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特開2022-143263循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法
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  • 特開-循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143263
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20220926BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K39/395 V
A61P31/12
A61P31/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043690
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】521107437
【氏名又は名称】株式会社グローバルテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100069213
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 功
(72)【発明者】
【氏名】御子神 智行
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085BB31
4C085CC08
4C085CC22
4C085DD88
4C085DD90
4C085EE01
(57)【要約】
【課題】繭造り、羽化、交尾、産卵を繰り返す循環型蚕業を利用してウイルスワクチンを製造する方法を提供する。
【解決手段】鳥類Pにウイルスを感染させ、抗体を鳥類Pの体内で形成させた後、この鳥類Pが産卵した抗原体鳥卵Qの全卵、卵黄または卵白より抗体を含有する蚕卵を得る工程と、前記抗体を含有させた抗原体鳥卵Qを生桑葉1に接種して蚕2に餌として与える工程と、蚕2から繭3を作り出し、該繭3から羽化した蚕を産卵させることで、抗体を含有する蚕卵4を得る工程と、この蚕卵4のうち一部をとってウイルスワクチンに生成する工程と、残りの一部または全部を羽化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類の体内に含有させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥卵を得る工程と、
前記抗体を含有させた抗原体鳥卵を生桑葉に接種した後、その生桑葉を蚕に餌として与える工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法。
【請求項2】
鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類の体内に含有させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥を得る工程と、
前記抗体を含有させた抗原体鳥卵を生桑葉に接種して、該生桑葉を乾燥粉末状に加工した桑葉粉末を蚕に餌として与える工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法。
【請求項3】
鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗原に抗体を鳥類の体内で形成させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥卵を得る工程と、
前記抗体を含有する抗原体鳥卵を蚕に直接注射する工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法。
【請求項4】
前記蚕卵のうち休眠卵をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの非休眠卵をふ化して、再び抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のウイルスワクチンの製造方法。
【請求項5】
前記生桑葉を乾燥粉末状に加工した桑葉粉末を、所定の形状、大きさの、煎餅状あるいはビスケット状等の固形物に形成したことを特徴とする請求項2に記載の循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法。
【請求項6】
前記鳥類は、ダチョウまたは鶏であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のウイルスワクチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルス、コロナウイルス、新型コロナウイルス等種々なウイルスを原因とするウイルス性感染症を予防する手段として、人または家畜などでは、一般的にワクチン接種が行われている。すなわち、不活化したウイルスまたはウイルス構成成分を人または家畜に接種することにより、個体自身の持っている免疫能力を賦活化し、病原体に対する抵抗力を増加させるものである。ワクチン接種を受けた個体は、ウイルスに対する特異的抗体を自身の体内に準備し、その後の感染に備える。この特異的抗体産生能力は、脊椎動物のような高等動物が持つ自己防衛機能の重要な位置を占めている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、H1型、H3型およびB型の各型1種以上を含むインフルエンザウイルス由来のHAを雌性鳥類、好ましくはダチョウに免疫し、その卵から抗体を回収することで、インフルエンザウイルスに結合する抗インフルエンザウイルス抗体を大量に且つ比較的短期間に製造する方法が存在する。これは、H1型、H3型およびB型の各型1種以上を含むインフルエンザウイルス由来のHAを同時に雌性鳥類に免疫する工程および該鳥類が産卵した卵の卵黄からIgYを回収する工程を含む、抗インフルエンザウイルス抗体を製造する方法である。
【0004】
前記インフルエンザウイルスは、ヒトを含む哺乳類および鳥類に感染する。従来は種の壁があるためヒトにはヒトインフルエンザ、鳥類にはトリインフルエンザのみが感染すると考えられてきたが、近年ヒトおよびトリの両方に感染するインフルエンザウイルスが出現している。これらの中で、特にH5N1は高病原性トリインフルエンザウイルスと呼ばれ(日本では家畜伝染病予防法で規定されている)、これに感染した場合は、ヒトおよびトリの両者で極めて致死率が高い。
【0005】
因みに、インフルエンザウイルスの検出、治療、予防、防疫には、抗体が有用である。この抗体の製造方法としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギのような哺乳動物を使用する方法の他、鳥類を使用する方法がある。
【0006】
哺乳類と比べ鳥類は大変高い免疫能力を持つことが知られている。これは鳥類が哺乳類とは全く異なった進化の過程を経てきているからといわれている。また鳥類の雌が有する抗体は卵となって体外に排出されるので、抗体の作製にも利用されている。例えば、鶏に抗原を接種し、抗原に特異的な抗体を鶏体内に形成させる。抗体が形成された後、この鶏が産卵した卵の全卵、卵黄または卵白より特異的抗体を含有する材料を大量に得る方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-23985公報
【特許文献2】特開昭62-215534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来では、蚕から繭造り、羽化、交尾、産卵を順次繰り返す循環型蚕業を利用してウイルスワクチンを大量に且つ効率的に製造する方法は未だ存在しないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、蚕から繭造り、羽化、交尾、産卵を順次繰り返す循環型蚕業を利用して効率良くウイルスワクチンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類の体内に含有させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥卵を得る工程と、
前記抗体を含有させた抗原体鳥卵を生桑葉に接種した後、その生桑葉を蚕に餌として与える工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類の体内に含有させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥を得る工程と、
前記抗体を含有させた抗原体鳥卵を生桑葉に接種して、該生桑葉を乾燥粉末状に加工した桑葉粉末を蚕に餌として与える工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする。
【0012】
鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗原に抗体を鳥類の体内で形成させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥卵を得る工程と、
前記抗体を含有する抗原体鳥卵を蚕に直接注射する工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備することを特徴とする。
【0013】
前記蚕卵のうち休眠卵をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの非休眠卵をふ化して、再び抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程を具備することを特徴とする。
【0014】
前記生桑葉を乾燥粉末状に加工した桑葉粉末を、所定の形状、大きさの、煎餅状あるいはビスケット状等の固形物に形成したことを特徴とする。
【0015】
前記鳥類は、ダチョウまたは鶏であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蚕から繭造り、羽化、交尾、産卵を順次繰り返す循環型蚕業を利用してウイルスワクチンを大量且つ効率的に製造することができるものである。
【0017】
すなわち、本発明は、鳥類に抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類の体内に含有させた後、この鳥類を産卵させて抗原体鳥卵を得る工程と、
前記抗体を含有させた抗原体鳥卵を生桑葉に接種した後、その生桑葉を蚕に餌として与える工程と、
前記蚕から繭を作り出し、該繭から羽化した蚕を産卵させて抗体を含有する蚕卵を得る工程と、
前記した蚕卵のうち一部をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの一部または全部をふ化して、再び上記抗体を含有する産卵可能な蚕とする各サイクルを順次繰り返す工程と、
を具備するものであるから、蚕から繭作り、産卵の一連の流れの中でウイルスワクチンを、大型の設備を要することなく、短期間で廉価に効率良く製造することができる。また、繭自体も抗体を具有するものであるから、当該繭から得られる絹糸をウイルスワクチンの製造に利用することも可能である。
【0018】
また、前記抗原体鳥卵を接種した生桑葉を乾燥粉末状に加工した桑葉粉末を蚕の餌とするので、生桑葉に含まれる有効成分を保持したままの桑葉紛末を蚕の餌とすることができ、斯くして産卵した蚕卵から大量のウイルスワクチンが容易且つ確実に得られる。
【0019】
さらに、抗体を含有する抗原体鳥卵を蚕に直接注射することにより、抗体を含有する生桑葉を餌として与えることなく、産卵した蚕卵から大量のウイルスワクチンが容易且つ確実に得られる。
【0020】
さらに、通常、産卵した蚕卵には直ちにふ化する非休眠卵と翌年までふ化しない休眠卵が混在するものであるから、非休眠卵を利用して蚕とする一方、休眠卵を利用してウイルスワクチンとすることにより蚕卵の効率の良い利用が可能となる。
【0021】
前記生桑葉の乾燥粉末を、所定の形状、大きさの、煎餅状あるいはビスケット状等の固形物に形成することで、保存性(貯蔵性)に優れている上、それら固形化した餌の数量を適正に設定して、効率良く蚕に与えることができる。したがって、最終的にワクチンの生産性に優れたものとなる。
【0022】
鳥類は、ダチョウまたは鶏であるので、ダチョウまたは鶏である鳥類が産卵した卵の全卵、卵黄または卵白より抗体を含有する抗原体鳥卵を生桑葉、あるいは生桑葉の乾燥粉末に接種させ、これらを蚕に餌として与えて産卵した蚕卵から大量の高品質ウイルスワクチンが容易且つ確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を実施するための一形態を示すウイルスワクチン製造の工程図である。
図2】本発明を実施するための他の形態を示すウイルスワクチン製造の工程図である。
図3】本発明を実施するための更に他の形態を示すウイルスワクチン製造の工程図である。
図4】蚕の卵から幼虫、サナギ、成虫になるまでのサイクルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る循環型蚕業を利用したウイルスワクチン製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
本実施形態では、先ず、図1に示すように、第1工程で、鳥類Pに抗原を接種してウイルスを感染させ、抗体を鳥類Pの体内で含有させた後、この鳥類Pを産卵させて抗原体鳥卵Qを得る(ステップS1)。
【0026】
このウイルスを鳥類P、例えばダチョウに注入し、ダチョウの体内で生成された抗体を抗原体鳥卵Qから生成したのがダチョウ抗体と呼ばれている。こうして生成された抗体は、体内に入ったウイルスを無毒化するタンパク質の一種であり、鳥類Pは母体で作った抗体を卵に移す性質がある。このようにウイルスの一部をダチョウに注入すると約2週間で抗体ができ、やがて卵の中に濃縮されて産出される。ダチョウ1羽が半年間に産む100個の卵からは、ワクチン接種8万回分の抗体1が精製できる。ダチョウの卵黄による精製法を使うと、1羽のダチョウから年間400gの抗体1が精製可能となる。
【0027】
次に、第2工程では、抗体を含有させた抗原体鳥卵Qを生桑葉1に接種して蚕2に餌として与える(ステップS2)。
【0028】
蚕2の蚕卵4から幼虫2a、サナギ5、蛾6、成虫7になるまでのサイクルを、図4を参照して説明する。先ず、第3工程で、蚕2から防護のための繭3を作り出し、該繭3内のサナギ5が羽化した後、蛾6から成虫7となった蚕2が交尾して産卵し抗体を含有する蚕卵4を得る(ステップS3)。すなわち、1令と数えられるふ化した蚕2の幼虫2aは、前記抗体を含有させた生桑葉1を餌として与えながら、脱皮を繰り返し大きくなっていく。
【0029】
3~4日でじっと動かなくなり、1日ぐらいしてから古い皮を脱いで(脱皮)大きくなり2令となる。およそ3~4日で脱皮して3令となり、さらに3~4日して脱皮して4令となる。およそ4~5日でじっと動かなくなり時間も長くなり5令となる。5令になってからおよそ5~7日すると糸を吐き始めて繭3作りが始まる。この繭3から紡ぎ取られる絹糸は、ウイルスに感染されている。したがって、この絹糸を原料としてウイルスワクチンを製造することも可能である。
【0030】
繭3が完成してから10~14日で繭3内部のサナギ5は羽化して蛾6から成虫7になる。こうして羽化が終わって蛾6から成虫7となった蚕2は羽根が乾いたらすぐに交尾を始める。交尾をしてから数時間すると産卵して次の世代の蚕卵4を産む。このように蚕卵4から産まれて脱皮を繰り返して大きくなり、幼虫2aから蛾6、成虫7になる過程で、蚕2の幼虫2aはサナギ5となり、該サナギ5を守るために糸を吐いて繭3を作る。
【0031】
次に、第4工程では、産卵による大量の蚕卵4のうち一部をとって抗体入りの蚕卵4として貯蔵し、注射もしくは飲薬のウイルスワクチンとして使用する(ステップS4)。抗体は、体内に侵入した細菌やウイルスと結合し、体内から除去する分子である。
【0032】
第5工程では、蚕卵4の残りの一部または全部はふ化して幼虫2a、サナギ5、繭3の作成、成虫7、及び成虫7となった蚕2の交尾、産卵までのサイクルを繰り返す(ステップS5)。こうして、前記第4工程と第5工程の各サイクルを順次繰り返すものである。
【0033】
ところで、通常、前記蚕卵4には直ちにふ化する非休眠卵と翌年までふ化しない休眠卵が混在するものであるから、前記休眠卵をとってウイルスワクチンを生成する一方、残りの非休眠卵の一部または全部をふ化して迅速に蚕とするのがウイルスワクチンの製造工程の効率化の点から望ましいものである。
【0034】
図2は、抗原体鳥卵Qを生桑葉1に接種して乾燥粉末となし、該桑葉粉末を蚕2(幼虫2a)に餌として与える工程を示す(ステップS20)。すなわち、生桑葉1を低温および短時間で粉砕および乾燥し桑葉粉末を精製加工し、生卵式常温移送により運ばれた抗原体鳥卵Qの抗体を例えば注射器等を使って桑葉粉末に吸引し含有させ、これを蚕2(幼虫2a)に餌として与える。この場合、前記生桑葉1の乾燥粉末は、所定の形状、大きさの、煎餅状あるいはビスケット状等の固形物に形成することもできる。こうすることにより、生桑葉1の保存性の向上に寄与することができる。
【0035】
抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7~8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0036】
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、ウイルス、及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイスル(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。
【0037】
最終製品としての桑葉粉末の内部温度が90℃を超えない温度で乾燥され、桑葉粉末を製造してこれを煎餅状またはビスケット状の固形物に加工する。生桑葉1を滞留時間30秒以内で粒径100μm以下の桑葉粒子が全体の80%以上を占めるように粉砕し乾燥する。更には、桑葉内での有効成分保存を表すパラメータでありかつ熱に最も不安定な総アスコルビン酸含有量が桑葉粉末100g中に400mg以上である。
【0038】
また、生桑葉1を使用しない人工飼料を使っても良い。すなわち、大量の蚕2の組換えウイルスによる感染率を高める飼料の製造方法及び大量の蚕2に同時に経口的に組換えウイルスを接種させる方法として、ウイルスを感染させた粉体人工飼料をチノパールUNPA-GXを飼料中の最終濃度が0.2~0.4重量%となるように溶解させた蒸留水と混合し、攪拌磨砕し、耐熱性ポリ袋に入れ、オートクレーブで加熱することからなる蚕2の組換えウイルスによる感染率を増加させるものとし、および蚕座上で飼育している大量の5令の蚕2に該方法により製造した飼料を与え、20~24時間後に、組換えウイルス液を塗布した飼料をのせた網を蚕座にのせることにより組換えウイルス液塗布飼料を給餌する。
【0039】
図3は、抗原体鳥卵Qを蚕2に注射器で直接注射するものである(ステップS30)。
【0040】
それ以外の蚕2から繭3を作り出し、その繭3から羽化した蚕2を産卵させて抗体を含有する蚕卵4を得る工程は前記同様である。
【0041】
次に、産卵による大量の蚕卵4のうち一部をとって抗体入りの蚕卵4として貯蔵し、注射もしくは飲薬のウイルスワクチンとして使用する。抗体は、体内に侵入した細菌やウイルスと結合し、体内から除去する分子である。
【0042】
一方、蚕卵4の残りの一部または全部はこれをふ化して、再び抗体を含有する産卵可能な蚕2とする。この際、蚕卵4として休眠卵と非休眠卵を利用できることも前記同様である。
【0043】
以上、説明したように、本発明の主たる特徴は、生産性を向上させるために、蚕卵4をウイルスワクチンとする工程と、再び抗体入りの蚕2とする工程とを、各サイクル毎に順次繰り返す循環型蚕業を利用したウイルスワクチンの製造方法である。
【符号の説明】
【0044】
P 鳥類
Q 抗原体鳥卵
1 生桑葉
2 蚕
2a 幼虫
3 繭
4 蚕卵
5 サナギ
6 蛾
7 成虫
図1
図2
図3
図4