(f)との間には、a=(2πf)・vの関係がある。したがって、例えば300Hzの周波数における0.00053m/sの速度を加速度に換算すると、1.0m/s2となる。
【0038】
本発明において、振動を与える間隔が1s以上かつ60s以下である方法は好ましく、5s~10sであるものはより好ましい。
振動が1秒間与えられた後9秒間振動を停止するパターンが6回以上反復され、10分以上の間隔を置く工程を含む本発明の方法はとくに好ましい。
【0039】
本発明の方法により、受粉を促進するための作物(植物体140)に与えられる振動の周波数及び加速度の範囲として、30~3000Hz、及び該振動の加速度の範囲は1m/s2以上が、それぞれ挙げられる。これらの周波数の範囲及び加速度の範囲の少なくとも一方を充足する本発明の方法は好ましく、両方を充足する本発明の方法は一層好ましい。
一般に、害虫防除又は受粉のための加速度として、対象作物の植物体140(例えば茎の先端付近)において1m/s2以上であることは好ましい。1m/s2以上の加速度を植物体140に付与するために必要な、線状部材における加速度の目安として、約10m/s2以上の加速度を線状部材110全体に与える本発明の方法は好ましい。本発明の方法における受粉のための加速度については、線状部材において約10m/s2を大きく上回る加速度であってよい。
【0040】
<本発明の方法の適用範囲について>
本発明の方法が適用される範囲のうち、作物は限定されないところ、本発明の方法は、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、パプリカ又はイチゴの作物栽培施設100に好適に適用される。本発明の方法が適用される作物の栽培形態は限定されず、土耕でも水耕であってもよい。
作物の植物体140が4つ以上存在し、該4つ以上の植物体140の1つを他の植物体140と樹脂又は金属で連結して振動を伝達することを含む本発明の方法は好ましい。
また、本発明の方法においては、線状部材110に植物を接触させ、線状部材110に付与した振動を直接植物に伝達させ、該植物を振動させてもよい。かかる態様は、線状部材110が植物支持部材130を兼ねている態様である。
本発明の方法が適用される防除対象害虫としては、振動による防除が可能であるものであれば限定されず、アブラムシ類、コナジラミ類、ゾウムシ類、及びハダニ類等が例示される。
本発明の方法を害虫防除を目的として適用する場合、適用時期としては作物の苗の定植後から収穫が終了するまでのあらゆる時期が対象である。本発明の方法を受粉の促進を目的として適用する場合には、適用時期としては開花期の前から収穫が終了するまでのあらゆる時期が対象である。
【0041】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし当該記載はあくまで例示を目的とするものであって、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
【0042】
●(実施例1)振動波の種類と伝播距離の検証
<材料と方法>
金属製パイプを、他の部材とは接しないように、金属製フレーム治具から懸下されたPE製の紐(商品名ハイクレトワイン、直径3mm)を用いて室内において吊り下げた。前記金属製パイプとして、直径19mm、長さ5mで重量約2.5kgの市販品相当の農芸用鋼管を用いた。吊り下げは、1~1.5m間隔で前記紐を用いて行った。植物体や誘引治具は用いなかった。
信号発生装置(ファンクションジェネレータ)で100Hz、10Vp-pの交流信号の入力を、本発明の方法(縦波方式)又は従来技術の方法(横波方式)により行い、前記パイプ上の振動加速度を計測した。振動加速度の計測は、圧電式加速度ピックアップ用いて70cmの間隔で行った。
縦波方式は、磁歪振動素子(磁歪クラッド鋼)を地面に対して平行に固定して振動を与える方式であり(例えば
図3を参照)、従来方式は
図6に示すように磁歪振動素子を地面に対して垂直に固定して振動を与える方式である。
<結果>
縦波方式の加速度が高く45m/s
2以上であったのに対し、従来方式では、加速度が縦波に比べて半分程度で最大でも37m/s
2に留まった(
図7)。
本発明の方法においては、従来の方法より振動を効率よく伝播することができることが明らかになった。
【0043】
●(実施例2)有効な加速度の特定
ビニルハウス内で10mの長さの金属製パイプ(直径19mm)に加振装置を縦波方式(本発明の方法における方式)で固定して、約50cmの間隔で定植された、草丈250cmに成長したトマト20株について、前記金属製パイプ(鋼管)上及び各トマトの茎先端部における振動の計測を行った。トマトは、誘引治具を介して植物体(果実を含む)がもたれかかり、支持された状態にあった。
前記金属製パイプは、ビニルハウス本体のフレームから懸下したPE製紐(品名ハイクレトワイン、直径3mm)で吊り下げて他の部材とは接しないように設置した。100Hz、40Vp-pの信号入力を前記加振装置により与えた。
<結果>
誘引治具を介してトマトの植物体がもたれかかり、支持された状態でも、10mの長さを有する金属製パイプ(鋼管)全体にわたり、振動が減衰することなく伝わっていることが確認された(
図8)。
また、トマトの茎において計測された加速度は2~4.5m/s
2であり、害虫防除及び受粉に有効である1m/s
2を超えており、必要な振動が植物体に伝わっていることが確認された。
本発明の方法においては、初期の振動を少なくとも10mの距離まで、十分な強度(加速度)を維持したまま伝達できることが明らかになった。
【0044】
●(実施例3)植物体への有効な振動が持続する機関の検証
<材料と方法>
ビニルハウス内で加振装置を10mの長さの金属製パイプ(直径19mm)に縦波方式(本発明の方法における方式)又は横波方式(従来技術:比較例)で固定して、20株の大玉トマト株を約50cm間隔で定植し、3カ月間栽培した時の加速度を約2週間の間隔で調査し、加速度の推移を調べた。かかる推移から、有効な振動の加速度の指標として、害虫防除及び受粉に有効である1m/s
2以上を株の頂部に与えるために必要な金属製パイプ上の加速度である10m/s
2を上回る期間を特定した。比較例(横波方式)については、1畝当たりの果実重量が約30kgに達した時点における振動の加速度を測定した。
当該金属製パイプは、ビニルハウス本体のフレームから懸下したPE製紐(品名ハイクレトワイン、直径3mm)で吊り下げて他の部材とは接しないように設置した。草丈の最大値は約250cmであった。
100Hz、40Vp-pの信号入力として、加振装置から2.5m、及び7.5m地点のパイプ上の加速度を計測した。
<結果>
本発明の方法(縦波方式を採用)においては、全調査期間にわたり、害虫防除及び受粉に有効である1m/s
2以上を株に与えるために必要なパイプ(金属製パイプ)上の加速度である10m/s
2(
図9において点線により示されている)を上回った。
これに対し横波方式(従来技術:比較例)においては、1畝当たりの果実重量が約30kgに達した時点においてパイプ上の加速度は2m/s
2を下回り(
図9における〇)、効果的に振動を与える期間は短かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、野菜や園芸作物といった作物を生育させている施設において、振動により行動が制御される害虫をより効率的に防除したり、作物の受粉を従来技術より効率的に促進したりすることができる。したがって、本発明は、施設栽培農業の発展に寄与するところ大である。
【符号の説明】
【0046】
100 作物栽培施設
110 線状部材
111 枠部材
112 枠部材とは異なる線状部材
120 畝
130 植物支持部材
140 作物(植物体)
150 地面
160 加振機
161 コイル
162 クラッド鋼
170 懸下部材(ひも)
180 載置部材
190 枠部材の一部(ハウスフレーム)
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物栽培施設内の作物を振動させる方法であって、 該作物栽培施設は、
該施設内の地面に略水平に延伸する線状部材、
該線状部材の2ヶ所又は3ヶ所以上の部位において線状部材と接する2つ又は3つ以上の植物支持部材、ならびに
前記植物支持部材に支持された2つ又は3つ以上の作物
を備え、
以下の工程を含む、方法:
(1)前記作物の重量による振動の減衰が小さい、線状部材を前記延伸された方向と略同じ方向に振動させる縦波の振動を、前記線状部材に与えること、
(2)前記線状部材に与えられた前記縦波の振動を、線状部材全体に、前記作物の重量による振動の減衰を小さくして伝播させることにより、前記2つ又は3つ以上の植物支持部材を前記線状部材が延伸された方向と略同じ方向に振動させ、該振動により、各植物支持部材に結合された前記2つ又は3つ以上の作物に前記線状部材が延伸された方向と略同じ方向の振動を与えること。
【請求項2】
線状部材の長さが5m以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
線状部材が、
作物栽培施設の枠部を構成する枠部材の一つであり、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤであるか、又は
前記枠部とは異なる部位に設置された、鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
枠部とは異なる鋼管、金属製ワイヤ、樹脂製棒、及び樹脂製ワイヤが、
上方から懸下されているか、又は
2つ以上の植物支持部材に支持されている、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
植物支持部材が、
線状部材から懸下された針金、金属棒もしくはひもであるか、又は
地面に設置された支柱又は誘引治具である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
作物に与えられる振動の周波数の範囲が30~3000Hzであり、該振動の加速度の範囲が1m/s2以上である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
振動として加振機により発生された振動が用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
植物支持部材がワイヤー、ひも、支柱又は誘引治具である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
加振機が1つの線状部材に1つ設置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加振機が磁歪材料、ボイスコイル、超磁歪素子、又は圧電素子である請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
振動により作物の受粉が促進されるか、又は害虫の防除がなされる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
作物がトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、パプリカ又はイチゴである請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
作物栽培施設がビニルハウス又はガラスハウスである、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
2つ又は3つ以上の作物に少なくとも1つに果実がなった後の時期に少なくとも用いられる請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
●(実施例3)植物体への有効な振動が持続する
期間の検証
<材料と方法>
ビニルハウス内で加振装置を10mの長さの金属製パイプ(直径19mm)に縦波方式(本発明の方法における方式)又は横波方式(従来技術:比較例)で固定して、20株の大玉トマト株を約50cm間隔で定植し、3カ月間栽培した時の加速度を約2週間の間隔で調査し、加速度の推移を調べた。かかる推移から、有効な振動の加速度の指標として、害虫防除及び受粉に有効である1m/s
2以上を株の頂部に与えるために必要な金属製パイプ上の加速度である10m/s
2を上回る期間を特定した。比較例(横波方式)については、1畝当たりの果実重量が約30kgに達した時点における振動の加速度を測定した。
当該金属製パイプは、ビニルハウス本体のフレームから懸下したPE製紐(品名ハイクレトワイン、直径3mm)で吊り下げて他の部材とは接しないように設置した。草丈の最大値は約250cmであった。
100Hz、40Vp-pの信号入力として、加振装置から2.5m、及び7.5m地点のパイプ上の加速度を計測した。
<結果>
本発明の方法(縦波方式を採用)においては、全調査期間にわたり、害虫防除及び受粉に有効である1m/s
2以上を株に与えるために必要なパイプ(金属製パイプ)上の加速度である10m/s
2(
図9において点線により示されている)を上回った。
これに対し横波方式(従来技術:比較例)においては、1畝当たりの果実重量が約30kgに達した時点においてパイプ上の加速度は2m/s
2を下回り(
図9における〇)、効果的に振動を与える期間は短かった。