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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143123
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】吸湿材および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/28 20060101AFI20220926BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D53/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043465
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(71)【出願人】
【識別番号】596049164
【氏名又は名称】公益財団法人豊田理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】野上 敏材
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏幸
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA08
4D052CF00
4D052HA09
4D052HA49
(57)【要約】
【課題】 金属腐食性の低い吸湿材および吸湿材を用いた装置を提供する。
【解決手段】 吸湿材は、特定の環状第4級カチオンと、リン酸エステルアニオンおよび/または特定のジカチオン性第4級アンモニウムカチオンとリン酸エステルアニオンとからなる塩を含有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと、リン酸エステルアニオンとから構成される塩を含む吸湿材。
【化1】
(式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではない。n1およびm1は、それぞれ独立して、1~6の整数である。X11は、酸素原子、-N(R13)-(ただし、R13は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、または、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【化2】
(式(2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではない。R21~R23の2つおよびR24~R26の2つはそれぞれ互いに結合して、環を形成していてもよい。n2およびm2は、それぞれ独立して、1~6の整数である。Xは、単結合、酸素原子、-N(R27)-(ただし、R27は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、炭素数1~3のアルキレン基、または、炭素数1~3のアルキレンオキシ基である。)
【請求項2】
前記リン酸エステルアニオンが、式(3)で表されるアニオンを含む、請求項1に記載の吸湿材。
【化3】
(式(3)中、R31は、水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基であり、R32は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基である。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸湿材を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材および装置に関する。特に、空調機や吸収冷凍機等の装置に用いられる吸湿材に関する。
【背景技術】
【0002】
デシカント式の空調機においては、空気中の水蒸気を吸収する特性をもつ液体状の吸湿材が使用される。例えば、非特許文献1~2には、塩化リチウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、トリエチレングリコールを用いた液体状の吸湿材が開示されている。また、特許文献1~5および非特許文献3~7には、イオン液体を用いた液体状の吸湿材が開示されている。さらに、上記イオン液体として、臭化物アニオンおよびテトラフルオロボレート、リン酸ジメチル陰イオン、メチル硫酸陰イオンと、イミダゾリウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオンとの塩が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-505586号公報
【特許文献2】特開2017-221940号公報
【特許文献3】特開2017-154076号公報
【特許文献4】特開2016-052614号公報
【特許文献5】特表2017-538571号公報
【特許文献6】特開2020-006349号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】L. Mei, Y. I. Dai, A technical review on use of liquid-desiccant dehumidification for air-conditioning application, Renewable and Sustainable Energy Reviews, 2008,12,662-689.
【非特許文献2】R. 0. Singh, V. K. Mishra, R. K. Das, Desiccant materials for air condition in applications - A review, lop Conference Series. Materials Science and Engineering, 404 (2018),012005.
【非特許文献3】L. E. Ficke, J. F. Brennecke, Interactions of Ionic Liquids and Water, J. Phy. Chem. B 114 (2010) 10496-10501.
【非特許文献4】L. Jing, Z. Danxing, F. Lihua, W. Xianghong, D. Li, Vapor Pressure Measurement of the Ternary Systems H20 + LiBr + [Dmim]Cl, H20 + LiBr + [Dmim]BF4, H20 + LiCl + [Dmim]Cl, and H20 + LiCl + [Dmim]BF4, J. Chem. Eng. Data 56 (2011) 97-101.
【非特許文献5】Y. Luo, S. Shao, H. Xu, C. Tian, Dehumidification performance of [EMIM]BF4, Appl. Thermal Eng. 31 (2011) 2722-2777.
【非特許文献6】Y. Luo, S. Shao, F. Qin, C. Tian, H. Yang, Investigation on feasibility of ionic liquids used in solar liquid desiccant air conditioning system, Solar Energy 86 (2012) 2718-2724.
【非特許文献7】Watanabe, H. ; Komura, T.; Matsumoto, R.; Ito, K.; Nakayama, H.; Nokami, T.; Itoh, T. Design of Ionic Liquids as Liquid Desiccant for an Air Conditioning System, Green Energy & Environment, 4 (2019), 139-145.
【非特許文献8】Maekawa, S.; Matsumoto, R.; Ito, K.; Nokami, T.; Li, J-X.; Nakayama, H.; Itoh, T.* Design of Quaternary Ammonium Type-Ionic Liquids as Desiccants for an Air-Conditioning System, Green Chemical Engineering, 1 (2020), 109-116.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1~2に開示されている塩化リチウム水溶液および塩化カルシウム水溶液は、安定して低湿度の空気を得ることができるという利点がある。しかしながら、一般に、これらハロゲン化物イオンのアルカリ金属の水溶液およびアルカリ土類金属の水溶液は、金属腐食性がある。そのため、これらの物質を吸湿材に適用した場合には、空調機や吸収冷凍機等の装置における吸湿材が接する部分に、チタン等の耐食性の高い金属を用いなければならないという問題がある。
また、特許文献1~5および非特許文献4~5に開示される吸湿材は、イミダゾリウムカチオンからなるイオン液体と構成アニオンとして、臭化物アニオンおよびテトラフルオロボレーアニオンイオンが用いられている。臭化物アニオンおよびテトラフルオロボレーアニオンは、金属腐食性がある点に加えて、毒性も有しており、取り扱いが難しいという問題もある。特許文献5ではコリニウムカチオンと乳酸アニオンからなるイオン液体の吸湿性が高いことが報告されているが、乳酸アニオンは不安定で長期の使用に耐えない。非特許文献3ではイミダゾリウムイオン液体の吸湿性は主としてアニオンに依存することが報告されており、アセタートアニオンの吸水性が良いことも報告しているが、カチオンはイミダゾリウムカチオンしか検討されておらず、イミダゾリウムイオン液体の水溶液は銅などの金属腐食性が大きいことがわかっている(非特許文献7)。また、アセタートアニオンのイオン液体は不安定で長期の使用に耐えないことがわかっている。このような問題を解決するために,非特許論文7および8ではアニオンをジメチルリン酸やメチル硫酸に注目してイオン液体の選択が行われ、非特許文献7ではホスホニウムカチオンとジメチルリン酸エステルアニオンの組み合わせからなるイオン液体が優れた吸湿性を示すことを明らかにしており、非特許文献8ではコリニウムカチオンとジメチルリン酸エステルアニオンの組み合わせからなるイオン液体水溶液は吸湿性が大きく、過去に報告のある調湿性イオン液体のなかで最も金属腐食性が低いことを報告している。また、特許文献6には、ホスホニウムカチオンを用いた耐金属腐食性に優れた吸湿材料が開示されている。しかし、吸湿性に関してはさらに高い吸湿性能が求められていた。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、耐金属腐食性および良好な吸湿性を示す吸湿材およびこれを用いた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者らが検討を行った結果、特定の構造を有するアンモニウムイオンと、リン酸エステルアニオンから構成される塩を含む吸湿材を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと、リン酸エステルアニオンとから構成される塩を含む吸湿材。
【化1】
(式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではない。n1およびm1は、それぞれ独立して、1~6の整数である。X11は、酸素原子、-N(R13)-(ただし、R13は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、または、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【化2】
(式(2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではない。R21~R23の2つおよびR24~R26の2つはそれぞれ互いに結合して、環を形成していてもよい。n2およびm2は、それぞれ独立して、1~6の整数である。Xは、単結合、酸素原子、-N(R27)-(ただし、R27は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、炭素数1~3のアルキレン基、または、炭素数1~3のアルキレンオキシ基である。)
<2>前記リン酸エステルアニオンが、式(3)で表されるアニオンを含む、<1>に記載の吸湿材。
【化3】
(式(3)中、R31は、水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基であり、R32は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基である。)
<3><1>または<2>に記載の吸湿材を含む装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、良好な耐金属腐食性および良好な吸湿性を示す吸湿材、ならびに、これを用いた装置を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の吸湿試験の結果を示すグラフである。
図2】実施例2の吸湿試験の結果を示すグラフである。
図3】比較例1の吸湿試験の結果を示すグラフである。
図4】実施例の粘度試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本実施形態の吸湿材は、式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと、リン酸エステルアニオンとから構成される塩を含むことを特徴とする。
【化4】
(式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではない。n1およびm1は、それぞれ独立して、1~6の整数である。X11は、酸素原子、-N(R13)-(ただし、R13は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、または、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【化5】
(式(2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではない。R21~R23の2つおよびR24~R26の2つはそれぞれ互いに結合して、環を形成していてもよい。n2およびm2は、それぞれ独立して、1~6の整数である。Xは、単結合、酸素原子、-N(R27)-(ただし、R27は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、炭素数1~3のアルキレン基、または、炭素数1~3のアルキレンオキシ基である。)
【0011】
このような構成とすることにより、耐金属腐食性を示し、かつ、良好な吸湿性を示す吸湿材が得られる。すなわち、所定の構造を有するアンモニウムカチオン(好ましくは第4級アンモニウムカチオン)とリン酸エステルアニオンから構成される塩を用いることにより、金属腐食性が低く、良好な吸湿性が得られることを見出したものである。
【0012】
<式(1)で表されるアンモニウムカチオン>
本実施形態で用いるアンモニウムカチオンの1つは、式(1)で表されるアンモニウムカチオンである。
【化6】
(式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下の炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではない。n1およびm1は、それぞれ独立して、1~6の整数である。X11は、酸素原子、-N(R13)-(ただし、R13は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、または、炭素数1~3のアルキレン基である。)
【0013】
式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基であり、炭素数1~6のアルキル基および炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基および炭素数1~3のヒドロキシアルキル基がより好ましく、炭素数1または2のアルキル基および炭素数1または2のヒドロキシアルキル基がさらに好ましい。
また、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではないが、両方が水素原子ではない、すなわち、第4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0014】
式(1)中、n1およびm1は、それぞれ独立して、1~6の整数であり、1~3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、2がさらに好ましい。
また、式(1)で表されるアンモニウムカチオンは、5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0015】
式(1)中、X11は、酸素原子、-N(R13)-、または、炭素数1~3のアルキレン基であり、酸素原子または炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましく、酸素原子またはメチレン基であることがより好ましい。
13は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0016】
式(1)で表されるアンモニウムカチオンは、式(1-1)で表されるアンモニウムカチオンを含むことが好ましい。
【化7】
(式(1-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R11およびR12の少なくとも一方は、水素原子ではない。X12は、酸素原子またはメチレン基である。)
11およびR12の好ましい範囲は、式(1)におけるR11およびR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0017】
式(1)で表されるアンモニウムカチオンの分子量は、72~450であることが好ましい。
【0018】
以下に、式(1)で表されるアンモニウムカチオンの例を示す。本実施形態におけるアンモニウムカチオンがこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化8】
【化9】
【0019】
<式(2)で表されるアンモニウムカチオン>
本実施形態で用いるアンモニウムカチオンの1つは、式(2)で表されるアンモニウムカチオンである。
【化10】
(式(2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではない。R21~R23の2つおよびR24~R26の2つはそれぞれ互いに結合して、環を形成していてもよい。n2およびm2は、それぞれ独立して、1~6の整数である。Xは、単結合、酸素原子、-N(R27)-(ただし、R27は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、炭素数1~3のアルキレン基、または、炭素数1~3のアルキレンオキシ基である。)
【0020】
式(2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基であり、炭素数1~6のアルキル基および炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
式(2)において、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではなく、いずれも水素原子でないこと、すなわち、第4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
式(2)において、R21~R23の2つおよびR24~R26の2つはそれぞれ互いに結合して、環を形成していてもよい。本実施形態においては、R21~R23の2つおよび/またはR24~R26の2つが互いに結合して、環を形成している場合、R21~R23およびR24~R26が、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基と炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が結合して形成される環(例えば、後述する例示化合物(11)に示される環)と、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。このときの環は、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
【0021】
式(2)において、n2およびm2は、それぞれ独立して、1~6の整数であり、1~3の整数が好ましく、1または2であることがより好ましい。
式(2)において、Xは、単結合、酸素原子、-N(R27)-(ただし、R27は水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)、炭素数1~3のアルキレン基、または、炭素数1~3のアルキレンオキシ基であり、単結合、酸素原子、および、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましく、単結合、酸素原子、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、および、1,1-ジメチルメチレン基が好ましく、単結合、酸素原子、メチレン基およびエチレン基がより好ましい。
本実施形態においては、式(2)中の2つのアンモニウムカチオンを構成する窒素原子の間をつなぐ鎖を構成する原子数が2~8であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、吸湿性がより向上する傾向にある。ここで、窒素原子の間をつなぐ鎖を構成する原子数とは、後述する例示化合物(7)では2つであり、例示化合物(8)では3つである。
【0022】
式(2)で表されるアンモニウムカチオンは、式(2-1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2-2)で表されるアンモニウムカチオンを含むことがより好ましい。
【化11】
(式(2-1)中、R23およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。n21およびm22は、それぞれ独立して、1または2である。X22は、単結合、酸素原子、メチレン基、または、エチレン基である。)
式(2-1)におけるR23およびR26は、式(2)におけるR23およびR26と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化12】
(式(2-2)中、R21~R26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、または炭素数10以下のポリ(アルキレンエーテル)基である。ただし、R21~R23の少なくとも1つおよびR24~R26の少なくとも一つは、それぞれ、水素原子ではない。n22およびm22は、それぞれ独立して、1または2である。X23は、単結合、酸素原子、メチレン基、または、エチレン基である。)
式(2-2)におけるR21~R26は、式(2)におけるR21~R26と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2-2)中の2つのアンモニウムカチオンを構成する窒素原子の間をつなぐ鎖を構成する原子数が2~8であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。
【0023】
式(2)で表されるアンモニウムカチオンの分子量は、76~450であることが好ましい。
【0024】
以下に、式(2)で表されるアンモニウムカチオンの例を示す。本実施形態におけるアンモニウムカチオンがこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化13】
【化14】
【0025】
<リン酸エステルアニオン>
本実施形態で用いるリン酸エステルアニオンは、式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと塩が形成できる限り、その種類等特に定めるものではない。
【0026】
本実施形態においては、リン酸エステルアニオンが、式(3)で表されるアニオンであることが好ましい。このようなリン酸エステルアニオンを用いることにより、式(1)または式(2)アンモニウムカチオンと安定な塩を構成し、臭気の発生を効果的に抑制できる。
【化15】
(式(3)中、R31は、水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基であり、R32は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基である。)
【0027】
式(3)中、R31は、水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基であり、炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基であることがさらに好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が一層好ましい。
式(3)中、R32は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数10以下のポリ(アルキレンオキシ)基、炭素数1~6のアルキルチオ基、または、炭素数10以下のポリ(アルキレンチオ)基であり、炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基であることがさらに好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が一層好ましい。
【0028】
本実施形態で用いるリン酸エステルの分子量は、64~650であることが好ましい。
【0029】
以下に、本実施形態で用いられるリン酸エステルアニオンの例を示す。本実施形態におけるリン酸エステルアニオンがこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化16】
【化17】
【0030】
<アンモニウムリン酸塩>
本実施形態の吸湿材は、上述のとおり、式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと、リン酸エステルアニオンとから構成される塩を含む。
以下に、本実施形態の吸湿材に含まれる塩を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
なお、後述する実施例では、下記(18)の塩を、「特定塩(18)」と表記する。以下、他の塩についても同様である。
【化18】
【0031】
【化19】
【0032】
上記塩は、例えば、第3級アミンに、トリアルキルリン酸エステルを作用させてオニウム化することにより、合成できる。この合成プロセスは、容易に反応が進むため、極めて簡易に特定塩を合成できる。本実施形態においては、メタル交換反応やイオン交換樹脂を用いるアニオン交換を必要としないため、腐食の原因となるハロゲンの混入を抑制できる。
また、式(2)で表されるアンモニウムカチオンの場合、1種のリン酸エステルアニオンとから構成される塩であっても、2種のリン酸エステルアニオンとから構成される塩であってもよい。
【0033】
前記塩の式量は、136以上であることが好ましく、また、1100以下であることが好ましい。
【0034】
前記塩は、粘度が低いことが好ましい。
具体的には、前記塩を80質量%の水溶液としたときの、35℃の粘度が150cP以下であることが好ましい。前記下限値の粘度は0が理想であるが、30cP以上であっても十分に要求性能を満たすものである。
【0035】
<吸湿材>
本実施形態の吸湿材は、式(1)で表されるアンモニウムカチオンおよび/または式(2)で表されるアンモニウムカチオンと、リン酸エステルアニオンとから構成される塩を1種または2種以上含む。
【0036】
特に、本実施形態では、前記塩は、イオン液体であることが好ましい。イオン液体とは、1気圧で100℃以下の融点を持つものを意味する。特に、本実施形態の吸湿材は、少なくとも、0~5℃の範囲で液体であることが好ましい。
本実施形態の吸湿材は、水溶液であってもよく、水溶液であることが好ましい。この場合、特定塩は、上記カチオンおよび上記アニオンの状態で含有される。水の量は、前記塩(イオン液体)と水の合計量に対し10質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態の吸湿材は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、通常、吸湿材に用いられるその他成分をさらに含有してもよい。
【0037】
本実施形態の吸湿材は、空調機や吸収冷凍機等の装置に用いることができる。このような装置の例としては、特開2006-142121号公報、特開2018-144029号公報、特開2020-30004号公報等の記載を参酌できる。特に、臭気の発生が抑制されるため、デシカント式の空調機等の開放系の用途に特に適している。
本実施形態の吸湿材は、例えば、デシカント式の空調機、吸収冷凍機に好ましく適用できる。なお、本実施形態の吸湿材は、開放系および密閉系のいずれの態様でも使用可能であるが、開放系の態様で使用する場合、臭気が抑制されている観点から、特定塩を構成するアニオンが上記リン酸エステルアニオンである吸湿材が特に適している。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
本実施例は、特に述べない限り、23℃、相対湿度40%の環境下で行った。
【0039】
実施例1:N-エチル-N-メチルモルホリニウム=リン酸ジエチル(19)の合成
【化20】
N-メチルモルホリン(33)(10.8g,107mmol)に、リン酸トリエチル(34)(21.4g,117mmol)を室温で撹拌しながら加え、アルゴンガス雰囲気中、120℃で66時間撹拌した。その後、室温まで放冷したのち、ジエチルエーテルで3回、洗浄した後、濃縮し、濃縮物を真空乾燥すると褐色の高粘度液体が得られた。これをメタノール50mLに溶解し、活性炭3.0gを加えて室温で1時間後、セライト濾過して活性炭を除去し、濾液をロータリーエバポレータで濃縮し、ついで真空乾燥して、N-2-ヒドロキシエチル-N-メチルモルホリニウム=リン酸ジメチル(19)を無色高粘性オイルとして得た(ガラス転移点76.5℃,分解温度254℃)。収量は27.4g(97mmol)であり、収率は90%であった。
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 1.22 (6H, t, J= 7.0 Hz), 1.44 (3H, t, J= 7.5 Hz), 3.44 (3H, s), 3.50-3056 (2H, m), 3.72-3.78 (2H, m), 3.82-3.88 (2H, m), 3.88 (4H, q, J= 7.0 Hz), 3.96-4.12 (4H, m); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 7.5, 16.7, 16.8, 46.1, 49.5, 59.1, 60.5, 60.6, 60.8; HRMS (ESI) C7H16NO+130.1233;found 130.1231;HRMS(ESI)calcd for C4H10O4P-150.0317;found 150.0308.
【0040】
<吸湿試験>
上記で得られた特定塩(19)0.9008gを分注したシャーレを、湿度計(株式会社T&D製 照度・紫外線・温度・湿度データロガー TR-74Ui)と共にチャック付き内容量1,110cm3のポリ袋(旭化成ホームプロダクツ株式会社製 ジップロック(登録商標)、273mm×268mm)に入れて、ポリ袋を封止した。これを30℃の恒温槽に入れて静置し、ポリ袋内の湿度が平衡状態に達するまでのポリ袋内の湿度変化を測定した。その結果をグラフ図1に示す。図1に示すように、時間経過とともに湿度が低下しており、実施例1の特定塩(19)は、吸湿性を有していることが分かる。
【0041】
ポリ袋内の湿度変化の測定結果から、特定塩(19)の1molあたりの吸湿率および吸湿速度を算出した。また、特定塩(19)のグラムあたりの吸湿率および吸湿速度を算出した。モル吸湿能は、試験開始の湿度と平衡状態に達した際の湿度との差を、特定塩(19)0.9008gに含まれる、実施例1の特定塩のモル数で除した値である。モル吸湿速度は、ポリ袋の湿度が試験開始の湿度と平衡状態に達した際の湿度との中間値に達したときの時間を試料1molあたりで上記モル吸湿能を除した値である。また、グラムあたりでも算出した。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例2:N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム=リン酸ジメチル(25)の合成
【化21】
N1,N1,N6,N6-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン(36)(17.2g,100mmol)に、リン酸トリメチル(36)(30.8g,220mmol)を室温で加え、アルゴンガス雰囲気中、60℃で2時間、撹拌した。室温まで放冷後、ジエチルエーテルで3回、ヘキサンで1回洗浄した後、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、ついで真空乾燥することにより、N1,N1,N1,N6,N6,N6-ヘキサメチルヘキサン-1,6-ジアミニウム=リン酸ジメチル(25)を白色固体(分解温度270.3℃)として得た。収量は42.9g(94.8 mmol)であり、収率は95%であった。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ 1.28-1.35 (4H, m), 1.68-1.73 (4H, m), 3.07 (18H, s), 3.24 (6H, s), 3.26 (6H, s), 3.25-3.40 (4H, m); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ21.55, 24.96, 51.08, 51.12, 51.87, 64.74; HRMS (ESI) C12H30N2 2+202.2410;found 202.2416;HRMS(ESI)calcd for C2H6O4P-125.0004;found 124.9993.
【0043】
<吸湿試験>
上記で得られた特定塩(25)1.2349gを分注したシャーレを、湿度計(株式会社T&D製 照度・紫外線・温度・湿度データロガー TR-74Ui)と共に内容量1,110cm3のチャック付きポリ袋(旭化成ホームプロダクツ株式会社製 ジップロック(登録商標)、273mm×268mm)に入れて、ポリ袋を封止した。これを30℃の恒温槽に入れて静置し、ポリ袋内の湿度が平衡状態に達するまでのポリ袋内の湿度変化を測定した。その結果をグラフ図2に示す。図2に示すように、時間経過とともに湿度が低下しており、実施例2の特定塩(25)は、吸湿性を有していることが分かる。実施例1と同様にモル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1に示した。
【0044】
<比較例1>
市販の乾燥用塩化カルシウム(ナカライラスク社製、ロット番号M0A0090)を開封し、1.295gをシャーレに取り、ただちに、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1および図3に示す。
【0045】
<比較例2>
市販の青色粒状シリカゲル(富士フイルム和光純薬社製、ロット番号CTH225)を開封し、ただちに、1.1597gをシャーレに取り、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1に示す。
【0046】
<比較例3>
市販の塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、ロット番号HPQ6248)を開封し、0.8749gをシャーレに取り、ただちに、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1に示す。
【0047】
<比較例4>
上記の塩化リチウム(富士フイルム和光純薬社製、ロット番号HPQ6248)の30質量%水溶液5.000gをシャーレに取り、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1に示す。
【0048】
<比較例5>
非特許文献8に記載のコリニウム=リン酸ジメチル([Ch][DMPO4])を文献に従って合成し、真空乾燥後の[Ch][DMPO4]1.000gをシャーレに取り、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
上記表1に示すように、塩化カルシウムを用いた比較例1およびシリカゲルを用いた比較例2、塩化リチウムを用いた比較例3と比較して、実施例1(特定塩(19))および実施例2(特定塩(25))は高いモル吸湿能を示した。また、各実施例の中でも、特定塩(25)を用いた実施例2は、より高いモル吸湿能およびモル吸湿速度を示した。比較例5に示した非特許文献8に記載されているコリニウム=リン酸ジメチル([Ch][DMPO4])と較べても実施例1および実施例2は高いモル吸湿能を示した。
【0051】
また、現在、調湿空調機に使用されている塩化リチウム30質量%水溶液(比較例4)に較べると実施例1はモル吸湿能で190倍、実施例2は350倍の吸湿力を示し、モル当たりの吸湿速度も実施例1は100倍、実施例2は190倍の速度を示した。
【0052】
<実施例3>
実施例1に倣い、上記特定塩(18)、特定塩(20)、特定塩(21)、特定塩(22)を合成し、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
上記表2に示すように、上記特定塩(18)、特定塩(20)、特定塩(21)、特定塩(22)についても、良質な吸湿性能を有することが確認された。
【0055】
<実施例4>
実施例2に倣い、上記特定塩(23)、特定塩(24)、特定塩(26)、特定塩(27)、特定塩(28)、特定塩(29)、特定塩(30)、特定塩(31)を合成し、実施例1と同様に吸湿試験を行い、モル吸湿能、モル吸湿速度、グラム吸湿率、グラム吸湿速度を算出した。その結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
上記表4に示すように、上記特定塩(23)、特定塩(24)、特定塩(26)、特定塩(27)、特定塩(28)、特定塩(29)、特定塩(30)、特定塩(31)についても、高い吸湿性能を示した。特に、比較例5に示した非特許文献8に記載されているコリニウム=リン酸ジメチル([Ch][DMPO4])と比較して、上記特定塩(23)、特定塩(24)、特定塩(26)、特定塩(28)、特定塩(29)、特定塩(30)、特定塩(31)は高いモル吸湿能を、特定塩(27)はモル吸湿速度を示した。さらに、乾燥用シリカゲル(比較例2)、乾燥用塩化カルシウム(比較例1)、非特許文献8のコリニウム=リン酸ジメチル([Ch][DMPO4])(比較例5)と較べて優れた吸湿能を示した。
【0058】
<実施例5 金属溶解性試験>
空調機に一般的に使用される金属である以下の4種類の金属材料からなる金属片(縦10mm×横15mm×厚さ2mm)を用意した。
Fe-Zn:溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板(商品名:SPHC鋼板)
Al:耐食アルミニウムA5052
Cu:タフピッチ銅C1100P
SUS:ステンレス鋼SUS304
【0059】
実施例1の塩(19)の80質量%水溶液3mLが入ったサンプル管に金属片を入れて80℃で30日間、保持した。その後、脱イオン水で金属片を洗浄し、減圧乾燥を行った。上記処理を行う前および上記処理を行った後の金属片の質量を電子天秤で測定し、上記処理の前後における金属片の質量変化を求めた。その結果を表4に示す。
【0060】
実施例2の塩(25)の80質量%水溶液について同様の金属溶解性試験を実施した。その結果を表4に示す。また、比較試験として、比較例4の塩化リチウム30質量%水溶液、比較例5の[Ch][DMPO4]80質量%水溶液について同様の金属溶解性試験を実施した。その結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
特定塩(19)を用いた場合、Fe-Zn、Al、SUSでは腐食は起こらなかった。従って、特定塩(19)は、塩化リチルム水溶液に較べて腐食性が少ないことがわかった。
【0063】
特定塩(25)を用いた場合は、表4に示すように、塩化リチウム30質量%水溶液を用いた比較例3と比較して各種の金属片の質量変化が小さく、金属腐食性が低いことが分かる。特に、Fe-Zn、Al、SUSの3種の金属については、金属の溶解がほぼ零であった。
【0064】
<臭気試験>
上記特定塩(19)および(25)の80質量%水溶液1.0mLをそれぞれ密閉容器に入れて、80℃で10日間、保持した。その後、3人のパネラーが自身の嗅覚に基づいて、密閉容器を開封した際の臭気を評価した。その結果、特定塩(19)、特定塩(25)のいずれを用いた場合も、3人のパネラー全員が無臭であると評価した。
【0065】
<粘度試験>
上記特定塩(19)および特定塩(25)の80質量%水溶液を調製し、コーンプレート型粘計(英弘精機株式会社製DV2TCP)を用いて調製した各水溶液の25℃から60℃の範囲における粘度を測定した。その結果を図4(a)と(b)の各グラフに示す。
図4(a)と(b)の各グラフに示すように、上記特定塩(19)および特定塩(25)80質量%水溶液は比較例5の非特許文献8に記載のある[Ch][DMPO4]の80質量%水溶液と比較して低粘性を示した。具体的には、いずれの温度においても、特定塩(19)は、[Ch][DMPO4]よりも4倍以上、粘性が低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の吸湿材は、空調機や吸収冷凍機等の装置に用いることができる。特に、臭気の発生が抑制されるため、デシカント式の空調機等の開放系の用途に特に適している。
本発明の吸湿材は、高い吸湿性が達成できる。
本発明の吸湿材は、亜鉛、銅、アルミニウム、ステンレス等の種々の金属に対して腐食性の低いものとすることができる。また、本発明の吸湿材は、生体に対する毒性が率いものとすることができる。さらに、本発明の吸湿材は、臭気の発生が抑制できる。
図1
図2
図3
図4