(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014335
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電子カルテシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20220112BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20220112BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220112BHJP
G10L 13/10 20130101ALI20220112BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20220112BHJP
【FI】
G16H10/60
G06F3/16 690
G06F3/16 540
G06F3/01 510
G10L13/10 114
G16Y10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116610
(22)【出願日】2020-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (証明書1)ウェブサイトでの公開(令和2年1月6日公開 https://www.microsoft.com/ja-jp/p/onerobo/9n5blm2q71s0?rtc=1を含む全7件) (証明書2)製品デモによる公開(令和2年1月20日付高柴歯科での公開を含む全12件) (証明書3)製品モニター依頼に基づく公開(令和2年1月6日付 高澤歯科クリニックでの公開を含む全2件) (証明書4)令和2年2月21日~2月23日公開 内覧会での公開 公開場所:きぬがさデンタルクリニック (証明書5)令和2年1月12日~1月13日公開 横浜デンタルショー運営委員会主催「第48回横浜デンタルショー」
(71)【出願人】
【識別番号】507220361
【氏名又は名称】株式会社オプテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 さおり
【テーマコード(参考)】
5E555
5L099
【Fターム(参考)】
5E555AA47
5E555AA71
5E555AA76
5E555BA22
5E555BA41
5E555BB22
5E555BC01
5E555BE08
5E555CA42
5E555CB48
5E555DA23
5E555DD01
5E555EA05
5E555EA09
5E555FA00
5L099AA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の年齢等に応じて案内音声を適切に調整することが可能な電子カルテシステムを提供する。
【解決手段】電子カルテシステム101において、電子カルテサーバ108は、患者IDをエンコードした二次元コードが印刷された診察券を二次元コードリーダ103で読み取り、患者IDを取得すると、患者の年齢を算出する。スピーカ109を内蔵する人型ロボット107は、電子カルテサーバから送信される発話命令データを読み込み、発話命令データに含まれる文章を読み上げる合成音声を発する。そして人型ロボット107は、発話を行うための患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、普通の発話速度で案内音声を再生する。患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、普通よりも遅い発話速度で案内音声を再生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を一意に識別するための患者IDが格納される患者IDフィールドと、前記患者IDに対応する前記患者の氏名の読みがなが格納されるカナ氏名フィールドと、前記患者の生年月日が格納される生年月日フィールドとを有するカルテデータベースと、
前記患者が所持する、前記患者IDが記録された記録媒体から前記患者IDを読み取る患者ID読み取り装置と、
前記患者に対して案内音声を聞かせるための発話テキストを生成する発話テキスト生成処理部と、
前記カルテデータベースを前記患者IDで検索して、前記患者の前記カナ氏名、前記生年月日を取得する入出力制御部と、
前記入出力制御部が取得した前記患者の前記生年月日から前記患者の年齢を算出する患者年齢演算処理部と、
前記患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれるか否かを判定し、前記患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれる場合には前記発話テキストに標準の発話速度の値を付加した発話命令データを生成し、前記患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれない場合には前記発話テキストに前記標準の発話速度より遅い発話速度の値を付加した発話命令データを生成する、発話命令生成処理部と、
前記発話命令データに基づいて、前記発話速度に従う合成音声データを生成する音声合成処理部と
を具備する、電子カルテシステム。
【請求項2】
更に、
前記患者が医院に来院した当日における、前記患者に対して実施する予定の処置を示す情報である今回処置が格納される今回処置フィールドと、前記音声合成処理部が前記発話命令データを読み込んで音声合成処理を行う際の、合成音声の音の高さを示す情報である音程が格納される音程フィールドとを有する音程テーブルと
を具備し、
前記カルテデータベースは更に、前記今回処置フィールドを有し、
前記入出力制御部は、前記カルテデータベースの前記今回処置で前記音程テーブルを検索して前記音程を取得し、前記発話テキストに前記音程の値を付加した発話命令データを生成し、
前記音声合成処理部は前記音程に従う合成音声データを生成する、
請求項1に記載の電子カルテシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に歯科医院において運用される、電子カルテシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、情報通信技術の発達により、様々な業務支援システムがエンドユーザへ安価に提供できるに至っている。このような実情に鑑み、出願人は、主に歯科医院向けの電子カルテシステムを開発、販売している。紙ベースのカルテと比較して、電子カルテシステムは記録する条件に一定のルールを設けることで、カルテの品質を向上させる効果がある。カルテの記載内容の品質を向上させることは、医療ミスの低減、医療内容の質の向上にも繋がる。特に歯科医院の場合、歯の数が多いため、患者の歯の一本一本の状態を適切に管理しなければならない。したがって、歯科医院の診療内容はデータベースとの親和性が高く、歯科医院が電子カルテシステムを導入することによってもたらされるメリットは大きい。
一例として、電子カルテ装置の先行技術文献を特許文献1に示す。特許文献1には、カルテ作成時における医師の操作負担を低減する電子カルテ装置が開示されている。
特許文献2には、本出願人による、受付業務の機械的作業を遂行できる電子カルテシステムが開示されている。
なお、本明細書において、診療情報とは、疾患と診療に関する全ての情報を指す。すなわち、カルテ、衛生士業務記録簿、歯周検査記録表等に記載される全ての情報を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-119863号公報
【特許文献2】特開2019-53614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの歯科医院は個人経営である。歯科医師が歯科医院の運営を兼任し、歯科衛生士を雇用する。中には受付業務を専門に行うスタッフを雇用している歯科医院も存在するが、あまり多くはない。人件費の関係上、歯科衛生士が受付業務を兼務するケースを多々見受けられる。しかし、歯科衛生士の業務は煩雑であり、歯科衛生士の業務以外に受付業務を行うことになるとその労務負担は極めて大きなものとなる。
出願人は係る課題を解決すべく、特許文献2に示す、主に医療分野における受付業務に関する作業を機械的に遂行することが可能な電子カルテシステムを開発した。
【0005】
特許文献2に開示する電子カルテシステムでは、人型ロボットが音声合成処理部を内蔵しており、患者に対して所定の案内音声を発する。この案内音声は、幼い児童や後期高齢者にとって聞き取り難い場合がある。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、患者の年齢等に応じて案内音声を適切に調整することが可能な電子カルテシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電子カルテシステムは、患者を一意に識別するための患者IDが格納される患者IDフィールドと、患者IDに対応する患者の氏名の読みがなが格納されるカナ氏名フィールドと、患者の生年月日が格納される生年月日フィールドとを有するカルテデータベースと、患者が所持する、患者IDが記録された記録媒体から患者IDを読み取る患者ID読み取り装置と、患者に対して案内音声を聞かせるための発話テキストを生成する発話テキスト生成処理部と、カルテデータベースを患者IDで検索して、患者のカナ氏名、生年月日を取得する入出力制御部と、入出力制御部が取得した患者の生年月日から患者の年齢を算出する患者年齢演算処理部とを具備する。更に、患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれるか否かを判定し、患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれる場合には発話テキストに標準の発話速度の値を付加した発話命令データを生成し、患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれない場合には発話テキストに標準の発話速度より遅い発話速度の値を付加した発話命令データを生成する、発話命令生成処理部と、発話命令データに基づいて、発話速度に従う合成音声データを生成する音声合成処理部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、患者の年齢等に応じて案内音声を適切に調整することが可能な電子カルテシステムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子カルテシステムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】電子カルテシステムの構成要素とその接続関係を説明する概略図である。
【
図3】タブレットPCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】人型ロボットのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】電子カルテサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】電子カルテサーバ及び人型ロボットのソフトウェア機能を示すブロック図である。
【
図7】カルテデータベースと問診データベースに含まれるテーブル、及び音程テーブルのフィールド構成を示す表である。
【
図8】電子カルテサーバの受付処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態の変形例に係る電子カルテシステムの外観図と、タブレットPCの表示状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、歯科医院の受付業務を分析した。すると、歯科医院の受付業務は、その多くが再診患者に対する応対であること、そして患者に対する応対は、定型的な応対内容であることがわかった。定型的な応対内容は、機械によって代替することが可能である。そこで、発明者らはこの患者に対する定型的な応対業務を、電子カルテシステムで実現することを検討し、これを実現するに至った。
【0011】
これより説明する実施形態に係る電子カルテシステムは、歯科医院の受付業務を、人型ロボットまたはパソコンやタブレット等に表示するアバターで遂行する。
電子カルテシステムの電子カルテサーバは、患者IDをエンコードした二次元コードが印刷された診察券を二次元コードリーダで読み取ると、再診患者が来院したことを知り、同時に患者IDを取得する。
【0012】
電子カルテサーバは、二次元コードリーダから取得した患者IDでカルテデータベースを検索する。そして、来院した患者が再診であるか、再初診であるかを判定する。
再診患者であれば、再診患者の当日における診療箇所を取得する。次に、人型ロボットの腕を稼働させて、再診患者の当日における診療箇所を、人型ロボットの腕で表現する。
再初診患者であれば、再初診に必要な問診を遂行する。
【0013】
本発明の実施形態に係る電子カルテシステムでは、患者IDをエンコードした二次元コードが印刷された診察券を二次元コードリーダで読み取り、患者IDを取得した直後、二次元コードリーダから取得した患者IDでカルテデータベースを検索する。そして、患者の年齢が所定の年齢範囲、例えば9歳以上69歳以下であるか否かを判定する。
患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、普通の発話速度となるように音声合成を行い、人型ロボットまたはアバターに発話させて、患者に案内音声を聞かせる。
【0014】
患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、普通よりも遅い発話速度となるように音声合成を行い、人型ロボットまたはアバターに発話させて、患者に案内音声を聞かせる。
なお、以下に記す本発明の実施形態では歯科医院を例に説明するが、本発明の実施形態は歯科医院に限定されない。すなわち、本発明は受付や問診業務を伴う他の医療分野においても適用可能な発明である。
【0015】
[電子カルテシステム101:全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る電子カルテシステム101の全体構成を示す概略図である。
歯科医院の受付窓口102には、図示しない診察券に印刷されたQRコード(登録商標)
等の二次元コードを読み取る二次元コードリーダ103が設置されている。非常駐の受付担当者104は、受付窓口102にて患者に対する応対を行う。歯科医院には、受付を専門とする担当者がいない代わりに、患者の呼び出しを受けて歯科衛生士が非常駐の受付担当者104として受付業務を遂行する。
受付窓口102には受付担当者104が患者情報等の参照や登録に用いる、パソコンよりなる端末装置105が設置されている。また、初診の患者に対して問診を行うためのタッチパネルディスプレイを装備するタブレットPC106も設置されている。
【0016】
受付窓口102には更に、人型ロボット107が設置されている。人型ロボット107は、内蔵するモータ(
図4参照)を駆動して、両腕を動かすことが可能である。また、この人型ロボット107は電子カルテサーバ108等から送信される発話命令データを読み込み、発話命令データに含まれる文章を読み上げる合成音声を発する発話装置としての機能を有する。そして人型ロボット107は、発話を行うためのスピーカ109も内蔵する。人型ロボット107は例えば、ヴイストン株式会社のSota(登録商標)が利用可能である。なお、人型ロボット107の採用は、あくまでも患者に対する視覚的な親しみやすさを考慮したものであるため、必ずしも人型ロボット107でなくともよい。例えば、動物のぬいぐるみ等でもよい。
【0017】
既に当該歯科医院の診察券を所持している再診患者及び再初診患者の場合、二次元コードリーダ103で診察券に印刷されている二次元コードを読み取ることで、電子カルテサーバ108は患者を特定することが可能になる。初診の患者の場合は、受付担当者104が患者から保険証を受け取って、電子カルテサーバ108に患者の登録を行う。その後、電子カルテサーバ108は新規に患者IDを発行し、患者IDをエンコードした二次元コードが印刷された診察券を図示しないプリンタで作成する。そして、受付担当者104は患者IDをエンコードした二次元コードが印刷された診察券を患者に渡す。
【0018】
歯科医院の診療室には、患者110aが診療を終えて診療室から退出する様子を撮影する第一カメラ111が設置されている。
歯科医師112や歯科衛生士(図示せず)は、ヘッドセット113を装着している。このヘッドセット113は、スマートフォン等の携帯型無線端末114に接続されている。
歯科医院の出入り口115の近傍には、患者110bが退出する様子を撮影する第二カメラ116が設置されている。
歯科医院の内部の所定の場所には、電子カルテシステム101を運用する電子カルテサーバ108と、電子カルテサーバ108に接続されて電子カルテの入力及び修正を行うための端末装置105が設置されている。
なお、これ以降、患者110a及び患者110bを区別しないときは、患者110と総称する。
【0019】
図2は、電子カルテシステム101の構成要素とその接続関係を説明する概略図である。
人型ロボット107、タブレットPC106、第一カメラ111、第二カメラ116、端末装置105、そして携帯型無線端末114は、歯科医院内LANを通じて、電子カルテサーバ108に接続されている。なお、タブレットPC106及び携帯型無線端末114は、無線LANで接続される。
【0020】
二次元コードリーダ103は、USBやBluetooth(登録商標)等のインターフェースを通じて、電子カルテサーバ108に接続されている。
人型ロボット107、タブレットPC106、第一カメラ111、第二カメラ116、端末装置105、携帯型無線端末114、そして二次元コードリーダ103は、電子カルテサーバ108の周辺機器として動作する。
タブレットPC106や端末装置105は、歯科医院の繁忙に応じて、複数台用意される。
【0021】
なお、二次元コードリーダ103に代えて、USBカメラ等の撮像素子を採用してもよい。また、二次元コードリーダ103あるいは撮像素子が接続される機器は電子カルテサーバ108に限られない。例えば二次元コードリーダ103あるいは撮像素子を端末装置105に接続し、患者110の診察券に印刷された二次元コードから読み取った患者IDを端末装置105が電子カルテサーバ108に送信する、という実施形態も可能である。
【0022】
図2に示した電子カルテシステム101の構成要素のうち、本発明に直接的に関係しない機器については、ハードウェア構成やソフトウェア機能の図示を省略する。具体的には、携帯型無線端末114、端末装置105、第一カメラ111及び第二カメラ116である。
【0023】
[タブレットPC106:ハードウェア構成]
図3は、タブレットPC106のハードウェア構成を示すブロック図である。
タブレットPC106は、バス301に接続された、CPU302、ROM303、RAM304、LCDディスプレイである表示部305、透明電極を有する静電式位置検出装置を含む操作部306を備える。表示部305と操作部306は、周知のタッチパネルディスプレイ307を構成する。
【0024】
また、バス301には、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリ等の不揮発性ストレージ308、無線LANインターフェース(以下「無線LANI/F」と略す)309、無線通信部310、D/A変換器311が接続されている。D/A変換器311にはスピーカ312が接続されている。
タブレットPC106の機種によっては、無線通信部310が省略されている場合もあるが、無線LANI/F309が機能していれば、歯科医院内に構築されたLANに接続できる。
【0025】
[人型ロボット107:ハードウェア構成]
図4は、人型ロボット107のハードウェア構成を示すブロック図である。
人型ロボット107は、バス401に接続された、CPU402、ROM403、RAM404、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリ等の不揮発性ストレージ408、NIC(Network Interface Card)409、D/A変換器411を備える。D/A変換器411にはスピーカ412が接続されている。
【0026】
また、バス401には、モータドライバ414が接続されている。モータドライバ414には人型ロボット107の両腕を稼働させる第一モータ415、第二モータ416、第三モータ417及び第四モータ418が接続されている。第一モータ415は人型ロボット107の右肩を、第二モータ416は人型ロボット107の右肘を、第三モータ417は人型ロボット107の左肩を、第四モータ418は人型ロボット107の左肘を、それぞれ駆動する。
【0027】
人型ロボット107の両腕を駆動する第一モータ415、第二モータ416、第三モータ417及び第四モータ418は、電子カルテサーバ108から送信される命令によって制御される。
また、人型ロボット107は、電子カルテサーバ108から送信される命令に従い、命令に付随して送信されるテキストに基づいて音声合成を行い、内蔵されるスピーカ412によって発話を実行する。
【0028】
[電子カルテサーバ108:ハードウェア構成]
図5は、電子カルテサーバ108のハードウェア構成を示すブロック図である。
電子カルテサーバ108は、バス501に接続された、CPU502、ROM503、RAM504、不揮発性ストレージ508、NIC509を備える。
バス501にはこの他に、RTC(Real Time Clock)510と、USB等のシリアルI/F511を通じて二次元コードリーダ103が接続されている。
なお、電子カルテサーバ108はパソコンを流用することが可能であるが、その場合には、電子カルテサーバ108も表示部505と操作部506を有することになる。
【0029】
[電子カルテサーバ108及び人型ロボット107:ソフトウェア機能]
図6は、電子カルテサーバ108及び人型ロボット107のソフトウェア機能を示すブロック図である。
電子カルテサーバ108の入出力制御部601には、二次元コードリーダ103と人型ロボット107が接続されている。そして、入出力制御部601には、発話テキスト生成処理部602と、患者年齢演算処理部603と、発話命令生成処理部604が含まれている。
【0030】
二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを読み取ると、電子カルテサーバ108の入出力制御部601には二次元コードをデコードした患者IDが入力される。すると、発話テキスト生成処理部602は人型ロボット107に発話させて患者110に呼びかけるための発話テキストを生成して、
図5のRAM504上に形成された変数領域に格納する。
次に入出力制御部601はカルテデータベース605を患者IDで検索して、当該患者の氏名、カナ氏名、生年月日、今回処置等を取得する。
【0031】
更に入出力制御部601は、当該患者の今回処置で音程テーブル606を検索し、今回処置が音程テーブル606に存在するか否かを確認する。もし、音程テーブル606の検索でレコードがヒットしたら、入出力制御部601は当該レコードから音程を取得し、RAM504上に形成されている音程の変数領域に格納する。検索がヒットしない場合には、入出力制御部601は音程の変数領域に「普通」を格納する。
患者年齢演算処理部603は、当該患者の生年月日から年齢を算出する。そして、発話命令生成処理部604は患者の年齢が所定の年齢範囲に含まれるか否か、例えば9歳以上69歳以下であるか否かを判定する。
【0032】
患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、発話命令生成処理部604は発話速度を「普通」に設定し、音程テーブル606の検索結果で確定した音程を設定して、発話テキストに基づく発話命令データを生成する。そして、入出力制御部601は発話命令データを人型ロボット107に送信する。
「普通」の発話速度は、例えば1秒間に5音を発する程度の発話速度である。すなわち、1音辺り0.2秒であり、例えば「こんにちは」「ありがとう」等を1秒で発話することを意味する。
【0033】
患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、発話命令生成処理部604は発話速度を「ゆっくり」に設定し、音程テーブル606の検索結果で確定した音程を設定して、発話テキストに基づく発話命令データを生成する。そして、入出力制御部601は発話命令データを人型ロボット107に送信する。
【0034】
人型ロボット107の入出力制御部611は、歯科医院内LANを通じて電子カルテサーバ108が送信した発話命令データを受信する。
入出力制御部611は、発話命令データを受信すると、音声合成処理部612を通じて所定の音声合成処理を行い、D/A変換器411を通じてスピーカ412を駆動する。
なお、音声合成処理部612は、発話命令データにおいて発話速度が「ゆっくり」に設定されると、一例として「普通」の発話速度の0.7倍の速度で、合成音声を生成する。
前述の「普通」の発話速度が1秒あたり5音であるとすると、「ゆっくり」の発話速度は1秒あたり5音×0.7=3.5音となる。この「ゆっくり」の発話速度では、例えば「こんにちは」「ありがとう」等を1秒÷0.7=約1.4秒で発話することを意味する。
【0035】
[電子カルテサーバ108:カルテデータベース605と音程テーブル606]
図7Aは、カルテデータベース605のフィールド構成を示す図である。
図7Bは、カルテデータベース605のフィールド及びレコードの一例である。
図7Cは、音程テーブル606のフィールド構成を示す図である。
図7Dは、音程テーブル606のフィールド及びレコードの一例である。
【0036】
患者IDフィールドには、患者110を一意に識別する患者IDが格納される。
カルテデータベース605には、実際には多数のテーブルが存在するが、本発明の実施形態においては発明に関連性が高いフィールドのみ抜粋して説明する。
カルテデータベース605は、患者IDフィールドと、患者氏名フィールドと、カナ氏名フィールドと、生年月日フィールドと、性別フィールドと、その他患者個人情報フィールドと、今回処置フィールドを有する。
【0037】
患者氏名フィールドには、患者110の氏名が格納される。
カナ氏名フィールドには、患者110の氏名の読みがながカタカナにて格納される。
人の氏名は難読であったり、同じ漢字があてがわれていても人によって読みが異なっていたり、当て字が用いられていたり、等々の事情がある。このため、漢字で記載される患者氏名だけでは患者の氏名を正確に音声合成で読み上げることができない。そこで、カルテデータベース605にカナ氏名フィールドを設けて、正確な氏名の読みがなを格納する。
【0038】
生年月日フィールドには、患者110の生年月日が格納される。
性別フィールドには、患者110の性別が格納される。
その他患者個人情報フィールドには、患者110の住所等、患者110の個人情報が格納される。
今回処置フィールドには、患者が来院した当日における、当該患者に対して実施する予定の処置の名称、または処置を一意に識別する処置ID、すなわち今回処置が格納される。
【0039】
音程テーブル606は、今回処置フィールドと、音程フィールドを有する。
今回処置フィールドは、カルテデータベース605の同名フィールドと同じである。
音程フィールドには、音声合成処理部612が発話命令データを読み込んで音声合成処理を行う際の、合成音声の音の高さを示す情報が格納される。本発明の実施形態において、音声合成処理部612は「普通」「高い」「低い」の、3種類の音の高さを指定できるので、音程フィールドにはこれら3つの値を示す情報が格納される。なお、音程フィールドに格納される値のデータ型は整数型であっても文字列型であってもよい。
【0040】
図7Dに示す、音程テーブル606のレコードの一例を見ると、今回処置フィールドが「抜歯」「抜髄」「インプラント」のレコードの音程フィールドは「低く」設定されている。一方、今回処置フィールドが「歯周基本検査」「歯周精密検査」のレコードの音程フィールドは「高く」設定されている。このように、処置の内容に応じて音程を調整することの効果としては、今回処置が抜歯など、患者が不安を抱くであろう治療は″低音″に設定することで、患者に安心感を与える。逆に、歯周検査など痛みや不安がなく定期的に来院する治療では″高音″に設定することで「また会えてうれしい」という感情を患者に伝える。いずれの場合においても、歯科医院と患者間の信頼度と親密さの向上に繋がることを期待した処理である。
【0041】
[電子カルテサーバ108及び人型ロボット107:全体の動作]
図8は、電子カルテサーバ108及び人型ロボット107の、全体の動作の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S801)、入出力制御部601は、二次元コードリーダ103から患者IDの入力があったか否か、すなわち二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取ったか否かを確認する(S802)。二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取るまでは、ステップS802の処理は繰り返される(S802のNO)。
【0042】
二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取った場合には(S802のYES)、発話テキスト生成処理部602は人型ロボット107に発話させて患者110に呼びかけるための発話テキストを生成して(S803)、この発話テキストをRAM504上に形成された変数領域に格納する。
【0043】
次に入出力制御部601は、カルテデータベース605を患者IDで検索して、当該患者の氏名、カナ氏名、生年月日、今回処置等を取得する(S804)。
入出力制御部601は、ステップS804にて取得した当該患者の今回処置で音程テーブル606を検索し、音程テーブル606に検索した今回処置が存在するか否かを確認する(S805)。
【0044】
もし、音程テーブル606に検索した今回処置が存在するならば(S805のYES)、入出力制御部601は音程テーブル606の検索にヒットした当該レコードから音程を取得し、音程の変数に格納する。
もし、音程テーブル606に検索した今回処置が存在しないならば(S805のNO)、入出力制御部601は音程の変数領域に「普通」を格納する。
【0045】
患者年齢演算処理部603は、ステップS804にて入出力制御部601が取得した当該患者の生年月日から年齢を算出する(S808)。そして発話命令生成処理部604は、患者の年齢が9歳以上69歳以下であるか否かを判定する(S809)。
患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば(S809のYES)、発話命令生成処理部604は発話速度を「普通」に設定し、入出力制御部601による音程テーブル606の検索結果で確定した音程を設定して、発話テキストに基づく発話命令データを生成する。そして、入出力制御部601は発話命令生成処理部604が生成した発話命令データを人型ロボット107に送信する(S810)。
【0046】
患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ(S809のNO)、発話命令生成処理部604は発話速度を「ゆっくり」に設定し、入出力制御部601による音程テーブル606の検索結果で確定した音程を設定して、発話テキストに基づく発話命令データを生成する。そして、入出力制御部601は発話命令生成処理部604が生成した発話命令データを人型ロボット107に送信する(S811)。
【0047】
人型ロボット107の入出力制御部611は、電子カルテサーバ108から受信した発話命令データを、音声合成処理部612に引き渡す。音声合成処理部612は、発話命令データからデジタルの音声合成データを生成する。入出力制御部611は、音声合成処理部612が生成した音声合成データをD/A変換器に引き渡す。D/A変換器は音声合成データをアナログの音声信号に変換し、スピーカを駆動することで、音声合成データを再生する(S812)。以上で、一連の処理を終了する(S813)。
【0048】
[発話テキスト及び発話命令データ]
以下に、
図8のステップS803において、電子カルテサーバ108の入出力制御部601が生成する、発話テキストの一例を示す。
「こんにちは{カナ氏名}さん!今日は{今回処置}の日です!治療頑張って下さい!」
プレーンテキストである上記発話テキストの中で、波括弧("{}")で囲まれる単語は、変数によって置換される対象を表す。すなわち、上記発話テキスト中、「{カナ氏名}」は、変数「カナ氏名」によって置換され、「{今回処置}」は、変数「今回処置」によって置換される。
【0049】
次に、ステップS806またはS807において、電子カルテサーバ108の入出力制御部601が変数「音程」を取得した後、ステップS810またはS811において、入出力制御部601は、例えば以下に記すJSON形式の発話命令データを生成する。
「{"発話速度":"普通","発話音程":"高く","発話テキスト":"こんにちはコウダサブロウさん!今日は歯周基本検査の日です!治療頑張って下さい!"}」
すなわち、発話命令データは、発話テキストに発話速度の値と発話音程の値が付加されているデータである。
【0050】
上記発話命令データの中で、発話速度フィールドの値は「普通」が設定されている。すなわち、当該患者の年齢は9歳以上69歳以下であり、上記発話命令データはステップS810によって発話速度が「普通」に設定されたことがわかる。
同様に、発話音程フィールドの値は「高く」が設定されている。すなわち、上記発話命令データはステップS806において当該患者の今回処置における音程に「高く」が設定されたことがわかる。
【0051】
なお、上記発話命令データの形式は音声合成処理部612の要求仕様によって適宜変更され得る。また、音声合成処理部612によっては、対話形式のプロトコル等、データ送受信処理を音声合成処理部612の要求仕様に合わせる必要がある。
【0052】
音声合成処理部612は、発話命令データを読み込むと、発話速度フィールドの値と発話音程フィールドの値に従う合成音声データを生成する。その際、発話速度フィールドの値が「ゆっくり」に設定されていると、発話速度を例えば「普通」の0.7倍に設定した合成音声データを生成する。
【0053】
以上より明らかなように、本発明の実施形態に係る電子カルテシステム101は、二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取ると、当該患者の年齢を算出する。そして、患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、電子カルテシステム101は人型ロボット107のスピーカを通じて普通の発話速度で患者に案内音声を聞かせる。患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、電子カルテシステム101は人型ロボット107のスピーカを通じて普通よりも遅い発話速度で患者に案内音声を聞かせる。
すなわち、本発明の実施形態に係る電子カルテシステム101は、患者の年齢に応じて適切な発話速度にて患者に案内音声を聞かせることができる。
【0054】
なお、電子カルテシステム101における規定の年齢の設定は9歳以上69歳以下に限られない。年齢の下限値及び上限値は任意の値に設定してもよい。
また、規定の年齢の設定に優先して発話速度を設定する処理を追加してもよい。例えば、カルテデータベース605に「発話速度優先処理フィールド」を設ける。そして、患者の年齢が9歳以上69歳以下であっても、発話速度優先処理フィールドに設定された値が論理の「真」であれば、発話速度を「ゆっくり」に設定する。また、患者の年齢が9歳以上69歳以下でなくても、発話速度優先処理フィールドに設定された値が論理の「真」であれば、発話速度を「普通」に設定する。
【0055】
[変形例:電子カルテシステム901:全体構成]
以上説明した電子カルテシステム101では、人型ロボット107が音声合成処理部612を内蔵し、合成音声データを生成していた。
音声合成処理部612は、必ずしも人型ロボット107に装備される必要はなく、例えば電子カルテサーバ108や、タブレットPC106に装備されていてもよい。今日、音声合成のアプリケーションプログラムは多種多様な製品が存在し、アプリケーション実装者はそれら多数のソフトウェア製品から適切なものを自由に選択できる。また、人型ロボット107自体も、近年動画サイト等で流行しているアバターをタブレットPC106等に表示させることで代用できる。
【0056】
図9Aは、本発明の実施形態の変形例に係る電子カルテシステム901の一部外観図である。なお、
図9Aでは電子カルテサーバ108や携帯型無線端末114、端末装置105、第一カメラ111、第二カメラ116等の図示を省略している。
図9Bは、タブレットPC106の表示状態を示す概略図である。
タブレットPC106のハードウェア構成は
図3に示したようにD/A変換器311とスピーカ312を内蔵している。そして、タブレットPC106のソフトウェア機能ブロックは、
図6に示す人型ロボット107と全く同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0057】
タブレットPC106のタッチパネルディスプレイ307には、周知のアバターC902が表示されている。そしてタブレットPC106は人型ロボット107と同様に、音声合成処理部612を内蔵しており、電子カルテサーバ108から発話命令データを受信すると、合成音声データを生成して発話する。このとき、発話に同期してアバターの口元がアニメーションの様に動けば、患者110に対してあたかもアバターが喋っているように見せることができる。
【0058】
図9に示す電子カルテシステム901も、前述の電子カルテシステム101と同様に、二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取ると、当該患者の年齢を算出する。そして、患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、電子カルテシステム901はタブレットPC106のスピーカを通じて普通の発話速度で患者に案内音声を聞かせる。患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、電子カルテシステム101はタブレットPC106のスピーカを通じて普通よりも遅い発話速度で患者に案内音声を聞かせる。
【0059】
すなわち、本発明の実施形態の変形例に係る電子カルテシステム901も、電子カルテシステム101と同様に、患者の年齢に応じて適切な発話速度にて患者に案内音声を聞かせることができる。
【0060】
本実施形態においては、電子カルテシステム101及び電子カルテシステム901を開示した。
電子カルテシステム101は、二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取ると、当該患者の年齢を算出する。そして、患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、電子カルテシステム101は人型ロボット107のスピーカを通じて普通の発話速度で患者に案内音声を聞かせる。患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、電子カルテシステム101は人型ロボット107のスピーカを通じて普通よりも遅い発話速度で患者に案内音声を聞かせる。
【0061】
また電子カルテシステム901も、二次元コードリーダ103が診察券に印刷された二次元コードを正常に読み取ると、当該患者の年齢を算出する。そして、患者の年齢が9歳以上69歳以下であれば、電子カルテシステム901はタブレットPC106のスピーカを通じて普通の発話速度で患者に案内音声を聞かせる。患者の年齢が9歳以上69歳以下でなければ、電子カルテシステム101はタブレットPC106のスピーカを通じて普通よりも遅い発話速度で患者に案内音声を聞かせる。
すなわち、本発明の実施形態に係る電子カルテシステム101及び電子カルテシステム901は、患者の年齢に応じて適切な発話速度にて患者に案内音声を聞かせることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0063】
101…電子カルテシステム、102…受付窓口、103…二次元コードリーダ、104…受付担当者、105…端末装置、106…タブレットPC、107…人型ロボット、108…電子カルテサーバ、109…スピーカ、110、110a、110b…患者、111…第一カメラ、112…歯科医師、113…ヘッドセット、114…携帯型無線端末、115…出入り口、116…第二カメラ、301…バス、302…CPU、303…ROM、304…RAM、305…表示部、306…操作部、307…タッチパネルディスプレイ、308…不揮発性ストレージ、309…無線LANインターフェース、310…無線通信部、311…D/A変換器、312…スピーカ、401…バス、402…CPU、403…ROM、404…RAM、408…不揮発性ストレージ、409…NIC、411…D/A変換器、412…スピーカ、414…モータドライバ、415…第一モータ、416…第二モータ、417…第三モータ、418…第四モータ、501…バス、502…CPU、503…ROM、504…RAM、505…表示部、506…操作部、508…不揮発性ストレージ、509…NIC、510…RTC、601…入出力制御部、602…発話テキスト生成処理部、603…患者年齢演算処理部、604…発話命令生成処理部、605…カルテデータベース、606…音程テーブル、611…入出力制御部、612…音声合成処理部、901…電子カルテシステム