(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143320
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】チョークコイル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220926BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20220926BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01F37/00 N
H01F37/00 R
H01F37/00 E
H01F37/00 A
H01F5/02 G
H01F27/24 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043776
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】507215367
【氏名又は名称】TMP株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514172895
【氏名又は名称】CKS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100173510
【弁理士】
【氏名又は名称】美川 公司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 右幾
(57)【要約】
【課題】従来よりも更なる小型化、高出力化、高性能化が可能なチョークコイルを提供する。
【解決手段】ボビンB11及びボビンB12を介してそれぞれにコイルCL11及びコイルCL12が巻回された二本の巻線軸1及び巻線軸1C及び巻線軸2及び巻線軸2Cと、二本の共通軸3及び共通軸3C並びに共通軸4及び共通軸4Cと、接続部5及び接続部5Cと、をそれぞれに備え、対向して用いられる二つのコアC11及びC12と、ボビンB11及びボビンB12と、コイルCL11及びコイルCL12と、を備え、共通軸3と共通軸3Cとの間並びに共通軸4と共通軸4Cとの間に、チョークコイルCK1として備えるべきノーマルモードインダクタンスの値に対応した長さのギャップG3及びギャップG4が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のボビンを介してそれぞれにコイルが巻回された二本の第1軸であって、互いに平行で且つそれぞれが柱状の第1軸と、
互いに平行で且つそれぞれが柱状である二本の第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と、
各前記第1軸の端部と、当該端部に対応した各前記第2軸それぞれの端部と、を接続する板状の接続部であって、各前記コイルに流れる前記電流により発生する磁束を前記第1軸軸及び前記第2軸に通すための接続部と、
をそれぞれに備え、対向して用いられる二つのコアと、
各前記第1軸が内側に通され且つ前記コイルが外側に巻回される二つの前記ボビンと、
前記ボビンを介して前記第1軸にそれぞれ巻回される前記コイルと、
を備え、
各前記コアの前記第2軸における前記接続部と反対側の端部であって対向する当該端部同士が、チョークコイルとして備えるべきノーマルモードインダクタンスの値に対応した長さだけ離隔していることを特徴とするチョークコイル。
【請求項2】
絶縁性のボビンを介してそれぞれにコイルが巻回された二本の第1軸であって、互いに平行で且つそれぞれが柱状の第1軸と、
互いに平行で且つそれぞれが柱状である二本の第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と、
各前記第1軸の端部と、当該端部に対応した各前記第2軸それぞれの端部と、を接続する板状の接続部であって、各前記コイルに流れる前記電流により発生する磁束を前記第1軸軸及び前記第2軸に通すための接続部と、
をそれぞれに備える二つのコアと、
各前記第1軸が内側に通され且つ前記コイルが外側に巻回される二つの前記ボビンと、
前記ボビンを介して前記第1軸にそれぞれ巻回される前記コイルと、
を備え、
前記接続部がフェライト材料からなり、
前記第1軸がダスト系材料からなり、
前記第2軸が前記フェライト材料又は前記ダスト系材料のいずれか一方からなることを特徴とするチョークコイル。
【請求項3】
請求項2に記載のチョークコイルにおいて、
前記フェライト材料の透磁率μ1と前記ダスト系材料の透磁率μ2との関係が、
μ1:μ2=100:1であることを特徴とするチョークコイル。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のチョークコイルにおいて、
一の前記コアを構成する一の前記第1軸の体積v1と、当該コアを構成する二の前記第2軸の体積を合せた合計体積v2と、当該コアを構成する前記接続部の体積v3と、の関係が、
v1:v2:v3=1:1.3以上1.4以下:2.6以上2.8以下
であることを特徴とするチョークコイル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチョークコイルにおいて、
前記ボビンが、
前記コイルが巻回される胴部と、
前記コイルが巻回される前記胴部の範囲を画定する当該胴部両端のフランジと、
を備え、
一の前記フランジと前記胴部とが一体成形されており、
他の前記フランジが前記胴部に対する前記コイルの巻回後に前記胴部に接続される構造を備えることを特徴とするチョークコイル。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチョークコイルにおいて、
前記ボビンが、
前記コイルが巻回される胴部と、
前記コイルが巻回される範囲を画定する前記胴部両端のフランジと、
断面が円形である巻線が取付けられる第1外部端子部と、
断面が方形である巻線が取付けられる第2外部端子部であって前記第1外部端子部と併設された第2外部端子部と、
を備えることを特徴とするチョークコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョークコイルの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
電子部品としてのチョークコイルは様々な装置に広く用いられている。このようなチョークコイルを含むノイズフィルタについては、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。下記特許文献1に開示されているノイズフィルタは、磁気コアと接地導体と2つのコイルとを備えている。コイルの夫々は、磁気コアに巻回されたコイル部と、コイル部から引き出された2つの端子とを有している。接地導体は、コイル部から離間配置された導体主部と、導体主部から引き出された接地端子とを有している。回路基板には、二つの端子に夫々接続された四つの電極と、接地端子に接続された接地電極とが設けられている。そして、各電極の間のパターン容量Cpとコイルの巻線容量Cwとの合成容量であるCp+Cwが、接地導体とコイルとの間の接地容量Cgとの関係で、0.29×Cg-3.06以上、且つ、0.29×Cg+2.15以下とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-9900号公報(第2図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今の電子部品に対する小型化、高出力化、高性能化等に対する向上の要請を鑑みると、上記特許文献1に開示されているチョークコイルからの更なる小型化、高出力化、高性能化が望まれる。
【0005】
そこで本発明は、上記の要請に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、従来よりも更なる小型化、高出力化、高性能化が可能なチョークコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、絶縁性のボビンを介してそれぞれにコイルが巻回された二本の第1軸であって、互いに平行で且つそれぞれが柱状の第1軸と、互いに平行で且つそれぞれが柱状である二本の第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と、各前記第1軸の端部と、当該端部に対応した各前記第2軸それぞれの端部と、を接続する板状の接続部であって、各前記コイルに流れる前記電流により発生する磁束を前記第1軸軸及び前記第2軸に通すための接続部と、をそれぞれに備え、対向して用いられる二つのコアと、各前記第1軸が内側に通され且つ前記コイルが外側に巻回される二つの前記ボビンと、前記ボビンを介して前記第1軸にそれぞれ巻回される前記コイルと、を備え、各前記コアの前記第2軸における前記接続部と反対側の端部であって対向する当該端部同士が、チョークコイルとして備えるべきノーマルモードインダクタンスの値に対応した長さだけ離隔しているように構成される。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、各コアの第2軸における接続部と反対側の端部であって対向する当該端部同士が、チョークコイルとして備えるべきノーマルモードインダクタンスの値に対応した長さだけ離隔している。よって、一つのチョークコイルでノーマルモードインダクタンスとコモンモードインダクタンスの双方を発生させることができることで、各モードのインダクタンスを発生させることが可能なチョークコイルを小型化することができる。よって、例えばノイズフィルタとしての小型化、高出力化、高性能化が可能となる。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、絶縁性のボビンを介してそれぞれにコイルが巻回された二本の第1軸であって、互いに平行で且つそれぞれが柱状の第1軸と、互いに平行で且つそれぞれが柱状である二本の第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と、各前記第1軸の端部と、当該端部に対応した各前記第2軸それぞれの端部と、を接続する板状の接続部であって、各前記コイルに流れる前記電流により発生する磁束を前記第1軸軸及び前記第2軸に通すための接続部と、をそれぞれに備える二つのコアと、各前記第1軸が内側に通され且つ前記コイルが外側に巻回される二つの前記ボビンと、前記ボビンを介して前記第1軸にそれぞれ巻回される前記コイルと、を備え、前記接続部がフェライト材料からなり、前記第1軸がダスト系材料からなり、前記第2軸が前記フェライト材料又は前記ダスト系材料のいずれか一方からなるように構成される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、第1軸と、第2軸と、接続部と、からなるコアを備えたチョークコイルにおける当該接続部がフェライト材料からなり、当該第1軸がダスト系材料からなり、当該第2軸がフェライト材料又はダスト系材料のいずれか一方からなるので、直流重畳特性の向上によるチョークコイルとしての大電流化が可能となる。よって、例えば変圧器としての小型化、高出力対応化、高性能化が可能となる。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のチョークコイルにおいて、前記フェライト材料の透磁率μ1と前記ダスト系材料の透磁率μ2との関係が、μ1:μ2=100:1であるように構成される。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、フェライト材料の透磁率とダスト系材料の透磁率との関係が100:1であるので、チョークコイルとしての直流重畳特性を更に向上させることができる。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のチョークコイルにおいて、一の前記コアを構成する一の前記第1軸の体積v1と、当該コアを構成する二の前記第2軸の体積を合せた合計体積v2と、当該コアを構成する前記接続部の体積v3と、の関係が、v1:v2:v3=1:1.3以上1.4以下:2.6以上2.8以下であるように構成される。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は請求項3に記載の発明の作用に加えて、一のコアを構成する一の第1軸の体積と、当該コアを構成する二の第2軸の体積を合せた合計体積と、当該コアを構成する接続部の体積と、の関係が、1:1.3以上1.4以下:2.6以上2.8以下であるので、チョークコイルとしての直流重畳特性を更に向上させることができる。
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチョークコイルにおいて、前記ボビンが、前記コイルが巻回される胴部と、前記コイルが巻回される前記胴部の範囲を画定する当該胴部両端のフランジと、を備え、一の前記フランジと前記胴部とが一体成形されており、他の前記フランジが前記胴部に対する前記コイルの巻回後に前記胴部に接続される構造を備える。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、ボビンを構成する一のフランジとボビンの胴部とが一体成形されており、他のフランジが胴部に対するコイルの巻回後に胴部に接続される構造を備えるので、巻線の断面が円形であっても方形であっても、容易に当該コイルをボビンに巻回することができる。
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチョークコイルにおいて、前記ボビンが、前記コイルが巻回される胴部と、前記コイルが巻回される範囲を画定する前記胴部両端のフランジと、断面が円形である巻線が取付けられる第1外部端子部と、断面が方形である巻線が取付けられる第2外部端子部であって前記第1外部端子部と併設された第2外部端子部と、を備える。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、第1外部端子部に併設して第2外部端子部が設けられているので、異なる断面形状の巻線に対する部品の共通化による低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、二つのコアそれぞれの第2軸における接続部と反対側の端部であって対向する当該端部同士が、チョークコイルとして備えるべきノーマルモードインダクタンスの値に対応した長さだけ離隔している。
【0019】
従って、一つのチョークコイルでノーマルモードインダクタンスとコモンモードインダクタンスの双方を発生させることができることで、各モードのインダクタンスを発生させることが可能なチョークコイルを小型化することができる。
【0020】
また、本発明の他の側面によれば、第1軸と、第2軸と、接続部と、からなるコアを備えたチョークコイルにおける当該接続部がフェライト材料からなり、当該第1軸がダスト系材料からなり、当該第2軸がフェライト材料又はダスト系材料のいずれか一方からなる。
【0021】
従って、直流重畳特性の向上によるチョークコイルとしての大電流化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態のチョークコイルの構造を示す外観斜視図であり、(a)は当該チョークコイルに用いられているコアの構造を示す外観斜視図であり、(b)は当該チョークコイル全体の構造を示す外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態のチョークコイルに用いられるボビンの構造を示す外観斜視図であり、(a)は一の当該ボビンの構造を示す外観上方斜視図であり、(b)は一の当該ボビンの構造を示す外観下方斜視図である。
【
図3】第1実施形態のチョークコイルの構造を示す外観斜視分解図である。
【
図4】第2実施形態のチョークコイルの構造を示す図であり、(a)は当該チョークコイル全体の構造を示す外観斜視図であり、(b)は当該チョークコイルの構造を示す分解図である。
【
図5】第2実施形態のチョークコイルに用いられるボビンの構造を示す図であり、(a)は一組の当該ボビンを組み合わせた場合の構造を示す外観斜視図であり、(b)は一の当該ボビンの構造を示す外観上方斜視図であり、(b)は一の当該ボビンの構造を示す外観下方斜視図である。
【
図6】第1実施形態のチョークコイル及び第2実施形態のチョークコイルそれぞれの効果を示す図であり、(a)は従来のチョークコイルの等価回路であり、(b)は第1実施形態のチョークコイル及び第2実施形態のチョークコイルそれぞれの等価回路であり、(c)は第1実施形態のチョークコイル及び第2実施形態のチョークコイルそれぞれにおける駆動電流-インダクタンス特性図である。
【
図7】第3実施形態のチョークコイルの構造を示す図であり、(a)は当該チョークコイル全体の構造を示す外観斜視図であり、(b)は当該チョークコイルの構造を示す分解図である。
【
図8】第4実施形態のチョークコイルの構造を示す図であり、(a)は当該チョークコイル全体の構造を示す外観斜視図であり、(b)は当該チョークコイルの構造を示す分解図である。
【
図9】第3実施形態のチョークコイル及び第4実施形態のチョークコイルそれぞれにおける駆動電流-インダクタンス特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお以下に説明する各実施形態は、雑音低減用のチョークコイル(第1実施形態及び第2実施形態に相当)又は変圧器用のチョークコイル(第3実施形態及び第4実施形態に相当)に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0024】
(I)
第1実施形態
初めに、本発明の第1実施形態のチョークコイルについて、
図1乃至
図3を用いて説明する。なお、
図1は第1実施形態のチョークコイルの構造を示す外観斜視図であり、
図2は当該チョークコイルに用いられるボビンの構造を示す外観斜視図であり、
図3は当該チョークコイルの構造を示す外観斜視分解図である。
【0025】
図1乃至
図3に示すように、第1実施形態のチョークコイルCK1では、
図1(a)にその外観が示されるコアC11と、当該コアC11と同形状で
図1(a)にその外観が示されるコアC12と、が、それぞれの軸の端面同士が対向するように、例えば上下に組み合わされて用いられる。なお以下の説明において、第1実施形態のコアC11及びコアC12に共通の事項を説明する場合、これらを纏めて単に「コアC11等」と称する。
【0026】
ここで、コアC11等のそれぞれを形成する材料は、当該コアC11等が用いられるチョークコイルCK1の発振周波数(換言すれば、必要とされるコアC11等の透磁率)及び製造コスト等に基づいて決定され、より具体的に例えば、フェライト材料等が用いられる。
【0027】
そして
図1(a)に外観斜視図を示すように、第1実施形態のコアC11は、平板状の天面5と、それぞれが柱状の巻線軸1及び巻線軸2並びに共通軸3及び共通軸4と、が一体成形されて形成されている。一方、第1実施形態のコアC12も、コアC11と同様の形状を有して一体成形により形成されており、具体的には、平板状の天面5Cと、それぞれが柱状の巻線軸1C及び巻線軸2C並びに共通軸3C及び共通軸4Cと、が一体成形されて形成されている。そして
図1及び
図3に示すように、上記コアC11等の対応する軸同士(即ち、
図1に示す巻線軸1及び巻線軸2並びに共通軸3及び共通軸4それぞれの端面、及びコアC12の対応する巻線軸1C及び巻線軸2C並びに共通軸3C及び共通軸4Cそれぞれの端面同士)と、が対向するように、コアC11とコアC12とが例えば上下に組み合わされて、第1実施形態のチョークコイルCK1に用いられる。
【0028】
なお、上述の構成において、巻線軸1及び巻線軸2並びに巻線軸1C及び巻線軸2Cが本願発明の「第1軸」の一例に相当し、共通軸3及び共通軸4並びに共通軸3C及び共通軸4Cが本願発明の「第2軸」の一例に相当し、天面5及び天面5Cが本願発明の「接続部」の一例に相当する。
【0029】
そして、第1実施形態のコアC11では、共通軸3及び共通軸4の位置が、巻線軸1及び巻線軸2それぞれの中心軸の位置を結んだ線分を対称軸とした線対称の位置(即ち、当該線分から相互に反対方向に離隔した位置)となるように形成されている。換言すれば、
図1乃至
図3に示すように、共通軸3及び共通軸4と、巻線軸1及び巻線軸2と、が平面視十字型(即ち、天面5を平面視した場合の二本の対角線上)にそれぞれ位置する。一方、第1実施形態のコアC12でも、共通軸3C及び共通軸4Cの位置が、巻線軸1C及び巻線軸2Cそれぞれの中心軸の位置を結んだ線分を対称軸とした線対称の位置となるように形成されている。すなわち、
図1乃至
図3に示すように、共通軸3C及び共通軸4Cと、巻線軸1C及び巻線軸2Cと、が平面視十字型(即ち、天面5Cを平面視した場合の二本の対角線上)にそれぞれ位置する。なお、第1実施形態のコアC11等における共通軸3及び共通軸4の上記平面視上の位置は、
図1乃至
図3に例示する位置に限られるものではなく、巻線軸1及び巻線軸2並びに巻線軸1C及び巻線軸2Cに
図1乃至
図3に示すコイルが必要な巻き数だけ巻回可能な配置であれば、天面5の範囲及び天面5Cの範囲における上記平面視十字型のいずれの位置でもよい。
【0030】
次に、第1実施形態のコアC11及びコアC12においては、それらを対向させてチョークコイルCK1に用いる場合、
図1に示すように、コアC11の共通軸4における天面5と反対側の端面4Tと、当該端面4Tに対向する、コアC12の共通軸4Cにおける天面5Cと反対側の端面4CTと、の間にギャップG4が設けられるように、共通軸4及び共通軸4Cそれぞれの長さが、巻線軸1及び巻線軸1C並びに巻線軸2及び巻線軸2Cそれぞれの長さよりも短くなっている。また同様に、コアC11の共通軸3における天面5と反対側の端面3Tと、当該端面3Tに対向する、コアC12の共通軸3Cにおける天面5Cと反対側の端面3CTと、の間にもギャップG3が設けられるように、共通軸3及び共通軸3Cそれぞれの長さが、巻線軸1及び巻線軸1C並びに巻線軸2及び巻線軸2Cそれぞれの長さよりも短くなっている。そして、第1実施形態のコアC11及びコアC12においては、ギャップG3及びギャップG4それぞれの、共通軸4及び共通軸4C並びに共通軸3及び共通軸3Cそれぞれの中心軸方向の長さ(すなわち、ギャップG3及びギャップG4としての間隙の長さ)が、第1実施形態のチョークコイルCK1として有すべきコモンモードインダクタンスの大きさに対応して、予め設定されている。このときの当該間隙の長さとそれに対応するコモンモードインダクタンスとの関係については、後ほど実験結果として
図6を用いて説明する。
【0031】
一方、第1実施形態の巻線軸1及び巻線軸2の横断面の形状は、後述するようにコイルが巻回されることから円形又は楕円形或いは方形とされるが、第1実施形態の共通軸3及び共通軸4の横断面の形状は、共通軸3及び共通軸4で相互に同一であれば、その設置位置等の都合により、例えば方形或いは楕円形等、自由に変更可能である。また、第1実施形態の巻線軸1C及び巻線軸2Cの横断面の形状も、後述するようにコイルが巻回されることから円形又は楕円形或いは方形とされるが、第1実施形態の共通軸3C及び共通軸4Cの横断面の形状は、共通軸3C及び共通軸4Cで相互に同一であれば、その設置位置等の都合により、例えば方形或いは楕円形等、自由に変更可能である。
【0032】
次に、第1実施形態のチョークコイルCK1において巻線軸1及び巻線軸1Cとそれらに巻回されるコイルCL11との間、並びに巻線軸2及び巻線軸2Cとそれらに巻回されるコイルCL12との間にそれぞれ挿入される第1実施形態のボビンの構造について、
図2を用いて説明する。
【0033】
第1実施形態のチョークコイルCK1では、
図2にその構造を例示するボビンB11と、当該ボビンB11と同一形状のボビンB12(
図1及び
図3参照)と、が、それぞれの後述する噛合部が互い違いに噛み合うように組み合わされて用いられる。このときボビンB11は巻線軸1及び巻線軸1Cとそれらに巻回されるコイルとの間に挿入され、ボビンB12は巻線軸2及び巻線軸2Cとそれらに巻回されるコイルとの間に挿入される。なお以下の説明において、第1実施形態のボビンB11及びボビンB12に共通の事項を説明する場合、これらを纏めて単に「ボビンB11等」と称する。
【0034】
そして
図2に外観斜視図を示すように、第1実施形態のボビンB11は、その中を巻線軸1及び巻線軸1Cが通され且つその外周にコイルCL11が巻回される円筒状の胴部15と、胴部15におけるコイルCL11が巻回される範囲を画定するフランジ16及びフランジ17と、基部10と、ボビンB11とボビンB12とを対向させて噛み合わせるための上記噛合部11と、が一体成形されて形成されている。なお上述したように、第1実施形態のボビンB12も、
図2に示すボビンB11と同一の形状を有して一体成形により形成されている。またボビンB11等の材料としては、例えばプラスチック等の樹脂が用いられる。そして
図3に示すように、ボビンB11の噛合部11とボビンB12の噛合部11とが対向して噛み合うように当該ボビンB11とボビンB12とが組み合わされ、それぞれの胴部15内に巻線軸1及び巻線軸1C並びに巻線軸2及び巻線軸2Cが通されると共に、それぞれのフランジ16及びフランジ17により位置が画定されつつそれぞれの外周にコイルCL11及びコイルCL12が巻回されることで、第1実施形態のチョークコイルCK1に用いられる。
【0035】
一方上述したように、上述した構造を備える第1実施形態のコアC11及びコアC12は、第1実施形態のチョークコイルCK1において、巻線軸1及び巻線軸2並びに共通軸3及び共通軸4それぞれの端面と、巻線軸1C及び巻線軸2C並びに共通軸3C及び共通軸4Cそれぞれの端面と、が、それぞれ対向するように組み合わされている。このとき、巻線軸1及び巻線軸2それぞれの端面と、巻線軸1C及び巻線軸2Cそれぞれの端面とは、
図1(a)に例示するように突合するように組み合わされる。これに対し、共通軸3の端面3Tと共通軸3Cの端面3CT、及び共通軸4の端面4Tと共通軸4Cの端面4CTは、それぞれ、
図1(a)に例示するようにギャップG3及びギャップG4がそれぞれに形成されるように組み合わされる。
【0036】
そして、対向する巻線軸1及び巻線軸1Cは、フランジ16及びフランジ17が形成された上記ボビンB11の胴部15内に挿入されており、このボビンB11の外側には、コイルCL11を構成する断面円形の巻線W11が、必要な巻き数だけ巻回されている。また対向する巻線軸2及び巻線軸2Cは、同様にフランジ16及びフランジ17が形成された上記ボビンB12の胴部15内に挿入されており、このボビンB12の外周には、コイルCL12を構成する断面円形の巻線W12が、必要な巻き数だけ巻回されている。これらの巻線W11及び巻線W12の材質としては、例えば銅が用いられる。そして、巻線W11のチョークコイルCK1の外側に向かう両端部は、外部接続端子TW11を介してチョークコイルCK1の外部に接続されている。また、巻線W12のチョークコイルCK1の外側に向かう両端部は、外部接続端子TW12を介してチョークコイルCK1の外部に接続されている。これらのため、ボビンB11及びボビンB12それぞれの基部10には、外部接続端子TW11及び外部接続端子TW12が嵌め込まれる溝TGが複数形成されている。更に、コイルCL11における巻線W11の巻き数とコイルCL12における巻線W12の巻き数は、相互に同一であることが好ましい。
【0037】
なお上述したように、第1実施形態のチョークコイルCK1では、共通軸3と共通軸3Cとの間にはギャップG3が、共通軸4と共通軸4Cとの間にはギャップG4が、それぞれ設けられている。このとき、第1実施形態のチョークコイルCK1が例えば車両用の部品の一つとして用いられる場合等においては、ギャップG3及びギャップG4が空隙のままだと、外部から加えられる振動等により、部品破損や特性変化等の影響を受ける可能性がある。このため、
図3に示すように、ギャップG3及びギャップG4それぞれに相当する位置に、緩衝部材SPを挟み込むように構成してもよい。この緩衝部材SPの材料としては、例えばプラスチックや絶縁性ゴム等が考えられる。
【0038】
なお、以上説明した第1実施形態のチョークコイルCK1の構造による効果については、後ほど、後述する第2実施形態のチョークコイルの構造による効果と共に説明する。
【0039】
(II)
第2実施形態
次に、本発明の他の実施形態である第2実施形態のチョークコイルについて、
図4乃至
図6を用いて説明する。なお、
図4は第2実施形態のチョークコイルの構造を示す図であり、
図5は当該チョークコイルに用いられるボビンの構造を示す図であり、
図6第1実施形態のチョークコイル及び第2実施形態のチョークコイルそれぞれの効果を示す図である。また、
図4及び
図5において、第1実施形態のチョークコイルCK1と同一の部材については、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0040】
上述した第1実施形態のチョークコイルCK1に用いられる巻線W11及び巻線W12それぞれの断面形状は円形であった。これに対し、第2実施形態のチョークコイルに用いられる巻線の断面形状は方形とされている。すなわち、第2実施形態のチョークコイルに用いられる巻線は、いわゆる平角線とされている。またこれに伴い、第2実施形態のチョークコイルに用いられるボビンの形状が、巻線として平角線を用いることに適した構造とされている。
【0041】
図4及び
図5に示すように、第2実施形態のチョークコイルCK2では、第1実施形態のチョークコイルCK1におけるコアC11及びコアC12と同様の構造のコアC11及びC12が、第1実施形態のチョークコイルCK1の場合と同様の態様で、例えば上下に組み合わされて用いられる。このとき、第1実施形態のチョークコイルCK1の場合と同様に、共通軸3と共通軸3Cとの間にはギャップG3が緩衝部材SPを挟んで設けられており、また共通軸4と共通軸4Cとの間にはギャップG4が緩衝部材SPを挟んで設けられている。
【0042】
次に、第2実施形態のチョークコイルCK2において巻線軸1及び巻線軸1Cと、それらに巻回されるコイルCL21(すなわち平角線たる巻線W21からなるコイルCL21)との間、並びに巻線軸2及び巻線軸2Cとそれらに巻回されるコイルCL22(すなわち平角線たる巻線W22からなるコイルCL22)との間にそれぞれ挿入される第2実施形態のボビンの構造について、
図5を用いて説明する。
【0043】
第2実施形態のチョークコイルCK2では、
図5にその構造を例示するボビンB21と、当該ボビンB21と同一形状のボビンB22と、が、それぞれの噛合部11Aが互い違いに噛み合うように組み合わされて用いられる。このときボビンB21は巻線軸1及び巻線軸1Cとそれらに巻回されるコイルCL21(巻線W21)との間に挿入され、ボビンB22は巻線軸2及び巻線軸2Cとそれらに巻回されるコイルCL22(巻線W22)との間に挿入される。なお以下の説明において、第2実施形態のボビンB21及びボビンB22に共通の事項を説明する場合、これらを纏めて単に「ボビンB21等」と称する。
【0044】
そして
図5に外観斜視図をそれぞれ示すように、第2実施形態のボビンB21は、その中を巻線軸1及び巻線軸1Cが通され且つその外周にコイルCL21が巻回される円筒状の胴部15と、胴部15におけるコイルCL21が巻回される範囲を画定するフランジ16A及びフランジ17と、基部10と、ボビンB21とボビンB22とを対向させて噛み合わせるための上下二カ所の上記噛合部11Aと、により構成されている。このとき、胴部15と基部10側のフランジ17とが一体成形されて形成されている一方で、胴部15とフランジ16Aとは別体の部材とされている。そして、平角線たる巻線W21からなるコイルCL21が胴部15に巻回された後にフランジ16Aが胴部15に接合されることで、コイルCL21が巻回されたボビン21が完成する構造とされている。
【0045】
なお上述したように、第2実施形態のボビンB22も、
図5に示すボビンB21と同一の構造を有している。またボビンB21等の材料としては、例えばプラスチック等の樹脂が用いられる。そして
図5に示すように、ボビンB21の噛合部11AとボビンB22の噛合部11Aとがそれぞれ対向して噛み合うように当該ボビンB21とボビンB22とが組み合わされ、それぞれの胴部15内に巻線軸1及び巻線軸1C並びに巻線軸2及び巻線軸2Cが通されると共に、それぞれのフランジ16A及びフランジ17により位置が画定されつつそれぞれの外周にコイルCL21及びコイルCL22が巻回されることで、第1実施形態のチョークコイルCK1に用いられる。
【0046】
一方上述したように、第2実施形態のチョークコイルCK2においては、上述した構造を備えるコアC11及びコアC12が、第1実施形態のチョークコイルCK1と同様の態様で組み合わされる。そして、対向する巻線軸1及び巻線軸1Cは、フランジ16A及びフランジ17を備える上記ボビンB21の胴部15内に挿入されており、このボビンB21の外側には、コイルCL21を構成する平角線たる巻線W21が、必要な巻き数だけ巻回されている。また対向する巻線軸2及び巻線軸2Cは、同様にフランジ16A及びフランジ17を備える上記ボビンB22の胴部15内に挿入されており、このボビンB22の外周には、コイルCL22を構成する平角線たる巻線W22が、必要な巻き数だけ巻回されている。これらの巻線W21及び巻線W22の材料としても、例えば銅が用いられる。そして、巻線W21のチョークコイルCK1の外側に向かう両端部は、外部接続端子TW21を介してチョークコイルCK2の外部に接続されている。また、巻線W22のチョークコイルCK2の外側に向かう両端部は、外部接続端子TW22を介してチョークコイルCK2の外部に接続されている。これらのため、ボビンB21及びボビンB22それぞれの基部10には、外部接続端子TW21及び外部接続端子TW22が嵌め込まれる平角線用溝TGHが、第1実施形態のボビンB11及びボビンB12と同様の溝TGに併設されている。更に、コイルCL21における巻線W21の巻き数とコイルCL22における巻線W22の巻き数は、相互に同一であることが好ましい。なお、上記溝TGが本願発明の「第1外部端子部」の一例に相当し、平角線用溝TGHが本願発明の「第2外部端子部」の一例に相当する。
【0047】
以上それぞれ説明したように、第1実施形態のチョークコイルCK1の構造及び第2実施形態のチョークコイルCK2の構造によれば、対向する共通軸3と共通軸3Cとの間にギャップG3が設けられており、同じく対向する共通軸4と共通軸4Cとの間にギャップG4が設けられている。そして、ギャップG3及びギャップG4それぞれの長さ(空隙の長さ)が、第1実施形態のチョークコイルCK1又は第2実施形態のチョークコイルCK2として有すべきコモンモードインダクタンスの大きさに対応した長さとされている。よって、一つのチョークコイル(第1実施形態のチョークコイルCK1又は第2実施形態のチョークコイルCK2)でノーマルモードインダクタンスとコモンモードインダクタンスの双方を発生させることができることで、各モードのインダクタンスを発生させることが可能なチョークコイルを小型化することができる。従って、第1実施形態のチョークコイルCK1の構造及び第2実施形態のチョークコイルCK2を例えばノイズフィルタの部材として用いる場合に、当該ノイズフィルタの小型化、高出力化、高性能化が可能となる。
【0048】
また、第2実施形態のボビンB21及びボビンB22の構造によれば、それらを構成する一のフランジ17と胴部15とが一体成形されており、他のフランジ16Aが胴部15に対するコイルCL21又はコイルCL22の巻回後に胴部15に接続される構造を備えるので(
図5(b)又は
図5(c)参照)、コイルに巻回される巻線が断面円形の線であっても断面方形の平角線であっても、容易に当該コイルをボビンB21又はボビンB22に巻回することができる。
【0049】
更に、第2実施形態のボビンB21及びボビンB22の構造によれば、ボビンを構成する基部10に溝TGと平角専用溝TGHとが併設されているので、異なる断面形状の巻線に対する部品の共通化による低コスト化を実現することができる。
【0050】
ここで、第2実施形態のチョークコイルCK1及び第2実施形態のチョークコイルCK2において上述したギャップG3及びギャップG4を設けたことによる効果について、本願の発明者等による実験結果(シミュレーション結果)を示す
図6を用いて、より具体的に説明する。なお、
図6に結果を示す実験では、第1実施形態のチョークコイルCK1及び第2実施形態のチョークコイルCK2に用いるコアC11等の材料として、透磁率が7,000マイクロヘンリーのフェライト材料を用い、コイルCL11等の巻回数をそれぞれ13回としている。
【0051】
すなわち、
図6(a)に例示する交流入力部IN、フューズF並びにコンデンサCD1及びコンデンサCD2を備える入力フィルタ回路を用いて広周波数帯域(数キロヘルツ乃至30メガヘルツ程度)に渡って雑音を低減させる際に、ノーマルモードインダクタンスとコモンモードインダクタンスの双方を発生させようとする場合、従来は、
図6(a)に例示するような、ノーマルモードチョークコイルCKX1及びノーマルモードチョークコイルCKX2並びにコモンモードチョークコイルCKX3の三つのチョークコイルが必要とされていた。これに対し、第1実施形態のチョークコイルCK1又は第2実施形態のチョークコイルCK2の場合は、上記ギャップG3及びギャップG4を設けたことにより、
図6(b)に例示するように、一つのチョークコイルCK1又はチョークコイルCK2を設けるのみで、コモンモードインダクタンスに加えて、必要な値のノーマルモードインダクタンスが得られることとなる。これにより、二つのモードのインダクタンスを発生させることが可能なチョークコイルを小型化することができるのである。
【0052】
なお、ギャップG3及びギャップG4それぞれの長さ(空隙の長さ)と、それらにより得られるノーマルモードインダクアンスの値との関係については、本願の発明者らにより、
図6(c)に例示する実験結果が得られている。この実験結果によれば、ギャップG3及びギャップG4がある場合に、駆動電流に対する平坦性のよいノーマルモードインダクタンスが発生していることが判る。そして、ギャップG3及びギャップG4それぞれの長さが2ミリメートルの時に、最大のノーマルモードインダクタンス(67.1マイクロヘンリー)が得られている。このことは、ギャップG3及びギャップG4それぞれの長さを変えることで、所望されるノーマルモードインダクタンスを得ることを表している。
【0053】
(III)
第3実施形態
次に、本発明の更に他の実施形態である第3実施形態のチョークコイルについて、
図7を用いて説明する。なお
図7は、第3実施形態のチョークコイルの構造を示す図である。また
図7において、第1実施形態のチョークコイルCK1又は第2実施形態のチョークコイルCK2と同一の部材については、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0054】
上述した第1実施形態のチョークコイルCK1に用いられるコアC11等については、その全体が同一の材料(例えばフェライト材料等)により形成されていた。これに対し、第3実施形態のチョークコイル及び後述する第4実施形態のチョークコイルに用いられるコアは、その天面及び巻線軸並びに共通軸が複数種類の材料により形成されている。このとき、第3実施形態のチョークコイル及び第4実施形態のチョークコイルは、それぞれ、インターリーブ制御方式により制御される電流がそれぞれ流されるチョークコイルであって、例えば変圧器用インダクタとして用いられるチョークコイルである。
【0055】
すなわち
図7に示すように、第3実施形態のチョークコイルCK3では、コアC31と、当該コアC31と同形状のコアC32と、が、それぞれの軸の端面同士が対向するように、例えば上下に組み合わされて用いられる。なお以下の説明において、第3実施形態のコアC31及びコアC32に共通の事項を説明する場合、これらを纏めて単に「コアC31等」と称する。
【0056】
そして特に
図7(b)に外観斜視図を示すように、第3実施形態のコアC31は、略平板状の天面25と、それぞれが柱状の共通軸23及び共通軸24と、が一体成形されて形成されている。一方、第3実施形態のコアC32も、
図7に示すように、コアC31と同様の形状を有して一体成形により形成されており、具体的には、略平板状の天面25Cと、それぞれが柱状の共通軸23C及び共通軸24Cと、が一体成形されて形成されている。このとき、コアC31及びコアC32は、全体として同一のフェライト材料により形成されている。また、天面25及び天面25Cは、それぞれ第1実施形態の天面5及び天面5Cと略同一の形状(後述する巻線軸21及び巻線軸22がそれぞれ突合される凹部を除く)を有している。これに対し、共通軸23及び共通軸24は、それらの横断面はそれぞれ第1実施形態の共通軸3及び共通軸4の横断面と同じ形状を有しているが、それらの長さは共通軸3及び共通軸4より長い。また、共通軸23C及び共通軸24Cは、それらの横断面はそれぞれ第1実施形態の共通軸3C及び共通軸4Cの横断面と同じ形状を有しているが、それらの長さは共通軸3C及び共通軸4Cより長い。これらにより、コアC31とコアC32が第3実施形態のチョークコイルCK3として用いられる際には、
図7に示すように第1実施形態のギャップG3及びギャップG4(
図1等参照)は形成されず、共通軸23の端面と共通軸23Cの端面とは突合し、また共通軸24の端面と共通軸24Cの端面とも突合する。
【0057】
一方第3実施形態のチョークコイルCK3では、巻線軸21及び巻線軸22がコアC31及びコアC32とは別部材とされており、これら巻線軸21及び巻線軸22は、例えばダスト系材料により形成されている。そして
図7に示すように、上記コアC31等の対応する軸同士(即ち、
図7に示す共通軸23及び共通軸24それぞれの端面、及びコアC32の対応する共通軸23C及び共通軸24Cそれぞれの端面同士)が対向すると共に、巻線軸21及び巻線軸22がコアC31とコアC32との間に挟み込まれるように、コアC31とコアC32とが例えば上下に組み合わされて、第3実施形態のチョークコイルCK3に用いられる。このとき、共通軸23及び共通軸24並びに巻線軸21及び巻線軸22それぞれの天面25に対する位置は、第1実施形態のチョークコイルCK1の共通軸3及び共通軸4並びに巻線軸1及び巻線軸2それぞれの天面5に対する位置と同様である。また、共通軸23C及び共通軸24C並びに巻線軸21及び巻線軸22それぞれの天面25Cに対する位置は、第1実施形態のチョークコイルCK1の共通軸3C及び共通軸4C並びに巻線軸1C及び巻線軸2Cそれぞれの天面5Cに対する位置と同様である。更に、巻線軸21及び巻線軸22は、コアC31の天面25及びコアC32の天面25Cそれぞれの上記凹部に突合するように挟み込まれる。
【0058】
ここで、天面25並びに共通軸23及び共通軸24からなるコアC31、並びに、天面25C並びに共通軸23C及び共通軸24CからなるコアC32の材料たるフェライト材料の透磁率は2,000マイクロヘンリー乃至3,000マイクロヘンリーであり、一方巻線軸21及び巻線軸22の材料たるダスト系材料の透磁率は20マイクロヘンリー乃至30マイクロヘンリーである。すなわち、上記フェライト材料の透磁率と上記ダスト系材料の透磁率との比は、100:1となる。
【0059】
更に、第3実施形態のチョークコイルCK3として、上記コアC31及び上記コアC32並びに上記巻線軸21及び巻線軸22それぞれの体積につき、巻線軸21又は巻線軸22のいずれか一本分の体積をv1とし、共通軸23及び共通軸23C並びに共通軸24及び共通軸24Cそれぞれの体積を合せた体積(すなわち、チョークコイルCK3全体における共通軸23及び共通軸23C並びに共通軸24及び共通軸24Cの体積の合計)をv2とし、天面25又は天面25Cのいずれか一方の体積をv3としたとき、以下の式(1)に示す関係となっている。
v1:v2:v3=1:1.3以上1.4以下:2.6以上2.8以下 (1)
なお、上記体積比としてより好ましくは、上記v1:上記v2:上記v3=1:1.3:2.6なる関係であることが適当である。
【0060】
他方、第3実施形態のチョークコイルCK3に用いられるボビンは、第2実施形態のチョークコイルCK2に用いられるボビンB21及びボビンB22と同様の構成を備えている。そして、ボビンB21にはその胴部15の外側に巻線W11よりなるコイルCL11が巻回され、その胴部15の内側には巻線軸21が通される。一方ボビンB22にはその胴部15の外側に巻線W12よりなるコイルCL12が巻回され、その胴部15の内側には巻線軸22が通される。
【0061】
なお、以上説明した第3実施形態のチョークコイルCK3の構造による効果については、後ほど、後述する第4実施形態のチョークコイルの構造による効果と共に説明する。
【0062】
(IV)
第4実施形態
最後に、本発明の更に他の実施形態である第4実施形態のチョークコイルについて、
図8及び
図9を用いて説明する。なお、
図8は第4実施形態のチョークコイルの構造を示す図であり、
図9は第3実施形態のチョークコイルCK3及び第4実施形態のチョークコイルそれぞれにおける電流-インダクタンス特性図である。また
図8において、第1実施形態のチョークコイルCK1乃至第3実施形態のチョークコイルCK3のいずれかと同一の部材については、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0063】
上述した第3実施形態のチョークコイルCK3では、天面25、共通軸23及び共通軸24がフェライト材料を用いて一体成形されており、また、天面25C、共通軸23C及び共通軸24Cがフェライト材料を用いて一体成形されていた。更に、巻線軸21及び巻線軸22がダスト系材料を用いて別部品として形成されていた。これに対し、第4実施形態のチョークコイルに用いられるコアC4は、その天面がフェライト材料により形成されており、一方巻線軸及び共通軸が共にダスト系材料により形成されている。
【0064】
すなわち
図8に示すように、第4実施形態のチョークコイルCK4では、フェライト材料からなる天面35と天面35Cとの間に、ダスト系材料からなる共通軸33及び共通軸34並びに巻線軸21及び巻線軸22が挟まれた状態で、チョークコイルCK4としてのコアC4が形成されている。このとき、共通軸33及び共通軸34それぞれの形状は、巻線軸21及び巻線軸22の形状と同一である。
【0065】
一方、天面35及び天面35Cは、それぞれ第1実施形態の天面5及び天面5Cと略同一の形状(巻線軸21及び巻線軸22並びに共通軸33及び共通軸34がそれぞれ突合される凹部を除く)を有している。このとき、共通軸33及び共通軸34並びに巻線軸21及び巻線軸22それぞれの天面35及び天面35Cに対する位置は、第1実施形態のチョークコイルCK1の共通軸3及び共通軸4並びに巻線軸1及び巻線軸2それぞれの天面5に対する位置、又は、共通軸3C及び共通軸4C並びに巻線軸1C及び巻線軸2Cそれぞれの天面5Cに対する位置と同様である。更に、巻線軸21及び巻線軸22並びに共通軸33及び共通軸34は、天面35及び天面35Cそれぞれの上記凹部に突合するように挟み込まれる。
【0066】
また、天面35及び天面35Cの材料たるフェライト材料の透磁率と、巻線軸21及び巻線軸22並びに共通軸33及び共通軸34それぞれの材料たるタスト系材料の透磁率との比は、第3実施形態のチョークコイルCK3に用いられているフェライト材料の透磁率とダスト系材料の透磁率の比と同様である。また、巻線軸21又は巻線軸22のいずれか一方の体積と、共通軸33の体積と共通軸34の体積とを合せた体積(すなわち共通軸二本分の体積)と、天面35又は天面35Cのいずれか一方の体積と、の比も、第3実施形態のチョークコイルCK3における天面25等の体積比と同様である。
【0067】
他方、第4実施形態のチョークコイルCK4に用いられるボビンは、第2実施形態のチョークコイルCK2に用いられるボビンB21及びボビンB22と同様の構成を備えている。そして、ボビンB21にはその胴部15の外側に平角線たる巻線W21よりなるコイルCL21が巻回され、その胴部15の内側には巻線軸21が通される。一方ボビンB22にはその胴部15の外側に平角線たる巻線W32よりなるコイルCL22が巻回され、その胴部15の内側には巻線軸22が通される。
【0068】
以上それぞれ説明したように、第3実施形態のチョークコイルCK3の構造及び第4実施形態のチョークコイルCK4の構造によれば、天面25及び天面25C並びに天面35及び天面35Cがフェライト材料からなり、巻線軸21及び巻線軸22がダスト系材料からなり、第3実施形態の共通軸24C及び共通軸24並びに共通軸23C及び共通軸23がフェライト材料からなり、一方第4実施形態の共通軸33及び共通軸34がダスト系材料からなるので、直流重畳特性の向上によるチョークコイルとしての大電流化が可能となる。よって、例えば第3実施形態のチョークコイルCK3及び第4実施形態のチョークコイルCK4を変圧器の部材として用いる場合に、当該変圧器の小型化、高出力対応化、高性能化が可能となる。
【0069】
また、第3実施形態のチョークコイルCK3又は第4実施形態のチョークコイルCK4に用いられているフェライト材料の透磁率とダスト系材料の透磁率との関係が100:1であるので、チョークコイルとしての直流重畳特性を更に向上させることができる。
【0070】
更に、第3実施形態のチョークコイルCK3において、巻線軸21又は巻線軸22のいずれか一本分の体積v1と、共通軸23及び共通軸23C並びに共通軸24及び共通軸24Cそれぞれの体積を合せた体積v2と、天面25又は天面25Cのいずれか一方の体積v3の比が、v1:v2:v3=1:1.3以上1.4以下:2.6以上2.8以下であるので、チョークコイルとしての直流重畳特性を更に向上させることができる。なおこの点は、第4実施形態のチョークコイルCK4において同様である。
【0071】
なお、第3実施形態のチョークコイルCK3に用いられる天面25等の材料の相違と、それらにより得られる直流重畳特性との関係については、本願の発明者らにより、
図9に例示する実験結果が得られている。なお
図9において、「□」印により示されるグラフは、第3実施形態のチョークコイルCK3(天面25及び天面25Cの厚さが9.6ミリメートル)を用いた場合の駆動電流とインダクタンスとの関係を示しており、「▲」印により示されるグラフは、第3実施形態のチョークコイルCK3に対して天面25及び天面25Cの厚さが半分である場合の駆動電流とインダクタンスとの関係を示している。更に、「◆」印により示されるグラフは、第4実施形態のチョークコイルCK4(天面35及び天面35Cの厚さが9.6ミリメートル)を用いた場合の駆動電流とインダクタンスとの関係を示しており、「●」印により示されるグラフは、比較例として、チョークコイルを構成するコア(天面、共通軸及び巻線軸を含む)の全てをダスト系材料で形成し且つ天面の厚さを「▲」印により示されるグラフの場合と同じとしたときの駆動電流とインダクタンスとの関係を示している。そして、
図9に示される実験結果によれば、所望される直流重畳特性としては第4実施形態のチョークコイルCK4の構造が最も望ましく、次に第3実施形態のチョークコイルCK3の構造が好ましいことが判る。これに対して、チョークコイルを構成するコアの全てをダスト系材料で形成した場合は、同じ巻線数で比較した場合には、インダクタンス値の低下により所望の直流重畳特性が得られていないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上それぞれ説明したように、本発明はチョークコイルの分野に利用することが可能であり、特に小型化及び高性能化を目的とするチョークコイルの分野に適用すれば、特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0073】
1、1C、2、2C、21、22 巻線軸
3、3C、4、4C、23、23C、24、24C、33、34 共通軸
3T、4T、3CT、4CT 端面
5、5C、25、25C、35、35C 天面
10 基部
11、11A 噛合部
15 胴部
16、16A、17 フランジ
F フューズ
CK1、CK2、CK3、CK4 チョークコイル
C11、C12、C31、C32、C4 コア
G3、G4 ギャップ
CL11、CL12、CL21、CL22 コイル
B11、B12、B21、B22 ボビン
W11、W12、W21、W22 巻線
TW11、TW12、TW21、TW22 外部接続端子
TG 溝
SP 緩衝部材
TGH 平角線用溝
IN 交流入力部
CD1、CD2 コンデンサ
CKX1、CKX2 ノーマルモードチョークコイル
CKX3 コモンモードチョークコイル