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特開2022-143247ダイセット、筒形ワーク生成装置及びトランスファプレス機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143247
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ダイセット、筒形ワーク生成装置及びトランスファプレス機
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/14 20060101AFI20220926BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20220926BHJP
   B21D 22/28 20060101ALI20220926BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20220926BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20220926BHJP
   B21D 43/05 20060101ALI20220926BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B21D28/14 C
B21D28/02 A
B21D22/28 Z
B21D24/00 H
B21D24/00 F
B21D43/00 K
B21D43/00 U
B21D43/05 A
B30B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043670
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】下方 智久
【テーマコード(参考)】
4E090
4E137
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090CC01
4E090EC04
4E090FA02
4E090GA03
4E090HA03
4E090HA04
4E137AA26
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA21
4E137DA13
4E137EA02
4E137EA07
4E137EA11
4E137GA02
(57)【要約】
【課題】従来よりコンパクトなダイセット、筒形ワーク生成装置及びトランスファプレス機を提供する。
【解決手段】本開示のダイセット90は、上ベース91を昇降可能に支持する1対の支柱89が、下ベース41に備えた架橋部材43Aに支持されて板金送給路41Sの上方のデッドスペースに配置されている。これにより、従来のように板金送給路41Sの両側に1対の支柱89が配置されたものに比べてダイセットがコンパクトになる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打抜ダイを保持する下ベースと、
第1の水平方向から前記打抜ダイ上に板金を送給するための板金送給路と、
前記打抜ダイと協働して前記板金からブランク材を打ち抜く打抜パンチを保持し、前記下ベースから起立する1対の支柱に昇降可能に支持される上ベースと、を備えるダイセットであって、
前記下ベースに設けられ、前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向で、前記板金送給路を挟んで対向する1対の架台と、
前記下ベースに設けられ、前記1対の架台の上に架橋されて、前記1対の支柱の下端部を、前記板金送給路の上方で支持する架橋部材と、を備えるダイセット。
【請求項2】
前記1対の支柱は、前記第1の水平方向で前記打抜パンチを挟んで対向している請求項1に記載のダイセット。
【請求項3】
前記架橋部材は、前記打抜ダイを上方から覆うブロック状をなし、前記打抜孔と同心でかつ前記打抜パンチが通過するパンチ通過孔を有する請求項1又は2に記載のダイセット。
【請求項4】
前記架橋部材の下面に取り付けられて前記架橋部材の下面から突出し、前記板金に上方から対向すると共に、前記打抜パンチが通過するパンチ通過孔を有する当接部材が備えられている請求項3に記載のダイセット。
【請求項5】
前記上ベースから下方に突出し、前記パンチの上端部を収容するパンチ収容スリーブを備え、
前記架橋部材の前記パンチ通過孔は、前記当接部材の前記パンチ通過孔より広く、前記架橋部材の前記パンチ通過孔のみに前記パンチ収容スリーブが進退する請求項4に記載のダイセット。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載のダイセットと、
前記上ベースに支持される筒形の前記打抜パンチと、
前記打抜パンチの内側を貫通し、上下に直線移動する絞りパンチと、
前記下ベースに支持され、前記打抜パンチが進退する打抜孔を有する前記打抜ダイと、
前記打抜ダイの下に重ねられて前記下ベースに支持され、前記打抜孔より小さくかつ前記絞りパンチの下端部が通過する絞り孔を有する絞りダイと、を備え、
前記ブランク材を前記打抜パンチで前記絞り孔の開口縁に押し付けた状態にして前記絞りパンチで前記絞り孔に引き込んで筒形のワークに成形する筒形ワーク生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の筒形ワーク生成装置と、
前記打抜パンチを先頭にして複数のパンチを前記第2の水平方向に並べて支持するラムと、
前記複数のパンチに対応した複数のダイを内蔵する支持ブロックと、
前記支持ブロックの上面から突出して前記第1の水平方向で対向し、前記下ベースを、前記支持ブロックの上面から浮かせた状態に支持する台座部と、
前記絞りパンチで前記支持ベッドの上面まで打ち下ろした前記ワークを、前記複数のパンチへと間欠的に搬送するトランスファ装置と、を備えるトランスファプレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打抜ダイと打抜パンチとを保持するダイセット及び、そのダイセットを備えてブランク材から筒形ワークを成形する筒形ワーク生成装置及び、筒形ワークを絞り・しごき成形するトランスファプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のダイセットとして、打抜ダイを保持する下ベースから1対の支柱が起立し、打抜パンチを保持する上ベースが1対の支柱に昇降可能に支持され、さらに、1対の支柱の間を通って水平方向から板金が打抜ダイの上に送給されるものが知られている。なお、上ベースが降下すると、打抜パンチと打抜ダイとにより板金の一部がブランク材として打ち抜かれる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-203212号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のダイセットに対してコンパクト化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、打抜ダイを保持する下ベースと、第1の水平方向から前記打抜ダイ上に板金を送給するための板金送給路と、前記打抜ダイと協働して前記板金からブランク材を打ち抜く打抜パンチを保持し、前記下ベースから起立する1対の支柱に昇降可能に支持される上ベースと、を備えるダイセットであって、前記下ベースに設けられ、前記第1の水平方向と交差する第2の水平方向で、前記板金送給路を挟んで対向する1対の架台と、前記下ベースに設けられ、前記1対の架台の上に架橋されて、前記1対の支柱の下端部を、前記板金送給路の上方で支持する架橋部材と、を備えるダイセットである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1のダイセットでは、上ベースを昇降可能に支持する1対の支柱が、下ベースに備えた架橋部材に支持されて板金送給路の上方のデッドスペースに配置されているので、従来のように板金送給路の両側に1対の支柱が配置されたものに比べてダイセットがコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係るトランスファプレス機の正面図
図2】筒形ワーク生成装置の正断面図
図3】打抜パンチが下死点に位置する筒形ワーク生成装置の正断面図
図4】絞りパンチが下死点の手前に位置する筒形ワーク生成装置の正断面図
図5】打抜パンチが上死点に位置する筒形ワーク生成装置の側断面図
図6】絞りパンチが下死点に位置する筒形ワーク生成装置の側断面図
図7】筒形ワーク生成装置の斜視図
図8】第2実施形態の筒形ワーク生成装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、図1図7を参照して、本開示の第1実施形態に係るトランスファプレス機10について説明する。図1に示すように、トランスファプレス機10は、支持フレーム11に昇降可能に支持されたラム12の下端部に複数のパンチ(図1の符号25,25X参照)を横一列に並べて備える。本実施形態では、複数のパンチの並び方向が、本開示に係る「第2の水平方向」に相当し、複数のパンチの並び方向と直交する水平方向が、本開示に係る「第1の水平方向」に相当する。以下、複数のパンチの並び方向と直交する水平方向、即ち、「第1の水平方向」を「前後方向H1」といい、複数のパンチが並ぶ水平方向、即ち、「第2の水平方向」を「横方向H2」ということとする。また、トランスファプレス機10のうち図1に表示されている側を「前側」、その反対側を「後側」というと共に、トランスファプレス機10を前側から見て右側を単に「右側」、その反対側を単に「左側」ということとする。
【0009】
図1に示すように、トランスファプレス機10の左端には、筒形ワーク生成装置30が備えられている。その筒形ワーク生成装置30は、図2に示すように、筒状の打抜パンチ31及びその内側を貫通した絞りパンチ35と、それらに対応する打抜ダイ32及び絞りダイ36とを有する。そして、図3に示すように、打抜パンチ31が打抜ダイ32と協働して板金W1からブランク材W2を打ち抜き、図4に示すように、ブランク材W2を絞りパンチ35が絞りダイ36と協働して筒形ワークW3に成形する。即ち、筒形ワーク生成装置30により、板金W1から筒形ワークW3が生成される。
【0010】
図1に示すように、ラム12の下端部において、打抜パンチ31を先頭にして横一列に並ぶ複数のパンチは、右端のものを除いた全てが追加工パンチ25であり、それら追加工パンチ25に対応する複数の追加工ダイ26がラム12の下方の支持ブロック24内に備えられている。そして、各追加工パンチ25が筒形ワークW3を各追加工ダイ26の図示しない成形孔に引き込んで絞り又はしごき成形する。また、各成形孔に引き込まれた筒形ワークW3は、図示しないノックアウトピンと追加工パンチ25とに挟まれた状態で成形孔の上方に押し出され、各追加工パンチ25に嵌合した筒形の図示しないワークストリッパーにより追加工パンチ25から抜き取られる。そして、トランスファ装置18により各成形孔の上方の筒形ワークW3が、各右隣の成形孔の上方に搬送される。この動作が繰り返されて筒形ワークW3が複数の追加工パンチ25及び追加工ダイ26により複数回に亘って追加工される。また、ラム12の右端のパンチは、払い落としパンチ25Xであり、トランスファ装置18により搬送されてきた筒形ワークW3を図示しない排出路に払い落とす。排出路に落ちた筒形ワークW3は、図示しない回収ボックスに回収される。
【0011】
上記トランスファ装置18は、図5に示すように前後方向H1で対向する複数対のフィンガー20(図5には、1対のフィンガー20のみが示されている)を、横方向H2に延びる1対の支持レール19で接近及び離間可能に支持しかつ、図示しないコイルばねにてフィンガー20同士を互いに接近させる側に付勢した構造をなしている。そして、複数対のフィンガー20が筒形ワークW3を把持して、各追加工ダイ26上からそれらの右隣の追加工ダイ26上へと移動し、追加工パンチ25に引き渡すことで、筒形ワークW3が間欠的に横方向H2の右側に搬送される。
【0012】
なお、打抜パンチ31と左端の追加工パンチ25との間は、パンチ及びダイを有しない所謂ダミーステージになっていて、トランスファ装置18によってダミーステージに搬送された筒形ワークW3は、図示しないノックアウトピンと後述する下ベース本体42の下面とで上下方向から挟まれて一時的に保持されるようになっている。
【0013】
ラム12とトランスファ装置18と複数のノックアウトピンと複数のワークストリッパーは、同じ駆動源で駆動される。具体的には、図1に示すように、支持フレーム11の上部と下部とには、それぞれ横方向H2に延びる上部シャフト13と下部シャフト17とが回転可能に支持され、支持フレーム11の左側方には、上下方向に延びる側部シャフト14が回転可能に支持されている。そして、側部シャフト14の上端部の傘歯車14Gと上部シャフト13の一端部の傘歯車14Gとがギヤ連結されると共に、側部シャフト14の下端部と下部シャフト17の一端部とがギヤボックス17Gに内蔵された図示しないギヤにて連結されて、共通の駆動源により上部シャフト13と側部シャフト14と下部シャフト17とが回転駆動されるようになっている。
【0014】
そして、上部シャフト13と一体に回転する1対のカム13Aからラム12が動力を受けて昇降し、下部シャフト17と一体回転する図示しない複数のカムから、複数のノックアウトピンが動力を受けて昇降する。また、複数のワークストリッパーは、支持ブロック24の後方に配置された図示しないリンク機構を通して下部シャフト17の図示しない複数のカムから動力を受けて昇降する。さらには、側部シャフト14の中間部にもカム14Aが一体回転可能に備えられている。そして、前述した1対の支持レール19の一端同士の間と一端寄り位置同士の間とに差し渡された図示しない1対の連絡バーの間にカム14Aが収容され、これによりラム12の昇降動作に同期して1対の支持レール19が横方向H2に往復移動する。
【0015】
図5に示すように筒形ワーク生成装置30は、前述の打抜パンチ31と打抜ダイ32とをダイセット90に固定して備える。ダイセット90は、打抜ダイ32を保持する下ベース41と、下ベース41から起立する1対の支柱89に昇降可能に支持されて、打抜パンチ31を保持する上ベース91とを備える。そして、上ベース91が、1対の支柱89により、水平な二次元平面内で二次元的に位置決めされた状態で昇降する。これにより、打抜パンチ31と打抜ダイ32とによる加工精度が向上する。
【0016】
詳細には、トランスファプレス機10では、連続運転を行うと各部位の熱変形により、ラム12と支持ブロック24との水平方向の相対位置が経時変化したり、複数の追加工パンチ25が受ける加工抵抗によりラム12が左右に傾いたりして、打抜パンチ31と打抜ダイ32とが芯ズレを起こすことがある。これに対し、本実施形態のトランスファプレス機10では、打抜パンチ31と打抜ダイ32とがダイセット90に支持されることで、それらの芯ズレが抑えられて加工精度が向上する。また、ダイセット90に支持された打抜パンチ31の中心部を前述の絞りパンチ35が貫通すると共に、それに対応した絞りダイ36が下ベース41に固定されているので、絞りパンチ35と絞りダイ36の芯ズレも抑えられ、それらの加工精度が向上する。
【0017】
以下、打抜パンチ31、打抜ダイ32、絞りパンチ35、絞りダイ36と共にダイセット90の構造について詳説する。図7に示すように、ダイセット90の下ベース41は、下ベース本体42と、下ベース本体42の上に重ねて固定された支柱支持体43とを含んでなる。下ベース本体42全体は、例えば、前後方向H1に長く、上下方向に扁平な略直方体状(略ブロック状)をなしている。そして、下ベース本体42の平面形状における図心部分を、図2に示したダイ収容孔46が上下に貫通している。
【0018】
同図に示すように、ダイ収容孔46は、上から下に向かって段付き状に縮径されて、上から順番に、大径部46A、第1段差面46B、中径部46C、第2段差面46D、小径部46Eを備える。また、絞りダイ36は、円板状をなし、中心部にダイ収容孔46の小径部46Eより小径の絞り孔36Aを有する。そして、絞りダイ36は、ダイ収容孔46の第2段差面46Dに重ねられて中径部46Cに嵌合されると共に、打抜ダイ32により固定されている。また、絞りダイ36の上面は、ダイ収容孔46の第1段差面46Bと面一に配置されている。
【0019】
打抜ダイ32は、円板の上面全体を円錐台状に突出させた形状をなし、中心部に絞り孔36Aより大径の打抜孔32Aを有する。そして、打抜ダイ32は、ダイ収容孔46の大径部46Aに嵌合されると共に、第1段差面46Bとそれと面一の絞りダイ36の上面とに重ねられ、図示しないボルトで下ベース本体42に固定されている。そして、打抜ダイ32の円錐台状の上面全体が下ベース本体42の上面中央から突出して環状突部32Tになっている。また、打抜ダイ32は、ボルトにて固定され、そのボルトが打抜ダイ32の上面に突出しないように図示しない座ぐり部に受容されている。
【0020】
なお、環状突部32Tの水平な上面と打抜孔32Aの内面との角部は、それら両面がピン角状態に直交したエッジ部32Lになっている。それに対し、絞りダイ36の水平な上面と絞り孔36Aの内面との角部は円弧状に面取りされて面取り面36Cを有する。
【0021】
図5に示すように、下ベース本体42の下部には、前後方向H1で対向してダイ収容孔46の小径部46Eの内面に開口する1対の凹部47が備えられている。そして、それら1対の凹部47に1対のワークストリッパー48が収容され、互いに接近する側に付勢されている。
【0022】
また、下ベース本体42は、前後方向H1の両端部を、支持ブロック24の上面から突出する台座部24Kに支持されている。そして、ボルトB1により台座部24Kに固定されていると共に、位置決めブロック42Bにて位置決めされている。これにより、下ベース本体42全体が支持ブロック24の上面から浮いた状態に保持されている。そして、下ベース本体42と支持ブロック24との間を前述のトランスファ装置18が貫通している。なお、図2図4では、ワークストリッパー48とトランスファ装置18とが省略されている。
【0023】
図7に示すように、下ベース本体42の上面には、横方向H2の両側の縁部全体を段付き状に陥没させて1対の陥没部49Aが形成され、それら1対の陥没部49Aの間が上面突部49Bになっている。これに対し、支柱支持体43は、例えば、下ベース本体42と平面形状が略同一のブロック状の架橋部材43Aと、架橋部材43Aの下面における横方向H2の両側の縁部全体から段付き状に突出した1対の架台43Bとを備え、1対の架台43Bの間が下面溝43Mになっている。換言すれば、支柱支持体43は、1対の架台43Bの間に架橋部材43Aが架橋された構造になっている。そして、下ベース本体42の上面突部49Bが、支柱支持体43の下面溝43Mに嵌合されて、1対の架台43Bが、1対の陥没部49Aに収まった状態で位置決めブロック41Bにて固定されている。また、図2に示すように、架橋部材43Aは、前述の環状突部32Tより上方に位置し、架橋部材43Aと下ベース本体42との間には、前後方向H1の一方側から板金W1が送給される板金送給路41Sが形成されている。
【0024】
なお、本実施形態では、板金送給路41Sは、四方を壁(1対の架台43B、架橋部材43A及び上面突部49B)に囲まれた空間であるが、板金W1が通過する路であれば、板金送給路は壁に囲まれていなくても、壁に挟まれていなくてもよい。
【0025】
図2及び図7に示すように、架橋部材43Aには、打抜孔32Aの同軸上に断面四角形のパンチ通過孔43Wが形成されている。そのパンチ通過孔43Wは、下端部が段付き状に拡径された大径部43Vになっていて、そこに、例えば円板状の当接部材45が嵌合されている。また、当接部材45の中心部には、打抜孔32Aの同軸上に断面円形のパンチ通過孔45Wが形成されている。そして、当接部材45のパンチ通過孔45Wの内径は、打抜ダイ32の打抜孔32Aの内径と同じかそれより僅かに大きくなっている。また、当接部材45のパンチ通過孔45Wの上部は、当接部材45の上下方向の上端から中間位置に亘って徐々に縮径するテーパー形状をなしている。
【0026】
図5に示すように、架橋部材43Aのうち前後方向H1の両端部には、前述した1対の支柱89を支持するための1対の支持孔43Xが形成されている。それら1対の支持孔43Xは、前後方向H1で架橋部材43Aを挟んで対称となる位置に配置され、架橋部材43Aを上下に貫通し、下端部が段付き状に拡径した大径部43Yになっている。
【0027】
これに対し、各支柱89は、断面円形をなして上下方向に延びかつ下端寄り位置からフランジ89Fが張り出した支柱本体89Aと、円柱体の下端からフランジ88Fが張り出した抜止パーツ88とを備えてなる。また、抜止パーツ88の中心部には、下端に座ぐり部88Zを有する貫通孔88Aが形成され、支柱本体89Aの下端部の中心部には螺子孔89Nが形成されている。そして、支柱本体89Aが、支持孔43Xに対して上方から差し込まれてフランジ89Fが架橋部材43Aの上面に宛がわれ、抜止パーツ88が、支持孔43Xに対して下方から差し込まれてフランジ88Fが支持孔43Xの大径部43Yに収容されている。そして、抜止パーツ88の貫通孔88Aに通したボルトが支柱89の螺子孔89Nに締め付けられて支柱89が架橋部材43Aに固定されている。
【0028】
図7に示すように、上ベース91は、上下方向に扁平で、前後方向H1に長い直方体状をなしている。なお、上ベース91の前後方向H1の長さは架橋部材43Aと略同一で、横方向H2は、架橋部材43Aより幅狭になっている。そして、上ベース91の長手方向の両端部を1対の貫通孔91Aが貫通し、それら1対の貫通孔91Aに圧入された1対の摺動スリーブ92の内側を1対の支柱89が貫通している。また、図5に示すように、1対の摺動スリーブ92は、例えば摺動メタルで形成され、下端面が上ベース91と面一に配置されかつ上ベース91から上方に突出している。
【0029】
図5及び図7に示すように、上ベース91における打抜孔32Aの同軸上には断面四角形の貫通孔91Bが形成され、その貫通孔91Bの開口縁から角筒状のパンチ収容スリーブ91Kが垂下されている。また、上ベース91の上面には、上ベース91の長手方向に延びた長方形状の上面凹部91Dが形成され、その上面凹部91Dの下面の中央部に貫通孔91Bが開口している。
【0030】
貫通孔91Bには、パンチホルダ93が挿入されている。パンチホルダ93は、角筒部93Aの上端に長円形のフランジ93Fを備えた構造をなしている。また、角筒部93Aの上端は、フランジ93Fと上面が面一の上端壁93Jで閉塞され、その中心部には断面円形の挿通孔93Bが形成されている。
【0031】
そして、パンチホルダ93は、角筒部93Aに打抜パンチ31が取り付けられた状態で貫通孔91Bに上方から挿入されている。また、フランジ93Fは、上面凹部91Dの横方向H2で対向する内側面に隙間を開けた状態で受容され、フランジ93Fの長手方向の両端部を貫通するボルトにより上ベース91に固定されている。なお、パンチホルダ93の上面と上ベース91の上面とは面一に配置され、パンチホルダ93の先端面93Sは、パンチ収容スリーブ91Kの先端面と面一に配置されている。
【0032】
図2に示すように、打抜パンチ31は、筒状をなし、その外周面には、軸方向における途中位置より上側に小径部31B、下側に大径部31Aが備えられている。そして、小径部31Bがパンチホルダ93内に下方から嵌合され、小径部31Bと大径部31Aとの間の段差面がパンチホルダ93の先端面93Sに突き当てられている。また、図3に示すように、小径部31Bには、周方向の一部に螺子孔31Nが形成されている。そして、パンチホルダ93に形成された貫通孔93Kを通して螺子孔31Nにセット螺子31Mが螺合されて打抜パンチ31がパンチホルダ93に抜け止めされている。
【0033】
図2に示すように、絞りパンチ35は、断面円形のシャフト部35Aの下端に、それより外径が大きな扁平円柱状のパンチ本体部35Bを固定した構造をなしている。なお、パンチ本体部35Bの下面と側面とが交差する角部は、円弧状に面取りされている。
【0034】
打抜パンチ31の内部は、絞りパンチ35に対応して軸方向の途中位置より下側が内側大径部31Cをなす一方、上側が内側小径部31Dをなしている。なお、内側小径部31Dはパンチホルダ93の挿通孔93Bより僅かに小さくなっている。そして、絞りパンチ35のパンチ本体部35Bが内側大径部31Cに遊嵌され、絞りパンチ35のシャフト部35Aが、内側小径部31Dに嵌合されて打抜ダイ32に対して絞りパンチ35が芯出しされている。
【0035】
上ベース91は、ラム12に対する僅かな水平移動と僅かな傾動を許容された状態で結合されている。その結合のために、ラム12には、図3に示した結合ボルト95が備えられている。結合ボルト95は、筒状をなし、上下方向の中間部より上側の外面に雄螺子部95Nを有する。そして、結合ボルト95は、ラム12を上下に貫通する螺子孔96Nに雄螺子部95Nを螺合されて、ラム12に対して上下に位置調整可能に取り付けられている。また、結合ボルト95の内側は、パンチホルダ93の挿通孔93Bと同じかそれより大きな内径をなしている。なお、ラム12のうち螺子孔96Nを有する部分は、ラム12全体より硬度が高い部材で構成された補強スリーブ96になっていて、その補強スリーブ96がラム12の下孔96A内に固定されている。
【0036】
結合ボルト95の下端寄り位置には、環状溝95Mが形成され、その環状溝95Mより下側部分全体が円板状のフランジ95Fになっている。また、結合ボルト95の下端部には、1対の結合部材94が装着されている。結合部材94は、図7に示すように、直方体の一側面に開放するU字溝を備え、そのU字溝の開口縁の上端部が下端部に対して段付き状に内側に突出した構造をなし、上端に係合突部94Tを有する。そして、結合部材94の係合突部94Tが、結合ボルト95の環状溝95Mに受容され、結合ボルト95のフランジ95Fが結合部材94のうち係合突部94Tより下方の大径部94Dに収容された状態で、結合部材94がパンチホルダ93の上面にボルトにて固定されている。
【0037】
これにより、上ベース91がラム12と共に昇降するように連結されている。そして、結合部材94と結合ボルト95の下端部との間のクリアランスと、絞りパンチ35のシャフト部35Aと結合ボルト95の内面及び挿通孔93Bの内面との間のクリアランスとにより、上ベース91が、ラム12に対して任意の方向への僅かな水平移動と任意の方向への僅かな傾動が許容されている。つまり、ダイセット90は、トランスファプレス機10のラム12と支持ブロック24との間に、ラム12と支持ブロック24との間の僅かな位置ズレと傾動を許容された状態で取り付けられている。
【0038】
絞りパンチ35のシャフト部35Aは、結合ボルト95の内側を貫通して結合ボルト95より上方まで延び、図1に示したレバー16に連結されている。具体的には、レバー16はシーソー形をなし、その一端部が絞りパンチ35(詳細には、シャフト部35A)の上端部に対して前後方向H1及び横方向H2に移動可能な状態でヒンジ連結されている。また、レバー16の他端部には、回動軸方向に突出する図示しないカムフォロアが備えられている。そのカムフォロアは、側部シャフト14と一体回転する円柱体15の外周面のカム溝15Aに係合している。これにより、絞りパンチ35がラム12に同期して昇降する。
【0039】
なお、本実施形態の打抜パンチ31及び絞りパンチ35は、共に平断面が円形であるが楕円形又は長円形をなして、筒形ワーク生成装置30が楕円形又は長円形の筒形ワークを生成するようにしてもよい。また、絞りパンチ35は、ラム12とは別の動力源から動力を受けて動作する構成としてもよい。
【0040】
本実施形態のトランスファプレス機10の構成に関する説明は以上である。次に、このトランスファプレス機10の動作について説明する。トランスファプレス機10を起動すると、ラム12と共に筒形ワーク生成装置30の打抜パンチ31及び絞りパンチ35が昇降する。そして、図2に示すように、打抜パンチ31及び絞りパンチ35が、下ベース41の架橋部材43Aから上方に離れているときに、板金送給路41Sに通された板金W1が、打抜ダイ32の打抜孔32Aを覆うように送給される。そして、打抜パンチ31が絞りパンチ35の下端部を内側に受容した状態で降下して、架橋部材43A及び当接部材45のパンチ通過孔43W,45Wを通過し、打抜孔32Aに突入して図3に示すように、板金W1の一部をブランク材W2として打ち抜く。そして、打抜パンチ31の下面が絞りダイ36の上面に隣接したところで下死点に至る。これにより、ブランク材W2が、外縁部を打抜パンチ31の下面と絞りダイ36の上面とに挟まれる。そして、その状態で、絞りパンチ35が打抜パンチ31から下方に降下してブランク材W2を絞り孔36Aに引き込み、図4に示すように筒形ワークW3に成形する。
【0041】
絞りパンチ35は、その後、図6に示すように、筒形ワークW3と共に下ベース本体42の下方まで降下して1対のワークストリッパー48の間を通過し、さらには、トランスファ装置18の左端部の1対のフィンガー20の間に入り込んだところで下死点に至る。そして、絞りパンチ35が上昇するときに、1対のワークストリッパー48によって筒形ワークW3が絞りパンチ35から引き離される。また、打抜パンチ31は、絞りパンチ35より先に上昇していて、その際、打抜パンチ31の外側の板金W1が当接部材45に当接して打抜パンチ31から引き離される。
【0042】
上述のようにして筒形ワークW3が筒形ワーク生成装置30で生成され、トランスファ装置18の1対のフィンガー20に引き渡される。そして、前述のダミーステージを経て、複数の追加工ダイ26上へと順次搬送され、前述の通り複数の追加工パンチ25及び追加工ダイ26によって追加工される。
【0043】
ところで、トランスファプレス機10が連続運転されると熱変形等により、ラム12と支持ブロック24とが互いに僅かに傾いたり水平方向で僅かに位置ズレしたりすることがある。しかしながら、本実施形態のトランスファプレス機10では、筒形ワーク生成装置30の打抜パンチ31及び絞りパンチ35と、打抜ダイ32及び絞りダイ36とが、ダイセット90の上ベース91と下ベース41とに支持され、そのダイセット90は、ラム12と支持ブロック24との間の僅かな傾きや位置ズレを吸収することができるようにラム12に連結されている。そして、上ベース91と下ベース41とは、1対の支柱89によって二次元的に位置決めされた状態で昇降するので、打抜パンチ31及び絞りパンチ35と、打抜ダイ32及び絞りダイ36との位置関係が安定し、筒形ワーク生成装置30が高い加工精度で筒形ワークW3を生成することができる。
【0044】
このように筒形ワーク生成装置30は、ダイセット90を有することで、有しない場合に比べて高い加工精度で筒形ワークW3を生成することができる。ところで、そのダイセット90が従来のダイセットであるとすると、1対の支柱が板金送給路41Sを挟んだ両側から起立した構造になり、ダイセットが嵩張ると共に、そのダイセットの設置スペースの確保のために筒形ワーク生成装置及びトランスファプレス機が大型化する。
【0045】
しかしながら、本実施形態のダイセット90では、図7に示すように、1対の支柱89が、下ベース41に備えた架橋部材43Aに支持されて板金送給路41Sの上方のデッドスペースに配置されているので、従来のように板金送給路41Sの両側に1対の支柱が配置されたものに比べてダイセット90がコンパクトになる。これにより、図1に示すように、ダイセット90を有する筒形ワーク生成装置30もコンパクトになり、筒形ワーク生成装置30を有するトランスファプレス機10もコンパクトになる。また、1対の支柱89が板金送給路41Sの両側にない分、板金送給路41Sの幅を拡げることもできる。さらに本実施形態のダイセット90では、架橋部材43Aのパンチ通過孔43Wにパンチ収容スリーブ91Kが受容される位置まで架橋部材43Aが厚くなっているので、1対の支柱89の支持強度が強固になる。また、架橋部材43Aの下面に取り付けた当接部材45が板金送給路41Sの板金W1と当接する構成になっているので、厚さが異なる当接部材45に交換して、板金W1と当接部材45との間の隙間を調整し、スムーズな板金W1の送給が可能になる。
【0046】
[第2実施形態]
図8に示されて本実施形態の筒形ワーク生成装置30Vのダイセット90Vには、前記第1実施形態で説明した支柱支持体43の長手方向の中間部分を切除してなる1対の支柱支持体43Kを備えている。それら1対の支柱支持体43Kの架橋部材43Aが、前後方向H1で打抜パンチ31を挟んだ2箇所に配置されて、それらから1対の支柱89が起立している。このような構造にしても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0047】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の筒形ワーク生成装置30は、トランスファプレス機10に含まれていたが、トランスファプレス機に含まれない、単独の筒形ワーク生成装置に上記構成を適用してもよい。
【0048】
(2)また、単に、ブランク材を生成するためのプレス機のダイセットに、上記構造を適用してもよい。具体的には、図5に示される筒形ワーク生成装置30において絞り加工を行わない構成とすればよい。なお、その際、ワークは筒形でなく、板金W1から打ち抜かれた平板状のブランク材W2がワークとなる。
【0049】
(3)前記第1実施形態のダイセット90における支柱89の数は2つであったが、3つ目、4つ目の支柱89を架橋部材43Aから起立させて、3つ以上の支柱89で上ベース91を支持してもよい。
【0050】
(4)前記第1実施形態のダイセット90では、支柱89の全体が板金送給路41Sの上に配置されていたが、支柱89の一部でも板金送給路41Sの上方に配置されていれば、一部以外の残りの部分が、板金送給路41Sの上方の外に配置されていてもよい。
【0051】
(5)前記第1実施形態の1対の支柱89は、前後方向H1で打抜パンチ31を挟んで対向配置されていたが、1対の支柱89は、架橋部材43Aから起立していれば、任意の方向に並んでいてもよい。よって、例えば、1対の支柱89は、横方向H2で打抜パンチ31を挟んで対向配置されていてもよい。ただし、板金送給路41Sは板金W1の供給方向である前後方向H1(第1の水平方向)に延びた状態になるので、前記実施形態のように1対の支柱89と打抜パンチ31とが前後方向H1に並んだ構成とすれば、1対の支柱89の配置の自由度が高くなる。
【0052】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0053】
10 トランスファプレス機
11 支持フレーム
12 ラム
24 支持ブロック
24K 台座部
30,30V 筒形ワーク生成装置
31 打抜パンチ
32 打抜ダイ
35 絞りパンチ
36 絞りダイ
41 下ベース
41S 板金供給路
43A 架橋部材
43B 架台
43W,45W パンチ通過孔
45 当接部材
45W パンチ通過孔
89 支柱
90,90V ダイセット
91 上ベース
91K パンチ収容スリーブ
H1 前後方向(第1の水平方向)
H2 横方向(第2の水平方向)
W1 板金
W2 ブランク材
W3 筒形ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8