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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143302
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】車椅子及び脚トレーニング機構
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220926BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20220926BHJP
   A61G 5/02 20060101ALN20220926BHJP
   A61G 5/12 20060101ALN20220926BHJP
   A61G 5/08 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
A61G5/10
A61H1/02 G
A61G5/02 701
A61G5/12 704
A61G5/08 702
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043754
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】511058040
【氏名又は名称】株式会社坂井電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 康秀
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA47
4C046BB04
4C046BB08
4C046CC04
4C046DD08
4C046DD13
4C046DD14
4C046DD26
4C046DD33
4C046DD46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザが脚のトレーニングを行なえる車椅子において、ユーザが足を内側に動かしても当該足が駆動部材に接触するのを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】脚トレーニング機構50は、左ペダル52aと、右ペダル52bと、左ペダル52aの左側に設けられると共に左ペダル52aに加えられる踏力を伝達する左ベルト部54aと、右ペダル52bの右側に設けられると共に右ペダル52bに加えられる踏力を伝達する右ベルト部と、左ベルト部54aの後端部と右ベルト部の後端部との間を接続する接続シャフト60と、を備える。脚トレーニング機構は、左ペダル52aに加えられる踏力が、左ベルト部54a及び接続シャフト60を介して右ベルト部に伝達されるように、かつ、右ペダル52bに加えられる踏力が、右ベルト部及び接続シャフト60を介して左ベルト部54aに伝達されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子であって、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に回転可能に接続される一対の前輪と、
前記フレーム部材に回転可能に接続される一対の後輪と、
前記フレーム部材に接続される座面と、
前記フレーム部材に接続される脚トレーニング機構と、を備え、
前記脚トレーニング機構は、
前記座面に座ったユーザの左足が載置される左ペダルと、
前記座面に座った前記ユーザの右足が載置される右ペダルと、
前記左ペダルの左側に設けられると共に、前記左ペダルに加えられる踏力を伝達する左ベルト部と、
前記右ペダルの右側に設けられると共に、前記右ペダルに加えられる踏力を伝達する右ベルト部と、
前記左ベルト部の後端部と前記右ベルト部の後端部との間を接続する接続シャフトと、を備え、
前記脚トレーニング機構は、前記左ペダルに加えられる踏力が、前記左ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記右ベルト部に伝達されるように、かつ、前記右ペダルに加えられる踏力が、前記右ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記左ベルト部に伝達されるように構成される、車椅子。
【請求項2】
前記脚トレーニング機構は、第1の位相状態と第2の位相状態との間を切り替え可能に構成され、
前記第1の位相状態は、前記左ペダルの位相と前記右ペダルの位相とが180度異なる状態であり、
前記第2の位相状態は、前記左ペダルの位相と前記右ペダルの位相とが同じ状態である、請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記脚トレーニング機構は、さらに、前記左ペダル及び前記右ペダルに対する運動負荷を調整するための調整機構を備える、請求項1又は2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記接続シャフトは、左端部と右端部と中央部とのそれぞれが折り曲げ可能に構成され、
前記車椅子は、前記左端部と前記右端部と前記中央部とのそれぞれが折り曲げられることにより、折り畳み可能に構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の車椅子。
【請求項5】
前記車椅子は、さらに、腕トレーニング機構を備え、
前記腕トレーニング機構は、
左バネと、
前記左バネに接続される共に、前記左バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な左紐部と、
右バネと、
前記右バネに接続される共に、前記右バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な右紐部と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車椅子。
【請求項6】
前記車椅子は、さらに、
前記フレーム部材に接続されると共に、前記座面に座った前記ユーザの左肘が載置される左肘置部と、
前記フレーム部材に接続されると共に、前記座面に座った前記ユーザの右肘が載置される右肘置部と、を備え、
前記左肘置部は、前記ユーザの左肘が載置されている状態で前記左紐部が上方に引っ張られる際に、前記左肘置部の前端部が上方に揺動するように構成され、
前記右肘置部は、前記ユーザの右肘が載置されている状態で前記右紐部が上方に引っ張られる際に、前記右肘置部の前端部が上方に揺動するように構成される、請求項5に記載の車椅子。
【請求項7】
前記腕トレーニング機構は、さらに、
前記左紐部の上端に接続される左把持部と、
前記右紐部の上端に接続される右把持部と、
を備え、
前記左把持部と前記右把持部とのそれぞれは、弾性材料によって構成される、請求項5又は6に記載の車椅子。
【請求項8】
前記車椅子は、さらに、背筋トレーニング機構を備え、
前記背筋トレーニング機構は、
左バネと、
前記左バネに接続される共に、前記左バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な左紐部と、
前記左バネの前方に位置すると共に、前記左紐部が掛けられる左紐掛部と、
右バネと、
前記右バネに接続される共に、前記右バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な右紐部と、
前記右バネの前方に位置すると共に、前記右紐部が掛けられる右紐掛部と、
前記左紐掛部及び前記右紐掛部の上方において、前記左紐部及び前記右紐部の間に懸架される棒部材と、
を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の車椅子。
【請求項9】
車椅子に接続される脚トレーニング機構であって、
車椅子の座面に座ったユーザの左足が載置される左ペダルと、
前記座面に座った前記ユーザの右足が載置される右ペダルと、
前記左ペダルの左側に設けられると共に、前記左ペダルに加えられる踏力を伝達する左ベルト部と、
前記右ペダルの右側に設けられると共に、前記右ペダルに加えられる踏力を伝達する右ベルト部と、
前記左ベルト部の後端部と前記右ベルト部の後端部との間を接続する接続シャフトと、を備え、
前記左ペダルに加えられる踏力が、前記左ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記右ベルト部に伝達されるように、かつ、前記右ペダルに加えられる踏力が、前記右ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記左ベルト部に伝達されるように構成される、脚トレーニング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ユーザが脚のトレーニングを行なえる車椅子に関する技術を開示する。本明細書では、「脚」は胴から下の部分全体を意味し、「足」は足首よりも下の部分を意味する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、脚のリハビリ用車椅子が開示されている。車椅子は、駆動車輪と、左右の足が載置される両ペダルと、を備える。車椅子では、駆動車輪の車輪軸に設けられる傘歯車と、両ペダルの間のペダル回転軸に設けられる傘歯車と、が駆動シャフトによって連結される。これにより、車椅子が押されて車輪軸が回転すると、それに連動して両ペダルが回転し、ユーザは脚のリハビリ運動を行なうことができる。特許文献1には、さらに、駆動シャフトに設けられる変速ギアによって、駆動シャフトの正転、逆転、又は、空転の切り替えを実現可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-52383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、両ペダルの間に回転軸及び傘歯車が設けられ、さらに、その傘歯車に駆動シャフトが接続される。即ち、ユーザが両ペダルに両足を載置した状態において、それら両足の間に様々な駆動部材(即ち傘歯車及び駆動シャフト)が位置する。このため、ユーザが誤ってどちらかの足を内側に動かすと(例えば右足を左側に動かすと)、当該足が駆動部材に接触する可能性がある。
【0005】
本明細書では、ユーザが脚のトレーニングを行なえる車椅子において、ユーザが足を内側に動かしても当該足が駆動部材に接触するのを抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される車椅子は、フレーム部材と、前記フレーム部材に回転可能に接続される一対の前輪と、前記フレーム部材に回転可能に接続される一対の後輪と、前記フレーム部材に接続される座面と、前記フレーム部材に接続される脚トレーニング機構と、を備えてもよい。前記脚トレーニング機構は、前記座面に座ったユーザの左足が載置される左ペダルと、前記座面に座った前記ユーザの右足が載置される右ペダルと、前記左ペダルの左側に設けられると共に、前記左ペダルに加えられる踏力を伝達する左ベルト部と、前記右ペダルの右側に設けられると共に、前記右ペダルに加えられる踏力を伝達する右ベルト部と、前記左ベルト部の後端部と前記右ベルト部の後端部との間を接続する接続シャフトと、を備えてもよい。前記脚トレーニング機構は、前記左ペダルに加えられる踏力が、前記左ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記右ベルト部に伝達されるように、かつ、前記右ペダルに加えられる踏力が、前記右ベルト部及び前記接続シャフトを介して前記左ベルト部に伝達されるように構成されてもよい。
【0007】
上記の構成によると、脚トレーニング機構は、左ペダルの左側に設けられる左ベルト部と、右ペダルの右側に設けられる右ベルト部と、左ベルト部の後端部と右ベルト部の後端部との間を接続する接続シャフトと、を備える。このため、両ペダルの間に駆動部材を設ける必要がないので、ユーザが足を内側に動かしても当該足が駆動部材に接触するのを抑制することができる。
【0008】
前記脚トレーニング機構は、第1の位相状態と第2の位相状態との間を切り替え可能に構成されていてもよい。前記第1の位相状態は、前記左ペダルの位相と前記右ペダルの位相とが180度異なる状態であり、前記第2の位相状態は、前記左ペダルの位相と前記右ペダルの位相とが同じ状態であってもよい。この構成によると、ユーザは、第1の位相状態において、脚のトレーニングを行なうことができる。また、ユーザは、脚のトレーニングを行なわない場合には、第2の位相状態において、両足の置き台として両ペダルを利用することができる。
【0009】
前記脚トレーニング機構は、さらに、前記左ペダル及び前記右ペダルに対する運動負荷を調整するための調整機構を備えていてもよい。この構成によると、ユーザは、自身の脚力に応じた運動負荷に調整することができる。
【0010】
前記接続シャフトは、左端部と右端部と中央部とのそれぞれが折り曲げ可能に構成されてもよい。前記車椅子は、前記左端部と前記右端部と前記中央部とのそれぞれが折り曲げられることにより、折り畳み可能に構成されてもよい。この構成によると、脚トレーニング機構を備える車椅子を適切に折り畳むことができる。
【0011】
前記車椅子は、さらに、腕トレーニング機構を備えてもよい。前記腕トレーニング機構は、左バネ部と、前記左バネ部に接続される共に、前記左バネ部の付勢力に抗って上方に引っ張り可能な左紐部と、右バネ部と、前記右バネ部に接続される共に、前記右バネ部の付勢力に抗って上方に引っ張り可能な右紐部と、を備えてもよい。この構成によると、ユーザは、腕のトレーニングを行なうことができる。
【0012】
前記車椅子は、さらに、前記フレーム部材に接続されると共に、前記座面に座った前記ユーザの左肘が載置される左肘置部と、前記フレーム部材に接続されると共に、前記座面に座った前記ユーザの右肘が載置される右肘置部と、を備えてもよい。前記左肘置部は、前記ユーザの左肘が載置されている状態で前記左紐部材が上方に引っ張られる際に、前記左肘置部の前端部が上方に揺動するように構成されてもよい。前記右肘置部は、前記ユーザの右肘が載置されている状態で前記右紐部材が上方に引っ張られる際に、前記右肘置部の前端部が上方に揺動するように構成されてもよい。この構成によると、ユーザは、左肘置部及び右肘置部の揺動によるアシストを受けながら、腕のトレーニングを行なうことができる。
【0013】
腕トレーニング機構は、さらに、前記左紐部の上端に接続される左把持部と、前記右紐部の上端に接続される右把持部と、を備えてもよい。前記左把持部と前記右把持部とのそれぞれは、弾性材料によって構成されてもよい。この構成によると、ユーザは、左把持部及び右把持部を握ること及び解放することを反復することによって、握力のトレーニングを行なうことができる。
【0014】
前記車椅子は、さらに、背筋トレーニング機構を備えてもよい。前記背筋トレーニング機構は、左バネと、前記左バネに接続される共に、前記左バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な左紐部と、前記左バネの前方に位置すると共に、前記左紐部が掛けられる左紐掛部と、右バネと、前記右バネに接続される共に、前記右バネの付勢力に抗って上方に引っ張り可能な右紐部と、前記右バネの前方に位置すると共に、前記右紐部が掛けられる右紐掛部と、前記左紐掛部及び前記右紐掛部の上方において、前記左紐部及び前記右紐部の間に懸架される棒部材と、を備えてもよい。この構成によると、ユーザは、背筋のトレーニングを行なうことができる。
【0015】
車椅子に接続される上記の脚トレーニング機構自体も新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車椅子の斜視図を示す。
図2】車椅子の側面図を示す。
図3図2の状態から脚トレーニング機構の位相状態を切り替えた後の図を示す。
図4】車椅子の正面図を示す。
図5】左ペダルの周辺の拡大図を示す。
図6】車椅子の側面図を示す。
図7】折り畳まれた車椅子の背面図を示す。
図8】第2実施例の車椅子の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施例)
まず、図1図4を参照して、車椅子10の概略構成を説明する。なお、以下で記述する方向は、ユーザが車椅子10に座った状態において、ユーザから見た方向を意味する。
【0018】
図1に示されるように、車椅子10は、車椅子10の枠を構成するフレーム部材12を備える。フレーム部材12には、様々な部材が接続される。即ち、車椅子10は、さらに、フレーム部材12に回転可能に接続される一対の前輪22a,22bと、フレーム部材12に回転可能に接続される一対の後輪20a,20b(20bは図4参照)と、フレーム部材12に接続される座面30と、フレーム部材12に接続される脚トレーニング機構50と、を備える。
【0019】
左側の後輪20aの左側、右側の後輪20bの右側には、それぞれ、ユーザが回転力を加えるための操作部21a,21b(21bは図4参照)が接続されている。ユーザは、各操作部21a,21bに回転力を加えることによって、車椅子10を動かすことができる。
【0020】
脚トレーニング機構50は、フレーム部材12に着脱可能に接続されている。即ち、脚トレーニング機構50は、様々なタイプの車椅子に接続可能であり、それ単独でも有用である。脚トレーニング機構50は、フレーム部材12に接続される左プレート部材51aと、フレーム部材12に接続される右プレート部材51bと、を備える。脚トレーニング機構50は、さらに、ユーザの左足が載置される左ペダル52aと、ユーザの右足が載置される右ペダル52bと、を備える。脚トレーニング機構50は、さらに、左ペダル52aの左側に設けられると共に、左プレート部材51aに接続される左ベルト機構53aと、右ペダル52bの右側に設けられると共に、右プレート部材51bに接続される右ベルト機構53bと、を備える。
【0021】
左ベルト機構53aは、左プーリ支持部材55aと左プーリ57aと左ベルト部54aとを備える。左プーリ支持部材55aは、左プレート部材51aに接続されると共に、前後方向に長い形状を有する。左プーリ支持部材55aは、左プーリ57aを回転可能に支持する。左プーリ57aには、左ベルト部54aの前端部が架けられている。右ベルト機構53bは、左ベルト機構53aと同様の構成を備える。即ち、右ベルト機構53bは、右プーリ支持部材55bと右プーリ57bと右ベルト部54b(54bは図4参照)とを備える。
【0022】
脚トレーニング機構50は、さらに、左右方向に延びると共に、左プーリ支持部材55a及び右プーリ支持部材55bによって回転可能に支持される接続シャフト60を備える。接続シャフト60の左端部には、左ベルト部54aの後端部が架けられており、接続シャフト60の右端部には、右ベルト部54bの後端部が架けられている。これにより、接続シャフト60は、左ベルト部54aの後端部と右ベルト部54bの後端部との間を接続する。
【0023】
上記の構成によると、脚トレーニング機構50は、左ペダル52aの左側に設けられる左ベルト部54aと、右ペダル52bの右側に設けられる右ベルト部54bと、左ベルト部54aの後端部と右ベルト部54bの後端部との間を接続する接続シャフト60と、を備える。このため、両ペダル52a,52bの間に駆動部材を設ける必要がないので、ユーザが足を内側に動かしても当該足が駆動部材に接触するのを抑制することができる。
【0024】
図1図2、及び、図4では、左ペダル52aの位相と右ペダル52bの位相とが180度異なる状態に設定されている。即ち、図2に示されるように、例えば左ペダル52aが最も下方に位置している状態では、右ペダル52bは最も上方に位置する。このように、左ペダル52aの位相と右ペダル52bの位相とが180度異なる状態では、ユーザは、左ペダル52a及び右ペダル52bに踏力を加えることによって、脚のトレーニングを行なうことができる。
【0025】
具体的には、左ペダル52aに加えられる踏力は、左プーリ57a、左ベルト部54a、及び、接続シャフト60を介して、右ベルト部54bに伝達される。また、右ペダル52bに加えられる踏力は、右プーリ57b、右ベルト部54b、及び、接続シャフト60を介して、左ベルト部54aに伝達される。即ち、ユーザは、自転車のペダルを漕ぐようなトレーニングを行なうことができる。
【0026】
ユーザは、両ペダル52a,52bの位相状態を切り替えることができる。例えば、ユーザは、図1及び図2の状態において、右ベルト機構53bから、右ペダル52bと右ペダル52bを支持するペダル支持部材59bとを一体的に取り外すことができる。そして、ユーザは、左ペダル52aの位相と右ペダル52bの位相とが同じ状態になるように、右ペダル52b及びペダル支持部材59bを右ベルト機構53bに取り付けることができる。この取り付け後の状態は、図3に示される。図3では、左ペダル52aの位相と右ペダル52bの位相とが同じ状態である。即ち、車椅子10を側面視した場合に、左ペダル52aと右ペダル52bとがほぼ重複する。この状態では、ユーザは、両足の置き台として両ペダル52a,52bを利用することができる。
【0027】
なお、右側の構成と同様に、ユーザは、左ベルト機構53aから、左ペダル52aと左ペダル52aを支持するペダル支持部材59aとを一体的に取り外し、それらを左ベルト機構53aに取り付けることによって、両ペダル52a,52bの位相状態を切り替えることもできる。
【0028】
図5に示されるように、脚トレーニング機構50は、さらに、左ペダル52a及び右ペダル52bに対する運動負荷を調整するための調整機構70を備える。調整機構70は、ハンドル72とバネ74とバネ受け部材76とウレタン樹脂78とを備える。符号80は回転シャフトであり、符号82は左プーリ支持部材55aに固定される固定フレームである。左ペダル52aに踏力が加えられると、ペダル支持部材59aと回転シャフト80と調整機構70の各部材72~78とが一体となって回転する。ここで、ウレタン樹脂78と固定フレーム82とが接触しているので、ウレタン樹脂78と固定フレーム82との間に摩擦力が生じ、その摩擦力が運動負荷に繋がる。
【0029】
ユーザは、ハンドル72を操作して、バネ74を圧縮させたり伸長させたりすることができる。バネ74が圧縮されると、バネ74がバネ受け部材76を強く押すことになり、これにより、ウレタン樹脂78が図5の上下方向に膨張する。この結果、ウレタン樹脂78と固定フレーム82との間の摩擦力が大きくなり、運動負荷が大きくなる。ユーザは、ハンドル72を操作してバネ74の圧縮力を調整することによって、自身の脚力に応じた運動負荷に調整することができる。なお、左側の構成と同様に、右側にも調整機構70が設けられている。
【0030】
図1に示されるように、車椅子10は、さらに、腕トレーニング機構90を備える。腕トレーニング機構90は、プレート部材51a,51bに着脱可能に接続されている。即ち、腕トレーニング機構90は、様々なタイプの車椅子に接続可能であり、それ単独でも有用である。腕トレーニング機構90は、プレート部材51aに接続される左ケース部材92aと、左ケース部材92aから上方に延びる左紐部94aと、左紐部94aに接続される左把持部96aと、を備える。左ケース部材92aの内部には左バネ(図示省略)が配置されている。左バネには、左紐部94aの下端部が接続されている。左バネとしては、例えば、引っ張りコイルバネ、渦巻きバネ等を採用することができる。左側の構成と同様に、腕トレーニング機構90は、さらに、右ケース部材92bと右紐部94bと右把持部96bとを備え、右ケース部材92bの内部には右バネ(図示省略)が配置されている。
【0031】
ユーザは、左把持部96aを把持して、左バネの付勢力に抗って左紐部94aを上方に引っ張り可能である。これにより、ユーザは、左腕のトレーニングを行なうことができる。同様に、ユーザは、右把持部96bを把持して、右バネの付勢力に抗って右紐部94bを上方に引っ張り可能である。これにより、ユーザは、右腕のトレーニングを行なうことができる。なお、図1図2等では、左紐部94a及び右紐部94bが伸びている状態で自立しているように見える。しかしながら、実際には、左紐部94a及び右紐部94bがユーザによって上方に引っ張られていない状態では、左紐部94a及び右紐部94bは自立しない。左紐部94a及び右紐部94bがユーザによって上方に引っ張られていない状態では、図1図2等と比べると、左紐部94a及び右紐部94bのそれぞれの一部が左ケース部材92a及び右ケース部材92bの内部に収容されている。
【0032】
車椅子10は、さらに、フレーム部材12に接続されると共にユーザの左肘が載置される左肘置部14aと、フレーム部材12に接続されると共にユーザの右肘が載置される右肘置部14bと、を備える。図6に示されるように、左肘置部14aは、左肘置部14aの前後方向の中央よりも後ろに位置する揺動軸C1を備える。ユーザの左肘が左肘置部14aに載置されている状態で左紐部94aが上方に引っ張られると、左肘が下がることに起因して、左肘置部14aの後部が左肘によって下方に押される。これにより、左肘置部14の前端部は、揺動軸C1を中心として上方に揺動する。即ち、左肘置部14aは、ユーザの左肘が載置されている状態で左紐部94aが上方に引っ張られる際に、揺動軸C1を中心として左肘置部14aの前端部が上方に揺動するように構成される。左肘置部14aの前端部が上方に揺動すると、左腕が左肘置部14aによって上方に押され、この結果、左腕が左紐部94aを上方に引っ張る力がアシストされる。同様に、右肘置部14bは、右肘置部14bの前後方向の中央よりも後ろに位置する揺動軸(図示省略)を備える。右肘置部14bは、ユーザの右肘が載置されている状態で右紐部94bが上方に引っ張られる際に、揺動軸を中心として右肘置部14bの前端部が上方に揺動するように構成される。このように、左肘置部14a及び右肘置部14bが揺動可能に構成されているので、ユーザは、当該揺動によるアシストを受けながら、腕のトレーニングを行なうことができる。
【0033】
左把持部96a及び右把持部96bのそれぞれは、弾性材料によって構成される。弾性材料としては、例えば、弾性を有する樹脂、シリコン、ゴム等を挙げることができる。これにより、ユーザは、左把持部96a及び右把持部96bを握ること及び解放することを反復することによって、握力のトレーニングを行なうことができる。なお、必要に応じて、この反復回数を表示する表示器が設けられてもよい。
【0034】
なお、左紐部94aに対する左バネのバネ力と、右紐部94bに対する右バネのバネ力と、のそれぞれを独立して調整可能に構成することが好ましい。この構成によると、例えば、左腕の筋力が右腕の筋力に劣るユーザは、前者のバネ力を後者のバネ力よりも小さくなるように調整することができる。これにより、ユーザは、各腕の筋力に応じたトレーニングを行なうことができる。
【0035】
続いて、車椅子10を折り畳むための構成について説明する。接続シャフト60は、左端部と右端部と中央部とのそれぞれが折り曲げ可能に構成されている。具体的には、図4に示されるように、接続シャフト60は、その左端部にリンク部60aと、その右端部にリンク部60bと、その中央部にリンク部60c,60dと、を備える。各リンク部60a~60dは、前後方向に沿って延びる揺動軸を有する。図6には、接続シャフト60を構成する各シャフト部分を各リンク部60a~60dにおいて揺動させた後の車椅子10が示されている。このように、接続シャフト60が折り曲げ可能に構成されているので、車椅子10を折り畳むことができる。
【0036】
図2に示されるように、接続シャフト60は、座面30の下方において、座面30の前端よりも後方に位置する。これにより、ユーザの脚が接続シャフト60に接触するのを抑制することができる。また、図4に示されるように、車椅子10は、さらに、フレーム部材12に接続される2つのリンク機構100,102を備える。各リンク機構100,102は、車椅子10が折り畳まれていない状態において、その状態を維持するために機能する。そして、図6に示されるように、車椅子10を折り畳むべき状況では、各リンク機構100,102も折り曲げられる。接続シャフト60が座面30の前端よりも後方に位置すると、接続シャフト60と各リンク機構100,102との間の距離が比較的に小さくなる。このため、接続シャフト60と各リンク機構100,102との間の距離が大きい場合と比べて、接続シャフト60と各リンク機構100,102とのそれぞれを折り曲げ易い。
【0037】
(第2実施例)
図8を参照して、第2実施例の車椅子10を説明する。本実施例では、車椅子10は、さらに、背筋トレーニング機構220を備える。背筋トレーニング機構220は、左ケース部材92a内に配置される左バネ(図示省略)と、左紐部94aと、プレート部材51aに接続される滑車支持部材200aと、滑車支持部材200aによって支持される左滑車対202aと、左ケース部材92aの前方に位置する左滑車204aと、を備える。左紐部94aは、左滑車対202aの間に掛けられると共に、左滑車204aに掛けられる。左側の構成と同様に、背筋トレーニング機構220は、さらに、右ケース部材92b内に配置される右バネ(図示省略)と、右紐部94bと、プレート部材51bに接続される滑車支持部材200bと、滑車支持部材200bによって支持される右滑車対202bと、右ケース部材92aの前方に位置する右滑車204bと、を備える。右紐部94bは、右滑車対202bの間に掛けられると共に、右滑車204bに掛けられる。
【0038】
背筋トレーニング機構220は、さらに、左滑車204a及び右滑車204bの上方において、左紐部94a及び右紐部94bの間に懸架される棒部材210を備える。左紐部94aにはストッパ212aが取り付けられており、右紐部94bにはストッパ212bが取り付けられている。ストッパ212a及びストッパ212bは、棒部材210が上方に移動するのを禁止する。
【0039】
ユーザは、棒部材210が比較的に下方に位置する状態において、前かがみになって棒部材210を把持する。そして、ユーザは、左バネ及び右バネの付勢力に抗って、背中を伸ばすように棒部材210を持ち上げる。ユーザは、この動作を繰り返すことによって、背筋のトレーニングを行なうことができる。
【0040】
ユーザは、背筋のトレーニングを行わない場合には、左紐部94a及び右紐部94bから棒部材210を取り外すことができる。ユーザは、さらに、左紐部94aを左滑車204aから取り外し、右紐部94bを右滑車204bから取り外すことができる。これにより、ユーザは、棒部材210等が邪魔にならない状態で、車椅子10を使用することができる。
【0041】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0042】
(変形例1)車椅子10は、さらに、脚トレーニング機構50を利用して行われたトレーニングの量を表示する表示器を備えてもよい。当該表示器は、例えば、ペダル52a,52bが漕がれた回数を表示してもよいし、当該回数と負荷とに応じた運動量を表示してもよい。また、車椅子10は、さらに、腕トレーニング機構90を利用して行われたトレーニングの量を表示する表示器を備えてもよい。当該表示器は、例えば、腕を上げた回数を表示してもよいし、当該回数と負荷とに応じた運動量を表示してもよい。
【0043】
(変形例2)両ペダル52a,52bの位相状態は、左ペダル52aの位相と右ペダル52bの位相とが180度異なる状態に固定されていてもよい。一般的に言うと、「脚トレーニング機構」は、第1の位相状態と第2の位相状態との間を切り替え可能に構成されていなくてもよい。
【0044】
(変形例3)脚トレーニング機構50は、左ペダル及び右ペダルに対する運動負荷を調整するための調整機構70を備えなくてもよい。即ち、運動負荷は一定であってもよい。
【0045】
(変形例4)接続シャフト60は、折り曲げ可能に構成されなくてもよい。この場合、車椅子10は、例えば、接続シャフト60が取り外された状態で折り畳まれてもよい。
【0046】
(変形例5)車椅子10は、腕トレーニング機構90を備えなくてもよい。
【0047】
(変形例6)左肘置部14a及び右肘置部14bは、フレーム部材12に固定されており、揺動可能に構成されていなくてもよい。
【0048】
(変形例7)左把持部96a及び右把持部96bは、弾性材料によって構成されていなくてもよい。
【0049】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
10:車椅子、12:フレーム部材、14a,14b:右肘置部、20a,20b:後輪、21a,21b:操作部、22a,22b:前輪、30:座面、50:脚トレーニング機構、51a,51b:プレート部材52a、52a,52b:ペダル、53a,53b:右ベルト機構、54a,54b:ベルト部、55a,55b:プーリ支持部材、57a,57b:プーリ、59a,59b:ペダル支持部材、60:接続シャフト、60a~60d:リンク部、70:調整機構、90:腕トレーニング機構、92a,92b:ケース部材、94a,94b:紐部、96a,96b:把持部、100,102:リンク機構、220:背筋トレーニング機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8