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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143332
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】コンロバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23Q 7/22 20060101AFI20220926BHJP
   F23D 14/06 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F23Q7/22 Z
F23D14/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043790
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AB01
3K017AD03
(57)【要約】
【課題】点火ヒータ(42)を用いて混合ガスに迅速に点火することが可能なコンロバーナ(1)を実現する。
【解決手段】バーナヘッド(10)の外周側面から離間した位置に点火ヒータを搭載し、点火ヒータに向き合う側のバーナヘッドの外周側面には、点火ヒータに対して左右の位置に点火炎口(15)を形成して、点火炎口から流出する混合ガスに、点火ヒータを用いて点火する。こうすれば、点火炎口からの混合ガスの流れで点火ヒータが冷やされることを抑制することができる。更に、点火ヒータの左右の点火炎口から混合ガスが供給されるので、点火ヒータの周辺に確実に混合ガスを供給することができる。その結果、点火ヒータを用いて混合ガスに迅速に点火することが可能となる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成される混合通路と、前記混合通路から前記混合ガスが流入する円筒形状のバーナボディと、バーナボディの上に載置されて、外周側面に複数の炎口が形成された円環形状のバーナヘッドと、前記バーナヘッドの前記外周側面から離間した位置に搭載された点火ヒータとを有するコンロバーナにおいて、
前記点火ヒータに向き合う側の前記バーナヘッドの外周側面には、点火用の前記混合ガスが流出する点火炎口が、前記点火ヒータに正対する位置にはなく前記点火ヒータに対して左右の位置に形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記バーナヘッドの外周側面には、前記点火ヒータに正対する位置に前記外周側面から前記バーナヘッド中心に向かって溝状の凹部が形成されており、
前記点火ヒータは、前記バーナヘッドに近接する側が前記凹部内に入り込んでおり、前記バーナヘッドから遠い側が前記凹部から突出した状態で搭載されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンロバーナにおいて、
前記左右の点火炎口は、前記点火ヒータに対して前記バーナヘッドの外周側面の左右の位置に、それぞれの点火炎口通路が開口することによって形成されており、
前記2つの点火炎口通路は、一方の前記点火炎口通路から見て他方の前記点火炎口通路に近い側の内側面が、少なくとも前記点火炎口から所定距離の範囲では、前記点火炎口に近付くほど前記点火ヒータの方向に傾斜した形状となっている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のコンロバーナにおいて、
前記点火ヒータに対して左右の点火炎口よりも上方の前記外周側面からは、前記点火ヒータの上方に向かって庇部が突設されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと空気との混合ガスに点火ヒータを用いて点火するコンロバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロにはコンロバーナが搭載されており、コンロバーナで燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって調理容器内の調理物を加熱調理している。また、コンロバーナは、燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成される混合通路や、混合通路で形成された混合ガスが流入する円筒状のバーナボディや、バーナボディの上に載置される円環形状のバーナヘッドを備えており、バーナヘッドの外周側面には複数の炎口が形成されている。バーナボディに流入した混合ガスは、バーナボディからバーナヘッドに流入した後、バーナヘッドの炎口から流出する。その混合ガスに点火することによって、混合ガスの燃焼が開始されるようになっている。
【0003】
ここで、炎口から流出する混合ガスに点火する方法としては、点火用の炎口(以下、点火炎口)の近くに点火ターゲットを突設させておき、点火プラグから点火ターゲットに向けて火花放電することによって、点火炎口から流出する混合ガスに点火する方法が広く用いられている。もっとも、この方法には、火花放電させる際に放電音が発生するという問題がある。また、毎回の火花放電で点火ターゲットの同じ位置に火花が飛ぶわけではないため、火花が飛ぶ位置によっては混合ガスに点火することができずに、点火し直さなければならない場合があるという問題もある。
【0004】
そこで、点火炎口を臨む位置に小さな点火ヒータを搭載しておき、この点火ヒータを高温に加熱して、点火炎口から点火ヒータに向けて混合ガスを流出させることによって、混合ガスに点火する方法が提案されている。この方法では火花放電させる必要が無いので放電音が発生することが無く、また、点火炎口に対する点火ヒータの位置が変化することもないので、点火炎口から流出した混合ガスに確実に点火することが可能となる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-163636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、点火炎口から流出する混合ガスに点火ヒータを用いて点火する従来のコンロバーナでは、点火炎口から流出した混合ガスによって点火ヒータが冷やされてしまうため、点火ヒータの温度が高温になりにくく、点火までに時間が掛かってしまうという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、点火ヒータを用いて混合ガスに迅速に点火することが可能なコンロバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成される混合通路と、前記混合通路から前記混合ガスが流入する円筒形状のバーナボディと、バーナボディの上に載置されて、外周側面に複数の炎口が形成された円環形状のバーナヘッドと、前記バーナヘッドの前記外周側面から離間した位置に搭載された点火ヒータとを有するコンロバーナにおいて、
前記点火ヒータに向き合う側の前記バーナヘッドの外周側面には、点火用の前記混合ガスが流出する点火炎口が、前記点火ヒータに正対する位置にはなく前記点火ヒータに対して左右の位置に形成されている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のコンロバーナにおいては、バーナヘッドの外周側面から離間した位置に点火ヒータが搭載されており、点火ヒータに向き合う側のバーナヘッドの外周側面には、点火ヒータに対して左右の位置に点火炎口が形成されている。但し、点火ヒータに対して正対する位置には点火炎口が形成されていない。そして、点火ヒータを高温に加熱して、点火炎口から流出する混合ガスに点火することによって、コンロバーナでの混合ガスの燃焼を開始する。
【0010】
こうすれば、点火ヒータに対して正対する位置には点火炎口が形成されていないので、点火炎口から流出した混合ガスが点火ヒータに直接あたることを軽減することができ、点火ヒータが混合ガスの流れによって冷やされることを抑制することができる。その一方で、点火ヒータに対して左右の位置に形成された点火炎口から混合ガスが流出するので、点火ヒータの周辺に確実に混合ガスを供給することができる。その結果、点火ヒータを用いて混合ガスに迅速に点火することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、バーナヘッドの外周側面に、外周側面が点火ヒータに正対する位置に外周側面からバーナヘッド中心に向かって溝状の凹部を形成しておいてもよい。そして、点火ヒータは、バーナヘッドに近接する側が凹部内に入り込んでいるが、バーナヘッドから遠い側は凹部から突出した状態となるようにしても良い。
【0012】
こうすれば、溝状の凹部に入り込んだ部分の点火ヒータは、点火炎口から流出する混合ガスの流れで冷やされることがないので高温に保っておくことができる。このため、点火ヒータの中で溝状の凹部から突出した部分が混合ガスの流れで冷やされた場合でも、溝状の凹部に入り込んだ部分から熱が供給されるため、温度の低下を抑制することができる。その結果、点火ヒータを用いて、迅速に且つ確実に、混合ガスに点火することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、2つの点火炎口は、点火ヒータに向き合う側のバーナヘッドの外周側面の左右の位置に、それぞれの点火炎口通路を開口させることによって形成しても良い。そして、2つの点火炎口通路の内側面は、一方の点火炎口通路から見て他方の点火炎口通路に近い側の内側面が、少なくとも点火炎口から所定距離の範囲では、点火炎口に近付くほど点火ヒータの方向に傾斜した形状に形成しておいてもよい。
【0014】
点火ヒータは2つの点火炎口の間に搭載されているから、こうすれば、点火炎口から流出する混合ガスの流れが点火ヒータの方向に導かれるので、点火ヒータの周辺の領域に混合ガスを確実に供給することができ、点火ヒータを用いて確実に且つ迅速に混合ガスに点火することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、点火ヒータに対して左右の位置に形成された点火炎口よりも上方の外周側面からは、点火ヒータの上方に向かって庇部を突設させても良い。
【0016】
こうすれば、点火炎口から流出した混合ガスの一部が庇部の下方で滞留するため、点火ヒータを高温に加熱することによって混合ガスに点火し易くなる。その結果、点火ヒータを用いて確実に且つ迅速に混合ガスに点火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例のコンロバーナ1の外観形状を示す斜視図である。
図2】本実施例のコンロバーナ1の構造を示す分解組立図である。
図3】本実施例のコンロバーナ1の点火部40の形状を示した説明図である。
図4】バーナヘッド10を持ち上げることによって、筒状壁10bの下端面に形成された炎口溝11cや、点火炎口溝15cや、垂下壁13や、溝部13cの形状を示した説明図である。
図5】バーナヘッド10を上方から見ることによって、点火炎口溝15cおよび溝部13cの形状や、点火炎口15と点火ヒータ42との位置関係を示した説明図である。
図6】本実施例のコンロバーナ1では点火ヒータ42を用いて迅速に且つ確実に混合ガスに点火することが可能な理由を説明する説明図である。
図7】点火炎口溝15cの他の態様についての説明図である。
図8】点火ヒータ42を通る位置でバーナヘッド10を縦方向に切断した時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施例のコンロバーナ1の外観形状を示した斜視図である。図1に示されるように、本実施例のコンロバーナ1は、円環形状に形成されて、外周側面に複数の炎口11が形成されたバーナヘッド10を備えており、それらの炎口11から燃料ガスと空気との混合ガスを流出させることによって、混合ガスを燃焼させるようになっている。また、バーナヘッド10の外周側面の一箇所からは庇部12が突設されており、庇部12の下方には、後述する点火部40が形成されている。点火部40には後述する点火ヒータが搭載されており、炎口11から流出した混合ガスに点火ヒータを用いて点火することによって、混合ガスの燃焼を開始する。
【0019】
図2は、本実施例のコンロバーナ1の構造を示す分解組立図である。図2に示されるように、本実施例のコンロバーナ1は、円環形状のバーナヘッド10と、バーナヘッド10よりも大径の円環形状に形成されたバーナリング20と、バーナ本体30とを備えている。バーナ本体30は、円筒形状のバーナボディ31と、混合通路32とを備えており、混合通路32の一端側はバーナボディ31に接続されていると共に、混合通路32の他端側は開口端32oとなっている。そして、開口端32oから混合通路32内に燃料ガスおよび空気を供給すると、混合通路32内で燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成され、その混合ガスがバーナボディ31内に流入する。
【0020】
バーナボディ31の上端には、幅の狭い円環形状の載置面31aが形成されており、この載置面31aの上にバーナヘッド10が載置される。このため、混合通路32からバーナボディ31に流入した混合ガスは、バーナボディ31からバーナヘッド10を経由して、バーナヘッド10の外周側面に形成された複数の炎口11から流出する。
【0021】
また、バーナボディ31には、上端側の一部分が側方から切り欠かれた状態で点火用凹部41が形成されている。点火用凹部41の底面41aは平坦な形状に形成されており、底面41aの中央の位置からは、断面が矩形形状の細長い点火ヒータ42が上方に向かって突出されている。更に、底面41aには、点火ヒータ42が突出する位置を円弧状に囲うようにして、防護壁43が上方に向けて突設されている。
【0022】
バーナリング20は大まかには円環形状の部材であり、部材の上面側には、半径方向外側に向かって下方に傾斜する傾斜面20aが形成されている。更に、傾斜面20aの半径方向内側は下方に向けて折り曲げられることによって、円筒形状の内周面20bが形成されている。内周面20bの内径はバーナボディ31の外径よりも少しだけ大きく設定されており、このため、バーナボディ31が内周面20bの内側に挿入されるようにして、バーナリング20をバーナボディ31に組付けると、バーナボディ31の上部がバーナリング20の傾斜面20aから突出した状態となる。また、バーナリング20は、傾斜面20aの一部が上方から平坦に凹まされることによって平坦部21が形成されており、バーナリング20をバーナボディ31に組み付ける際には、バーナボディ31の点火用凹部41に対して平坦部21を位置合わせした状態で組み付ける。
【0023】
バーナヘッド10は、中央に貫通穴10cが形成された円板形状の天井部10aと、天井部10aの外周部分から下方に向けて突設された円筒形状の筒状壁10bと、貫通穴10c下方に向けて、筒状壁10bよりも長く突設された円筒形状の内筒10dとを備えている。筒状壁10bの下端面には、複数の炎口溝11c(図3参照)が放射状に形成されており、筒状壁10bの外周側面には、これらの炎口溝11cが開口している。このため、バーナヘッド10をバーナボディ31の載置面31aの上に載置すると、筒状壁10bの下端面が載置面31aに当接して、筒状壁10bの炎口溝11cの下面側が載置面31aで塞がれた状態となる。その結果、炎口溝11cが筒状壁10bの外周側面に開口している部分に、炎口11が形成される(図1参照)。
【0024】
また、筒状壁10b上部の一箇所からは庇部12が突設されており、庇部12の下方では、筒状壁10bの下端面から2つの垂下壁13が下方に向けて突設されている。バーナボディ31の載置面31aの上にバーナヘッド10を載置する際には、バーナボディ31から突出している点火ヒータ42が、2つの垂下壁13の間に来るように位置合わせした状態で、バーナヘッド10を載置面31aの上に載置する。こうすることにより、バーナボディ31の点火用凹部41と、バーナヘッド10の庇部12との間に点火部40(図1参照)が形成される。
【0025】
図3は、図1中に示した矢印Pの方向からコンロバーナ1を見ることによって、点火部40の詳細な形状を示した説明図である。筒状壁10bの外周側面には複数の炎口11が形成されている。また、庇部12の下方の位置では、筒状壁10bの外周側面に2つの点火炎口15が形成されている。図示されるように本実施例の点火炎口15は、高さ寸法よりも幅寸法の方が大きな横長形状となっている。詳細には後述するが、本実施例の点火炎口15が横長形状となっているのは、点火ヒータ42を用いて迅速に且つ確実に、混合ガスに点火するためである。
【0026】
また、2つの点火炎口15は左右に並んで形成されており、2つの点火炎口15の間の筒状壁10bの下端面からは、2つの垂下壁13が下方に向かって突設されている。更に、2つの垂下壁13の間には、後述する溝部13cが形成されている(図4参照)。そしてバーナボディ31から突設された点火ヒータ42は(図2参照)、溝部13c内に挿入されるようになっている。また、点火ヒータ42の根元部分は、防護壁43によって円弧形状に囲われている(図2参照)。
【0027】
図4は、バーナヘッド10を持ち上げることによって、庇部12の下方での筒状壁10bの詳細な形状を示した説明図である。図示されるように、庇部12の下方の筒状壁10bの下端面には、2つの点火炎口溝15cが形成されている。このため、バーナボディ31の載置面31aの上にバーナヘッド10を載置すると、点火炎口溝15cが開口した部分に点火炎口15が形成される(図3参照)。また、2つの垂下壁13は奥側が繋がっており、このため2つの垂下壁13の間には溝部13cが形成されている。この溝部13cの上端は、庇部12の下面側にまで達している。バーナヘッド10をバーナボディ31の上に載置する際には、バーナボディ31から突設された点火ヒータ42が、溝部13c内に挿入されるようにして、バーナヘッド10を載置する。
【0028】
図5は、バーナボディ31の上に載置された状態のバーナヘッド10を上方から見ることによって、点火炎口溝15cや垂下壁13や溝部13cの形状や、点火ヒータ42と点火炎口15と炎口11との位置関係を示した説明図である。図5中で斜線を付して示した部分は、バーナヘッド10の筒状壁10bの部分を表している。前述したように、筒状壁10bの下端面には複数の炎口溝11cが放射状に形成されており、炎口溝11cが筒状壁10bの外周側面に開口する位置には炎口11が形成されている。尚、バーナヘッド10がバーナボディ31の上に載置されると、点火炎口溝15cの部分は、点火用の混合ガスが通過する点火炎口通路15dとなる。図5中で点火炎口溝15cが「15c(15d)」と付番されているのは、点火炎口溝15cの部分が点火炎口通路15dとなることを表している。
【0029】
また、庇部12の下方では筒状壁10bが半径方向内側に奥まった形状となっており、奥まった部分の筒状壁10bの下面からは下方に向けて2つの垂下壁13が形成されている。更に、2つの垂下壁13の間には溝部13cが形成されており、溝部13c内には点火ヒータ42が挿入されている。図示されるように、点火ヒータ42の断面は矩形形状となっており、矩形形状の長手方向はバーナヘッド10の半径方向となっている。更に、点火ヒータ42と溝部13cとの位置関係は、点火ヒータ42の矩形断面の長手方向の半分が溝部13c内に収容されており、残りの半分は溝部13cから突出した状態となっている。但し、溝部13cから突出した部分の点火ヒータ42も、複数の炎口11が開口している円周面(図5中では一点鎖線で表示)よりは内側となっている。尚、本実施例の溝部13cは、本発明における「溝状の凹部」に対応する。
【0030】
また、点火ヒータ42から見て垂下壁13の外側には、点火炎口溝15cが形成されている。図示されるように、点火炎口溝15cの左右の内側壁15a,15bのうちで、点火ヒータ42から遠い側の内側壁15aは、他の炎口溝11cの側壁と同様に、バーナヘッド10の中心に対して放射状に(すなわち半径方向に)形成されているが、点火ヒータ42に近い側の内側壁15bは、バーナヘッド10の半径方向外側に行くほど点火ヒータ42に近付く方向に傾斜した状態で形成されている。このため点火炎口溝15cは、点火炎口15に近くなるほど、点火ヒータ42の方向に向かって横幅が広がった形状となっている。尚、本実施例の内側壁15a,15bは、本発明における「点火炎口通路の内側面」に対応する。
【0031】
本実施例のコンロバーナ1は、点火ヒータ42に対して点火炎口15が以上のような位置関係に形成されているので、点火炎口15から流出する混合ガスに点火ヒータ42を用いて点火するにも拘わらず、混合ガスに迅速に点火することが可能となる。以下では、この理由について説明する。
【0032】
図6は、点火炎口15から混合ガスが流出する様子を概念的に示した説明図である。図6中で細かい斜線を付した部分は、バーナヘッド10の筒状壁10bを表している。また、図6中に示した太い実線の矢印は、点火炎口溝15cを通って点火炎口15(図5参照)から流出する混合ガスの流れを概念的に表している。図6中でも点火炎口溝15cが「15c(15d)」と付番されているのは、点火炎口溝15cの部分が点火炎口通路15dとなることを表している。更に、図6中に示した太い破線の矢印は、炎口溝11cを通って炎口11(図5参照)から流出する混合ガスの流れを概念的に表している。前述したように、炎口溝11cはバーナヘッド10の中心に対して放射状に(すなわち半径方向に)形成されているので、炎口11から流出する混合ガスも、破線の矢印で示したように、バーナヘッド10の中心に対して半径方向に流出する。
【0033】
これに対して点火炎口15(図5参照)から流出する混合ガスの流れは、炎口11から流出する混合ガスとは若干異なった流れとなる。前述したように、点火炎口溝15cの左右の内側壁15a,15bのうち、点火ヒータ42から遠い側の内側壁15aは、他の炎口溝11cと同様に、バーナヘッド10の中心に対して半径方向に形成されている。このため、点火炎口15の中で点火ヒータ42から遠い部分では、バーナヘッド10の中心に対して半径方向に混合ガスが流出する。
【0034】
その一方で、点火ヒータ42に近い側の内側壁15bは、バーナヘッド10の半径方向外側に行くほど、点火ヒータ42に近付く方向に傾斜している。このため点火炎口溝15cの中で内側壁15bに近い側を流れる混合ガスは、点火ヒータ42に近付く方向に傾いた流れとなる。加えて、2つの内側壁15bの間の溝部13cの部分からは混合ガスが流出しないので、点火炎口15の中で内側壁15aに近い側から流出した混合ガスの流れは、更に点火ヒータ42の方向に曲げられて、点火ヒータ42の周辺の領域に向かって流れていくことになる。
【0035】
また、点火炎口15の中で点火ヒータ42から遠い側(すなわち、内側壁15aの側)から流出する混合ガスは、バーナヘッド10の中心に対して半径方向に真直ぐに流れるのに対して、点火炎口15の中で点火ヒータ42に近い側(すなわち、内側壁15b側)から流出する混合ガスは、内側壁15bに近い位置ほど、点火ヒータ42の方向に流れの向きが曲げられる。図6に示した例では、内側壁15bに最も近い位置に表示された太線の矢印は、点火ヒータ42の方向に大きく曲げられているのに対し、内側壁15bから離れた位置の矢印は、曲がりの大きさが小さくなっている。このように、点火炎口15から流出する混合ガスの流れは、点火ヒータ42に近い位置ほど流れの方向が曲げられる結果、流れが広い範囲に拡散するので、混合ガスの流れが減速することになる。
【0036】
以上のように、本実施例のコンロバーナ1では、点火炎口15から流出した混合ガスの一部(点火ヒータ42に近い側から流出した混合ガス)を点火ヒータ42の周辺に向かって、ゆっくりした速度で供給することができる。その結果、点火炎口15から流出した混合ガスで点火ヒータ42が冷やされることを抑制することができるので、点火ヒータ42を用いて混合ガスに迅速に点火することが可能となる。
【0037】
また、点火ヒータ42の断面形状は、バーナヘッド10の半径方向を長手方向とする矩形形状となっており、長手方向の半分は溝部13c内に入り込んだ状態となっている。このため、溝部13c内に入り込んだ部分の点火ヒータ42には、点火炎口15からの混合ガスの流れによって冷やされることがない。その結果、この部分の点火ヒータ42を高温に保っておくことができるので、迅速に且つ確実に、混合ガスに点火することが可能となる。
【0038】
加えて、点火炎口15から流出する混合ガスの流量は、点火ヒータ42に近い側では小さいが、点火ヒータ42から遠くなるほど大きくなっている。このため、点火ヒータ42で点火されて生じた炎は、点火炎口15内を伝播することによって大きな炎となるため、炎口11から流出する混合ガスに確実に火移りさせることが可能となる。
【0039】
また、点火が完了した後は、コンロバーナ1のユーザによって、小火状態まで火力が絞られることがある。このような場合、点火炎口15から流出する混合ガスの流量が小さくなり、これに伴って、点火炎口15の中の点火ヒータ42に近い側から流出する混合ガスの流量は更に小さくなる。しかし、点火炎口15の中の点火ヒータ42から遠い側での流量は、点火ヒータ42に近い側での流量よりも大きいので、小火状態まで火力が絞られてもある程度の流量を確保することができる。このため、点火完了後にコンロバーナ1の火力が小火状態まで絞られた場合でも、点火炎口15の炎が消えてしまう事態を防止することが可能となる。
【0040】
尚、図5あるいは図6に示した例では、点火炎口溝15cの点火ヒータ42に近い側の内側壁15bは、内側壁15bの全長に亘る範囲が、点火ヒータ42に近付く方向に傾斜しているものとして説明した。しかし、内側壁15bは、必ずしも全長に亘る範囲が、点火ヒータ42に近付く方向に傾斜している必要はない。例えば、図7に例示したように、点火炎口15から遠い側では、バーナヘッド10の中心に対して放射状に(すなわち半径方向に)形成されているが、点火炎口15に近い側の内側壁15bは、点火ヒータ42に近付く方向に傾斜するようにしても良い。
【0041】
こうすると、点火炎口15から遠い部分の内側壁15bと、その部分の内側壁15bと向き合う内側壁15aとによって、点火炎口溝15cを通過する混合ガスの主流が形成される。その後、点火炎口15に近い部分の内側壁15bが点火ヒータ42に近付く方向に傾斜することによって、混合ガスの一部が、点火ヒータ42に近付く方向に流れの向きが曲げられて、点火炎口15に向かって流れるに従って点火炎口溝15c内で拡散して減速する。このため、点火炎口15からは十分に減速した状態で混合ガスを流出させることができるので、点火ヒータ42が冷やされる事態をより一層抑制することが可能となる。
【0042】
また、図3を用いて前述したように、本実施例のコンロバーナ1では、点火炎口15および点火ヒータ42の上方には庇部12が突設されている。この庇部12も、点火ヒータ42が混合ガスに確実に点火できるようにする機能を有している。以下では、この点について説明する。
【0043】
図8は、点火ヒータ42の部分でコンロバーナ1を縦方向に切断した時の断面図である。図示されるように、点火炎口溝15cはバーナヘッド10の半径方向外側に向かって上向きに形成されており、従って、点火炎口15から流出する混合ガスは、上向きに流出することになる。そして、点火炎口15の上方には庇部12が突設されており(図3参照)、庇部12の底面側には凹部12aが形成されている。このため、点火炎口15から流出した混合ガスは庇部12の底面側に滞留することになる。そして、点火ヒータ42は、庇部12のすぐ下の位置まで突設されている。その結果、庇部12の底面側に滞留している混合ガスに、点火ヒータ42を用いて確実に点火することが可能となる。
【0044】
また、点火炎口通路15dの底面15eは、点火炎口15の付近では水平に形成されており、点火炎口15から出た部分は、下方に広い空間が形成されている。このため、図8中で太い破線の矢印で示したように、点火炎口15で形成された炎に対して下方から二次空気を供給することができるので、混合ガスを安定して燃焼させることが可能となる。
【0045】
以上、本実施例のコンロバーナ1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…コンロバーナ、 10…バーナヘッド、 10a…天井部、
10b…筒状壁、 10c…貫通穴、 10d…内筒、 11…炎口、
11c…炎口溝、 12…庇部、 12a…凹部、 13…垂下壁、
13c…溝部、 15…点火炎口、 15a…内側壁15b…側壁、
15c…点火炎口溝、 15d…点火炎口通路、 15e…底面、
20…バーナリング、 20a…傾斜面、 20b…内周面、
21…平坦部、 30…バーナ本体、 31…バーナボディ、
31a…載置面、 32…混合通路、 32o…開口端、 40…点火部、
41…点火用凹部、 41a…底面、 42…点火ヒータ、
43…防護壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8