IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特開-洗浄装置 図1
  • 特開-洗浄装置 図2
  • 特開-洗浄装置 図3
  • 特開-洗浄装置 図4
  • 特開-洗浄装置 図5A
  • 特開-洗浄装置 図5B
  • 特開-洗浄装置 図6
  • 特開-洗浄装置 図7
  • 特開-洗浄装置 図8
  • 特開-洗浄装置 図9
  • 特開-洗浄装置 図10
  • 特開-洗浄装置 図11
  • 特開-洗浄装置 図12
  • 特開-洗浄装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143293
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/04 20060101AFI20220926BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B08B5/04 A
B08B3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043740
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】堀越 勝恵
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
3B116AA03
3B116AB01
3B116AB39
3B116AB44
3B116BB22
3B116BB72
3B201AA03
3B201AB01
3B201AB40
3B201AB44
3B201BB22
3B201BB72
3B201BB92
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、マイクロプレートと洗浄ヘッドとの高さ方向の位置関係を再現性よく設定することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】ベース10の上面にはカム15a~15cが取り付けられている。プレート保持部22の裏面には、カム15a~15cに対応するカムフォロアが設けられている。カムフォロアは、引き出し方向D1に引き出されているドロワ20が押し込み方向D2に押し込まれたときに、カム15a~15cの第1の平面部の上面をスライドして傾斜部を上って第2の平面部へと乗り上げる。カムフォロアは、マイクロプレート30が洗浄ヘッド11の下側の最終位置の所定の距離だけ手前から最終位置に達した際に、プレート保持部22を押し上げた状態として、洗浄ヘッド11とマイクロプレート30との高さ方向の距離を近接させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースの上方に所定の高さで位置決めされており、マイクロプレートに形成されているウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドと、前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引する吸引ノズルを有する吸引ヘッドとを備える洗浄ヘッドと、
前記マイクロプレートを保持するプレート保持部を有し、前記ベースの内側の方向である押し込み方向に押し込まれたときに、前記プレート保持部に保持された前記マイクロプレートを前記洗浄ヘッドの下側に位置させ、前記ベースの外側の方向である引き出し方向に引き出されたときに前記洗浄ヘッドの下側に位置する前記マイクロプレートを前記洗浄ヘッドの下側の位置から外れた位置に位置させるドロワと、
前記ベースの上面に取り付けられ、前記引き出し方向側に位置し、第1の高さを有する第1の平面部から、前記押し込み方向側に位置し、前記第1の高さより高い第2の高さを有する第2の平面部まで傾斜する傾斜部を備える複数のカムと、
前記プレート保持部の裏面に取り付けられ、前記引き出し方向に引き出された前記ドロワを前記押し込み方向に押し込んだ際に、前記第1の平面部の上面をスライドして前記傾斜部を上って前記第2の平面部へと乗り上げ、前記ドロワを前記押し込み方向に押し込んだ最終位置に達した際に、前記プレート保持部を押し上げた状態として、前記洗浄ヘッドと前記マイクロプレートとの高さ方向の距離を近接させる複数のカムフォロアと、
を備える洗浄装置。
【請求項2】
前記複数のカムフォロアは、前記ドロワが前記最終位置に位置しているときに、前記吐出ノズルの吐出口と前記吸引ノズルの吸引口とが、前記ウェルの口径の内側かつ前記ウェルの上端よりも下側に位置するように前記プレート保持部を押し上げる請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記吸引口は前記吐出口より下方に位置している請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記吸引ノズルは、前記吐出ノズルよりも前記引き出し方向側に配置され、前記ドロワを前記押し込み方向に押し込んで前記最終位置とする際に、前記ウェルに接触しない位置に配置されている
請求項2または3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記マイクロプレートには複数のウェルが等角度間隔で同心円状に配置されており、
前記吐出ヘッド及び前記吸引ヘッドには、前記ドロワが前記最終位置に位置しているときに、一対の前記吐出ノズル及び前記吸引ノズルが前記複数のウェルにおける各ウェルに対応して位置するように、それぞれ、複数の吐出ノズル及び複数の吸引ノズルが取り付けられており、
各ウェルに対応する各一対の前記吐出ノズル及び前記吸引ノズルは、前記吸引ノズルが前記吐出ノズルよりも前記引き出し方向側に位置するように、それぞれ、前記吐出ヘッド及び前記吸引ヘッドに取り付けられている
請求項3または4に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートを洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートは、抗原・抗体反応を用いて試料に含まれている特定の物質を検出または定量する分析に用いられている。マイクロプレートは、試料を保持するためのウェルを備える。上記の分析において、例えば未反応の試料を除去するためにウェルを洗浄する必要がある。特許文献1にはマイクロプレートを洗浄する洗浄装置が記載されている。特許文献1に記載の洗浄装置は、吐出ノズルによってウェル内に洗浄液を吐出し、ウェル内の洗浄液を吸引ノズルによって吸引することによりウェルを洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-28261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な洗浄装置は、次のように洗浄ヘッドを昇降させる昇降装置を備える。マイクロプレートを洗浄ヘッドの下方に配置するときに、マイクロプレートと吐出ノズル及び吸引ノズルとの干渉を防ぐために、昇降装置は、吐出ノズル及び吸引ノズルを備える洗浄ヘッドをマイクロプレートから十分離れた上方に退避させる。マイクロプレートを上方に退避した洗浄ヘッドの下方に配置した後に、昇降装置は洗浄ヘッドを下降させる。
【0005】
洗浄装置は、洗浄ヘッドの高さ方向の位置を制御するための構成として、ステッピングモータ等のモータ、モータの駆動回路、洗浄ヘッドの高さ方向の位置を制御する制御プログラムを記憶する記憶部、制御プログラムを実行するプロセッサ等を備える必要があるため、洗浄装置には多くの構成が必要となる。洗浄ヘッドの高さ方向の位置を制御するための構成を備えず、洗浄装置を簡易的に構成すれば、操作者が手動で洗浄ヘッドの高さを調整しなければならず、常に同じ条件でマイクロプレートを洗浄することが困難である。簡易な構成で、マイクロプレートと洗浄ヘッドとの高さ方向の位置関係を再現性よく設定することが求められている。
【0006】
本発明は、簡易な構成で、マイクロプレートと洗浄ヘッドとの高さ方向の位置関係を再現性よく設定することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベースと、前記ベースの上方に所定の高さで位置決めされており、マイクロプレートに形成されているウェルに洗浄液を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドと、前記ウェルに吐出された洗浄液を吸引する吸引ノズルを有する吸引ヘッドとを備える洗浄ヘッドと、前記マイクロプレートを保持するプレート保持部を有し、前記ベースの内側の方向である押し込み方向に押し込まれたときに、前記プレート保持部に保持された前記マイクロプレートを前記洗浄ヘッドの下側に位置させ、前記ベースの外側の方向である引き出し方向に引き出されたときに前記洗浄ヘッドの下側に位置する前記マイクロプレートを前記洗浄ヘッドの下側の位置から外れた位置に位置させるドロワと、前記ベースの上面に取り付けられ、前記引き出し方向側に位置し、第1の高さを有する第1の平面部から、前記押し込み方向側に位置し、前記第1の高さより高い第2の高さを有する第2の平面部まで傾斜する傾斜部を備える複数のカムと、前記プレート保持部の裏面に取り付けられ、前記引き出し方向に引き出された前記ドロワを前記押し込み方向に押し込んだ際に、前記第1の平面部の上面をスライドして前記傾斜部を上って前記第2の平面部へと乗り上げ、前記ドロワを前記押し込み方向に押し込んだ最終位置に達した際に、前記プレート保持部を押し上げた状態として、前記洗浄ヘッドと前記マイクロプレートとの高さ方向の距離を近接させる複数のカムフォロアとを備える洗浄装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗浄装置によれば、簡易な構成で、マイクロプレートと洗浄ヘッドとの高さ方向の位置関係を再現性よく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の洗浄装置を示す斜視図である。
図2図1における一部の部品を取り外した状態を示す一実施形態の洗浄装置を示す斜視図である。
図3図2に示す一実施形態の洗浄装置のドロワを引き出した状態を示す斜視図である。
図4図3の上下を反転させて、一実施形態の洗浄装置を裏面から見た状態を示す斜視図である。
図5A】一実施形態の洗浄装置における洗浄ヘッドに対する吐出ノズル及び吸引ノズルの取り付け位置と、吐出ノズル及び吸引ノズルとウェルとの位置関係を示す平面図である。
図5B】比較例である、洗浄ヘッドに対する吐出ノズル及び吸引ノズルの取り付け位置と、吐出ノズル及び吸引ノズルとウェルとの位置関係を示す平面図である。
図6図3に示す一実施形態の洗浄装置の側面図である。
図7】一実施形態の洗浄装置が備えるカムフォロアがカムの上面を移動していくときの様子を示す側面図である。
図8】一実施形態の洗浄装置において、ドロワが押し込み方向に最終位置の直前から最終位置まで押し込まれるときの、吐出ノズル及び吸引ノズルとウェルとの位置関係の変化を示す図である。
図9図8の(A)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域8Acの拡大図である。
図10図8の(C)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域8Ccの拡大図である。
図11図5Bに示す比較例において、ドロワが押し込み方向に最終位置の直前から最終位置まで押し込まれるときの、吐出ノズル及び吸引ノズルとウェルとの位置関係の変化を示す図である。
図12図11の(A)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域11Acの拡大図である。
図13図11の(C)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域11Ccの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の洗浄装置について、添付図面を参照して説明する。図1に示す一実施形態の洗浄装置100のベース10には、洗浄ヘッド11をベース10の面内及び高さ方向に位置決めするヘッド取り付け機構101が取り付けられている。ヘッド取り付け機構101は、ベース10の面と直交するように立てられている一対のシャフト102、シャフト102が通されているスプリング103、一対のシャフト102を連結する連結板104、連結板104の両端部の下面に装着されている下降規制板105を有する。ベース10には、洗浄ヘッド11を挟むように一対の側板106が取り付けられている。シャフト102及びスプリング103は、側板106に形成されている開口106a内に配置されている。
【0011】
洗浄ヘッド11は連結板104に固定されている。連結板104の上面にはノブ107が取り付けられている。
【0012】
図2は、図1におけるヘッド取り付け機構101、側板106、及びノブ107を取り外した状態を示している。図2に示すように、洗浄ヘッド11は、下側に配置された吐出ヘッド12と上側に配置された吸引ヘッド13とを備える。吐出ヘッド12は吐出ノズル121を備え、吸引ヘッド13は吸引ノズル131を備える。吸引ノズル131は吐出ノズル121より太い。
【0013】
吐出ヘッド12は洗浄液供給ホース12Hによって図示していない洗浄液供給装置と接続されており、洗浄液供給装置は吐出ヘッド12及び吐出ノズル121に洗浄液を供給する。吸引ヘッド13は洗浄液吸引ホース13Hによって図示していない吸引装置と接続されており、吸引装置は吸引ノズル131及び吸引ヘッド13を介して洗浄液を吸引する。
【0014】
図2は、ドロワ20を洗浄ヘッド11の下側に位置させた状態、つまりドロワ20を図3で示される押し込み方向D2に押し込んだ最終位置に達した状態を示している。図3は、ドロワ20を引き出した状態を示している。図2または図3において、ベース10には一対の側壁14a及び14bが取り付けられている。ドロワ20は、スライドレール21によって、側壁14a及び14bに挟まれた洗浄ヘッド11の下側の位置に位置決めされたり、ベース10から引き出されて洗浄ヘッド11の下側の位置から外れた位置に位置されたりする。スライドレール21は、側壁14a及び14bに取り付けられたアウタメンバ21aと、ドロワ20の両側面に取り付けられたインナメンバ21bと、アウタメンバ21a及びインナメンバ21bとに係合する中間メンバ21cとを含む。
【0015】
図3に示すように、ベース10には、洗浄ヘッド11と対向する位置に、円形の開口10aが形成されている。ドロワ20を引き出す方向を引き出し方向D1、ドロワ20を押し込む方向を押し込み方向D2とする。引き出し方向D1はベース10の外側の方向であり、押し込み方向D2はベース10の内側の方向である。ベース10の開口10aよりも引き出し方向D1側には、1つのカム15aが取り付けられている。ベース10の開口10aよりも押し込み方向D2側には、2つのカム15b及び15cが取り付けられている。カム15a~15cをカム15と総称することとする。
【0016】
図4は、図3の上下を反転させて、洗浄装置100を裏面から見た状態を示している。図4に示すように、ドロワ20の底部に設けられているプレート保持部22の裏面には、引き出し方向D1側に1つのカムフォロア25aが取り付けられ、押し込み方向D2側に2つのカムフォロア25b及び25cが取り付けられている。カムフォロア25a~25cはそれぞれカム15a~15cと係合する。カムフォロア25a~25cをカムフォロア25と総称することとする。
【0017】
図3に示すように、ドロワ20のプレート保持部22には洗浄の対象であるマイクロプレート30が位置決めされた状態で載置されている。ドロワ20はマイクロプレート30を保持した状態で、図2に示すように洗浄ヘッド11の下側の位置へと押し込まれ、図3に示すようにベース10の外側へと引き出される。図2に示すように、ベース10の奥側にはプッシュラッチ16が設けられている。ドロワ20の押し込み方向D2側の端部には、プッシュラッチ16に係止される被係止部26が取り付けられている。
【0018】
ドロワ20を押し込み方向D2に押し込むと、被係止部26がプッシュラッチ16に係止されて、ドロワ20は最終位置に位置決めされる。このとき、マイクロプレート30は洗浄ヘッド11の直下に位置する。ドロワ20が最終位置に位置決めされている状態でドロワ20を押し込み方向D2に押し込むと、プッシュラッチ16による被係止部26の係止が外れて、ドロワ20を引き出し方向D1に引き出すことができる。
【0019】
一例として、マイクロプレート30は、円盤状の試料分析用ディスク上に複数のウェル311が形成されているカートリッジ31を装着した構成を有する。試料分析用ディスクとカートリッジ31との互いの位置がずれないように、両者は試料分析用ディスク側の円形の開口を有する金属板とカートリッジ31側の円形の開口を有する金属板32とで挟まれている。
【0020】
複数のウェル311は等角度間隔で同心円状に配置されている。即ち、複数のウェル311は、各ウェル311の中心が1つの円上に位置するように配置されている。複数のウェル311が格子状に配列されていてもよい。マイクロプレート30は、1つまたはそれ以上のウェル311を備える構成であればよく、図2または図3に示す構成に限定されない。
【0021】
吐出ヘッド12には、プレート保持部22にマイクロプレート30を保持しているドロワ20を押し込んだ状態で、各ウェル311の位置に対応する位置に、ウェル311の個数に対応する本数の吐出ノズル121が取り付けられている。吸引ヘッド13には、プレート保持部22にマイクロプレート30を保持しているドロワ20を押し込んだ状態で、各ウェル311の位置に対応する位置に、ウェル311の個数に対応する本数の吸引ノズル131が取り付けられている。よって、プレート保持部22にマイクロプレート30を保持しているドロワ20を押し込み方向D2に押し込むと、各ウェル311上で、各ウェル311の口径の内側には一対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131が位置する。
【0022】
図2または図3に示すように、吸引ノズル131の先端部である吸引口は、吐出ノズル121の先端部である吐出口よりもわずかに下方に位置している。全ての対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131は、吸引ノズル131が引き出し方向D1側に位置し、吐出ノズル121が押し込み方向D2側に位置するように配置されている。後述するように、ドロワ20を押し込み方向D2に最終位置まで押し込むと、プレート保持部22が上昇し、吐出ノズル121の吐出口及び吸引ノズル131の吸引口が、各ウェル311の上端よりも下側に位置するように構成されている。
【0023】
図5Aを用いて、洗浄ヘッド11に対する吐出ノズル121及び吸引ノズル131の取り付け位置と、吐出ノズル121及び吸引ノズル131とウェル311との位置関係を詳細に説明する。図5Aに示すように、各吐出ノズル121には洗浄液を吐出ノズル121に供給するための流路122が連結し、吸引ノズル131には吸引した洗浄液を吸引装置へと送るための流路132が連結している。吐出ノズル121及び吸引ノズル131は、同心円状に等角度間隔で配置されている。吐出ノズル121及び吸引ノズル131それぞれが位置している同心円の中心を中心C0とする。
【0024】
ドロワ20が押し込み方向D2に最終位置まで押し込まれると、マイクロプレート30のウェル311が位置している同心円の中心(図8に示す中心C3)が中心C0に一致する。図5Aより、各ウェル311に対応する吐出ノズル121及び吸引ノズル131は、吸引ノズル131が引き出し方向D1側に、吐出ノズル121が押し込み方向D2側に位置するように配置されていることが分かる。引き出し方向D1及び押し込み方向D2と平行の中心C0を通る線を中心線L0とする。図5Aにおいて、中心線L0の上方に示されている各対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131と、下方に示されている各対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131とは、中心線L0を対称の軸として線対称の関係を有するように配置されている。
【0025】
図5Bは、本実施形態では採用していない比較例であり、洗浄ヘッド11に対する吐出ノズル121及び吸引ノズル131の取り付け位置と、吐出ノズル121及び吸引ノズル131とウェル311との位置関係を示している。複数のウェル311が同心円状に配置されているから、図5Bに示すように、各対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131を、中心C0を対称の中心として点対称の関係を有するように配置することが考えられる。洗浄装置100においては、後述する理由によって図5Bに示す構成を採用せず、図5Aに示す構成を採用している。
【0026】
図6に示すように、ドロワ20を引き出した状態で、マイクロプレート30の上端の高さ方向の位置と、吸引ノズル131の先端部の高さ方向の位置との間には、間隔H1が存在する。
【0027】
図7に示すように、カム15は、第1の平面部151、傾斜部152、第2の平面部153を有する。第1の平面部151は引き出し方向D1側に位置し、第2の平面部153は押し込み方向D2側に位置する。第1の平面部151は第1の高さを有し、第2の平面部153は第1の高さより高い第2の高さを有する。傾斜部152は、第1の平面部151から第2の平面部153まで傾斜して、第1の平面部151と第2の平面部153とを連結する。傾斜部152の角度は30度に設定されている。
【0028】
図7に示す(a)~(e)は、ドロワ20を押し込んだときに、カムフォロア25がカム15の上面を移動していくときの様子を示している。カムフォロア25の下端面は第1の平面部151の面とほぼ同じ高さにある。図7の(a)に示すように、ドロワ20を押し込むと、カムフォロア25は第1の平面部151の上面をスライドして傾斜部152に当たる。ドロワ20をさらに押し込むと、図7の(b)及び(c)に示すように、カムフォロア25は傾斜部152を上り、図7の(d)及び(e)に示すように、第2の平面部153に乗り上げる。
【0029】
カムフォロア25は、図7の(a)に示す高さ方向の位置から図7の(d)に示す高さ方向の位置まで距離H2だけ上昇する。よって、ドロワ20を押し込むと、カムフォロア25はプレート保持部22を高さ方向の距離H2だけ上昇させる。ドロワ20を押し込んだ状態では、マイクロプレート30の高さ方向の位置は、ドロワ20を引き出した状態と比較して距離H2だけ高くなる。距離H2は間隔H1より長い。距離H2を3mmとして、マイクロプレート30を3mm上昇させるには、カムフォロア25が角度30度の傾斜部152を、第1の平面部151と平行方向の距離として、3×√3より約5.19mmだけスライドする必要がある。傾斜部152の角度と長さはマイクロプレート30を上昇させる高さ方向の距離に応じて設定すればよい。
【0030】
このように、ドロワ20が押し込み方向D2に押し込まれると、マイクロプレート30が洗浄ヘッド11の下側の最終位置の所定の距離だけ手前から最終位置に移動するのと同時に、カムフォロア25がプレート保持部22を押し上げて、洗浄ヘッド11とマイクロプレート30との高さ方向の距離を近接させる。
【0031】
図8は、ドロワ20が押し込み方向D2に最終位置の直前から最終位置まで押し込まれるときの、吐出ノズル121及び吸引ノズル131とウェル311との位置関係の変化を示している。図8において、(A)段は洗浄ヘッド11及びカートリッジ31を上方から見た模式的な平面図、(B)段は洗浄ヘッド11及びカートリッジ31の側面図、(C)段は(A)段のA8-A8における断面図を示す。カートリッジ31の中心C3が、ウェル311が位置している同心円の中心である。
【0032】
図8の(A)~(C)段における(a)は、カムフォロア25が傾斜部152に当たった時点であって、マイクロプレート30が、中心C3が中心C0に一致する最終位置の手前5.19mmに位置しているときの位置関係を示している。即ち、図8の(A)~(C)段における(a)は、マイクロプレート30が3mm上昇する前の位置関係を示している。図8の(A)~(C)段における(b)は、カムフォロア25が傾斜部152を1/3の高さまで上った時点であって、マイクロプレート30が、中心C3が中心C0に一致する最終位置の3.46mm手前に位置しているときの位置関係を示している。このとき、マイクロプレート30は1mm上昇する。
【0033】
図8の(A)~(C)段における(c)は、カムフォロア25が傾斜部152を2/3の高さまで上った時点であって、マイクロプレート30が、中心C3が中心C0に一致する最終位置の1.73mm手前に位置しているときの位置関係を示している。このとき、マイクロプレート30はさらに1mm上昇する。図8の(A)~(C)段における(d)は、カムフォロア25が第2の平面部153に乗り上げた時点であって、マイクロプレート30が、中心C3が中心C0に一致する最終位置に到達したときの位置関係を示している。このとき、マイクロプレート30はさらに1mm上昇して、(a)と比較して3mm上昇している。
【0034】
図9は、図8の(A)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域8Acの拡大図であり、図10は、図8の(C)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域8Ccの拡大図である。カムフォロア25が傾斜部152を上ってプレート保持部22を押し上げて、マイクロプレート30が上昇しながら押し込み方向D2へと移動していくときに、先端部がより下方に位置する吸引ノズル131が先にウェル311の上方に位置する。
【0035】
続けて、マイクロプレート30がさらに上昇し、先端部が上方に位置する吐出ノズル121がウェル311の上方に位置する。マイクロプレート30のさらなる上昇に伴って、吐出ノズル121及び吸引ノズル131の各先端部はウェル311内へと侵入して、各先端部はウェル311の上端よりも下側に位置する。ここで、押し込み方向D2へと移動する過程で、マイクロプレート30が上昇する際に、吐出ノズル121及び吸引ノズル131の各先端部はウェル311に接触しないように構成されている。
【0036】
図9及び図10に示すウェル311以外の全てのウェル311においても、吐出ノズル121及び吸引ノズル131は、同様に、各先端部がウェル311の上方に位置してウェル311内へと侵入して、各先端部はウェル311の上端よりも下側に位置する。洗浄ヘッド11とマイクロプレート30とは、ドロワ20を押し込むときに、吐出ノズル121及び吸引ノズル131の各先端部が、ウェル311の側壁に干渉しないような位置関係に設定されている。
【0037】
吐出ノズル121及び吸引ノズル131の各先端部をウェル311の上端よりも下側に位置させると、仮に洗浄液が多く吐出されてオーバーフローしそうになっても、吸引ノズル131によって吸引することができる。よって、洗浄液がウェル311の外に溢れ出ることを防ぐことができる。
【0038】
図11は、各対の吐出ノズル121及び吸引ノズル131を図5Bに示すように点対称の関係を有するように配置して、ドロワ20が押し込み方向D2に最終位置の直前から最終位置まで押し込まれるときの、吐出ノズル121及び吸引ノズル131とウェル311との位置関係の変化を示している。図11において、(A)段は洗浄ヘッド11及びカートリッジ31を上方から見た模式的な平面図、(B)段は洗浄ヘッド11及びカートリッジ31の側面図、(C)段は(A)段のA11-A11における断面図を示す。図11の(A)~(C)段における(a)~(d)に示す位置関係は、図8の(A)~(C)段における(a)~(d)に示す位置関係と同じである。
【0039】
図12は、図11の(A)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域11Acの拡大図であり、図13は、図11の(C)段の(c)に示す一点鎖線の円で囲んだ領域11Ccの拡大図である。領域11Ac及び11Ccのウェル311においては、先端部がより下方に位置する吸引ノズル131は先端部が上方に位置する吐出ノズル121よりも押し込み方向D2側に位置する。他の一部のウェル311においても、同様の吐出ノズル121及び吸引ノズル131の位置関係となっている。
【0040】
カムフォロア25が傾斜部152を上ってプレート保持部22を押し上げて、マイクロプレート30が上昇しながら押し込み方向D2へと移動していくときに、先端部が上方に位置する吐出ノズル121が先にウェル311の上方に位置する。続けて、マイクロプレート30がさらに上昇し、先端部がより下方に位置する吸引ノズル131がウェル311の上方に移動しようとする。すると、図13に示すように、吸引ノズル131の先端部が、ウェル311の側壁に干渉してしまう。
【0041】
以上の理由によって、洗浄ヘッド11に対する吐出ノズル121及び吸引ノズル131の取り付け位置と、吐出ノズル121及び吸引ノズル131とウェル311との位置関係を図5Aに示すように設定するのがよい。
【0042】
以上のように、洗浄装置100は、吐出ノズル121及び吸引ノズル131を備える洗浄ヘッド11をマイクロプレート30から離すように上方に退避させる昇降装置を必要としない。よって、洗浄装置100は、洗浄ヘッド11の高さ方向の位置を制御するための構成として、ステッピングモータ等のモータ、モータの駆動回路、洗浄ヘッド11の高さ方向の位置を制御する制御プログラムを記憶する記憶部、制御プログラムを実行するプロセッサ等を備える必要がない。洗浄装置100は、簡易かつ安価な構成であるにもかかわらず、カム15とカムフォロア25との働きによって、マイクロプレート30と洗浄ヘッド11との高さ方向の位置関係を再現性よく設定することができる。
【0043】
吸引装置がウェル311内の洗浄液を吸引ノズル131によって吸引するときに、吸引口をウェル311内の底部に近接した位置に位置させることがある。この場合、図1において、ノブ107を手で押し込むことにより洗浄ヘッド11を下降させて、吸引ノズル131をウェル311内の底部に近接した位置に位置させることができる。洗浄ヘッド11は、下降規制板105が側板106の上端面106tに当たることによって許容下降量を超えて下降しないように構成されている。
【0044】
本発明は、以上説明した第1または第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 ベース
11 洗浄ヘッド
12 吐出ヘッド
13 吸引ヘッド
15a~15c,15 カム
20 ドロワ
22 プレート保持部
25a~25c,25 カムフォロア
30 マイクロプレート
121 吐出ノズル
131 吸引ノズル
151 第1の平面部
152 傾斜部
153 第2の平面部
100 洗浄装置
311 ウェル
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13