(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143152
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスク
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20220926BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B65D81/32 D
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043520
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
【テーマコード(参考)】
2E185
3E013
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CC32
3E013AA05
3E013AB10
3E013AC13
3E013AD32
3E013AE12
3E013AF04
3E013AF23
(57)【要約】
【課題】収容空間で保持される液体を好適に放出できるパウチを提供する。
【解決手段】2以上の部屋に区分されたパウチであって、2以上の前記部屋のうち少なくとも1つの部屋は液体を密封して構成された収容室11であり、その他の部屋のうち少なくとも1つの部屋はパウチ外部に連通した開口部15を有する放出緩衝室であり、剥離容易なシール線14を介して前記収容室と放出緩衝室とが隣接している。シール線14で剥離することにより、収容室11の液体が開口部15から放出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の部屋に区分されたパウチであって、
2以上の前記部屋のうち少なくとも1つの部屋は液体を密封して構成された収容室であり、その他の部屋のうち少なくとも1つの部屋はパウチ外部に連通した開口部を有する放出緩衝室であり、
剥離容易なシール線を介して前記収容室と放出緩衝室とが隣接していることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
収容室と放出緩衝室との間の前記シール線が、前記収容室の内圧が上昇することで剥離するものであることを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
複数の前記収容室が隣接している前記放出緩衝室を有することを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項4】
パウチを構成するシートが保水層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のパウチ。
【請求項5】
前記保水層が紙又は不織布で構成されていることを特徴とする請求項4に記載のパウチ。
【請求項6】
パウチを構成するシートを前記開口部が貫通するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のパウチ。
【請求項7】
前記開口部が孔から成ることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のパウチ。
【請求項8】
前記孔の径が0.3mm以下であることを特徴とする請求項7に記載のパウチ。
【請求項9】
放出緩衝室の表面に対する前記孔の開口面積比が2.0%以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載のパウチ。
【請求項10】
前記シール線が剥離して形成される開口から放出緩衝室に放出される時間当たりの液体放出量よりも、前記開口部からパウチ外部に放出される時間当たりの液体放出量が少ないことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のパウチ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の前記パウチを備えることを特徴とするフェイスマスク。
【請求項12】
前記フェイスマスクは前記パウチを保持する保持部を備え、
前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出することを特徴とする請求項11に記載のフェイスマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制するために、マスク自体が水分を含む、または、マスクに水分を保持する保持材を設ける技術が知られている。特許文献1には、保水液を長時間保持可能な吸水性コアをマスクに収容する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のマスクでは、吸水性コアに保水液を含侵させたのちにマスクに構成される収容体に吸水性コアを収容する。この場合、マスクの収容体に吸水性コアを収容するまでの間に、吸水性コアから保水液が漏れる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、使用する前に収容した液体が漏れることがなく、したがって、手指も濡れにくく、しかも、使用の際には速やかに液体を放出して口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制することができると共に、長期間に渡って液体を放出することができるフェイスマスクと、これに利用するパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、2以上の部屋に区分されたパウチであって、
2以上の前記部屋のうち少なくとも1つの部屋は液体を密封して構成された収容室であり、その他の部屋のうち少なくとも1つの部屋はパウチ外部に連通した開口部を有する放出緩衝室であり、
剥離容易なシール線を介して前記収容室と放出緩衝室とが隣接していることを特徴とするパウチである。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、収容室と放出緩衝室との間の前記シール線が、前記収容室の内圧が上昇することで剥離するものであることを特徴とする請求項1に記載のパウチである。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、複数の前記収容室が隣接している前記放出緩衝室を有することを特徴とする請求項1に記載のパウチである。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、パウチを構成するシートが保水層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のパウチである。
【0010】
次に、請求項5に記載の発明は、前記保水層が紙又は不織布で構成されていることを特徴とする請求項4に記載のパウチである。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、パウチを構成するシートを前記開口部が貫通するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のパウチである。
【0012】
次に、請求項7に記載の発明は、前記開口部が孔から成ることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のパウチある。
【0013】
次に、請求項8に記載の発明は、前記孔の径が0.3mm以下であることを特徴とする請求項7に記載のパウチである。
【0014】
次に、請求項9に記載の発明は、放出緩衝室の表面に対する前記孔の開口面積比が2.0%以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載のパウチである。
【0015】
次に、請求項10に記載の発明は、前記シール線が剥離して形成される開口から放出緩衝室に放出される時間当たりの液体放出量よりも、前記開口部からパウチ外部に放出される時間当たりの液体放出量が少ないことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のパウチである。
【0016】
次に、請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれかに記載の前記パウチを備えることを特徴とするフェイスマスクである。
【0017】
次に、請求項12に記載の発明は、前記フェイスマスクは前記パウチを保持する保持部を備え、
前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出することを特徴とする請求項11に記載のフェイスマスクである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパウチは収容室と放出緩衝室とに区分されており、液体は収容室に密封されているから、使用する前にはこの液体が漏れることがなく、したがって、手指も濡れることがない。
【0019】
そして、収容室と放出緩衝室とは剥離容易なシール線を介して隣接しており、放出緩衝室にはパウチ外部に連通した開口部が設けられているから、使用時には前記シール線を剥離することにより、収容室中の液体を速やかにパウチ外部に放出して、口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制するのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は第1実施形態のパウチの正面模式図である。
【
図3】
図3は
図2のパウチを構成するシートに係り、
図3(a)は収容室を構成する領域の断面模式図、
図3(b)は放出緩衝室を構成する領域の断面模式図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の液体放出の際の液体の流れを示す説明図である。
【
図5】
図5は第1実施形態のパウチをフェイスマスクに設けた状態を示す正面模式図である。
【
図6】
図6は第1実施形態の変形例に係るパウチの正面模式図である。
【
図7】
図7は第2実施形態のパウチの正面模式図である。
【
図9】
図9は第3実施形態のパウチを構成するシートのうち、放出緩衝室を構成する領域の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1~
図5を参照して、第1実施形態のパウチ10およびパウチ10が設けられるフェイスマスク100(
図5参照)について説明する。パウチ10は、その周縁がシール線1
3で囲まれている。この例では、パウチ10は正方形状、長方形状又は略長方形状であり、パウチ10の寸法は、例えば長手方向の長さが80mmであり、短手方向の長さが60mmである。
【0022】
周縁シール線13は第1周縁シール線13a、第2周縁シール線13b、第3周縁シール線13c、第4周縁シール線13dで構成されている。パウチ10の形状が、五角形以上の多角形状である場合、さらに周縁シール線13を含む。第1周縁シール線13aおよび第2周縁シール線13bは、パウチ10の長手方向に沿って設けられている。第3周縁シール線13cおよび第4周縁シール線13dは、パウチ10の短手方向に沿って設けられる。
【0023】
第1周縁シール線13aの内縁、第2周縁シール線13bの内縁、第3周縁シール線13cの内縁、および、第4周縁シール線13dの内縁は、パウチ10の内郭を規定している。第1周縁シール線13aの外縁、第2周縁シール線13bの外縁、第3周縁シール線13cの外縁、および、第4周縁シール線13dの外縁は、パウチ10の外郭を規定する。各周縁シール線13a,13b,13c,13dの幅は、同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。一例では、各周縁シール線13a,13b,13c,13dの幅は5mmである。
【0024】
そして、パウチ10は、区画シール線14により、2つの部屋に区分されている。その一方の部屋は収容室11であり、他方の部屋は放出緩衝室12である。この例では、収容室11と放出緩衝室12とは、それぞれ1部屋づつ設けられているが、これら各部屋11,12は複数存在していてもよい。例えば、収容室11が2部屋、放出緩衝室12が1部屋である。また、収容室11や放出緩衝室12を3部屋以上設けることも可能である。
【0025】
図示のように、収容室11と放出緩衝室12とは、区画シール線14を介して隣接している。容室11や放出緩衝室12を複数設けた場合にも、収容室11と放出緩衝室12とは、区画シール線14を介して隣接している必要がある。
【0026】
収容室11には液体が密封されている。液体は、例えば水である。
【0027】
区画シール線14は、剥離容易にシールして形成されたシール線である。そして、この区画シール線14を剥離することにより開口が形成され、収容室11内に密封された液体が放出緩衝室12に放出される。この区画シール線14は、収容室11の外側から圧力を加えることにより剥離する。
【0028】
なお、前述のように区画シール線14は剥離容易にシールされているが、この区画シール線14を剥離するとき、周縁シール線13が剥離しないことが望ましい。区画シール線14と同時に周縁シール線13が剥離すると、収容室11内の液体はパウチ10の外部に放出されるからである。
【0029】
このように周縁シール線13で剥離することなく、区画シール線14で剥離できるようにするためには、これら周縁シール線13と区画シール線14とのヒートシール条件を変えればよい。例えば、パウチ10を構成するシート10Aのシーラント層として出光興産社製ユニクレストMS-615Cを使用して、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で、シール温度を変えてヒートシールしたとき、シール温度130℃では約5N/15mmのシール強度だったのに対して、シール温度を上げるにつれてシール強度が高くなり、シール温度190℃では約14N/15mm、シール温度220℃では約23N/15mmのシール強度となった。
【0030】
そこで、周縁シール線13のシール温度を220℃とし、区画シール線14のシール温度を130℃、150℃、170℃、190℃、210℃、230℃の各温度でヒートシールしてパウチ10を製袋し、こうして得られたパウチ10が、周縁シール線13で剥離することなく、区画シール線14で容易に剥離できるか否かについて試験した。
【0031】
この結果を表1に示す。なお、表中、「〇」は、周縁シール線13の剥離や一部剥離による後退がなく、区画シール線14で容易に剥離できたことを示す。また、「△」は、区画シール線14で剥離できたが、周縁シール線13の後退が見られたことを示す。「×」は周縁シール線13で剥離して、パウチ10が破袋したことを意味する。
【0032】
【0033】
この結果から、区画シール線14のシール強度を14N/15mm以下とすれば、この区画シール線14は容易に剥離できることが分かる。また、この際、周縁シール線13のシール強度を23N/15mm以上とすれば、この周縁シール線13が剥離しないことも理解できる。
【0034】
次に、放出緩衝室12は、パウチ外部に連通した開口部15を有している。パウチ10が複数のシート10Aで構成される場合、開口部15は少なくとも1つのシート10Aに形成される。好ましくは、開口部15は複数のシート10Aすべてに形成される。この例では、パウチ10は2枚のシート10Aを重ねて、その周縁部で周縁シール線13を形成して構成されており、これら2枚のシートの両方に開口部15が形成されている。
【0035】
開口部13は、収容室11から放出されて放出緩衝室12に達した液体がシート10Aを透過できるように設けられている。この例では、開口部15はシート10Aを積層方向に貫通するように構成される。
【0036】
開口部15は、シート10Aのうち、放出緩衝室12に対応する位置に設けられる。開口部15の形状は、一例では円形状である。別の例では、開口部15の形状は、四角形状である。
【0037】
開口部15は、その径が0.3mm以下となるように形成される。開口部15の径が0.3mmを越えると、区画シール線14を剥離して収容室11内の液体を放出緩衝室12に放出したとき、過剰の液体がパウチ10の外部に放出される。このため、例えばフェイスマスクを顔に装着したとき、過剰の液体で顔が濡れる結果を招来することがある。
【0038】
開口部15は、複数設けられる。複数の開口部15の開口径は、それぞれが同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。
【0039】
また、各開口部15の間の距離は、一例では等しい。別の例では、各開口部15の間の距離は、異なる。いずれの場合にも、放出緩衝室12の表面に対する前記孔の開口面積比が2.0%以下であることが望ましい。開口面積比がこれを越えると、パウチ10から放出される液体が多くなり、このため、長時間に渡って口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制することができないことがある。
【0040】
なお、次の試験により、放出緩衝室12の開口部15の適切な構成を評価した。この試験は、保持力評価試験および残存率評価試験を含んでいる。
【0041】
保持力評価試験は、区画シール線14を剥離して収容室11内の液体を収容室11から放出緩衝室12に放出したとき、過剰の液体がパウチ10の外に放出されることがある。この場合には、例えばフェイスマスクを顔に装着したとき、過剰の液体で顔が濡れる結果
を招来するおそれがあるか否かを検証したものである。すなわち、この試験では、パウチ10の収容室11を加圧して区画シール線14を剥離し、この剥離で生じた開口から収容室11の液体を放出緩衝室12に放出させた状態で、さらに放出緩衝室12からパウチ外部への液体の放出量を評価することで、パウチ10の液体保持力を評価した。保持力評価試験の評価は、本願発明者を含む評価者により実施された。評価者は、水のしたたり、および、手への液体の付着のいずれも観察されない場合は「〇」と評価した。評価者は、水のしたたりが観察される、または、手に液体が付着したと認定された場合は「×」と評価した。
【0042】
残存率評価試験では、パウチ10をフェイスマスク100の保持部130で保持した状態で加圧し、収容室11の液体を放出させた状態で、所定時間経過後の液体の残存率を評価した。所定時間は、10時間に設定した。評価者は、10時間経過後のパウチ10の液体残存率が20重量パーセント以上である場合「〇」と評価し、20重量パーセント未満である場合「×」と評価した。
【0043】
この試験では、試験例1~6のパウチ10を用いて実施した。以下に各パウチ10の構成について説明する。
【0044】
試験例1~6のパウチ10のシート10Aの構成は、以下のとおりである。
【0045】
また、シート10Aは、基材層10
1、中間層10
2、保水層10
3、およびシーラント層10
4をこの順に積層して構成した(
図3(a)及び(b)参照)。基材層10
1は厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。中間層10
2は、厚さ15μmのポリエチレンで構成される。保水層10
3は、坪量50g/m
2の耐油紙で構成される。シーラント層10
4は、厚さ25μmのポリエチレンで構成される。
【0046】
そして、
図3(b)に示すように、このシート10Aのうち、放出緩衝室12を構成する領域10A2には、その開口部15として多数の孔が設けられている。これに対して、
図3(a)に示すように、収容室11を構成する領域10A1には開口が設けられておらず、この領域10A1で液体を密封できるように構成されている。なお、収容室11には、3gの水が保持される。
【0047】
試験例1のパウチ10は、領域10A2の開口部15の直径(以下「開口径」と称する)が0.1mmである。開口部15の数(以下「開口数」と称する)が150個である。領域10A2の面積に対する開口部15の面積(以下「開口面積比」と称する)が0.13パーセントである。なお、領域10A2の面積は、周縁シール線13や区画シール線14を含まない部分の面積である。
【0048】
試験例2のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が150個、および、開口面積比が0.54パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0049】
試験例3のパウチ10は、開口径が0.3mm、開口数が150個、および、開口面積比が1.21パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0050】
試験例4のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が300個、および、開口面積比が1.08パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0051】
試験例5のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が150個、および、開口面積比が3.36パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0052】
試験例6のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が600個、および、開口面積比が2.15パーセントである。その他の構成については、試験例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0053】
試験例1~6のパウチ10について、保持力評価試験および残存率評価試験の結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
保持力評価試験において、試験例1~4のパウチ10および試験例6のパウチ10では、水のしたたりおよび手が濡れる状態は観察されなかった。一方で、試験例5のパウチ10では、水のしたたりが観察され、手が濡れる状態が観察された。残存率評価試験において、試験例1~5のパウチ10は、十分な量の液体が残存していたため「〇」と評価された。一方で、試験例6のパウチ10は、液体の大部分が外部に放出されていたため「×」と評価された。保持力評価試験の結果からは、開口径は、0.3mm以下に設定することが好ましいことが確認された。残存率評価試験の結果からは、開口面積比を2パーセント未満に設定することが好ましいことが確認された。
【0056】
次に、
図3(a)及び(b)を参照して、シート10Aの構成について説明する。前述のように、シート10Aは、基材層10
1、中間層10
2、保水層10
3、およびシーラント層10
4をこの順に積層して構成したものである。
【0057】
基材層101は、耐水性、ガス遮断性、および、耐熱性に優れる材料により構成される。基材層101は、例えば透明蒸着層を有する蒸着フィルムである。基材層101を構成する材料は、一例では酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートである。基材層101の厚さは任意に選択可能である。基材層101の厚さは例えば、9μm~25μmの範囲に含まれる。一例では、基材層101の厚さは12μmである。
【0058】
中間層102は、耐熱性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。中間層102は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成される。中間層102の厚さは例えば、10μm~30μmの範囲に含まれる。一例では、中間層102は厚さ15μmのポリエチレンで構成される。
【0059】
保水層103は、内パウチ20の収容空間S1から放出された水を一時的に吸収保持した後、徐放することにより、長期間に渡る水の放出を可能とするもので、紙あるいは不織布によって構成することができる。
【0060】
紙としては例えば再生紙または非再生紙が使用できる。好ましくは、紙としては耐油性を備える耐油紙で構成される。紙の厚さに寄与する坪量は任意に選択可能である。紙の坪量は好ましくは、パウチ10の強度と求められる保水力に応じて設定される。紙の坪量の最小値の好ましい一例は、20g/m2である。紙の坪量の最大値の好ましい一例は、200g/m2である。一例では、紙の坪量は50g/m2である。
【0061】
また、不織布は親水性繊維から成ることが望ましいが、繊維と繊維との間隙に液体を吸
収できるものであれば、疎水性繊維でもよい。例えば、ポリエチレン繊維を使用した不織布である。坪量は20~100g/m2の不織布が好ましく使用できる。例えば、大王製紙社製のリキッドFPWTFである。
【0062】
シーラント層104は、耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。シーラント層104は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成される。シーラント層104の厚さは例えば、10μm~30μmの範囲に含まれる。一例では、シーラント層104は厚さ25μmのポリエチレンで構成される。
【0063】
これら各層101,102,103,104の層間には、図示しない接着層が設けられる。接着層は、例えばドライラミネート用接着剤から形成される。ドライラミネート用接着剤は、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤である。本実施形態では、接着層は2μmのポリエステルウレタン系接着剤で構成される。
【0064】
このパウチ10は、次の方法で製造することができる。
【0065】
すなわち、まず、このパウチを構成するシート10Aのうち、放出緩衝室12を構成する領域10A2に開口部15を形成する。この例では、開口部15は多数の孔である。開口部15は、例えばシート10Aの前記領域10A2に対して開口部15の径および数に対応する針を貫通させることで形成される。
【0066】
次に、こうして開口部15を形成した2枚のシート10Aを互に重ね、そのシーラント層104同士をヒートシールすることで、周縁シール線13及び区画シール線14を形成する。なお、周縁シール線13のうち、収容室11の周縁に位置する周縁シール線13cについては未シールのまま残し、その他の周縁シール線13a,13b,13dを形成する。
【0067】
また、周縁シール線13のシール条件と区画シール線14のシール条件を変えることで、これら形成することができる。例えば、シール圧力とシール時間を共通とし、シール温度を変えることで、周縁シール線13と区画シール線14とを同時に形成することができる。例えば、周縁シール線13形成用シールバーの温度を220℃とし、区画シール線14形成用シールバーの温度を190℃以下として、圧力0.2MPaでこれらを同時に2枚のシート10Aに1秒間押圧することにより、周縁シール線13と区画シール線14とを同時に形成することが可能である。形成された区画シール線14は、この位置で容易に2枚のシート10Aを剥離することができ、この剥離の際には周縁シール線13は剥離しない。
【0068】
そして、最後に、前記未シール部分から収容室11に液体を収容して、その実シール部分をヒートシールして周縁シール線13cを形成する。こうして周縁シール線13cを形成することにより、液体を収容室11に密封することができる。
【0069】
図4を参照して、収容室11の液体がパウチ10の外部に放出されるまでの流路の一例について説明する。
図4に示される矢印Pの方向の力で収容室11が加圧された場合、内部の液体の圧力で区画シール線14の位置で2枚のシート10Aが剥離し、開口が形成される。収容室11の液体は、矢印xに沿って放出緩衝室12に放出される。放出緩衝室12の液体は、矢印yに沿って開口部15を通りパウチ10の外部に放出される。
【0070】
区画シール線14で剥離して形成される開口の面積は、開口部15の開口面積よりも大きい。このため、開口から放出緩衝室12に放出される時間当たりの液体放出量よりも、前記開口部15からパウチ10外部に放出される時間当たりの液体放出量が少ない。収容室11から放出緩衝室12に放出された液体は、時間をかけて放出緩衝室12からパウチ10外部に放出される。しかも、シート10A中の保水層103が液体を吸収保持して徐放するから、一層長期間に渡って液体を放出し続けるのである。
【0071】
図5に示されるように、フェイスマスク100は、ユーザの顔のうち少なくとも口および鼻を保護することに適した構造を備える。フェイスマスク100は、主面部110および取付部120を備える。フェイスマスク100を構成する材料は、例えば不織布または布である。主面部110は、ユーザに取り付けた状態でユーザの口および鼻と対向する第1主面111と第1主面111の反対側に位置する第2主面を含む。取付部120は、主面部110をユーザの顔の適切な位置に固定するように構成される。一例では、取付部120は、主面部110の左右方向の両端部に設けられるゴムで形成された紐である。紐は、ユーザの耳に対して係り合うことで主面部110をユーザの顔の所定の位置に固定できる。
【0072】
フェイスマスク100は、パウチ10を保持する保持部130をさらに備える。保持部130は、例えば袋形状に構成される。この場合、保持部130は、図示しない開口を備え、パウチ10を出し入れ可能に構成される。保持部130は、例えば第1主面111または第2主面の少なくとも一方に設けられる。好ましくは、保持部130は、第1主面111と第2主面との間に設けられる。
【0073】
このフェイスマスク100は、保持部130に保持されたパウチ10の収容室11に圧力Pを掛けて区画シール線14の位置で2枚のシート10Aを剥離した後、主面部110が顔に沿うように装着する。前記剥離により、収容室11から放出緩衝室12へ液体が放出され、放出緩衝室12の開口部15から徐放される。ユーザがフェイスマスク100を使用している期間、パウチ10から液体が徐放されるため、ユーザの口腔内および鼻腔内の湿度を高く保ち、乾燥を抑制する。
【0074】
<第1実施形態の変形例>
次に、
図6は、第1実施形態の変形例に係るパウチ10を示している。このパウチ10では、区画シール線14の中央が放出緩衝室12から収容室11に向かってせり出すように区画シール線14が屈曲している。このように区画シール線14が屈曲しているため、収容室11の加圧による開口の形成が容易となり、収容室11の液体がパウチ10の外部に容易に放出される。なお、そのほかの点では、パウチ10は第1実施形態のパウチ10と同様である。
【0075】
<第2実施形態>
次に、
図7及び
図8を参照して、第2実施形態のパウチ10について説明する。第2実施形態のパウチ10は、放出緩衝室12の両側に収容室11
1,11
2が設けられている点で第1実施形態のパウチ10と異なっている。放出緩衝室12と収容室11
1とは剥離容易な区画シール線14
1を介して隣接しており、放出緩衝室12と収容室11
2とは剥離容易な区画シール線14
2を介して隣接している。このため、区画シール線14
1で2枚のシート10Aを剥離することにより、収容室11
1の液体が放出緩衝室12を経由して、開口部15からパウチ10の外部に放出される。同様に、区画シール線14
2で2枚のシート10Aを剥離することにより、収容室11
2の液体が放出緩衝室12を経由して、開口部15からパウチ10の外部に放出される。
【0076】
区画シール線141と区画シール線142との両者で剥離して使用することも可能であるが、その内の一方を最初に剥離して使用し、液体を消費した後、他方を剥離して使用することが望ましい。例えば、まず区画シール線141で剥離して収容室111の液体を使用してユーザの口腔内および鼻腔内の湿度を高く保ち、乾燥を抑制し、こうして収容室111の液体を消費した後、区画シール線141で剥離して収容室111の液体を使用してユーザの口腔内および鼻腔内の湿度を高く保つことにより、一層長時間に渡って、ユーザの口腔内や鼻腔内の湿度を高く保つことができる。
【0077】
<第3実施形態>
図9を参照して、第3実施形態のパウチ10について説明する。このパウチ10は、放出緩衝室12の開口部15の構造が第1実施形態及び第2実施形態のパウチ10と異なっており、その他の点は第1実施形態や第2実施形態のパウチ10と同様である。このため、パウチ10を構成するシート10Aのうち、放出緩衝室12を構成する領域10A2の断面を
図9に図示している。
【0078】
図9に示されるように、放出緩衝室12に設けられる開口部15は、第1開口部15
1および第2開口部15
2を含む。第1開口部15
1および第2開口部15
2のいずれも、シート10Aを積層方向に貫通しないように構成される。
【0079】
第1開口部151は、シート10Aの基材層101および中間層102を積層方向に貫通する。第1開口部151は、保水層103を積層方向に貫通しないように構成される。第1開口部151は、保水層103の積層方向に保水層103を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0080】
第2開口部152は、シート10Aのシーラント層104を積層方向に貫通する。第2開口部152は、保水層103を積層方向に貫通しないように構成される。第2開口部152は、保水層1034の積層方向に保水層103を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0081】
第1開口部151および第2開口部152は、積層方向において位置が一致していてもよく、少なくとも一部分の位置がずれていてもよい。少なくとも一部分の位置がずれている場合、より徐放性を高めることができる。第1開口部151および第2開口部152は、開口径、開口数、および、開口面積比の全てが一致していてもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10:パウチ
11:収容室
12:放出緩衝室
13:周縁シール線
14:区画シール線
15:開口部