(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143372
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】酸化剤含有乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20220926BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20220926BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q5/10
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/41
A61K8/365
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/22
A61K8/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043843
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】旭 宏章
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC891
4C083AC892
4C083AD042
4C083BB04
4C083BB06
4C083BB11
4C083BB13
4C083BB45
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温条件下での過酸化水素の長期安定性、および高温条件下での長期乳化安定性が良好である酸化剤含有乳化組成物を提供する。
【解決手段】少なくともアルカリ剤を含有する組成物と用時混合して使用される酸化剤含有乳化組成物であって、(A)キレート剤、(B)フェノキシエタノール、(C)HLBが15未満である非イオン性界面活性剤、(D)HLBが15以上である非イオン性界面活性剤、(E)水、(F)炭化水素油および(G)炭素数が14~22の高級アルコールを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)が0.25~200であり、前記(F)成分と前記(C)および(D)成分との質量比(F)/((C)+(D))が0.04~7.69であることを特徴とする酸化剤含有乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルカリ剤を含有する組成物と用時混合して使用される酸化剤含有乳化組成物であって、
(A)キレート剤
(B)フェノキシエタノール
(C)HLBが15未満である非イオン性界面活性剤
(D)HLBが15以上である非イオン性界面活性剤
(E)水
(F)炭化水素油
(G)炭素数が14~22の高級アルコール
を含有し、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)が0.25~200であり、前記(F)成分と前記(C)および(D)成分との質量比(F)/((C)+(D))が0.04~7.69であることを特徴とする酸化剤含有乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が有機ホスホン酸系キレート剤であることを特徴とする請求項1に記載の酸化剤含有乳化組成物。
【請求項3】
前記(E)成分の25℃における電気伝導率が1mS/m以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の酸化剤含有乳化組成物。
【請求項4】
前記酸化剤含有乳化組成物の粘度が1,000~40,000mPa・sであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の酸化剤含有乳化組成物。
【請求項5】
さらに、(H)カチオン性界面活性剤を含有し、前期(H)成分の含有量が0.5%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の酸化剤含有乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤含有乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染毛剤としては、酸化染毛剤、脱染剤、脱色剤、脱染・脱色剤などが知られており、2種類以上の剤を用時混合して調製される。染毛剤に使用される第2剤には、毛髪の色を変化させたり、毛髪中のメラニン色素を分解し毛髪を明るく見せることを目的として、酸化剤含有乳化組成物を用いることが一般的である。
【0003】
従来、酸化剤含有乳化組成物には酸化剤として過酸化水素が用いられる。過酸化水素は、不安定で酸素を放出して分解しやすく、特に高温条件下での長期保管は困難である。そこで、酸化剤含有乳化組成物が高温条件下で長期間保管されても過酸化水素の分解を抑える安定化剤として、ヒドロキシエタンジホスホン酸が用いられている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-008174
【特許文献2】特開2016-008175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では酸化剤含有乳化組成物中の過酸化水素を高温条件下で長期間安定に保つことは考慮されているが、酸化剤含有乳化組成物の乳化安定性に関しては考慮されていない。染毛剤によって受ける毛髪へのダメージを軽減するための手段として油性成分を含有した酸化剤含有乳化組成物を高温条件下で長期間保管した場合、均一な乳化状態が損なわれ、油性成分を均一に毛髪へ塗布できなくなり、毛髪へのダメージを軽減できなくなる恐れがあった。
【0006】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、高温条件下で長期間保管されても、過酸化水素および乳化状態が安定である酸化剤含有乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくともアルカリ剤を含有する組成物と用時混合して使用される酸化剤含有乳化組成物であって、(A)キレート剤、(B)フェノキシエタノール、(C)HLBが15未満である非イオン性界面活性剤、(D)HLBが15以上である非イオン性界面活性剤、(E)水、(F)炭化水素油および(G)炭素数が14~22の高級アルコールを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)が0.25~200であり、前記(F)成分と前記(C)および(D)成分との質量比(F)/((C)+(D))が0.04~7.69であることで、高温条件下での過酸化水素および乳化状態の長期安定性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温条件下での過酸化水素および乳化状態の長期安定性が良好である酸化剤含有乳化組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0010】
本明細書において高温とは50℃であることを指し、長期とは3か月間であることを指す。
【0011】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から(A)キレート剤を含有する。
【0012】
本発明で用いられる前記(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、有機ホスホン酸系キレート剤、アミノカルボン酸系キレート剤、または、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤などが挙げられる。前記(A)成分は1種以上を含有してよい。
【0013】
前記有機ホスホン酸系キレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸またはそれらの塩などが挙げられる。その中でも、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から、ヒドロキシエタンジホスホン酸、またはその塩が好ましい。
【0014】
前記アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、グルタミン酸-N,N-二酢酸、アスパラギン酸-N,N-二酢酸、ニトリロ三酢酸、またはそれらの塩などが挙げられる。その中でも、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から、エチレンジアミン四酢酸、またはその塩が好ましい。
【0015】
前記ヒドロキシカルボン酸系キレート剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、またはそれらの塩などが挙げられる。その中でも、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から、クエン酸、リンゴ酸、またはそれらの塩が好ましい。
【0016】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~5%、より好ましくは0.02~2%、さらに好ましくは0.05~1%がよい。前記(A)成分が0.01%未満の場合、高温条件下での過酸化水素の長期安定性が悪くなる恐れがある。前記(A)成分が5%を超える場合、高温条件下での過酸化水素および乳化状態の長期安定性が悪くなる恐れがある。
【0017】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から(B)フェノキシエタノールを含有する。
【0018】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001~1%、より好ましくは0.005~0.5%、さらに好ましくは0.01~0.2%がよい。前記(B)成分が0.001%未満の場合、高温条件下での過酸化水素の長期安定性が悪くなる恐れがある。前記(B)成分が1%を超える場合、高温条件下での過酸化水素および乳化状態の長期安定性が悪くなる恐れがある。
【0019】
本発明で用いられる前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)は、好ましくは0.25~200であり、より好ましくは0.5~50であり、さらに好ましくは1~25である。0.25未満または200を超える場合、高温条件下における過酸化水素の長期安定性が悪くなる恐れがある。
【0020】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での長期乳化安定性の観点から(C)HLBが15未満である非イオン性界面活性剤を含有する。
【0021】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEという)(5)デシルエーテル「HLB:11.64」、POE(6)デシルエーテル「HLB:12.51」、POE(2)ラウリルエーテル「HLB:6.42」、POE(3)ラウリルエーテル「HLB:8.30」、POE(4)ラウリルエーテル「HLB:9.72」、POE(5)ラウリルエーテル「HLB:10.84」、POE(7)ラウリルエーテル「HLB:12.47」、POE(8)ラウリルエーテル「HLB:13.09」、POE(9)ラウリルエーテル「HLB:13.61」、POE(12)ラウリルエーテル「HLB:14.79」、POE(3)トリデシルエーテル「HLB:7.95」、POE(5)トリデシルエーテル「HLB:11.64」、POE(7)トリデシルエーテル「HLB:12.13」、POE(8)トリデシルエーテル「HLB:12.75」、POE(9)トリデシルエーテル「HLB:13.29」、POE(10)トリデシルエーテル「HLB:13.75」、POE(12)トリデシルエーテル「HLB:14.51」、POE(2)セチルエーテル「HLB:5.33」、POE(5)セチルエーテル「HLB:9.52」、POE(6)セチルエーテル「HLB:10.43」、POE(7)セチルエーテル「HLB:11.2」、POE(8)セチルエーテル「HLB:11.85」、POE(10)セチルエーテル「HLB:12.9」、POE(13)セチルエーテル「HLB:14.05」、POE(15)セチルエーテル「HLB:14.63」、POE(2)ステアリルエーテル「HLB:4.92」、POE(3)ステアリルエーテル「HLB:6.57」、POE(4)ステアリルエーテル「HLB:7.89」、POE(5)ステアリルエーテル「HLB:8.98」、POE(7)ステアリルエーテル「HLB:10.66」、POE(10)ステアリルエーテル「HLB:12.39」、POE(11)ステアリルエーテル「HLB:12.84」、POE(15)ステアリルエーテル「HLB:14.19」、POE(8)イソステアリルエーテル「HLB:11.32」、POE(12)イソステアリルエーテル「HLB:13.23」、POE(16)イソステアリルエーテル「HLB:14.46」、POE(2)オレイルエーテル「HLB:4.92」、POE(5)オレイルエーテル「HLB:9.02」、POE(7)オレイルエーテル「HLB:10.69」、POE(9)オレイルエーテル「HLB:11.93」、POE(10)オレイルエーテル「HLB:12.43」、POE(15)オレイルエーテル「HLB:14.22」、POE(5)ベヘニルエーテル「HLB:8.06」、POE(10)ベヘニルエーテル「HLB:11.49」、POE(20)ベヘニルエーテル「HLB:14.59」等が挙げられる。その中でも、高温条件下の乳化安定性の観点からPOE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(2)ステアリルエーテル、POE(4)ステアリルエーテル、POE(10)ステアリルエーテル、POE(15)ステアリルエーテルが好ましい。前記(C)成分は1種以上を含有してよい。なお(C)成分の()内の数字はPOEの付加モル数を示す。
【0022】
ここで「HLB」とは、親水親油バランス:HYDROPHILE―LIPOPHILE BALANCEの略称であって、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターである。HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。本明細書に記載のHLBは、公知のGRIFFINの式から算出している。
【0023】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.3~3%、より好ましくは0.5~2%がよい。前記(C)成分が0.3%未満または3%を超える場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0024】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での長期乳化安定性の観点から(D)HLBが15以上である非イオン性界面活性剤を含有する。
【0025】
本発明で用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、POE(15)ラウリルエーテル「HLB:15.60」、POE(19)ラウリルエーテル「HLB:16.36」、POE(21)ラウリルエーテル「HLB:16.65」、POE(25)ラウリルエーテル「HLB:17.11」、POE(30)ラウリルエーテル「HLB:17.53」、POE(40)ラウリルエーテル「HLB:18.09」、POE(20)トリデシルエーテル「HLB:16.30」、POE(15)トリデシルエーテル「HLB:15.35」、POE(20)セチルエーテル「HLB:15.69」、POE(23)セチルエーテル「HLB:16.14」、POE(25)セチルエーテル「HLB:16.39」、POE(30)セチルエーテル「HLB:16.9」、POE(40)セチルエーテル「HLB:17.58」、POE(150)セチルエーテル「HLB:19.29」、POE(20)ステアリルエーテル「HLB:15.30」、POE(30)ステアリルエーテル「HLB:16.60」、POE(40)ステアリルエーテル「HLB:17.34」、POE(50)ステアリルエーテル「HLB:17.81」、POE(100)ステアリルエーテル「HLB:18.84」、POE(20)オレイルエーテル「HLB:15.33」、POE(50)オレイルエーテル「HLB:17.83」、POE(30)ベヘニルエーテル「HLB:16.04」等が挙げられる。その中でも、高温条件下の乳化安定性の観点からPOE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(150)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(30)ステアリルエーテル、POE(40)ステアリルエーテル、POE(100)ステアリルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテルが好ましい。前記(D)成分は1種以上を含有してよい。
【0026】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.48~4.8%、より好ましくは0.8~3.2%がよい。前記(D)成分が0.48%未満または4.8%を超える場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0027】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から(E)25℃における電気伝導率が1mS/m以下である水を含有する。
【0028】
本発明で用いられる前記(E)成分は、浄水、水道水、地下水および海水から選ばれる少なくとも1種以上を、イオン交換樹脂および逆浸透膜から選ばれる少なくとも1種以上を用いて処理することで得ることができる。
【0029】
本発明で用いられる前記(E)成分の電気伝導率は、1mS/m以下であれば特に限定されないが、好ましくは0.5mS/m以下である。(E)成分の電気伝導率が1mS/mを超える場合、高温条件下での過酸化水素の長期安定性が悪くなる恐れがある。
【0030】
本発明における酸化剤含有乳化組成物の電気伝導率は、電気伝導率計CM-42X(東亜ディーケーケー株式会社製)の一般的な電気伝導率計を用いて測定することができる。
【0031】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での長期乳化安定性の観点から(F)炭化水素油を含有する。
【0032】
本発明で用いられる前記(F)成分としては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィンオリゴマー、パラフィン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、ポリエチレン末、オゾケライト、ポリブテン、セレシン等が挙げられる。その中でも、高温条件下での長期乳化安定性の観点から流動パラフィン、およびワセリンが好ましい。前記(F)成分は1種以上を含有してよい。
【0033】
本発明で用いられる前記(F)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~12%、より好ましくは0.5~9%、さらに好ましくは1~7%がよい。前記(F)成分が0.1%未満または12%を超える場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0034】
本発明で用いられる前記(F)成分と前記(C)および(D)成分との質量比(F)/((C)+(D))は、好ましくは0.04~7.69であり、より好ましくは0.19~6.41であり、さらに好ましくは0.38~3.85である。0.04未満または7.69を超える場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0035】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、高温条件下での長期乳化安定性の観点から(G)炭素数が14~22の高級アルコールを含有する。
【0036】
本発明で用いられる前記(G)成分としては、特に限定されないが、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。その中でも、高温条件下での長期乳化安定性の観点からセタノール、ステアリルアルコールが好ましい。前記(G)成分は1種以上を含有してよい。
【0037】
本発明で用いられる前記(G)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1.7~15.3%、より好ましくは3.4~15.3%、さらに好ましくは5.1~10.2%がよい。前記(G)成分が1.7%未満または15.3%を超える場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。
【0038】
本発明による酸化剤含有乳化組成物は、仕上がりの観点から(H)カチオン性界面活性剤を含有することができるが、高温条件下での過酸化水素の長期安定性の観点から含有しないことが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる前記(H)成分としては、特に限定されないが、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン等が挙げられる。その中でも、高温条件下での長期乳化安定性の観点から塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。前記(H)成分は1種以上を含有してよい。
【0040】
本発明で用いられる前記(H)成分の含有量は、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.2%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。前記(H)成分が0.5%を超える場合、高温条件下での過酸化水素の長期安定性が悪くなる恐れがある。
【0041】
本発明における酸化剤含有乳化組成物の20℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは1,000~40,000mPa・s、より好ましくは2,500~35,000mPa・sがよい。酸化剤含有乳化組成物の粘度が1,000mPa・s未満の場合、高温条件下での長期乳化安定性が悪くなる恐れがある。また酸化剤含有乳化組成物の粘度が40,000mPa・sを超える場合、染毛剤の第1剤組成物との混合性および毛髪への塗布性が低下する恐れがある。
【0042】
本発明における酸化剤含有乳化組成物の粘度は、酸化剤含有乳化組成物を常法にて調整した後、140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、一晩放置した後、20℃の条件下にてB型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度12rpmの条件で測定したものである。
【0043】
本発明による酸化剤含有乳化組成物の20℃におけるpHは、好ましくは2~4.5、より好ましくは2~3.5がよい。pHが4.5を超える場合、過酸化水素を安定化することができない恐れがある。
【0044】
本発明におけるpHは、常法により調製した毛髪用化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子社製)に120g充填し、20℃で24時間静置した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、堀場製作所社製)を用いて原液のpHを測定したものである。
【0045】
本発明による酸化剤含有乳化組成物には、過酸化水素の安定性の向上のためにリン酸、リン酸塩などの酸を使用することができる。また、前述記載した成分のほか、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、糖類、アミノ酸、植物抽出エキス、pH調整剤、香料、防腐剤などが挙げられる。これらの成分は、本発明の効果を阻害し得ない範囲であれば特に限定されず1種以上を含有することができる。
【0046】
本発明による酸化剤含有乳化組成物の剤型は、乳液状、クリーム状、ジェルクリーム状、泡状、エアゾールフォーム状が挙げられる。本発明による酸化剤含有乳化組成物は、ポリ容器、チューブ容器、エアゾール容器などの各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【実施例0047】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0048】
本明細書に示す評価試験において、酸化剤含有乳化組成物に含まれる成分およびその含有量を種々変更しながら実施した各種の実験結果を以下に示す。ここで、酸化剤含有乳化組成物の各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。なお、pH調整剤としては、リン酸、または水酸化カリウムを用いた。
【0049】
本明細書に示す評価試験において、「高温条件下での過酸化水素の長期安定性」は得られた酸化剤含有乳化組成物をポリエチレン製の密閉容器(40g入れ目)に40g充填し、充填直後、および50℃条件下で3ヵ月間保管した後、酸化剤含有乳化組成物中の過酸化水素の濃度を測定し、以下の通りに評価した。過酸化水素の定量方法は、酸化還元滴定法を用いた。過酸化水素の残存率(%)は、以下の通り算出した。
過酸化水素の残存率(%)=(50℃条件下で3ヵ月間保管した後の酸化剤含有乳化組成物中の過酸化水素の濃度)/(充填直後の酸化剤含有乳化組成物中の過酸化水素の濃度)×100
<評価基準>
◎:過酸化水素の残存率が95%以上である。
○:過酸化水素の残存率が90%以上~95%未満である。
△:過酸化水素の残存率が80%以上~90%未満である。
×:過酸化水素の残存率が80%未満である。
【0050】
本明細書に示す評価試験において、「高温条件下での長期乳化安定性」は得られた酸化剤含有乳化組成物をポリエチレン製の密閉容器(40g入れ目)に40g充填し、50℃条件下で3ヵ月間保管した後開封し、酸化剤含有乳化組成物の乳化状態をそれぞれ目視にて確認し以下の通りに評価した。
<評価基準>
◎:50℃条件下において3ヵ月間保管で水ハキせず。
○:50℃条件下において3ヵ月間保管で僅かに水ハキがある。
△:50℃条件下において3ヵ月間保管で若干の水ハキがある。
×:50℃条件下において3ヵ月間保管であきらかに分離する。
【0051】
表1に記載の実施例1から実施例12において、(A)キレート剤の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0052】
【0053】
表2に記載の実施例13から実施例20において、(B)フェノキシエタノールの含有量を代えても良好な結果を示した。なお、比較例3から比較例5は、酸化剤含有乳化組成物が高温条件下において長期間保管したことで分離したため、粘度の測定は行わなかった。
【0054】
【0055】
表3に記載の実施例21から実施例27において、(C)HLBが15未満である非イオン性界面活性剤、および(D)HLBが15以上である非イオン性界面活性剤の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0056】
【0057】
表4に記載の実施例28から実施例30において、(E)水の25℃における電気伝導率を代えても良好な結果を示した。
【0058】
【0059】
表5に記載の実施例31から実施例39において、(F)炭化水素油の含有量を代えても良好な結果を示した。
【0060】
【0061】
表6に記載の実施例40から実施例46において、(G)高級アルコールの含有量を代えても良好な結果を示した。
【0062】
【0063】
表7に記載の実施例47から実施例49において、(H)カチオン性界面活性剤の含有量を代えても良好な結果を示した。
【0064】