IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特開2022-143334セラミック電子部品およびその製造方法
<>
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図1
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図2
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図3
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図4
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図5
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図6
  • 特開-セラミック電子部品およびその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143334
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 201D
H01G4/30 201Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043794
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】末正 里樹
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AH03
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE37
5E082EE50
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
(57)【要約】
【課題】 セラミック電子部品の信頼性を向上させること。
【解決手段】 セラミック電子部品は、BaおよびTiを含む複数の誘電体層と、NiおよびSnを含む複数の内部電極層と、が交互に積層された積層構造を備え、前記複数の内部電極層の少なくともいずれか1層の内部電極層において、前記積層構造の積層方向を含む断面において途切れる不連続部が形成されており、前記不連続部に対して露出する表面に、Sn濃度が前記1層の内部電極層の平均Sn濃度よりも高いSn高濃度部が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaおよびTiを含む複数の誘電体層と、NiおよびSnを含む複数の内部電極層と、が交互に積層された積層構造を備え、
前記複数の内部電極層の少なくともいずれか1層の内部電極層において、前記積層構造の積層方向を含む断面において途切れる不連続部が形成されており、前記不連続部に対して露出する表面に、Sn濃度が前記1層の内部電極層の平均Sn濃度よりも高いSn高濃度部が形成されていることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記Sn高濃度部は、前記不連続部に対して露出する表面から、前記1層の内部電極層に隣接する誘電体層との界面まで延在していることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記1層の内部電極層に、2以上の前記不連続部が形成されており、各不連続部から延びる前記Sn高濃度部は、前記1層の内部電極層に隣接する誘電体層との界面において、互いに離間していることを特徴とする請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記1層の内部電極層において、Niに対するSn濃度が0.1at%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記1層の内部電極層の厚みは、1μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
BaおよびTiを含む誘電体グリーンシート上に、NiとSnとを含む内部電極パターンをスパッタリングによって形成することによって積層単位を形成する工程と、
複数の前記積層単位を積層することによって積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成し、いずれかの内部電極パターンから得られる内部電極層において、前記積層単位の積層方向を含む断面において途切れる不連続部を形成し、前記不連続部に対して露出する表面に、Sn濃度が当該内部電極層の平均Sn濃度よりも高いSn高濃度部を形成する工程と、を含むことを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載・携帯端末等において、高容量・高信頼性を有するハイエンド積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品(例えば、特許文献1参照)の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/016309号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Samantaray, Malay M., et al Journal of the American Ceramic Society 95 1 (2012):264-268
【非特許文献2】Hiroshi Kishi et al 2003 Jpn. J. Appl. Phys. 42 1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型かつ高い容量値を実現するために、近年ではセラミック電子部品の内部電極層および誘電体層の薄膜化が進んでいる。これにより大きな容量値を得られる一方、内部電極層に生じる途切れによる絶縁抵抗の低下や(例えば、非特許文献1参照)、誘電体層の絶縁性が低下する問題が生じている。この課題に対して、例えば、誘電体材料に異種元素を固溶させ、誘電体層の絶縁性を向上させる方法がとられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記技術では、内部電極層の途切れに起因した信頼性の劣化は解決されない。また、一般に絶縁抵抗の配分において、内部電極層と誘電体層との界面抵抗成分は、誘電体層の粒界抵抗成分および粒内抵抗成分より大きいため、誘電体層がより薄層化した場合に粒界・粒内抵抗成分がより小さくなることを考慮すると、上記技術では不十分と思われる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、セラミック電子部品の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセラミック電子部品はBaおよびTiを含む複数の誘電体層と、NiおよびSnを含む複数の内部電極層と、が交互に積層された積層構造を備え、前記複数の内部電極層の少なくともいずれか1層の内部電極層において、前記積層構造の積層方向を含む断面において途切れる不連続部が形成されており、前記不連続部に対して露出する表面に、Sn濃度が前記1層の内部電極層の平均Sn濃度よりも高いSn高濃度部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記Sn高濃度部は、前記不連続部に対して露出する表面から、前記1層の内部電極層に隣接する誘電体層との界面まで延在していてもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記1層の内部電極層に、2以上の前記不連続部が形成されており、各不連続部から延びる前記Sn高濃度部は、前記1層の内部電極層に隣接する誘電体層との界面において、互いに離間していてもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品において、前記1層の内部電極層において、Niに対するSn濃度が0.1at%以下であってもよい。
【0012】
上記セラミック電子部品において、前記1層の内部電極層の厚みは、1μm以下であってもよい。
【0013】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、BaおよびTiを含む誘電体グリーンシート上に、NiとSnとを含む内部電極パターンをスパッタリングによって形成することによって積層単位を形成する工程と、複数の前記積層単位を積層することによって積層体を形成する工程と、前記積層体を焼成し、いずれかの内部電極パターンから得られる内部電極層において、前記積層単位の積層方向を含む断面において途切れる不連続部を形成し、前記不連続部に対して露出する表面に、Sn濃度が当該内部電極層の平均Sn濃度よりも高いSn高濃度部を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】内部電極層の不連続部を例示する図である。
図5】(a)および(b)はSn高濃度部を例示する図である。
図6】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図7】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0017】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1のB-B線断面図である。図1図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。なお、図1において、X軸方向(第1方向)は、積層チップ10の長さ方向であって、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第2方向)は、内部電極層の幅方向である。Z軸方向は、積層方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0018】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む3層以上の内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0019】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0020】
誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、Aサイトに少なくともバリウム(Ba)を含み、Bサイトに少なくともチタン(Ti)を含むものを用いる。例えば、BaTiO(チタン酸バリウム)、ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。1層あたりの誘電体層11の厚みは、例えば、0.05μm以上5μm以下であり、または0.1μm以上3μm以下であり、または0.2μm以上1μm以下である。
【0021】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0022】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0023】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0024】
誘電体層11は、例えば、セラミック材料粉末を含む誘電体材料を焼成することによって形成することができる。内部電極層12は、例えば、金属粉末を含むペースト材料を焼成することによって形成することができる。これらの焼成の過程で、内部電極層12内に、図4で例示するように、部分的に途切れている不連続部17が生じる。なお、図4はXZ平面の断面図を表しているため、内部電極層12が不連続部17によってX軸方向で複数に分断されているように見えるが、Y軸の異なる位置での断面では接続されていることもある。例えば、不連続部17は、Z軸方向から見た平面視では、孔形状となっている。不連続部17では、空隙になっている場合もあれば、誘電体層11の誘電体材料で埋まっている場合もある。
【0025】
内部電極層12の不連続部17では、電界集中が生じやすい。電界集中箇所では絶縁抵抗が低下しやすくなる。その結果、信頼性が低下するおそれがある。そこで、例えば、誘電体材料に異種元素を固溶させ、誘電体層11の絶縁性を向上させることが考えられる。しかしながら、この手法では、内部電極層12の不連続部17に起因した信頼性の劣化は解決されない。また、絶縁抵抗の配分において、内部電極層12と誘電体層11との界面>誘電体層11の粒界・粒内であるため、誘電体層11が薄層化されて粒界・粒内抵抗成分がより小さくなることを考慮すると、上記手法では不十分と思われる。
【0026】
そこで、本実施形態においては、内部電極層12は、ニッケル(Ni)を主成分とし、スズ(Sn)を含んでいる。内部電極層12がNiおよびSnを含むことで、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性を向上させることができる。例えば、NiとSnとが合金化することで、内部電極層12と誘電体層11との界面の状態が変化することで、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性が向上し、信頼性が向上すると考えられる。
【0027】
さらに、少なくともいずれか1層の内部電極層12において、不連続部17の近傍のSn濃度を高濃度化する。具体的には、図5(a)で例示するように、少なくともいずれかの内部電極層12において、不連続部17に対して露出する表面(不連続部17によって内部電極層12に形成される孔の内壁)に、Sn高濃度部18が設けられている。Sn高濃度部18とは、内部電極層12の1層全体の平均Sn濃度よりも大きいSn濃度を有する部分である。
【0028】
不連続部17に対して露出する表面に偏析した高濃度のSnの作用により、不連続部17の近傍の内部電極層12と誘電体層11との界面において、電位障壁(ショットキー障壁)が高められ、絶縁抵抗が高まる。それにより、不連続部17の近傍の電界集中に起因する絶縁抵抗劣化が抑制される。さらに、不連続部17近傍のTiイオンとSnイオンとが置換することにより、不連続部17の近傍の酸素欠陥生成エネルギが上がり、Niが誘電体層11に拡散する場合よりも不連続部17近傍の酸素欠陥濃度が低下し、絶縁抵抗が増加する。以上のことから、積層セラミックコンデンサ100の信頼性が向上する。
【0029】
Sn高濃度部18による絶縁性向上効果を高める観点から、Sn高濃度部18は、図5(b)で例示するように、不連続部17に対して露出する表面から、内部電極層12の上面および下面の少なくともいずれか一方にかけて連続して設けられていることが好ましい。すなわち、Sn高濃度部18は、不連続部17に対して露出する表面から、隣接する誘電体層11との界面まで延在していることが好ましい。
【0030】
一方、Sn高濃度部18が内部電極層12の上面の全体および下面の全体を覆っていると、界面剥離などによる故障のおそれがある。したがって、内部電極層12の各不連続部17から延びるSn高濃度部18は、隣接する誘電体層11との界面において、互いに離間していることが好ましい。
【0031】
なお、Sn高濃度部18におけるSn濃度は、例えば、内部電極層12の1層あたりの平均Sn濃度の2倍以上である。例えば、Sn高濃度部18におけるSn濃度は、内部電極層12の1層あたりの平均Sn濃度が0.1at%であれば、Sn高濃度部18におけるNiに対して0.2at%以上である。
【0032】
内部電極層12において、Sn量が多すぎると、内部電極の連続性が低下し容量低下のおそれがある。そこで、内部電極層12において、Sn量に上限を設けることが好ましい。例えば、内部電極層12の1層全体において、Niに対するSn濃度は、0.1at%以下であることが好ましく、0.07at%以下であることがより好ましく、0.05at%以下であることがさらに好ましい。なお、Niに対するSn濃度とは、Ni+Snを100at%とした場合のSn量のことである。
【0033】
各内部電極層12の厚みは、例えば、0.01μm以上5μm以下であり、または0.05μm以上3μm以下であり、または0.1μm以上1μm以下である。例えば、内部電極層12の厚みが1μm以下であると、焼成時の断裂によって連続率が低下しやすいため、本実施形態に係る構成の効果が顕著に発揮されるようになる。積層セラミックコンデンサ100において、内部電極層12の積層数は、例えば、10から5000であり、50から4000であり、100から3000である。また、Sn高濃度部18を備える内部電極層12は、後述する製造方法のように、スパッタリングでの成膜後に焼成工程を経ることによって得られるため、本実施形態に係る内部電極層12は、セラミック粒子の共材を含んでいない。
【0034】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図6は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0035】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0036】
得られたセラミック材料粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0037】
例えば、セラミック材料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料粉末を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料粉末について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0038】
(積層工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材51上に誘電体グリーンシート52を塗工して乾燥させる。基材51は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0039】
次に、図7(a)で例示するように、誘電体グリーンシート52上に、内部電極パターン53を成膜する。図7(a)では、一例として、誘電体グリーンシート52上に4層の内部電極パターン53が所定の間隔を空けて成膜されている。成膜手法は、スパッタリングである。スパッタリングのターゲットには、NiSn合金を用いることができる。または、NiおよびSnの個別ターゲットを用いた同時スパッタリングを行なってもよい。内部電極パターン53が成膜された誘電体グリーンシート52を、積層単位とする。
【0040】
次に、誘電体グリーンシート52を基材51から剥がしつつ、図7(b)で例示するように、積層単位を積層する。次に、積層単位が積層されることで得られた積層体の上下にカバーシートを所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。図7(b)の例では、点線に沿ってカットする。カバーシートは、誘電体グリーンシート52と同じ成分であってもよく、添加化合物が異なっていてもよい。
【0041】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0042】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0043】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0044】
本実施形態に係る製造方法によれば、スパッタリングによって、NiおよびSnを含む内部電極パターン53が形成される。ペースト材料を焼成する場合と比較して、スパッタリングによって成膜された内部電極パターン53が焼成工程を経ると、不連続部17が生じやすくなる。Niと同時にスパッタリングされたSnはBaTiO系材料に拡散しやすいが、不連続部17ではBaTiO系材料が少なくなって拡散駆動力が不足するため、不連続部17にSnが残留するようになる。その結果、図5(a)または図5(b)で説明したように、不連続部17近傍にSn高濃度部18が形成されるようになる。また、ペースト材料を焼成する場合に形成される不連続部と比較して、スパッタ膜を焼成する場合に形成される不連続部にはSnが残留しやすい。これは、ペースト材料に含まれる共材が、Snの誘電体層11への拡散を抑制するためと考えられる。
【0045】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン
16 サイドマージン
17 不連続部
18 Sn高濃度部
20a,20b 外部電極
51 基材
52 誘電体グリーンシート
53 内部電極パターン
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7