(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143033
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】医療デバイスおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20220926BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043356
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】深見 一成
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA11
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK38
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】拡張体を円滑に収縮させて外筒に収納でき、かつ破損しにくく安全性の高い医療デバイスおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】医療デバイス10は、径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部31と、シャフト部31の内部を通って拡張体21に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有し、拡張体21は、径方向内側に窪み、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部56と、凹部56よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部57と、凹部56よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部55と、を有し、伸長機構は、拡張体21の少なくとも先端側凸部57を先端方向へ伸長させ、または径方向へ収縮させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能な拡張体と、
前記拡張体の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部と、
前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有し、
前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部と、前記凹部よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部と、前記凹部よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部と、を有し、
前記伸長機構は、前記拡張体の少なくとも前記先端側凸部を先端方向へ伸長させ、または径方向へ収縮させる医療デバイス。
【請求項2】
前記伸長機構は、
前記拡張体の中心軸に沿って前記拡張体の基端から先端に向かって延びる作動シャフトと、
前記拡張体の先端部よりも基端側で前記作動シャフトに連結されて前記拡張体の先端部に基端側から当接して前記拡張体を先端方向に押圧可能な押圧部と、を有する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記伸長機構は、
前記拡張体を基端から先端へ貫通する作動シャフトと、
前記作動シャフトおよび前記先端側凸部を連結する押圧用連結部と、を有する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記伸長機構は、
前記拡張体の先端部に連結されて当該拡張体の先端部よりも基端側へ延在する内管と、
前記拡張体の中心軸に沿って前記拡張体の基端から少なくとも前記内管内まで延びる作動シャフトと、
前記内管よりも基端側で前記作動シャフトに連結されて前記内管の基端部に基端側から当接して前記内管を介して前記拡張体を先端方向に押圧可能である押圧部と、を有する請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記伸長機構は、
前記作動シャフトの前記拡張体よりも先端側に連結されて前記拡張体の先端部に先端側から当接して前記拡張体の前記先端部を前記拡張体の基端部に対して基端方向に牽引可能な牽引部を有する請求項2~4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記伸長機構は、
前記シャフト部内に挿通された牽引ワイヤを有し、
前記牽引ワイヤの先端部は前記シャフト部から外部へ導出されて前記先端側凸部に連結され、前記先端側凸部を前記拡張体の中心軸に向かって牽引可能である請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記シャフト部の基端部が連結された操作部を有し、
前記伸長機構は、前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される作動シャフトを有し、
前記操作部は、前記作動シャフトの基端方向への移動により反発力を蓄積可能な反発機構と、
前記作動シャフトの軸方向への移動を制限する制限機構と、
前記制限機構による制限を解除して、蓄積された前記反発力による前記作動シャフトの先端方向への移動を可能とする解除機構と、を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記受容空間に面するように前記凹部に沿って設けられた電極をさらに有する請求項1~7のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部と、前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有する医療デバイスの使用方法であって、
前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部と、前記凹部よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部と、前記凹部よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部と、を有し、
前記伸長機構を操作して前記拡張体の少なくとも前記先端側凸部を収縮させ、
前記シャフト部が挿通されるとともに前記拡張体よりも基端側に配置された外筒を、前記先端側凸部が収縮した状態の前記拡張体に対して相対的に先端方向に移動させ、前記拡張体を前記外筒内に収納する、医療デバイスの使用方法。
【請求項10】
前記伸長機構の操作により前記先端側凸部が部分的に収縮した前記拡張体に対して、前記外筒を相対的に先端方向に移動させることで、前記先端側凸部をさらに収縮させて前記外筒内に収納する、請求項9に記載の医療デバイスの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内で拡張させる拡張体を備えた医療デバイスおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管等の生体管腔に挿入して、拡張体を備えたデバイスが使用されている。拡張体は、外筒に収納されて縮径した状態で、病変部等の目的の位置まで搬送される。この後、拡張体は、目的の位置で外筒から放出されて拡張する。拡張体は、例えば、管腔や孔を拡張させたり、管腔や孔を閉鎖するなどの様々な目的で使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拡張体を外筒に収納する際に、拡張体が硬いために収納しにくい場合がある。この場合、無理に収納を試みると、拡張体や外筒に破損が生じて、人体への傷害が生じたり、円滑な治療の妨げとなる恐れがある。
【0005】
例えば特許文献1には、拡張体を収納する外筒の先端開口を、滑らかに広がるように形成することで、拡張体を滑らかに外筒に収納できるデバイスが記載されている。しかしながら、この構成であっても、拡張体を強制的に外筒に収納することで拡張体を収縮させることに変わりないため、拡張体や外筒にかかる負担の軽減は限定的である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、拡張体を円滑に収縮させて外筒に収納でき、かつ破損しにくく安全性の高い医療デバイスおよびその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部と、前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有し、前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部と、前記凹部よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部と、前記凹部よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部と、を有し、前記伸長機構は、前記拡張体の少なくとも前記先端側凸部を先端方向へ伸長させ、または径方向へ収縮させる。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスの使用方法は、径方向に拡縮可能な拡張体と、前記拡張体の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部と、前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有する医療デバイスの使用方法であって、前記拡張体は、径方向内側に窪み、前記拡張体の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部と、前記凹部よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部と、前記凹部よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部と、を有し、前記伸長機構を操作して前記拡張体の少なくとも前記先端側凸部を収縮させ、前記シャフト部が挿通されるとともに前記拡張体よりも基端側に配置された外筒を、前記先端側凸部が収縮した状態の前記拡張体に対して相対的に先端方向に移動させ、前記拡張体を前記外筒内に収納する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した医療デバイスは、伸長機構によって拡張体を先端方向へ伸長、または径方向へ収縮させることができるため、拡張体を外筒に収納する際に、拡張体や外筒にかかる負荷を低減できる。このため、本医療デバイスは、拡張体を円滑に収縮させて外筒に収納でき、かつ破損しにくく安全性が高い。
【0010】
前記伸長機構は、前記拡張体の中心軸に沿って前記拡張体の基端から先端に向かって延びる作動シャフトと、前記拡張体の先端部よりも基端側で前記作動シャフトに連結されて前記拡張体の先端部に基端側から当接して前記拡張体を先端方向に押圧可能な押圧部と、を有してもよい。これにより、作動シャフトを先端方向へ移動させることにより、拡張体の先端部を押圧部によって先端方向へ移動させて、拡張体を先端方向へ伸長させることができる。
【0011】
前記伸長機構は、前記拡張体を基端から先端へ貫通する作動シャフトと、前記作動シャフトおよび前記先端側凸部を連結する押圧用連結部と、を有してもよい。これにより、作動シャフトを先端方向へ移動させることにより、押圧用連結部によって先端側凸部を押圧し、拡張体を先端方向へ伸長させて、拡張体を径方向へ収縮させることができる。
【0012】
前記伸長機構は、前記拡張体の先端部に連結されて当該拡張体の先端部よりも基端側へ延在する内管と、前記拡張体の中心軸に沿って前記拡張体の基端から少なくとも前記内管内まで延びる作動シャフトと、前記内管よりも基端側で前記作動シャフトに連結されて前記内管の基端部に基端側から当接して前記内管を介して前記拡張体を先端方向に押圧可能である押圧部と、を有してもよい。これにより、作動シャフトを先端方向へ移動させることにより、押圧部によって拡張体の先端部を内管を介して間接的に押圧し、拡張体を先端方向へ伸長させて、拡張体を径方向へ収縮させることができる。
【0013】
前記伸長機構は、前記作動シャフトの前記拡張体よりも先端側に連結されて前記拡張体の先端部に先端側から当接して前記拡張体の前記先端部を前記拡張体の基端部に対して基端方向に牽引可能な牽引部を有してもよい。これにより、作動シャフトを基端方向に牽引することで、拡張体を径方向へ拡張できる。すなわち、伸長機構は、拡張体を拡張させるための牽引機構を兼ねることができる。
【0014】
前記伸長機構は、前記シャフト部内に挿通された牽引ワイヤを有し、前記牽引ワイヤの先端部は前記シャフト部から外部へ導出されて前記先端側凸部に連結され、前記先端側凸部を前記拡張体の中心軸に向かって牽引可能であってもよい。これにより、牽引ワイヤを牽引することにより、先端側凸部を拡張体の中心軸に向かって牽引して、拡張体を径方向へ収縮させることができる。
【0015】
前記医療デバイスは、前記シャフト部の基端部が連結された操作部を有し、前記伸長機構は、前記シャフト部の内部を通って前記拡張体に直接的または間接的に接続される作動シャフトを有し、前記操作部は、前記作動シャフトの基端方向への移動により反発力を蓄積可能な反発機構と、前記作動シャフトの軸方向への移動を制限する制限機構と、前記制限機構による制限を解除して、蓄積された前記反発力による前記作動シャフトの先端方向への移動を可能とする解除機構と、を有してもよい。これにより、拡張体を拡張させるために作動シャフトを基端方向へ移動させることで、反発機構に反発力を蓄積させて制限機構により保持した後に、解除機構により蓄積させた反発力を解放して、作動シャフトを先端方向へ移動させることができる。すなわち、医療デバイスは、拡張体を拡張させる際のエネルギーを蓄積し、そのエネルギーを利用することで、拡張体を先端方向へ容易に伸長させ、または径方向へ容易に収縮させることができる。
【0016】
前記医療デバイスは、前記受容空間に面するように前記凹部に沿って設けられた電極をさらに有してもよい。これにより、医療デバイスは、凹部に生体組織を配置し、先端側凸部と基端側凸部の間に生体組織を挟んで拡張体を拡張させることができる。このため、拡張体により生体の管腔や孔を所望の大きさに拡張させた状態で、電極による焼灼を行うことができる。
【0017】
上記のように構成した医療デバイスの使用方法は、伸長機構によって拡張体の少なくとも先端側凸部を収縮させて拡張体を外筒に収納するため、拡張体を外筒に収納する際に、拡張体や外筒にかかる負荷を低減できる。このため、本医療デバイスの使用方法は、拡張体を円滑に収縮させて外筒に収納でき、かつ破損しにくく安全性が高い。
【0018】
前記伸長機構の操作により前記先端側凸部が部分的に収縮した前記拡張体に対して、前記外筒を相対的に先端方向に移動させることで、前記先端側凸部をさらに収縮させて前記外筒内に収納してもよい。これにより、先端側凸部は、伸長機構によって収縮された後に、外筒による圧縮によって収縮される。このため、先端側凸部を収縮させるための力が、伸長機構と外筒による圧縮の2つに分散されるため、収納操作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る医療デバイスの全体構成を表した正面図である。
【
図2】医療デバイスの拡張体付近の拡大斜視図である。
【
図4】心房中隔の貫通孔に拡張体を配置した状態を、医療デバイスは正面図で、生体組織は断面図で、それぞれ模式的に示す説明図である。
【
図5】バルーンを心房中隔に挿入した状態を示す断面図である。
【
図6】医療デバイスの先端部を心房中隔に挿入した状態を示す断面図である。
【
図7】拡張体の先端側凸部を左心房側で露出させた状態を示す断面図である。
【
図8】拡張体の先端側凸部を左心房側で展開させた状態を示す断面図である。
【
図9】拡張体を心房中隔に配置した状態を示す断面図である。
【
図10】心房中隔において拡張体を拡張させた状態を示す断面図である。
【
図11】拡張体を拡張形態から展開形態も戻した状態を示す断面図である。
【
図12】拡張体を外筒に収容する方法の一例を説明するための断面図であり、(A)は基端側凸部を外筒に収容した状態、(B)は伸長機構により先端側凸部を軸方向へ伸長させた状態、(C)は拡張体の全体を外筒に収容した状態を示す。
【
図13】拡張体を外筒に収容する方法の他の例を説明するための断面図であり、(A)は伸長機構により拡張体を軸方向へ伸長させた状態、(B)は基端側凸部を外筒に収容した状態、(C)は拡張体の全体を外筒に収容した状態を示す。
【
図14】第1の変形例に係る医療デバイスの先端部を、拡張体を透過して示す平面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を軸方向へ伸長させた状態を示す。
【
図15】第2の変形例に係る医療デバイスの先端部を示す断面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を軸方向へ伸長させた状態を示す。
【
図16】第3の変形例に係る医療デバイスの先端部を示す断面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を軸方向へ伸長させた状態を示す。
【
図17】第4の変形例に係る医療デバイスの先端部を示す断面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を軸方向へ伸長させた状態を示す。
【
図18】第5の変形例に係る医療デバイスの先端部を示す断面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を軸方向へ伸長させた状態を示す。
【
図19】第6の変形例に係る医療デバイスの先端部を示す断面図であり、(A)は拡張体を展開させた状態、(B)は拡張体を径方向へ収縮させた状態、(C)は拡張体の全体を外筒に収容した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、医療デバイスの生体内腔に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0021】
本実施形態に係る医療デバイス10は、
図4に示すように、患者の心臓Hの心房中隔HAに形成された貫通孔Hhを拡張し、さらに拡張した貫通孔Hhをその大きさに維持する維持処置を行うことができるように構成されている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の医療デバイス10は、基端から先端へ延在する長尺部20と、長尺部20の先端部に設けられる拡張体21と、長尺部20の基端部に設けられる操作部23とを有している。拡張体21には、前述の維持処置を行うためのエネルギー伝達要素22が設けられる。
【0023】
長尺部20は、
図1~3に示すように、先端部に拡張体21を保持しているシャフト部31と、シャフト部31を収納する外筒30と、作動シャフト33と、作動シャフト33の先端に固定される牽引部35と、作動シャフト33の牽引部35よりも基端側に固定される押圧部34とを有している。
【0024】
シャフト部31は、操作部23から拡張体21まで延在する長尺な管体である。シャフト部31の基端部は、操作部23の先端部に固定されている。シャフト部31の先端部は、拡張体21の基端部に固定されている。
【0025】
外筒30は、シャフト部31を覆う長尺な管体であり、シャフト部31に対して軸方向(長尺部20の軸心の方向)に進退移動可能である。外筒30は、長尺部20の先端側に移動した状態で、その内部に収縮させた拡張体21を収納することができる。拡張体21を収納した状態から、外筒30を基端側に移動させることで、拡張体21を露出させることができる。
【0026】
作動シャフト33は、シャフト部31の内部に配置される長尺な管体であり、シャフト部31に対して軸方向に進退移動可能である。作動シャフト33は、シャフト部31の先端から先端側に突出するとともに、拡張体21の先端から先端側に突出している。作動シャフト33の拡張体21よりも先端側に位置する先端部は、牽引部35に固定されている。作動シャフト33の基端部は、操作部23より基端側に導出されている。作動シャフト33の内部には、軸方向に沿ってガイドワイヤルーメンが形成されており、ガイドワイヤ11(
図4~13を参照)を挿通させることができる。
【0027】
牽引部35は、作動シャフト33の先端部の外周面に固定される環状の部材であり、作動シャフト33の外周面から径方向の外側へ突出している。牽引部35は、拡張体21には固定されていない。牽引部35の外径は、拡張体21の先端部の内径よりも大きい。このため、牽引部35は、拡張体21の先端部に先端側から当接し、拡張体21を基端方向へ牽引して、拡張体21に圧縮力を作用させることができる。
【0028】
押圧部34は、作動シャフト33の牽引部35よりも基端側の外周面に固定される環状の部材であり、作動シャフト33の外周面から径方向の外側へ突出している。押圧部34は、拡張体21には固定されていない。押圧部34は、拡張体21の内部に配置され、拡張体21の先端部よりも基端側に配置される。押圧部34の外径は、拡張体21の先端部の内径よりも大きい。このため、押圧部34は、拡張体21の先端部に基端側から当接し、拡張体21を先端方向へ押圧して、拡張体21に軸方向の引っ張り力を作用させることができる。
【0029】
また、拡張体21を外筒30に収納する際、牽引部35を拡張体21から先端側に離すことによって、拡張体21の軸方向への移動が容易になり、収納性を向上させることができる。
【0030】
操作部23は、術者が把持するハウジング40と、術者が回転操作可能なダイヤル41と、ダイヤル41の回転を軸方向の移動に変換する変換機構42と、作動シャフト33の移動に対する反発力を蓄積可能な反発機構43と、ダイヤル41の回転を制限する制限機構44と、制限機構44による制限を解除する解除機構45とを有している。
【0031】
ダイヤル41は、シャフト部31および作動シャフト33の軸心と垂直な面で回転可能に、ハウジング40に連結されている。ダイヤル41の一部は、術者が操作できるように、ハウジング40の開口から外部へ露出されている。
【0032】
変換機構42は、例えば、作動シャフト33の基端部に固定されたねじ軸46と、ダイヤル41に固定されるナット47と、ナット47の内部でねじ軸46の外周面のねじ溝48に配置されるボール(図示せず)とを備えたボールねじの構造で構成される。ダイヤル41とともにナット47が回転すると、ねじ軸46に軸方向に沿う力が作用し、ねじ軸46が回転せずに先端方向または基端方向へ移動する。なお、変換機構42の構成は、これに限定されない。
【0033】
反発機構43は、例えばばねであり、ねじ軸46の基端面とハウジング40の内壁面との間に配置される。反発機構43は、ねじ軸46が基端方向へ移動することで圧縮力(反発力)を蓄積することができる。なお、反発機構43は、ばねに限定されず、例えばゴム等の弾性体やエアシリンダー等であってもよい。
【0034】
制限機構44は、ダイヤル41の回転を制限することで、作動シャフト33の軸方向への移動を制限する。制限機構44は、例えば、ハウジング40をダイヤル41の近傍で貫通する保持穴40Aに配置されて、ダイヤル41に接触して摩擦力によりダイヤル41の回転を制限する制限部材49である。なお、制限機構44の構成は、これに限定されない。
【0035】
解除機構45は、制限機構44を移動可能に保持する保持穴40Aにより構成される。術者は、制限部材49を保持穴40Aに沿ってダイヤル41から離間させることができる。これにより、ダイヤル41が小さな抵抗で回転可能となるため、反発機構43に蓄積された反発力により、ダイヤル41が回転しつつ、ねじ軸46および作動シャフト33が先端方向へ移動する。
【0036】
拡張体21は、周方向に複数の線材部50を有している。本実施形態において線材部50は、周方向に4本が設けられている。なお、線材部50の数は、特に限定されない。線材部50は、それぞれ拡張体21の径方向に拡張および収縮可能である。外力が作用しない自然状態において、拡張体21は径方向へ展開した展開形態となる。各々の線材部50の基端部は、シャフト部31の先端部に固定されている。各々の線材部50の先端部は、拡張体21の先端部である環状の集合部54で集合している。線材部50は、拡張体21の軸方向の両端部から中央部に向かって、径方向に大きくなるように傾斜している。また、線材部50は、軸方向中央部に、拡張体21の径方向において谷形状の挟持部51を有する。
【0037】
各々の線材部50は、基端側凸部55と、凹部56と、先端側凸部57とを有している。基端側凸部55は、凹部56の基端側に位置して、径方向の外側へ凸形状に形成されている。先端側凸部57は、凹部56の先端側に位置して、径方向の外側へ凸形状に形成されている。基端側凸部55の先端部に基端側挟持部52が形成され、先端側凸部57の基端部に先端側挟持部53が形成される。軸方向に並ぶ基端側挟持部52、凹部56および先端側挟持部53は、拡張体21の径方向において谷形状の挟持部51を形成する。凹部56は、基端側挟持部52と先端側挟持部53の間に位置して径方向内側に窪み、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する。基端側挟持部52と先端側挟持部53の間の間隔は、展開形態において、径方向の内側よりも外側において軸方向に多少大きく開いていることが好ましい。これにより、基端側挟持部52と先端側挟持部53の間に、径方向の外側から生体組織を配置することが容易である。
【0038】
先端側凸部57は、展開形態において径方向へ最も突出している頂部の付近に、1つの先端側貫通孔60が形成されている。先端側貫通孔60は、拡張体21の径方向へ貫通している。これにより、先端側凸部57は、曲げ剛性が低くなる。このため、先端側凸部57は、径方向の外側へ凸形状となるように変形しやすいとともに、凸形状が平坦となるように変形しやすい。
【0039】
先端側挟持部53は、先端側貫通孔60に配置されるように、凹部56側の部位から先端側凸部57の頂部へ向かって突出している背当て部62が形成されている。背当て部62は、基端部が固定された片持ち梁状の形態であるため、撓みやすい。このため、背当て部62は、基端側挟持部52に配置されるエネルギー伝達要素22から受ける先端側へ向かう力によって、容易に撓むことができる。なお、先端側貫通孔60および背当て部62は、設けられなくてもよい。
【0040】
基端側挟持部52は、展開形態において先端側に向かう面に、エネルギー伝達要素22が配置される。
【0041】
エネルギー伝達要素22は、基端側挟持部52に設けられているので、挟持部51が心房中隔HAを挟持する際、エネルギー伝達要素22からのエネルギーは、心房中隔HAに対して右心房側から伝達される。なお、エネルギー伝達要素22が先端側挟持部53に設けられる場合、エネルギー伝達要素22からのエネルギーは、心房中隔HAに対して左心房側から伝達される。
【0042】
エネルギー伝達要素22は、例えば、外部装置であるエネルギー供給装置(図示しない)から電気エネルギーを受けるバイポーラ電極で構成される。この場合、各線材部50に配置されたエネルギー伝達要素22間で通電がなされる。エネルギー伝達要素22とエネルギー供給装置とは、絶縁性被覆材で被覆された導線(図示しない)により接続される。導線は、長尺部20及び操作部23を介して外部に導出され、エネルギー供給装置に接続される。
【0043】
エネルギー伝達要素22は、他にも、モノポーラ電極として構成されていてもよい。この場合、体外に用意される対極板との間で通電がなされる。また、エネルギー伝達要素22は、エネルギー供給装置から高周波の電気エネルギーを受給して発熱する発熱素子(電極チップ)でもよい。この場合、各線材部50に配置されたエネルギー伝達要素22間で通電がなされる。さらに、エネルギー伝達要素22は、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、レーザー等のコヒーレント光、加熱した流体、冷却された流体、化学的な媒体により加熱や冷却作用を及ぼすもの、摩擦熱を生じさせるもの、電線等を備えるヒーター等のように、貫通孔Hhに対してエネルギーを付与可能な要素により構成することができ、具体的な形態は特に限定されない。
【0044】
本実施形態では、基端側挟持部52にエネルギー伝達要素22を、先端側挟持部53に背当て部62を、それぞれ設けているが、先端側挟持部53にエネルギー伝達要素22を、基端側挟持部52に背当て部62を、それぞれ設けてもよい。
【0045】
拡張体21を形成する線材部50は、例えば、円筒から切り出した平板形状を有する。拡張体21を形成する線材は、厚み50~500μm、幅0.3~2.0mmとすることができる。ただし、拡張体21を形成する線材は、この範囲外の寸法を有していてもよい。また、線材部50の形状は、限定されず、例えば円形の断面形状や、それ以外の断面形状を有していてもよい。
【0046】
線材部50は、金属材料で形成することができる。この金属材料としては、例えば、チタン系(Ti-Ni、Ti-Pd、Ti-Nb-Sn等)の合金、銅系の合金、ステンレス鋼、βチタン鋼、Co-Cr合金を用いることができる。なお、ニッケルチタン合金等のバネ性を有する合金等を用いるとよりよい。ただし、線材部50の材料はこれらに限られず、その他の材料で形成してもよい。
【0047】
長尺部20の外筒30およびシャフト部31は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリイミド、PEEK、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
【0048】
作動シャフト33は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、比較的剛性の高い樹脂材料などの長尺状の線材で形成することができる。また、上記にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、フッ素樹脂などの樹脂材料を被覆したもので形成してもよい。
【0049】
牽引部35および押圧部34は、例えば、ニッケル-チタン合金、銅-亜鉛合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属材料、比較的剛性の高い樹脂材料などで形成することができる。
【0050】
次に、本実施形態に係る医療デバイス10を使用した処置方法について説明する。本処置方法は、心不全(左心不全)に罹患した患者に対して行われる。より具体的には、
図4に示すように、心臓Hの左心室の心筋が肥大化してスティッフネス(硬さ)が増すことで、左心房HLaの血圧が高まる慢性心不全に罹患した患者に対して行われる処置の方法である。
【0051】
術者は、貫通孔Hhの形成に際し、ガイディングシース及びダイレータが組み合わされたイントロデューサを心房中隔HA付近まで送達する。イントロデューサは、例えば、下大静脈Ivを介して右心房HRaに送達することができる。また、イントロデューサの送達は、ガイドワイヤ11を使用して行うことができる。術者は、ダイレータにガイドワイヤ11を挿通し、ガイドワイヤ11に沿わせて、イントロデューサを送達させることができる。なお、生体に対するイントロデューサの挿入、ガイドワイヤ11の挿入等は、血管導入用のイントロデューサを用いるなど、公知の方法で行うことができる。
【0052】
術者は、右心房HRa側から左心房HLa側に向かって、穿刺デバイス(図示しない)をおよびダイレータを貫通させ、貫通孔Hhを形成する。穿刺デバイスは、ダイレータに挿通させて心房中隔HAまで送達する。
【0053】
次に、術者は、予め挿入されたガイドワイヤ11に沿って、バルーンカテーテル150を心房中隔HA付近に送達する。
図5に示すように、バルーンカテーテル150は、シャフト部151の先端部にバルーン152を有している。バルーン152を心房中隔HAに配置したら、径方向に拡張させ、貫通孔Hhを押し広げる。この際、貫通孔Hhは、中隔組織の繊維の影響により、繊維に沿う方向については拡張したバルーン152の最大径と同等まで拡張するが、それ以外の方向には拡張しにくいため、細長い形状となる。
【0054】
次に、医療デバイス10を心房中隔HA付近に送達し、拡張体21を貫通孔Hhの位置に配置する。医療デバイス10の送達時には、ガイドワイヤは用いられないが、拍動下で安定的に操作するためにガイドワイヤを用いてもよい。このとき、医療デバイス10の先端部は、心房中隔HAを貫通して、左心房HLaに達するようにする。また、
図6に示すように、医療デバイス10の挿入の際、拡張体21は、外筒30に収納された収縮状態となっている。貫通孔Hhがバルーン152により押し広げられていることで、外筒30を貫通孔Hhに挿通させることができる。収縮形態において、展開形態では湾曲している基端側凸部55、凹部56および先端側凸部57が平坦に近い形状に変形することで、拡張体21が径方向に収縮している。医療デバイス10の初期状態(拡張体21が外筒30内に収納されて最も収縮した状態)において、押圧部34は、拡張体21の集合部54(先端部)からある程度基端側に離間している。
【0055】
次に、術者は、
図7に示すように、外筒30を基端方向へ移動させることにより、拡張体21の先端側凸部57を左心房HLa内に露出させる。上述したように、初期状態では押圧部34が拡張体の集合部54からある程度基端側へ離間しているため、外筒30から拡張体21の先端側が露出すると、集合部54が押圧部34と当接するまで、拡張体21の先端側が少し自己拡張する。これにより、拡張体21の先端側を心房中隔HAに引掛けることで、拡張体21の位置決めが可能となる。
【0056】
なお、拡張体21の先端側凸部57を左心房HLa内に露出させる手順の変形例として、初期状態から、ダイヤル41を回転させて押圧部34を先端側へ移動させ、押圧部34により、拡張体21の集合部54(先端部)を基端側から先端方向へ押圧してもよい。これにより、拡張体21に、軸方向への引っ張り力が作用する。次に、術者は、外筒30を基端方向へ移動させることにより、拡張体21の先端側凸部57を左心房HLa内に露出させる。このとき、拡張体21の集合部54の基端側に押圧部34が当接して、拡張体21に軸方向への引っ張り力が作用しているため、外筒30から放出された後の先端側凸部57の形状が、外筒30に収納されていた際の平坦に近い形状で保持される。これにより、外筒30を基端方向へ移動させる際に、拡張体21と外筒30の摩擦が低減されるため、拡張体21と外筒30の破損を抑制できるとともに、先端側凸部57を露出させることが容易となる。
【0057】
外筒30から放出された拡張体21の先端側凸部57が少し自己拡張した後に、術者は、ダイヤル41を回転させて、作動シャフト33をシャフト部31に対して基端方向へ移動させる。この手順は、完全に自己拡張していない拡張体21の先端側凸部57を、完全に自己拡張させるために行われる。術者は、押圧部34が集合部54から基端方向へ離れるまで、作動シャフト33を基端方向へ移動させる。これにより、
図8に示すように、先端側凸部57が、押圧部34から受けていた引っ張り力から解放され、自己の復元力によって左心房HLa内で径方向へ展開する。なお、先端側凸部57を左心房HLa内に露出させる際に、押圧部34によって拡張体21に軸方向への引っ張り力を作用させなくてもよい。
【0058】
次に、術者は、
図9に示すように、外筒30をシャフト部31に対して基端方向へ移動させる。これにより、拡張体21の基端側凸部55が、自己の復元力によって右心房HRa内で径方向へ展開する。その結果、拡張体21の全体が、自己の復元力によって展開し、元の展開形態または展開形態に近い形態に復元する。凹部56は、貫通孔Hhの内側に配置される。この際、心房中隔HAは、基端側挟持部52と先端側挟持部53との間に配置される。生体組織の挟持方向において、エネルギー伝達要素22と背当て部62の間に、心房中隔HAが配置される。なお、拡張体21は、貫通孔Hhに接触することで、完全に展開形態に戻らずに、展開形態に近い形状に戻る可能性がある。なお、この状態において、拡張体21は、外筒30に覆われず、かつ作動シャフト33から力を受けていない。拡張体21のこの形態も、展開形態に含まれると定義することができる。
【0059】
拡張体21の基端側凸部55が径方向へ展開する際には、集合部54が基端方向へ移動する。このとき、集合部54の移動量よりも、押圧部34が集合部54から基端側へ離れていることで、移動する集合部54は押圧部34まで到達しない。このため、拡張体21の径方向への展開が、押圧部34によって妨げられない。
【0060】
次に、術者は、凹部56により画成される受容空間が生体組織を受容した状態で、
図1、10に示すように、操作部23のダイヤル41を操作し、作動シャフト33を基端方向に移動させる。これにより、作動シャフト33の先端に固定された牽引部35が、拡張体21の集合部54に先端側から当接し、集合部54を基端方向へ牽引する。その結果、拡張体21は、牽引部35によって圧縮方向に牽引されることで軸方向へ圧縮力されて、基端側挟持部52と先端側挟持部53で心房中隔HAが挟持されて、エネルギー伝達要素22が生体組織に押し付けられる。このとき、エネルギー伝達要素22と背当て部62は対向する。操作部23では、ダイヤル41を回転させることで、ねじ軸46が基端方向へ移動し、反発機構43が圧縮される。これにより、反発機構43に、反発力が蓄積される。ダイヤル41の回転方向の位置は、制限機構44によって保持される。
【0061】
貫通孔Hhを拡張させたら、術者は、血行動態の確認を行う。術者は、
図4に示すように、下大静脈Iv経由で右心房HRaに対し、血行動態確認用デバイス100を送達する。血行動態確認用デバイス100としては、例えば、公知のエコーカテーテルを使用することができる。術者は、血行動態確認用デバイス100で取得されたエコー画像を、ディスプレイ等の表示装置に表示させ、その表示結果に基づいて貫通孔Hhを通る血液量を確認することができる。なお、血行動態の確認は、バルーン152により貫通孔Hhを押し広げた後に行われてもよい。
【0062】
次に、術者は、貫通孔Hhの大きさの維持するために維持処置を行う。維持処置では、
図10に示す状態で、エネルギー伝達要素22を通して貫通孔Hhの縁部にエネルギーを付与することにより、貫通孔Hhの縁部をエネルギーによって焼灼(加熱焼灼)する。エネルギー伝達要素22を通して貫通孔Hhの縁部付近の生体組織が焼灼されると、縁部付近には生体組織が変性した変性部が形成される。変性部における生体組織は弾性を失った状態となるため、貫通孔Hhは拡張体21により押し広げられた際の形状を維持できる。
【0063】
維持処置後に術者は、再度血行動態を確認し、貫通孔Hhを通る血液量が所望の量となっている場合、術者は、
図1に示すように、操作部23の解除機構45を操作して、制限機構44によるダイヤル41の回転の制限を解除する。これにより、反発機構43は、蓄積されている力によって軸方向へ延び、ダイヤル41を回転させつつ、ねじ軸46を先端方向へ移動させる。これにより、
図11に示すように、作動シャフト33の牽引部35が先端方向へ移動して拡張体21から離れ、拡張体21が径方向に収縮する。その結果、拡張体21は、拡張形態から、自然状態である展開形態となる。
【0064】
次に、術者は、拡張体21を径方向へ収縮させて外筒30に収納する。そのための手順の一例を、
図12に示す。まず、術者は、
図12(A)に示すように、外筒30をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、拡張体21の基端側凸部55が、径方向へ収縮して外筒30に収納される。これにより、拡張体21の集合部54が先端方向へ移動するが、集合部54の移動量よりも、牽引部35が集合部54から先端側へ離れていることで、移動する集合部54は牽引部35まで到達しない。このため、拡張体21の径方向への収縮が、牽引部35によって妨げられない。
【0065】
次に、術者は、操作部23のダイヤル41を回転させて、作動シャフト33をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、
図12(B)に示すように、作動シャフト33に固定されている押圧部34が、拡張体21の集合部54に基端側から当接し、先端方向へ押圧する。これにより、拡張体21の集合部54が先端方向へ移動し、拡張体21に軸方向への引っ張り力が作用し、先端側凸部57が径方向へ収縮する。
【0066】
次に、術者は、外筒30をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、
図12(C)に示すように、拡張体21の先端側凸部57が、径方向へ収縮して外筒30に収納される。これにより、拡張体21の全体が、外筒30に収納される。このとき、集合部54が先端方向へ移動するが、集合部54の移動量よりも、牽引部35が集合部54から先端側へ離れていることで、移動する集合部54は牽引部35まで到達しない。このため、拡張体21の径方向への収縮が、牽引部35によって妨げられない。
【0067】
拡張体21の先端側凸部57を外筒30に収納し始める際には、
図12(B)に示すように、拡張体21の集合部54の基端側に押圧部34が当接して、拡張体21に軸方向への引っ張り力が作用しているため、凹部56および先端側凸部57の形状が、平坦な形状に近づいている。すなわち、拡張体21に軸方向への引っ張り力を作用させる前は、軸方向に対して直角に近い角度で立ち上がっていた先端側挟持部53(
図12(A)を参照)が、軸方向と平行な角度に近づくように傾いている。すなわち、先端側凸部57は、径方向へある程度収縮されている。これにより、
図12(C)に示すように、先端側凸部57を外筒30に収納する際に、先端側挟持部53と外筒30の摩擦が低減される。このため、拡張体21と外筒30の破損を抑制できるとともに、先端側凸部57を収納することが容易となる。ここでは、先端側凸部57の径方向への収縮は、作動シャフト33および押圧部34により構成される伸長機構による作用と、外筒30による圧縮の二段階で行われる。しかしながら、先端側凸部57の径方向への収縮は、伸長機構による作用のみで行われてもよい。
【0068】
なお、展開形態の拡張体21を径方向へ収縮させて外筒30に収納する手順は、
図12に示す手順に限定されない。
図13に、その手順の他の例を示す。術者は、操作部23のダイヤル41を回転させて、作動シャフト33をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、
図13(A)に示すように、作動シャフト33に固定されている押圧部34が、拡張体21の集合部54に基端側から当接し、先端方向へ押圧する。これにより、拡張体21の集合部54が先端方向へ移動し、拡張体21に軸方向への引っ張り力が作用し、基端側凸部55および先端側凸部57の両方が径方向へ収縮する。
【0069】
次に、術者は、
図13(B)に示すように、外筒30をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、拡張体21の基端側凸部55が、径方向へ収縮して外筒30に収納される。これにより、拡張体21の集合部54が先端方向へ移動するが、集合部54の移動量よりも、牽引部35が集合部54から先端側へ離れていることで、移動する集合部54は牽引部35まで到達しない。このため、拡張体21の径方向への収縮が、牽引部35によって妨げられない。
【0070】
また、拡張体21の先端側凸部57を外筒30に収納し始める際には、
図13(A)に示すように、拡張体21の集合部54の基端側に押圧部34が当接して、拡張体21に軸方向への引っ張り力が作用しているため、基端側凸部55の形状が、平坦な形状に近づいている。これにより、
図13(B)に示すように、基端側凸部55を外筒30に収納する際に、基端側凸部55と外筒30の摩擦が低減される。このため、拡張体21と外筒30の破損を抑制できるとともに、基端側凸部55を収納することが容易となる。
【0071】
次に、術者は、外筒30をシャフト部31に対して先端方向へ移動させる。これにより、
図13(C)に示すように、拡張体21の先端側凸部57が、径方向へ収縮して外筒30に収納される。これにより、拡張体21の全体が、外筒30に収納される。このとき、集合部54が先端方向へ移動するが、集合部54の移動量よりも、牽引部35が集合部54から先端側へ離れていることで、移動する集合部54は牽引部35まで到達しない。このため、拡張体21の径方向への収縮が、牽引部35によって妨げられない。
【0072】
なお、
図13(B)に示すように基端側凸部55を外筒30に収納した後であって、
図13(C)に示すように先端側凸部57を外筒30に収納する前に、
図12(B)に示すように、操作部23のダイヤル41を回転させて、押圧部34により拡張体21の集合部54を先端方向へ押圧してもよい。これにより、先端側凸部57が径方向へ収縮するため、先端側凸部57を外筒30に収納する際に、先端側挟持部53と外筒30の摩擦が低減される。このため、拡張体21と外筒30の破損を抑制できるとともに、先端側凸部57を収納することが容易となる。
【0073】
術者は、拡張体21を外筒30に収納した後に、拡張体21を貫通孔Hhから抜去する。さらに、術者は、医療デバイス10全体を生体外に抜去し、処置を終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る医療デバイス10は、径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部31と、シャフト部31の内部を通って拡張体21に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有し、拡張体21は、径方向内側に窪み、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部56と、凹部56よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部57と、凹部56よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部55と、を有し、伸長機構は、拡張体21の少なくとも先端側凸部57を先端方向へ伸長させ、または径方向へ収縮させる。
【0075】
上記のように構成した医療デバイス10は、伸長機構によって拡張体21を先端方向へ伸長、または径方向へ収縮させることができるため、拡張体21を外筒30に収納する際に、拡張体21や外筒30にかかる負荷を低減できる。このため、本医療デバイス10は、拡張体21を円滑に収縮させて外筒30に収納でき、破損しにくく安全性が高い。
【0076】
また、伸長機構は、拡張体21の中心軸に沿って拡張体21の基端から先端に向かって延びる作動シャフト33と、拡張体21の先端部よりも基端側で作動シャフト33に連結されて拡張体21の先端部に基端側から当接して拡張体21を先端方向に押圧可能な押圧部34と、を有する。これにより、作動シャフト33を先端方向へ移動させることにより、拡張体21の先端部を押圧部34によって先端方向へ移動させて、拡張体21を先端方向へ伸長させることができる。
【0077】
また、伸長機構は、作動シャフト33の拡張体21よりも先端側に連結されて拡張体21の先端部に先端側から当接して拡張体21の先端部を拡張体21の基端部に対して基端方向に牽引可能な牽引部35を有する。これにより、作動シャフト33を基端方向に牽引することで、拡張体21を径方向へ拡張できる。すなわち、伸長機構は、拡張体21を拡張させるための牽引機構を兼ねることができる。
【0078】
また、医療デバイス10は、シャフト部31の基端部が連結された操作部23を有し、伸長機構は、シャフト部31の内部を通って拡張体21に直接的または間接的に接続される作動シャフト33を有し、操作部23は、作動シャフト33の基端方向への移動により反発力を蓄積可能な反発機構43と、作動シャフト33の軸方向への移動を制限する制限機構44と、制限機構44による制限を解除して、蓄積された反発力による作動シャフト33の先端方向への移動を可能とする解除機構45と、を有する。これにより、拡張体21を拡張させるために作動シャフト33を基端方向へ移動させることで、反発機構43に反発力を蓄積させて制限機構44により保持した後に、解除機構45により蓄積させた反発力を解放して、作動シャフト33を先端方向へ移動させることができる。すなわち、医療デバイス10は、拡張体21を拡張させる際のエネルギーを蓄積し、そのエネルギーを利用することで、拡張体21を先端方向へ容易に伸長させ、または径方向へ容易に収縮させることができる。
【0079】
また、医療デバイス10は、受容空間に面するように凹部56に沿って設けられた電極をさらに有する。これにより、医療デバイス10は、凹部56に生体組織を配置し、先端側凸部57と基端側凸部55の間に生体組織を挟んで拡張体21を拡張させることができる。このため、拡張体21により生体の管腔や孔を所望の大きさに拡張させた状態で、電極による焼灼を行うことができる。
【0080】
また、本発明は、医療デバイス10の使用方法をも提供する。医療デバイス10の使用方法は、径方向に拡縮可能な拡張体21と、拡張体21の基端が固定された先端部を有する長尺なシャフト部31と、シャフト部31の内部を通って拡張体21に直接的または間接的に接続される伸長機構と、を有する医療デバイス10の使用方法であって、拡張体21は、径方向内側に窪み、拡張体21の拡張時に生体組織を受容可能な受容空間を画成する凹部56と、凹部56よりも先端側に配置されて径方向外側に突出する先端側凸部57と、凹部56よりも基端側に配置されて径方向外側に突出する基端側凸部55と、を有し、伸長機構を操作して拡張体21の少なくとも先端側凸部57を収縮させ、シャフト部31が挿通されるとともに拡張体21よりも基端側に配置された外筒30を、先端側凸部57が収縮した状態の拡張体21に対して相対的に先端方向に移動させ、拡張体21を外筒30内に収納する。
【0081】
上記のように構成した医療デバイス10の使用方法は、伸長機構によって拡張体21の少なくとも先端側凸部57を収縮させて拡張体21を外筒30に収納するため、拡張体21を外筒30に収納する際に、拡張体21や外筒30にかかる負荷を低減できる。このため、本医療デバイス10の使用方法は、拡張体21を円滑に収縮させて外筒30に収納でき、かつ破損しにくく安全性が高い。
【0082】
また、伸長機構の操作により先端側凸部57が部分的に収縮した拡張体21に対して、外筒30を相対的に先端方向に移動させることで、先端側凸部57をさらに収縮させて外筒30内に収納してもよい。これにより、先端側凸部57は、伸長機構によって収縮された後に、外筒30による圧縮によって収縮される。このため、先端側凸部57を収縮させるための力が、伸長機構と外筒30による圧縮の2つに分散されるため、収納操作が容易となる。
【0083】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図14(A)に示す第1の変形例のように、医療デバイス10は、拡張体21の先端部に連結されて当該拡張体21の先端部よりも基端側へ延在する内管70と、シャフト部31の先端部に連結されて先端側へ延在する外管71とを有してもよい。内管70および外管71の内部には、作動シャフト33が摺動可能に貫通している。内管70の基端部は、外管71の内部に配置されて、外管71に対して摺動可能である。外管71は、軸方向へ延在するスリット73が形成されており、内管70は、スリット73に沿って軸方向へ移動可能な摺動凸部72が外周面に固定されている。摺動凸部72がスリット73に配置されることで、内管70と外管71の相対的な周方向への回転が制限される。このため、拡張体21の捩れを抑制できる。そして、作動シャフト33に連結される押圧部34が、内管70よりも基端側で内管70の基端部74に基端側から当接して、内管70を介して拡張体21の先端部を先端方向に押圧可能である。このため、
図14(B)に示すように、作動シャフト33を先端方向へ移動させることで、押圧部34により内管70を介して間接的に拡張体21の先端部を先端方向へ押圧し、拡張体21を先端方向へ伸長させて、拡張体21を径方向へ収縮させることができる。
【0084】
また、
図15(A)に示す第2の変形例のように、伸長機構は、作動シャフト33および先端側凸部57を連結する複数の押圧用連結部36を有してもよい。押圧用連結部36は、押圧力を伝達しやすいように曲がりにくい棒状の部材であり、拡張体21の集合部54ではなく、先端側凸部57を構成する線材部50に連結されている。押圧用連結部36は、集合部54から径方向の外側へある程度離れた位置で先端側凸部57に連結されている。これにより、
図15(B)に示すように、作動シャフト33を先端方向へ移動させることで、押圧用連結部36によって先端側凸部57を押圧して、拡張体21を先端方向へ伸長させて、拡張体21を径方向へ収縮させることができる。押圧用連結部36は、全ての線材部50の先端側凸部57に連結されることが好ましいが、一部の線材部50にのみ連結されてもよい。したがって、押圧用連結部36の数は、1つであっても、複数であってもよい。
【0085】
また、
図16(A)に示す第3の変形例のように、伸長機構は、シャフト部31内に挿通された複数の牽引ワイヤ80を有し、牽引ワイヤ80の先端部はシャフト部31から外部へ導出されて先端側凸部57に連結されてもよい。牽引ワイヤ80の基端部は、操作部23から導出されて、牽引する操作が可能である。これにより、
図16(B)に示すように、牽引ワイヤ80を牽引することで、先端側凸部57を拡張体21の中心軸に向かって牽引して、拡張体21を径方向へ収縮させることができる。牽引ワイヤ80は、全ての線材部50の先端側凸部57に連結されることが好ましいが、一部の線材部50にのみ連結されてもよい。したがって、牽引ワイヤ80の数は、1つであっても、複数であってもよい。牽引ワイヤ80は、基端側が1本であり、先端側が複数本に分岐してもよい。
【0086】
また、
図17(A)に示す第4の変形例のように、伸長機構は、作動シャフト33内に挿通された牽引ワイヤ80を有し、牽引ワイヤ80の先端部が作動シャフト33の貫通孔37から外部へ導出されて先端側凸部57に連結されてもよい。これにより、
図17(B)に示すように、牽引ワイヤ80を牽引することで、先端側凸部57を拡張体21の中心軸に向かって牽引して、拡張体21を径方向へ効果的に収縮させることができる。牽引ワイヤ80は、第4の変形例と同様に、1つであっても複数であってもよく、先端側が分岐してもよい。
【0087】
また、
図18(A)に示す第5の変形例のように、伸長機構は、シャフト部31および作動シャフト33の間に配置されてシャフト部31および作動シャフト33に対して摺動可能な押圧シャフト38を有し、押圧シャフト38の先端部に配置される押圧部34が、拡張体21の先端部にある集合部54に基端側から当接可能であってもよい。すなわち、医療デバイス10は、拡張体21を径方向へ拡張させるための作動シャフト33と独立して、拡張体21を径方向へ収縮させるための押圧シャフト38を有している。押圧シャフト38の基端部は、操作部23から導出されて、軸方向へ移動させる操作が可能である。これにより、
図18(B)に示すように、押圧シャフト38を先端方向へ移動させることで、押圧部34によって拡張体21の集合部54を先端方向へ押圧できる。これにより、拡張体21を先端方向へ伸長させて、拡張体21を径方向へ収縮させることができる。
【0088】
また、
図19(A)に示す第6の変形例のように、拡張体21を形成する各々の線材部50の先端部が、集合せずに独立していてもよい。医療デバイス10は、シャフト部31の内部に配置されてシャフト部31から先端方向へ突出する第1シャフト90と、第1シャフト90の内部に配置されて第1シャフト90から先端方向へ突出する第2シャフト91と、第1シャフト90および第2シャフト91の間のルーメンを摺動可能な牽引ワイヤ80とを有している。牽引ワイヤ80の先端は、各々の線材部50の先端側凸部57に連結される。第2シャフト91の内部には、軸方向に沿ってガイドワイヤルーメンが形成されており、ガイドワイヤ11を挿通させることができる。第2シャフト91の先端部の外周面には、先端方向へ向かってテーパ状に縮径する外周面を備えた先端部材92が固定される。先端部材92は、ダイレータの機能を有している。なお、第1シャフト90、第2シャフト91および先端部材92は、一体で形成されてもよいが、別体で形成されてもよい。
【0089】
第6の変形例の医療デバイス10を使用する際には、
図19(C)に示すように、外筒30に拡張体21を収納し、先端部材92を外筒30よりも先端側に配置した状態で、心房中隔HAの貫通孔Hhに、先端部材92から挿入する。ダイレータである先端部材92により貫通孔Hhを広げつつ、外筒30を貫通孔Hhへ滑らかに挿入できる。この後、外筒30を基端方向へ移動させることで、
図19(A)に示すように、拡張体21は、自己の復元力により径方向へ拡張できる。
【0090】
拡張させた拡張体21を回収する際には、
図19(B)に示すように、術者が伸長機構である牽引ワイヤ80を基端方向へ牽引すると、先端側凸部57が拡張体21の中心軸に向かって牽引されて、拡張体21が径方向へ収縮する。この後、
図19(C)に示すように、外筒30を先端方向へ移動させることで、牽引ワイヤ80によって径方向へ収縮させた先端側凸部57を、外筒30に滑らかに収納できる。
【0091】
また、拡張体21の構造は、特に限定されず、例えばメッシュ構造やリンク構造であってもよい。また、拡張体21は、凹部56に、電極(エネルギー伝達要素22)ではない構造が設けられてもよい。例えば、拡張体21は、凹部56の先端側挟持部53に、生体組織を切断可能な公知の切断部が配置されてもよい(例えば、国際公開第2019/009254号の
図28~29を参照)。これにより、先端側挟持部53を貫通孔Hhの先端側で拡張させて配置した状態から、拡張体21を基端側へ移動させることにより、貫通孔Hhの縁部に切開部を形成できる。切断部により形成された切開部は、生体組織の弾性的な縮小が生じ難くなるため、貫通孔Hhを広げた状態を維持することができる。
【0092】
切断部は、例えば、鋭利な形状で形成された刃面を有するカッター、電気メス、レーザーカッター等により構成することができる。また、切断部は、エネルギー伝達要素22などと組み合わせた1つの構成として、拡張体に設けられてもよい。また、切断部は、例えば、凹部56の基端側挟持部52に配置することも可能である。このような構成の場合、例えば、拡張体21を先端側へ移動させる操作を行うことで、貫通孔Hhの縁部に切開部を形成することができる。
【0093】
また、拡張体21は、凹部56に、電極(エネルギー伝達要素22)を有しないものであってもよい。この場合、拡張体21を有する医療デバイス10は、患者の心臓Hの心房中隔HAに形成された貫通孔Hhを拡張する機能を有しつつ、伸長機構によって拡張体21を先端方向へ伸長、または径方向へ収縮させることができるため、拡張体21を外筒30に収納する際に、拡張体21や外筒30にかかる負荷を低減できる。
【符号の説明】
【0094】
10 医療デバイス
11 ガイドワイヤ
20 長尺部
21 拡張体
22 エネルギー伝達要素
23 操作部
30 外筒
31 シャフト部
33 作動シャフト
34 押圧部
35 牽引部
36 押圧用連結部
38 押圧シャフト
40 ハウジング
41 ダイヤル
42 変換機構
43 反発機構
44 制限機構
45 解除機構
50 線材部
51 挟持部
52 基端側挟持部
53 先端側挟持部
54 集合部
55 基端側凸部
56 凹部
57 先端側凸部
70 内管
73 スリット
80 牽引ワイヤ