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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143307
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/075 20060101AFI20220926BHJP
   B62D 55/065 20060101ALI20220926BHJP
   B60P 1/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B62D55/075
B62D55/065
B60P1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043760
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】森山 湧志
(57)【要約】
【課題】段差があってもスムーズに移動することができる搬送ロボットを提供することを目的の一つとする。
【解決手段】搬送ロボットは、キャスタが付けられた荷台を搬送する搬送ロボットであって、搬送台車の荷台の下部に潜り込む車体と、車体に設けられ搬送台車の荷台を持ち上げるリフト装置と、車体を走行させる走行装置と、車体の傾きを検出する傾斜センサと、車体の移動方向にある段差を検出する段差検出センサとを含む。搬送ロボットは、段差を乗り越えるとき、リフト装置によって搬送台車の荷台を水平に支持する機構を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタが付けられた荷台を搬送する搬送ロボットであって、
前記荷台の下部に潜り込む車体と、
前記車体に設けられ、前記荷台を持ち上げるリフト装置と、
前記車体を走行させる走行装置と、
前記車体の傾きを検出する傾斜センサと、
前記車体の移動方向にある段差を検出する段差検出センサと、
を含み、
前記リフト装置は、前記車体が段差を乗り越えるとき、前記荷台を水平に支持する
ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
前記リフト装置は、前記車体が段差を乗り越える前に、前記段差検出センサが段差を検出したとき、前記キャスタが前記段差の高さと一致するように前記荷台を持ち上げる、請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
前記リフト装置は、複数のリフタを含み、
前記傾斜センサが前記車体の傾きを検出したとき、前記複数のリフタを個別に制御して前記荷台を水平に支持する、請求項1又は2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
前記複数のリフタのそれぞれは、先端に前記荷台に当接する受台が設けられている、請求項3に記載の搬送ロボット。
【請求項5】
前記荷台と当接する受台を有し、前記受台が前記複数のリフタで支持されており、前記受台と前記複数のリフタとは球座を介して接続されている、請求項3に記載の搬送ロボット。
【請求項6】
前記リフト装置は、前記車体が段差に乗り上げたとき、前記荷台の後方が前方より高くなるように前記荷台を傾斜させて持ち上げる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項7】
前記傾斜の角度が1度以上3度以下である、請求項6に記載の搬送ロボット。
【請求項8】
前記走行装置がクローラである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項9】
前記傾斜センサが、前記車体に設けられた第1の傾斜センサと、前記受台に設けられた第2の傾斜センサと、を含む、請求項5に記載の搬送ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態はキャスタが付けられた荷台を搬送する搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動搬送ロボットの技術開発が進み、さまざまな場面で利用が進められている。例えば、キャスタが付いた荷台の下に潜り込み、キャスタを床面から浮かした状態で搬送する搬送ロボットが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-59460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される搬送ロボットは、荷台の下に潜り込む方式であるため車高を高くできない。そのため、搬送ロボットの移動経路に段差があるとキャスタが段差に当たり乗り越えることができないという問題がある。また、搬送ロボットが無理に段差を乗り越えようとすると、荷台は傾いてしまい荷崩れを起こし、ひいては荷台を転倒させてしまうことが問題となる。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明の一実施形態は、段差があってもスムーズに移動することができる搬送ロボットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る搬送ロボットは、キャスタが付けられた荷台を搬送する搬送ロボットであって、搬送台車の荷台の下部に潜り込む車体と、車体に設けられ搬送台車の荷台を持ち上げるリフト装置と、車体を走行させる走行装置と、車体の傾きを検出する傾斜センサと、車体の移動方向にある段差を検出する段差検出センサとを含む。搬送ロボットは、段差を乗り越えるとき、リフト装置によって搬送台車の荷台を水平に支持する機構を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、搬送ロボットが段差を検出するセンサを備え、段差を乗り越える際にリフト装置で搬送台車の荷台の高さを制御することにより、安定した状態で段差を乗り越えることができる。それにより、搬送台車の荷崩れ、転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットを示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図を示す。
図2】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットのシステム構成を示す。
図3】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの動作を説明する図であり、(A)は段差を乗り越える前の段階の側面図を示し、(B)はそのときの正面図を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの動作を説明する図であり、(A)は段差を乗り上げる段階の側面図を示し、(B)は段差を乗り越える段階を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの動作を説明する図であり、(A)は段差を降りる段階の側面図を示し、(B)は段差を降りた後の段階を示す。
図6】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの動作を説明する図であり、(A)は段差を乗り上げる段階の側面図を示し、(B)は段差に乗り上げた段階を示す。
図7】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットを示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図を示す。
図8】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットの動作を説明する図であり、(A)は段差を乗り上げる段階の側面図を示し、(B)は段差に乗り上げたときの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態は、荷台を搬送する搬送ロボットの構成とその動作について示す。
【0011】
1.搬送ロボットの構成
図1(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る搬送ロボット100を示す。本実施形態に係る搬送ロボット100は、搬送台車の荷台の下に潜り込み搬送台車を搬送する機能を有している。図1(A)は搬送ロボットの平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は正面図を示す。搬送ロボット100は、車体102と、走行装置104と、リフト装置106と、段差検出センサ108とを含む。
【0012】
1-1.車体
車体102の形状は任意であるが、キャスタが付けられた荷台の下に潜ることができるように全高が低く抑えられている。図1(A)乃至(C)は、車体102が平面視で矩形の箱形であり、側面から見ると前後の下側端部がテーパー状に成形された形状を有している。車体102にはリフト装置106、段差検出センサ108が設けられ、内部には、走行装置104の一部を構成する駆動機構110、コントローラ112、傾斜センサ114、通信器116、電源(図示されず)が収容される。
【0013】
1-2.走行装置
走行装置104は、車体102の両側に設けられた一対のクローラユニット118(第1クローラユニット118a、第2クローラユニット118b)と、車体102の中に設けられクローラユニット118を駆動する駆動機構110を含む。クローラユニット118(第1クローラユニット118a、第2クローラユニット118b)は無端帯状の履帯120と、履帯120に囲まれた領域の一端の側に配置された駆動輪122と、他端の側に配置された遊動輪124と駆動輪122と遊動輪124との間のローラ126とを含んで構成される。駆動輪122はスプロケットの形状を有し(図示されず)、駆動機構110から延びる車軸に接続されて回転することで履帯120に動力を伝達する。
【0014】
駆動機構110は、モータとギヤを含み、進行方向(図1(A)及び(B)に示す矢印の方向)に対して左右に配置される第1クローラユニット118a、第2クローラユニット118bにそれぞれ独立して動力を伝達する。駆動機構110は、モータとギヤの組み合わせにより、駆動輪122を時計回り及び反時計回りに回転させることができる。搬送ロボット100は、このような構成の走行装置104を備えることにより、前進及び後進、右折及び左折、及び自転する動作を行うことができる。
【0015】
1-3.リフト装置
リフト装置106は車体102に搭載される。リフト装置106は複数のリフタ128を含む。図1(A)は、車体の中央より前側左右に配置された第1リフタ128a及び第2リフタ128b、並びに車体の中央より後方左右に配置された第3リフタ128c及び第4リフタ128dを示す。第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、及び第4リフタ128dは、それぞれリフタ駆動部(図示されず)により個別に動作が制御される。
【0016】
リフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)は、車体102の上部から上方に伸びるシャフト130を有する。シャフト130の先端には荷台の底面に当接する受台132が設けられていてもよい。リフタ128は、例えば、油圧又は空圧で動作するシリンダー(又はアクチュエータ)で構成される。リフト装置106は、個々のリフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)が上方に伸長することで、荷台を下から持ち上げて高さを制御する機能を有する。第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、及び第4リフタ128dは、それぞれ独立してシャフト130の上げ下げが制御される。
【0017】
図1(A)に示すように、リフタ128を4箇所に設けることで荷台を4点で支えることができ、安定した状態で荷台を上げ下げすることができる。なお、図1(A)はリフタ128が4箇所に設けられる例を示すが、この例に限定されずさらに多くの数のリフタが車体102に配置されてもよい。また、複数のリフタ128は、前方に2箇所及び後方に1箇所の合計3箇所、又は前後に1箇所ずつ配置されていてもよい。
【0018】
1-4.段差検出センサ
段差検出センサ108は車体102の前方に設けられる。段差検出センサ108は、搬送ロボット100の進行方向に段差が存在するか否かを検出する機能を有する。段差検出センサ108は光学式のセンサが用いられる。例えば、光学式のセンサとして変位センサ、形状計測センサなどが用いられる。搬送ロボット100は、前進及び後進をすることができるので、車体102の前方のみでなく、後方にも同様に段差検出センサ108が設けられていてもよい。
【0019】
また、段差検出センサ108は、カメラで搬送ロボット100の進行方向前方を撮影し、画像解析により段差を検出する構成を有していてもよい。例えば、人工知能のよる画像認識技術を利用して段差を認識するようにしてもよい。
【0020】
段差検出センサ108は、車体102の前方と後方の両方に設けられていてもよい。すなわち、車体102の前方に第1段差検出センサ108aが設けられ、後方に第2段差検出センサ108bが設けられていてもよい。第1段差検出センサ108aは搬送ロボット100の進行方向の段差を検出し、第2段差検出センサ108bは搬送ロボット100が段差を乗り越え終わったことを検出するために用いることができる。
【0021】
1-5.傾斜センサ
車体102には傾斜センサ114が設けられることが好ましい。傾斜センサ114は、搬送ロボット100が段差を乗り越えるとき、車体102の傾斜を検出するために用いられる。傾斜センサ114は、車体102の前後方向の傾き、及び左右方向の傾きを検出できることが好ましい。傾斜センサ114としては、例えば、静電容量式の傾斜センサを用いることができる。
【0022】
2.搬送ロボットのシステム構成
図2は、搬送ロボット100のシステム構成を示す。搬送ロボット100はCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース等によって構成され、各部の動作を制御する命令が記載されたプログラムによって動作するコントローラ112によって制御される。搬送ロボット100の起動、移動経路の設定などの命令はホストコンピュータから送信され、送信された命令は通信器116が受信してコントローラ112に入力される。搬送ロボット100は、ホストコンピュータから送信された経路情報に基づいて駆動機構110の動作を制御する信号を出力する。
【0023】
コントローラ112には段差検出センサ108の信号が入力される。段差検出センサ108から出力された信号によって段差が検出されると、次節で説明されるようなリフト装置106に対し個々のリフタ128の動作を制御する命令をリフタ駆動部117へ出力する。また、コントローラ112には傾斜センサ114の信号が入力される。コントローラ112は、傾斜センサ114の信号に基づいて荷台が水平に保たれるように個々のリフタ128の動作を制御する命令をリフタ駆動部117へ出力する。
【0024】
このように、搬送ロボット100は、段差検出センサ108により実際に移動する経路の情報を検出し、傾斜センサ114により車体102の状態を検出し、コントローラ112がこれらの情報に基づいてリフト装置106の動作を制御する。すなわち、搬送ロボット100は、移動経路の中で段差を検知したときに、その段差によって搬送中の荷台が障害を受けないようにリフト装置106を駆動し、また車体102が傾いたときに搬送中の荷台が傾かないようにリフト装置106を駆動する機能を有する。
【0025】
3.搬送ロボットの動作
図3乃至図5を参照して搬送ロボット100の動作を説明する。以下の説明では、搬送ロボット100の進行方向に段差300が存在し、搬送ロボット100がその段差を乗り越える動作を説明する。
【0026】
図3(A)及び(B)は、搬送ロボット100が、キャスタ204が付いた荷台202を搬送する過程で進行方向の前方に段差300を検出した段階を示す。なお、図3(A)は搬送ロボット100及び搬送台車200を側面から見た状態を示し、(B)は正面から見た状態を示す。
【0027】
図3(A)及び(B)に示すように、搬送ロボット100は荷台202の下に潜り込んだ状態にあり、リフタ128のシャフト130が上昇して受台132が荷台202の下面に当接した状態にある。受台132は表面に摩擦面を有し、リフタ128が荷台202を下から押圧する力によって滑らないように当接している。搬送台車200のキャスタ204は床に接地した状態にあり、搬送ロボット100は自走して搬送台車200を搬送することができる。搬送台車200の荷台202の上には荷物206が載せられていてもよい。
【0028】
搬送ロボット100は、段差検出センサ108によって進行方向の前方にある段差300を検出する。搬送ロボット100は、走行装置104がクローラユニット118で構成されているため段差300を乗り越えることができるが、荷台202はキャスタ204が接地した状態で搬送されるので段差300に衝突し、乗り越えることができない場合がある。また、キャスタ204が段差300に乗り上げることが出来たとしても、前輪側が先に段差300に乗り上げると荷台202が傾き荷崩れを起こすおそれがある。さらに、荷台202の前輪側のキャスタ204が搬送ロボット100よりも前にある場合、当該キャスタ204が段差300に先に乗り上げてしまうと、前方のリフタ128の受台132が荷台202から離れてしまうこともあり、安定した状態で搬送できなくなってしまうことが問題となる。
【0029】
搬送ロボット100は、このような場合に備えるため、段差300の手前で一端停止し、リフト装置106によって荷台202を持ち上げる動作を行う。すなわち、搬送ロボット100は、リフト装置106によってキャスタ204を段差300の高さTまで持ち上げる動作を行う。図4(A)は、段差300の手前で搬送ロボット100が停止し、荷台202を水平に持ち上げた状態を示す。
【0030】
この状態で搬送ロボット100が前進すると、キャスタ204は段差300の上面に接地することができ、荷台202は水平状態を保持することができる。段差300の高さは段差検出センサ108で検出することができる。搬送ロボット100は、コントローラ112の機能により段差300の高さ分だけリフト装置106で荷台202を持ち上げる動作を行う。その後、搬送ロボット100は荷台202を水平に持ち上げた状態で前進する。
【0031】
図4(B)は、搬送ロボット100が段差300に乗り上げる段階を示す。クローラユニット118が段差300に乗り上げると前方が持ち上がり車体102が後方に斜めに傾く状態となる。この状態を放置すると荷台202も同様に後方に傾く状態になる。しかし、搬送ロボット100は、段差300に乗り上げることによって車体102が傾くと、その傾きを傾斜センサ114が検出し、コントローラ112がリフト装置106に荷台202を水平に保つように制御する機能を有する。具体的には、前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bに対して後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dのシャフトを伸ばして荷台202の高さを一定に保ちつつ水平を維持する制御が行われる。また、前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bのシャフトを下げて、後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dのシャフトを上に上げて荷台202に高さを一定に保ちつつ水平を維持する制御が行われてもよい。車体102の傾斜角は搬送ロボット100の進行に伴って変化するので、リフト装置106の制御は傾斜センサ114の信号に基づいて動的に制御される。
【0032】
図5(A)は、搬送ロボット100が段差300を降りる段階を示す。段差300を降りる段階においても車体102が傾くので、リフト装置106によって荷台202を水平に保持する制御が行われる。搬送ロボット100は、後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dに対して前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bのシャフトを伸ばして荷台202の高さを一定に保ちつつ水平を維持する制御が行われる。また、後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dのシャフトを下げて、前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bのシャフトを上に上げて荷台202に高さを一定に保ちつつ水平を維持する制御が行われてもよい。この場合も車体102の傾斜角は搬送ロボット100の進行に伴って変化するので、リフト装置106の制御は傾斜センサ114の信号に基づいて動的に制御される。
【0033】
図5(B)は、搬送ロボット100が段差300を越えた後の状態を示す。搬送ロボット100は、後方に配置された第2段差検出センサ108bで段差300を超えたことを検出し、第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、及び第4リフタ128dを降下させてキャスタ204を床に接地させる動作を行う。
【0034】
このように、搬送ロボット100は、車体102の傾斜に伴ってリフト装置106が備える複数のリフタ128を個別に制御することで、荷台202を水平に持ち上げた状態で段差300に乗り上げ、又は乗り越えることができる。
【0035】
本実施形態によれば、搬送ロボット100が段差を検出するセンサを備え、段差を乗り越える際にリフト装置106で搬送台車の荷台の高さを制御することにより、安定した状態で段差を乗り越えることができる。それにより、搬送台車200の荷崩れ、転倒を防止することができる。搬送ロボット100が、本実施形態に示す機能を有することにより、様々な搬送経路を選択することができ、搬送ロボット100の行動範囲を広げることができる。
【0036】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に示す搬送ロボット100において、段差300を乗り越える際に行われる動作の他の一例を示す。
【0037】
図6(A)は、搬送ロボット100が段差300に乗り上げる段階を示す。この段階では、図4(B)を参照して説明したように、搬送ロボット100はリフト装置106を制御して、前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bに対して後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dのシャフトを伸ばす動作が行われる。
【0038】
本実施形態では、この状態で荷台202を水平に持ち上げるのではなく、荷台202を前方向に傾ける制御を行う。リフト装置106が荷台202を前方に傾ける角度θは1~3度の範囲であることが好ましい。このように、荷台202を前方に傾けることで、搬送台車200の前方のキャスタ204(前輪)に荷重をかけることができ、安定性を高めることができる。
【0039】
図6(B)は、搬送ロボット100が段差300に乗り上げた段階を示す。この段階では、搬送ロボット100はリフト装置106を制御して、荷台202の傾斜を元に戻し水平にする制御を行う。この場合、後方の第3リフタ128c及び第4リフタ128dを下げる動作が行われる。また必要に応じて前方の第1リフタ128a及び第2リフタ128bを上げる動作が同時に行われる。荷台202を前方に傾けた状態のままであると、搬送ロボット100が段差300を降りる際に前のめりになって安定性を維持できなくなるおそれがある。搬送ロボット100は、段差300を降りる前に荷台202を水平に戻す動作を行うことで安定性を確保することができる。
【0040】
本実施形態によれば、搬送ロボット100が段差に当たって衝撃を受けたとしても、搬送台車200の前輪(キャスタ204)が段差300の上で荷重がかかった状態で接地しているので、動作の安定を維持することができる。
【0041】
[第3実施形態]
本実施形態は、搬送ロボット100の別の一態様を示す。以下の説明においては、第1実施形態におけるものと相違する部分を中心に説明する。
【0042】
図7(A)乃至(C)は、搬送ロボット100の第2の構成を示す。図7(A)は搬送ロボット100の平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は正面図を示す。以下においては、図2(A)乃至(C)に示す搬送ロボットと相違する部分を中心に説明する。
【0043】
搬送ロボット100は、車体102の上部にテーブル134が設けられる。テーブル134はリフト装置106に連結されており上下に動作をする。テーブル134は、例えば、4本のリフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)で支えられており、連結部に球座136が設けられている。テーブル134の形状に限定は無い。テーブル134の上面が荷台202の下面と当接面となる。
【0044】
リフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)は球座138の上に設けられる。また、各リフタはスライダ136を介してテーブル134と連結される。各リフタ128を球座138を介して車体102に設けることで、各リフタの角度を調節することができる。また、各リフタ128を、スライダ136を介してテーブル134に連結することで、テーブル134を支える位置を調節することができる。このような構成により、車体102が傾いた場合でもテーブル134を水平に保ち、荷台を安定した状態で支持することができる。
【0045】
図8(A)は、搬送台車200を搬送する搬送ロボット100が段差300に乗り上げる段階を示す。搬送ロボット100は、テーブル134の水平を保った状態で荷台202を持ち上げる。テーブル134とリフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)とは、スライダ136で連結され、各リフタ128は球座138によって角度を変えることができる。そのため、車体102が斜めに傾いていても、テーブル134の上面の水平に維持した状態で(別言すれば、テーブル134の上面の略全面が荷台202の下面と接した状態で)、水平状態の制御をすることができる。さらに、各リフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)が垂直に立った状態で荷重を受けることができるので、安定した状態で搬送台車200を支えることができる。
【0046】
図8(B)は、搬送ロボット100のクローラユニット118の片側が段差に乗り上げた状態を示す。具体的には、搬送ロボット100は正面から見て左側の第1クローラ126aが段差300に乗り上げ車体102が傾いた状態となっている。このような状態でも、テーブル134を水平に保つように、リフト装置106では、第1リフタ128a及び第3リフタ128cのシャフトを上げて、また必要に応じて第2リフタ128b及び第4リフタ128dのシャフトを下げる制御が行われる。搬送ロボット100のこのような動作により、車体102が進行方向に対し左右方向に傾いたとしても荷台202を水平に保持することができる。そして、このような状態においても、球座138によってリフタ128(第1リフタ128a、第2リフタ128b、第3リフタ128c、第4リフタ128d)を垂直にすることができ、スライダ136によってテーブル134を支える位置を調節することができるので、安定した状態で搬送台車200を支えることができる。
【0047】
本実施形態によれば、リフト装置106にテーブル134を設け、テーブル134によって荷台202を支持することで、安定して搬送台車200を搬送することができる。なお、本実施形態に係る搬送ロボット100は、第2実施形態で示すように、段差300を乗り越える際に搬送台車200の前輪に荷重をかける制御を行うこともできる。
【符号の説明】
【0048】
100:搬送ロボット、102:車体、104:走行装置、106:リフト装置、108:段差検出センサ、110:駆動機構、112:コントローラ、114:傾斜センサ、116:通信器、117:リフタ駆動部、118:クローラユニット、120:履帯、122:駆動輪、124:遊動輪、126:ローラ、128:リフタ、130:シャフト、132:受台、134:テーブル、136:スライダ、138:球座、200:搬送台車、202:荷台、204:キャスタ、206:荷物、300:段差
図1
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図8