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特開2022-143009アルミニウム電解コンデンサ用電極材及びその製造方法
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  • 特開-アルミニウム電解コンデンサ用電極材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143009
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ用電極材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/045 20060101AFI20220926BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20220926BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20220926BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20220926BHJP
   H01G 9/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01G9/045
H01G9/048 G
H01G9/052
H01G9/00 290D
H01G9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043319
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 敏文
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンデンサに要求される高い静電容量を示すことができ、且つ、等価直列抵抗(ESR)が抑制されたアルミニウム電解コンデンサ用電極材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末の焼結体を有するアルミニウム電解コンデンサ用電極材であって、基材は、アルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末の焼結体を有するアルミニウム電解コンデンサ用電極材であって、
前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む、
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
【請求項2】
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~400質量ppm含み、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金粉末である、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
【請求項3】
前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50が1.5μm以上15μm以下である、請求項1又は2に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
【請求項4】
前記基材は、Al純度99.99質量%以上のアルミニウム箔基材であり、厚みが10μm以上80μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
【請求項5】
前記基材の両面に前記焼結体が形成されており、前記焼結体の合計厚みは50μm以上2000μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
【請求項6】
(1)基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末を含有するペースト組成物の皮膜を形成する第1工程、及び
(2)前記皮膜を560℃以上660℃以下の温度で焼結する第2工程を含み、
前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む、
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極材の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50が1.5μm以上15μm以下である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程の後に、更に、陽極酸化処理工程を有し、前記陽極酸化処理工程における電圧が250V以上800V以下である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用電極材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサは、安価で高容量を得ることができるため、エネルギー分野で広く使われている。一般に、アルミニウム電解コンデンサ用電極材としてはアルミニウム箔が使用されている。
【0003】
アルミニウム箔は、エッチング処理を行い、エッチングピットを形成することにより、表面積を増大させることができる。そして、その表面に陽極酸化処理を施すことにより、酸化皮膜を形成し、これが誘電体として機能する。このため、アルミニウム箔をエッチング処理し、その表面に使用電圧に応じた種々の電圧で陽極酸化皮膜を形成することにより、用途に適合する各種の電解コンデンサ用アルミニウム陽極用電極箔を製造することができる。
【0004】
エッチング処理で形成されるエッチングピットは、陽極酸化処理の化成電圧に対応した形状に処理される。具体的には、中高圧用のコンデンサ用途には、厚い酸化皮膜を形成する必要がある。このため、そのような厚い酸化皮膜でエッチングピットが埋まらないように、中高圧陽極用アルミニウム箔では、主に直流エッチングを行うことによりエッチングピット形状をトンネルタイプとし、電圧に応じた太さに処理される。また、低圧用コンデンサ用途では、細かいエッチングピットが必要であり、主には交流エッチングによって海綿状のエッチングピットを形成させる。また、陰極用箔も同様にエッチングにより表面積を拡大させている。
【0005】
特許文献1には、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも1種の焼結体からなることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極材が提案されている。上記電極材は、従来のエッチングピットを形成したアルミニウム箔よりも大きな表面積を有しており、上記電極材を用いたコンデンサの静電容量を大きくすることができる。
【0006】
しかしながら、近年、アルミニウム電解コンデンサにはより大きい静電容量が求められており、アルミニウム電解コンデンサ用電極材にはより大きい表面積が要求されている。この要求に対し焼結層の厚みをより厚くすることで対応すると、焼結体を構成する粉末とアルミニウム箔等の基材との焼結、及び、粉末同士の焼結が進み過ぎ、粉末と粉末の間が狭くなり、また部分的に外部から孤立した空孔となる等により、十分な表面積が得られず、体積あたりの静電容量に優れたアルミニウム電解コンデンサ用電極材が得られないという問題がある。
【0007】
また、近年、アルミニウム電解コンデンサ用電極材には等価直列抵抗(ESR)が低いことが要求されている。アルミニウム電解コンデンサ用電極材のESRが高いと、製造されたコンデンサの充放電効率が低下し、高付加価値な製品が製造できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-98279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、コンデンサに要求される高い静電容量を示すことができ、且つ、等価直列抵抗(ESR)が抑制されたアルミニウム電解コンデンサ用電極材、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、焼結体を構成するアルミニウム合金粉末に含まれる元素、特に鉄(Fe)に着目し、その含有量を特定の範囲とすることで、焼結体を構成する粉末と基材との焼結、及び、粉末同士の焼結の焼結速度を制御することができ、アルミニウム電解コンデンサ用電極材の体積当たりの表面積を増大させることができ、アルミニウム電解コンデンサの静電容量を向上させることができることを見出した。また、上記構成とすることで、等価直列抵抗(ESR)を抑制することができることを見出した。ESRの抑制を図れることで、当該アルミニウム電解コンデンサ用電極材を用いて製造されたコンデンサの充放電効率が向上し、高付加価値な製品が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記のアルミニウム電解コンデンサ用電極材およびその製造方法に関する。
1.基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末の焼結体を有するアルミニウム電解コンデンサ用電極材であって、
前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む、
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
2.前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~400質量ppm含み、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金粉末である、項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
3.前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50が1.5μm以上15μm以下である、項1又は2に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
4.前記基材は、Al純度99.99質量%以上のアルミニウム箔基材であり、厚みが10μm以上80μm以下である、項1~3のいずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
5.前記基材の両面に前記焼結体が形成されており、前記焼結体の合計厚みは50μm以上2000μm以下である、項1~4のいずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電極材。
6.(1)基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末を含有するペースト組成物の皮膜を形成する第1工程、及び
(2)前記皮膜を560℃以上660℃以下の温度で焼結する第2工程を含み、
前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む、
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電極材の製造方法。
7.前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50が1.5μm以上15μm以下である、項6に記載の製造方法。
8.前記第2工程の後に、更に、陽極酸化処理工程を有し、前記陽極酸化処理工程における電圧が250V以上800V以下である、項6又は7に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電極材は、コンデンサに要求される高い静電容量を示すことができ、且つ、等価直列抵抗(ESR)が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】比較例1-2により製造した電極材を用いて裏面観察を行い、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した画像である。
図2】実施例1-1により製造した電極材を用いて裏面観察を行い、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した画像である。
図3】実施例1-5により製造した電極材を用いて裏面観察を行い、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.アルミニウム電解コンデンサ用電極材
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電極材は、基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末の焼結体を有するアルミニウム電解コンデンサ用電極材であって、前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含むアルミニウム電解コンデンサ用電極材である。
【0015】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電極材(以下、単に「電極材」とも示す。)は、基材がアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、アルミニウム合金粉末(以下、単に「粉末」とも示す。)がFeを2~499質量ppm含む合金の粉末であるので、焼結体を構成する粉末と基材との焼結、及び、粉末同士の焼結の焼結速度を制御することができ、アルミニウム電解コンデンサ用電極材の体積当たりの表面積を増大させることができるため、アルミニウム電解コンデンサの静電容量を向上させることができる。また、上記構成とすることで、等価直列抵抗(以下、単に「ESR」とも示す。)が抑制され、アルミニウム電解コンデンサ用電極材を用いて製造されたコンデンサの充放電効率が向上し、高付加価値な製品が製造できる。
【0016】
以下、本発明の電極材について詳細に説明する。
【0017】
(焼結体)
本発明の電極材は、基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末の焼結体を有する。
【0018】
焼結体は、基材の少なくとも片面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよい。電極材の静電容量がより一層向上する点で、両面に形成されていることが好ましい。
【0019】
焼結体は、上記粉末同士が空隙を維持しながら焼結して接合されることにより、三次元網目構造を有する多孔質焼結体であることが好ましい。当該構造を有することにより、焼結体の表面積が大きくなり、高い静電容量を示すアルミニウム電解コンデンサ(以下、単に「コンデンサ」とも示す。)を製造可能な電極材を得ることができる。
【0020】
アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む。アルミニウム合金粉末が上記範囲外であると、焼結体を構成する粉末と基材との焼結、及び、粉末同士の焼結の焼結速度を制御することができず、過剰なネッキングが生じ、焼結体の基材側の面から基材とは反対側の面まで連通する孔が減少して、焼結体内に孤立した孔が増加するため、焼結後の表面積を増大することができない。Feの含有量は、2ppm以上であれば少ない程好ましいが、5ppm以上であってもよいし、8ppm以上であってもよい。また、Feの含有量は、400質量ppm以下が好ましく、190質量ppm以下がより好ましい。また、Feの含有量は、2~400質量ppmが好ましい。Feの含有量が上記範囲内であると、過剰な焼結がより一層抑制され、コンデンサ電極とした際の静電容量がより一層増大し、且つ、ESRがより一層低減される。
【0021】
アルミニウム合金粉末は、Feを2~400質量ppm含み、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金粉末であることが好ましい。以下にアルミニウム含有量及び不可避不純物について説明する。
【0022】
アルミニウム合金粉末のアルミニウム含有量は、99.80質量%以上であることが好ましく、99.85質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。
【0023】
アルミニウム合金粉末は、不可避不純物として、珪素(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)等から選ばれる1種以上の元素を含んでもよい。アルミニウム合金粉末を形成するアルミニウム合金中のこれらの元素の含有量は、100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましい。アルミニウム合金粉末中の上記元素の含有量が上記範囲であることにより、アルミニウム電解コンデンサ用電極材の静電容量がより一層向上する。
【0024】
上記アルミニウム合金粉末は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50は、1.5μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。また、平均粒子径D50は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。平均粒子径が上記範囲であると、電極材の静電容量がより一層向上する。
【0026】
本明細書において、焼結体中のアルミニウム合金粉末の平均粒子径D50は、焼結体の断面を、走査型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。具体的には、上記粉末を焼結して焼結体を形成すると、焼結後の上記粉末は、一部が溶融又は粉末同士が繋がった状態となっているが、略円形状を有する部分は近似的に粒子とみなすことができる。そこで、上記断面の観察において、略円形状を有する粒子のそれぞれの最大径(長径)をその粒子の粒子径とし、任意の50個の粒子の粒子径を測定し、これらの算術平均を焼結後の前記粉末の平均粒子径D50とする。かかる方法により得られる粉末の粒子径は、焼結前の粒子径と比較し、殆ど変化しない。
【0027】
なお、上述の測定方法により測定される焼結体中の粉末の平均粒子径D50は、焼結前の粉末の平均粒子径D50から殆ど変化せず、略同一であるので、焼結前の粉末の平均粒子径D50の測定値を、焼結体中の粉末の平均粒子径D50とすることができる。本明細書において、上記焼結前の粉末の平均粒子径D50は、マイクロトラックMT3300EXII(Microtrac社製)を使用し、レーザー回折・散乱法湿式測定により粒度分布を体積基準で測定し、D50値を算出することにより測定することができる。
【0028】
焼結体の合計厚みは50μm以上2000μm以下が好ましい。焼結体の合計厚みが50μm以上であると、電極材の静電容量がより一層向上する。合計厚みが2000μmであると、焼結体の形成が容易となる。焼結体の合計厚みは、70μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましく、300μm以上が特に好ましい。また、焼結体の合計厚みは、900μm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましく、300μm以下が特に好ましい。なお、本明細書において焼結体の合計厚みとは、本発明の電極材が焼結体をアルミニウム箔基材の両面に有する場合は、それぞれの面に形成された焼結体の厚みの合計の厚みである。本発明の電極材が焼結体をアルミニウム箔基材の片面のみに有する場合は、片面の焼結体の厚みが合計厚みとなる。
【0029】
(基材)
本発明の電極材は、基材を有する。本発明において、基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材である。
【0030】
アルミニウム箔基材を形成するアルミニウム箔としては、純アルミニウムからなるアルミニウム箔を使用することが好ましい。
【0031】
純アルミニウムからなるアルミニウム箔のアルミニウム含有量は、99.80質量%以上であることが好ましく、99.85質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。
【0032】
アルミニウム合金箔基材を形成するアルミニウム合金箔に用いられるアルミニウム合金は、珪素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ニッケル(Ni)及びホウ素(B)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を必要範囲内において、アルミニウムに添加したアルミニウム合金であってもよいし、上記元素を不可避的不純物的に含むアルミニウム合金であってもよい。アルミニウム合金中のこれらの元素の含有量は、100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましい。アルミニウム合金中の上記元素の含有量が上記範囲であることにより、アルミニウム電解コンデンサ用電極材の静電容量がより一層向上する。
【0033】
基材の厚みは、電極材の強度がより一層向上する観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。また、アルミニウム箔基材の厚みは、コンデンサ用電極材とした際の体積あたりの容量がより一層向上する観点から、80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。
【0034】
(陽極酸化皮膜)
本発明の電極材は、上記焼結体の表面に、更に、陽極酸化皮膜を有していてもよい。焼結体の表面に陽極酸化皮膜を有することにより、当該陽極酸化皮膜が誘電体として機能することで、本発明の電極材をアルミニウム電解コンデンサ用電極材として有用に用いることができる。
【0035】
陽極酸化皮膜は、焼結体の表面を陽極酸化することにより作製することができる。上記陽極酸化皮膜は、誘電体皮膜としての機能を有する。
【0036】
陽極酸化皮膜の厚みは0.2μm以上1.1μm以下が好ましく、0.3μm以上1.05μm以下がより好ましい。
【0037】
陽極酸化皮膜の皮膜耐電圧は250V以上800V以下が好ましく、300V以上800V以下がより好ましい。陽極酸化皮膜の皮膜耐電圧は、日本電子機械工業会規格RC-2364Aに準拠した測定方法により測定することができる。
【0038】
2.アルミニウム電解コンデンサ用電極材の製造方法
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電極材の製造方法は、
(1)基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末を含有するペースト組成物の皮膜を形成する第1工程、及び
(2)前記皮膜を560℃以上660℃以下の温度で焼結する第2工程を含み、
前記基材はアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材であり、
前記アルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む、
アルミニウム電解コンデンサ用電極材の製造方法である。
以下、詳細に説明する。
【0039】
(第1工程)
第1工程は、(1)基材の少なくとも片面に、アルミニウム合金粉末を含有するペースト組成物の皮膜を形成する工程である。
【0040】
電極材を製造するための原料としてのアルミニウム合金粉末は、Feを2~499質量ppm含む。アルミニウム合金粉末が上記範囲外であると、焼結体を構成する粉末と基材との焼結、及び、粉末同士の焼結の焼結速度を制御することができず、過剰なネッキングが生じ、焼結体の基材側の面から基材とは反対側の面まで連通する孔が減少して、焼結体内に孤立した孔が増加するため、焼結後の表面積を増大することができない。Feの含有量は、2質量ppm以上であれば少ない程好ましいが、5質量ppm以上であってもよいし、8質量ppm以上であってもよい。また、Feの含有量は、400質量ppm以下が好ましく、190質量ppm以下がより好ましい。Feの含有量が上記範囲内であると、過剰な焼結がより一層抑制され、コンデンサ電極とした際の静電容量がより一層増大し、且つ、ESRがより一層低減される。
【0041】
以下にアルミニウム含有量及び不可避不純物について説明する。
【0042】
アルミニウム合金粉末のアルミニウム含有量は、99.80質量%以上であることが好ましく、99.85質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。
【0043】
アルミニウム合金粉末は、不可避不純物として、珪素(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)等から選ばれる1種以上の元素を含んでもよい。アルミニウム合金粉末を形成するアルミニウム合金中のこれらの元素の含有量は、100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましい。アルミニウム合金粉末中の上記元素の含有量が上記範囲であることにより、アルミニウム電解コンデンサ用電極材の静電容量がより一層向上する。
【0044】
上記アルミニウム合金粉末は、一種単独で用いてもよいし、組成や平均粒子径の異なる二種以上のアルミニウム合金粉末を混合して用いてもよい。
【0045】
上記粉末は、一種単独で用いてもよいし、例えばアルミニウム合金粉末と化合物粒子または樹脂粒子等を混合するなど、二種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50は、1.5μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。また、平均粒子径D50は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。平均粒子径が上記範囲であると、電極材の静電容量がより一層向上する。
【0047】
なお、アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50は、マイクロトラックMT3300EXII(Microtrac社製)を使用し、レーザー回折・散乱法湿式測定により粒度分布を体積基準で測定し、D50値を算出することにより測定することができる。
【0048】
アルミニウム合金粉末の形状は特に限定されず、球状、不定形状、鱗片状、繊維状等のいずれも好適に使用できるが、工業的生産には球状粒子からなる粉末が特に好ましい。
【0049】
アルミニウム合金粉末は、公知の方法によって製造されるものを使用することができる。上記方法としては、例えば、アトマイズ法、メルトスピニング法、回転円盤法、回転電極法、急冷凝固法等が挙げられるが、工業的生産にはアトマイズ法、特にガスアトマイズ法が好ましい。すなわち、あらかじめFeの含有量を調整したアルミニウム合金溶湯をアトマイズすることにより得られる粉末を用いることが好ましい。
【0050】
ペースト組成物は、樹脂バインダーを含有していてもよい。樹脂バインダーについては、公知のものを広く採用することができ、例えば、カルボキシ変性ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩酢ビ共重合樹脂、ビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、フッ化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の合成樹脂、並びに、ワックス、タール、にかわ、ウルシ、松脂、ミツロウ等の天然樹脂又はワックスが好適に使用できる。これらの樹脂バインダーは、分子量、樹脂の種類等により、加熱時に揮発するものと、熱分解によりその残渣がアルミニウム粉末とともに残存するものとがあり、所望の静電容量等の電気特性に応じて使い分けることができる。
【0051】
ペースト組成物中の樹脂バインダーの含有量は、ペースト組成物100質量%中に0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.75質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。ペースト組成物中の樹脂バインダー量が0.5質量%以上であることにより、基材と未焼結積層体との密着強度を向上できる。一方、樹脂バインダー量が10質量%以下であることにより、焼結工程及び脱脂工程において脱脂しやすく、樹脂バインダーが残留することによって発生する不具合を抑制できる。
【0052】
その他、必要に応じて適宜、ペースト組成物中には溶剤、焼結助剤、界面活性剤等が含まれていてもよい。これらはいずれも公知又は市販のものを使用することができる。これにより効率よく皮膜を形成することができる。
【0053】
溶剤としては、公知の溶剤を広く採用することがきる。例えば、水;トルエン、アルコール類、ケトン類、エステル類等の有機溶剤を使用することができる。
【0054】
焼結助剤としても、公知の焼結助剤を広く使用することができる。例えば、アルミニウムフッ化物、カリウムフッ化物等を使用することができる。
【0055】
界面活性剤としても、公知の界面活性剤を広く使用することができる。例えば、ベタイン系、スルホベタイン系、アルキルベタイン系等の界面活性剤を使用することができる。
【0056】
上記のペースト組成物を、基材の片面又は両面に付着させてペースト組成物の皮膜を形成するに際し、皮膜の合計の厚みは、50μm以上2000μm以下とすることが好ましい。また、皮膜の合計の厚みは、70μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましく、300μm以上が特に好ましい。また、皮膜の合計厚みは、900μm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましく、300μm以下が特に好ましい。なお、本明細書において皮膜の合計厚みとは、第1工程において皮膜を基材の両面に形成する場合は、それぞれの面に形成された皮膜の厚みの合計の厚みである。第1工程において皮膜を基材の片面のみに形成する場合は、片面の皮膜の厚みが合計厚みとなる。
【0057】
基材上に皮膜を形成する形成方法としては特に限定されず、ペースト組成物を、例えばダイコート、グラビアコート、ダイレクトコート、ローラー、刷毛、スプレー、ディッピング等の塗布方法を用いて形成できるほか、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷方法により形成することもできる。
【0058】
基材としては、上述のアルミニウム電解コンデンサ用電極材において説明したアルミニウム箔基材又はアルミニウム合金箔基材と同一のものを用いればよい。
【0059】
また、必要に応じて基材上に付着させた皮膜を、基材と共に20℃以上300℃以下の範囲内の温度で1分以上30分以下の間乾燥させることも好ましい。
【0060】
(第2工程)
第2工程は、(2)前記皮膜を560℃以上660℃以下の温度で焼結する工程である。
【0061】
第2工程により皮膜中の粉末が焼結され、基材上に焼結体が形成される。焼結温度は560℃以上660℃以下である。焼結温度が560℃未満であると、焼結が進まず所望の静電容量が得られない。焼結温度が660℃を超えると、粉末が溶融して、電解コンデンサの電極材として使用した場合に十分な容量が得られない。焼結温度は、570℃以上650℃未満が好ましく、580℃以上620℃未満がより好ましい。
【0062】
焼結時間は焼結温度等にも影響されるが、通常は5~24時間程度の範囲内で適宜決定することができる。焼結雰囲気は、特に制限されず、例えば真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、酸化性ガス雰囲気(大気)、還元性雰囲気等のいずれであってもよいが、特に真空雰囲気又は還元性雰囲気とすることが好ましい。また、圧力条件についても、常圧、減圧又は加圧のいずれであってもよい。
【0063】
(脱脂工程)
本発明の製造方法は、第2工程に先立って、皮膜中の樹脂バインダーを気化する目的で脱脂工程を行うことが好ましい。脱脂工程としては、例えば、酸化性ガス雰囲気(大気)中で200℃以上500℃以下で1時間以上20時間以下加熱する工程が挙げられる。加熱温度の下限、または加熱時間の下限が上記範囲であることにより、皮膜中の樹脂バインダーがより気化して、皮膜中の樹脂バインダーの残留を抑制することができる。また、加熱温度の上限、または加熱時間の上限が上記範囲であることにより、皮膜中のアルミニウム合金粉末の焼結の進み過ぎを抑制することができ、電解コンデンサの電極材として使用した場合の容量がより一層十分となる。
【0064】
(陽極酸化処理工程)
本発明の製造方法は、第2工程の後に、更に、第3工程として陽極酸化処理工程を有していてもよい。陽極酸化処理工程を有することにより、焼結体の表面に陽極酸化皮膜が形成され、当該陽極酸化皮膜が誘電体として機能することで、電極材をアルミニウム電解コンデンサ用電極材として有用に用いることができる。
【0065】
陽極酸化処理条件は特に限定されず、通常は第1工程及び第2工程を経た電極材に対し、濃度0.01モル以上5モル以下、温度30℃以上100℃以下のホウ酸水溶液又はアジピン酸アンモニウム水溶液中で、10mA/cm以上400mA/cm以下の電流を5分以上印加すればよい。上記のような陽極酸化処理は、製造ライン下においては、通常、一又は複数のロールによって電極材を送りつつ行われる。
【0066】
また、上記陽極酸化処理工程における電圧に関しては、250V以上800V以下から選択されることが好ましい。アルミニウム電解コンデンサ電極として用いられた際のアルミニウム電解コンデンサの動作電圧に応じた処理電圧にするのが好ましい。本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電極材を用いて製造したアルミニウム電解コンデンサは、特に高電圧での静電容量に優れるので、陽極酸化処理工程における電圧は400V以上がより好ましく、550V以上が更に好ましい。
【0067】
本発明の電極材の製造方法によれば、エッチング処理を行わずして、優れた電極材を得ることができる。エッチング工程を含まないことにより、エッチングに用いる塩酸等の処理が不要となり、環境上、経済上の負担がより一層低減される。
【0068】
(電解コンデンサの製造方法)
本発明の電極材を用いて、電解コンデンサを製造することができる。上記電解コンデンサを製造する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、本発明の電極材を陽極箔として用い、当該陽極箔と、陰極箔とをセパレータを介在させて積層し、捲回してコンデンサ素子を形成する。当該コンデンサ素子を電解液に含浸させ、電解液を含んだコンデンサ素子を外装ケースに収納し、封口体で外装ケースを封口する。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0070】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0071】
(実施例1、比較例1)
(第1工程)
比較例1-1、比較例1-2、実施例1-1~実施例1-5に用いるために、表1に示すように鉄の含有量の異なる、平均粒子径(D50)が3μmのアルミニウム合金粉末(東洋アルミニウム株式会社製、JIS A1080)を用意した。なお、アルミニウム合金粉末の平均粒子径D50は、マイクロトラックMT3300EXII(Microtrac社製)を使用し、レーザー回折・散乱法湿式測定により粒度分布を体積基準で測定して算出した。
【0072】
次いで、エチルセルロース系バインダー樹脂を、溶剤としての酢酸ブチルに5質量%となるように加えてバインダー樹脂溶液を調製した。バインダー樹脂溶液60質量部に対し、アルミニウム合金粉末100質量部を加え、混練してペースト組成物を調製した。得られたペースト組成物を、厚みが30μmのアルミニウム箔(アルミニウム99.99質量%)の片面にコンマダイレクトコーターを用いて塗工して50μmの厚さでアルミニウム箔の片面に付着させ、乾燥させて皮膜を形成した。また、アルミニウム箔の反対側にも同様にペースト組成物を塗工して50μmの厚さでアルミニウム箔の片面に付着させ、乾燥させて皮膜を形成した。これにより、アルミニウム箔の両面に皮膜を形成した。次いで、100℃で1.5分間乾燥させ、未焼結積層体を得た。
【0073】
(第2工程)
第1工程で得られた未焼結積層体を、空気雰囲気中で300℃で2時間加熱処理をした後、アルゴンガス雰囲気中で635℃で7時間加熱して組成物を焼結し、アルミニウム箔基材上に焼結体を形成して、電極材を製造した。焼結後の焼結体の平均厚みをマイクロメーターで測定したところ、片面あたり50μmずつであった。
【0074】
なお、焼結体中の粉末の平均粒子径D50は、上記焼結前の粉末の平均粒子径D50から殆ど変化せず、略同一であるので、上記焼結前のアルミニウム粉末の平均粒子径D50を、焼結体中のアルミニウム粉末の平均粒子径D50とした。
【0075】
(第3工程)
製造された電極材に、更に、陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理は、化成電圧250~800Vで日本電子機械工業会規格RC-2364Aに従い行った。
【0076】
(実施例2~7、比較例2~7)
粉末を下記表に示す粉末に変更し、焼結体の厚みを表1に示す厚みに変更した。また、実施例7及び比較例7では、基材の片面に焼結体を形成した。それ以外は実施例1及び比較例1と同様にして電極材を製造し、陽極酸化処理を施した。
【0077】
上述のようにして製造された実施例1~7及び比較例1~7の陽極酸化処理を施した電極材を用いて、下記評価を行った。
【0078】
(静電容量評価試験)
日本電子機械工業会規格RC-2364Aに準拠し、各実施例及び比較例の電極材を使用した際の静電容量評価試験を実施した。化成電圧は、250V、400V、550V、800Vの各電圧とした。
【0079】
(ESR測定)
各実施例及び比較例の電極材を50mm×20mmの大きさに切り出し、対向電極(SUS304製)とともに液温20℃のホウ酸アンモニウム水溶液(ホウ酸アンモニウム80g、純水1000g)中に浸漬させ、LCZメーター(NF electronic instruments社製品番、2321LCZ)を用いて測定を行った。測定周波数は120Hz及び100kHzの2点とし、各周波数の初期値をESRとして採用した。
【0080】
結果を表1~表7に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
表1~7の結果から、Fe含有量が2~499質量ppmの範囲である実施例1~7では、比較例1~7と対比して、高い静電容量を示すことができ、且つ、等価直列抵抗(ESR)が抑制されていることが分かった。
【0089】
実施例1及び比較例1の焼結後で陽極酸化処理前の電極材の気孔率を測定した。気孔率の測定は、以下の方法により測定した。
【0090】
(気孔率測定)
電極材及び使用した基材から15cm×5.5cmの試料を切り出し、下記式に従って算出した。
気孔率(%)={1-〔電極材の質量(g)-基材の質量(g)〕/〔[電極材の厚み(cm)×試料面積(cm)×アルミニウムの比重(2.70g/cm)]-基材の質量(g)〕}×100
なお、上記式において、電極材の厚みは、切り出した試料の四隅と中央部の計5点をマイクロメーターで測定した平均値である。
【0091】
結果を表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
表8の結果から、Fe含有量が2~499質量ppmの範囲である実施例1-1~1-5では、気孔率46%以上を維持した状態であったが、Fe含有量が500質量ppm以上である比較例1-1及び1-2では気孔率が40%以下になることが分かった。以上より、実施例1の電極材は、比較例1の電極材と比べて表面積が大きいため、コンデンサに要求される静電容量を示すことができることが確認された。
【0094】
(裏面観察)
比較例1-2、実施例1-1、及び実施例1-5で製造した、陽極酸化処理を施した電極材を用いて、下記の方法により裏面観察を行った。なお、裏面観察に用いる電極材の陽極酸化処理は、550Vの条件で行った。
【0095】
陽極酸化処理を施した電極材の金属アルミニウム部分(アルミニウム箔及びアルミニウム合金粉末)を、Br-メタノール液で溶解・除去した。次いで、化成皮膜(焼結体)のみを回収して水洗・乾燥した後に、基材が存在した側から電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
【0096】
図1に比較例1-2、図2に実施例1-1、図3に実施例1-5の裏面観察結果のSEM写真を示す。図1図3で示されるSEM写真は、化成皮膜のSEM写真であり、空孔部分が金属アルミニウム(アルミニウム合金粉末)が存在していた部分に相当する。図1から、比較例1-1では観察面が平らでなく、すなわち、アルミニウム合金粉末と基材が過剰に焼結していることが分かった。また、図2及び図3から、実施例1-1及び実施例1-5では、観察面が平らになっており、アルミニウム合金粉末と基材との焼結が適度に制御されていることが分かった。
図1
図2
図3