(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143322
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】破骨細胞分化抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/31 20060101AFI20220926BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220926BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220926BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220926BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220926BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20220926BHJP
A21D 2/38 20060101ALN20220926BHJP
A23L 21/10 20160101ALN20220926BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20220926BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
A61K36/31
A61P19/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P19/08
A61P43/00 105
A23L33/105
A21D2/36
A21D2/38
A23L21/10
A61K127:00
A61K135:00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043778
(22)【出願日】2021-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年8月20日にWEB(https://virtual.wco-iof-esceo.org/)上で開催された「Virtual WCO-IOF-ESCEO 2020」で発表
(71)【出願人】
【識別番号】397036365
【氏名又は名称】株式会社アイビー化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】常陰 幸乃
(72)【発明者】
【氏名】竹入 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓子
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉秀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B032
4B041
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LE01
4B018MD66
4B018ME05
4B018MF01
4B032DB21
4B032DK29
4B032DL20
4B041LD02
4B041LK21
4B041LP05
4C088AB15
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA10
4C088CA06
4C088CA07
4C088CA08
4C088CA11
4C088CA17
4C088MA28
4C088MA34
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA96
4C088ZA97
4C088ZB15
4C088ZB21
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】 骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の予防や治療に有用な破骨細胞分化抑制剤を提供すること。
【解決手段】 クレソンの抽出物を有効成分とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレソンの抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の予防や治療に有用な破骨細胞分化抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の高齢化社会の進行に伴い、国民の骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の罹患率が上昇していることは周知の通りであり、今日、骨代謝を改善する方法の研究開発が精力的に行われている。骨代謝を改善する方法は種々存在するが、その中で、骨代謝異常の一因である、破骨細胞による骨の溶解(骨吸収)と骨芽細胞による骨の再生のバランスの崩壊を回復させるため、破骨細胞の分化を抑制することで骨吸収を抑制する方法が着目されており、例えば特許文献1には、ブナの木タール中に存在するグアヤコールが破骨細胞の分化を抑制することが記載されている。しかしながら、破骨細胞の分化を抑制する成分の探索は、今なお意義深い状況にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の予防や治療に有用な破骨細胞分化抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、クレソン(Nasturtium officinale)の抽出物が、破骨細胞分化抑制作用を有することを見出した。
【0006】
上記の知見に基づいてなされた本発明の破骨細胞分化抑制剤は、請求項1記載の通り、クレソンの抽出物を有効成分とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の予防や治療に有用な破骨細胞分化抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例における、各種の抽出溶媒を用いて調製したクレソンの抽出物の破骨細胞分化抑制作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の破骨細胞分化抑制剤は、クレソンの抽出物を有効成分とする。
【0010】
本発明において用いるクレソンは、オランダガラシ、ミズガラシ、セイヨウゼリなどとも呼ばれ、香味野菜などとして食されるよく知られた植物である。クレソンは、天然に自生しているものであってもよいし、生産者によって栽培されているものであってもよい。
【0011】
本発明において、クレソンの抽出物は、例えば、摘み取ったり切り取ったりしたクレソンの葉や茎(細断したり乾燥したり粉砕したりしてもよい)に、抽出溶媒としての水や各種の有機溶媒、例えばメタノールやエタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール(水を含んでいてもよい)、アセトン(水を含んでいてもよい)、エーテル、ヘキサン、酢酸エチル、アセトニトリルなどを加え、室温で1時間~1週間静置することで成分抽出したり、還流することで成分抽出したりしてからろ過することで、ろ液として得ることができる。抽出溶媒は、単一の溶媒を用いてもよいし複数の溶媒を混合して用いてもよい。得られたろ液は、そのまま液状抽出物として用いてもよいし、減圧濃縮や凍結乾燥を行って固形物や粉末にして用いてもよい。なお、ろ液をさらに硫安分画、ゲルろ過、イオンクロマトグラフィーなどによって精製し、得られた画分を液状抽出物として用いてもよい。また、例えば最初にヘキサンを用いて抽出操作を行った後、順次、酢酸エチル、アセトン、水といったように、用いる溶媒の極性を徐々に高くして抽出操作を行い、いずれかの溶媒を用いることで得られたろ液を液状抽出物として用いてもよい。
【0012】
本発明における破骨細胞分化抑制剤は、各種の製剤形態に製剤化することでそれ自体を医薬品や健康食品などとして服用や摂取することができることに加え、各種の飲食品に配合して摂取することができる。その服用量や摂取量は、適用対象者の年齢や性別や体重、症状の程度などに基づいて適宜決定することができ、適切量を服用や摂取することにより、その破骨細胞分化抑制作用に基づいて、骨粗鬆症や関節リウマチなどの骨代謝疾患の予防効果や治療効果を期待することができる。
【実施例0013】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0014】
実施例1:各種の抽出溶媒を用いて調製したクレソンの抽出物の破骨細胞分化抑制作用
(実験方法)
国産のクレソンの葉と茎を、70℃で24時間乾燥してからミルサーで粉砕した後、10倍量の抽出溶媒(用いた抽出溶媒は下記の7種類)を加え、室温で約16時間静置することで成分抽出してからろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を減圧濃縮した後、抽出溶媒に水が含まれる場合には凍結乾燥を行い、クレソンの抽出物を赤褐色や黒緑色の固形物として得た(色の違いは用いた抽出溶媒の違いによる)。
・ 50%(w/w)エタノール(含水量50%)
・ 80%(w/w)エタノール(含水量20%)
・ エタノール
・ 酢酸エチル
・ アセトン
・ メタノール
・ アセトニトリル
【0015】
RANKL刺激によって誘導されるマウスマクロファージ様細胞株RAW264細胞の破骨細胞分化に与えるクレソンの抽出物の影響を、クレソンの抽出物の存在下で破骨細胞分化を誘導し、分化した破骨細胞の数を計測することで評価した。具体的には、48ウェルプレートに、1ウェルあたり約5000個のRAW264細胞(理化学研究所)を300μLの培地(Minimum Essential Medium Eagle(Sigma-Aldrich社)に10% FBS(Gibco社)、2mM L-glutamine(Wako社)、NEAA(Wako社)、50μg/mL ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(Wako社)を加えたもの)で播種し、各種の抽出溶媒を用いて調製したクレソンの抽出物のそれぞれをDMSOに溶解した被験サンプル10μg/mLと、RANKL(オリエンタル酵母工業社)5nMを添加した後、CO2インキュベータ内で、37℃で5日間培養し、破骨細胞分化を誘導した。5日後、4%ホルムアルデヒドにて細胞を固定し、アセトンエタノール(1:1)で透過処理してから、TRAP染色することによって分化した破骨細胞を染色し、顕微鏡観察にて、多核化した細胞(3核以上を持つ多核細胞)の数を計測した。TRAP染色は、TRAP染色液(0.01% Naphthol AS-MX phosphate(Sigma-Aldrich社)、0.06% Fast red violet LB salt(Sigma-Aldrich社)、50mM sodium tartrate、90mM sodium acetate、pH5.0)をウェルに添加し、室温で4時間以上インキュベートすることで行った。
【0016】
(実験結果)
図1に示す(コントロール:被験サンプルの調製に用いた容量と同じ容量のDMSOのみを添加)。
図1から明らかなように、いずれの抽出溶媒を用いて調製したクレソンの抽出物も、10μg/mLの濃度で破骨細胞分化抑制作用を発揮し、分化した破骨細胞の数を減少させた。抽出溶媒として含水エタノールを用いた場合、含水量が少ないほど破骨細胞分化抑制作用は強かった。
【0017】
製剤例1:錠剤
以下の成分組成からなる破骨細胞の分化を抑制するための錠剤を自体公知の方法で製造した。
クレソンのエタノール抽出物 1
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 19 (単位:重量%)
【0018】
製剤例2:ビスケット
以下の成分組成からなる破骨細胞の分化を抑制するためのビスケットを自体公知の方法で製造した。
クレソンのアセトン抽出物 1
薄力粉 32
全卵 16
バター 16
砂糖 24
水 10
ベーキングパウダー 1 (単位:重量%)
【0019】
製剤例3:ゼリー
以下の成分組成からなる破骨細胞の分化を抑制するためのゼリーを自体公知の方法で製造した。
クレソンの80%エタノール抽出物 0.01
ゲル化剤 1.3
砂糖 20
pH調整剤 2.5
水 76.19 (単位:重量%)