(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143041
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/065 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H02B13/065 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043367
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕哉
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017BB01
5G017EE01
(57)【要約】
【課題】ガス遮断器の開閉特性をより正確に求めることを可能にする監視装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の監視装置は、1つ以上のセンサと、演算装置と、を持つ。センサは、ガス遮断器の直線変位量を離散データとして出力する。演算装置は、前記ガス遮断器の開閉動作の開閉特性を演算する。演算装置は、前記センサから出力される前記離散データに基づいて前記開閉特性を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス遮断器の直線変位量を離散データとして出力する1つ以上のセンサと、
前記ガス遮断器の開閉動作の開閉特性を演算する演算装置と、
を備え、
前記演算装置は、前記センサから出力される前記離散データに基づいて前記開閉特性を求める、
監視装置。
【請求項2】
前記離散データは、パルス信号であり、
前記演算装置は、前記センサから出力される前記パルス信号のパルス数と、前記パルス信号における2つのパルスの時間間隔と、の少なくともいずれかを前記開閉特性として求める、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記開閉特性が正常か否かを判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記パルス数が所定の閾値であるパルス閾値未満である場合と、前記時間間隔が所定の閾値である時間間隔閾値を超える場合との少なくともいずれかの場合には、前記開閉特性が正常ではないと判定する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記演算装置は、複数の前記センサから出力される前記パルス信号に基づいて前記開閉特性を求める、
請求項2又は3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記センサは、前記ガス遮断器の閉路動作を開始してから終了するまでの間において、パルス間隔が第1のパルス間隔である第1のパルス信号と、パルス間隔が前記第1のパルス間隔とは異なる第2のパルス間隔である第2のパルス信号と、を出力する、
請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記第2のパルス間隔は、前記第1のパルス間隔よりも狭く、
前記演算装置は、前記第1のパルス信号及び第2のパルス信号の少なくともいずれかの信号に基づいて前記開閉特性を求め、前記第2のパルス信号に基づいて前記閉路動作が終了する際における前記ガス遮断器の跳ね返り又はオーバーストロークを検出する、
請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記演算装置は、開閉動作時の周囲温度に基づいて前記開閉特性を補正する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス遮断器は、電流を開閉する遮断部と、その遮断部を動作させるための操作機構とを備える。ガス遮断器では、操作機構部の部品の脱落や固渋などの異常や、遮断部を動作させるためのエネルギー源となるばねが使用中に応力を加えられることにより生じる負荷方向への塑性変形などの経年変化等、ガス遮断器を構成する部品の経年変化や異常が現れる場合がある。ガス遮断器を構成する部品に経年変化や異常が生じると、ガス遮断器の開閉特性に影響を与えるため、ガス遮断器の開閉特性は、経年変化や健全性を評価する重要な指標である。
【0003】
ガス遮断器の開閉特性は、ガス遮断器の開閉動作に伴い回転する部品(回転部)に取り付けられるポテンショメータ等によって開閉動作時の遮断部の接点のストローク(例えば、遮断部の接点の動作の開始から終了までの距離)が計測されることにより求められる。
【0004】
しかしながら、ポテンショメータは、遮断部の接点の直線動作によって発生する回転部の回転を利用して遮断部の接点のストローク(遮断部の接点の変位量)を測定しているため、回転部のガタつきや高速動作によって回転部に発生する振動等の影響を受け、正確なストロークを計測できない場合がある。さらに、回転部の回転によってはポテンショメータから出力される出力信号が小さい値となり、十分なS/N比が得られず、電気的ノイズの影響を受けやすい。そのため、ポテンショメータの出力信号からストローク(接点距離)に変換する際に、出力信号に電気的ノイズが混入していることによる変換誤差が生じてしまい、正確なストロークを計測することができない場合がある。その結果、正確な開閉特性を求めることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-293682号公報
【特許文献2】特開平9-65587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ガス遮断器の開閉特性をより正確に求めることを可能にする監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の監視装置は、1つ以上のセンサと、演算装置と、を持つ。センサは、ガス遮断器の直線変位量を離散データとして出力する。演算装置は、前記ガス遮断器の開閉動作の開閉特性を演算する。演算装置は、前記センサから出力される前記離散データに基づいて前記開閉特性を求める。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の監視システムの構成例を示す図。
【
図2】第1の実施形態の演算装置の構成例を示す図。
【
図3】第1の実施形態のストロークカーブの一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態の演算装置5の処理の流れのフローチャート。
【
図5】第2の実施形態の監視システムの構成例を示す図。
【
図6】第2の実施形態の演算装置の構成例を示す図。
【
図7】第3の実施形態の監視システムの構成例を示す図。
【
図8】第3の実施形態の演算装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の監視装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の監視装置1を、
図1に参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の監視装置1と監視装置1が取り付けられたガス遮断器10とを有する監視システム100の構成例を示す図である。
【0011】
ガス遮断器10は、変電所や開閉所などに設置される開閉装置であり、例えば、送電電流の開閉やガス絶縁開閉装置に侵入する事故電流を遮断する。例えば、ガス遮断器10は、ガスタンク11と、遮断部12と、操作ロッド13と、操作機構14と、を備える。
【0012】
ガスタンク11は、絶縁性ガスが封入されたタンクである。ガスタンク11には、内部に電気的な接点が収納されている。この電気的な接点は、ガスタンク11内に固定された固定接点部と、固定接点部に対し接離自在な可動接点部(遮断部12)とから構成される。ガス遮断器10の閉極状態は、固定接点部と遮断部12とが互いに接触した状態にあり電流通電が行われる。また、ガス遮断器10の開極状態では、固定接点部および遮断部12は互いに開離して電流を遮断する。遮断部12と固定接点部とは、例えば、操作ロッド13の中心軸状において互いに対向して配置されている。
【0013】
遮断部12は、操作ロッド13を介して操作機構14に連結される。遮断部12は、操作ロッド13と直線的に連結されている。
【0014】
操作ロッド13は、一端が遮断部12に接続され、他端が操作機構14に接続される。操作ロッド13は、操作機構14によって軸方向(長手方向)に直線的に往復運動(以下、「直線運動」という。)するように構成されている。この軸方向における直線運動によって、ガス遮断器10が閉極状態になったり、開極状態になったりする開閉動作が行われる。なお、以下の説明では、遮断部12が固定接点部に近づく方向を前方、その反対側を後方と定義して説明する。
【0015】
操作ロッド13には、複数の溝15が設けられている。例えば、
図1に示す例では、操作ロッド13には、軸方向において一定間隔Dごとに溝15が設けられている。例えば、溝15は、操作ロッド13の外周面において軸方向かつ直線上に一定間隔Dで複数設けられている。
【0016】
操作機構14は、操作ロッド13を直線運動させるものであり、操作ロッド13を前方に動作させることでガス遮断器10の閉極状態に移行させることができる。操作機構14は、操作ロッド13を後方に動作させることでガス遮断器10の開極状態に移行させることができる。操作機構14は、例えば、ばねを有しており、このばねの力をエネルギー源として操作ロッド13を動作させる。
【0017】
監視装置1は、ガス遮断器10の開閉動作を監視しており、ガス遮断器10の開閉特性を計測する。監視装置1は、この開閉特性に基づいて、ガス遮断器10の開閉動作が正常か否かを診断する機能を有してもよい。
【0018】
以下において、第1の実施形態の監視装置1の構成例を説明する。
【0019】
監視装置1は、例えば、光電センサ2と、出力回路3と、温度センサ4と、演算装置5と、を備える。光電センサ2は、「センサ」の一例である。
【0020】
光電センサ2は、ガス遮断器10の直線変位量を離散データとして出力するセンサの一例である。ガス遮断器10の直線変位量とは、操作ロッド13の軸方向における変位量である。離散データとは、例えばパルス信号である。
【0021】
光電センサ2は、投光部から操作ロッド13に対して光を照射し、操作ロッド13により反射した光の変化量を受光部で検出して出力信号を得る。光電センサ2と操作ロッド13の外周面(反射面)までの距離が変化すると、反射光の量が変化することで出力信号も変化する。そのため、ガス遮断器10の開閉動作により操作ロッド13が移動して、溝15が光電センサ2の正面に位置した場合では、光電センサ2から操作ロッド13までの距離が変化する。このことから、光電センサ2の正面を溝15が繰り返し通過することでパルス波のような出力信号、すなわちパルス信号を得ることができる。なお、光電センサ2は、センサヘッドにアンプを内蔵したアンプ内蔵型であってもよいし、センサヘッドとアンプとを分離したアンプ分離型であってもよい。光電センサ2は、例えばガスタンク11にボルト等で固定される。ガス遮断器10の直線変位量を離散データとして出力するセンサであれば、光電センサ2以外のセンサであってもよい。
【0022】
出力回路3は、光電センサ2からのパルス信号を演算装置5に出力する。例えば、出力回路3は、例えばアンプの一例であってもよい。出力回路3は、パルス信号をAD変換せずに、アナログ信号のまま演算装置5に出力する。なお、出力回路3は、パルス信号に含まれるノイズを低減するフィルタなどを有してもよい。
【0023】
温度センサ4は、ガス遮断器10の周囲温度を測定する。温度センサ4は、演算装置5に接続され、測定した周囲温度の情報を演算装置5に出力する。
【0024】
演算装置5は、離散データに基づいて、ガス遮断器10の開閉動作の開閉特性を演算する。ガス遮断器10が開閉動作を行う際に、操作機構14からのエネルギーが操作ロッド13に伝達される。電流を開閉する遮断部12は、操作ロッド13と直線的に連結されているため同時に直線運動を行う。そのため、演算装置5は、操作ロッド13の直線運動に係る直線変位量に基づいて、正確なガス遮断器10の開閉特性を求めることができる。
【0025】
図2は、第1の実施形態の演算装置5の構成例を示す図である。
図2に示すように、演算装置5は、例えば、変位量計測部51と、時間間隔計測部52と、判定部53とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0026】
変位量計測部51は、光電センサ2から出力されるパルス信号のパルス数をカウントする。例えば、変位量計測部51は、遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間において、光電センサ2から出力されるパルス信号のパルス数をカウントする。遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間とは、例えば、閉路動作が開始してから閉路動作が終了するまでの間である。遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間に操作ロッド13(遮断部12)が移動する距離を全ストロークと称する場合がある。
【0027】
変位量計測部51は、カウントしたパルス数Nに基づいて、操作ロッド13の変位量ΔXを求めてもよい。例えば、変位量計測部51は、パルス信号のパルス数をカウントし、カウントした1パルスごとに溝の間隔D(既知)の距離を加算していくことで操作ロッド13の変位量ΔXを求めてもよい。変位量計測部51がカウントしたパルス数Nは、開閉特性の一例である。変位量計測部51が計測した変位量ΔXは、開閉特性の一例である。変位量計測部51は、パルス数N及び変位量ΔXの少なくともいずれかを判定部53に出力する。
【0028】
時間間隔計測部52は、光電センサ2から出力されるパルス信号における2つのパルスの時間間隔ΔTを計測する。この時間間隔ΔTは、例えば、第1のパルスP1と第2のパルスP2との時間間隔である。例えば、第1のパルスP1の出力された時間がt1、第2のパルスP2の出力された時間がt2である場合には、時間間隔ΔTは、t1とt2との差の絶対値である。第1のパルスP1と第2のパルスP2とは、連続したパルスでなくてもよい。一例として、第1のパルスP1は、ガス遮断器10の閉路動作が開始してから、全ストロークの10%の距離を操作ロッド13(遮断部12)が移動した際に光電センサ2から出力されるパルスである。第2のパルスP2は、遮断部12が固定接点と接触する位置(ガス遮断器10の接点が入になる位置)に到達した際に光電センサ2から出力されるパルスである。
【0029】
例えば、ガス遮断器10の閉路動作が開始してから第1のパルスP1が何番目に現れるかの情報が予め時間間隔計測部52に格納されている。例えば、第1のパルスP1が出現する際のパルス数のカウント値C1が時間間隔計測部52に格納されている。同様に、ガス遮断器10の閉路動作が開始してから第2のパルスP2が何番目に現れるかの情報が予め時間間隔計測部52に格納されている。例えば、第2のパルスP2が出現する際のパルス数のカウント値C2が時間間隔計測部52に格納されている。時間間隔計測部52は、光電センサ2から出力されるパルス信号において、パルスが出力された時間(以下、「パルス時間」という。)と、そのパルスが出力された際のカウント値とをパルスごとに関連付けて記録していき、カウント値C1に関連付けられたパルス時間(t1に相当)と、カウント値C2に関連付けられたパルス時間(t2に相当)とを読み取る。そして、時間間隔計測部52は、読み取った2つのパルス時間の差を求めることで時間間隔ΔTを求めることができる。時間間隔計測部52は、計測した時間間隔ΔTの情報を判定部53に出力する。
【0030】
ただし、これに限定されず、時間間隔計測部52は、第1のパルスP1を検出してから第2のパルスを検出するまでの時間を計測することで時間間隔ΔTを求めてもよい。
【0031】
判定部53は、開閉特性が正常か否かを判定する。開閉特性が正常か否かを判定することは、ガス遮断器10の開閉動作が正常か否かを判定すること(以下、「診断」という。)と同義である。例えば、判定部53は、パルス数Nが所定の閾値であるパルス閾値Nth未満である場合と、時間間隔ΔTが所定の閾値である時間間隔閾値ΔTthを超える場合との少なくともいずれかの場合には、開閉特性が正常ではないと判定する。開閉特性が正常ではない場合とは、例えば、開閉特性が異常である場合や異常の傾向がある場合である。
【0032】
パルス閾値Nthは、例えば、開閉特性が正常である場合において、動作開始前の位置から動作終了後の位置までの距離を移動するまでの間において光電センサ2から出力されるパルス数の下限値である。
【0033】
例えば、時間間隔閾値ΔTthは、第1時間間隔閾値ΔTth1と第2時間間隔閾値ΔTth2とを有する。第1時間間隔閾値ΔTth1は、第2時間間隔閾値ΔTth2よりも小さい値である。判定部53は、時間間隔計測部52によって計測された時間間隔ΔTが第1時間間隔閾値ΔTth1以上であって、第2時間間隔閾値ΔTth2未満の場合には、異常の傾向があると判定してもよい。判定部53は、時間間隔計測部52によって計測された時間間隔ΔTが第2時間間隔閾値ΔTth2以上の場合には、経年変化や突発的な原因による異常が発生したこと、又は、その可能性があると判定してもよい。例えば、第1時間間隔閾値ΔTth1は、異常の傾向を判定するための閾値である。例えば、第2時間間隔閾値ΔTth2は、経年変化や突発的な原因による異常の有無を判定するための閾値である。第1時間間隔閾値ΔTth1及び第2時間間隔閾値ΔTth2は、予め工場内で得られたデータから設定されてもよい。
【0034】
以下に、
図3を用いてガス遮断器10における開閉特性の診断方法について説明する。
図3は、第1の実施形態のストロークカーブの一例である。ストロークカーブは、開閉特性の一例である。まず、パルス数Nを用いた開閉特性の診断方法について、説明する。
【0035】
ストロークカーブとは、開閉動作によりガス遮断器10の遮断部12の接点およびその他可動部の変位を時系列プロットしたものをストロークカーブと呼ぶ。開閉特性が正常である場合には、ガス遮断器10の閉路動作は、
図3に示すストロークカーブSC1のような波形で表される。
【0036】
第1の実施形態では、接点及び可動部の変位量(ストローク)に対応した離散データが光電センサ2から出力される。第1の実施形態における操作ロッド13の溝15の間隔は一定であることから、演算装置5は、光電センサ2から出力されるパルスの数をカウントして1パルスごとに溝15の間隔である一定距離を加算していくことで操作ロッド13の変位量ΔXを測定することができる。このようにして求めた変位量ΔXとパルスの発生時間から、演算装置5は、
図3に示すような階段状の離散的な出力を得ることができ、ストロークカーブSC1のような開閉特性を得ることができる。
【0037】
開閉動作を行うためのエネルギー源である操作機構14のばねのエネルギー不足や部品の固渋、破損等により摺動・回転部の摩擦力が増加したことによるエネルギーロスが生じた場合(異常時)には、接点及び可動部が全ストロークの最後まで到達せず、開閉特性はストロークカーブSC2のような特性となる。この場合には、光電センサ2の正面を通過した溝15の数が、正常時よりも少なくなり、それに伴い光電センサ2から出力されるパルスの数も少なくなる。そのため、正常時には
図3の離散データ300aに示すパルス信号が出力されるのに対して、異常時には
図3に示すような離散データ300bに示すパルス信号が出力される。したがって、正常時に光電センサ2から出力されるパルスの数(パルス閾値Nth)を予め認識しておき、ガス遮断器10の動作時に光電センサ2から出力されるパルス数と、パルス閾値Nthとを比較することで、開閉動作が異常(不完全な動作)であるであるか否かを判定することができる。
【0038】
次に、時間間隔ΔTを用いた開閉特性の診断方法について説明する。ガス遮断器10では操作機構14の可動部分に塗布されているグリースの固着により動作がしにくくなることや、操作ロッド13および遮断部12を動作させるためのエネルギー源となるばねのばね力低下などの要因により、操作ロッド13の動作速度が低下するといった異常が考えられる。操作ロッド13の動作速度が低下すると、光電センサ2から出力されるパルス信号のパルス間隔が長くなることから、そのパルス間隔を診断することで、ガス遮断器の評価が可能となる。
【0039】
例えば、ガス遮断器10の閉路動作において、接点及び可動部がガス遮断器10の動作開始前の位置から動作終了後の位置までの距離(全ストローク)を移動する際に光電センサ2から出力されるパルスのうち、第1のパルスP1と第2のパルスP2との間の時間間隔ΔTが正常時の時間間隔ΔT1と比較して長くなる。したがって、演算装置5は、時間間隔ΔTが正常時の時間間隔ΔT1からどの程度長くなっているかを診断することで、異常傾向にあるのか、又は異常が発生している状態であるのかを判別することができる。また、演算装置5は、時間間隔ΔTのトレンドを蓄積し、時間間隔ΔTが遅くなった場合にアラームを上げるといったように運用を行いながら時間間隔閾値ΔTthを決定して管理していくことも可能である。
【0040】
以下、第1の実施形態に係る開閉特性の診断処理の流れを、
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態の演算装置5の処理の流れのフローチャートである。
【0041】
演算装置5は、閉路動作が開始されると、光電センサ2から出力されるパルス信号のパルス数の計数(カウント)を行うとともに、その計数を行った際の時間の記録をパルスごとに行う(ステップS101)。演算装置5は、閉路動作が終了したか否かの判定を行う(ステップS102)。
【0042】
演算装置5は、閉路動作が終了していないと判定した場合には、再度ステップS101を実行する。演算装置5は、ステップS102において、閉路動作が終了したと判定した場合には、閉路動作を開始してから閉路動作が終了するまでの間に計数したパルス数Nがパルス閾値Nth未満であるか否かを判定する(ステップS102)。演算装置5は、パルス数Nがパルス閾値Nth未満であると判定した場合には、開閉特性が正常ではないと判定する(ステップS103)。例えば、演算装置5は、パルス数Nがパルス閾値Nth未満であると判定した場合には、ステップS104に移行する。閉路動作が不完全であると判定する。演算装置5は、パルス数Nがパルス閾値Nth未満ではないと判定した場合には、ステップS105に移行する。
【0043】
ステップS104では、演算装置5は、第1のパルスP1と第2のパルスP2との時間間隔ΔTを求め、その時間間隔ΔTが時間間隔閾値ΔTthを超えるか否かを判定する。なお、ステップS104の処理は、ステップS105の処理と同様の処理である。
【0044】
ステップS104において、演算装置5は、時間間隔ΔTが時間間隔閾値ΔTthを超えると判定した場合には、閉路動作が正常ではない(異常がある又は異常の傾向がある)と判定する(ステップS106)。例えば、ステップS106において、演算装置5は、操作機構14によるエネルギーロスが発生して閉路動作が不完全である可能性があり、かつ、操作ロッド13の動作速度に起因する異常が発生している可能性があると判定する。
【0045】
ステップS104において、演算装置5は、時間間隔ΔTが時間間隔閾値ΔTth以下であると判定した場合には、閉路動作が正常ではないと判定する(ステップS107)。例えば、ステップS107において、演算装置5は、操作機構14によるエネルギーロスが発生して閉路動作が不完全である可能性があると判定する。
【0046】
ステップS105において、演算装置5は、時間間隔ΔTが時間間隔閾値ΔTthを超えると判定した場合には、閉路動作が正常ではないと判定する(ステップS108)。例えば、ステップS108において、演算装置5は、操作ロッド13の動作速度に起因する異常が発生している可能性があると判定する。
【0047】
ステップS105において、演算装置5は、時間間隔ΔTが時間間隔閾値ΔTth以下であると判定した場合には、閉路動作が正常であると判定する(ステップS109)。
【0048】
以上説明した第1の実施形態の監視装置1は、ガス遮断器10の直線変位量を離散データとして出力する1つ以上の光電センサ2と、ガス遮断器10の開閉動作の開閉特性を演算する演算装置5と、を備える。そして、演算装置5は、光電センサ2から出力される離散データに基づいて開閉特性を求めることで、開閉特性をより正確に求めることを可能にする。
【0049】
また、第1の実施形態の演算装置5は、求めた開閉特性に応じて、異常が発生している箇所を判別してもよい。例えば、演算装置5は、開閉特性の一例として求めたパルス数Nに異常がある場合には、操作機構14のエネルギー不足や部品の固渋、破損等により摺動・回転部の摩擦力が増加したことによるエネルギーロスが発生していると判定してもよい。例えば、演算装置5は、開閉特性の一例として求めたパルス間隔ΔTに異常がある場合には、操作機構14の可動部分に塗布されているグリースの固着により動作がしにくくなることや操作機構14のばね力の低下により、操作ロッド13の動作速度が低下していると判定してもよい。
【0050】
第1の実施形態では、ガス遮断器10の開閉特性は、温度変化によりグリースの粘度が変化したり、開閉動作時に摺動する部分に使用されているパッキンが伸縮して摩擦力が変化したりする場合があるため、操作ロッド13の動作速度に変化が現れる。このため、演算装置5は、ガス遮断器10の動作時の周囲温度変化により、パッキンが収縮して摩擦力が変化するため、開閉特性を周囲温度により補正してもよい。例えば、演算装置5は、温度センサ4から得られる周囲温度に基づいて、開閉特性を温度補正してもよい。この温度補正は、例えば同じ構造のガス遮断器10を用いて、予め周囲温度を変化させた場合の開閉特性を取得し、温度変化による開閉特性の変化量を求めておくことで実現できる。また、演算装置5は、ガス遮断器10の据付後の動作時における周囲温度と、その際の開閉特性とを事前に記録していき、一定期間のデータから補正値を決定してもよい。そして、演算装置5は、この補正値に基づいて、開閉特性を補正してもよい。
【0051】
第1の実施形態の監視装置1では、光電センサ2から出力されるパルスが表す距離を把握していれば全ストロークを測定せずとも操作ロッド13の変位量を知ることができる。溝15の位置は不変かつ、パルスをカウントすることで直線変位量をそのまま測定している事から、回転変位を用いた測定方法のように回転部のガタや振動の影響がなく、正確な変位量を測定することができる。このため、監視装置1は、パルスの数とパルス間隔の少なくともいずれかにより正確な開閉特性が取得できる。従って、連続値で測定したセンサの出力値を変位量に変換する後処理や連続値のストロークカーブ診断に必要であった機械的および電気的な変換や波形処理といった総合的なアルゴリズムが必要なくなるため、データ処理が容易になる。
【0052】
第1の実施形態の監視装置1では、操作ロッド13上の溝15の有無を光電センサ2で計測しているため、その出力は0か1の2通りである。連続値による測定方法では電圧値をそのまま測定しているため、計測回路に電気ノイズが発生した場合は出力にそのまま電気ノイズが乗ってしまい、誤差要因となる。特に測定信号が小さく、SN比が十分でない場合には、その影響は顕著となり、操作ロッド13の変位量が正しく測定できない可能性がある。一方、第1の実施形態では測定回路上に電気ノイズが発生したとしても、パルスとしてカウントされる閾値を超えなければノイズの影響は出ないため、電気ノイズに強い。
【0053】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の監視装置1Aについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0054】
第2の実施形態の監視装置1Aは、第1の実施形態と比較して、複数の光電センサ2を用いて閉路動作時における跳ね返りやオーバーストロークを計測する点が異なる。
図5は、第2の実施形態の監視装置1Aと監視装置1Aが取り付けられたガス遮断器10Aとを有する監視システム100Aの構成例を示す図である。
【0055】
ガス遮断器10Aは、変電所や開閉所などに設置される開閉装置であり、例えば、送電電流の開閉やガス絶縁開閉装置に侵入する事故電流を遮断する。例えば、ガス遮断器10Aは、ガスタンク11と、遮断部12と、操作ロッド13Aと、操作機構14と、を備える。
【0056】
操作ロッド13Aは、一端が遮断部12に接続され、他端が操作機構14に接続される。操作ロッド13Aは、第1の実施形態と同様に、直線運動するように構成されている。操作ロッド13Aは、複数の溝15が設けられている。例えば、
図5に示す例では、操作ロッド13Aは、第1の実施形態と同様に第1の領域130に複数の溝15が形成される。操作ロッド13Aは、さらに、閉路動作が終了する部分付近である第2の領域131において、軸方向の異なる2つの直線上のそれぞれに複数の溝15が交互に配置されている。第2の領域131は、例えば、閉路動作が終了する場合に、複数の光電センサ2の正面を通過する領域である。軸方向の異なる2つの直線上のうち、一方の直線上に配置された2つずつの溝15(第1の溝)が光電センサ2aの正面を通過する領域に配置され、他方の直線上に配置された2つずつの溝15(第2の溝)が光電センサ2bの正面を通過する領域に配置される。例えば、第2の溝は、第1の溝が配置された外周面の反対側に配置されている。
【0057】
監視装置1Aは、ガス遮断器10の開閉動作を監視しており、ガス遮断器10の開閉特性を計測し、この開閉特性に基づいて、ガス遮断器10の開閉動作が正常か否かを診断する機能を備える。
【0058】
以下において、第2の実施形態の監視装置1Aの構成例を説明する。
【0059】
監視装置1Aは、例えば、複数の光電センサ2a,2bと、出力回路3と、温度センサ4と、演算装置5と、を備える。光電センサ2a,2bは、それぞれ光電センサ2と同様である。なお、光電センサ2aと光電センサ2bとを区別しない場合には、単に光電センサ2と称する場合がある。
【0060】
出力回路3Aは、光電センサ2aからのパルス信号と、光電センサ2bからのパルス信号とのそれぞれを、AD変換せずに、アナログ信号のまま演算装置5Aに出力する。
【0061】
演算装置5Aは、離散データに基づいて、ガス遮断器10Aの開閉動作の開閉特性を演算する。演算装置5Aは、操作ロッド13Aの直線運動に係る直線変位量に基づいて、正確なガス遮断器10Aの開閉特性を求めることができる。
【0062】
演算装置5Aは、例えば、変位量計測部51と、時間間隔計測部52と、判定部60と、を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASICFPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAM等により構成される。
【0063】
変位量計測部51Aは、遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間において、光電センサ2(光電センサ2a及び光電センサ2b)から出力されるパルス信号のパルス数をカウントする。なお、変位量計測部51Aは、光電センサ2a及び光電センサ2bから出力されるパルス信号のパルス数をそれぞれカウントしてもよい。変位量計測部51Aによって遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間において計測された光電センサ2a及び光電センサ2bから出力されるパルス信号のパルス数をパルス数Nsと称する場合がある。
【0064】
時間間隔計測部52は、光電センサ2から出力されるパルス信号における2つのパルスの時間間隔ΔTを計測する。時間間隔ΔTの計測方法は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。第1のパルスP1及び第2のパルスP2は、光電センサ2aから出力されるパルスであってもよいし、光電センサ2bから出力されるパルスであってもよいし、一方が光電センサ2aからのパルスで他方が光電センサ2bからのパルスであってもよい。
【0065】
判定部60は、第1の実施形態の判定部53と同様の処理を実施してもよい。例えば、判定部60は、パルス数Nsとパルス閾値Nthとを比較することで開閉特性の異常の有無を判定してもよい。例えば、判定部60は、光電センサ2a及び光電センサ2bのいずれかから出力される2つのパルスの時間間隔ΔTと、時間間隔閾値ΔTthとを比較することで開閉特性が正常であるか否かを判定してもよい。
【0066】
判定部60は、全ストロークの動作が終了する可動部の位置(以下、「閉路エンド位置」という。)に相当するn番目のパルス(閉路動作が終了する際に光電センサ2から出力されるパルス)が出力されない場合、もしくは、光電センサ2bからのパルスが2個検出されていなければ不完全動作していると判定してもよい。
【0067】
図5に示す例では、判定部60は、n番目のパルスが出力された直後に、光電センサ2aからパルスが出力された場合には、可動部が跳ね返り方向に移動していると判定し、光電センサ2bからパルスが出力された場合には可動部が閉路エンド位置より突っ込む(オーバーストローク)方向に変位していると判定する。なお、変位量計測部51Aは、跳ね返り方向ではパルス数Nsを減算、オーバーストローク方向ではパルス数Nsを加算していくことで変位量ΔXを計算することができる。
【0068】
図5に示す例では、判定部60は、n番目のパルスが出力された後に、光電センサ2a及び光電センサ2bのうち、同じ光電センサから3回連続でパルスが出力された場合には、3回目のパルス時に変位方向が変化していると判定する。
図5に示す例では、判定部60は、n番目のパルスが出力された後に、光電センサ2a及び光電センサ2bのうち、パルスを出力する光電センサが2回連続で切り替わった場合には2回目の切り替わり時に変位方向が変化していると判定する。したがって、変位量計測部51Aは、判定部60によって変位方向が変化していると判定された場合には、パルスの加減算を変更する。また、変位量計測部51Aは、跳ね返り量とオーバーストローク量の限度位置を予め決めておき、限度位置を超えた場合には異常のアラームを出力してもよい。変位量計測部51Aは、n番目のパルスが出力された後に光電センサ2から出力されるパルス数に基づいて、跳ね返り量やオーバーストローク量を求めることができる。
【0069】
第2の実施形態に係る開閉特性の診断処理の一例は、
図4に示す動作と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
また、可動部の跳ね返り量は、経年劣化により操作機構のばね力が弱まっていることの診断に重要であり、突っ込み量(オーバーストローク)は、開閉動作時の衝撃を緩和するためのオイルダンパーの油漏れ等の故障の診断に重要である。通常、跳ね返り量やオーバーストローク量は全ストロークの1/100程度のごく小さな変位量であるため、連続値による評価では電気ノイズの影響に弱い。ただし、本実施形態では、連続値による評価ではなく、操作ロッド13上の溝15の有無を計測する光電センサ2の計測結果による評価であるため、電気ノイズに強い。
【0071】
以上説明した第2の実施形態の監視装置1Aでは、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、SN比を高い値に保ち閉路動作時における跳ね返り量やオーバーストローク量を計測することができる。
【0072】
<第3の実施形態>
第3の実施形態の監視装置1Bについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0073】
第3の実施形態の監視装置1Bは、第1の実施形態と比較して、溝15が配置された間隔がすべて一定ではなく、操作ロッドの領域に応じて変化させる点が異なる。
図7は、第3の実施形態の監視装置1Bと監視装置1Bが取り付けられたガス遮断器10Bとを有する監視システム100Bの構成例を示す図である。
【0074】
ガス遮断器10Bは、変電所や開閉所などに設置される開閉装置であり、例えば、送電電流の開閉やガス絶縁開閉装置に侵入する事故電流を遮断する。例えば、ガス遮断器10Bは、ガスタンク11と、遮断部12と、操作ロッド13Bと、操作機構14と、を備える。
【0075】
操作ロッド13Bは、一端が遮断部12に接続され、他端が操作機構14に接続される。操作ロッド13Bは、第1の実施形態と同様に、直線運動するように構成されている。操作ロッド13Bは、複数の溝15が設けられている。操作ロッド13Bでは、第1の実施形態や第2の実施形態と比較して、より変化量ΔXを精度よく測定したい部分(以下、「重要部分」という。)の溝15の間隔をその他の部分よりも狭くし、かつ溝15の数を増加させている。例えば、操作ロッド13Bは、第1の領域130、第2の領域131及び第3の領域132を有しており、それぞれの領域において、複数の溝が配置されている。この第1の領域130、第2の領域131及び第3の領域132は、外周面において、軸方向の同一の直線上の領域である。この3つの領域のうち、閉路動作が終了する場合に光電センサ2の正面を通過する領域である第2の領域131と、閉路動作が開始する場合に光電センサ2の正面にある領域である第3の領域132と、が重要部分である。この重要部分の溝15の間隔は、第1の領域130に配置された溝15の間隔よりも狭い。これは、重要部分の分解能をその他の領域よりも高くしていることを意味する。このように、溝15の間隔を調整することで、変化量ΔXの測定の分解能を調整することができる。すなわち、溝15の間隔を変更することで、パルス出力のサンプリング周波数を変更できる。
【0076】
以下において、第3の実施形態の監視装置1Bの構成例を説明する。
【0077】
監視装置1Bは、例えば、複数の光電センサ2と、出力回路3と、温度センサ4と、演算装置5Bと、を備える。
【0078】
第3の実施形態の光電センサ2は、ガス遮断器10Bの閉路動作を開始してから終了するまでの間において、パルス間隔が第1のパルス間隔である第1のパルス信号と、パルス間隔が第1のパルス間隔とは異なる第2のパルス間隔である第2のパルス信号と、を出力する。例えば、第2のパルス間隔は、第1のパルス間隔よりも狭い。演算装置5Bは、1のパルス信号第及び第2のパルス信号の少なくともいずれかの信号に基づいて開閉特性を求め、第2のパルス信号に基づいて閉路動作が終了する際におけるガス遮断器10Bの跳ね返り又はオーバーストロークを検出する。例えば、第1のパルス信号は、第1の領域130の溝15に応じたパルス信号である。したがって、第1のパルス間隔は、第1の領域130に配置されている溝15の間の間隔である。例えば、第2のパルス信号は、第2の領域131及び第3の領域132の溝15に応じたパルスを出力するパルス信号である。したがって、第2のパルス間隔は、第2の領域131及び第3の領域132に配置されている溝15の間の間隔である。
【0079】
第3の実施形態の演算装置5Bは、例えば、変位量計測部51Bと、時間間隔計測部52と、判定部70とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASICFPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAM等により構成される。
【0080】
変位量計測部51Bは、遮断部12の接点の動作が開始してから終了するまでの間において、光電センサ2から出力されるパルス信号のパルス数Nをカウントする。変位量計測部51Bは、光電センサ2から出力される複数のパルスのそれぞれが第1の領域130、第2の領域131及び第3の領域132のどの領域の溝に相当するパルスであるかを特定できる情報を予め有している。例えば、変位量計測部51Bは、第1の領域に配置されている複数の溝15に相当するパルスが何番目から何番目に光電センサ2から出力され、第2の領域に配置されている溝に相当するパルスが光電センサ2から何番目から何番目に出力され、第3の領域に配置されている溝に相当するパルスが何番目から何番目に光電センサ2から出力されるのかという情報を予め備えている。したがって、変位量計測部51Bは、閉路動作を行うにあたって、1パルスをカウントするごとにそのカウント値を記録することで、3つの領域のうち、どの領域の溝に相当するパルスかを判別できる。そして、変位量計測部51Bは、3つの領域のそれぞれにおいて、1パルスで加算する変位量を定めておくことで第1の実施形態と同様に変位量ΔTを直接求めることが可能である。
【0081】
判定部70は、判定部53又は判定部60と同様の処理を行う。
【0082】
ストロークカーブSC1は、全ストロークを同じサンプリング周波数にて測定する必要があった。そのため、機器特有の重要部分を細かく測定するためには、サンプリング周波数を高くして全ストロークを測定しなければならなかったが、その場合ではデータ量が膨大となり、メモリの増大によってコストがかかる。第3の実施形態では、ストロークカーブSC1における重要部分を溝の間隔を狭くして細かく測定し、ストロークカーブSC1の中央部(第1の領域130)のような直線部分は単なる等速運動であり、波形の診断上重要でない事から溝と溝の間隔を長くして測定する。すべての溝が等間隔ではなくなるが、領域ごとに1パルスで加算する変位量を定めておくことで第1の実施形態と同様に変位量ΔXを直接求めることが可能である。また、重要部分の溝と重要ではない部分の溝は、軸方向における同一の直線上に配置されていなくてもよく、例えば、操作ロッド13Bの反対側に一定間隔で溝を配置し、一定間隔の溝と重要部分において一定間隔よりも狭く配置してある溝との両方を用いて変位量ΔXを測定してもよい。演算装置5Bが検出するパルス信号は、サンプリング周波数を変化させて測定されたパルス信号と、一定のサンプリング周波数で測定されたパルス信号との両方を含む。
【0083】
ここで、例えば、ストロークの動き出し(第3の領域132)は全ストローク中、第2の領域131が0%の位置する測定点から10%までの測定点、第2の領域131は90%から100%と定義してもよい。演算装置5Bは、第3の領域132又は第2の領域131におけるパルスの数とパルス間隔を計測することで動作の動き出しにかかる部品の摩擦力や動作終了時のダンバーの制動の様子を診断することができる。
【0084】
第3の実施形態に係る開閉特性の診断処理の一例は、
図4に示す動作と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
以上説明した第3の実施形態の監視装置1Bでは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を奏するとともに、ストロークの重要部分において正確な開閉特性を取得しつつ、測定データの容量を減らすことができるので、コストの低減が可能となる。また、監視装置1Bは、オーバーストローク量や跳ね返り量といった微小な変位量をより細かな値で正確に測定することが出来るので診断の高度化につながる。
【0086】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ガス遮断器の直線変位量を離散データとして出力する1つ以上の光電センサと、そのガス遮断器の開閉動作の開閉特性を演算する演算装置と、を備え、その演算装置は、光電センサから出力される離散データに基づいて開閉特性を求めることにより、ガス遮断器の開閉特性をより正確に求めることができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B…監視装置、2…光電センサ、5,5A,5B…演算装置、10…ガス遮断器、11…ガスタンク、12…遮断部、13…操作ロッド、14…操作機構、15…溝、51…変位量計測部、52…時間間隔計測部、53,60,70…判定部、100,100A,100B…監視システム