(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143217
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20220926BHJP
F16F 1/376 20060101ALI20220926BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F16F9/58 A
F16F1/376
F16F7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043623
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 龍一
(72)【発明者】
【氏名】増澤 駿
【テーマコード(参考)】
3J059
3J066
3J069
【Fターム(参考)】
3J059AE10
3J059BA54
3J059BB01
3J059BC04
3J059BD01
3J059DA50
3J059GA03
3J066AA07
3J066AA23
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD05
3J066BE03
3J069AA54
3J069CC05
3J069DD50
(57)【要約】
【課題】リバウンドクッションが作動流体の流路抵抗となってしまうことを抑制できるシリンダ装置を提供する。
【解決手段】作動流体が封入されるシリンダと、シリンダ内に摺動可能に嵌装されシリンダ内を二室に区画するピストンと、シリンダの開口側に設けられるロッドガイドと、一端側がピストンに連結されるとともにロッドガイドに挿通されて他端側がシリンダの外部に延出されるピストンロッドと、ピストンロッドに設けられピストンロッドのシリンダからの伸長に応じてロッドガイドに当接するリバウンドクッション66と、を備え、リバウンドクッション66は、表面が微小な凹凸101を有する梨地状である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され該シリンダ内を二室に区画するピストンと、
前記シリンダの開口側に設けられるロッドガイドと、
一端側が前記ピストンに連結されるとともに前記ロッドガイドに挿通されて他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに設けられ該ピストンロッドの前記シリンダからの伸長に応じて前記ロッドガイドに当接するリバウンドクッションと、を備え、
前記リバウンドクッションは、表面が微小な凹凸を有する梨地状であることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記リバウンドクッションは、全面が微小な凹凸を有する梨地状であることを特徴とする請求項1記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記リバウンドクッションは、微小な凹凸を有する金型で成形されることにより前記梨地状とされ、または、吹き付けにより前記梨地状とされ、または、バフ研磨により前記梨地状とされていることを特徴とする請求項1または2記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ装置には、ピストンロッドのシリンダからの伸長に応じてロッドガイドに当接するリバウンドクッションをピストンロッドに設けたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-39252号公報
【特許文献2】特開2014-92169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リバウンドクッションは、ロッドガイドへ当接して変形すると、その表面を流れる作動流体の流路を狭めてしまい、流路抵抗となってしまう。
【0005】
したがって、本発明は、リバウンドクッションが流路抵抗となることを抑制することが可能となるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る一態様は、リバウンドクッションの表面が微小な凹凸を有する梨地状である、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リバウンドクッションが流路抵抗となることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置を示す正断面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置のリバウンドクッションを示す正断面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置のリバウンドクッションを示す平面図である。
【
図4】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置のリバウンドクッションの表面を示す正断面図である。
【
図5】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置の伸び切り時の要部を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る一実施形態のシリンダ装置を図面を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示す本実施形態のシリンダ装置10は、作動流体として油液が用いられる油圧緩衝器(Shock Absorber)であり、自動車等の車両のサスペンション装置に用いられるものである。シリンダ装置10は、円筒状の内筒11と、内筒11より大径で内筒11との間にリザーバ室12を形成するように内筒11の外周側に同軸状に設けられる有底円筒状の外筒13とからなるシリンダ14を有している。つまり、このシリンダ装置10は、そのシリンダ14が内筒11と外筒13とを有する複筒式となっている。なお、本発明は、複筒式に限らず、単筒式のシリンダ装置にも適用可能である。
【0011】
シリンダ装置10は、内筒11の中心軸線上に配置されるとともに軸方向一端側が内筒11の内部に挿入され軸方向他端側が内筒11および外筒13のそれぞれの開口側から外部へ延出されるピストンロッド15と、このピストンロッド15の一端側に連結されシリンダ14の内筒11内に摺動可能に嵌装されて内筒11内を二つの室16,17に区画するピストン18とを有している。シリンダ14には、内筒11内に作動流体としての油液が封入されており、内筒11と外筒13との間のリザーバ室12に作動流体としての油液および高圧ガスが封入されている。
【0012】
シリンダ装置10は、シリンダ14を構成する内筒11および外筒13の軸方向における開口側に設けられる筒状のロッドガイド21と、外筒13の軸方向におけるロッドガイド21よりもさらに外側に配置される環状のオイルシール22と、内筒11および外筒13の軸方向のロッドガイド21およびオイルシール22とは反対側に配置されるベースバルブ23とを有している。ロッドガイド21およびオイルシール22には、それぞれの内側にピストンロッド15が摺動可能に挿通される。ロッドガイド21は、ピストンロッド15を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド15の移動を案内する。オイルシール22は、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド15に摺接して、内筒11内の油液およびリザーバ室12内の高圧ガスおよび油液が外部に漏出するのを規制する。なお、本実施形態ではリザーバ室12内に作動流体としての油液および高圧ガスを封入するとしたが、高圧ガスに限らず、空気を封入してもよい。
【0013】
外筒13は、金属製であり、円筒状の胴部25と、この胴部25におけるピストンロッド15の突出側とは反対の一端側を閉塞させる底部26と、胴部25におけるピストンロッド15の突出側の開口部27の位置から径方向内方に突出する係止部28とを有する略有底円筒状をなしている。
【0014】
内筒11は、金属製であり、円筒状をなし、軸方向の一端側が外筒13の底部26の内側に配置されるベースバルブ23のベースボディ30に嵌合状態で支持され、軸方向の他端側が外筒13の開口部27の内側に嵌合されるロッドガイド21に支持されている。
【0015】
ベースバルブ23のベースボディ30は金属製であり、ベースボディ30には、内筒11内の室17と、外筒13と内筒11との間のリザーバ室12とを連通可能な油通路31,32が形成されている。また、ベースボディ30には内側の油通路31を開閉可能な縮み側減衰バルブとしてのディスクバルブ33が底部26側に配置されるとともに、外側の油通路32を開閉可能なチェックバルブとしてのディスクバルブ34が底部26とは反対側に配置されている。これらディスクバルブ33,34は、リベット35でベースボディ30に取り付けられている。
【0016】
ディスクバルブ33は、ディスクバルブ34の図示略の通路穴および油通路31を介して流れる室17からリザーバ室12側への油液の流れを許容して減衰力を発生する一方で逆方向の油液の流れを規制する。これとは反対に、ディスクバルブ34は油通路32を介して流れるリザーバ室12から室17側への油液の流れを抵抗無く許容する一方で逆方向の油液の流れを規制する。つまり、ディスクバルブ33は、ピストンロッド15が縮み側に移動しピストン18が室17側に移動して室17の圧力が上昇すると油通路31を開くことになり、その際に減衰力を発生する減衰バルブである。また、ディスクバルブ34は、ピストンロッド15が伸び側に移動しピストン18が室16側に移動して室17の圧力が下降すると油通路32を開くことになるが、その際にリザーバ室12から室17内に実質的に減衰力を発生せずに油液を流すサクションバルブである。
【0017】
ピストンロッド15は、金属製であり、略一定径の主軸部37と、内筒11内に挿入される側の端部の、主軸部37よりも小径の取付軸部38とを有している。取付軸部38にはナット40が螺合されており、このナット40によってピストン18およびその両側のディスクバルブ41,42がピストンロッド15に取り付けられている。ピストンロッド15は、ピストン18と一体的に移動する。
【0018】
ピストン18には、内筒11内のピストン18よりも底部26側の室17と、内筒11内のピストン18よりも底部26とは反対側の室16とを連通可能な油通路44および油通路45が形成されている。また、ピストン18には、油通路44を開閉可能な縮み側減衰バルブである上記したディスクバルブ41が底部26とは反対側に配置されるとともに、油通路45を開閉可能な伸び側減衰バルブとしての上記したディスクバルブ42が底部26側に配置されている。
【0019】
ディスクバルブ41は油通路44を介して流れる室17から室16側への油液の流れを許容する一方で逆方向の油液の流れを規制する。これとは反対に、ディスクバルブ42はディスクバルブ41の図示略の通路穴および油通路45を介して流れる室16側から室17への油液の流れを許容する一方で逆方向の油液の流れを規制する。つまり、ディスクバルブ41は、ピストンロッド15が縮み側に移動しピストン18が室17側に移動して室17の圧力が上昇すると油通路44を開くことになり、その際に減衰力を発生する減衰バルブである。また、ディスクバルブ42は、ピストンロッド15が伸び側に移動しピストン18が室16側に移動して室16の圧力が上昇すると油通路45を開くことになり、その際に減衰力を発生する減衰バルブである。
【0020】
なお、ピストンロッド15が伸び側に移動して内筒11からの突出量が増大すると、その分の油液がリザーバ室12からベースバルブ23のディスクバルブ34を開きつつ油通路32を介して室17に流れることになり、逆にピストンロッド15が縮み側に移動して内筒11への挿入量が増大すると、その分の油液が室17からディスクバルブ33を開きつつ油通路31を介してリザーバ室12に流れることになる。
【0021】
ロッドガイド21は、略段付き円筒状をなす金属製のロッドガイド本体50と、ロッドガイド本体50の内周部に嵌合固定される円筒状のカラー51とからなっている。カラー51は、SPCC材やSPCE材などの金属製の円筒体の内周面にフッ素樹脂含浸青銅が被覆されて形成されるものである。
【0022】
ロッドガイド本体50は、軸方向一側の挿入部53と、軸方向他側にあって挿入部53よりも大径の鍔部54とを有しており、挿入部53において内筒11の内周側に挿入され、鍔部54において外筒13の胴部25の内周部に嵌合挿入される。ロッドガイド本体50の径方向の中央には、軸方向の鍔部54側に大径穴部56が、軸方向の挿入部53側に大径穴部56よりも小径の小径穴部57が、それぞれ形成されている。
【0023】
ロッドガイド本体50には、軸方向の鍔部54側の端部に、軸方向に突出する環状凸部59が形成されており、この環状凸部59の径方向内側位置に、軸方向に沿って貫通する連通穴60が形成されている。連通穴60は、外筒13と内筒11との間のリザーバ室12に連通している。なお、カラー51は、ロッドガイド本体50の小径穴部57内に嵌合されており、ロッドガイド21には、このカラー51内にピストンロッド15が主軸部37において摺接するように挿通される。
【0024】
オイルシール22は、金属製の芯材にゴムを接着したものであり、外筒13の軸方向の一端部に配置され、その内周部においてピストンロッド15の主軸部37の外周部に圧接することになり、ロッドガイド21とピストンロッド15の主軸部37との隙間から漏れ出る油液等の外側への漏れ出しを規制する。オイルシール22は、その外周部の軸方向一側がロッドガイド21の環状凸部59に当接し、軸方向他側が外筒13の係止部28に当接している。
【0025】
ピストンロッド15の主軸部37には、内筒11内に位置する部分、言い換えればピストン18とロッドガイド21との間となる部分に、金属製のリバウンドストッパ61が固定されている。このリバウンドストッパ61は、有孔円板状のストッパ部62と、ストッパ部62の内周側から軸方向一側に延出する係合部63とを有しており、係合部63が径方向内方に加締められてピストンロッド15に固定されている。つまり、リバウンドストッパ61は、加締め前の係合部63が軸方向の取付軸部38側に向く姿勢でその内周部においてピストンロッド15の主軸部37の外周部に嵌合させられることになり、この状態で、主軸部37の外周部に形成された固定溝64に係合部63が加締められて係合することにより、主軸部37の軸方向所定位置に固定される。リバウンドストッパ61の最大外径であるストッパ部62の外径は、内筒11の内径よりも小径となっている。
【0026】
ピストンロッド15の主軸部37には、リバウンドストッパ61とロッドガイド21との間位置に、円筒状のリバウンドクッション66が設けられている。このリバウンドクッション66には、その径方向内側にピストンロッド15の主軸部37が挿通されている。リバウンドクッション66は、リバウンドストッパ61のストッパ部62の軸方向における係合部63とは反対側に配置されている。
【0027】
リバウンドクッション66は、合成樹脂製であり、例えば、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)材から一体成形されるものである。リバウンドクッション66は、
図2に示すように、径方向内側の表面である内周表面71と、径方向外側の表面である外周表面72と、軸方向両端の表面である一対の軸方向端表面73と、を有している。これら内周表面71、外周表面72および一対の軸方向端表面73は、中心軸線を一致させており、これらの中心軸線がリバウンドクッション66の中心軸線となる。
【0028】
リバウンドクッション66の内周表面71には、その軸方向中央に、内周表面71において最も径方向内側に位置しリバウンドクッション66においても最も径方向内側に位置する円筒状の内周端表面81が形成されており、その軸方向両端部に内周端表面81から軸方向に離れるほど大径となる一対のテーパ状のテーパ表面82が形成されている。
【0029】
一方のテーパ表面82の軸方向における内周端表面81側の端縁部が、内周端表面81の軸方向におけるこのテーパ表面82側の端縁部となっている。この一方のテーパ表面82の軸方向における内周端表面81とは反対側の端縁部が、一方の軸方向端表面73の内周縁部となっている。また、他方のテーパ表面82の軸方向における内周端表面81側の端縁部が、内周端表面81の軸方向におけるこのテーパ表面82側の端縁部となっている。この他方のテーパ表面82の軸方向における内周端表面81とは反対側の端縁部が、他方の軸方向端表面73の内周縁部となっている。
【0030】
リバウンドクッション66の軸方向両端の一対の軸方向端表面73は、リバウンドクッション66の中心軸線に対して直交して広がる平面状をなしている。
【0031】
リバウンドクッション66の外周表面72は、リバウンドクッション66の軸方向における中央位置が最も大径であり、この中央位置からリバウンドクッション66の軸方向において離れるほど小径となっている。言い換えれば、リバウンドクッション66の外周表面72は、リバウンドクッション66の径方向における外側に膨出する形状をなしている。リバウンドクッション66の外周表面72は、軸方向一側の端縁部が一方の軸方向端表面73の外周縁部となっており、軸方向他側の端縁部が他方の軸方向端表面73の外周縁部となっている。リバウンドクッション66の外周表面72は、リバウンドクッション66の中心軸線を含む平面での断面が、リバウンドクッション66の周方向における位置によらず一定の円弧状である。リバウンドクッション66の外周表面72は、軸方向中央位置を基準とした鏡面対称状をなしている。
【0032】
リバウンドクッション66の自然状態での最大外径すなわち外周表面72の最大外径は、内筒11の内径よりも小径となっている。リバウンドクッション66は、ピストンロッド15に設けられて内筒11内に配置された状態で、ロッドガイド21に当接しなければ、内筒11との間に径方向の隙間を設ける最大外径となっている。言い換えれば、リバウンドクッション66は、ロッドガイド21に当接しなければ、内筒11との間に全長にわたって油液の流路を形成する。リバウンドクッション66は、内周表面71がピストンロッド15の主軸部37の円筒面状の外周面91に対向し、外周表面72が内筒11の円筒面状の内周面92に対向する。
【0033】
リバウンドクッション66は、その表面が、微小な凹凸101を多数、ほぼ均等な分布で有する梨地状となっている。リバウンドクッション66は、その全面が、微小な凹凸101を多数、ほぼ均等な分布で有する梨地状となっている。すなわち、内周端表面81の全面と、一対のテーパ表面82のそれぞれの全面と、一対の軸方向端表面73のそれぞれの全面と、外周表面72の全面とが、微小な凹凸101を多数ほぼ均等な分布で同様に有する梨地状となっている。
【0034】
ここで、
図4において内周端表面81に形成された凹凸101を例にとり説明すると、凹凸101は、内周端表面81の円筒状の主表面102から主表面102の径方向における内方に凹む凹部103と、主表面102から主表面102の径方向における外方に突出する凸部104と、を有している。凹部103は、主表面102からの深さDが、例えば、0.1mm~0.5mmとなっており、主表面102での開口内径φ1が、例えば、0.1mm~0.5mmとなっている。また、凹部103の分布の密度は、1平方センチメートル当たり、10個~27個となっている。凸部104は、主表面102からの高さHが、例えば、0.1mm~0.5mmとなっており、主表面102での外径φ2が、例えば、0.1mm~1mmとなっている。また、凸部104の分布の密度は、1平方センチメートル当たり、10個~31個となっている。一対のテーパ表面82の凹凸101、一対の軸方向端表面73の凹凸101および外周表面72の凹凸101も同様となっている。
【0035】
リバウンドクッション66は、ピストンロッド15のシリンダ14からの伸長に応じて、
図5に示すように、ロッドガイド21に当接してピストンロッド15のシリンダ14からの伸長をリバウンドストッパ61とで制限する。つまり、ピストンロッド15がシリンダ14からの伸長量を増大させると、リバウンドクッション66は、リバウンドストッパ61に保持されてピストンロッド15とともにロッドガイド21側に移動し、ロッドガイド21に当接後、ロッドガイド21とリバウンドストッパ61とに挟まれて弾性変形し、限界まで弾性変形するとリバウンドストッパ61およびこれに固定されたピストンロッド15をロッドガイド21に対し停止させる。ピストンロッド15は、この位置が伸び切り位置となる。リバウンドクッション66は、ピストンロッド15が伸び切り位置に近づく伸び切り時に弾性変形する。
【0036】
ピストンロッド15の伸び切り時に、リバウンドクッション66は、一方の軸方向端表面73がリバウンドストッパ61のストッパ部62に当接し、他方の軸方向端表面73がロッドガイド21に当接して、軸方向の長さが短くなるように弾性変形することになり、これにより径方向に膨らむ。その結果、リバウンドクッション66は、外周表面72が内筒11の内周面92に当接し、内周表面71がピストンロッド15の主軸部37の外周面91に当接する。このとき、リバウンドクッション66は、その表面である、軸方向両側の軸方向端表面73と外周表面72と内周表面71とが、いずれも微小な凹凸101を有する梨地状であるため、その表面を流れる油液の流路を凹凸101が確保することになる。すなわち、リバウンドクッション66は、ピストンロッド15の伸び切り時においても、リバウンドストッパ61のストッパ部62に当接する一方の軸方向端表面73の凹凸101が潰れ切らずにこの軸方向端表面73とストッパ部62との間の径方向の流路を確保し、ロッドガイド21に当接する他方の軸方向端表面73の凹凸101が潰れ切らずにこの軸方向端表面73とロッドガイド21との間の径方向の流路を確保し、内筒11に当接する外周表面72の凹凸101が潰れ切らずにこの外周表面72と内筒11との間の軸方向の流路を確保し、ピストンロッド15に当接する内周表面71の凹凸101が潰れ切らずにこの内周表面71とピストンロッド15との間の軸方向の流路を確保する。
【0037】
ここで、リバウンドクッション66は、キャビティ内面に微小な凹凸を有する金型で成形されることによりキャビティ内面の凹凸が転写されて表面が梨地状とされる。または、リバウンドクッション66は、通常の金型で成形された後、微細な粒子状樹脂が表面に吹き付けられることにより梨地状とされる。または、リバウンドクッション66は、通常の金型で成形された後、表面がバフ研磨されることにより梨地状とされる。
【0038】
上記した特許文献1,2には、ピストンロッドのシリンダからの伸長に応じてロッドガイドに当接するリバウンドクッションをピストンロッドに設けたシリンダ装置が開示されている。リバウンドクッションは、ロッドガイドへ当接して変形すると、その表面を流れる油液の流路を狭めてしまい、流路抵抗となってしまう場合がある。
【0039】
これに対し、実施形態のシリンダ装置10は、リバウンドクッション66の表面が微小な凹凸101を有する梨地状であるため、ロッドガイド21へ当接して変形しても、凹凸101が、リバウンドクッション66の表面を流れる油液の流路を確保し、油液の流路が狭まることを抑制する。よって、リバウンドクッション66が油液の流路抵抗となってしまうことを抑制できる。したがって、いわゆる伸び切り時の油圧ロックの発生を抑制することができる。
【0040】
また、リバウンドクッション66は、その全面が微小な凹凸101を有する梨地状であるため、全面にわたって表面を流れる油液の流路を確保し、油液の流路が狭まることを抑制できる。よって、リバウンドクッション66が油液の流路抵抗となってしまうことを一層抑制できる。
【0041】
また、リバウンドクッション66は、微小な凹凸101を有する金型で成形されることにより表面が梨地状とされ、または、吹き付けにより表面が梨地状とされ、または、バフ研磨により梨地状とされている。このため、リバウンドクッション66の表面を容易に梨地状にすることができる。
【0042】
以上に述べた実施形態の第1の態様のシリンダ装置は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され該シリンダ内を二室に区画するピストンと、前記シリンダの開口側に設けられるロッドガイドと、一端側が前記ピストンに連結されるとともに前記ロッドガイドに挿通されて他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンロッドに設けられ該ピストンロッドの前記シリンダからの伸長に応じて前記ロッドガイドに当接するリバウンドクッションと、を備え、前記リバウンドクッションは、表面が微小な凹凸を有する梨地状である。これにより、リバウンドクッションが作動流体の流路抵抗となってしまうことを抑制できる。
【0043】
実施形態の第2の態様のシリンダ装置は、第1の態様のシリンダ装置であり、前記リバウンドクッションは、全面が微小な凹凸を有する梨地状である。
【0044】
実施形態の第3の態様のシリンダ装置は、第1または第2の態様のシリンダ装置であり、前記リバウンドクッションは、微小な凹凸を有する金型で成形されることにより前記梨地状とされ、または、吹き付けにより前記梨地状とされ、または、バフ研磨により前記梨地状とされている。
【符号の説明】
【0045】
10 シリンダ装置
14 シリンダ
15 ピストンロッド
16,17 室
18 ピストン
66 リバウンドクッション
71 内周表面(表面)
72 外周表面(表面)
73 軸方向端表面(表面)
101 凹凸