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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143204
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】軸受装置、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20220926BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F16F15/023 A
F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043602
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山脇 映明
【テーマコード(参考)】
3J011
3J048
【Fターム(参考)】
3J011AA02
3J011AA20
3J011BA14
3J011KA02
3J011MA12
3J048AA02
3J048AC04
3J048BC02
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA32
(57)【要約】
【課題】内部支持環を弾性的に支持し、かつ周方向に生じる動的な荷重に対応しながら減衰力を円滑に付与できる軸受装置、及び回転機械を提供する。
【解決手段】回転軸を支持可能な軸受パッドと、軸受パッドを支持し、環状をなす内部支持環と、内部支持環を囲う環状をなし、内部支持環との間に隙間を形成する外部支持環と、外部支持環に対して内部支持環を弾性支持する支持ばねと、内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットと、を備え、ダンパユニットは、外部支持環の内部に形成されたダンパ空間内に充填されたダンパオイルと、ダンパ空間を第一領域と第二領域とに区画するとともに、ダンパオイルが第一領域と第二領域とを往来可能となるように移動可能とされたピストン本体、及び、ピストン本体に一体に設けられ、先端が内部支持環の外周面に当接するロッドを有するピストンロッドと、ピストン本体を付勢する付勢ばねと、を有する軸受装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる回転軸を外周側から支持可能な軸受パッドと、
前記軸受パッドを外周側から支持し、前記軸線を囲う環状をなす内部支持環と、
前記内部支持環を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環との間に周方向にわたって隙間を形成する外部支持環と、
前記外部支持環に対して前記内部支持環を弾性支持する支持ばねと、
前記内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットと、
を備え、
前記ダンパユニットは、
前記外部支持環の内部に形成されたダンパ空間内に充填されたダンパオイルと、
前記ダンパ空間を径方向内側の第一領域と径方向外側の第二領域とに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域と前記第二領域とを往来可能となるように径方向に移動可能とされたピストン本体、及び、該ピストン本体に一体に設けられているとともに先端が前記内部支持環の外周面に当接するロッドを有するピストンロッドと、
前記ピストン本体を径方向内側に向かって付勢する付勢ばねと、
を有する軸受装置。
【請求項2】
前記支持ばねは、前記ダンパユニットを周方向から挟むように、前記ダンパユニットに一対が対応して設けられている請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
軸線方向に延びる回転軸を外周側から支持可能な軸受パッドと、
前記軸受パッドを外周側から支持し、前記軸線を囲う環状をなす内部支持環と、
前記内部支持環を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環との間に周方向にわたって隙間を形成する外部支持環と、
前記外部支持環に対して前記内部支持環を弾性支持する支持ばねと、
前記内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットと、
を備え、
前記ダンパユニットは、
前記支持ばねを周方向両側から挟むように前記隙間に設けられて、前記支持ばねを収容するダンパ空間を区画する一対のベローズと、
前記ダンパ空間内に充填されたダンパオイルと、
前記外部支持環に固定されて、前記ダンパ空間内を径方向内側の第一領域と径方向外側の第二領域とに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域と前記第二領域とを往来可能な連通孔が形成されたオリフィス板と、
を有し、
前記支持ばねは、径方向外側の端部が前記オリフィス板の径方向内側を向く面に接続されているとともに、径方向内側の端部が前記内部支持環の外周面に対して摺動可能に当接している軸受装置。
【請求項4】
前記ダンパユニットは、
前記第二領域の径方向外側に、該第二領域と隔離されてガスが封入されたガス空間を区画するダイヤフラムをさらに有する請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受装置を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置、及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蒸気タービンやギアド圧縮機等の回転機械に用いられる軸受装置が開示されており、粘性流体の抵抗力を用いて内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットが設けられている。
上記ダンパユニットは、内部の粘性流体が漏出しないようにシールすると同時に内部支持環を支持する密封支持部と、該ダンパユニット内部を二つの空間に隔てる部材とを有している。さらに、上記部材には、内部支持環の変位に応じて粘性流体が往来可能な連通孔が形成されている。これにより、内部支持環に対してダンパユニットが減衰力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-60290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転機械運転中に静的な荷重が生じた際、特許文献1に記載の密封支持部に内部支持環を弾性的に支持させるには、密封支持部を薄く柔軟に形成する必要がある。
しかしながら、密封支持部を薄く形成すると、動的な荷重がかかった際に密封支持部が外側に膨らむ。すると、粘性流体が連通孔を通過せず、所望の減衰性能が得られない場合がある。
一方、密封支持部を厚く形成すると柔軟性が損なわれる。そのため、内部支持環を弾性的に支持することが難しくなり、さらに周方向に生じる動的な荷重に対応しながら減衰力を円滑に付与できない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、内部支持環を弾性的に支持し、かつ周方向に生じる動的な荷重に対応しながら減衰力を円滑に付与できる軸受装置、及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る軸受装置は、軸線方向に延びる回転軸を外周側から支持可能な軸受パッドと、前記軸受パッドを外周側から支持し、前記軸線を囲う環状をなす内部支持環と、前記内部支持環を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環との間に周方向にわたって隙間を形成する外部支持環と、前記外部支持環に対して前記内部支持環を弾性支持する支持ばねと、前記内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットと、を備え、前記ダンパユニットは、前記外部支持環の内部に形成されたダンパ空間内に充填されたダンパオイルと、前記ダンパ空間を径方向内側の第一領域と径方向外側の第二領域とに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域と前記第二領域とを往来可能となるように径方向に移動可能とされたピストン本体、及び、該ピストン本体に一体に設けられているとともに先端が前記内部支持環の外周面に当接するロッドを有するピストンロッドと、前記ピストン本体を径方向内側に向かって付勢する付勢ばねと、を有する。
【0007】
また、本開示に係る軸受装置は、軸線方向に延びる回転軸を外周側から支持可能な軸受パッドと、前記軸受パッドを外周側から支持し、前記軸線を囲う環状をなす内部支持環と、前記内部支持環を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環との間に周方向にわたって隙間を形成する外部支持環と、前記外部支持環に対して前記内部支持環を弾性支持する支持ばねと、前記内部支持環に減衰力を付与するダンパユニットと、を備え、前記ダンパユニットは、前記支持ばねを周方向両側から挟むように前記隙間に設けられて、前記支持ばねを収容するダンパ空間を区画する一対のベローズと、前記ダンパ空間内に充填されたダンパオイルと、前記外部支持環に固定されて、前記ダンパ空間内を径方向内側の第一領域と径方向外側の第二領域とに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域と前記第二領域とを往来可能な連通孔が形成されたオリフィス板と、を有し、前記支持ばねは、径方向外側の端部が前記オリフィス板の径方向内側を向く面に接続されているとともに、径方向内側の端部が前記内部支持環の外周面に対して摺動可能に当接している。
【0008】
また、本開示に係る回転機械は、上記の軸受装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の軸受装置、及び回転機械によれば、内部支持環を弾性的に支持し、かつ周方向に生じる動的な荷重に対応しながら減衰力を円滑に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る軸受装置を備えた蒸気タービンの模式的な縦断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る軸受装置における、回転軸の軸線に直交する断面図である。
図3図2のIII部を拡大した図である。
図4図3で示す第一実施形態の軸受装置の拡大箇所(図2のIII部)と同一の箇所において、支持ばね及びダンパユニットを第二実施形態の構成に置き換えたものを示した図である。
図5】本開示の第二実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
(蒸気タービン)
以下、本開示の実施形態に係る軸受装置30を備えた回転機械について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の回転機械である蒸気タービン1は、蒸気のエネルギーを回転動力として取り出す外燃機関であって、発電所における発電機等に用いられるものである。
【0012】
蒸気タービン1は、タービンケーシング2と、該タービンケーシング2を貫通するように軸線Оに沿って延びる回転軸10とを備えている。蒸気タービン1は、タービンケーシング2に保持された静翼3と、回転軸10に設けられた動翼4と、回転軸10を軸線О回りに回転可能に支持する軸受部20と、スラストカラー11と、を備えている。
軸受部20は、スラスト軸受21及びラジアル軸受である軸受装置30を備えている。軸受装置30は、回転軸10を回転可能に支持している。
【0013】
回転軸10は、軸線Оを中心として延びる円柱形状をなしている。回転軸10は、タービンケーシング2に対して軸線О方向に延在している。回転軸10の一部には、スラストカラー11が形成されている。
スラストカラー11は、軸線Оを中心とした円板形状をなしており、フランジ状をなすように回転軸10の本体から該回転軸10の径方向外側に向かって一体的に張り出している。
【0014】
スラスト軸受21は、スラストカラー11を軸線О方向両側から摺動可能に支持している。スラストカラー11とスラスト軸受21は、タービンケーシング2内で動翼4や静翼3が、蒸気の力を受けて軸線О方向下流側(図1の右側)に押された際に、回転軸10が軸線О方向下流側へ移動しないように規制している。
【0015】
このような蒸気タービン1では、タービンケーシング2内に導入される蒸気が静翼3及び動翼4の間の流路を通過する。この際、蒸気が動翼4を回転させることで該動翼4の回転に伴って回転軸10が回転し、該回転軸10に接続された不図示の発電機等の機械に回転エネルギーが伝達される。
【0016】
(軸受装置)
次に、本実施形態の軸受装置30について説明する。本実施形態の軸受装置30は、蒸気タービン1の稼働時に回転軸10を回転可能に支持するラジアル軸受である。
図2に示すように、軸受装置30は、内部支持環32と、軸受パッド31と、ピボット35と、外部支持環33と、支持ばね34と、ダンパユニット40と、を備えている。
【0017】
(内部支持環)
内部支持環32は、軸線Оを囲う環状をなし、回転軸10を外周側から覆っている。内部支持環32の内周面は、回転軸10の外周面と間隔をあけて配置されている。
【0018】
(ピボット)
ピボット35は、内部支持環32の内周面に複数設けられている。
ピボット35は、内部支持環32の内周面から径方向内側に向かって突出しており、径方向外側から内側に向かうに従って次第に先細りしている。
本実施形態では、四つのピボット35が回転軸10の周方向に間隔をあけて該周方向の互いに異なる位置に設けられている。
【0019】
(軸受パッド)
軸受パッド31は、内部支持環32の内周面と回転軸10の外周面との間の環状の空間内に配置されている。軸受パッド31は、内部支持環32にピボット35を介して外周側から支持されている。軸受パッド31は、回転軸10の軸線Оに直交する断面視で周方向に円弧状に延びるとともに、径方向の寸法である厚さが一様な湾曲板形状をなしている。本実施形態では、軸受パッド31は、回転軸10の周方向に間隔をあけて互いに異なる周方向位置に、各ピボット35と対応するようにこれらピボット35と同数が設けられている。
【0020】
軸受パッド31における径方向外側を向く外周面は、ピボット35の径方向内側を向く先端と当接しており、軸受パッド31はピボット35の先端を支点として三次元的揺動が可能となるように該ピボット35に支持された状態で配置されている。これにより、いわゆるティルティング機構が構成されている。
【0021】
軸受パッド31は、回転軸10の外周面に対向する内周面としてのパッド面を有している。パッド面と回転軸10の外周面との間に区画されるクリアランスに潤滑油が介在することで、回転軸10の回転時にクリアランスが潤滑油で満たされて油膜が形成される。軸受パッド31は、当該油膜を介して軸線О方向に延びる回転軸10を摺動可能(回転可能)に外周側から支持している。
【0022】
パッド面は、軸線О方向から見て径方向外側に凹む円弧形状をなしており、当該円弧形状を維持したまま軸線О方向に延在している。軸受パッド31は、外周側の部分が鋼材等から形成された軸受パッド基部とされており、当該軸受パッド基部から径方向内側に向かってホワイトメタル等の軸受鋼が積層することで形成されている。したがって、パッド面は軸受鋼によって形成されている。
【0023】
(外部支持環)
外部支持環33は、内部支持環32を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環32との間に周方向にわたって隙間Sを形成している。したがって、外部支持環33の内周面は、内部支持環32の外周面と間隔をあけて配置されている。
【0024】
以下、第一実施形態の支持ばね34及びダンパユニット40を、図3を参照しながら説明する。
【0025】
(支持ばね)
支持ばね34は、外部支持環33の内周面と内部支持環32の外周面との間に形成される環状の隙間Sに複数設けられている。支持ばね34は、径方向に伸縮可能に配置されたコイルばねである。支持ばね34は、径方向内側の端部が内部支持環32の外周面に接続され、径方向外側の端部が外部支持環33の内周面に接続されている。すなわち、支持ばね34は、外部支持環33と内部支持環32とを接続している。したがって、支持ばね34は、外部支持環33に対して内部支持環32を弾性的に支持している。支持ばね34は、荷重と該荷重に応じるたわみ量(変位量)とが非線形の関係を有している非線形ばねである。
支持ばね34は、ダンパユニット40を周方向から挟むように、該ダンパユニット40に一対が対応して設けられている。
【0026】
(ダンパユニット)
ダンパユニット40は、外部支持環33に複数設けられている。本実施形態では、四つのダンパユニット40が外部支持環33に設けられており、内部支持環32の動揺を抑制するための減衰力を該内部支持環32に付与している。
ダンパユニット40は、筐体49と、ダンパオイルと、ピストンロッド41と、付勢ばね44と、を有している。
【0027】
筐体49は、直方体形状の箱状の部材であり、内部にダンパ空間Dを有している。筐体49は、ピストンロッド41と、付勢ばね44と、をダンパ空間D内に収容している。ダンパ空間D内には、ダンパ用の粘性流体であるダンパオイルが充填されている。
【0028】
ピストンロッド41は、ピストン本体42と、ロッド43と、を有している。
ピストン本体42は、板状の部材であり、ダンパ空間Dを径方向内側の第一領域Aと第二領域Bとに区画している。ピストン本体42は、ダンパオイルが第一領域Aと第二領域Bとを往来可能となるように径方向に移動可能に筐体49内部に設けられている。より詳しくは、ピストン本体42の端部は、筐体49の内面との間に微小隙間Cを形成しており、該微小隙間Cを介してダンパオイルが第一領域Aと第二領域Bとを往来(流通)することでピストン本体42が径方向に移動可能となっている。
ピストン本体42には、第一領域Aと第二領域Bとを連通させ、ダンパオイルが往来可能な連通孔46aが形成されている。
【0029】
ロッド43は、ピストン本体42の径方向内側を向く一面から径方向内側に向かって立設し、該ピストン本体42と一体に設けられている。ロッド43は、ロッド基部43aとロッド端部43bを有しており、ロッド基部43aは、径方向に延在する柱状の部材である。ロッド端部43bは、ロッド基部43aの径方向内側端部に設けられた半球面状の部材である。ピストンロッドの先端であるロッド端部43bは、内部支持環32の外周面に当接している。ロッド基部43aは、筐体49を貫通し、径方向に進退可能に筐体49の内部から外部へ突出しており、ロッド基部43aと筐体49との間にはシール部Eが形成されている。シール部Eは、金属シールであり、筐体49内部からダンパオイルが漏出しないようにダンパ空間Dと隙間Sとをシールしている。
【0030】
付勢ばね44は、ピストン本体42の径方向外側を向く他面に設けられているコイルばねである。付勢ばね44は、筐体49のダンパ空間Dを区画する径方向内側を向く内面に当接し、該内面に付勢力を付与することによって径方向内側に向かってピストン本体42を付勢している。したがって、付勢ばね44の付勢力により、ピストン本体42のロッド43の先端は内部支持環32の外周面に常に当接している状態となる。
【0031】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る軸受装置30の動作について説明する。蒸気タービン1の稼働に伴って回転軸10が回転すると、回転軸10と軸受パッド31との間には、不図示のノズルによって軸受装置30の外部から潤滑油が供給される。これにより、回転軸10の外周面と軸受パッド31のパッド面とが区画するクリアランスが潤滑油で満たされ、油膜が形成される。これにより、回転軸10は、パッド面に油膜を介して摺動可能に支持される。
【0032】
ここで、回転軸10が回転すると、径方向外側に向かう静的な荷重が油膜及び軸受パッド31を介して内部支持環32にかかる。上記構成の如く、隙間Sに設けられた支持ばね34が内部支持環32を弾性的に支持していることで、内部支持環32を一定の位置に保持することができる。
【0033】
また、回転軸10の回転中に軸ぶれ等が生じた場合、回転軸10は、軸線Оを中心に動揺(振動)する。すなわち、動揺により油膜及び軸受パッド31を介して内部支持環32に動的な荷重がかかり、内部支持環32は回転軸10の動揺に伴って動揺する。上記の構成により、内部支持環32に動揺が生じた場合、内部支持環32は、支持ばね34によって弾性的に支持されると同時に、内部支持環32の外周面に当接しているロッド43を介してピストン本体42を径方向外側に向かって押す。
【0034】
ピストン本体42が径方向外側に向かって押されると、第二領域Bに存在しているダンパオイルが微小隙間C及び連通孔46aを通過して第一領域Aへと移動する。ダンパオイルが第二領域Bから第一領域Aへと移動する際、微小隙間C及び連通孔46aと該ダンパオイルとの間で抵抗力が発生し、該抵抗力が内部支持環32に減衰力として伝わる。これにより、ダンパユニット40がダンパとして機能し、内部支持環32の動揺(振動)を抑制することができる。
【0035】
また、回転軸10の回転中に軸ぶれ等の動揺(振動)が生じた場合、内部支持環32が動揺に伴う回転を起こし、外部支持環33に周方向の動的な荷重がかかる場合がある。上記構成の如く、支持ばね34が隙間Sに設けられているため、支持ばね34は外部支持環33を起点に周方向に弾性変形する。したがって、内部支持環32の回転に円滑に対応しながら内部支持環32を支持することができる。
【0036】
さらに、上記構成では、内部支持環32の外周面に当接するロッド43のロッド端部43bが半球面状に形成されている。これにより、内部支持環32が回転した際、内部支持環32の回転により、ロッド端部43bが内部支持環32の外周面に引っかかることがないため、ダンパユニット40のダンピングが阻害されることがない。したがって、内部支持環32が回転を起こした場合でも、ダンパユニット40がダンパとして円滑に減衰力を付与することができる。
【0037】
また、上記構成では、支持ばね34は、ダンパユニット40を周方向から挟むように、該ダンパユニット40に一対が対応して設けられている。これにより、内部支持環32を効率的に弾性支持することができる。
【0038】
(第二実施形態)
以下、本開示の第二実施形態の軸受装置30の構成について図4を参照して説明する。第二実施形態では、軸受装置30が備える支持ばね34及びダンパユニット40の構成以外は第一実施形態と同様の構成をなしている。第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図4は、図3で示す第一実施形態の軸受装置30の拡大箇所(図2のIII部)と同一の箇所において、支持ばね34及びダンパユニット40を第二実施形態の構成に置き換えたものを示した図である。
【0039】
(支持ばね)
支持ばね34は、外部支持環33の内周面と内部支持環32の外周面との間に形成される環状の隙間Sに複数設けられている。支持ばね34は、径方向に伸縮可能に配置されたコイルばねである。支持ばね34は、径方向外側の一端がオリフィス板46に接続されており、径方向内側の他端が内部支持環32の外周面に摺動可能に当接している。したがって、支持ばね34は、外部支持環33に対してオリフィス板46を介して内部支持環32を弾性的に支持している。支持ばね34は、荷重と該荷重に応じるたわみ量(変位量)とが非線形の関係を有している非線形ばねである。
【0040】
(ダンパユニット)
ダンパユニット40は、外部支持環33と内部支持環32との間に複数設けられている。本実施形態では、四つのダンパユニット40が外部支持環33に設けられており、内部支持環32の動揺を抑制するための減衰力を該内部支持環32に付与している。
ダンパユニット40は、ベローズ45と、オリフィス板46と、ダンパオイルと、支持ばね保持部材48と、ダイヤフラム47と、を有している。
【0041】
ベローズ45は、柔軟性を有するシール用の部材であり、隙間Sに設けられた支持ばね34を周方向両側から挟むように一対が隙間Sに設けられている。ベローズ45は、支持ばね34を収容するダンパ空間Dを区画している。ダンパ空間D内には、ダンパ用の粘性流体であるダンパオイルが充填されている。すなわち、ベローズ45は、ダンパ空間Dからダンパオイルが漏出しないように該ダンパ空間Dと隙間Sとをシールしている。
【0042】
オリフィス板46は、外部支持環33に固定されており、ダンパ空間D内を径方向内側の第一領域Aと径方向外側の第二領域Bとに区画している。オリフィス板46には、ダンパオイルが第一領域Aと第二領域Bとを往来可能な連通孔46aが形成されている。
【0043】
支持ばね保持部材48は、ダンパ空間D内で支持ばね34を外側から囲う筒状の部材である。支持ばね保持部材48は、回転軸10の回転中に内部支持環32が動揺し、支持ばね34の他端部分が摺動して変形した際に、他端が内部支持環32から外れないように支持ばね34を所定の位置に保持している。
【0044】
ダイヤフラム47は、外部支持環33とオリフィス板46との間に設けられている柔軟性を有する膜状の部材である。ダイヤフラム47は、第二領域Bの径方向外側に、該第二領域Bと隔離されてガスが封入されたガス空間Gを区画している。
【0045】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る軸受装置30の動作について説明する。
回転軸10が回転すると、径方向外側に向かう静的な荷重が油膜及び軸受パッド31を介して内部支持環32にかかる。上記構成の如く、オリフィス板46と内部支持環32との間に設けられた支持ばね34が内部支持環32を弾性的に支持していることで、内部支持環32を一定の位置に保持することができる。
【0046】
また、回転軸10の回転中に軸ぶれ等が生じた場合、回転軸10は、軸線Оを中心に動揺(振動)する。すなわち、動揺により油膜及び軸受パッド31を介して内部支持環32に動的な荷重がかかり、内部支持環32も回転軸10の動揺に伴って動揺する。上記の構成により、内部支持環32に動揺が生じた場合、内部支持環32は、支持ばね34によって弾性的に支持されると同時に、支持ばね34の変位に応じて内部支持環32の外周面が外部支持環33の内周面へと迫り、第一領域Aが圧縮される。
【0047】
第一領域Aが圧縮されると、該第一領域Aに存在するダンパオイルが連通孔46aを通過して第二領域Bへと移動する。この際、ダンパオイルが第一領域Aから第二領域Bへと移動する際に連通孔46aと該ダンパオイルとの間で抵抗力が発生し、該抵抗力が内部支持環32に減衰力として伝わる。これにより、ダンパユニット40がダンパとして機能し、内部支持環32の動揺(振動)を抑制することができる。
【0048】
また、回転軸10の回転中に軸ぶれ等の動揺(振動)が生じた場合、内部支持環32が動揺に伴う回転を起こし、外部支持環33に周方向の動的な荷重がかかる場合がある。上記構成の如く、支持ばね34は、一端がオリフィス板46に接続されており、他端が内部支持環32の外周面に摺動可能に当接しているため、支持ばね34の他端部分は外部支持環33を起点に周方向に弾性変形する。したがって、内部支持環32の回転に円滑に対応しながら内部支持環32を支持することができる。
【0049】
また、上記構成の如く、ダイヤフラム47は、第二領域Bの径方向外側に該第二領域Bと隔離されてガスが封入されたガス空間Gを区画している。内部支持環32が大きく動揺し、第二領域Bの容積以上のダンパオイルが流入した場合、ダイヤフラム47が弾性変形して径方向外側に膨れることにより、区画された第二領域Bの容積以上のダンパオイルを保持することができる。さらに、回転軸10の動揺が収まった際は、ダイヤフラム47の復元力、及びガス空間G内のガスの径方向内側へ該ダイヤフラム47を押圧する圧力(気圧)により、ダンパオイルが第二領域Bから第一領域Aへ押し戻される。これにより、常に第一領域Aから第二領域Bにダンパオイルを移動可能とすることができ、効率的に内部支持環32に減衰力を付与することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0051】
なお、上記の実施形態では、支持ばね34としてコイルばねを用いているが、コイルばねに代えて非線形ばねである皿ばねを用いてもよい。第二実施形態の変形例として、支持ばね34に皿ばねを用いた例を図5に示す。
図5に示すように、皿ばねは、各皿ばね座金を同じ向きに重ね合わせる並列重ねとされている。これにより、皿ばねは、コイルばねと同様の作用効果を得ることができ、内部支持環32から受ける静的な荷重が漸次増大した際に、コイルばねと比較し、荷重に対してよりなだらかにたわむ(変位する)ことができる。また、皿ばねは、各皿ばね座金を互い違いに重ね合わせる直列組合せとしてもよい。
【0052】
また、上記の第一実施形態では、付勢ばね44としてコイルばねを用いているが、コイルばねに代えて皿ばねを用いてもよい。また、付勢ばね44は、線形ばねでも非線形ばねでもどちらであってもよい。
【0053】
また、上記の第一実施形態では、ダンパユニット40が筐体49を有しているが、この構成に留まることはなく、筐体49に代えて外部支持環33にダンパ空間Dとなる空間を形成し、同様にダンパオイルを該空間内に充填してピストンロッド41及び付勢ばね44を該空間内に設ける構成であってもよい。
【0054】
また、上記の第一実施形態において、付勢ばね44としてコイルばねを用いる場合、付勢ばね44は筐体49内部の径方向内側に位置する内面に設けられ、該付勢ばね44の復元力がピストン本体42を径方向内側に向かって引っ張る構成であってもよい。また、付勢ばね44は、ピストン本体42の径方向外側を向く他面及び筐体49内部の径方向内側に位置する内面の両方に設けられる構成であってもよい。
【0055】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態で説明された軸受装置30の構成は、それぞれ独立した構成に留まることはなく、適宜組み合わせて軸受装置30の支持ばね34及びダンパユニット40を構成してもよい。
【0056】
また、上記の実施形態の軸受装置30は、蒸気タービン1に用いられる軸受装置30であるが、ギアド圧縮機やガスタービン等の他の回転機械に用いられてもよい。
【0057】
<付記>
実施形態に記載の軸受装置30、及び回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)第1の態様に係る軸受装置30は、軸線О方向に延びる回転軸10を外周側から支持可能な軸受パッド31と、前記軸受パッド31を外周側から支持し、前記軸線Оを囲う環状をなす内部支持環32と、前記内部支持環32を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環32との間に周方向にわたって隙間Sを形成する外部支持環33と、前記外部支持環33に対して前記内部支持環32を弾性支持する支持ばね34と、前記内部支持環32に減衰力を付与するダンパユニット40と、を備え、前記ダンパユニット40は、前記外部支持環33の内部に形成されたダンパ空間D内に充填されたダンパオイルと、前記ダンパ空間Dを径方向内側の第一領域Aと径方向外側の第二領域Bとに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域Aと前記第二領域Bとを往来可能となるように径方向に移動可能とされたピストン本体42、及び、該ピストン本体42に一体に設けられているとともに先端が前記内部支持環32の外周面に当接するロッド43を有するピストンロッド41と、前記ピストン本体42を径方向内側に向かって付勢する付勢ばね44と、を有する。
【0059】
これにより、支持ばね34は外部支持環33を起点に周方向に弾性変形する。さらに、ダンパユニット40がダンパとして機能し、内部支持環32の動揺(振動)を抑制する減衰力を付与することができる。したがって、内部支持環32の回転に対応しながら内部支持環32を支持し、かつ内部支持環32の動揺を抑制する減衰力を円滑に付与することができる。
【0060】
(2)第2の態様に係る軸受装置30は、(1)の軸受装置30であって、前記支持ばね34は、前記ダンパユニット40を周方向から挟むように、前記ダンパユニット40に一対が対応して設けられていてもよい。
【0061】
これにより、内部支持環32を効率的に弾性支持することができる。
【0062】
(3)第3の態様に係る軸受装置30は、軸線О方向に延びる回転軸10を外周側から支持可能な軸受パッド31と、前記軸受パッド31を外周側から支持し、前記軸線Оを囲う環状をなす内部支持環32と、前記内部支持環32を径方向外側から囲う環状をなし、該内部支持環32との間に周方向にわたって隙間Sを形成する外部支持環33と、前記外部支持環33に対して前記内部支持環32を弾性支持する支持ばね34と、前記内部支持環32に減衰力を付与するダンパユニット40と、を備え、前記ダンパユニット40は、前記支持ばね34を周方向両側から挟むように前記隙間Sに設けられて、前記支持ばね34を収容するダンパ空間Dを区画する一対のベローズ45と、前記ダンパ空間D内に充填されたダンパオイルと、前記外部支持環33に固定されて、前記ダンパ空間D内を径方向内側の第一領域Aと径方向外側の第二領域Bとに区画するとともに、前記ダンパオイルが前記第一領域Aと前記第二領域Bとを往来可能な連通孔46aが形成されたオリフィス板46と、を有し、前記支持ばね34は、径方向外側の端部が前記オリフィス板46の径方向内側を向く面に接続されているとともに、径方向内側の端部が前記内部支持環32の外周面に対して摺動可能に当接している。
【0063】
これにより、支持ばね34は外部支持環33を起点に周方向に弾性変形する。さらに、ダンパユニット40がダンパとして機能し、内部支持環32の動揺(振動)を抑制する減衰力を付与することができる。したがって、内部支持環32の回転に対応しながら内部支持環32を支持し、かつ内部支持環32の動揺を抑制する減衰力を円滑に付与することができる。
【0064】
(4)第4の態様に係る軸受装置30は、(3)の軸受装置30であって、前記ダンパユニット40は、前記第二領域Bの径方向外側に、該第二領域Bと隔離されてガスが封入されたガス空間Gを区画するダイヤフラム47をさらに有していてもよい。
【0065】
これにより、常に第一領域Aから第二領域Bにダンパオイルを移動可能とすることができ、効率的に内部支持環32に減衰力を付与することができる。
【0066】
(5)第5の態様に係る回転機械は、(1)から(4)のいずれかの軸受装置30を備える。
【0067】
これにより、内部支持環を弾性的に支持し、かつ周方向に生じる動的な荷重に対応しながら減衰力を円滑に付与できる軸受装置を備えた回転機械を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…蒸気タービン 2…タービンケーシング 3…静翼 4…動翼 10…回転軸 11…スラストカラー 20…軸受部 21…スラスト軸受 30…軸受装置 31…軸受パッド 32…内部支持環 33…外部支持環 34…支持ばね 35…ピボット 40…ダンパユニット 41…ピストンロッド 42…ピストン本体 43…ロッド 43a…ロッド基部 43b…ロッド端部 44…付勢ばね 45…ベローズ 46…オリフィス板 46a…連通孔 47…ダイヤフラム 48…支持ばね保持部材 49…筐体 A…第一領域 B…第二領域 C…微小隙間 D…ダンパ空間 E…シール部 G…ガス空間 О…軸線 S…隙間 T…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5