(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143385
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】プレス装置、被加工物の製造方法、情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20220926BHJP
B21D 37/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B30B15/00 A
B21D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043864
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】石田 健二郎
【テーマコード(参考)】
4E050
4E088
【Fターム(参考)】
4E050AA14
4E088GA07
(57)【要約】
【課題】プレス加工時に発生する騒音を抑制することが可能なプレス装置、被加工物の製造方法、情報処理装置及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】プレス装置は、被加工物のプレス加工に用いられる金型と、金型の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、金型に配される重りと、を備える。重りは、被加工物をプレス加工する場合に金型の前記固有振動数に基づいて生じる音を減衰させる形状及び重さの少なくとも一方を有していてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物のプレス加工に用いられる金型と、
前記金型の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、前記金型に配される重りと、
を備えるプレス装置。
【請求項2】
前記重りは、前記被加工物をプレス加工する場合に前記金型の前記固有振動数に基づいて生じる音を減衰させる形状及び重さの少なくとも一方を有する
請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記重りは、シム調整に用いられるシムを備える
請求項1又は2に記載のプレス装置。
【請求項4】
金型を利用してプレス加工が行われることにより製造される被加工物の製造方法であって、
プレス加工が行われる場合に前記金型に生じる衝撃に関する物理量を測定する測定ステップと、
前記測定ステップによって測定される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に前記金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定される重りを前記金型に設置する設置ステップと、
を実行する被加工物の製造方法。
【請求項5】
金型を利用して被加工物のプレス加工を行う場合に利用される情報処理装置であって、
プレス加工が行われる場合に前記金型に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に前記金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出部と、
前記算出部によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定部と、
前記決定部によって決定された重りに関する情報を出力するよう制御する出力制御部と、
を備える情報処理装置。
【請求項6】
金型を利用して被加工物のプレス加工を行う場合に利用される情報処理装置であるコンピュータに、
プレス加工が行われる場合に前記金型に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得機能と、
前記取得機能によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に前記金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出機能と、
前記算出機能によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定機能と、
前記決定機能によって決定された重りに関する情報を出力するよう制御する出力制御機能と、
を実現させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置、被加工物の製造方法、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金型を用いて被加工物(ワーク)のプレス加工が行われている。特許文献1には、上型装置と下型装置との間にワークを配置し、上型装置と下型装置とを利用してワークのプレス加工を行うプレス装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプレス装置は、ワークのプレス加工を行う場合(プレス成型時)に金属部品が衝突して衝撃音が発生することが有った。その衝撃音は騒音となるため作業員にとって不快なものになり、その騒音の抑制が要望されることがあった。
【0005】
本発明は、プレス加工時に発生する騒音を抑制することが可能なプレス装置、被加工物の製造方法、情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様のプレス装置は、被加工物のプレス加工に用いられる金型と、金型の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、金型に配される重りと、を備える。
【0007】
一態様のプレス装置では、重りは、被加工物をプレス加工する場合に金型の固有振動数に基づいて生じる音を減衰させる形状及び重さの少なくとも一方を有することとしてもよい。
【0008】
一態様のプレス装置では、重りは、シム調整に用いられるシムを備えることとしてもよい。
【0009】
一態様の被加工物の製造方法は、金型を利用してプレス加工が行われることにより製造される製造方法であって、プレス加工が行われる場合に金型に生じる衝撃に関する物理量を測定する測定ステップと、測定ステップによって測定される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出ステップと、算出ステップによって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定ステップと、決定ステップによって決定される重りを金型に設置する設置ステップと、を実行する。
【0010】
一態様の情報処理装置は、金型を利用して被加工物のプレス加工を行う場合に利用される装置であって、プレス加工が行われる場合に金型に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得部と、取得部によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出部と、算出部によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定部と、決定部によって決定された重りに関する情報を出力するよう制御する出力制御部と、を備える。
【0011】
一態様の情報処理プログラムは、金型を利用して被加工物のプレス加工を行う場合に利用される情報処理装置であるコンピュータに、プレス加工が行われる場合に金型に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得機能と、取得機能によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出機能と、算出機能によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重りを決定する決定機能と、決定機能によって決定された重りに関する情報を出力するよう制御する出力制御機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0012】
一態様のプレス装置は、被加工物のプレス加工に用いられる金型と、金型の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、金型に配される重りと、を備えるので、プレス加工時に発生する騒音を抑制することができる。
また、一態様の被加工物の製造方法、情報処理装置及び情報処理プログラムは、上述した一態様のプレス装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】プレス装置の一例について説明するための図である。
【
図2】プレス装置において発生する音の一例について説明するための図である。(A)は金型及び重りの一例について説明するための図、(B)は音の周波数(横軸)と音に関する振幅(縦軸)に関するグラフであり、周波数をシフトさせる場合について説明する図、(C)音の周波数(横軸)と音に関する振幅(縦軸)に関するグラフであり、振幅を低くする場合について説明する図である。
【
図3】重りを金型に配する場合の一例について説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係る情報処理装置について説明するためのブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る被加工物(ワーク)の製造方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本明細書では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0015】
図1は、プレス装置1の一例について説明するための図である。
【0016】
プレス装置1は、上型装置10及び下型装置20を備える。上型装置10及び下型装置20それぞれには、金型30が配される。金型30は、被加工物(ワーク100)のプレス加工に用いられる。金型30は、プレス加工によって製造したいワーク100の形状にならう型を有する。プレス装置1は、金型30にワーク100を配し、上型装置10及び下型装置20のうち少なくとも一方を作動させると、ワーク100のプレス加工が行われる。
【0017】
従来のプレス装置では、上型装置及び下型装置の少なくとも一方を作動させると、プレス加工の際に金属部品の衝突による衝撃音が発生する。本実施形態のプレス装置1は、そのような衝撃音を抑制するために、金型30に重り40(
図2(A)参照)が配される。
【0018】
すなわち、重り40は、金型30の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、金型30に配される。すなわち、重り40は、被加工物(ワーク100)をプレス加工する場合に金型30の固有振動数に基づいて生じる音を減衰させる形状及び重さの少なくとも一方を有してもよい。
【0019】
図2は、プレス装置1において発生する音の一例について説明するための図である。
図2(A)は金型30及び重り40の一例について説明するための図(模式図)、
図2(B)は音の周波数(横軸)と音に関する振幅(縦軸)に関するグラフであり、周波数をシフトさせる場合について説明する図、
図2(C)音の周波数(横軸)と音に関する振幅(縦軸)に関するグラフであり、振幅を低くする場合について説明する図である。
【0020】
音を減衰させることは、発生する音の周波数を相対的に低くすること、及び、発生する音のレベルを相対的に低くすることの少なくとも一方であってもよい。
【0021】
作業員にとっては、周波数が相対的に高い音を不快に感じることが多い。このため、発生する音にピークがある場合には、金型30に配される重り40(
図2(A)参照)を調整して、そのピークの周波数(そのピークがある付近の周波数帯域(ピーク帯域))が相対的に下がるようにする。すなわち、重り40を金型30に配することにより、
図2(B)の実線で示す場合(重り40が無い場合)から
図2(B)の破線で示す場合(重り40が有る場合)になるようにする。具体的な一例として、発生する音(例えば、音のピーク又はその音のピーク帯域)の周波数が相対的に高い場合、その音の周波数を約2000Hz下げる。又は、具体的な一例として、発生する音(例えば、音のピーク又はその音のピーク帯域)の周波数が相対的に高い場合、その音(例えば、音のピーク又はその音のピーク帯域)が500Hz以上1000Hz以下の周波数範囲になるようにする。
【0022】
また、作業員にとっては、音のレベル(音量)が相対的に大きいと、その音を不快に感じることが多い。このため、金型30に配される重り40(
図2(A)参照)を調整して、発生する音のレベルが相対的に下がるようにする(
図2(C)参照)。すなわち、重り40を金型30に配することにより、
図2(C)の実線で示す場合(重り40が無い場合)から
図2(C)の破線で示す場合(重り40が有る場合)になるようにする。
【0023】
重り40は複数の種類(例えば、重さ及び形状が異なる複数種類の重り40)があってよい。重り40は、発生する音の周波数及びレベル(音量)に応じて、少なくとも1つが選択されてもよい。
具体的な一例として、発生する音の周波数を相対的に下げる場合には、相対的に重量のある(又は、相対的に軽い)重り40が選択されてもよい。一例として、音の周波数を変化させる場合、重り40の重量をより重く(又は、軽く)することにより(重さの変化量を相対的に大きくすることにより)、周波数の変化を相対的に大きくすることが可能になる。
【0024】
又は、具体的な一例として、発生する音の周波数を相対的に下げる場合には、金型30との接触面積が大きい形状(又は、小さい形状)を有する重り40が選択されてもよい。一例として、音の周波数を変化させる場合、金型30と重り40との接触面積をより大きく(又は、小さく)することにより(その接触面積の変化量を相対的に大きくすることにより)、周波数の変化を相対的に大きくすることが可能になる。
【0025】
また同様に、具体的な一例として、発生する音のレベル(音量)を相対的に下げる場合には、相対的に重量のある(又は、相対的に軽い)重り40が選択されてもよい。一例として、音のレベルを変化させる場合、重り40の重量をより重く(又は、軽く)することにより(重さの変化量を相対的に大きくすることにより)、音のレベルの変化を相対的に大きくすることが可能になる。
【0026】
又は、具体的な一例として、発生する音のレベル(音量)を相対的に下げる場合には、金型30との接触面積が大きい形状(又は、小さい形状)を有する重り40が選択されてもよい。一例として、音のレベルを変化させる場合、金型30と重り40との接触面積をより大きく(又は、小さく)することにより(その接触面積の変化量を相対的に大きくすることにより)、音のレベルの変化を相対的に大きくすることが可能になる。
【0027】
なお、重り40は、上記の方法によって形状及び重さが決定される例に限定されず、種々の方法によって種々の形状及び種々の重さが決定されてもよい。
【0028】
重り40を調整する場合、例えば、シム調整が行われてもよい。すなわち、重り40は、シム調整に用いられるシムを備えてもよい。1又複数のシムを追加又は削減することにより、重り40を調整することが可能になる。
【0029】
図3は、重り40を金型30に配する場合の一例について説明するための図である。
【0030】
まず、
図3(A)に一例を示すように、重り40の金型30接触面側にはゴム50等の緩衝部材が取り付けられる。この場合には、重り40には、ボルト60等の部材を利用してゴム50が取り付けられてもよい。ゴム50の厚さは適宜調整される。
【0031】
次に、
図3(B)に一例を示すように、重り40が金型30に取り付けられる。重り40は、ゴム50が配される面を金型30に接触させるように、その金型30に取り付けられる。この場合においても、重り40は、ボルト60等の部材を利用して金型30に取り付けられてもよい。
【0032】
これにより、
図3(C)に一例を示すように、重り40は、金型30に取り付けられる。なお、上述したボルト60等の部材のサイズ及び数量等は、重り40のサイズ等に応じて適宜設定される。
【0033】
また、重り40は、金型30に1又は複数配されてもよい。一例として、重り40は、音の発生源の相対的に近くに1又は複数が配されてもよい。金型30に複数の重り40を配する場合、複数の重り40の重量は同一であってもよく又は異なっていてもよい。この場合、一例として、金型30には、音の発生源の相対的に近くの位置に相対的に重り40が配され、音の発生源から相対的に遠くの位置に相対的に軽い重り40が配されてもよい。
【0034】
上述した重り40は、例えば、実験等が行われることにより重さ及び形状が決定されてもよい。又は、上述した重り40は、例えば、後述する情報処理装置200において所定の処理等が行われることにより決定されてもよい。
【0035】
なお一例として、重り40は、金型30重量が約10トンの場合、その金型30の重量に対して約10%(約1トン)以内の重量であってもよい。この場合、金型30に複数の重り40が配される場合、一例として、複数の重り40の合計重量が1トン以内であってもよく、複数の重り40それぞれの重量が1トン以内であってもよい。
【0036】
このように、プレス装置1は、金型30が持っている固有振動数に応じたスタビライザ(重り40)をその金型30に装着することにより、振動を抑制して騒音を減らし、また不快な音域からずらすことが可能になる。スタビライザとなる重り40はシム調整式になっており、生産準備中の金型30の改修で微調整を行うことが可能になる。
【0037】
次に、情報処理装置200について説明する。
情報処理装置200は、金型30を利用して被加工物(ワーク100)のプレス加工を行う場合に利用される装置である。情報処理装置200は、例えば、コンピュータ(サーバ、デスクトップ及びラップトップ等)であってもよい。
【0038】
図4は、一実施形態に係る情報処理装置200について説明するためのブロック図である。
【0039】
情報処理装置200は、測定部221、通信部222、記憶部223、表示部224、取得部211、算出部212、決定部213及び出力制御部214を備える。取得部211、算出部212、決定部213及び出力制御部214は、情報処理装置200の制御部210(例えば、演算処理装置等)の一機能として実現されてもよい。通信部222、記憶部223及び表示部224は、情報処理装置200の「出力部」の一実施形態であってもよい。
【0040】
測定部221は、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量を測定する。測定部221は、例えば、物理量として、音に関する物理量を測定してもよい。すなわち、測定部221は、例えば、物理量(音に関する物理量)として、プレス加工が行われる場合に発生する音の周波数、及び、プレス加工が行われる場合に発生する音のレベル(音量)を測定してもよい。測定部221は、物理量を測定すると、測定した物理量に関する情報を制御部210に出力する。
【0041】
具体的には、測定部221は、金型30で発生する音を測定する。測定部221は、例えば、マイク及び解析部(図示せず)を備える。マイクは、例えば、プレス装置1に対して相対的に近くに配され、プレス加工時に発生する音を集音してもよい。解析部は、例えば、マイクで集音された音を解析する。例えば、解析部は、マイクで集音された音の周波数を解析すること、及び、マイクで集音された音のレベル(音量)を解析することのうち少なくとも一方を行う。音の周波数の解析及び音のレベルの解析は、例えば、公知の種々の技術を利用して行うことが可能である。
なお、測定部221は、例えば、金型30に重り40が配されない状態で物理量を測定してもよい。
【0042】
通信部222は、例えば、情報処理装置200の外部にある装置(外部装置)(図示せず)との間で通信が可能である。外部装置は、例えば、外部サーバ及び外部端末(例えば、デスクトップ、ラップトップ、タブレット及びスマートフォン等)であってもよい。通信部222は、例えば、後述する出力制御部214の制御に基づいて、後述する決定部213によって決定される重り40に関する情報を外部装置に送信してもよい。
【0043】
記憶部223は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する。記憶部223は、例えば、出力制御部214の制御に基づいて、決定部213によって決定される重り40に関する情報を記憶してもよい。
【0044】
表示部224は、例えば、文字、記号及び画像等を表示する。表示部224は、例えば、出力制御部214の制御に基づいて、決定部213によって決定される重り40に関する情報に基づく文字、記号及び画像等を表示してもよい。
【0045】
取得部211は、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する。取得部211は、例えば、測定部221から出力される物理量に関する情報を取得する。又は、取得部211は、例えば、物理量に関する情報が外部サーバ(図示せず)に記憶される場合、通信部222を介して、外部サーバから物理量に関する情報を取得してもよい。
【0046】
算出部212は、取得部211によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型30に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する。算出部212は、例えば、物理量としての音の周波数が閾値以上の場合、その音の周波数が所定範囲(所定の周波数範囲)以内になる減衰比を算出する。この場合、算出部212は、例えば、プレス加工時に発生する音に周波数ピークがあり、その音の周波数ピークが閾値以上の場合に、その周波数ピークが所定の周波数範囲以内になる減衰比を算出する。なお、算出部212は、例えば、音の周波数ピークが複数ある場合、最も高い周波数ピークが閾値以上の場合に、上述した減衰比を算出してもよい。また、算出部212は、例えば、音の周波数に帯域を有する場合、すなわち、作業員が不快と感じる音の周波数帯域(閾値以上の周波数)に複数のピークを有する場合又はその周波数帯域(閾値以上の周波数)における周波数の振幅が相対的に高い場合、その周波数帯域の音のピークが所定範囲(所定の周波数範囲)以内になる減衰比を算出してもよい。
【0047】
ここで、この場合の閾値は、例えば、作業員が不快と感じる音の周波数帯域の下限(略下限)の値(周波数)であってもよい。一例として、閾値となる周波数は、例えば、2500Hz~3000Hzの範囲の内のいずれかの値であってもよく、他の値であってもよい。また、所定範囲(所定の周波数範囲)は、例えば、作業員が不快と感じにくい周波数範囲であってもよい。一例として、所定範囲(所定の周波数範囲)は、例えば、500Hz~1000Hzの範囲であってもよく、他の値を取る範囲であってもよい。
【0048】
また、算出部212は、例えば、物理量としての音のレベル(音量)が閾値以上の場合、その音のレベルが所定範囲(所定のレベル範囲)以内になる減衰比を算出する。この場合、算出部212は、例えば、プレス加工時に発生する音に周波数ピーク(音のレベル(音量))があり、その音の周波数ピークの振幅が閾値以上の場合に、その周波数ピークの振幅が所定の振幅範囲(所定の音量範囲)以内になる減衰比を算出する。なお、算出部212は、例えば、音の周波数ピークが複数ある場合、最も振幅が高い周波数ピークの振幅が閾値以上の場合に、上述した減衰比を算出してもよい。また、算出部212は、例えば、閾値以上の振幅となる音の周波数ピークが複数有る場合、最も高い振幅を有する周波数ピーク、所定の周波数範囲にある複数の周波数ピークのうち少なくとも1つのピーク、及び、相対的により多くの周波数ピークのうちの少なくとも1つが所定範囲(所定の音量範囲)以内になる減衰比を算出してもよい。
【0049】
ここで、この場合の閾値は、例えば、作業員が不快と感じる音のレベル(音量)の下限(略下限)の値(音量)であってもよい。音量の下限(略下限)は、例えば、作業員が不快に感じ始める音量であってもよい。また、所定範囲(所定の音量範囲)は、例えば、作業員が不快と感じにくい音量範囲であってもよい。
【0050】
算出部212は、例えば、CAE(Comuter Aided Engineering)等を利用して、減衰比を算出してもよい。算出部212は、例えば、解析対象のモデルにおいて、固有値解析をCAEで実施することにより、減衰比を算出することができる。また、算出部212は、例えば、作業員が不快と感じる音域(周波数帯域)が出る場合には、重り40を複数パターン用意し、CAEで再解析を行うことにより、減衰比を算出することができる。
【0051】
又は、算出部212(又は、制御部210等)は、例えば、金型30、その金型30を利用した場合に発生する音の周波数及び音量、並びに、その音のうち不快と感じる音の物理量(周波数及び音量の少なくとも一方)を変更することのできる(騒音を軽減できる)重り40の情報(減衰比、重り40の重量及び重り40の形状等)を予め学習して学習モデルを生成してもよい。また、算出部212は、外部で生成される上述した学習モデルを取得してもよい。算出部212は、取得部211によって物理量に関する情報を取得すると、その物理量に関する情報と、学習モデルとに基づいて、騒音を軽減できる重り40を算出(特定)してもよい。
【0052】
決定部213は、算出部212によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重り40を決定する。
この場合、例えば、減衰比に応じた重り40の重さ及び形状が予め設定される設定情報が記憶部223に記憶されていてもよい。決定部213は、例えば、算出部212によって減衰比が算出されると、記憶部223に記憶される設定情報を参照し、その減衰比に応じた重さ及び形状を有する重り40を決定してもよい。
又は、決定部213は、上述したように算出部212において学習モデルを利用して重り40が特定される場合(重り40の重さ及び形状が特定される場合)、その算出部212によって特定される重さ及び形状を有する重り40を決定してもよい。
【0053】
出力制御部214は、決定部213によって決定された重り40に関する情報を出力するよう出力部を制御する。出力部は、例えば、通信部222、記憶部223及び表示部224であってもよい。
出力制御部214は、例えば、決定部213によって決定される重り40に関する情報を外部装置に送信するよう通信部222を制御してもよい。
出力制御部214は、例えば、決定部213によって決定される重り40に関する情報を記憶するよう記憶部223を制御してもよい。
出力制御部214は、例えば、決定部213によって決定される重り40に関する情報に基づく文字、記号及び画像等を表示するよう表示部224を制御してもよい。
【0054】
次に、一実施形態に係る被加工物(ワーク100)の製造方法について説明する。
被加工物(ワーク100)の製造方法は、金型30を利用してプレス加工が行われることにより被加工物を製造する方法である。
図5は、一実施形態に係る被加工物(ワーク100)の製造方法について説明するためのフローチャートである。
【0055】
ステップST101において、情報処理装置200の測定部221は、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量を測定する(測定ステップ)。この場合、測定部221は、例えば、物理量として、音に関する物理量を測定してもよい。測定部221は、例えば、物理量(音に関する物理量)として、プレス加工が行われる場合に発生する音の周波数、及び、プレス加工が行われる場合に発生する音のレベル(音量)を測定してもよい。測定部221は、物理量を測定すると、測定した物理量に関する情報を制御部210に出力する。
なお、情報処理装置200の外部にある外部測定部が、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量(例えば、音に関する物理量)を測定し、測定結果を情報処理装置200(又は、外部サーバ等)に送信してもよい。
【0056】
ステップST102において、情報処理装置200の取得部211は、ステップST101で測定される物理量に関する情報を取得する(取得ステップ)。この場合、取得部211は、測定部221(又は、外部測定部)から送信される物理量に関する情報を取得してもよく、又は、外部サーバ等に記憶される物理量に関する情報を取得してもよい。
【0057】
ステップST103において、情報処理装置200の算出部212は、ステップST101で測定される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型30に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する(算出ステップ)。
算出部212は、例えば、物理量としての音の周波数が閾値以上の場合、その音の周波数が所定範囲(所定の周波数範囲)以内になる減衰比を算出する。この場合、算出部212は、例えば、プレス加工時に発生する音に周波数ピークがあり、その音の周波数ピークが閾値以上の場合に、その周波数ピークが所定の周波数範囲以内になる減衰比を算出する。
また、算出部212は、例えば、物理量としての音のレベル(音量)が閾値以上の場合、その音のレベルが所定範囲(所定のレベル範囲)以内になる減衰比を算出する。この場合、算出部212は、例えば、プレス加工時に発生する音に周波数ピーク(音のレベル(音量))があり、その音の周波数ピークの振幅が閾値以上の場合に、その周波数ピークの振幅が所定の振幅範囲(所定の音量範囲)以内になる減衰比を算出する。
【0058】
この場合、算出部212は、例えば、CAE等を利用して減衰比を算出してもよい。算出部212は、例えば、解析対象のモデルにおいて、固有値解析をCAEで実施することにより、減衰比を算出することができる。
又は、算出部212は、例えば、金型30、その金型30を利用した場合に発生する音の周波数及び音量、並びに、その音のうち不快と感じる音の物理量(周波数及び音量の少なくとも一方)を変更することのできる(騒音を軽減できる)重り40の情報(減衰比、重り40の重量及び重り40の形状等)を予め学習した学習モデルと、ステップST102で取得する物理量に関する情報とに基づいて、騒音を軽減できる重り40を算出(特定)してもよい。
【0059】
ステップST104において、情報処理装置200の決定部213は、ステップST103で算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重り40を決定する(決定ステップ)。
この場合、決定部213は、例えば、算出部212によって減衰比が算出されると、記憶部223に記憶される上述した設定情報を参照し、その減衰比に応じた重さ及び形状を有する重り40を決定してもよい。
又は、決定部213は、上述したように算出部212において学習モデルを利用して重り40が特定される場合(重り40の重さ及び形状が特定される場合)、その算出部212によって特定される重さ及び形状を有する重り40を決定してもよい。
【0060】
ステップST105において、情報処理装置200の出力制御部214は、ステップST104で決定される重り40に関する情報を出力するよう出力部を制御する(出力ステップ)。ここで、出力部は、例えば、通信部222、記憶部223及び表示部224であってもよい。
【0061】
ステップST106において、設置装置(図示せず)等は、ステップST105で出力される重り40に関する情報に基づいて、ステップST104で決定される重り40を金型30に設置する(設置ステップ)。
ステップST106(設置ステップ)の後に、プレス装置1を用いて被加工物(ワーク100)の製造が行われる。
【0062】
次に、本実施形態の効果について説明する。
プレス装置1は、被加工物のプレス加工に用いられる金型30と、金型30の固有振動数に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有し、金型30に配される重り40と、を備える。
これにより、プレス装置1は、プレス加工時に発生する騒音を抑制することができる。また、プレス装置1は、作業員がプレス加工時に発生する衝撃音を不快と感じることを抑制することができ、作業員がいる作業環境を良好にすることができる。
すなわち、プレス装置1は、金型30の固有振動数に応じた重り40を金型30に設置することができ、それにより、異なる種類及び生産準備中の金型30のプレス成型時における不快な音域をずらし(例えば、相対的に高い音域を下げ、500~1000Hzにピークが来るようにし)、騒音を防止することができる。
【0063】
プレス装置1では、重り40は、被加工物をプレス加工する場合に金型30の固有振動数に基づいて生じる音を減衰させる形状及び重さの少なくとも一方を有することとしてもよい。
これにより、プレス装置1は、プレス加工時に生じる騒音を軽減することのできる重り40を金型30に設置することができる。
【0064】
プレス装置1では、重り40は、シム調整に用いられるシムを備えることとしてもよい。
これにより、プレス装置1は、重り40を調整するときの自由度を向上することができ、プレス加工時に生じる騒音をより軽減することのできる重り40を金型30に設置することができる。すなわち、プレス装置1は、重り40をシム調整式とすることで、容易に減衰比を調整することができる。
【0065】
被加工物(ワーク100)の製造方法は、金型30を利用してプレス加工が行われることにより製造される製造方法であって、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量を測定する測定ステップと、測定ステップによって測定される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型30に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出ステップと、算出ステップによって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重り40を決定する決定ステップと、決定ステップによって決定される重り40を金型30に設置する設置ステップと、を実行する。
ワーク100の製造方法は、プレス加工時に発生する騒音を抑制する重り40を金型30に設置することができる。これにより、ワーク100の製造方法は、作業員がプレス加工時に発生する衝撃音を不快と感じることを抑制することができ、作業員がいる作業環境を良好にすることができる。
【0066】
情報処理装置200は、金型30を利用して被加工物(ワーク100)のプレス加工を行う場合に利用される装置であって、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得部211と、取得部211によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型30に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出部212と、算出部212によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重り40を決定する決定部213と、決定部213によって決定された重り40に関する情報を出力するよう制御する出力制御部214と、を備える。
情報処理装置200は、プレス加工時に発生する騒音を抑制する重り40を金型30に設置することができる。これにより、情報処理装置200は、作業員がプレス加工時に発生する衝撃音を不快と感じることを抑制することができ、作業員がいる作業環境を良好にすることができる。
すなわち、情報処理装置200は、例えば、金型30に衝撃が加わる時の所定音域を低減させる減衰比をCAE等で算出し、前記減衰比に対する重り40を作成することで、異なる種類及び生産準備中の金型30に適した重り40を容易に作成することができる。
【0067】
情報処理プログラムは、金型30を利用して被加工物(ワーク100)のプレス加工を行う場合に利用される情報処理装置200であるコンピュータに、プレス加工が行われる場合に金型30に生じる衝撃に関する物理量に関する情報を取得する取得機能と、取得機能によって取得される物理量が予め設定される閾値以上の場合、プレス加工時に金型30に生じる衝撃に関する物理量が所定範囲内になる物理量の減衰比を算出する算出機能と、算出機能によって算出される減衰比に応じた重さ及び形状の少なくとも一方を有する重り40を決定する決定機能と、決定機能によって決定された重り40に関する情報を出力するよう制御する出力制御機能と、を実現させる。
情報処理プログラムは、プレス加工時に発生する騒音を抑制する重り40を金型30に設置することができる。これにより、情報処理プログラムは、作業員がプレス加工時に発生する衝撃音を不快と感じることを抑制することができ、作業員がいる作業環境を良好にすることができる。
【0068】
上述した情報処理装置200の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置200の取得部211、算出部212、決定部213及び出力制御部214(制御部210)は、コンピュータの演算処理装置等による取得機能、算出機能、決定機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
情報処理プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。情報処理プログラムは、外部メモリ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
また、上述したように、情報処理装置200の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、情報処理装置200の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置200の取得部211、算出部212、決定部213及び出力制御部214(制御部210)は、コンピュータの演算処理装置等を構成する取得回路、算出回路、決定回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、情報処理装置200の測定部221、並びに、通信部222、記憶部223及び表示部224(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む測定機能、並びに、通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されもよい。また、情報処理装置200の測定部221、並びに、通信部222、記憶部223及び表示部224(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより測定回路、並びに、通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、情報処理装置200の測定部221、並びに、通信部222、記憶部223及び表示部224(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより測定装置、並びに、通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 プレス装置
30 金型
40 重り
100ワーク
200 情報処理装置
210 制御部
211 取得部
212 算出部
213 決定部
214 出力制御部
221 測定部
222 通信部
223 記憶部
224 表示部