(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143151
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスク
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20220926BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B65D81/32 G
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043519
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
【テーマコード(参考)】
2E185
3E013
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CC32
3E013AA05
3E013AB10
3E013AC13
3E013AD32
3E013AE12
3E013AF04
3E013AF23
(57)【要約】
【課題】収容空間で保持される液体を好適に放出できるパウチを提供する。
【解決手段】内パウチ20と、前記内パウチ20の外側に設けられる外パウチ40と、を含むパウチ10であって、前記内パウチ20は、脆弱線から成り、前記内パウチ20の収容空間S1で保持される液体を外部に放出する第1放出手段R1を備え、前記外パウチ40は、前記液体を前記外パウチ40の外部に放出する、前記第1放出手段R1とは異なる第2放出手段R2を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内パウチと、前記内パウチの外側に設けられる外パウチとを含むパウチであって、
前記内パウチは、前記内パウチの収容空間で保持される液体を外部に放出する第1放出手段を備え、
前記外パウチは、前記液体を前記外パウチの外部に放出し、前記第1放出手段とは異なる第2放出手段を備えており、
前記第1放出手段が内パウチを構成するシートに設けた脆弱線から成ることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
前記パウチを折り曲げたとき前記脆弱線で内パウチが開くことを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記内パウチが四角形であり、その辺に交差する方向に前記脆弱線が延在していることを特徴とする請求項2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記内パウチが四角形であり、その辺の略中央に前記脆弱線が配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパウチ。
【請求項5】
前記外パウチは外シートにより構成され、
前記外シートは複数の外層を含み、
前記外層の少なくとも1つは、紙層を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のパウチ。
【請求項6】
前記第2放出手段は前記外シートの複数の外層の少なくとも一部分の積層方向に設けられる開口部を含むことを特徴とする請求項5に記載のパウチ。
【請求項7】
前記開口部は前記外シートを貫通するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のパウチ。
【請求項8】
前記開口部が孔から成ることを特徴とする請求項6又は7に記載のパウチ。
【請求項9】
前記孔の径が0.3mm以下であることを特徴とする請求項8に記載のパウチ。
【請求項10】
外パウチの表面に対する前記孔の開口面積比が2.0%以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のパウチ。
【請求項11】
前記第2放出手段は、前記第1放出手段よりも時間当たりの液体放出量が少ないことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のパウチ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の前記パウチを備えることを特徴とするフェイスマスク。
【請求項13】
前記フェイスマスクは前記パウチを保持する保持部を備え、
前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出することを特徴とする請求項12に記載のフェイスマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制するために、マスク自体が水分を含む、または、マスクに水分を保持する保持材を設ける技術が知られている。特許文献1には、保水液を長時間保持可能な吸水性コアをマスクに収容する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のマスクでは、吸水性コアに保水液を含侵させたのちにマスクに構成される収容体に吸水性コアを収容する。この場合、マスクの収容体に吸水性コアを収容するまでの間に、吸水性コアから保水液が漏れる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、使用する前に収容した液体が漏れることがなく、したがって、手指も濡れにくく、しかも、使用の際には速やかに液体を放出して口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制することができるフェイスマスクと、これに利用するパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、内パウチと、前記内パウチの外側に設けられる外パウチとを含むパウチであって、
前記内パウチは、前記内パウチの収容空間で保持される液体を外部に放出する第1放出手段を備え、
前記外パウチは、前記液体を前記外パウチの外部に放出し、前記第1放出手段とは異なる第2放出手段を備えており、
前記第1放出手段が内パウチを構成するシートに設けた脆弱線から成ることを特徴とするパウチである。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、前記パウチを折り曲げたとき前記脆弱線で内パウチが開くことを特徴とする請求項1に記載のパウチである。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、前記内パウチが四角形であり、その辺に交差する方向に前記脆弱線が延在していることを特徴とする請求項2に記載のパウチである。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、前記内パウチが四角形であり、その辺の略中央に前記脆弱線が配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパウチである。
【0010】
次に、請求項5に記載の発明は、前記外パウチは外シートにより構成され、
前記外シートは複数の外層を含み、
前記外層の少なくとも1つは、紙層を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のパウチである。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、前記第2放出手段は前記外シートの複数の外層の少なくとも一部分の積層方向に設けられる開口部を含むことを特徴とする請求項5に記載のパウチである。
【0012】
次に、請求項7に記載の発明は、前記開口部は前記外シートを貫通するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のパウチである。
【0013】
次に、請求項8に記載の発明は、前記開口部が孔から成ることを特徴とする請求項6又は7に記載のパウチである。
【0014】
次に、請求項9に記載の発明は、前記孔の径が0.3mm以下であることを特徴とする請求項8に記載のパウチである。
【0015】
次に、請求項10に記載の発明は、外パウチの表面に対する前記孔の開口面積比が2.0%以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のパウチである。
【0016】
次に、請求項11に記載の発明は、前記第2放出手段は、前記第1放出手段よりも時間当たりの液体放出量が少ないことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のパウチである。
【0017】
次に、請求項12に記載の発明は、請求項1~11のいずれかに記載の前記パウチを備えることを特徴とするフェイスマスクである。
【0018】
次に、請求項13に記載の発明は、前記フェイスマスクは前記パウチを保持する保持部を備え、
前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出することを特徴とする請求項12に記載のフェイスマスクである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパウチは内パウチと外パウチとで構成され、液体は内パウチの収容空間で保持されているから、使用する前にはこの液体が漏れることがなく、したがって、手指も濡れることがない。
【0020】
しかも、内パウチと外パウチとはそれぞれ第1放出手段と第2放出手段を備えており、このうち、第1放出手段は内パウチを構成するシートに設けた脆弱線で構成されているから、使用時にはこの脆弱線で前記シートが破断し、内パウチが開いて、収容空間中の液体を速やかに放出して、口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制するのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は第1実施形態のパウチの正面模式図である。
【
図3】
図3は
図2のパウチを構成するシートに係り、
図3(a)は外パウチを構成する外シートの断面模式図、
図3(b)は内パウチを構成する内シートの断面模式図である。
【
図4】
図4は液体放出の際の液体の流れを示す説明図である。
【
図5】
図5はパウチをフェイスマスクに設けた状態を示す正面模式図である。
【
図6】
図6は第2実施形態のパウチの外パウチを構成する外シートの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1~
図5を参照して、第1実施形態のパウチ10およびパウチ10が設けられるフェイスマスク100(
図5参照)について説明する。パウチ10は、少なくとも内パウチ20を含む。好ましくは、パウチ10は内パウチ20の外側に設けられる外パウチ40を含む。パウチ10は、内部に収容空間Sを形成する。内パウチ20の収容空間S1は、液体を保持する。液体は、例えば水である。外パウチ40の収容空間S2は、内パウチ20および内パウチ20から放出された液体を保持する。
【0023】
内パウチ20は、複数の内層を含む内シート21により構成される。内パウチ20は、2枚以上の内シート21を重ね合わせて構成されていてもよく、1枚の内シート21を折り曲げることにより構成されていてもよい。本実施形態の内パウチ20は、2枚の内シート21同士を重ね合わせて構成される。内パウチ20の形状および寸法は、フェイスマスク100に取り付けた状態でユーザの呼吸の負担とならず、かつ、好適な量の液体を保持可能な収容空間S1が形成される程度に構成される。一例では、内パウチ20の形状は正面視において四角形である。すなわち、正方形状、長方形状又は略長方形状である。内パウチ20の寸法は、例えば長手方向の長さが60mmであり、短手方向の長さが45mmである。
【0024】
内パウチ20を構成する内シート21は、内シール部30で接合される。収容空間S1は、2枚の内シート21および内シール部30に囲まれた空間である。内シール部30は、内パウチ20の形状に応じて複数の内シール部が含まれる。本実施形態において、内シール部30は、内パウチ20の形状に対応して第1内シール部31、第2内シール部32、第3内シール部33、第4内シール部34を含む。内パウチ20の形状が、円形状または三角形状の場合、第1内シール31~第4内シール34の少なくとも1つを省略できる。内パウチ20の形状が、五角形以上の多角形状である場合、さらに内シール部を含む。
【0025】
第1内シール部31および第2内シール部32は、内パウチ20の長手方向に沿って設けられる。第3内シール部33および第4内シール部34は、内パウチ20の短手方向に沿って設けられる。
【0026】
第1内シール部31の内縁、第2内シール部32の内縁、第3内シール部33の内縁、および、第4内シール部34の内縁は、収容空間S1の内郭を規定している。第1内シール部31の外縁、第2内シール部32の外縁、第3内シール部33の外縁、および、第4内シール部34の外縁は、内パウチ20の外郭を規定する。各外縁と各内縁との幅は、同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。一例では、外縁と内縁との幅は5mmである。
【0027】
内シール部30のシール強度は、任意に選択可能である。内シール部30のシール強度は、好ましくは、内シール部30の剥離のしにくさとヒートシールの容易さとの関係に基づいて決められる。第1内シール部31~第4内シール部34の全てにおいてシール強度が同じであってもよく、少なくとも1つの内シール部30のシール強度が、他の内シール部30のシール強度と異なっていてもよい。内シール部30のシール強度が取り得る範囲は、一例では50N/15mm以上である。内シール部30のシール強度が取り得る範囲は、一例では130N/15mm以下である。一例では、内シール部30のシール強度は100N/15mmである。
【0028】
図1に示されるように、内パウチ20は、収容空間S1の液体を外部に放出する第1放出手段R1を備える。第1放出手段R1は、
図1及び
図2に示すように、内シート21に設けた脆弱線で構成される。内パウチ20を内蔵したパウチ10に圧力を掛けることにより、あるいはパウチ10を折り曲げることにより、内パウチ20を構成する内シート21
がこの脆弱線R1で破断し、内パウチ20が開いて、収容空間S1の液体を内パウチ20の外部に放出する。
【0029】
後述するように、このパウチ10は、これをフェイスマスクで保持して使用するとき、特にその機能を発揮する。そこで、フェイスマスクを顔の凹凸形状に沿うように折り曲げたとき、この折り曲げに伴って脆弱線R1で内シート21が破断するように、折り曲げ線に沿うように脆弱線R1が延在していることが望ましい。この場合、折り曲げによってこの折り曲げ線に直交する方向に内シート21が引っ張られるため、脆弱線R1で内シート21が破断するからである。パウチ10が四角形状であり、内パウチ20も四角形状である場合、一般に、この四角形を構成する四辺のうちいずれか一つの辺に交差する方向に折り曲げ線を位置させて折り曲げるから、脆弱線R1はこの辺に交差する方向に延在していることが望ましい。また、同じ理由から、折り曲げ線が交差する辺の略中央に前記脆弱線が配置されていることが望ましい。
【0030】
外パウチ40は、複数の内層を含む外シート41により構成される。外パウチ40は、2枚以上の外シート41を重ね合わせて構成されていてもよく、1枚の外シート41を折り曲げることにより構成されていてもよい。本実施形態の外パウチ40は、2枚の外シート41同士を重ね合わせて構成される。外パウチ40の形状および寸法は、フェイスマスク100に取り付けた状態でユーザの呼吸の負担とならず、かつ、内パウチ20を保持可能な収容空間S2が形成される程度に構成される。一例では、外パウチ40の形状は正面視において長方形状または略長方形状である。外パウチ40の寸法は、例えば長手方向の長さが80mmであり、短手方向の長さが60mmである。
【0031】
外パウチ40を構成する外シート41は、外シール部50で接合される。収容空間S2は、2枚の外シート41および外シール部50に囲まれた空間である。外シール部50は、外パウチ40の形状に応じて複数の外シール部が含まれる。本実施形態において、外シール部50は、第1外シール部51、第2外シール部52、第3外シール部53、第4外シール部54を含む。外パウチ40の形状が、円形状または三角形状の場合、第1外シール51~第4外シール54の少なくとも1つを省略できる。外パウチ40の形状が、五角形以上の多角形状である場合、さらに外シール部を含む。
【0032】
第1外シール部51および第2外シール部52は、外パウチ40の長手方向に沿って設けられる。第3外シール部53および第4外シール部54は、外パウチ40の短手方向に沿って設けられる。第1外シール部51の内縁、第2外シール部52の内縁、第3外シール部53の内縁、および、第4外シール部54の内縁は、収容空間S2の内郭を規定している。第1外シール部51の外縁、第2外シール部52の外縁、第3外シール部53の外縁、および、第4外シール部54の外縁は、外パウチ40の外郭を規定する。各外縁と各内縁との幅は、要求されるシール強度に応じて設定される。各外縁と各内縁との幅は、同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。一例では、外縁と内縁との幅は5mmである。
【0033】
外シール部50のシール強度は、任意に選択可能である。外シール部50のシール強度は、好ましくは、外シール部50の剥離のしにくさとヒートシールの容易さとの関係に基づいて決められる。第1外シール部51~第4外シール部54の全てにおいてシール強度が同じであってもよく、少なくとも1つの外シール部50のシール強度が、他の外シール部50のシール強度と異なっていてもよい。外シール部50のシール強度が取り得る範囲は、一例では50N/15mm以上である。外シール部50のシール強度が取り得る範囲は、一例では130N/15mm以下である。一例では、外シール部50のシール強度は100N/15mmである。
【0034】
外パウチ40は、第2放出手段R2を備える。第2放出手段R2は、例えば外シート41に形成される開口部60である。外パウチ40が複数の外シート41で構成される場合、開口部60は少なくとも1つの外シート41に形成される。好ましくは、開口部60は複数の外シート41すべてに形成される。
【0035】
第2放出手段R2は、第1放出手段R1とは異なる構成であることが好ましく、第2放出手段R2は、前記第1放出手段R1よりも時間当たりの液体放出量が少ないことが好ましい。
【0036】
開口部60は、放出された液体が外シート41を透過できるように設けられている。この例では、開口部60は外シート41を積層方向に貫通するように構成される。
【0037】
開口部60は、外シート41のうち、外シール部50により接合されていない場所に設けられる。開口部60の形状は、一例では円形状である。別の例では、開口部60の形状は、四角形状である。
【0038】
開口部60は、その径が0.3mm以下となるように形成される。開口部60の径が0.3mmを越えると、脆弱線R1で内シート21を破断して収容空間S1の液体を内パウチ20の外部に放出したとき、過剰の液体が外パウチ40の外に放出される。このため、例えばフェイスマスクを顔に装着したとき、過剰の液体で顔が濡れる結果を招来することがある。
【0039】
開口部60は、複数設けられる。複数の開口部60の開口径は、それぞれが同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。
【0040】
また、各開口部60の間の距離は、一例では等しい。別の例では、各開口部60の間の距離は、異なる。いずれの場合にも、外パウチ40の全表面に対する前記開口部60の開口面積比が2.0%以下であることが望ましい。開口面積比がこれを越えると、パウチ100から放出される液体が多くなり、このため、長時間に渡って口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制することができないことがある。
【0041】
なお、次の試験により、外パウチ40の第2放出手段R2の適切な構成を評価した。この試験は、保持力評価試験および残存率評価試験を含んでいる。
【0042】
保持力評価試験は、脆弱線R1で内シート21を破断して収容空間S1の液体を内パウチ20の外部に放出したとき、過剰の液体が外パウチ40の外に放出されることがある。この場合には、例えばフェイスマスクを顔に装着したとき、過剰の液体で顔が濡れる結果を招来するおそれがあるか否かを検証したものである。すなわち、この試験では、パウチ10を加圧し、第1放出手段R1により内パウチ20の液体を放出させた状態で、外パウチ40からの液体の放出量を評価することで、パウチ10の液体保持力を評価した。保持力評価試験の評価は、本願発明者を含む評価者により実施された。評価者は、水のしたたり、および、手への液体の付着のいずれも観察されない場合は「〇」と評価した。評価者は、水のしたたりが観察される、または、手に液体が付着したと認定された場合は「×」と評価した。
【0043】
残存率評価試験では、パウチ10をフェイスマスク100の保持部130で保持した状態で加圧し、第1放出手段R1により内パウチ20の液体を放出させた状態で、所定時間経過後の液体の残存率を評価した。所定時間は、10時間に設定した。評価者は、10時間経過後のパウチ10の液体残存率が20重量パーセント以上である場合「〇」と評価し、20重量パーセント未満である場合「×」と評価した。
【0044】
この試験では、試験例1~6のパウチ10を用いて実施した。以下に各パウチ10の構成について説明する。なお、内パウチ20の構成は、各パウチ10で共通である。
【0045】
試験例1~6のパウチ10の内シート21および外シート41の構成は、以下のとおりである。
【0046】
まず、内シート21は、基材層22とシーラント層23とを積層して構成した(
図3(b)参照)。内シート21の基材層22は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。内シート21のシーラント層23は、厚さ30μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムで構成される。内パウチ20の収容空間S1には、3gの水が保持される。
【0047】
また、外シート41は、基材層42、中間層43、紙層44、およびシーラント層45をこの順に積層して構成した(
図3(a)参照)。外シート41の基材層42は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。外シート41の中間層43は、厚さ15μmのポリエチレンで構成される。外シート41の紙層44は、坪量50g/m
2の耐油紙で構成される。この紙層44は、内パウチ20の収容空間S1から放出された水を一時的に吸収保持した後、徐放することにより、長期間に渡る水の放出を可能とするものである。また、外シート41のシーラント層45は、厚さ25μmのポリエチレンで構成される。
【0048】
試験例1のパウチ10は、外パウチ40の開口部60の直径(以下「開口径」と称する)が0.1mmである。開口部60の数(以下「開口数」と称する)が150個である。外シート41の面積に対する開口部60の面積(以下「開口面積比」と称する)が0.13パーセントである。なお、外シート41のうちシール部50部分を除いた部分を外シート41の面積として計算した。
【0049】
試験例2のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が150個、および、開口面積比が0.54パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0050】
試験例3のパウチ10は、開口径が0.3mm、開口数が150個、および、開口面積比が1.21パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0051】
試験例4のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が300個、および、開口面積比が1.08パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0052】
試験例5のパウチ10は、開口径が0.5mm、開口数が150個、および、開口面積比が3.36パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0053】
試験例6のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が600個、および、開口面積比が2.15パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0054】
試験例1~6のパウチ10について、保持力評価試験および残存率評価試験の結果を表に示す。
【0055】
【0056】
保持力評価試験において、試験例1~4のパウチ10および試験例6のパウチ10では、水のしたたりおよび手が濡れる状態は観察されなかった。一方で、試験例5のパウチ10では、水のしたたりが観察され、手が濡れる状態が観察された。残存率評価試験において、試験例1~5のパウチ10は、十分な量の液体が残存していたため「〇」と評価された。一方で、試験例6のパウチ10は、液体の大部分が外部に放出されていたため「×」と評価された。保持力評価試験の結果からは、開口径は、0.3mm以下に設定することが好ましいことが確認された。残存率評価試験の結果からは、開口面積比を2パーセント未満に設定することが好ましいことが確認された。
【0057】
次に、
図3を参照して、内シート21および外シート41の構成について説明する。前述のように、内シート21は、内層として基材層22およびシーラント層23を少なくとも含む。外シート41は、外層として基材層42、中間層43、紙層44、および、シーラント層45を少なくとも含む。内シート21の基材層22と外シート41のシーラント層45との間には、少なくとも一部分に隙間が形成される。
【0058】
基材層22は、耐水性、ガス遮断性、および、耐熱性に優れる材料により構成される。基材層22は、例えば透明蒸着層を有する蒸着フィルムである。基材層22を構成する材料は、一例では酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートである。基材層22の厚さは任意に選択可能である。基材層22の厚さは例えば、9μm~25μmの範囲に含まれる。一例では、基材層22の厚さは12μmである。
【0059】
中間層43は、耐熱性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。中間層43は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成される。中間層43の厚さは例えば、10μm~30μmの範囲に含まれる。一例では、中間層43は厚さ15μmのポリエチレンで構成される。
【0060】
前述のように、紙層44は、内パウチ20の収容空間S1から放出された水を一時的に吸収保持した後、徐放することにより、長期間に渡る水の放出を可能とするものである。紙層44は、たとえば再生紙または非再生紙で構成される。好ましくは、紙層44は、耐油性を備える耐油紙で構成される。紙層44の厚さに寄与する坪量は任意に選択可能である。紙層44の坪量は好ましくは、外パウチ40の強度と求められる保水力に応じて設定される。紙層44の坪量の最小値の好ましい一例は、20g/m2である。紙層44の坪量の最大値の好ましい一例は、200g/m2である。一例では、紙層44の坪量は50g/m2である。
【0061】
シーラント層45は、耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。シーラント層45は、シーラント層23と同様に、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成できる。その厚さもシーラント層23と同様に10μm~30μmでよい。
【0062】
内シート21および外シート41の任意の各層間には、図示しない接着層が設けられる。接着層は、例えばドライラミネート用接着剤から形成される。ドライラミネート用接着剤は、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤である。本実施形態では、接着層は2μmのポリエステルウレタン系接着剤で構成される。
【0063】
パウチ10の製造方法について説明する。パウチ10の製造方法は、内シート21に脆弱線R1から成る第1放出手段を設ける第1放出手段形成工程、外シート41に第2放出手段R2を設ける第2放出手段R2形成工程、収容空間S1に液体を保持した内パウチ20を製造する内パウチ製造工程、外パウチ40を製造して内パウチ20を外パウチ40の収容空間S2内に封入するパウチ製造工程を少なくとも含む。
【0064】
脆弱線から成る第1放出手段R1は、例えば、シーラント層23としてポリオレフィン樹脂を使用し、このシーラント層23と基材層22とを積層した後、基材層22側から炭酸ガスレーザーを照射することにより形成できる。炭酸ガスレーザーは基材層22によって吸収されて、この基材層22を脆弱にする。一方、ポリオレフィン樹脂から成るシーラント層23は炭酸ガスレーザーを吸収しないから、このレーザー照射によっても損傷を受けない。このため、
図3(b)に模式的に図示したように、レーザー照射を受けた部位では基材層22が脆弱となって脆弱線R1が形成されるが、内パウチ20が破袋することはない。
【0065】
なお、次のような実験により収容空間S1内の液体の取り出し易さを検証した。すなわち、この実験では、基材層22として、無機薄膜を蒸着した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。また、シーラント層23としては、それぞれ、厚みが30μm、40μm及び50μmの3種類の直鎖状低密度ポリエチレンを使用した。そして、この基材層22とシーラント層23とをポリエステルウレタン系接着剤で接着して内シート21とした。次に、このシートに炭酸ガスレーザーを照射して脆弱線R1を形成した。炭酸ガスレーザーは、キーエンス社製MI-Z9510を使用し、その出力を90%とした。そして、そのスキャン速度を変化させて各種幅の脆弱線R1を形成した。次に、こうして脆弱線R1を形成した内シート21を使用して内パウチ20を作製し、3gの水を密封した。そして、この内パウチ20に圧力を掛けて、内部の水が取り出し易いか否かを検証した。この結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
この結果から、シーラント層23として直鎖状低密度ポリエチレンを使用する場合には、その厚みは30μm以下が望ましく、また、脆弱線R1は320μm以上の幅を有することが望ましいことが理解できる。
【0068】
次に、第2放出手段R2は、例えば、外シート41に対して開口部60の径および数に対応する針を貫通させることで形成される。
【0069】
次に、内パウチ製造工程では、内シート21のシーラント層23同士をヒートシールすることで、内シール部30を形成する。内シール部30に形成予定の第1内シール部31~第4内シール部34のうちの1つは、未シール状態にする。例えば、第1内シール部31を除く第2内シール部32~第4内シール部34を形成する。第1内シール部31が形成される予定の場所には、収容空間S1と外部とをつなぐ図示しない開口が形成される。開口から収容空間S1に対して液体が注入され、第1内シール部31を形成することで収容空間S1に液体を保持する内パウチ20が形成される。
【0070】
パウチ製造工程では、外シート41のシーラント層45同士をヒートシールすることで、外シール部50を形成する。外シール部50に形成予定の第1外シール部51~第4外シール部54のうちの1つは、未シール状態にする。例えば、第1外シール部51を除く第2外シール部52~第4外シール部54を形成する。第1外シール部51が形成される予定の場所には、収容空間S2と外部とをつなぐ図示しない開口が形成される。開口から内パウチ20を入れて、第1外シール部51を形成することで収容空間S2に内パウチ20を保持する外パウチ40が形成され、パウチ10が完成する。
【0071】
図4を参照して、収容空間S1の液体がパウチ10の外部に放出されるまでの流路の一例について説明する。
図4に示される矢印A1の方向の力で加圧された場合、内パウチ20の第1放出手段である脆弱線R1’で内シート21が破断する。収容空間S1の液体は、この破断によって生じた開口から矢印A2に沿って収容空間S2に放出される。収容空間S2の液体は、矢印A3に沿って第2放出手段R2である開口部60を通り外部に放出される。
【0072】
脆弱線R1によって形成される開口の面積は、開口部60の開口面積よりも大きい。このため、第2放出手段R2は、第1放出手段R1よりも時間当たりの液体放出量が少ない。第1放出手段R1によって収容空間S1から収容空間S2に放出された液体は、第2放出手段R2によって、時間をかけて収容空間S2から外部に放出される。
【0073】
図5に示されるように、フェイスマスク100は、ユーザの顔のうち少なくとも口および鼻を保護することに適した構造を備える。フェイスマスク100は、主面部110および取付部120を備える。フェイスマスク100を構成する材料は、例えば不織布または布である。主面部110は、ユーザに取り付けた状態でユーザの口および鼻と対向する第1主面111と第1主面111の反対側に位置する第2主面を含む。取付部120は、主面部110をユーザの顔の適切な位置に固定するように構成される。一例では、取付部120は、主面部110の左右方向の両端部に設けられるゴムで形成された紐である。紐は、ユーザの耳に対して係り合うことで主面部110をユーザの顔の所定の位置に固定できる。
【0074】
フェイスマスク100は、パウチ10を保持する保持部130をさらに備える。保持部130は、例えば袋形状に構成される。この場合、保持部130は、図示しない開口を備え、パウチ10を出し入れ可能に構成される。保持部130は、例えば第1主面111または第2主面の少なくとも一方に設けられる。好ましくは、保持部130は、第1主面111と第2主面との間に設けられる。
【0075】
ユーザがフェイスマスク100の第2主面を把持し、主面部110がユーザの顔の形に合うように折り曲げる。この折り曲げによって、内シート21が脆弱線R1で破断し、内パウチ20から液体が放出される。内パウチ20から放出された液体は、外パウチ40の開口部60から徐放される。ユーザがフェイスマスク100を使用している期間、パウチ10から液体が徐放されるため、ユーザの口腔内および鼻腔内の湿度を高く保ち、乾燥を抑制する。
【0076】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態のパウチ10について説明する。第2実施形態のパウチ10は、外パウチ40の第2放出手段R2の構成が第1実施形態のパウチ10と相違する。第1実施形態のパウチ10と共通する構成については、同一の符号を付し、説明の一部または全部を省略する場合がある。
【0077】
図6に示されるように、外パウチ40に設けられる開口部60は、第1開口部61および第2開口部62を含む。第1開口部61および第2開口部62のいずれも、外シート41を積層方向に貫通しないように構成される。
【0078】
第1開口部61は、外シート41の基材層42および中間層43を積層方向に貫通する。第1開口部61は、紙層44を積層方向に貫通しないように構成される。第1開口部61は、紙層44の積層方向に紙層44を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0079】
第2開口部62は、外シート41のシーラント層45を積層方向に貫通する。第2開口部62は、紙層44を積層方向に貫通しないように構成される。第2開口部62は、紙層44の積層方向に紙層44を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0080】
第1開口部61および第2開口部62は、積層方向において位置が一致していてもよく、少なくとも一部分の位置がずれていてもよい。少なくとも一部分の位置がずれている場合、より徐放性を高めることができる。第1開口部61および第2開口部62は、開口径、開口数、および、開口面積比の全てが一致していてもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。
【0081】
<変形例>
実施の形態に関する説明は本発明に従うパウチおよびフェイスマスクが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うパウチおよびフェイスマスクは各実施形態以外に例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0082】
・保持部130は、フェイスマスク100に対してパウチ10を取り付けることができれば、袋形状以外であってもよい。一例では、保持部130は、主面部110に設けられる両面テープである。
【0083】
・内パウチ20の収容空間S1、外パウチ40の収容空間S2、および、外パウチ40の外側にさらにパウチの構成を備えていてもよい。この場合、パウチ10に保持される液体の徐放性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0084】
10:パウチ
20:内パウチ
21:内シート
30:内シール部
40:外パウチ
41:外シート
50:外シール部
60:開口部
100:フェイスマスク
110:主面部
120:取付部
130:保持部
R1…第1放出手段
R2…第2放出手段