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特開2022-143449ソーラーパネル洗浄装置及びソーラーパネルの洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143449
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ソーラーパネル洗浄装置及びソーラーパネルの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 40/10 20140101AFI20220926BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02S40/10
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043950
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】520363476
【氏名又は名称】株式会社SSG
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼免 知己
【テーマコード(参考)】
3B116
5F151
【Fターム(参考)】
3B116AA31
3B116AB54
3B116BA02
3B116BA14
3B116BA35
3B116BB21
5F151JA15
(57)【要約】
【課題】
ソーラーパネルの受光面を効率的に洗浄することができるライン型のソーラーパネル洗浄装置を提供する。
【解決手段】
ソーラーパネル列50に沿った方向Dに走行するための走行体11と、ソーラーパネル列50を構成するソーラーパネル51の受光面を洗浄するための複数本のロールブラシ13とを備え、走行体11が、ソーラーパネル列50に交差する方向Dに延びる長手状を為すとともに、複数本のロールブラシ13が、走行体11の長手方向Dに沿って列状に配されたライン型のソーラーパネル洗浄装置10において、一のロールブラシ13の端部と、当該一のロールブラシ13の隣に配された他のロールブラシ13の端部とを、走行体11の走行方向Dから見て重なった状態で配した。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネル列に沿った方向に走行するための走行体と、
ソーラーパネル列を構成するソーラーパネルの受光面を洗浄するための複数本のロールブラシと
を備え、
走行体が、ソーラーパネル列に交差する方向に延びる長手状を為すとともに、
複数本のロールブラシが、走行体の長手方向に沿って列状に配された
ライン型のソーラーパネル洗浄装置であって、
一のロールブラシの端部と、当該一のロールブラシの隣に配された他のロールブラシの端部とが、走行体の走行方向から見て重なった状態で配された
ことを特徴とするソーラーパネル洗浄装置。
【請求項2】
それぞれのロールブラシが、
両端部を軸支された本体ブラシと、
本体ブラシの端部に取り付けられた延長ブラシと
で構成され、
本体ブラシの回転軸体と延長ブラシの回転軸体とが一体的に連結された
請求項1記載のソーラーパネル洗浄装置。
【請求項3】
それぞれのロールブラシの位置を走行体の走行方向で調節可能とした請求項1又は2記載のソーラーパネル洗浄装置。
【請求項4】
走行体の走行方向に対してそれぞれのロールブラシが為す角度を調節可能とした請求項1~3いずれか記載のソーラーパネル洗浄装置。
【請求項5】
走行体が、当該走行体の長手方向に沿って並べられて互いに連結された複数の分割ユニットで構成され、
それぞれの分割ユニットに、少なくとも1本以上ずつロールブラシが設けられた
請求項1~4いずれか記載のソーラーパネル洗浄装置。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載のソーラーパネル洗浄装置を用いてソーラーパネルを洗浄するソーラーパネルの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネル列に沿った方向に走行させることで、ソーラーパネルの受光面を洗浄するソーラーパネル洗浄装置と、このソーラーパネル洗浄装置を用いるソーラーパネルの洗浄方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
環境に優しいクリーンエネルギーの利用を促進するとの観点から、太陽光発電に対する注目が集まっている。近年は、発電量が1メガワット以上の大規模な太陽光発電施設も設置されるようになっている。この太陽光発電施設は、「メガソーラー」と呼ばれており、全国各地に設置されている。
【0003】
ところが、太陽光発電に用いられるソーラーパネルの発電量は、その受光面に埃等の汚れが付着すると低下してしまう。ソーラーパネルの発電量を維持するためには、ソーラーパネルの受光面を定期的に洗浄する必要がある。この点、従前には、手作業によりソーラーパネルを洗浄していたところ、上記のメガソーラー等、ソーラーパネルの設置枚数が膨大な太陽光発電施設では、その作業に多大な時間と労力を要するという問題があった。
【0004】
このような実状に鑑みてか、ソーラーパネルを洗浄するための装置(ソーラーパネル洗浄装置)が開発されて利用されるに至っている。ソーラーパネル洗浄装置としては、これまでに各種のものが提案されている。例えば、図1に示すように、方向Dに沿って延びるソーラーパネル列50の上側に配されるソーラーパネル洗浄装置10であって、ソーラーパネル列50に直交する方向Dに延在する長手状のものが提案されている。以下においては、このように、ソーラーパネル列50に直交する方向Dに延在するソーラーパネル洗浄装置10を、「ライン型のソーラーパネル洗浄装置」と呼ぶことがある。
【0005】
この種のライン型のソーラーパネル洗浄装置10においては、走行体11の下面側に、走行輪12とロールブラシ13とが備えられている。ロールブラシ13は、ソーラーパネル列50に直交する方向Dに沿って列を為すように、複数本が並んで配置されている。走行輪12を回転駆動することで、走行体11がソーラーパネル列50に沿った方向Dに移動(走行)する。このとき、ロールブラシ13を回転駆動すると、ソーラーパネル列50を構成するソーラーパネル51の受光面が、回転するロールブラシ13で一度に複数段ずつ洗浄される。特許文献1~3にも、これと同様の構造を有するライン型のソーラーパネル洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-135962号公報
【特許文献2】特開2017-159285号公報
【特許文献3】特開2018-030050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図1に示すように、複数本のロールブラシ13がソーラーパネル列50に直交する方向Dに沿って列を為すように並べられたライン型のソーラーパネル洗浄装置10では、走行体11の走行方向Dから見たときに、隣り合うロールブラシ13の間に隙間が存在するため、ソーラーパネル51の受光面における前記隙間と重なる部分を洗浄しにくかった。ソーラーパネル51の受光面の全体を漏れなく洗浄するためには、ロールブラシ13の位置(ソーラーパネル列50に直交する方向Dでの位置)を切り替えながら、ソーラーパネル洗浄装置をソーラーパネル列50に沿った方向Dで複数回走行させる必要がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ソーラーパネルの受光面を効率的に洗浄することができるライン型のソーラーパネル洗浄装置を提供するものである。より具体的には、隣り合うロールブラシの間に隙間が形成されず、ソーラーパネル列に沿って1回走行させただけでも、ソーラーパネルの受光面の全体を漏れなく洗浄することができるソーラーパネル洗浄装置を提供する。また、このソーラーパネル洗浄装置を用いたソーラーパネルの洗浄方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
ソーラーパネル列に沿った方向に走行するための走行体と、
ソーラーパネル列を構成するソーラーパネルの受光面を洗浄するための複数本のロールブラシと
を備え、
走行体が、ソーラーパネル列に交差する方向に延びる長手状を為すとともに、
複数本のロールブラシが、走行体の長手方向に沿って列状に配された
ライン型のソーラーパネル洗浄装置であって、
一のロールブラシの端部と、当該一のロールブラシの隣に配された他のロールブラシの端部とが、走行体の走行方向から見て重なった状態で配された
ことを特徴とするソーラーパネル洗浄装置
を提供することによって解決される。
【0010】
これにより、洗浄漏れの原因となる隙間(ソーラーパネル洗浄装置を走行体の走行方向から見たときに隣り合うロールブラシの間に形成される隙間)が形成されないようにすることができる。このため、ソーラーパネル洗浄装置をソーラーパネル列に沿って1回走行させただけでも、ソーラーパネルの受光面の全体を漏れなく洗浄することが可能になる。
【0011】
本発明のソーラーパネル洗浄装置においては、
それぞれのロールブラシを、
両端部を軸支された本体ブラシと、
本体ブラシの端部に取り付けられた延長ブラシと
で構成し、
本体ブラシの回転軸体と延長ブラシの回転軸体とを一体的に連結する
ことが好ましい。
【0012】
これにより、ロールブラシの全長を長く設定しながらも、ロールブラシを安定した状態で軸支することが可能になる。加えて、従来のライン型のソーラーパネル洗浄装置に大幅な変更を施さなくても、その従来のソーラーパネル洗浄装置を本発明のソーラーパネル洗浄装置へと改良することも可能になる。
【0013】
本発明のソーラーパネル洗浄装置においては、それぞれのロールブラシの位置を走行体の走行方向で調節可能とすることが好ましい。というのも、本発明のソーラーパネル洗浄装置では、走行体の走行方向から見たときに隣り合うロールブラシの端部同士が重なった状態となる。このため、隣り合うロールブラシが干渉しない状態で、それらのロールブラシを列状に配置しようとすると、隣り合うロールブラシの位置を走行体の走行方向でずらす必要があるからである。
【0014】
本発明のソーラーパネル洗浄装置においては、走行体の走行方向に対してそれぞれのロールブラシが為す角度を調節可能とすることも好ましい。これにより、ロールブラシを走行体の走行方向に対して非垂直となるように傾斜させることが可能になる。このため、ロールブラシとソーラーパネルとが、走行体の走行方向において広い幅で接触するようにして、ソーラーパネルに付着した汚れを除去しやすくなる。加えて、そのときのロールブラシの最適な傾斜角度(走行体の走行方向に対してロールブラシが為す角度)は、ロールブラシの回転速度や、走行体の走行速度や、ソーラーパネルの傾斜角度等によって変わるところ、これらの状況に応じてロールブラシの傾斜角度を適宜変更することも可能になる。
【0015】
本発明のソーラーパネル洗浄装置においては、
走行体を、当該走行体の長手方向に沿って並べられて互いに連結された複数の分割ユニットで構成し、
それぞれの分割ユニットに、少なくとも1本以上ずつロールブラシを設ける
ことが好ましい。
これにより、ソーラーパネル列を構成するソーラーパネルの段数等に応じて、ソーラーパネル洗浄装置の全長(ソーラーパネル列の幅方向に沿った長さ)を変更することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、ソーラーパネルの受光面を効率的に洗浄することができるライン型のソーラーパネル洗浄装置を提供することが可能になる。より具体的には、隣り合うロールブラシの間に隙間が形成されず、ソーラーパネル列に沿って1回走行させただけでも、ソーラーパネルの受光面の全体を漏れなく洗浄することができるソーラーパネル洗浄装置を提供することが可能になる。また、このソーラーパネル洗浄装置を用いたソーラーパネルの洗浄方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来のソーラーパネル洗浄装置を用いてソーラーパネルを洗浄している様子を示した斜視図である。
図2】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置を用いてソーラーパネルを洗浄している様子を示した斜視図である。
図3】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置を用いてソーラーパネルを洗浄している様子を示した平面図である。
図4】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置のロールブラシ周辺を、ロールブラシの中心線を含む平面で切断した状態を示した断面図である。
図5】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置を構成する分割ユニットの平面図であって、(a)ロールブラシを走行体の走行方向に対して垂直に支持した状態と、(b)ロールブラシを走行体の走行方向に対して非垂直に支持した状態とをそれぞれ示した図である。
図6】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置を構成する分割ユニットにおけるロールブラシを支持する部分周辺を拡大した平面図であって、(a)ロールブラシを走行体の走行方向に対して垂直に支持した状態と、(b)ロールブラシを走行体の走行方向に対して非垂直に支持した状態とをそれぞれ示した図である。
図7】本発明に係る第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置を用い、走行体の走行方向に対してロールブラシを非垂直に傾斜させた状態でソーラーパネルを洗浄している様子を示した平面図である。
図8】本発明に係る第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置を用いてソーラーパネルを洗浄している様子を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のソーラーパネル洗浄装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明のソーラーパネル洗浄装置を説明するが、本発明のソーラーパネル洗浄装置の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明のソーラーパネル洗浄装置には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。

【0019】
1.第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置
図2は、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10を用いてソーラーパネル51を洗浄している様子を示した斜視図である。本発明のソーラーパネル洗浄装置10は、図2に示すように、ソーラーパネル列50の上面側に設置される。
【0020】
ソーラーパネル列50は、複数枚のソーラーパネル51を特定の方向(図2の例では、方向D)に沿って列状に並べることによって構成される。図2に示した例では、方向Dだけでなく、方向Dに垂直な方向Dにおいてもソーラーパネル51が並べられている。ソーラーパネル51は、太陽光を垂直に近い角度で受けることができるように、その受光面が水平面に対して傾斜した状態で支持されることが多いところ、図2に示した例でも、ソーラーパネル列50の幅方向(方向D)の一側が低くなって他側が高くなるように、ソーラーパネル列50を構成するソーラーパネル51が傾斜されている。
【0021】
第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10は、走行体11と、複数本のロールブラシ13とを備えている。
【0022】
走行体11は、ソーラーパネル列50に直交する方向Dに延びる長手状を為しており、ソーラーパネル列50を方向Dに跨った状態で設置することが可能となっている。走行体11の下面側(ソーラーパネル51の受光面を向く側)には、走行輪12が設けられている。この走行輪12を回転駆動することで、ソーラーパネル列50に沿った方向Dに走行体11が走行することができる。走行輪12は、図示省略の駆動手段(モーター等)により、回転駆動される。走行輪12は、長手状を為す走行体11をバランスよく走行させることができるように、複数個所に配置される。第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10においては、走行体11における、走行方向(方向D)一側の縁部と他側の縁部とに、1列ずつ計2列で複数の走行輪12を配置している。
【0023】
この走行体11には、後述するロールブラシ13に洗浄水を供給する配管(図示省略)も取り付けられる。第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10において、走行体11は、複数本のフレームを組み合わせて構成している。走行体11における、ロールブラシ13の上側を覆う部分は、図示省略のフードによって覆われており、洗浄水が周囲に飛び散らないようにしている。また、走行体11における長手方向一側(ソーラーパネル51の受光面に設置した際に高くなる側)の端部には、一対の走行ガイド18を設けている。この走行ガイド18がソーラーパネル51の端面又はその架台の端面に当接することで、走行体11(ソーラーパネル洗浄装置10)がソーラーパネル列50に沿った方向Dにスムーズに案内される。図2に示した例では、走行ガイド18をローラー(ガイドローラ―)としている。
【0024】
走行体11は、その全体を連続した1つの躯体で構成してもよい。しかし、この場合には、ソーラーパネル洗浄装置10を運搬や保管する際に場所を取ってしまう。また、ソーラーパネル洗浄装置10を設置する作業を行いにくくなるおそれもある。さらに、ソーラーパネル列50の幅(方向Dでの幅)は、現場によって異なるところ、ソーラーパネル列50の幅が変わったときに対応しにくくなる。この点、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10においては、走行体11を、走行体11の長手方向(方向D)に沿って並べられて互いに連結された複数の分割ユニット11aで構成している。それぞれの分割ユニット11aには、ロールブラシ13が1本ずつ設けられている。
【0025】
このため、ソーラーパネル洗浄装置10を運搬や保管する際には、走行体11を分解することで場所を取らないようにすることが可能となっている。また、走行体11を分解した状態でソーラーパネル洗浄装置10をソーラーパネル51の上側に載せ、そこで、分割ユニット11aを連結するようにすれば、ソーラーパネル洗浄装置10の設置作業も容易となる。さらに、連結する分割ユニット11aの数を、ソーラーパネル列50の幅に応じて増減させることも可能となっている。
【0026】
複数本のロールブラシ13は、走行体11の長手方向(方向D)に沿って列状に配されている。それぞれのロールブラシ13は、円柱状を為しており、その中心線回りに回転できる状態で、走行体11の下面側に軸支されている。ロールブラシ13の回転中心線は、ソーラーパネル51の受光面に対して平行になっており、ロールブラシ13の外周面が、ソーラーパネル51の受光面に接触するようになっている。
【0027】
このロールブラシ13を回転駆動することで、ソーラーパネル51の受光面が洗浄される。ロールブラシ13は、図示省略の駆動手段(モーター等)により、回転駆動される。ロールブラシ13の駆動手段は、走行輪12の駆動手段を共用してもよいが、通常、走行輪12の駆動手段とは独立したものが用いられる。ロールブラシ13は、単純な円柱形状を為すもの(例えば円柱状のスポンジ等)であってもよいが、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10では、後掲する図4に示すように、多数の毛を螺旋状に配置したものとなっている。
【0028】
以上のように、ソーラーパネル列50の幅方向(方向D)の一側から他側に至る走行体11の下面側に、複数本のロールブラシ13をソーラーパネル列50の幅方向(方向D)に沿って列状に配することで、走行体11を方向Dに走行させながら、ロールブラシ13を回転駆動すると、ソーラーパネル列50を構成する全ての段のソーラーパネル51を一度に洗浄することができる。
【0029】
ただし、本発明のソーラーパネル洗浄装置10のように、複数本のロールブラシ13がソーラーパネル列50に直交する方向Dに沿って列を為すように並べられたライン型のソーラーパネル洗浄装置10では、隣り合うロールブラシ13の間に隙間が存在していると、その隙間の部分では、ロールブラシ13がソーラーパネル51の受光面に当たらなくなるため、走行体11をソーラーパネル列50に沿う方向Dに1回走行させただけでは、ソーラーパネル51の受光面に洗浄されない箇所が筋状に形成される。特に、隣り合う分割ユニット14aの境界に重なる部分では、洗浄漏れが生じやすい。
【0030】
この点、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10を含め、本発明のソーラーパネル洗浄装置10では、図3の重合区間Sに示すように、一のロールブラシ13の端部と、当該一のロールブラシ13の隣に配された他のロールブラシ13の端部とが、走行体11の走行方向Dから見たときに重なるように配されている。図3は、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10を用いてソーラーパネル51を洗浄している様子を示した平面図である。このため、ソーラーパネル列50に沿う方向Dに走行体11を1回走行させただけでも、全てのソーラーパネル51の受光面の全体を漏れなく洗浄することが可能となっている。
【0031】
ところで、上記のように、隣り合うロールブラシ13の間に隙間が形成されないようにするためには、それぞれのロールブラシ13を長めに形成する必要がある。特に、走行体11を複数の分割ユニット11aで構成した第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10では、それぞれの分割ユニット11aにロールブラシ13を取り付けるところ、ロールブラシ13は、それぞれの分割ユニット11aよりも長く形成する必要がある。この点、そのように長いロールブラシ13の両端部を軸支するようにしたのでは、ロールブラシ13をそれぞれの分割ユニット11aに支持させにくくなる。また、分割ユニット11aを連結する際に、長いロールブラシ13や、それを支持する機構が邪魔になるおそれもある。
【0032】
このため、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10では、図4に示すように、それぞれのロールブラシ13を、本体ブラシ13aと、延長ブラシ13bとで構成している。図4は、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10のロールブラシ13周辺を、ロールブラシ13の中心線を含む平面で切断した状態を示した断面図である。
【0033】
本体ブラシ13aの両端部は、ロールブラシ取り付け機構14を介して、分割ユニット11a(走行体11)に軸支されている。ロールブラシ取り付け機構14の具体的な構成は、特に限定されない。第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10においては、ロールブラシ取り付け機構14を、上側ブラケット14aと、リニアガイド14bと、スプリング14c(ガススプリング等)と、下側ブラケット14dと、軸受け14eとで構成している。
【0034】
ロールブラシ取り付け機構14のうち、上側ブラケット14aは、分割ユニット11aのフレーム11aに対して取り付けられる部分となっている。また、リニアガイド14bは、上側ブラケット14aに対して下側ブラケット14dを上下方向に案内するためのものとなっている。スプリング14cは、上側ブラケット14aに対して下側ブラケット14dを下側(ソーラーパネル51の受光面側)に付勢するためのものとなっている。軸受け14eには、ロールブラシ13の軸体(図4に示した例では、後述する連結軸体13c)を回転可能な状態で軸支するためのものとなっている。
【0035】
ソーラーパネル列50に沿って走行しているときの走行体11に振動等が生じ、ロールブラシ13の外周面がソーラーパネル51の受光面から浮き上がることがあると、ソーラーパネル51の受光面に洗浄ムラが生ずるおそれがある。この点、ロールブラシ取り付け機構14を上記のような構造とすることで、走行時の走行体11に振動等が生じても、ソーラーパネル51の受光面に対してロールブラシ13の外周面が接触した状態を維持すること(ロールブラシ13の外周面がソーラーパネル51の受光面から浮き上がらないようにすること)が可能になる。したがって、ソーラーパネル51の受光面に洗浄ムラが生じにくくすることができる。
【0036】
延長ブラシ13bは、本体ブラシ13aの端部に対して一体的に、本体ブラシ13aと同軸上に取り付けられている。具体的には、本体ブラシ13aの軸体13aの端部に、連結軸体13cを固定し、この連結軸体13cに延長ブラシ13bの軸体13bを固定している。延長ブラシ13bは、本体ブラシ13aの一方の端部のみに取り付けてもよいが、図4に示した例では、本体ブラシ13aの両方の端部に取り付けている。本体ブラシ13aの軸体13aの両側の端部に固定された一対の連結軸体13cのうち、一方の連結軸体13cには、ギア15が設けられている。このギア15は、動力伝達体16(チェーンやベルト等)を介して、ロールブラシ13用の駆動手段17(モーター等)に接続されている。このため、駆動手段17を駆動すると、その駆動手段17が発生した回転力が連結軸体13cに伝達し、本体ブラシ13a及び延長ブラシ13cを含むロールブラシ13の全体が一体的に回転するようになっている。
【0037】
また、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10では、図5に示すように、走行体11の走行方向Dに対してそれぞれのロールブラシ13が為す角度θが調節可能となっている。図5は、分割ユニット11aの平面図であり、図5(a)は、ロールブラシ13を走行体11の走行方向Dに対して垂直に支持した状態を、図5(b)は、ロールブラシ13を走行体11の走行方向Dに対して非垂直に支持した状態を、それぞれ示している。
【0038】
図5(a)に示すように、角度θが垂直(90°)である場合と、図5(b)に示すように、角度θが非垂直(85°)である場合とを比較すると、走行体11の走行方向Dでは、角度θが非垂直である場合の方が、ロールブラシ13がソーラーパネル51の受光面に対して広い幅で接触するようになる。加えて、角度θが非垂直であると、回転するロールブラシ13が、ソーラーパネル51の受光面に付着した汚れを走行体11の走行方向Dに対して斜めに掻き出すようになり、汚れの掻き出し効果も高くなる。このため、ソーラーパネル51をより効果的に洗浄することが可能になる。ロールブラシ13の最適な角度θは、ロールブラシ13の回転速度や、走行体11の走行速度や、ソーラーパネル51の傾斜角度等によって変わるところ、これらの状況に応じてロールブラシ13の角度θを適宜変更することも可能である。
【0039】
角度θを、どの程度の範囲で調節できるようにするかは特に限定されない。しかし、角度θを0°や180°に近づけすぎると、ロールブラシ13が走行体11の走行方向Dに対して平行に近い状態となり、重合区間S(図3)を設けにくくなる。このため、角度θを、45°よりも小さく設定することや、135°よりも大きく設定することは殆どない。このため、角度θは、45°以上、135°以下の範囲で設定できるようにしておけば、通常は足りる。角度θは、60°以上、120°以下の範囲で調節できるようにしてもよく、80°以上、100°以下の範囲で調節できるようにしてもよい。
【0040】
ただし、上述した効果(ソーラーパネル51の受光面に付着した汚れを掻き出しやすくする効果)が奏されやすくするためには、ロールブラシ13を、走行体11の走行方向Dに垂直な状態(θ=90°の状態)からある程度大きく傾ける必要がある。このため、角度θの調節幅は、ある程度広く確保することが好ましい。具体的には、角度θを、90°を中心として2°以上の幅(89°~91°よりも広い範囲)で調節できるようにすることが好ましい。角度は、90°を中心として6°以上の幅(87°~93°よりも広い範囲)で調節できるようにすることが好ましく、90°を中心として10°以上の幅(85°~95°よりも広い範囲)で調節できるようにすることがより好ましい。
【0041】
図6は、分割ユニット11におけるロールブラシ13を支持する部分(図5の部分α)の周辺を拡大した平面図であって、図6(a)は、ロールブラシ13を走行体11の走行方向Dに対して垂直に支持した状態を、図6(b)は、ロールブラシ13を走行体11の走行方向Dに対して非垂直に支持した状態を、それぞれ示している。
【0042】
ロールブラシ13の角度θを調節できるようにする構造は、特に限定されない。第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10では、既に述べたように、ロールブラシ13(本体ブラシ13a)の両端部を、ロールブラシ取り付け機構14(図4)を介して分割ユニット11のフレーム11aに取り付けているところ、図6に示すように、ロールブラシ取り付け機構14の上側ブラケット14aに、長孔14aを設けるとともに、この長孔14aにボルト14fを挿通し、そのボルト14fの先端を分割ユニット11aのフレーム11aに螺合するようにしている。長孔14aは、その長手方向が、走行体11の走行方向Dと非平行となるように形成している。ロールブラシ13の一方の端部を支持する上側ブラケット14aにおける長孔14aと、ロールブラシ13の他方の端部を支持する上側ブラケット14aにおける長孔14aとは、対称に配置している。
【0043】
これにより、長孔14aにおけるボルト14fを挿通する箇所を変更することによって、ロールブラシ13が為す角度θを調節することができる。長孔14aは、それぞれの上側ブラケット14aに2個ずつ対で設けており、その対を為す2個の長孔14aのそれぞれに、ボルト14fを挿通するようにしている。対を為す2個の長孔14aは、平面視「八」の字状(互いに非平行で、且つ、線対称を為すよう)に配している。これにより、ロールブラシ13の角度θをスムーズに安定して調節することが可能になる。上側ブラケット14aの周辺には、ロールブラシ13の角度θを確認するためのスケール等を設けてもよい。
【0044】
ボルト14fの先端は、走行体11のフレーム11aに直接螺合してもよいが、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10においては、図6に示すように、フレーム11aに沿って溝11a(同図において目の大きな網掛けハッチングで示した部分)を形成し、この溝11aに嵌め込んだ先入れナット14gに螺合するようにしている。先入れナット14gは、フレーム11aの溝11aに沿ってスライドさせることが可能となっている。このため、ロールブラシ13の位置(フレーム11aに対する上側ブラケット14aの取り付け位置)を走行体11の走行方向Dで調節することも可能となっている。これにより、ロールブラシ13の取り付け自由度をさらに高めることができる。
【0045】
例えば、それぞれの分割ユニット11aのロールブラシ13を、図7に示すように配置することも可能である。図7は、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10を用い、走行体11の走行方向Dに対してロールブラシ13を非垂直に傾斜させた状態でソーラーパネル51を洗浄している様子を示した平面図である。図7に示すように、それぞれの分割ユニット11aのロールブラシ13の位置を、走行体11の走行方向Dで少しずつずらすことによって、隣り合うロールブラシ13が互いに緩衝しないようにすることができる。
【0046】
以上で説明した第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10は、隣り合うロールブラシ13が重なる重合区間S(図3)を設けたため、走行体11をソーラーパネル列50に沿った方向Dに1回走行させると、ソーラーパネル列50を構成する全てのソーラーパネル51の受光面を漏れのない状態で洗浄することが可能である。第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10は、各種のソーラーパネル51を洗浄する際に使用することができ、家屋やビルの屋根等に設置されたソーラーパネル51を洗浄する際にも使用することができるが、メガソーラー等、大規模な太陽光発電施設におけるソーラーパネル51を洗浄するものとして好適である。

【0047】
2.第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置
続いて、第二実施形態のソーラーパネル10について説明する。第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置10については、主に、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10と異なる構成について説明する。第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置10で特に言及しない構成については、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10で述べたものと同様の構成を採用することができる。
【0048】
図8は、第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置10を用いてソーラーパネル51を洗浄している様子を示した平面図である。第二実施形態のソーラーパネル洗浄装置10(図8)は、第一実施形態のソーラーパネル洗浄装置10(図3)よりも、走行体11の幅(方向Dでの幅)が広くなっている。このため、それぞれの分割ユニット11aのロールブラシ13の位置(方向Dでの位置)を、図3に示すように、交互に切り替えなくても、図8に示すように、階段状に切り替えることが可能である。また、走行体11の幅に余裕がある分、それぞれの分割ユニット11aに複数本ずつロールブラシ13を取り付けること(ロールブラシ13を複数列で配置すること)も可能である。これにより、ソーラーパネル51をより効率的に洗浄することが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
10 ソーラーパネル洗浄装置
11 走行体
11a 分割ユニット
11a フレーム
11a
12 走行輪
13 ロールブラシ
13a 本体ブラシ
13a 軸体
13b 延長ブラシ
13b 軸体
13c 連結軸体
14 ロールブラシ取り付け機構
14a 上側ブラケット
14a 長孔
14b リニアガイド
14c スプリング
14d 下側ブラケット
14e 軸受け
14f ボルト
14g 先入れナット
15 ギア
16 動力伝達体
17 駆動手段
18 走行ガイド
50 ソーラーパネル列
51 ソーラーパネル
ソーラーパネル列に沿った方向(走行体の走行方向)
ソーラーパネル列に直交する方向
S 重合区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8