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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143378
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】変調信号の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/564 20130101AFI20220926BHJP
   G02F 1/015 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H04B10/564
G02F1/015 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043855
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 智久
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA20
2K102BA03
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA09
2K102DA04
2K102DD03
2K102EA02
2K102EA25
2K102EB22
5K102AA51
5K102AH02
5K102AH24
5K102AH26
5K102MA01
5K102MB04
5K102MC11
5K102MH02
5K102MH13
5K102MH22
5K102MH28
5K102MH29
5K102PB11
5K102PH02
5K102PH03
5K102PH15
5K102PH31
5K102PH49
5K102RD05
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】変調器の変調特性をメモリに記録せずに、多値信号である変調光のレベル間隔を調節する。
【解決手段】光送信機4において、変調信号の制御装置2は、変調光から生成される電気信号の交流成分の極性が正又は大きさがゼロの時には交流成分のレベルに応じたレベルをとり交流成分の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号を生成するハイ側信号生成部と、交流成分の極性が正の時には一定のレベルをとり交流成分の極性が負又は大きさがゼロの時には交流成分のレベルに応じたレベルをとるロー側信号を生成するロー側信号生成部と、ハイ側信号がとるレベルで最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルの信号を生成するハイ側ピーク値検出部と、ロー側信号がとるレベルで最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルの信号を生成するロー側ピーク値検出部と、第4レベルと第5レベルとに基づいて変調信号のレベルを調節するレベル調節部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光デバイスに印加されている間に第1レベル、前記第1レベルより高い第2レベル、および前記第1レベルより高く前記第2レベルより低い少なくとも1つの第3レベルをとることで、多値信号である変調光を前記光デバイスに生成させる変調信号を制御する制御装置であって、
前記変調光から生成される電気信号の交流成分の極性が正または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとり、前記交流成分の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号を生成するハイ側信号生成部と、
前記交流成分の極性が正の時には一定のレベルをとり、前記交流成分の極性が負または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとるロー側信号を生成するロー側信号生成部と、
前記ハイ側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルをとるハイ側ピーク値信号を、生成するハイ側ピーク値検出部と、
前記ロー側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルをとるロー側ピーク値信号を、生成するロー側ピーク値検出部と、
前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルとに基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを調節するレベル調節部とを有する
変調信号の制御装置。
【請求項2】
前記レベル調節部は、前記第4レベルの絶対値と前記第5レベルの絶対値の差であるピーク値差が第1目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第3レベルは、2つのレベルを含み、
前記レベル調節部は、前記2つのレベルの差を一定に保ちながら、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを
特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
更に、前記ハイ側信号がとるレベルの第1平均値に応じた第6レベルをとるハイ側アベレージ信号を生成するハイ側平均値検出部を有し、
前記レベル調節部は、前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルに基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節の後に、前記ハイ側アベレージ信号がとる前記第6レベルと前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルの第1の比に基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを更に調節することを
特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記レベル調節部は、前記第1の比が第2目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
更に、前記ロー側信号がとるレベルの第2平均値に応じた第7レベルをとるロー側アベレージ信号を生成するロー側平均値検出部を有し、
前記レベル調節部は、前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルに基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節と前記第1の比に基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節との間、または前記第1の比に基づく前記第3レベルの調節の後に、前記ロー側アベレージ信号がとる前記第7レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルの第2の比に基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを更に調節すことを
特徴とする請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記レベル調節部は、前記第2の比が第3目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
請求項6に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調信号の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2値レベル変調(例えば、On-Off-Keying)より大容量で且つ高速通信が可能な多値レベル変調を用いる光伝送技術が検討されている(例えば、特許文献1~2参照)。例えばPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)は、4つのレベルをとる電気信号を変調器に印加して、4つの値を示す4値光信号を生成する変調方式である。
【0003】
変調器により生成される多値光信号(例えば、4値光信号)は、光伝送路を介して受信器に入力され、元の電気信号に復調される。多値光信号のレベル間隔が均一でないと、多値光信号が誤って復調される頻度が高くなる。
【0004】
ところで、電気信号を光信号に変換する変調器の多くは、印加される電気信号(以下、変調信号と呼ぶ)のレベルに対して出力光(以下、変調光と呼ぶ)のレベルが線形に変化しない非線形性を示す。この様な変調器にレベル間隔が均一な変調信号が印加されると、レベル間隔が不均一な多値光信号が生成される。その結果、復調誤りの頻度が高くなる。
【0005】
そこで多値光信号のレベル間隔が均一になるように、メモリに記録された変調特性(すなわち、変調信号の電圧等と生成される変調光の光強度の関係)に基づいて、変調信号のレベルを調節する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-216681号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0198527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし変調器の特性(すなわち、変調特性)は、変調器の温度によって変化する。近年の光伝送装置では、消費電力を抑制するため、変調器の温度が一定に保たれることは稀である。従って、上記技術を光伝送装置に適用しようとすると、予め多数の温度で変調器ごとに変調特性を測定してメモリに記録しておくことになる。このような技術は煩雑で実用的でない。そこで、本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施の形態では、変調信号の制御装置は、光デバイスに印加されている間に第1レベル、前記第1レベルより高い第2レベル、および前記第1レベルより高く前記第2レベルより低い少なくとも1つの第3レベルをとることで、多値信号である変調光を前記光デバイスに生成させる変調信号を制御する制御装置であって、前記変調光から生成される電気信号の交流成分の極性が正または前記交流成分の大きさがゼロの時には前記交流成分のレベルに応じたレベルをとり、前記交流成分の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号を生成するハイ側信号生成部と、前記交流成分の極性が正の時には一定のレベルをとり、前記交流成分の極性が負または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとるロー側信号を生成するロー側信号生成部と、前記ハイ側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルをとるハイ側ピーク値信号を生成するハイ側ピーク値検出部と、前記ロー側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルをとるロー側ピーク値信号を生成するロー側ピーク値検出部と、前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルとに基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを調節するレベル調節部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面では、本発明によれば、変調器の変調特性をメモリに記録せずに、多値光信号のレベル間隔を調節することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1の制御装置2を含む光送信機4の一例を示す図である。
図2図2は、図1における信号の流れを示す図である。
図3図3は、変調信号22の時間変化の一例を示す図である。
図4図4は、変調器28の変調特性48の一例を示す図である。
図5図5はバイアス電圧14が、変調特性48の線形領域50の中心に設定された場合に生成される変調光32のアイパターン54aの一例を示す図である。
図6図6はバイアス電圧14が、線形領域50の中心より低い電圧に設定された場合に生成される変調光32のアイパターン54bの一例を示す図である。
図7図7は、線形領域50の中心より低いバイアス電圧の設定後に変調信号22を制御装置2が制御した場合に生成される変調光32のアイパターン54cの一例を示す図である。
図8図8は、実施の形態の光送信機4におけるドライバー出力20および変調信号22のアイパターンの一例を示す図である。
図9図9は、実施の形態の光送信機4における変調光32およびモニタ信号46のアイパターンの一例を示す図である。
図10図10は、ハイ側信号生成部64のハードウエア構成の一例を示す回路図である。
図11図11は、オペアンプOP1が出力する信号のアイパターン78の一例を示す図である。
図12図12は、ロー側信号生成部66のハードウエア構成の一例を示す回路図である。
図13図13は、オペアンプOP2が出力する信号のアイパターン86の一例を示す図である。
図14図14は、ロー側信号生成部66が出力するロー側信号90のアイパターン92の一例を示す図である。
図15図15は、ハイ側ピーク値検出部68のハードウエア構成の一例を示す回路図である。
図16図16は、ハイ側平均値検出部72のハードウエア構成の一例を示す回路図である。
図17図17は、レベル調節部75のハードウエア構成の一例を示す回路図である。
図18図18は、レベル調節部75が実行する変調信号の制御手順の一例を示す図である。
図19図19は、ステップS2の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、ハイ側信号76のアイパターン116の一例を示す図である。
図21図21は、ロー側信号90のアイパターン118の一例を示す図である。
図22図22は、ミドルアイの位置制御が行われる前後のドライバー出力および変調信号のアイパターンの一例を示す図である。
図23図23は、ミドルアイの位置制御が行われる前後の変調光およびモニタ信号のアイパターンの一例を示す図である。
図24図24は、モニタ信号46におけるミドルアイME2の位置とピーク値差ΔPeakの関係を示す図である。
図25図25は、ステップS4の一例を示すフローチャートである。
図26図26は、ステップS42が行われる前後のハイ側信号76のアイパターンの一例を示す図である。
図27図27は、ステップS6の一例を示すフローチャートである。
図28図28は、ステップS58が行われる前後のロー側信号90のアイパターンの一例を示す図である。
図29図29は、ステップS2~S6の繰り返しにより得られるドライバー出力および変調信号のアイパターンの一例を示す図である。
図30図30は、ステップS2~S6の繰り返しにより得られる変調光およびモニタ信号のアイパターンの一例を示す図である。
図31図31は、モニタ信号46のレベルに基づかずに変調光32のレベル間隔を均一する光送信機204の一例を示す図である。
図32図32は、図31における信号の流れを示す図である。
図33図33は、変形例1の光送信機で行われる変調信号22のレベル調節を説明する図である。
図34図34は、変形例1の光送信機で行われる変調信号22のレベル調節を説明する図である。
図35図35は、変形例1の光送信機で行われる変調信号22のレベル調節を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。図面が異なっても同じ構造を有する部分等には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(実施の形態1)
(1)装置構造および動作
図1は、実施の形態1の制御装置2を含む光送信機4の一例を示す図である。図2は、図1における信号の流れを示す図である。
【0013】
光送信機4は例えば、DSP(Digital Signal Processor)6と、DSP6に接続されたドライバー8を有する。DSP6は、デジタル信号10(図2参照)を3つ以上の振幅(amplitude)をとる多値信号12(電気信号)に変換する。ドライバー8は、DSP6が出力する多値信号12を増幅する。
【0014】
光送信機4は更に、バイアス電圧14(直流電圧)を出力するバイアス・コントローラ16と、ドライバー8に一端が接続されバイアス・コントローラ16に他端が接続されたDCブロック(direct current block filter)18aを有する。DCブロック18aは、増幅された多値信号12(以下、ドライバー出力20と呼ぶ)の交流成分をバイアス電圧14に重畳して、変調信号22を生成する。交流成分とは、ある信号からその信号を平均化した信号(すなわち、直流成分)を差し引いた信号である。
【0015】
光送信機4は更に、電流源21と、電流源21に接続され連続光24を出力する半導体レーザ26を有する。光送信機4は更に、DCブロック18aのバイアス・コントローラ16側の一端に接続された変調器28を有する。図1に示す例では、変調器28は電界吸収型変調器(Electro-Absorption Modulator: EAM)である。
【0016】
半導体レーザ26が出力する連続光24は変調器28に入力され、変調器28に印加される変調信号22のレベル(ここでは、電圧)に応じて光強度が変調される。図1に示す例では、変調信号22は、バイアス電圧14に重畳された、ドライバー出力20(すなわち、増幅された多値信号12)の交流成分である。
【0017】
光送信機4は更に、入力端に変調器28が接続された光分岐器30(例えば、ファイバカプラ)と、光分岐器30の出力端子の一方に接続された光検出器33を有する。
【0018】
光分岐器30は、変調された連続光24(以下、変調光32と呼ぶ)を、送信光34とモニタ光36に分割する。変調光32は、3つ以上の振幅をとる光信号(すなわち、多値化された光信号)である。
【0019】
送信光34は例えば、例えば光伝送路38(例えば、光ファイバ)に送出される。一方、モニタ光36は光検出器33に入力される。光検出器33はモニタ光36を、モニタ光36の光強度に応じて大きさが変化する光電流40に変換する。
【0020】
光送信機4は更に、光検出器33に接続された電流電圧変換装置42と、電流電圧変換装置42に一端が接続され、他端が制御装置2に接続されたDCブロック18bとを有する。電流電圧変換装置42は例えば、トランス・インピーダンス・アンプである。
【0021】
電流電圧変換装置42は光電流40を、光電流40の大きさに応じて電圧(すなわち、基準電位との電位差)が変化する電気信号44に変換する。すなわち電気信号44は、変調光32から生成される信号である。DCブロック18bは、電気信号44の交流成分46を抽出して、制御装置2に入力する。
【0022】
制御装置2は、DSP6を制御することで、変調信号22を間接的に制御する。図3は、変調信号22の時間変化の一例を示す図である。横軸は時間である。縦軸は、変調信号の電圧である。Vbiasは、バイアス電圧14である。
【0023】
図3に示す例では、変調信号22は4値信号である。すなわち、変調信号22の電圧は、互いに異なる4つの電圧V1~V4の一つ(例えば、電圧V2)に保たれた後、4つの電圧V1~V4のうちの別の電圧(例えば、電圧V3)または元の電圧(例えば、電圧V2)に保たれる。すなわち変調信号22は、一定の時間一定に保たれる電圧(すなわち、レベル)の更新(すなわち、変更または維持)が繰り返される信号である。
【0024】
以下に示す例では、変調信号22は4値信号である。変調信号22は、変調器28に印加されている間に4つのレベル(ここでは、4つの電圧V1~V4)とることで、変調器28に4つの値を示す光信号(ここでは、変調光32)を生成させる。ここに示す例では、変調光32の振幅が示す4つ値は、10進数で表すと0,1,2,3である。なお信号の「レベル」とは、信号の離散的な物理量(例えば、電圧や光強度)であって一定時間持続する物理量のことである。
【0025】
あるレベル(例えば、V1)と、このレベルより高いレベルのうち最も低いレベル(ここでは、V2)の差(ここでは、V2-V1)は以下、レベル間隔と呼ばれる。図3に示す変調信号22のレベル間隔は、V2-V1、V3-V2およびV4-V3である。
【0026】
図4は、変調器28の変調特性48の一例を示す図である。横軸は、変調器28に印加される電圧(以下、印加電圧と呼ぶ)である。縦軸は、変調器28から出力される光の相対強度(すなわち、消光比)である。図4に示すように、変調器28(ここでは、電界吸収型変調器)の変調特性は、消光比が印加電圧に対して線形に変化しない非線形性を示す。
【0027】
図5はバイアス電圧14が、変調特性48の線形領域50の中心に設定された場合に生成される変調光32のアイパターン54aの一例を示す図である。「線形領域50」とは、消光比が印加電圧に対して略線形に変化する印加電圧の範囲のことである。変調特性48に示された白抜きのドット51は、変調器28のバイアス点である(以下、同様)。
【0028】
図5には、変調器28の変調特性48と、変調信号22のアイパターン52aと、変調光32のアイパターン54aが示されている。変調特性48の横軸は、印加電圧(例えば、変調信号22の電圧)である。変調特性48の縦軸は、変調器28から出力される光(例えば、変調光32)の光強度である。ここでは変調器28に入力される連続光24の光強度は、変調器28の印加電圧が0Vの時に出力光が1mWになるように設定されている。
【0029】
変調信号22のアイパターン52aの時間軸56は、上側ほど遅い時間を示している。アイパターン52aの電圧軸58は、変調信号22の電圧を示している。アイパターン52aは、電圧軸58を垂直方向に平行移動して変調特性48の横軸に重ねると、電圧軸58の目盛りと変調特性48の横軸の目盛りが一致するように描かれている。後述する図6等においても同様である。
【0030】
変調光32のアイパターン54aの時間軸60は、右側ほど遅い時間を示している。アイパターン54aの光強度軸62は、変調光32の光強度を示している。アイパターン54aは、光強度軸62を水平方向に平行移動して変調特性48の縦軸に重ねると、光強度軸62の目盛りと変調特性48の縦軸の目盛りが一致するように描かれている。後述する図6等についても同様である。
【0031】
図5に示すように、変調信号22のレベル(すなわち、変調器28の印加電圧)が、線形領域50内で変化する場合には、変調信号22のアイパターン52aと変調光32のアイパターン54aは略同形になる。従って、変調信号22のレベル間隔(すなわち、アイの高さ)が均一であれば、変調光32のレベル間隔も均一になる。
【0032】
図6はバイアス電圧14が、線形領域50の中心より低い電圧に設定された場合に生成される変調光32のアイパターン54bの一例を示す図である。図6には、変調器28の変調特性48と、変調信号22のアイパターン52bと、変調光32のアイパターン54bが示されている。
【0033】
図6に示すように、変調信号22のレベルが、線形領域50から食み出して変化すると、変調光32のアイパターン54bは、変調信号22のアイパターン52bを変形したパターンになる。従って、変調信号22のレベル間隔が均一でも、変調光32のレベル間隔は不均一になる。
【0034】
変調光32のレベル間隔(すなわち、アイの高さ)が均一でないと、送信光34(図2参照)を受信した光受信機が送信光34を誤って復調する頻度が高くなる。そこで、復調誤りの頻度(すなわち、符号誤り率)が高くならないように、制御装置2は、変調信号22のレベル間隔を調節する。
【0035】
図7は、線形領域50の中心より低いバイアス電圧の設定後に変調信号22を制御装置2が制御した場合に生成される変調光32のアイパターン54cの一例を示す図である。図7には、変調器28の変調特性48と、変調信号22のアイパターン52cと、変調光32のアイパターン54cが示されている。
【0036】
図6に示す例と同様にバイアス電圧14は、線形領域50の中心より低い電圧に設定される(バイアス点51参照)。制御装置2が変調信号22を制御すると、変調特性48の傾きが小さい領域では変調信号22のレベル間隔が広くなり、変調特性の傾きが大きい領域では変調信号22のレベル間隔が狭くなる。その結果、変調光32のアイパターン54cのレベル間隔は略均一になる(「(1-7)レベル調節部75」参照)。
【0037】
ところで、光伝送路38を送信光34が伝搬すると、光伝送路38の群速度分散により送信光34の波形が変形する。送信光34の変形が大きくなると、符号誤り率が高くなる。そこで変調器28のバイアス点51は、変調光32の変形が少ない電圧に設定される。
【0038】
例えば変調器28のバイアス電圧14は、変調器28のαパラメータが略ゼロになる電圧に設定される。送信光34の変形は伝送距離が長くなるほど大きくなるので、送信光34の変形を小さくするバイアス電圧14(例えば、αパラメータがゼロになる電圧)は、伝送距離が長くなるほど重要になる。
【0039】
多くの場合、αパラメータがゼロになる電圧は、変調特性48の線形領域50の中心(以下、線形中心と呼ぶ)とは一致しない。従ってαパラメータがゼロになる電圧にバイアス電圧14を設定すると、変調光32のレベル間隔は不均一になる(図6参照)。実施の形態1の制御装置2によれば、バイアス電圧14のこの様な設定により不均一になった変調光32のレベル間隔が均一になるので、受信機における符号誤り率の増加を抑制できる。
【0040】
図8~9は、実施の形態の光送信機4におけるドライバー出力20、変調信号22、変調光32、および電気信号44の交流成分46(以下、モニタ信号と呼ぶ)のアイパターンの一例を示す図である。図8~9には、バイアス電圧14が線形中心に設定された場合の各信号のアイパターン、およびバイアス電圧14が線形中心より低い電圧に変更された直後の各信号のアイパターンが示されている。図8~9は、シミュレーションにより得られたアイパターンである。後述する図22~23等についても同様である。
【0041】
図8(a)には、ドライバー出力20のアイパターンが示されている。左側のパターンは、バイアス電圧14が線形中心に設定された時のアイパターンである(図8(b)~図9(b)についても同様)。右側のパターンは、バイアス電圧14が線形中心より低い電圧に変更された直後のアイパターンが示されている(図8(b)~図9(b)についても同様)。図8(a)の右図に示すように、バイアス電圧14が下がった直後は、ドライバー出力20のアイパターンに変化はない。
【0042】
図8(b)には、変調信号22のアイパターンが示されている。図8(b)に示すように、バイアス電圧14が下がると、変調信号22のレベルも下がる。
【0043】
図9(a)には、変調光32のアイパターンが示されている。図9(a)に示すようにバイアス電圧14が下がると、変調特性48(図6参照)の非線形性により、変調光32の2番目に低いレベルL1(図9(a)参照)と3番目に低いレベルL2が、最も低いレベルL0に近づく。換言するならば、2番目に低いレベルL1と3番目に低いレベルL2に挟まれたミドルアイME1が、最も低いレベルL0に近づく。
【0044】
図9(b)には、モニタ信号46のアイパターンE2が示されている。図9(a)に示すように変調光32のミドルアイME1が最も低いレベルL0に近づくと、モニタ信号46のミドルアイME2も最も低いレベルL30に近づく(図9(b)参照)。
【0045】
変調信号22のレベル間隔を調節する制御装置2(図1参照)は、ハイ側信号生成部64とロー側信号生成部66とハイ側ピーク値検出部68とロー側ピーク値検出部70を有する。制御装置2は更に、ハイ側平均値検出部72とロー側平均値検出部74を有する。制御装置2は更に、レベル調節部75を有する。
【0046】
(1-1)ハイ側信号生成部64
図10は、ハイ側信号生成部64のハードウエア構成の一例を示す回路図である。ハイ側信号生成部64は例えば、出力端子がハイ側ピーク値検出部68とハイ側平均値検出部72に接続されたオペレーショナル・アンプリファイアOP1を有する。オペレーショナル・アンプリファイアは以下、オペアンプと呼ばれる。ハイ側信号生成部64は更に、オペアンプOP1の反転入力端子と基準電位(すなわち、グラウンド)との間に接続された抵抗R1とを有する。ハイ側信号生成部64は更に、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子の間に接続された抵抗R2と、オペアンプOP1の非反転入力端子とDCブロック18bの間に接続された抵抗R3とを有する。
【0047】
図11は、オペアンプOP1が出力する信号(以下、ハイ側オペアンプ信号と呼ぶ)のアイパターン78の一例を示す図である。横軸は時間である。縦軸は、ハイ側オペアンプ信号の電圧である。
【0048】
図10に示すように、オペアンプOP1の正側電源端子には、プラスの電圧を出力する正電源が接続される。オペアンプOP1の負側電源端子には、基準電位が接続される。従って、モニタ信号46の極性が正の時には、オペアンプOP1は、非反転入力端子に入力されるモニタ信号46を増幅した信号を出力する。モニタ信号46の増幅率は、抵抗R1の抵抗値r1と抵抗R2の抵抗値r2によって定まる増幅率A(=(r1+r2)/r1)である。モニタ信号46の極性が負の時には、オペアンプOP1は基準電位Gを出力する。以下の説明では、r1はr2より十分大きいとする。この場合、増幅率Aは略1である。ただし増幅率Aは、1以外の倍率であっても良い。
【0049】
ハイ側信号生成部64は、ハイ側オペアンプ信号を出力する。ハイ側信号生成部64が出力する信号は以下、ハイ側信号76(図2参照)と呼ばれる。従って、ここに示す例では、図11のアイパターン78はハイ側信号76のアイパターンでもある。
【0050】
図10~11を参照して例示したように、ハイ側信号76は、モニタ信号46の極性が正またはモニタ信号の大きさがゼロ(例えば、0V)の時には、モニタ信号46のレベルに応じたレベルL12,L11,L10(図11参照)をとる。図10~11を参照して説明した例では、「モニタ信号46のレベルに応じたレベル」は、モニタ信号46のレベルを増幅率A(1を含むゼロより大きい倍率)で増幅したレベルである(以下、同様)。
【0051】
ハイ側信号76は、モニタ信号46の極性が負の時には、一定のレベル(以下、ダミーレベルと呼ぶ)をとる。図10~11を参照して説明した例では、ダミーレベルは基準電位Gである。この場合、ダミーレベルは、モニタ信号46の最も低いレベルL10である。
【0052】
ダミーレベルは、基準電位でなくても良い。但し、ダミーレベルと基準電位の乖離が大きくなると、後述する「ミドルアイの位置制御」等でレベル調節の誤りや不正確なレベル調節が行われる。従って、ダミーレベルと基準電位の乖離は、小さいほど好ましい(後述するロー側信号90のダミーレベルについても同様)。
【0053】
ところで、図10に示す回路では、ハイ側信号生成部64はオペアンプOP1の出力を直接出力している。しかしハイ側信号生成部64は、反転回路によってオペアンプOP1の出力を反転(すなわち、極性の逆転)してから出力しても良い。これは、ハイ側信号76(すなわち、ハイ側信号生成部64の出力)に基づく処理で重要な量は、ハイ側信号76のレベルの大きさ(すなわち、絶対値)だからである。後述するロー側信号生成部66等の出力についても、同様である。
【0054】
図10に示す回路は、アナログ回路である。しかしハイ側信号生成部64は、DSP等のデジタル回路によって実現されても良い。後述するロー側信号生成部66、ハイ側ピーク値検出部68、ロー側ピーク値検出部70、ハイ側平均値検出部72、およびロー側平均値検出部74についても同様である。
【0055】
(1-2)ロー側信号生成部66
図12は、ロー側信号生成部66のハードウエア構成の一例を示す回路図である。ロー側信号生成部66は、ハイ側信号生成部64に類似している。従って、ハイ側信号生成部64と実質的に同じ部分については同一の符号を付して、説明を省略または簡単にする。
【0056】
ロー側信号生成部66は例えば、オペアンプOP2と、オペアンプOP2の反転入力端子と基準電位との間に接続された抵抗R1とを有する。ロー側信号生成部66は更に、オペアンプOP2の反転入力端子と出力端子の間に接続された抵抗R2と、オペアンプOP2の非反転入力端子とDCブロック18bの間に接続された抵抗R3を有する。ロー側信号生成部66は更に、入力端子がオペアンプOP2の出力端子に接続され、ロー側ピーク値検出部70およびロー側平均値検出部74に出力端子が接続された反転回路84を有する。
【0057】
図13は、オペアンプOP2が出力する信号(以下、ロー側オペアンプ信号と呼ぶ)のアイパターン86の一例を示す図である。横軸は時間である。縦軸は、電圧である。
【0058】
図12に示すように、オペアンプOP2の正側電源端子には、基準電位が接続される。オペアンプOP2の負側電源端子には、マイナスの電圧を出力する負電源が接続される。従って、モニタ信号46の電圧が正の場合には、オペアンプOP2は基準電位Gを出力する。
【0059】
モニタ信号46の極性が負の場合には、オペアンプOP2は、非反転入力端子に入力されるモニタ信号46を増幅した信号を出力する。モニタ信号46の増幅率は、「(1-1)ハイ側信号生成部64」で説明した増幅率Aである。ここに示す例では、増幅率Aは略1である。ロー側オペアンプ信号の増幅率は、ハイ側オペアンプ信号の増幅率は同じ増幅率である。
【0060】
反転回路84は、ロー側オペアンプ信号(すなわち、オペアンプOP2の出力)を反転する。ロー側信号生成部66は、反転されたロー側オペアンプ信号を出力する。ロー側信号生成部66(図2参照)の出力は以下、ロー側信号90と呼ばれる。
【0061】
図14は、ロー側信号生成部66が出力するロー側信号90(図2参照)のアイパターン92の一例を示す図である。図14に示すように、ここに示す例では、ロー側信号90のアイパターン92は、ロー側オペアンプ信号のアイパターン86(図13参照)の極性を反転させたパターンである。
【0062】
図12~14を参照して例示したように、ロー側信号90は、モニタ信号46の極性が負またはモニタ信号レベルの大きさがゼロ(例えば、0V)の時には、モニタ信号のレベルに応じたレベルL22,L21,L20(図14参照)をとる。図12~14を参照して説明した例では、「モニタ信号46のレベルに応じたレベル」は、モニタ信号46のレベルを増幅率Aで増幅し更に反転レベルである。
【0063】
ロー側信号90は、モニタ信号46の極性が正の時には、ダミーレベル(すなわち、一定のレベル)をとる。図12~14を参照して説明した例では、ロー側信号90のダミーレベルは基準電位Gである。この場合、ダミーレベルは、モニタ信号46の最も低いレベルL20である。
【0064】
ところで図12に示す回路では、ロー側信号生成部66は反転回路84を有している。しかしロー側信号生成部66は、反転回路84を有さなくても良い。
【0065】
(1-3)ハイ側ピーク値検出部68
図15は、ハイ側ピーク値検出部68のハードウエア構成の一例を示す回路図である。ハイ側ピーク値検出部68は例えば、非反転入力端子がハイ側信号生成部64に接続されたオペアンプOP3と、オペアンプOP3の反転入力端子と出力端子との間に接続されたダイオードD1とを有する。ダイオードD1は、オペアンプOP3の出力端子からダイオードD1に向かって流れる電流を通過させ、ダイオードD1からオペアンプOP3の出力端子に向かう電流の流れを阻止するように接続される。
【0066】
ハイ側ピーク値検出部68は更に、ダイオードD1のオペアンプOP3とは反対側の一端と基準電位との間に接続されたキャパシタC1を有する。ハイ側ピーク値検出部68は更に、キャパシタC1に並列接続された抵抗R3を有する。図15に示すように、オペアンプOP3の正側電源端子には、プラスの電圧を出力する正電源が接続される。一方、オペアンプOP3の負側電源端子には、基準電位が接続される。
【0067】
オペアンプOP3の非反転入力端子には、ハイ側信号生成部64(図2参照)からのハイ側信号76が入力される。ハイ側信号76の電圧がキャパシタC1の電圧より高い場合には、オペアンプOP3はキャパシタC1を充電する。一方、ハイ側信号76の電圧がキャパシタC1の電圧より低い場合には、ダイオードD1が逆バイアスされ、キャパシタC1からオペアンプOP3には電流が流れない。
【0068】
オペアンプOP3からの電流によりキャパシタC1に充電された電荷は、抵抗R3を介して徐々に放電される。ハイ側ピーク値検出部68は所謂、ピーク検出器である。図15に示す例では、ハイ側ピーク値検出部68は、キャパシタC1の電圧をそのまま出力する。しかし、ハイ側ピーク値検出部68は、キャパシタC1の両端間の電圧を0以外の倍率で増幅してから出力しても良い。
【0069】
ハイ側ピーク値検出部68が生成する信号96(以下、ハイ側ピーク値信号と呼ぶ)は、ハイ側信号76がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベル(例えば、図11のレベルL12)に応じたレベルをとる。ハイ側ピーク値信号96のレベルは以下、第4レベルと呼ばれる。ハイ側ピーク値信号96の第4レベルの絶対値は例えば、ハイ側信号76(図11参照)のレベルL12の絶対値(例えば、0.32V)と同じである。
【0070】
(1-4)ロー側ピーク値検出部70
ロー側ピーク値検出部70のハードウエア構成は例えば、図15を参照して説明したハイ側ピーク値検出部68のハードウエア構成と実質的に同じである。従って、ロー側ピーク値検出部70のハードウエア構成の説明は省略する。但し,オペアンプOP3の非反転入力端子には、ロー側信号生成部66が接続される。
【0071】
ロー側ピーク値検出部70が生成する信号98(以下、ロー側ピーク値信号と呼ぶ)は、ロー側信号90がとるレベルうち最も絶対値が大きいレベル(例えば、図14のレベルL22)に応じたレベルをとる。ロー側ピーク値信号98のレベルは以下、第5レベルと呼ばれる。ロー側ピーク値信号98の第5レベルの絶対値は例えば、ロー側信号90のレベルL22(図14参照)の絶対値(例えば、0.24V)と同じである。
【0072】
ロー側ピーク値検出部70は、ハイ側ピーク値検出部68と同様に、キャパシタC1の両端間の電圧(以下、キャパシタ電圧と呼ぶ)を増幅して出力しても良い。但し、キャパシタ電圧の増幅率は、ハイ側ピーク値検出部68のキャパシタ電圧の増幅率と同じにする。
【0073】
(1-5)ハイ側平均値検出部72
図16は、ハイ側平均値検出部72のハードウエア構成の一例を示す回路図である。ハイ側平均値検出部72は例えば、一端がハイ側信号生成部64に接続され他端がレベル調節部75に接続された抵抗R4を有する。ハイ側平均値検出部72は更に、一端が基準電位に接続され、他端が抵抗R4のレベル調節部75側の一端に接続されたキャパシタC2を有する。図16に示されたハイ側平均値検出部72は、入力された電圧を平均化するRC回路である。このRC回路の時定数は、キャパシタC2の両端間の電圧がハイ側信号76の電圧の平均値に略比例するように、十分長く設定される。
【0074】
ハイ側平均値検出部72は、ハイ側信号76がとるレベルの平均値(以下、第1平均値と呼ぶ)に応じたレベル(以下、第6レベルと呼ぶ)をとるハイ側アベレージ信号100を生成する。「ハイ側信号76がとるレベルの第1平均値」は例えば、ハイ側信号76の各レベルL10,L11,L12(図11参照)の平均値である。
【0075】
(1-6)ロー側平均値検出部74
ロー側平均値検出部74のハードウエア構成は、ハイ側平均値検出部72のハードウエア構成と実質的に同じである。従って、ロー側平均値検出部74のハードウエア構成の説明は省略する。但し抵抗R4のレベル調節部75とは反対側の一端は、ロー側信号生成部66に接続される。
【0076】
ロー側平均値検出部74は、ロー側信号90がとるレベルの平均値(以下、第2平均値と呼ぶ)に応じたレベル(以下、第7レベルと呼ぶ)をとるロー側アベレージ信号102を生成する。「ロー側信号90がとるレベルの第2平均値」は例えば、ロー側信号90の各レベルL20,L21,L22(図14参照)の平均値である。
【0077】
(1-7)レベル調節部75
(1-7―1)レベル調節部75の構造
図17は、レベル調節部75のハードウエア構成の一例を示す回路図である。レベル調節部75は例えば、CPU(Central Processing Unit)104、メモリ106、および不揮発性メモリ108を有する。メモリ106は例えば、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性メモリ108は例えば、フラッシュメモリである。
【0078】
レベル調節部75は更に、バス110、およびバス110に接続されたインターフェース112aを有する。レベル調節部75は更に、インターフェース112aとハイ側ピーク値検出部68の間に接続されたアナログ・デジタル変換器114a(以下、ADC114aと呼ぶ;以下同様)を有する。レベル調節部75は更に、バス110に接続されたインターフェース112b、およびインターフェース112bとハイ側平均値検出部72の間に接続されたアナログ・デジタル変換器114bを有する。レベル調節部75は更に、バス110に接続されたインターフェース112c、およびインターフェース112cとロー側ピーク値検出部70の間に接続されたアナログ・デジタル変換器114cを有する。レベル調節部75は更に、バス110に接続されたインターフェース112d、およびインターフェース112dとロー側平均値検出部74の間に接続されたアナログ・デジタル変換器114dを有する。レベル調節部75は更に、DSP6とバス110の間に接続されたインターフェース112eを有する。
【0079】
CPU104はバス110を介してメモリ106に結合され、例えば不揮発性メモリ108に記録されたプログラムを実行するように構成されている。レベル調節部75のハードウエア構成は、図17に示された回路には限られない。レベル調節部75は例えば、FPGA(Field-Programable Gate Array)であっても良い。
【0080】
レベル調節部75は、デジタル信号10を多値信号12(ここでは、4値信号)に変換するDSP6を制御する。レベル調節部75は更に、バイアス・コントローラ16を制御する。
【0081】
以下の説明では、ここまでの説明と同様に、変調信号22は4値信号とし、ハイ側信号生成部64は、オペアンプOP1(図10参照)の出力信号をそのまま出力するとする。一方、ロー側信号生成部66は、ここまでの説明とは異なり反転回路84(図12参照)を有さずに、オペアンプOP2の出力信号をそのまま出力するとする。
【0082】
(1-7―2)レベル調節部75の動作
図18は、レベル調節部75が実行する変調信号の制御方法の一例を示す図である。
【0083】
レベル調節部75は先ず、DSP6が生成する多値信号12のレベルを調節することで、モニタ信号46のミドルアイME2(図9(b)参照)の位置を制御する(ステップS2)。レベル調節部75は更に、DSP6が生成する多値信号12のレベルを調節することで、モニタ信号46のアッパーアイUE2の高さ(すなわち、レベル間隔)を制御する(ステップS4)。レベル調節部75は更に、DSP6が生成する多値信号12のレベルを調節することで、モニタ信号46のローワーアイLE2の高さを制御する(ステップS6)。ステップS6の後、レベル調節部75はステップS2に戻る。レベル調節部75は、ステップS2~S6を繰り返し実行する。
【0084】
ここに示す例では、ステップS2~S6の繰り返しにより、ミドルアイME2、アッパーアイUE2およびローワーアイLE2それぞれの高さが略等しくなる。すなわち、ステップS2~S6の繰り返しにより、多値光通信に適した均一なレベル間隔を有する変調光32が生成される。
【0085】
但し、光送信機4に適用される変調方式が不均一なレベル間隔を定めている場合には、レベル調節部75はモニタ信号46のアイの高さが不均一になるように多値信号12のレベルを調節しても良い。この様な調節は例えば、後述する第1~第3目標値T1,T2,T3を適合的に設定することで実現できる。
【0086】
ローワーアイとは、最も低いレベル(例えば、モニタ信号46のレベルL30)と2番目に低いレベル(例えば、モニタ信号46のレベルL31)に挟まれた開口領域のことである(図9(b)参照)。アッパーアイとは、最も高いレベル(例えば、モニタ信号46のレベルL33)と2番目に高いレベル(例えば、モニタ信号46のレベルL32)に挟まれた開口領域のことである。ミドルアイとは、アッパーアイとローワーアイに挟まれた開口領域のことである。
【0087】
図18に示す例では、ステップS4の後にステップS6が実行されるが、ステップS6はステップS2とステップS4の間に実行されても良い。ステップS2~S6は、CPU104により実行される。
【0088】
ここからは、線形中心(すなわち、線形領域50の中心)に設定されていたバイアス電圧14が下げられ後にレベル調節部75が行う処理に沿って、ステップS2~S6を説明する。バイアス電圧14が線形中心から下げられると、変調光32の2番目と3番目に低いレベルL1,L2は最も低いレベルL0側に移動する(図9(a)の右図参照)。従って、モニタ信号46の2番目と3番目に低いレベルL31,L32も最も低いレベルL30側に移動する(図9(b)の右図参照)。その結果、変調光32およびモニタ信号46のレベル間隔は不均一になる(図9(a)~(b)の右図参照)。バイアス電圧14は例えば、変調器28の周囲温度が変化した場合に、レベル調節部75からの指令を受けたバイアス・コントローラ16によって変更される。
【0089】
(a)ミドルアイの位置制御
図19は、ステップS2(以下、ミドルアイの位置制御と呼ぶ)の一例を示すフローチャートである。ステップS2によれば、モニタ信号46のミドルアイME2(図9(b)参照)の中心とアイパターンE2の中心は略一致する。
【0090】
― ステップS12 ―
CPU104は先ず、ハイ側ピーク値信号96のレベルを取得する。具体的には、ADC114a(図17参照)がハイ側ピーク値信号96のレベルLhigh(すなわち第4レベル)をデジタル信号に変換し、CPU104がデジタル信号に変換されたハイ側ピーク値信号96のレベルLhighを取得する。CPU104が取得する他のレベル(例えば、ロー側ピーク値信号98のレベル)についても同様である。
【0091】
図20は、ハイ側信号76のアイパターン116の一例を示す図である。ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighは上述したように、ハイ側信号76がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベル(図20ではL12)に応じたレベルである。ここに示す例では、CPU104が取得するレベルLhighは、ハイ側信号76のレベルL12(=0.32V)と同じレベルである。
【0092】
― ステップS14 ―
ステップS12の後にCPU104は、ロー側ピーク値信号98のレベルLlow(第5レベル)を取得する。図21は、ロー側信号90のアイパターン118の一例を示す図である。ここで説明する例では、ロー側信号生成部66はオペアンプOP2(図12参照)の出力をそのまま出力するので、図21のアイパターン118は、ロー側オペアンプ信号のアイパターン86(図13参照)である。
【0093】
CPU104が取得するロー側ピーク値信号98のレベルLlowは、ロー側信号90がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベル(図21ではレベルL22)に応じたレベルである。ここに示す例では、CPU104が取得するレベルLlowは、ロー側信号90がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルL22(=-0.24V)と同じレベルである。
【0094】
図19に示された例では、ステップS14はステップS12の後に実行されるが、ステップS14はステップS12の前に実行されても良い。
【0095】
― ステップS16 ―
ステップS14の後にCPU104は、ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighの絶対値(例えば、0.32V)とロー側ピーク値信号98のレベルLlowの絶対値(例えば、0.24V)の差(例えば、0.8V)を算出する。ステップS14で算出される差(=|Lhigh|-|Llow|)は以下、ピーク値差ΔPeakと呼ばれる。
【0096】
ここで説明する例では、ハイ側ピーク値信号96の極性は正なので、ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighの絶対値|Lhigh|と、ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighとは一致する。但し、ハイ側信号生成部64(図10参照)のオペアンプOP1の出力が反転回路により反転される場合には、ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighの絶対値|Lhigh|と、ハイ側ピーク値信号96のレベルLhighとは極性が反対になる。
【0097】
一方ここで説明する例では、ロー側ピーク値信号98の極性は負なので、ロー側ピーク値信号98のレベルLlowの絶対値|Llow|と、ロー側ピーク値信号98のレベルLlowとは極性が反対である。但し、ロー側信号生成部66が反転回路を有する場合(図12参照)には、ロー側ピーク値信号98のレベルLlowの絶対値|Llow|と、ロー側ピーク値信号98のレベルLlowとは一致する。
【0098】
― ステップS18 ―
ステップS16の後CPU104は、ハイ側ピーク値信号96とロー側ピーク値信号98のピーク値差ΔPeak(=|Lhigh|-|Llow|)と第1目標値T1の差分(=ΔPeak-T1)の絶対値が第1許容値ε1以下であるか否か判定する(ステップS18)。第1許容値ε1は、ゼロより大きい数である。
【0099】
ここに示す例では、第1目標値T1は0Vである。モニタ信号46のレベル間隔が均一な場合、ピーク値差ΔPeakは0Vになるので、ここに示す例では第1目標値T1を0Vとする。但し第1目標値T1は、0Vより大きい電圧であっても良い。
【0100】
上記差分(=ΔPeak-T1)の絶対値が第1許容値ε1以下の場合、CPU104はステップS2を終了する。第1許容値ε1は例えば、ピーク値差ΔPeakが第1目標値に一致する場合のハイ側ピーク値信号96のレベルの絶対値|Lhigh|より十分に小さい値(例えば、|Lhigh|×0.1)である。
【0101】
上記差分(=ΔPeak-T1)の絶対値が第1許容値ε1より大きいの場合、CPU104はステップS20に進む。
【0102】
― ステップS20 ―
ステップS20ではCPU104は、ピーク値差ΔPeakが第1目標値T1と第1許容値ε1の和(=T1+ε1)より大きいか否か判定する(ステップS20)。第1目標値T1と第1許容値ε1の和(=T1+ε1)は以下、ΔPeak許容範囲上限と呼ばれる。第1目標値T1と第1許容値ε1の差(=T1-ε1)は以下、ΔPeak許容範囲下限と呼ばれる。
【0103】
ピーク値差ΔPeakがΔPeak許容範囲上限より大きい場合、CPU104はステップS22に進む。ピーク値差ΔPeakがΔPeak許容範囲上限(=T1+ε1)以下の場合、CPU104はステップS24に進む。
【0104】
ステップS20はステップS18の後に行われるので、ステップS20でピーク値差ΔPeakが許容範囲上限(=T1+ε1)以下と判定された場合、ピーク値差ΔPeakは、ΔPeak許容範囲下限(=T1-ε1)より小さい。これは、ステップS18で|Peak-T1|が第1許容値ε1より大きいと判断された場合、ピーク値差ΔPeakは、許容範囲上限(=T1+ε1)より大きいか、許容範囲下限(=T1-ε1)より小さいかの何れかであるからである。
【0105】
― ステップS22 ―
ステップS22ではCPU104は、DSP6を制御して多値信号12の2番目に低いレベル(以下、1levelと呼ぶ)と3番目に低いレベル(以下、2levelと呼ぶ)とを上げる。この際、1levelと2levelのレベル差(=2level-1level)は一定に保たれる。
【0106】
なお、以下の説明では、多値信号12の最も低いレベルは0levelと呼ばれる。多値信号12の最も高いレベルは、3levelと呼ばれる。多値信号12のレベルの大小関係を不等式で表すと、0level<1level<2level<3levelとなる。ステップS22の後、CPU104はステップS12に戻る。
【0107】
CPU104は、ピーク値差ΔPeakと第1目標値T1の差分の絶対値(=|ΔPeak-T1|)が第1許容値ε1以下になるまでステップS12~S22を繰り返す。但し、ピーク値差ΔPeakがΔPeak許容範囲下限より小さくなった場合は、後述するステップS24を実行する。
【0108】
図22~23は、ミドルアイの位置制御が行われる前後の変調信号22等のアイパターンの一例を示す図である。図22~23は、ハイ側ピーク値信号96のレベルの絶対値|Lhigh|がロー側ピーク値信号98のレベルの絶対値|Llow|(正確には、|Llow|+T1+ε1)を超えると判定された後に、変調信号22等のアイパターンに起きる変化を示している。上記判定は、ステップS18~S20で行われる。すなわち図22~23は、|Lhigh|>|Llow|(図23(b)参照)と判定された後に、変調信号22等のアイパターンに起きる変化を示している。ここでは第1目標値T1は上述したように、0Vとする。
【0109】
図22(a)には、ドライバー出力20のアイパターンが示されている。左側のパターンは、バイアス電圧14が線形中心から下げられた直後のアイパターンである(図22(b)~23(b)についても同様)。この時点ではミドルアイの位置制御は、始まっていない。右側のパターンは、ミドルアイの位置制御が終了した時点のアイパターンである(図22(b)~23(b)についても同様)。図22(b)には、変調信号22のアイパターンが示されている。図23(a)には、変調光32のアイパターンが示されている。図23(b)には、モニタ信号46のアイパターンが示されている。
【0110】
図9(b)に示すように、バイアス電圧14が線形中心から下げられると、ハイ側ピーク値信号96のレベルの絶対値|Lhigh|(=|L33|)は、ロー側ピーク値信号98のレベルの絶対値|Llow|(=|L30|)より大きくなる。するとステップS18~S20により、ハイ側ピーク値信号96のレベルの絶対値|Lhigh|がロー側ピーク値信号98のレベルの絶対値|Llow|(正確には、|Llow|+T1+ε1)より大きいと判定される。その結果、レベル調節部75はステップS22に進み、ステップS12~S22が繰り返される。
【0111】
ステップS12~S22により多値信号12の2番目に低いレベル(1level)と3番目に低いレベル(2level)が上がると、ドライバー出力20の2番目に低いレベルL41と3番目に低いレベルL42も上がる(図22(a)の右図参照)。すると、変調信号22の2番目と3番目に低いレベルL51,L52が最も高いレベルL53に近づく(図22(b)の右図参照)。
【0112】
変調信号22のレベルが上記のように変化すると、変調光32の2番目と3番目に低いレベルL1,L2も最も高いレベルL3に近づく(図23(a)参照)。その結果、モニタ信号46の2番目に低いレベルL31と3番目に低いレベルL32も、最も高いレベルL33に近づく(図23(b)参照)。
【0113】
モニタ信号46は電気信号44の交流成分なので、平均電圧は常に0Vである。従ってモニタ信号46の2番目と3番目に低いレベルL31,L32が最も高いレベルL33に近づくとその反作用で、モニタ信号46の最も高いレベルL33(>0V)と最も低いレベルL30(<0V)は下がる。従って、最も高いレベルL33の絶対値は減少し、最も低いレベルL30の絶対値は増加する。その結果、ステップS18の判定式|ΔPeak-T1|の値は減少する。
【0114】
図23(b)の右図は、ステップS12~S24が繰り返され、ピーク値差ΔPeakと第1目標値T1の差分(=ΔPeak-T1)の絶対値が第1許容値ε1以下になった状態を示している。この状態では、モニタ信号46のミドルアイME2の中心とモニタ信号46のアイパターンE2の中心は略一致する。更に、アッパーアイUE2の高さとローワーアイLE2の高さは、略等しくなる。
【0115】
― ステップS24 ―
ステップS24は、例えばバイアス電圧14が線形中心から上げられ、ハイ側ピーク値信号96のレベルの絶対値|Lhigh|がロー側ピーク値信号98のレベルの絶対値|Llow|(正確には、|Llow|+T1-ε1)より小さくなった場合に行われる。ここでは、上述したように第1目標値T1は0Vとする。
【0116】
ステップS24ではCPU104はDSP6を制御して、多値信号12の2番目と3番目に低いレベル(すなわち、1levelと2level)を下げる。この時、2番目と3番目に低いレベルのレベル差(=2level-1level)は、ステップS22と同様に一定に保たれる。
【0117】
多値信号12の2番目と3番目に低いレベル1level,2levelが下がると、モニタ信号46の2番目と3番目に低いレベルL31,レベルL32は最も低いレベルL30に近づく。するとモニタ信号46の最も高いレベルL33(>0V)の絶対値(=|Lhigh|)は、増加する。一方、モニタ信号46の最も低いレベルL30(<0V)の絶対値(=|Llow|)は減少する。その結果、ハイ側ピーク値信号96とロー側ピーク値信号98のピーク値差ΔPeak(<0)は0Vに近づき、ステップS18で判定される「ピーク値差ΔPeakと第1目標値T1の差分(=ΔPeak-T1)の絶対値」は小さくなる。
【0118】
ステップS12~S20,S24が繰り返されるとやがて、ピーク値差ΔPeakと第1目標値T1(ここでは、0V)の差分(=ΔPeak-T1)の絶対値が第1許容値ε1以下になる。この時も、モニタ信号46のミドルアイME2の中心とアイパターンE2の中心は略一致し、アッパーアイUE2の高さとローワーアイLE2の高さは略等しくなる。
【0119】
以上のようにレベル調節部75は、ハイ側ピーク値信号96がとる第4レベルとロー側ピーク値信号98がとる第5レベルとに基づいて、多値信号12の2番目に低いレベルおよび3番目に低いレベルを調節する(ステップS22,S24参照)。レベルが調節された多値信号12はドライバー8により増幅された後、DCブロック18aを介してバイアス電圧14に重畳されて変調信号22になる。
【0120】
すなわちレベル調節部75は、ハイ側ピーク値信号96がとる第4レベルLhighとロー側ピーク値信号98がとる第5レベルLlowに基づいて、変調信号22の2番目と3番目に低いレベルL51,L52を間接的に調節する。具体的にはレベル調節部75は、ハイ側ピーク値信号96の第4レベルの絶対値とロー側ピーク値信号98の第5レベルの絶対値の差であるピーク値差ΔPeakが第1目標値T1に近づくように、変調信号22の2番目と3番目に低いレベルを調節する。
【0121】
― ミドルアイME2の位置とピーク値差ΔPeakの関係 ―
図24は、モニタ信号46におけるミドルアイME2の位置とピーク値差ΔPeakの関係を示す図である。
【0122】
図24(a)には、レベル間隔が均一な場合のモニタ信号46のアイパターンが示されている。この場合には図24(a)に示すように、モニタ信号46の最も高いレベルL33の絶対値と最も低いレベルL30の絶対値は等しい。従って、ピーク値差ΔPeakはゼロになる。
【0123】
図24(b)には、2番目に低いレベルL31と3番目に低いレベルL32が最も低いレベルL30側に偏っている場合のモニタ信号46のアイパターンが示されている。この場合には、モニタ信号46の最も高いレベルL33の絶対値は、最も低いレベルL30の絶対値より大きくなる。従って、ピーク値差ΔPeakはプラスになる。
【0124】
図24(c)には、2番目に低いレベルL31と3番目に低いレベルL32が最も高いレベルL33側に偏っている場合のモニタ信号46のアイパターンが示されている。この場合には図24(c)に示すように、モニタ信号46の最も高いレベルL33の絶対値は、最も低いレベルL30の絶対値より小さくなる。従って、ピーク値差ΔPeakはマイナスになる。
【0125】
レベル調節部75はこの性質を利用して例えば、ピーク値差ΔPeakがゼロになるように、モニタ信号46の2番目と3番目に低いレベルL31,L32を調節することで、モニタ信号46のレベル間隔を均一にする。換言するならばレベル調節部75は、ミドルアイME2(2番目と3番目に低いレベルL31,L32に挟まれたアイ)の位置を調節することで、モニタ信号46のレベル間隔を均一にする。
【0126】
(b)アッパーアイの高さ制御
ステップS2(すなわち、ミドルアイの位置制御)により、モニタ信号46のアッパーアイUE2の高さ(すなわち、レベル間隔)とローワーアイLE2の高さは略等しくなる(図23(b)参照)。しかし、ミドルアイME2の高さと、アッパーアイUE2の高さが同じになるとは限らない。同様に、ミドルアイME2の高さと、ローワーアイLE2の高さも同じになるとは限らない。
【0127】
図22~23に示す例では、ミドルアイME2の位置制御後のアッパーアイUE2(図23(b)の右図参照)は、ミドルアイME2より低くなっている。ローワーアイLE2についても同様である。
【0128】
ステップS4(以下、アッパーアイの高さ制御と呼ぶ)によれば、モニタ信号46のアッパーアイUE2の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。図25は、ステップS4の一例を示すフローチャートである。
【0129】
― ステップS32,S34―
CPU104は先ず、ハイ側アベレージ信号100の第6レベルL6を取得する(ステップS32)。CPU104は更に、ロー側アベレージ信号102の第7レベルL7を取得する(ステップS34)。
【0130】
図25に示された例では、ステップS34はステップS32の後に実行されるが、ステップS34はステップS32の前に実行されても良い。或いはステップS34は、ステップS6(以下、ローワーアイの高さ制御と呼ぶ)の中で実行されても良い。
【0131】
― ステップS36 ―
ステップS34の後にCPU104は、ステップS32で取得した第6レベルL6とステップS12(図19参照)で取得した第4レベルLhigh(ハイ側ピーク値信号96のレベル)の第1の比HSR(=L6/Lhigh)を算出する。第1の比HSRは以下、ハイ側レベル比と呼ばれる。
【0132】
― ステップS38 ―
ステップS36の後にCPU104は、ステップS36で算出したハイ側レベル比HSRと第2目標値T2の差分(=ΔHSR-T2)の絶対値が第2許容値ε2(>0V)以下であるか否か判定する(ステップS38)。ここに示す例では、第2目標値T2は、0.33である。モニタ信号46の各アイME2,UE2,LE2の高さが等しく且つ各レベルの出現頻度が等しい場合、ハイ側レベル比HSRは0.33になる。但し第2目標値T2は、0.33以外であっても良い。
【0133】
上記差分(=ΔHSR-T2)の絶対値が第2許容値ε2以下の場合、CPU104はステップS4(すなわち、アッパーアイの高さ制御)を終了する。第2許容値ε2は例えば、第2目標値より十分小さい値(例えば、0.03)に設定される。
【0134】
上記差分(=ΔHSR-T2)の絶対値が第2許容値ε2より大きいの場合、CPU104はステップS40に進む。
【0135】
― ステップS40 ―
ステップS38の後にCPU104は、ハイ側レベル比HSRが第2目標値T2と第2許容値ε2の和(=T2+ε2)より大きいか否か判定する(ステップS40)。第2目標値T2と第2許容値ε2の和(=T2+ε2)は以下、HSR許容範囲上限と呼ばれる。第2目標値T2と第2許容値ε2の差(=T2-ε2)は以下、HSR許容範囲下限と呼ばれる。ハイ側レベル比HSRがHSR許容範囲上限より大きい場合、CPU104はステップS42に進む。
【0136】
ハイ側レベル比HSRがHSR許容範囲上限(=T2+ε2)以下の場合、CPU104はステップS44に進む。ステップS40の判定はステップS38の後に行われるので、ステップS40でハイ側レベル比HSRがHSR許容範囲上限(=T2+ε2)以下と判定された場合、ハイ側レベル比HSRは、HSR許容範囲下限(=T2-ε2)より小さい。これは、ステップS38の判定で否と判断された場合、ハイ側レベル比HSRは、HSR許容範囲上限(=T2+ε2)より大きいか、許容範囲下限(=T2-ε2)より小さいかの何れかであるためである。
【0137】
― ステップS42 ―
ステップS42ではCPU104は、DSP6を制御して多値信号12の3番目に低いレベル(すなわち、2level)を下げる。ステップS42の後、CPU104は、アッパーアイの高さ制御を終了する。
【0138】
図26は、ステップS42が行われる前後のハイ側信号76のアイパターンの一例を示す図である。図26の左図は、ステップS42が行われる前のハイ側信号76のアイパターン116aの一例である。図26の右図は、ステップS42が行われた後のハイ側信号76のアイパターン116bの一例である。
【0139】
ハイ側信号76の2番目に低いレベルL11は、多値信号12の3番目に低いレベル(すなわち、2Level)に応じて生成されるレベルである。ステップS42が実行されると、ハイ側信号76のレベルL11が下がる(図26参照)。その結果、第2目標値T2(正確には、T2+ε2)より高かったハイ側レベル比HSRが減少し、第2目標値T2に近づく。従って、ミドルアイME2より低かったアッパーアイUE2(図23(b)の右図参照)の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。
【0140】
― ステップS44 ―
ステップS44ではCPU104は、DSP6を制御して多値信号12の3番目に低いレベル(すなわち、2level)を上げる。ステップS44の後、CPU104は、アッパーアイの高さ制御を終了する。
【0141】
ステップS44により、ハイ側信号76の2番目に低いレベルL11(図26参照)が上がる。その結果、ハイ側レベル比HSRは増加する。ステップS44はハイ側レベル比HSRが第2目標値T2(正確には、T2-ε2)より小さい場合に行われるので、ステップS44が実行されることで、低すぎたハイ側レベル比HSRは第2目標値T2に近づく。
【0142】
レベル調節部75はステップS32~S44により、多値信号12の3番目に低いレベル(すなわち、2level)を調節することで間接的に、変調信号22の3番目に低いレベルL52を調節する(図22(b)参照)。換言するならばレベル調節部75は、ハイ側アベレージ信号100がとる第6レベルとハイ側ピーク値信号96がとる第4レベルとの比(すなわち、ハイ側レベル比HSR)に基づいて、変調信号22の3番目に低いレベルL52を調節する。
【0143】
具体的には例えば、レベル調節部75は、ハイ側レベル比HSRが第2目標値T2に近づくように、変調信号22の3番目に低いレベルを調節する(ステップS42,S44参照)。この調節により、アッパーアイUE2の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。
【0144】
(c)ローワーアイの高さ制御
ステップS4(すなわち、アッパーアイの高さ制御)により、モニタ信号46のアッパーアイUE2の高さ(レベル間隔)は、ミドルアイME2の高さに近づく。しかし、ローワーアイLE2の高さとミドルアイME2の高さの違いは、ステップS4によっては解消されない。ステップS6(すなわち、ローワーアイの高さ制御)によれば、モニタ信号46のローワーアイLE2の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。
【0145】
図27は、ステップS6の一例を示すフローチャートである。
【0146】
― ステップS52 ―
CPU104は先ず、ステップS34(図25参照)で取得した第7レベルL7とステップS14(図19参照)で取得した第5レベルLlow(ロー側ピーク値信号98のレベル)との第2の比LSR(=L7/Llow)を算出する。第7レベルL7は、ロー側アベレージ信号102のレベルである。第2の比LSRは以下、ロー側レベル比と呼ばれる。
【0147】
― ステップS54 ―
ステップS52の後にCPU104は、ステップS52で算出したロー側レベル比LSRと第3目標値T3の差分(=ΔLSR-T3)の絶対値が第3許容値ε3(>0V)以下であるか否か判定する(ステップS54)。ここに示す例では、第3目標値T3は例えば、0.33である。
【0148】
モニタ信号46の各アイME2,UE2,LE2の高さが等しく且つ各レベルの出現頻度が等しい場合、ロー側レベル比LSRはハイ側レベル比HSRと同じく0.33になる。従って第2目標値T2および第3目標値T3を0.33とすることで、変調光32のレベル間隔が均一になり復調誤りを抑制できる。但し第3目標値T3は、第2目標値T2と同様、0.33以外であっても良い。
【0149】
上記差分(=ΔLSR-T3)の絶対値が第3許容値ε3以下の場合、CPU104はステップS6(すなわち、ローワーアイの高さ制御)を終了する。第3許容値ε3は例えば、第3目標値より十分小さい値(例えば、0.03)に設定される。
【0150】
上記差分(=ΔLSR-T3)の絶対値が第3許容値ε3より大きいの場合、CPU104はステップS56に進む。
【0151】
― ステップS56 ―
ステップS54の後にCPU104は、ロー側レベル比LSRが第3目標値T3と第3許容値ε3の和(=T3+ε3)より大きいか否か判定する(ステップS56)。第3目標値T3と第3許容値ε3の和(=T3+ε3)は以下、LSR許容範囲上限と呼ばれる。第3目標値T3と第3許容値ε3の差(=T3-ε3)は以下、LSR許容範囲下限と呼ばれる。ロー側レベル比LSRがLSR許容範囲上限より大きい場合、CPU104はステップS58に進む。
【0152】
ロー側レベル比LSRがLSR許容範囲上限(=T3+ε3)以下の場合、CPU104はステップS60に進む。ステップS56の判定はステップS54の後に行われるので、ステップS56でロー側レベル比LSRがLSR許容範囲上限(=T3+ε3)以下と判定された場合、ロー側レベル比LSRは、LSR許容範囲下限(=T3-ε3)より小さい。これは、ステップS54の判定で否と判断された場合、ロー側レベル比LSRは、LSR許容範囲上限(=T3+ε3)より大きいか、LSR許容範囲下限(=T3-ε3)より小さいかの何れかであるためである。
【0153】
― ステップS58 ―
ステップS58ではCPU104は、DSP6を制御して多値信号12の2番目に低いレベル(すなわち、1Level)を上げる。ステップS58の後、CPU104は、ローワーアイの高さ制御を終了する。
【0154】
図28は、ステップS58が行われる前後のロー側信号90のアイパターンの一例を示す図である。図28の左図は、ステップS58が行われる前のロー側信号90のアイパターン118aの一例である。図28の右図は、ステップS58が行われた後のロー側信号90のアイパターン118bの一例を示す図である。
【0155】
ロー側信号90の2番目に低いレベルL21は、多値信号12の2番目に低いレベル(すなわち、1Level)に応じて生成されるレベルである。従ってステップS58の実行により、ロー側信号90のレベルL21が上がる(図28参照)。その結果、第3目標値T3(正確には、T3+ε3)より高かったロー側レベル比LSRが減少し、第3目標値T3に近づく。従って、ミドルアイME2より低かったローワ―アイLE2の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。
【0156】
― ステップS60 ―
ステップS60ではCPU104は、DSP6を制御して多値信号12の2番目に低いレベル(すなわち、1level)を下げる。ステップS60の後、CPU104は、ローワーアイの高さ制御を終了する。
【0157】
ステップS60により、ロー側信号90の2番目に低いレベルL21(図28参照)が下がる。その結果、ロー側レベル比LSRは増加する。ステップS60はロー側レベル比LSRが第3目標値T3(正確には、T3-ε3)より小さい場合に行われるので、ステップS60が実行されることで、低すぎたロー側レベル比LSRは第3目標値T3に近づく。
【0158】
レベル調節部75はステップS52~S60により、多値信号12の2番目に低いレベル(すなわち、1level)を調節することで間接的に、変調信号22の2番目に低いレベルL51を調節する(図22(b)参照)。換言するならばレベル調節部75は、ロー側アベレージ信号102がとる第7レベルとロー側ピーク値信号98がとる第5レベルとの比(すなわち、ロー側レベル比LSR)に基づいて、変調信号22の2番目に低いレベルL51を調節する。
【0159】
具体的には例えば、レベル調節部75は、ロー側レベル比LSRが第3目標値T3に近づくように、変調信号22の2番目に低いレベルを調節する。この調節により、ローワーアイLE2の高さは、ミドルアイME2の高さに近づく。
【0160】
ステップS4~S6が実行されると、ステップS2によりモニタ信号46の中心に移動したミドルアイME2の位置は変動する。そこでレベル調節部75は図18に示すように、ステップS6の後にステップS2に戻ってミドルアイME2の位置を再調節する。その後レベル調節部75はステップS4,S6を再度実行し、アッパーアイUE2およびローワーアイLE2それぞれの高さを再度目標値に近づける。図18に示すように、レベル調節部75はステップS2~S6を繰り返し実行するので、各アイの高さ(すなわち、レベル間隔)は、最終的には略均一になる。
【0161】
ステップS2~S6は、外部からの指令により中止されるまで繰り返されても良いし、予め定められた回数繰り返された後に終了しても良い。或いは、ステップS2~S6は1回だけ実行されても良い。変調器28の非線形性が小さければ、1回の実行でもレベル間隔は略均一になる。
【0162】
図29~30は、ステップS2~S6の繰り返しにより得られる変調信号22等のアイパターンの一例を示す図である。図29(a)には、ドライバー出力20のアイパターンが示されている。左側のパターンは、最初のミドルアイの位置制御が終了した直後のアイパターンである(図29(b)~30(b)についても同様)。右側のパターンは、ステップS2~S6の繰り返しによりモニタ信号46のレベル間隔が略均一になった時点のアイパターンである(図29(b)~30(b)についても同様)。図29~30には、最初のミドルアイの位置制御が終了した時点で、モニタ信号46のアッパーアイUE2およびローワーアイLE2がミドルアイME2より低い場合が示されている(図30(b)参照)。
【0163】
図29(b)には、変調信号22のアイパターンが示されている。図30(a)には、変調光32のアイパターンが示されている。図30(b)には、モニタ信号46のアイパターンが示されている。
【0164】
図29~30に示す例では、ステップS2~S6の繰り返しにより、多値信号12の3番目に低いレベル(すなわち、2Level)が下がり、2番目に低いレベル(すなわち、1level)が上がる。すると、図29(a)の左図から右図への変化が示すように、ドライバー出力20の3番目に低いレベルL42が下がり、2番目に低いレベルL41が上がる。ドライバー出力20の変化は変調信号22に反映されその結果、変調光32のレベル間隔が変化する(図30(a)参照)。
【0165】
すると、図30(b)の左図から右図への変化が示すように、モニタ信号46の3番目に低いレベルL32が下がり2番目に低いレベルL31が上がる。
【0166】
その結果、ミドルアイME2より低かったアッパーアイUE2は高くなり、ミドルアイME2とアッパーアイUE2は略同じ高さになる(図30(b)参照)。同様に、ミドルアイME2より低かったローワーアイLE2は高くなり、ミドルアイME2とローワーアイLE2は略同じ高さになる(図30(b)参照)。すなわち、モニタ信号46のレベル間隔は略均一化になる。従って、変調光32のレベル間隔(図30(a)参照)も均一になるので、送信光34の復調誤りが抑制される。
【0167】
ところで以上の例では、ステップS4はアッパーアイUEの高さが1回調節されただけで終了し、次のステップ(すなわち、ステップS6)が実行される。ステップS6についても同様である。従って、アッパーアイUE2およびローワーアイLE2それぞれの高さ調節は、ステップS2~S6の繰り返しの中で交互に行われる。この様にアッパーアイUE2とローワーアイLE2の高さを交互に調節することで、モニタ信号46のレベル間隔が均一化される時間を短縮することができる。
【0168】
(2)参考例
図1等を参照して説明した例では、モニタ信号46sに基づいて多値信号12のレベルを調節することで、変調光32のレベル間隔を均一にする。しかし、モニタ信号46のレベルに基づかなくても、変調光32のレベル間隔を均一にすることは可能である。図31は、モニタ信号46のレベルに基づかずに変調光32のレベル間隔を均一する光送信機204の一例を示す図である。図32は、図31における信号の流れを示す図である。
【0169】
光送信機204の制御装置202は、図1等を参照して説明した制御装置2とは異なりレベル調節部275のみを有し、ハイ側信号生成部64等は有さない。光送信機204は更に、モニタ信号46を生成するための光検出器33等も有さない。
【0170】
レベル調節部275のハードウエア構成は、図17を参照して説明したレベル調節部75のハードウエア構成と略同じである。但し、図17を参照して説明したインターフェース112a~112dおよびADC114a~114dは有さない。不揮発性メモリ108には、DSP6の制御プログラムと共に変調器28の変調特性48(図4参照)が記録される。
【0171】
レベル調節部275のCPU104は、バイアス・コントローラ16を制御してバイアス電圧14(図32参照)を設定する。CPU104は更に、不揮発性メモリ108から変調特性48を読出し、読み出した変調特性48に基づいて例えば、変調光32のレベル間隔を均一にする多値信号12のレベル(0level~3level)を算出する。CPU104は、算出した多値信号12のレベルを実現するようにDSP6に指示する。
【0172】
従って、図31の制御装置202よっても、変調光32のレベル間隔を均一にすることは可能である。しかし変調特性は、変調器28の温度によって変化する。近年の光伝送装置では、消費電力を抑制するため、変調器28の温度を一定に保つことは稀である。従って、変調器28の変調特性に基づいて多値信号12のレベル間隔を算出するためには、予め多数の温度で変調器28ごとに変調特性を測定し、その結果を不揮発性メモリ108に記録することになる。これは、変調器28の周囲温度によって定まる正確な変調特性を用いて、多値信号12のレベルを算出するためである。このような技術(特に、多数の温度における変調特性の測定)は、煩雑で実用的でない。
【0173】
一方、図1等を参照して説明した制御装置2は、変調器28の変調特性に基づかずに多値信号12のレベルを調節するので、この様な問題を有さない。
【0174】
(3)変形例
(3-1)変形例1
変形例1の光送信機は、変調器28(図2参照)がマッハツェンダー型光変調器(Mach-Zehnder modulator;以下、MZMと呼ぶ)であること以外は、図1等を参照して説明した光送信機4の構造と略同じ構造を有する。
【0175】
図33~35は、変形例1の光送信機で行われる変調信号22のレベル調節を説明する図である。図33は、変調特性348の線形領域350の中心にバイアス電圧14が設定された場合に生成される変調光32のアイパターン354aの一例を示す図である。白抜きのドット351は、MZMのバイアス点を示している(以下、同様)。
【0176】
図33には、MZMの変調特性348と、変調信号22のアイパターン352aと、変調光32のアイパターン354aが示されている。図33に示した時間軸等は図5に示した時間軸56等と同様に描かれている。図34~35の時間軸等についても同様である。
【0177】
図33に示すように、変調信号22のレベル(すなわち、印加電圧)が、線形領域350内で変化する場合には、変調信号22のアイパターン352aと変調光32のアイパターン354aは略同形になる。従って、変調信号22のレベル間隔(すなわち、アイの高さ)が均一でれば、変調光32のレベル間隔も略均一になる。
【0178】
図34はバイアス電圧14が、線形領域350の中心より低い電圧に設定された場合に生成される変調光32のアイパターン354bの一例を示す図である。図34には、MZMの変調特性348と、変調信号22のアイパターン352bと、変調光32のアイパターン354bが示されている。
【0179】
図34に示すように、変調信号22のレベルが、線形領域350から食み出して変化すると、変調光32のアイパターン354bは、変調信号22のアイパターン352bの形から変化したパターンになる。従って、変調信号22のレベル間隔が均一でも、変調光32のレベル間隔は不均一になる。
【0180】
図35は、制御装置2によりレベル間隔が調節された変調光32のアイパターン354cの一例を示す図である。図35には、MZMの変調特性348と、変調信号22のアイパターン352cと、変調光32のアイパターン354cが示されている。
【0181】
図34に示す例と同様に、バイアス電圧14は、線形領域350の中心より低い電圧に設定される(バイアス点351参照)。制御装置2は、図18,19,25,27に示す手順に従って多値信号12のレベル間隔を調節する。
【0182】
すると、変調特性348の傾きが小さい領域(例えば、バイアス点351の低電圧側)では変調信号22のレベル間隔が広くなり、変調特性の傾きが大きい領域(例えば、バイアス点351の高電圧側)では変調信号22のレベル間隔が狭くなる(図35参照)。その結果、変調光32のアイパターン354cのレベル間隔が略均一になる(図35参照)。
【0183】
電界吸収型変調器の変調特性48(図5参照)とMZMの変調特性348は大きく異なっている。しかし、MZMの線形領域350(図33参照)およびその近傍における変調特性は、電界吸収型変調器の線形領域50(図5参照)およびその近傍における変調特性に類似している。従って、変調器28がMZMであっても、実施の形態の制御装置2によれば、変調光32のレベル間隔の調節(例えば、レベル間隔の均一化)が可能になる。変形例1は、図33~35に示すようにMZMに大振幅動作をさせる場合に、特に有益である。
【0184】
図33~35に示す例では、バイアス点351は、MZMの出力が印加電圧に対して増加する領域に設定される。しかし、バイアス点351は、MZMの出力が印加電圧に対して減少する領域に設定されても良い。
【0185】
変形例1によれば、実施の形態の制御装置2が適用される光送信機のバリエーションが増える。
【0186】
(3-2)変形例2
変形例2の光送信機は、変調器28の代わりに、光変調器と半導体光増幅器を有する光デバイス(以下、増幅器付き光変調器ユニットと呼ぶ)を用いること以外は、図1等を参照して説明した光送信機4と略同じ構造を有する。変形例2の増幅器付き光変調器ユニットは、線形領域で動作させる光変調器(例えば、電界吸収型変調器)と、この光変調器の出力を増幅する半導体光増幅器を有する。
【0187】
この様な光デバイスは、半導体光増幅器の利得飽和に基づく非線形性を示す。実施の形態の制御装置2によれば、増幅器付き光変調器ユニットが生成する変調光32のレベル間隔の調節が可能になる。
【0188】
変形例2によれば、実施の形態の制御装置2が適用される光送信機のバリエーションが増える。
【0189】
(3-3)変形例3
変形例3の制御装置2は、3つ又は5つ以上の値を示す多値信号12のレベルを調節すること以外は、図1等を参照して説明した制御装置2と略同じ構造を有し、略同じように動作する。従って変形例3の変調信号22は、第1レベル、第1レベルより高い第2レベル、及び第1レベルより高く第2レベルより低い1つ又は3つ以上の第3レベルをとることで、3つ又は5つ以上の値を示す変調光を変調器に生成させる。
【0190】
ミドルアイの位置制御(図19参照)では、この第3レベルが調節される。アッパーアイの高さ制御(図25参照)およびローワーアイの高さ制御(図27参照)でも、この第3レベルが調節される。変型例3によれば、実施の形態の制御装置2が制御する変調信号22のバリエーションが増える。
【0191】
なお、図1~35を参照して説明した例では、第3レベルは2つのレベルL51,52(図22(b)参照)である。すなわち実施の形態2の変調信号22の第3レベルは、少なくとも1つである。
【0192】
(4)制御方法
図19等には、以下に示す制御方法が示されている。
【0193】
制御装置2は、モニタ信号46の極性が正またはモニタ信号46の大きさがゼロの時には、モニタ信号46のレベルに応じたレベルをとり、モニタ信号46の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号76を生成する。
【0194】
制御装置2は更にモニタ信号46の極性が正の時には一定のレベルをとり、モニタ信号46の極性が負またはモニタ信号46の大きさがゼロの時には、モニタ信号46のレベルに応じたレベルをとるロー側信号90を生成する。
【0195】
制御装置2は更に、生成されたハイ側信号76がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルをとるハイ側ピーク値信号96を生成する。制御装置2は更に、生成されたロー側信号90がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルをとるロー側ピーク値信号98を生成する。
【0196】
制御装置2は最後に、ハイ側ピーク値信号96がとる第4レベルとロー側ピーク値信号98がとる第5レベルとに基づいて、変調信号22の第3レベルを調節する。
【0197】
図24を参照して説明したように、ピーク値差ΔPeakはモニタ信号46の第3レベル(図24に示す例では、レベルL31およびレベルL32)に応じて変化する。ハイ側レベル比HSRおよびロー側レベル比LSRについても、同様である。
【0198】
そこで実施の形態では、ステップS12~S16(図19参照)等により得られるΔPeak等の測定値がΔPeak等の目標値に近づくように、変調信号22の第3レベルを調節する。「ΔPeak等の目標値」とは例えば、目標とするレベル間隔(例えば、均一なレベル間隔)がモニタ信号46において実現された時のΔPeak等の値である。
【0199】
ΔPeak等の目標値は例えば光伝送システムの方式によって定まる値であって、変調器の特性(すなわち、変調特性)とは無関係である。従って、実施の形態によれば、変調光32を生成する光デバイス(例えば、変調器28)の変調特性に基づかずに、変調光32のレベル間隔を調節できる。このため実施の形態によれば、変調光32を生成する光デバイスの変調特性を不揮発性メモリ等に記録せずに、変調光32のレベル間隔を調節することができる。
【0200】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施の形態は、例示であって制限的なものではない。例えば制御装置2は、変調信号22の2番目と3番目に低いレベルL51,L52の差(=L52-L51)を一定に保ちながら、変調信号の2番目と3番目に低いレベルL51,L52を調節する。しかし制御装置2は、変調信号22の2番目に低いレベルL51と3番目に低いレベルL52を互いに独立に調節しても良い。
【0201】
更に実施の形態では制御装置2は、変調信号22のミドルアイの位置と、アッパーアイの高さと、ローワーアイの高さとを調節する。しかし、制御装置2は、変調信号22のミドルアイの位置だけを調節しても良い。変調器等の変調特性の非線形性が弱ければ、ミドルアイの位置を調節するだけでも、変調光32のレベル間隔は略一定になる。或いは制御装置2は、変調信号22のミドルアイの位置を調節した後に、アッパーアイの高さおよびローワーアイの高さのいずれか一方だけを調節しても良い。
【0202】
図2等を参照して説明した例では、DSP6が多値信号12に変換する信号はデジタル信号(すなわち、2値信号)である。しかし、DSP6によって多値信号12に変換される信号は、多値信号(例えば、4値信号)であっても良い。
【0203】
図1等を参照して説明した例では制御装置2には、DSP6、ドライバー8、バイアス・コントローラ16、変調器28,光分岐器30、光検出器33、および電流電圧変換装置42は含まれていない。しかし制御装置2は、これらの装置の一部または全部を含んでも良い。
【0204】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0205】
(付記1)
光デバイスに印加されている間に第1レベル、前記第1レベルより高い第2レベル、および前記第1レベルより高く前記第2レベルより低い少なくとも1つの第3レベルをとることで、多値信号である変調光を前記光デバイスに生成させる変調信号を制御する制御装置であって、
前記変調光から生成される電気信号の交流成分の極性が正または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとり、前記交流成分の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号を生成するハイ側信号生成部と、
前記交流成分の極性が正の時には一定のレベルをとり、前記交流成分の極性が負または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとるロー側信号を生成するロー側信号生成部と、
前記ハイ側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルをとるハイ側ピーク値信号を、生成するハイ側ピーク値検出部と、
前記ロー側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルをとるロー側ピーク値信号を、生成するロー側ピーク値検出部と、
前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルとに基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを調節するレベル調節部とを有する
変調信号の制御装置。
【0206】
(付記2)
前記レベル調節部は、前記第4レベルの絶対値と前記第5レベルの絶対値の差であるピーク値差が第1目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
付記1に記載の制御装置。
【0207】
(付記3)
前記第3レベルは、2つのレベルを含み、
前記レベル調節部は、前記2つのレベルの差を一定に保ちながら、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを
特徴とする付記1または2に記載の制御装置。
【0208】
(付記4)
更に、前記ハイ側信号がとるレベルの第1平均値に応じた第6レベルをとるハイ側アベレージ信号を生成するハイ側平均値検出部を有し、
前記レベル調節部は、前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルに基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節の後に、前記ハイ側アベレージ信号がとる前記第6レベルと前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルの第1の比に基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを更に調節することを
特徴とする付記1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【0209】
(付記5)
前記レベル調節部は、前記第1の比が第2目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
付記4に記載の制御装置。
【0210】
(付記6)
更に、前記ロー側信号がとるレベルの第2平均値に応じた第7レベルをとるロー側アベレージ信号を生成するロー側平均値検出部を有し、
前記レベル調節部は、前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルに基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節と前記第1の比に基づく前記変調信号の前記第3レベルの調節との間、または前記第1の比に基づく前記第3レベルの調節の後に、前記ロー側アベレージ信号がとる前記第7レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルの第2の比に基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを更に調節すことを
特徴とする付記4または5に記載の制御装置。
【0211】
(付記7)
前記レベル調節部は、前記第2の比が第3目標値に近づくように、前記変調信号の前記第3レベルを調節することを特徴とする
付記6に記載の制御装置。
【0212】
(付記8)
前記レベル調節部は、前記第4レベルと前記第5レベルに基づく前記第3レベルの調節、前記第1の比に基づく前記第3レベルの調節、および前記第2の比に基づく前記第3レベルの調節を繰り返すことを特徴とする
付記6または7に記載の制御装置。
【0213】
(付記9)
前記光デバイスは、入力された光の強度を前記変調信号のレベルに応じて変調する変調器であることを
特徴とする付記1~8のいずれか1項に記載の制御装置。
【0214】
(付記10)
光デバイスに印加されている間に第1レベル、前記第1レベルより高い第2レベル、および前記第1レベルより高く前記第2レベルより低い少なくとも1つの第3レベルをとることで、多値信号である変調光を前記光デバイスに生成させる変調信号を制御する制御方法であって、
前記変調光から生成される電気信号の交流成分の極性が正または前記交流成分の大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとり、前記交流成分の極性が負の時には一定のレベルをとるハイ側信号を生成し、
前記交流成分の極性が正の時には一定のレベルをとり、前記交流成分の極性が負または大きさがゼロの時には、前記交流成分のレベルに応じたレベルをとるロー側信号を生成し、
生成された前記ハイ側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第4レベルをとるハイ側ピーク値信号を生成し、
生成された前記ロー側信号がとるレベルのうち最も絶対値が大きいレベルに応じた第5レベルをとるロー側ピーク値信号を生成し、
前記ハイ側ピーク値信号がとる前記第4レベルと前記ロー側ピーク値信号がとる前記第5レベルとに基づいて、前記変調信号の前記第3レベルを調節する
変調信号の制御方法。
【符号の説明】
【0215】
2 :制御装置
22 :変調信号
28 :変調器
32 :変調光
44 :電気信号
46 :モニタ信号
52 :変調光
64 :ハイ側信号生成部
66 :ロー側信号生成部
68 :ハイ側ピーク値検出部
70 :ロー側ピーク値検出部
72 :ハイ側平均値検出部
74 :ロー側平均値検出部
75 :レベル調節部
76 :ハイ側信号
90 :ロー側信号
96 :ハイ側ピーク値信号
98 :ロー側ピーク値信号
100 :ハイ側アベレージ信号
102 :ロー側アベレージ信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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