(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143228
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61M25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043645
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】妻木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山元 翔太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA24
4C267BB04
4C267BB70
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】外針の先端を血管に前進させる際に、外針に対して繊細な操作力の入力を容易に行える留置針を提供する。
【解決手段】留置針10は、外針16と、外針16の基端に固定された外針ハブ18と、外針16の中に挿通された内針22と、内針22の基端に固定され、外針ハブ18の基端側に配置された内針ハブ24と、外針ハブ18と内針ハブ24との間に設けられ、内針ハブ24に対して外針ハブ18を軸方向の先端側に前進させる外針推進機構30と、を備え、外針推進機構30は、外針ハブ18の軸方向と異なる方向の操作力を受ける操作部32と、操作部32の操作力を軸方向の変位に変換する変換部34と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針と、
前記外針の基端に固定された外針ハブと、
前記外針の中に挿通された内針と、
前記内針の基端に固定され、前記外針ハブの基端側に配置された内針ハブと、
前記外針ハブと前記内針ハブとの間に設けられ、前記内針ハブに対して前記外針ハブを軸方向の先端側に前進させる外針推進機構と、を備え、前記外針推進機構は、
前記外針ハブの軸方向と異なる方向の操作力を受けて変位する操作部と、
前記操作部の変位を軸方向の変位に変換する変換部と、
を有する留置針。
【請求項2】
請求項1記載の留置針であって、前記操作部は前記外針ハブの軸回りに回転変位する回動機構を有し、前記変換部は、前記操作部と当接する当接部を有し前記当接部の軸方向位置が徐々に変化する、留置針。
【請求項3】
請求項2記載の留置針であって、前記内針ハブと前記外針ハブとの相対回転を阻止する回転ストッパを有する、留置針。
【請求項4】
請求項2又は3記載の留置針であって、
前記操作部は、前記内針ハブの外周部に回動自在に設けられた回動片を有し、
前記変換部は、前記外針ハブに設けられて、前記回動片と当接する切欠部を有する、留置針。
【請求項5】
請求項4記載の留置針であって、前記切欠部は、傾斜面を有する、留置針。
【請求項6】
請求項2又は3記載の留置針であって、
前記操作部は、前記内針ハブの外周部に回動自在に設けられた回動片を有し、
前記変換部は、前記内針ハブの外周部に設けられたネジ構造と、前記回動片の前記内針ハブとの当接部分に設けられ前記ネジ構造に螺合する環状部とを有し、
前記回動片は、前記環状部の変位を前記外針ハブに伝える腕部を有する、留置針。
【請求項7】
請求項2又は3記載の留置針であって、
前記操作部は、前記内針ハブに回転自在に設けられ、前記外針ハブの外周を囲んで前記内針ハブの先端側に向けて突出する外筒を有し、
前記変換部は、前記外筒の内周面に形成されたネジ構造と、前記外針ハブの外周部に設けられ前記外筒のネジ構造に螺合するフランジ部とを有する、留置針。
【請求項8】
請求項2又は3記載の留置針であって、
前記操作部は、前記外針ハブに当接しつつ回転自在に設けられた円板部を有し、
前記変換部は前記内針ハブから前記外針ハブに向けて突出し、外周に前記円板部と螺合するネジ構造が形成された突出部よりなる、留置針。
【請求項9】
請求項1記載の留置針であって、
前記外針推進機構は、基端が前記内針ハブに接続され、先端が前記外針ハブに当接しており、径方向に膨らむように配置された変形アームを有し、
前記変形アームは、径方向中心に向けた操作力を受ける前記操作部と、操作力を軸方向の変位に変換する変換部とを兼ねる、留置針。
【請求項10】
請求項9記載の留置針であって、
前記操作部は、前記内針ハブの径方向に押圧すると軸方向に撓んで先端が軸方向の先端側に変位する撓み機構を有する、留置針。
【請求項11】
請求項5又は9記載の留置針であって、
前記操作部は、先端が前記外針ハブに当接し、基端が前記内針ハブに保持されたコの字状の腕部と、前記内針ハブに設けられ、前記腕部の変位方向を径方向に案内するガイド孔と、を有し、
前記変換部は、前記腕部の先端部に当接して前記腕部の径方向の変位を前記外針ハブの軸方向の変位に変換する、留置針。
【請求項12】
請求項1記載の留置針であって、前記外針推進機構は、一端が前記外針ハブに接続され、基端が前記内針ハブに当接し、径方向の押圧による圧縮変形を軸方向の変位として前記外針ハブに伝える弾性部材よりなる、留置針。
【請求項13】
請求項1記載の留置針であって、
前記操作部は、前記内針ハブに設けられ前記内針ハブの径方向に変位するピストン機構であり、
前記変換部は、一端が前記外針ハブに接続され、他端が前記内針ハブに接続され、前記ピストン機構により押し出された流体により軸方向に膨張して前記外針ハブを軸方向の先端側に押し出すアクチュエータである、留置針。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の留置針であって、
前記内針ハブには、前記内針ハブの側部から羽根状に延び出た針ハブ保持部を有する、留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
留置針は、例えば、フッ素樹脂や塩化ビニル等の柔らかい樹脂よりなる外針の中に、金属よりなる鋭利な内針が挿入された構造を有している(例えば、特許文献1)。このような留置針は、患者の静脈等に穿刺された状態で留置され、輸液の投与に用いられる。
【0003】
留置針を患者の体内に配置する手技は、まず、使用者が外針の先端から内針を突出させた状態で患者の皮膚から血管に向けて穿刺する工程を行う。次に、使用者は、フラッシュバッグの視認等で内針の針先が血管に入ったことを確認した後、外針の先端を血管内に前進させる工程を行う。次に、使用者は、内針を外針から抜いて、外針ハブを皮膚に固定する工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内針の針先が血管に入った後に、外針の先端を血管に前進させる工程において、外針が勢いよく血管内壁に触れると、血管内壁を傷つけるおそれがある。そのため、医師や看護師は、血管の損傷を防ぐために繊細な操作が求められる。
【0006】
しかしながら、従来の留置針では、繊細な操作力の入力が難く、使用者は外針ハブと内針ハブとをそれぞれ別の手で把持して、両手を用いた慎重な作業が求められていた。そのため、留置針の穿刺は、使用者にとって煩雑であり、作業負荷が大きいという問題がある。
【0007】
そこで、一実施形態は、外針の先端を血管に前進させる際に、外針に対して繊細な操作力の入力を容易に行える留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点は、外針と、前記外針の基端に固定された外針ハブと、前記外針の中に挿通された内針と、前記内針の基端に固定され、前記外針ハブの基端側に配置された内針ハブと、前記外針ハブと前記内針ハブとの間に設けられ、前記内針ハブに対して前記外針ハブを軸方向の先端側に前進させる外針推進機構と、を備え、前記外針推進機構は、前記外針ハブの軸方向と異なる方向の操作力を受けて変位する操作部と、前記操作部の変位を軸方向の変位に変換する変換部と、を有する留置針にある。
【発明の効果】
【0009】
上記観点の留置針によれば、外針の先端を血管に前進させる際に、外針に対して繊細な操作力の入力を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図1の留置針の内針を血管に穿刺する工程を示す説明図である。
【
図4】
図1の留置針において外針を前進させる操作を示す断面図である。
【
図5】
図1の留置針において血管内に外針を前進させる工程を示す断面図である。
【
図13】第9実施形態に係る留置針の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、留置針について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る留置針10は、外針16を中心静脈等の血管102(
図5参照)に留置して輸液等に用いられる。留置針10は、外針組立体12と、内針組立体14とを有する。外針組立体12は、柔軟な樹脂材料によって形成された外針16と、外針16の基端に接続された外針ハブ18とを有している。
【0013】
図2に示すように、外針16の内部には、軸方向に貫通する内腔16aが形成されている。外針ハブ18の内部には、内腔16aと連通する空洞部18aが形成されている。空洞部18aの基端側には、軸方向に延びる収容部18bが形成されている。外針ハブ18の空洞部18aには、図示しない止血弁が設けられてもよい。止血弁は、内針22を引き抜いた際に空洞部18aを閉塞して血液の流出を阻止することができる可撓性の弁体を有している。
図1に示すように、外針ハブ18の基端部には外方に突出したフランジ部18cが形成されている。フランジ部18cの基端側には、周方向に斜めに切り欠いた切欠部20が形成されている。
【0014】
内針組立体14は、先端側に内針22を有している。内針22は、例えばステンレス鋼等の硬質な金属よりなり、その先端には鋭利な針先22aが形成されている。
図2に示すように、内針22は内腔22bを有する中空針である。初期状態において、内針22の針先22aは、外針16の先端から突出している。内針22の基端には、内針ハブ24が固定されている。
【0015】
内針ハブ24は、透明な樹脂材料によって形成された中空状の部材であり、内部に内腔22bと連通した空洞部24bを有している。内針ハブ24は、外針ハブ18の基端側に配置されている。内針ハブ24の先端側には、内針22を保持する円筒状の突出部24aが設けられている。突出部24aは、収容部18bに挿入され、収容部18bに密着して外針ハブ18の基端を封止する。突出部24aと収容部18bとは、互いの回転を阻止するべく、周方向の一部に回転ストッパ25が設けられている。回転ストッパ25は、突出部24aの外周から突出した突起24cと収容部18bに設けられ、突起24cに係合する溝18fとを備えて構成される。
【0016】
内針ハブ24の突出部24aの基端からは、径方向外方にフランジ状に延び出た拡径部26が設けられている。拡径部26の基端側には、内針ハブ本体28が設けられている。内針ハブ本体28は、基端側に延びており、使用者が片方の手で把持して操作可能な長さ及び直径に形成されている。
【0017】
図1に示すように、外針ハブ18と内針ハブ24との接続部分には、外針ハブ
18を軸方向の先端側に前進させるための外針推進機構30が設けられている。本実施形態の外針推進機構30は、操作入力を受け付ける操作部32と、操作部32の変位を軸方向の変位に変換する変換部34とを有する。本実施形態において、操作部32は、内針ハブ24に対して回動自在に設けられた回動機構36として構成されている。
【0018】
回動機構36は、内針ハブ24に設けられた回動孔38と、回動孔38に案内されて回動する回動片40とを有する。回動孔38は、内針ハブ本体28の厚さ方向に貫通し、周方向に細長く延びた溝状に形成されている。回動孔38は、例えば、内針ハブ本体28の周方向の半周程度の範囲に亘って形成されている。
【0019】
回動片40は、内針ハブ24の内側に配置され、回動孔38に沿って移動可能な、係止部40aを有している。係止部40aは、回動孔38よりも幅広に形成されており、回動片40を回動孔38にそって回動可能に係止する。回動片40において、係止部40aからは腕部40bが、拡径部26を避けるようにして、L字状に延び出ている。腕部40bの先端には、外針ハブ18の切欠部20に当接する爪部40cが形成されている。爪部40cには、切欠部20の傾斜面20aに面接触可能に傾斜した摺動面40dが形成されている。
【0020】
回動片40は、摺動面40dを介して外針ハブ18の切欠部20に当接している。切欠部20には、周方向位置に応じて軸方向の高さが変化する傾斜面20aが形成されている。傾斜面20aを有する切欠部20は、本実施形態の変換部34を構成する。すなわち、切欠部20は、回動片40との当接部44の軸方向位置が徐々に変化する。
【0021】
本実施形態の留置針10は以上のように構成され、以下その作用について、使用法とともに説明する。
【0022】
留置針10は、初期状態において
図1に示すように、外針16の先端から内針22の針先22aが突出した状態に組付けられている。使用者は、
図3に示すように、針先22aを皮膚100から穿刺して、患者の血管102にまで留置針10を穿刺する。針先22aが、血管102に穿刺されると、内針22を血液が逆流し、使用者は、針先22aが血管102に穿刺されたことを確認する。
【0023】
次に、
図4に示すように、使用者は、内針ハブ24を把持しつつ、指(例えば、親指又は人差指)で回動片40を回動させる。回動片40の回動に伴って、切欠部20の当接部44が傾斜面20aに沿うように変化する。そして、回動片40の爪部40cによって、外針ハブ18が徐々に押し出される。これにより、外針ハブ18及び外針16を徐々に前進させることができる。回動片40を切欠部20の末端にまで移動させることで、図示のように、内針22の針先22aよりも外針16の先端を所定の長さだけ前進させることができる。
【0024】
図5に示すように、上記の操作を行うことにより、留置針10の外針16の先端が血管102内に、ゆっくりと押し出される。これにより、血管102の内壁を傷つけることなく、前進させることができる。また、回動片40は、内針ハブ24を把持している片方の手のみで操作できるため、留置針10は操作性に優れる。
【0025】
本実施形態の留置針10は、以下の効果を奏する。
【0026】
本実施形態の留置針10は、外針16と、外針16の基端に固定された外針ハブ18と、外針16の中に挿通された内針22と、内針22の基端に固定され、外針ハブ18の基端側に配置された内針ハブ24と、外針ハブ18と内針ハブ24との間に設けられ、内針ハブ24に対して外針ハブ18を軸方向の先端側に前進させる外針推進機構30と、を備え、外針推進機構30は、外針ハブ18の軸方向と異なる方向の操作力を受けて変位する操作部32と、操作部32の変位を軸方向の変位に変換する変換部34と、を有する。
【0027】
上記の構成によれば、外針16の軸方向と異なる方向の操作力によって外針16を前進させるため、外針16の繊細な操作が容易となる。
【0028】
上記の留置針10において、操作部32は外針ハブ18の軸回りに回転変位する回動機構36を有し、変換部34は、操作部32と当接する当接部44を有し当接部44の軸方向位置が徐々に変化してもよい。この構成によれば、操作部32の回転変位を変換部34で軸方向の変位に変換することができ、外針16の軸方向以外の操作力の入力で、外針16の繊細な操作を行うことができる。
【0029】
上記の留置針10において、内針ハブ24と外針ハブ18との相対回転を阻止する回転ストッパ25を有してもよい。この構成によれば、操作部32を回動させても、外針ハブ18の供回りを防止できる。
【0030】
上記の留置針10において、操作部32は、内針ハブ24の外周部に回転自在に保持された回動片40を有し、変換部34の当接部44は、外針ハブ18に設けられ周方向に延在する切欠部20であり、切欠部20は周方向に沿って軸方向位置が変化するように傾斜した傾斜面20aを有し、回動片40の回動により外針ハブ18を軸方向の先端側に前進させる。この構成によれば、内針ハブ24を把持した方の手の指先で回動片40を操作することができ、片手で外針16を前進させる操作を行える。
【0031】
(第2実施形態)
本実施形態の留置針10Aは、
図6に示すように、外針推進機構30Aの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Aにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の留置針10Aにおいて、外針ハブ18のフランジ部18cには、周方向に傾斜した切欠部20(
図1参照)を設けなくてもよい。
【0032】
図示のように、留置針10Aの外針推進機構30Aは、操作力が入力される操作部32Aとして、内針ハブ24Aに対して回動自在に取り付けられた回動機構36Aを備える。回動機構36Aは、内針ハブ24Aの外周部に設けられたネジ溝46に螺合した回動片40Aを備えている。回動片40Aは、内針ハブ24Aの外周部の全周を囲むように形成された環状部48と、環状部48から、軸方向の前方に延び出た腕部40bと腕部40bの先端に設けられた爪部40cとを備えている。環状部48の内周部には、ネジ溝46に螺合するネジ構造が形成されている。爪部40cは、外針ハブ18のフランジ部18cの基端面に当接している。
【0033】
回動片40Aは、内針ハブ24Aに対して軸回りに回動自在に取り付けられている。回動片40Aを所定方向に回動させると、環状部48と、ネジ溝46との当接部位44Aが軸方向の先端側に移動する。すなわち、本実施形態の留置針10Aにおいて、ネジ溝46と環状部48とにより、操作部32Aの回転変位を軸方向の変位に変換する変換部34Aが構成される。
【0034】
以上のように、本実施形態の留置針10Aは、操作部32Aが、内針ハブ24Aの外周部に回動自在に設けられた回動片40Aを有し、変換部34Aは、内針ハブ24Aの外周部に設けられたネジ溝46と、回動片40Aの内針ハブ24Aとの当接部分に設けられネジ溝46に螺合する環状部48とを有し、回動片40Aは、環状部48の変位を外針ハブ18に伝える腕部40bを有している。
【0035】
この構成によれば、回動自在な回動片40Aを片手で回動操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0036】
(第3実施形態)
本実施形態の留置針10Bは、
図7Aに示すように、外針推進機構30Bの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Bにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の留置針10Bにおいて、外針ハブ18のフランジ部18cには、周方向に傾斜した切欠部20(
図1参照)を設けなくてもよい。
【0037】
図示のように、留置針10Bの外針推進機構30Bは、操作力が入力される操作部32Bとして、内針ハブ24に対して回動自在に取り付けられた回動機構36Bを備える。
図7Bに示すように、回動機構36Bは、内針ハブ24の突出部24aの基端部分の外周に装着された外筒50を有している。外筒50は、外針ハブ18の外周部を囲むように形成された有底円筒状に形成されており、先端側が開口している。外筒50の内周面50aには、ネジ構造52が形成されている。ネジ構造52には、外針ハブ18の基端に設けられたフランジ部18cが螺合している。外筒50の基端部には、軸方向に垂直な基端壁50bが形成されている。基端壁50bの中心部には、突出部24aの外周部に対して周方向に摺動する摺動孔50cが形成されている。
【0038】
外筒50は、内針ハブ本体28に対して軸回りに回動自在に取り付けられている。外筒50を所定方向に回動させると、外針ハブ18のフランジ部18cと、ネジ構造52との当接部位44Bが軸方向の先端側に移動する。すなわち、本実施形態の留置針10Bにおいて、ネジ構造52とフランジ部18cとにより、操作部32Bの回転変位を軸方向の変位に変換する変換部34Bが構成される。
【0039】
以上のように、本実施形態の留置針10Bは、操作部32Bが、内針ハブ24に回転自在に設けられ、外針ハブ18の外周を囲んで内針ハブ24の先端側に向けて突出する外筒50を有し、変換部34Bは、外筒50の内周面50aに形成されたネジ構造52と、外針ハブ18の外周部に設けられ外筒50のネジ構造52に螺合するフランジ部18cとを有する。
【0040】
この構成によれば、回動自在な外筒50を片手で回動操作できるため、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0041】
(第4実施形態)
本実施形態の留置針10Cは、
図8Aに示すように、外針推進機構30Cの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Cにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の留置針10Cにおいて、外針ハブ18のフランジ部18cには、周方向に傾斜した切欠部20(
図1参照)を設けなくてもよい。
【0042】
図示のように、留置針10Cの外針推進機構30Cは、操作力が入力される操作部32Cとして、円板部54を備える。円板部54は、外針ハブ18のフランジ部18cと内針ハブ24の拡径部26との間に配置されている。円板部54は、外針ハブ18及び内針ハブ24に対して回動自在に取り付けられている。すなわち、本実施形態において、円板部54は、操作力を回転変位として受ける回動機構36Cを構成する。
【0043】
図8Bに示すように、内針ハブ24の突出部24aは、その外周にネジ構造56が形成されている。また、突出部24aの先端には、突出部24aと収容部18bとの隙間を封止するパッキン58が設けられている。パッキン58は、円板部54を回転させて外針16を進めている間に、外針16からの血液の漏洩を防ぐ。なお、パッキン58に代えて、外針ハブ18の空洞部18aに止血弁を設けてもよい。円板部54は、その中央部に突出部24aが挿通する貫通孔54aが形成されている。貫通孔54aの内周面には、ネジ構造56に螺合する突起部54bが形成されている。円板部54は、外針ハブ18とともに軸方向位置が変化するように取り付けられている。
【0044】
円板部54を所定方向に回動させると、内周部の突起部54bと突出部24aのネジ構造56とが螺合しつつ摺動することで、円板部54が先端に向けて変位する。そして、円板部54によって外針ハブ18が先端側に押し出されることで、外針16が軸方向に前進する。すなわち、本実施形態の留置針10Cにおいて、内針ハブ24のネジ構造56により、円板部54(操作部32C)の回転変位が軸方向の変位に変換される。すなわち、外針ハブ18に挿入された内針ハブ24のネジ構造56を有する突出部24aにより、変換部34Cが構成される。
【0045】
以上のように、本実施形態の留置針10Cは、操作部32Cが、外針ハブ18に当接しつつ回転自在に設けられた円板部54を有し、変換部34Cは内針ハブ24から外針ハブ18に向けて突出し、外周に円板部54と螺合するネジ構造56が形成された突出部24aよりなる。
【0046】
この構成によれば、回動自在な円板部54を片手で回動操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0047】
(第5実施形態)
本実施形態の留置針10Dは、
図9Aに示すように、外針推進機構30Dの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Dにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0048】
図示のように、留置針10Dの外針推進機構30Dは、操作力が入力される操作部32Dとして、変形アーム60を備える。変形アーム60は、複数の竿体60aを複数の関節部60bで連結して構成されている。変形アーム60の基端部が内針ハブ24の内針ハブ本体28の外周部に設けられた支持部62によって支持されている。変形アーム60の先端部60cは、外針ハブ18のフランジ部18cに当接している。図示のように、動作をスムーズにするために、フランジ部18cには、変形アーム60の先端部60cを受けるための傾斜した当接部分44Dが形成されている。変形アーム60は、初期状態において、竿体60aが内針ハブ24の拡径部26から離間するように、膨らんだ形状となっている。
【0049】
図9Bに示すように、変形アーム60は、竿体60aを中心軸に接近する方向の操作力を受ける操作部32Dを構成する。また、変形アーム60は、操作力の入力に伴って、竿体60aが中心軸に接近するように変形し、軸方向に延びる。変形アーム60の変形に伴って、先端部60cが軸方向の先端側に変位する。この変形アーム60の変形により、外針ハブ18は、当接部分44Dを通じて先端側に押し出される。すなわち、変形アーム60は、操作力を軸方向の変位に変換する変換部34Dを構成する。
【0050】
以上に説明した本実施形態の留置針10Dは、外針推進機構30Dが、基端が内針ハブ24に接続され、先端部60cが外針ハブ18に当接しており、径方向に膨らむように配置された変形アーム60を有し、変形アーム60は、径方向中心に向けた操作力を受ける操作部32Dと、操作力を軸方向の変位に変換する変換部34Dを兼ねる。
【0051】
この構成によれば、変形可能な変形アーム60を片手で押圧操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0052】
なお、本実施形態の留置針10Dは、上記の構成に限定されるものではなく、変形アーム60を1枚の弾性変形可能な可撓性の板体(撓み機構)で構成してもよい。
【0053】
(第6実施形態)
本実施形態の留置針10Eは、
図10Aに示すように、外針推進機構30Eの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Eにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0054】
図示のように、留置針10Eの外針推進機構30Eは、操作力が入力される操作部32Eとして、腕部64を備える。腕部64は、コの字状に形成されており、内針ハブ24の拡径部26の外方に離間している。内針ハブ24には、腕部64の基端64aを収容するガイド孔66が形成されている。ガイド孔66は、内針ハブ24の半径方向に延びている。腕部64の変位は、ガイド孔66によって、半径方向に案内される。
【0055】
腕部64の先端64bは、外針ハブ18のフランジ部18cに当接している。フランジ部18cには、傾斜面よりなる当接部分44Eが形成されている。当接部分44Eは、腕部64の先端64bと当接しながら摺動する部分であり、基端側に向かうにつれて縮径するように傾斜した傾斜面を有している。
【0056】
初期状態において、腕部64は、フランジ部18cの当接部分44Eによって基端側に付勢されている。これにより、腕部64の基端64aは、ガイド孔66に対して基端側に押し付けられた状態となっており、摩擦による抵抗力が作用する。腕部64は、摩擦力によってガイド孔66に保持されており、ガイド孔66からの自然落下を防止できる。
【0057】
なお、腕部64の基端64aには、ガイド孔66からの脱落を防ぐべく、不図示の突起構造が設けられてもよい。この場合には、ガイド孔66側に、腕部64の突起構造に引っ掛かる凹凸構造を設けてもよい。この構成によって、腕部64の脱落を防止できる。
【0058】
図10Bに示すように、腕部64は、中心軸に接近する方向の操作力を受ける操作部32Eを構成する。また、腕部64は、操作力の入力に伴って、内針ハブ24の中心軸に接近するように変位する。腕部64の変位に伴って、先端64bが当接部分44Eと摺動しつつ、中心軸に向けて変位する。当接部分44Eの傾斜面に沿った腕部64の摺動により、外針ハブ18が先端側に押し出される。すなわち、当接部分44E及び腕部64の先端64bにより、操作力を軸方向の変位に変換する変換部34Eが構成される。
【0059】
以上の留置針10Eは、操作部32Eが、先端64bが外針ハブ18に当接し、基端64aが内針ハブ24に保持されたコの字状の腕部64と、内針ハブ24に設けられ、腕部64の変位方向を径方向に案内するガイド孔66と、を有し、変換部34Eは、腕部64の先端64bに当接して腕部64の径方向の変位を外針ハブ18の軸方向の変位に変換する傾斜面を有する。
【0060】
この構成によれば、変形可能な腕部64を片手で押圧操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0061】
(第7実施形態)
本実施形態の留置針10Fは、
図11Aに示すように、外針推進機構30Fの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Fにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0062】
図示のように、留置針10Fの外針推進機構30Fは、操作力が入力される操作部32Fとして、弾性部材68を備える。弾性部材68は、ゴムやエラストマー等の弾性材料によって形成されている。弾性部材68の一端は、外針ハブ18のフランジ部18cの外周部に接合されている。また、弾性部材68の基端部は、内針ハブ24の拡径部26の先端面26aに当接している。
【0063】
図11Bに示すように、弾性部材68は、径方向に押圧する操作により、圧縮変形して、軸方向に延びるように変形する。そして、弾性部材68の変形にともなって、外針ハブ18が先端側に変位する。弾性部材68は、操作力を軸方向の変位に変換する変換部34Fを兼ねる。
【0064】
本実施形態の留置針10Fの外針推進機構30Fは、一端が外針ハブ18に接続され、基端が内針ハブ24に当接し、径方向の押圧による圧縮変形を軸方向の変位として外針ハブ18に伝える弾性部材68よりなる。なお、弾性部材68は、外針16が進出した後は、外針ハブ18から離脱可能になっている。
【0065】
この構成によれば、変形可能な弾性部材68を片手で押圧操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0066】
(第8実施形態)
本実施形態の留置針10Gは、
図12Aに示すように、外針推進機構30Gの構成において、
図1の留置針10と異なる。なお、留置針10Gにおいて、
図1の留置針10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0067】
図示のように、留置針10Gの外針推進機構30Gは、操作力が入力される操作部32Gとして、ピストン機構70を備える。ピストン機構70は、内針ハブ24の拡径部26に設けられており、径方向に押圧操作が可能となっている。ピストン機構70には、内部に作動流体が封入されており、ピストン機構70の押圧操作により、作動流体がピストン機構70から流出する。
【0068】
ピストン機構70の流出部には、外針推進機構30Gの変換部34Gを構成するアクチュエータ72が設けられている。アクチュエータ72の先端部は、外針ハブ18のフランジ部18cに当接している。アクチュエータ72は、柔軟に変形可能な蛇腹状の袋体よりなり、収縮状態では蛇腹部が折りたたまれた状態で、フランジ部18cと拡径部26との間に配置されている。ピストン機構70からアクチュエータ72に作動流体が供給されると、
図12Bに示すように、アクチュエータ72の蛇腹部が伸長して、外針ハブ18を先端に向けて前進させる。
【0069】
本実施形態の留置針10Gにおいて、操作部32Gは、内針ハブ24に設けられ内針ハブ24の径方向に変位するピストン機構70であり、変換部34Gは、一端が外針ハブ18に接続され、他端が内針ハブ24に接続され、ピストン機構70により押し出された流体により軸方向に膨張して外針ハブ18を軸方向の先端側に押し出すアクチュエータ72である。
【0070】
以上に説明した留置針10Gの外針推進機構30Gは、内針ハブ24に接合されており、内針ハブ24とともに外針ハブ18から離脱可能となっている。したがって、使用者は、外針推進機構30Gを、アクチュエータ72を伸長させて外針ハブ18を前進させた後に、内針ハブ24とともに外針ハブ18から取り外すことができる。
【0071】
この構成によれば、変形可能なピストン機構70を片手で押圧操作することで、外針16を前進させる操作を容易に行える。
【0072】
(第9実施形態)
本実施形態の留置針10Hは、
図13に示すように、内針ハブ24の外周部から外方に羽根状に延び出る一対の針ハブ保持部74を備えている。なお、留置針10Hにおいて、針ハブ保持部74以外の構成は、
図1の留置針10と同様である。本実施形態の内針ハブ24は、針ハブ保持部74を設けることにより、回動片40の操作の際に、内針ハブ24の回転を止めるように保持することが容易になり、操作性が向上する。
【0073】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H…留置針
18…外針ハブ
24…内針ハブ
30、30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G…外針推進機構
32、32A、32B、32C、32D、32E、32F、32G…操作部
34、34A、34B、34C、34D、34E、34F、34G…変換部