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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014323
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】無人車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220112BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116596
(22)【出願日】2020-07-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】既設構造物の少ない環境でも自己位置推定を行うことができる無人車両を提供する。
【解決手段】無人フォークリフトの現在位置におけるレーザセンサで取得した既設構造物ES10及び仮設構造物TS10を含む第1センサ地図SM1から、無人フォークリフトの現在位置における初期地図での既設構造物ES1に対応する既設構造物ES10を削除して仮設構造物TS10を含む第2センサ地図SM2を生成する削除部と、無人フォークリフトの現在位置における初期地図と第2センサ地図SM2とを合成して、既設構造物ES1及び仮設構造物TS10を含む合成地図CMを作成する合成部と、地理的位置情報が紐付けされた合成地図CMと、レーザセンサで取得した周囲環境とを比較することで無人フォークリフトの自己位置を推定する自己位置推定部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられ、前記車体の周囲に存在する物体を検出する環境センサと、
地理的位置情報が紐付けされ、仮設構造物が除かれた周囲の環境を示す初期地図を記憶する記憶部と、
無人車両の現在位置における前記環境センサで取得した既設構造物及び仮設構造物を含む第1センサ地図から、無人車両の現在位置における前記初期地図での既設構造物に対応する既設構造物を削除して仮設構造物を含む第2センサ地図を生成する削除部と、
無人車両の現在位置における前記初期地図と前記第2センサ地図とを合成して、既設構造物及び仮設構造物を含む合成地図を作成する合成部と、
地理的位置情報が紐付けされた前記合成地図と、前記環境センサで取得した周囲環境とを比較することで無人車両の自己位置を推定する自己位置推定部と、
を備えることを特徴とする無人車両。
【請求項2】
前記合成部は、一定距離走行毎または一定時間経過毎に、前記合成地図を作成することを特徴とする請求項1に記載の無人車両。
【請求項3】
前記合成部は、前記合成地図における前記仮設構造物に対し保存期間の情報を追加し、保存期間の過ぎた時点で前記合成地図から削除することを特徴とする請求項1または2に記載の無人車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人車両の状態(位置情報など)を推定する技術としてSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)がある。SLAMは、自己位置推定の際、事前に取得した周囲の環境地図(初期地図)とセンサで取得した周囲環境を比較することで無人車両の自己位置を推定するが、事前に取得した周囲の環境は時間の経過とともに変化するため、初期地図を何らかの方法で更新しなければ、自己位置推定精度の悪化や自己位置推定ができないロストにつながる。例えば、特許文献1に開示の無人搬送車と在庫管理システムの連動システムにおいては、地図管理部は、在庫管理システムの入出庫情報に基づき、無人搬送車が使用する環境地図をリアルタイムに更新し、環境地図の精度を高くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-172878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、在庫管理システムの入出庫情報に基づき、無人搬送車が使用する環境地図をリアルタイムに更新する場合においては、在庫管理システムが必要である。また、周囲環境に特徴のある既設構造物等がなければ、そもそもSLAMを使用できず、環境地図と、環境センサで取得した周囲環境とを比較する際(マッチングの際)において環境地図情報として周囲の環境情報を多く持っていた方がよい。
【0005】
本発明の目的は、既設構造物の少ない環境でも自己位置推定を行うことができる無人車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための無人車両は、車体と、前記車体に設けられ、前記車体の周囲に存在する物体を検出する環境センサと、地理的位置情報が紐付けされ、仮設構造物が除かれた周囲の環境を示す初期地図を記憶する記憶部と、無人車両の現在位置における前記環境センサで取得した既設構造物及び仮設構造物を含む第1センサ地図から、無人車両の現在位置における前記初期地図での既設構造物に対応する既設構造物を削除して仮設構造物を含む第2センサ地図を生成する削除部と、無人車両の現在位置における前記初期地図と前記第2センサ地図とを合成して、既設構造物及び仮設構造物を含む合成地図を作成する合成部と、地理的位置情報が紐付けされた前記合成地図と、前記環境センサで取得した周囲環境とを比較することで無人車両の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、削除部において、無人車両の現在位置における環境センサで取得した既設構造物及び仮設構造物を含む第1センサ地図から、無人車両の現在位置における初期地図での既設構造物に対応する既設構造物が削除されて仮設構造物を含む第2センサ地図が生成される。合成部において、無人車両の現在位置における初期地図と第2センサ地図とが合成されて、既設構造物及び仮設構造物を含む合成地図が作成される。そして、自己位置推定部において、地理的位置情報が紐付けされた合成地図と、環境センサで取得した周囲環境とを比較することで無人車両の自己位置が推定される。
【0008】
よって、周囲環境の中の仮設構造物及び既設構造物を含む合成地図と、環境センサで取得した周囲環境との比較により無人車両の自己位置を推定するため、既設構造物の少ない環境でも自己位置推定を行うことができる。
【0009】
また、無人車両において、前記合成部は、一定距離走行毎または一定時間経過毎に、前記合成地図を作成するとよい。
また、無人車両において、前記合成部は、前記合成地図における前記仮設構造物に対し保存期間の情報を追加し、保存期間の過ぎた時点で前記合成地図から削除するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既設構造物の少ない環境でも自己位置推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における無人フォークリフトの側面図。
図2】無人フォークリフトの電気的構成を示すブロック図。
図3】無人フォークリフトのレーザセンサによる物体検出を説明するための平面図。
図4】作用を説明するためのデータ処理の説明図。
図5】作用を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、無人車両としての無人フォークリフト10は、車体11と、車体11の前下部に配置された駆動輪12と、車体11の後下部に配置された操舵輪13と、を備える。無人フォークリフト10は、車体11の前方に、荷役装置14を備える。荷役装置14は、車体11の前部に立設されたマスト15と、マスト15に装着されたリフトブラケット16と、リフトブラケット16に固定された一対のフォーク17と、を備える。フォーク17には、荷が積載される。図示は省略するが、荷はパレットに搭載された状態でフォーク17に積載される。本実施形態において、荷役装置14の前方と車体11の前方とは一致している。荷役装置14の前方とは、フォーク17の延びる方向である。荷役装置14は、マスト15を昇降動作させるリフトシリンダ18を備える。荷役装置14は、マスト15を傾動させるティルトシリンダ19を備える。リフトシリンダ18及びティルトシリンダ19は油圧シリンダである。
【0013】
図2に示すように、無人フォークリフト10は、駆動機構21と、油圧機構22と、制御装置23と、環境センサとしてのレーザセンサ40と、を備える。駆動機構21は、無人フォークリフト10を走行動作させるための部材であり、駆動輪12を駆動させるための走行用モータや、操舵輪13を操舵させるための操舵機構を含む。油圧機構22は、リフトシリンダ18及びティルトシリンダ19への作動油の給排を制御するための部材であり、ポンプを駆動させるための荷役モータや、コントロールバルブを含む。
【0014】
制御装置23は、処理部24及び記憶部25を備える。処理部24は、変換部26と、自己位置推定部27と、削除部28と、合成部29を備える。自己位置推定部27は、マッチング部30を備える。
【0015】
記憶部25には、無人フォークリフト10を制御するための種々のプログラムが記憶されている。制御装置23は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置23は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0016】
制御装置23は、駆動機構21及び油圧機構22を制御することで、無人フォークリフト10を動作させる。本実施形態の無人フォークリフト10は、搭乗者による操作が行われることなく、制御装置23による制御によって自動で走行、操舵、荷役の動作を行うフォークリフトである。
【0017】
無人フォークリフト10は、工場、物流センタ、空港、港湾などの荷を搬送する必要のある作業場で使用される。
図1に示すように、レーザセンサ40は、車体11における運転席を区画するヘッドガード20の後端に車体後方を向くように配置されている。レーザセンサ40は、車体11のどのような位置に配置されていてもよい。
【0018】
図3に示すように、車体11に設けられるレーザセンサ40は、車体11の周囲に存在する物体Obj1を検出するためのものであり、レーザを周辺に照射し、レーザが当たった物体Obj1から反射された反射光を受信することで周辺環境を認識可能なレーザレンジファインダである。本実施形態のレーザセンサ40としては、水平方向の照射角度を変更しながらレーザを照射する二次元のレーザレンジファインダが用いられ、記憶部25に記憶される周囲の環境地図である初期地図及び合成地図は二次元のレーザレンジファインダで事前に取得した点群(X,Yで表される点の集まり)である。
【0019】
なお、周囲環境を取得する環境センサとして、二次元のレーザセンサに代わり、三次元レーザセンサ、例えば、3DLiDARを使用してもよく、周囲の環境地図である初期地図及び合成地図は3DLiDAR等で事前に取得した点群(X,Y,Zで表される点の集まり)であってもよい。つまり、水平方向に加えて鉛直方向への照射角度を変更する三次元のレーザレンジファインダを用いてもよい。
【0020】
レーザセンサ40のレーザの照射範囲は、例えば、無人フォークリフト10の後方に延びる軸Bを中心とした範囲である。レーザセンサ40は、無人フォークリフト10の後方にレーザを照射するように配置されている。以下の説明において、軸Bの延びる方向をY方向、水平方向のうち軸Bに直交する方向をX方向として説明を行う。
【0021】
レーザセンサ40は、物体Obj1までの距離を測定する。レーザセンサ40は、物体Obj1までの距離を、照射する角度に対応付けて制御装置23に出力する。レーザセンサ40の測定結果は、無人フォークリフト10に対する物体Obj1の相対座標を示しているともいえる。制御装置23は、レーザセンサ40の測定結果から無人フォークリフト10に対する物体Obj1の相対角度θ1,θ2と、無人フォークリフト10に対する物体Obj1の相対距離とを検出する。無人フォークリフト10に対する物体Obj1の相対角度とは、無人フォークリフト10が直進している状態、即ち、無人フォークリフト10の舵角が0の状態での後進方向である軸Bと物体Obj1とでなす角度である。無人フォークリフト10に対する物体Obj1の相対距離とは、無人フォークリフト10から物体Obj1までの距離である。
【0022】
図2に示すように、制御装置23の記憶部25には、周囲の環境地図である初期地図IM及び合成地図CMが記憶(登録)される。初期地図IMと合成地図CMとは、いずれも、地理的位置情報が紐付けされた状態で記憶(登録)される。地理的位置情報とは、位置の座標を示す情報である。周囲の環境地図である初期地図IM及び合成地図CMは、無人フォークリフト10の用いられる環境の形状、広さなど、無人フォークリフト10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。位置の座標は、地図内に設定されている。
【0023】
初期地図IMは、前処理として、オペレータが画像を見て手作業により、図4の地図データMD1に対し図4の地図データMD2で示すように、事前に取得した点群データから仮設構造物TS1を除去したものである。詳しくは、図4の地図データMD1においては、無人フォークリフト10の後方の直交する2軸座標系(XY座標系)で表される地図上において、既設構造物ES1と仮設構造物TS1を含んでいる。地図データMD1に対し前処理として仮設構造物TS1が除去される。これにより図4の地図データMD2においては、無人フォークリフト10の後方の直交する2軸座標系(XY座標系)で表される初期地図IM上において、仮設構造物TS1は除かれ、既設構造物ES1を含んでいることになる。
【0024】
このようにして、記憶部25の初期地図IMは、地理的位置情報が紐付けされ、仮設構造物TS1が除かれた周囲の環境を示すものである。レーザセンサ40で取得した周囲環境から記憶部25の初期地図IMが作成される。
【0025】
周囲の環境地図である初期地図IMは、無人フォークリフト10が用いられる周辺環境を予め把握できていれば、予め記憶部25に記憶されていてもよい。環境地図である初期地図IMを予め記憶部25に記憶する場合、建築物の壁、柱などの既設構造物の座標を環境地図として記憶する。周囲の環境地図である初期地図IM及び合成地図CMは、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)によるマッピングにより作成される。SLAMは、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行うものであり、移動体が未知の環境下で環境地図を作成できる。構築した地図情報を使って障害物などを回避しつつ特定のタスクを遂行する。
【0026】
制御装置23は、周囲の環境地図である初期地図IM及び合成地図CM上での無人フォークリフト10の位置を推定する自己位置推定を行いながら駆動機構21を制御することで、所望の位置に無人フォークリフト10を移動させることが可能である。自己位置とは、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向の中央の座標である。
【0027】
周辺環境には既設構造物と仮設構造物があり、既設構造物は未来永劫変化しないもの(建物等)であり、仮設構造物は変化するもの(車両、荷物等)である。仮設構造物は例えばパレットであり、例えば、コンテナトラックによって所定の位置に配置される。
【0028】
図4に示すように、記憶部25に、既設構造物ES1及び仮設構造物TS1を含む合成地図CMが記憶される。図2の自己位置推定部27は、記憶部25に記憶される既設構造物ES1及び仮設構造物TS10を含む合成地図CMと、レーザセンサ40で取得した周囲環境とを比較することで無人フォークリフト10の自己位置を推定することができるようになっている。
【0029】
次に、作用について説明する。
図5には、処理部24が実行する処理を示し、図4を用いて処理部24において実行する処理を説明する。
【0030】
図4において、無人フォークリフト10の現在位置において符号MD2に示す初期地図が記憶部25に環境地図として記憶されているものとする。また、図4において、無人フォークリフト10の現在位置において符号SM1に示すレーザセンサ40によるセンサ地図、即ち、スキャンデータ(地図座標系)を得たものとする。
【0031】
図5の処理は一定周期で起動され、ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14の処理が実行される。
図2の変換部26は、図5のステップS10において、レーザセンサ40を用いて周囲環境データ(スキャンデータ)を取得してスキャンデータ(センサ座標系)を一時的に記憶する。
【0032】
図2の変換部26は、図5のステップS11において、スキャンデータ(センサ座標系)を、現在座標(現在位置)を用いて地図座標系に変換してスキャンデータを地図座標系として一時的に記憶する。このスキャンデータ(地図座標系)を、図4において第1センサ地図SM1で表す。この図4の第1センサ地図SM1においては、無人フォークリフト10の後方の直交する2軸座標系(XY座標系)において、既設構造物ES10と仮設構造物TS10を有する。
【0033】
このように、図2の変換部26は、環境センサとしてのレーザセンサ40で取得した既設構造物ES10及び仮設構造物TS10を含む周囲環境データAd1(図4参照)を地図座標系に変換して既設構造物ES10及び仮設構造物TS10を含む第1センサ地図SM1を生成する。
【0034】
図2の削除部28は、図5のステップS12において、得られた初期地図(仮設構造物が除かれた地図)IMを用いて、既設構造物に照射されたスキャンデータを削除してスキャンデータを地図座標系として一時的に記憶する。つまり、無人フォークリフト10の現在位置におけるレーザセンサ40で取得した既設構造物ES10及び仮設構造物TS10を含む第1センサ地図SM1から、無人フォークリフト10の現在位置における初期地図IMでの既設構造物ES1に対応する既設構造物ES10を削除して仮設構造物TS10を含む第2センサ地図SM2を生成する。即ち、第1センサ地図SM1と初期地図IMを比較して第1センサ地図SM1と初期地図IMの両方に共通してある物体を既設構造物として第1センサ地図SM1から削除する。
【0035】
既設構造物に照射されたスキャンデータを削除してスキャンデータを地図座標系として一時的に記憶するとき、初期地図IMでの既設構造物ES1との距離の差が0.5m以下のスキャンデータの点は既設構造物に照射された点としてスキャンデータから削除する。つまり、削除部28は、物体Obj1との距離の差が閾値以下のレーザセンサ40による検出点は既設構造物に照射された点として削除する。これは、現在位置(現在座標)を使ってスキャンデータを地図座標系に変換しているので、この時点で誤差を含んでおり、不必要なデータを登録しないようにするためであり、自己位置推定精度悪化を防ぐためである。
【0036】
削除後のスキャンデータ(地図座標系)を、図4において第2センサ地図SM2で表す。この図4の第2センサ地図SM2においては、無人フォークリフト10の後方の直交する2軸座標系(XY座標系)において、既設構造物ES10が削除されて仮設構造物TS10を有する。
【0037】
図2の合成部29は、図5のステップS13において、初期地図(仮設構造物が除かれた地図)IMと、地図座標系に変換したスキャンデータを合成して合成地図CMを記憶する。つまり、無人フォークリフト10の現在位置における初期地図IMと第2センサ地図SM2とを合成して合成地図CMを作成する。これを、地理的位置情報を紐付けて記憶部25に登録する。図4を用いて説明すると、初期地図IMと第2センサ地図SM2とを合成処理することにより、無人フォークリフト10の後方の直交する2軸座標系(XY座標系)において、既設構造物ES1及び仮設構造物TS10を含む合成地図CMを得る。
【0038】
このとき、合成部29は、レーザセンサ40でデータを取得する毎に合成地図CMを作成する。
図2の自己位置推定部27のマッチング部30は、図5のステップS14において、ステップS11でのスキャンデータ(地図座標系)と、地理的位置情報が紐付けされた合成地図CMとのマッチング(例えばNDTマッチング)により現在座標(自己位置)を推定する。つまり、地理的位置情報が紐付けされた合成地図CMと、レーザセンサ40で取得した周囲環境とを比較することで無人フォークリフト10の自己位置を推定する。
【0039】
図4の地図データMD1とスキャンデータ(第1センサ地図SM1)を比較すると一致しないので自己位置推定ができないが、本実施形態では、地図データMD2に、現在の仮設構造物の情報を加えて登録することにより、スキャンデータと環境地図が一致しやすくなり、ロストを防止できるとともに精度が上がる。
【0040】
つまり、従来、在庫管理システムの入出庫情報に基づき、無人搬送車が使用する環境地図をリアルタイムに更新する場合においては、在庫管理システムが必要である。また、周囲環境に特徴のある既設構造物等がなければ、そもそもSLAMを使用できない。さらに、環境地図と、環境センサで取得した周囲環境とを比較する際において(マッチングの際において)環境地図情報として周囲の環境情報を多く持っていた方がよい。さらに、自己位置を推定するためには周辺に構造物があった方がよく、一時的に存在する構造物があると背景の地図情報が現在位置から見えなくなり、環境地図と、環境センサで取得した周囲環境とを比較する際に(マッチングの際に)見えているもののみで自己位置推定を行うこととなり、ロストを招いたり自己位置推定精度が悪化してしまう。
【0041】
本実施形態では、周囲環境の中の仮設構造物を用いて、環境センサで取得した周囲環境と、合成部で合成した地図との比較により無人車両の自己位置を推定するため、既設構造物が少ない環境でも、周囲環境と、合成部で合成した地図とを一致させやすくなり、ロストしにくくなるとともに精度が上がる。また、現時点におけるスキャンデータにあった仮設構造物を用いて自己位置推定を行うことにより、周囲の環境変化の大きい環境でも、周囲環境と、合成部で合成した地図とを一致させやすくなり、ロストしにくくなるとともに精度が上がる。このようにして、既設構造物が少ない環境でも周囲の環境変化の大きい環境でも自己位置推定が可能となる。
【0042】
具体的には、以下のような状況下で使用される。
繁忙期の物流センタでは荷やトラックの出入りが多い(周囲環境が大きく変化する)。空港やコンテナヤードでは既設構造物が少なく、仮設構造物(例えばコンテナ)が多い。よって、特に、既設構造物が少なく、かつ、周囲環境が大きく変化する状況が存在し得る。
【0043】
このような環境下においても、本実施形態では、周囲環境変化の大きい環境や既設構造物の少ない環境でも自己位置推定ができないロストが発生しにくくなる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0044】
無人車両としての無人フォークリフト10の構成として、車体11と、車体11に設けられ、車体11の周囲に存在する物体Obj1を検出する環境センサとしてのレーザセンサ40と、地理的位置情報が紐付けされ、仮設構造物TS1が除かれた周囲の環境を示す初期地図IMを記憶する記憶部25と、無人フォークリフト10の現在位置におけるレーザセンサ40で取得した既設構造物ES10及び仮設構造物TS10を含む第1センサ地図SM1から、無人フォークリフト10の現在位置における初期地図IMでの既設構造物ES1に対応する既設構造物ES10を削除して仮設構造物TS10を含む第2センサ地図SM2を生成する削除部28と、無人フォークリフト10の現在位置における初期地図IMと第2センサ地図SM2とを合成して、既設構造物ES1及び仮設構造物TS10を含む合成地図CMを作成する合成部29と、地理的位置情報が紐付けされた合成地図CMと、レーザセンサ40で取得した周囲環境とを比較することで無人フォークリフト10の自己位置を推定する自己位置推定部27と、を備える。
【0045】
よって、周囲環境の中の仮設構造物及び既設構造物を含む合成地図CMと、環境センサとしてのレーザセンサ40で取得した周囲環境との比較により無人フォークリフト10の自己位置を推定するため、既設構造物の少ない環境でも自己位置推定を行うことができる。また、無人フォークリフト10の現在位置におけるレーザセンサ40による既設構造物及び仮設構造物をマッチングに用いるので、周囲環境変化の大きい環境でも自己位置推定を行うことができる。
【0046】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○上記実施形態では図5に示すようにスキャンデータを取得する毎に合成地図を作成しているが、一定距離走行毎や一定時間経過毎に合成地図を作成してもよい。
【0047】
現在座標(現在位置)の精度は高くないので仮設構造物もずれて登録してしまい、それを使ってスキャンデータのマッチングをデータ取得毎に行うと地図が徐々にずれることがあるが、一定距離走行毎や一定時間経過毎に合成地図を作成することにより、誤差の蓄積が小さくなる。また、計算処理負荷が小さくなる効果がある。
【0048】
このように、合成部29は、一定距離走行毎または一定時間経過毎に、合成地図CMを作成するようにしてもよい。
〇仮設構造物をどれだけの期間保存しておくかについて、例えば、仮設構造物が自動車の場合にはすぐに移動する可能性があるので、できるだけデータに登録したくない。一方で、動かないであろうパレット等は長期間登録しても問題はない。そこで、初期地図に合成した仮設構造物毎に保存期間の情報を追加し、保存期間の過ぎた時点で地図から削除してもよい。保存期間は、信頼性の観点から決定する。具体的には、カメラにより周囲を撮像してディープラーニングによる画像認識処理により自動車等の移動体であること、あるいは、パレット等の静止物体であることを認識して、例えば、自動車であれば短い期間とし、パレットであれば長い期間とする。
【0049】
この場合には、自己位置推定精度の向上が図られるとともに、自己位置推定ができないロストを発生しにくくできる。
このように、合成部29は、合成地図CMにおける仮設構造物TS10に対し保存期間の情報を追加し、保存期間の過ぎた時点で合成地図CMから削除するようにすることもできる。
【0050】
図5のステップS12において、第1センサ地図SM1から初期地図IMでの既設構造物ES1に対応する既設構造物ES10を削除すべく既設構造物に照射されたスキャンデータを削除する際に、静止物体でほとんど動かないものは既設構造物として地図に登録してもよい。つまり、このような静止物体はレーザセンサで検出した当初は仮設構造物としていたが、判定を行ってほとんど動かないことが分かれば合成地図や初期地図においては既設構造物として取り扱って登録してもよい。
【0051】
この場合、自己位置推定精度の向上を図ることができるとともに自己位置推定ができないロストを発生しにくくできる。
〇環境センサとして、レーザセンサを用いたが、レーザセンサ以外にも例えばステレオカメラ等でもよい。
【0052】
〇車両はフォークリフトであったが、これに限ることなく、フォークリフト以外の産業車両に適用してもよいし、産業車両以外の車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…無人フォークリフト、11…車体、25…記憶部、27…自己位置推定部、28…削除部、29…合成部、40…レーザセンサ、CM…合成地図、ES1…既設構造物、ES10…既設構造物、IM…初期地図、Obj1…物体、SM1…第1センサ地図、SM2…第2センサ地図、TS10…仮設構造物。
図1
図2
図3
図4
図5