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特開2022-14347ポリシリコン化合物の製造方法、ポリシリコン膜の製造方法、及びポリシリコン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014347
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ポリシリコン化合物の製造方法、ポリシリコン膜の製造方法、及びポリシリコン化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/60 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
C08G77/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116626
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA06
4J246AA19
4J246AB05
4J246BB451
4J246BB452
4J246BB45X
4J246CA01X
4J246FA141
4J246FA571
4J246GC24
4J246GD08
4J246HA66
(57)【要約】
【課題】本発明は、重合収率がより一層高いポリシリコン化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化ケイ素化合物(B)とを含む組成物を紫外線で重合することを特徴とするポリシリコン化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化ケイ素化合物(B)とを含む組成物を紫外線で重合することを特徴とするポリシリコン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記環状水素化ケイ素化合物(B)の量が、組成物100質量%中、30質量%以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記環状水素化ケイ素化合物(B)が、シクロペンタシラン及びシクロヘキサシランから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記紫外線が、波長300~380nmを有する請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により得られるポリシリコン化合物を溶媒に溶解し、得られる溶液を基板に塗布し、乾燥および/または焼結することを特徴とするポリシリコン膜の製造方法。
【請求項6】
ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化シラン化合物(B)との共重合体であるポリシリコン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン化合物の製造方法、ポリシリコン膜の製造方法、及びポリシリコン化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、半導体等の用途では、薄膜シリコンが用いられており、この薄膜シリコンは、シラン化合物を用いて気相または液相(例えば溶液塗布)のいずれかで形成することが知られている。
【0003】
この内、液相(例えば溶液塗布)でシリコン膜を形成する方法として、シクロペンタシランやシクロヘキサシランを溶質とする溶液を調製し、熱重合又は光重合によりシリコン膜を作製する方法等が報告されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-187261号公報
【特許文献2】特開2005-022964号公報
【特許文献3】特開2001-262058号公報
【特許文献4】特開2003-171556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液相でシリコン膜を形成する方法において、重合収率がより一層高いシリコン化合物の製造方法が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、重合収率がより一層高いポリシリコン化合物の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、当該製造方法により得られるポリシリコン化合物を用いたポリシリコン膜の製造方法、及び当該製造方法により得られるポリシリコン化合物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得た本発明のポリシリコン化合物の製造方法は、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化ケイ素化合物(B)とを含む組成物を紫外線で重合するところに要旨を有する。本発明において、前記環状水素化ケイ素化合物(B)の量が、組成物100質量%中、30質量%以下であり、前記環状水素化ケイ素化合物(B)が、シクロペンタシラン及びシクロヘキサシランから選ばれる少なくとも1種であり、前記紫外線が、波長300~380nmを有することが好ましい。
【0008】
本発明には、当該製造方法により得られるポリシリコン化合物を溶媒に溶解し、得られる溶液を基板に塗布し、乾燥および/または焼結することを特徴とするポリシリコン膜の製造方法、並びにネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化シラン化合物(B)との共重合体であるポリシリコン化合物も包含される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重合収率がより一層高いポリシリコン化合物の製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、当該製造方法により得られるポリシリコン化合物を用いたポリシリコン膜の製造方法、及び当該製造方法により得られるポリシリコン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリシリコン化合物の製造方法は、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化ケイ素化合物(B)とを含む組成物を紫外線で重合することを特徴とする。
本発明において、環状水素化ケイ素化合物は、紫外線吸収能を有することから、紫外線重合開始剤として使用することができ、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体を効率よく重合することができ、高分子量を有するポリシリコン化合物を提供することが可能となる。
【0011】
本発明において、ネオペンタシラン誘導体(A)は、ネオペンタシランを骨格として有するものであればよく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる1種以上で置換されているネオペンタシランであることが好ましい。
【0012】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1~15の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の炭素数3~15の脂環式飽和炭化水素基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~18、より好ましくは1~15、さらに好ましくは1~10である。
【0013】
アリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、o-イソプロピルフェニル基、m-イソプロピルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-ペンチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-オクチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、フェナントリル基等が挙げられる。
アリール基の炭素数は、例えば6~20、好ましくは6~18、より好ましくは6~15である。
【0014】
アルコキシ基は、上記のアルキル基に酸素原子が結合したものであってもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~18、より好ましくは1~15である。
【0015】
ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0016】
本発明において、ネオペンタシラン及びネオペンタシラン誘導体は、混合して使用してもよく、ネオペンタシラン誘導体は、1種又は2種以上で使用してもよい。
【0017】
ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)の総量は、組成物100質量%中、好ましくは70質量%以上99.99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99.5質量%以下である。ネオペンタシランの量が低い又は多いと、得られるポリシリコン化合物の分子量が低下する虞がある。
【0018】
環状水素化ケイ素化合物(B)は、一般式Sin2nで表されるものであり、nは、例えば3~10の整数、好ましくは3~8の整数、より好ましくは4~7の整数、さらに好ましくは5~6の整数である。
【0019】
環状水素化ケイ素化合物(B)は、単素環を構成しないケイ素原子を含むものであってもよく、例えば、単素環を構成するケイ素原子に、ケイ素原子を含む置換基(例えばシリル基)が結合していてもよい。
【0020】
ケイ素原子から形成された単素環の一部には、ハロゲン原子が結合していてもよい。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子であることが好ましく、塩素原子、臭素原子であることがより好ましく、塩素原子であることがさらに好ましい。
【0021】
中でも、前記環状水素化ケイ素化合物(B)は、シクロペンタシラン及びシクロヘキサシランから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはシクロヘキサシランである。
【0022】
前記環状水素化ケイ素化合物がシクロヘキサシランである場合、シクロヘキサシランは、従来公知の方法により製造されたものであればよく、例えば、(1)ジフェニルジクロロシランを金属によりカップリングさせ6員環を形成後、ハロゲン化、還元工程を経て得られるシクロヘキサシランを用いてもよく、(2)ハロシランとしてトリクロロシラン、トリフェニルホスフィン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを反応させ、6員環のドデカクロロシクロヘキサシランにトリフェニルホスフィンが配位した環状ハロシラン中性錯体を形成し、この環状ハロシラン中性錯体を還元して得られるシクロヘキサシランを用いてもよく、(3)ハロシランとしてトリクロロシランとアンモニウム塩やホスホニウム塩などのオニウム塩と第3級アミンを反応させて得られた環状ハロシラン化合物の塩をルイス酸化合物で処理して環状ハロシラン化合物を得て、続いて還元して得られるシクロヘキサシランを用いてもよく、さらに高純度なシリコン膜を形成する観点から、不純物を除去するために精製を行ったものを使用してもよい。
【0023】
シクロヘキサシランの含有量は、環状水素化ケイ素化合物(B)100質量%中、97質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97.5質量%以上、さらに好ましくは98.0質量%以上であり、限りなく100質量%であることが望ましいが、99.9質量%以下又は99.7質量%以下であってもよい。
当該含有量は、ガスクロマトグラフィー分析から得られる面積割合に基づいたものであってよい。
【0024】
前記環状水素化ケイ素化合物(B)の量は、組成物100質量%中、好ましくは0.01質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
当該環状水素化ケイ素化合物の量が少ないか多いと、ネオペンタシラン等の光重合が不十分となる虞がある。
【0025】
本発明において、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体と、環状水素化ケイ素化合物とを含む組成物は、必要に応じて有機溶媒、ラジカル発生剤等を含んでいてもよい。
【0026】
有機溶媒は、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体と環状水素化ケイ素化合物の両方が溶解するものであればよく、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒等である。
【0027】
炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルグリコール、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種又は2種以上であってもよい。
有機溶媒の量は、組成物100質量%中、例えば0~80質量%、好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0028】
ラジカル発生剤としてはシリルシクロテトラシラン、シリルシクロペンタシラン、シリルシクロヘキサシラン等が挙げられる。
他のラジカル発生剤として、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物あるいはアゾ系化合物も挙げられる。
ラジカル発生剤の含有量は、環状水素化ケイ素化合物100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
当該組成物に、ドーパントとして3B族元素、5B族元素を含む物質(好ましくはリン、ホウ素、アンチモン)を添加してもよい。このようなドーパントを添加した組成物を基板に塗布して、加熱等の処理を施してn型、p型のシリコン膜を形成することができる。
【0030】
次に、当該組成物に、紫外線を照射するが、紫外線は、従来公知の紫外線発生装置を使用することができる。
紫外線は、不活性ガス存在下で、当該組成物に照射してもよい。
不活性ガスは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等であればよく、窒素であることが好ましい。
不活性ガスの酸素濃度は、当該ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体と、環状水素化ケイ素化合物との良好な反応の観点から低い方が望ましく、例えば0ppm超50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0031】
紫外線の光源は、例えば低圧、中圧又は高圧の水銀ランプ、メタルハライドランプ、アルゴンランプ、クリプトンランプ、キセノンランプ、LEDランプ等が使用できる。
紫外線の他の光源として、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClのレーザー等を使用してもよい。
紫外線の光源は、1種または2種以上であってもよい。
中でも、キセノンランプを使用することが好ましい。
【0032】
当該組成物に照射する紫外線の波長は、250~450nmであることが好ましく、300~405nmであることがより好ましく、300~380nmであることがさらに好ましい。
【0033】
紫外線は、1種または2種以上の波長の紫外線を使用してもよく、2種以上の波長を使用する場合、異なる波長を同時に照射してもよく、異なる時間に照射してもよい。
紫外線の強度は、例えば0.1~100J/cm2程度であればよく、紫外線の照射時間は、照射強度等に応じて適宜調節可能である。
紫外線の照射時の雰囲気の温度は、例えば20~300℃であり、好ましくは25~100℃であり、さらに好ましくは25℃である。
紫外線の照射時間は、例えば0.1分~10時間、好ましくは1分~5時間である。
【0034】
本発明の別態様には、ネオペンタシラン若しくはネオペンタシラン誘導体(A)と、環状水素化シラン化合物(B)との共重合体であるポリシリコン化合物が包含される。
【0035】
得られるポリシリコン化合物は、必要に応じて精製してもよく、濾過(例えばフィルター)に供して不溶分を除いてもよい。
【0036】
ポリシリコン化合物は、基板への塗布性向上の観点から、所定の重量平均分子量を有することが好ましく、ポリシリコン化合物の重量平均分子量は、好ましくは1000~50000、より好ましくは2000~40000、さらに好ましくは3000~30000、さらにより好ましくは5100~20000、特に好ましくは5500以上、6000以上、又は7000以上である。
【0037】
当該重量平均分子量は、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができる。当該測定条件として、溶媒は、シクロヘキセンであり、これを用いてポリシリコン化合物を2.5%に希釈し、流量を1ml/minとし、ポリシリコン化合物希釈液の導入量を50μLとする条件が挙げられる。
【0038】
本発明の態様において、本発明の製造方法により得られるポリシリコン化合物を溶媒に溶解し、得られる溶液を基板に塗布し、乾燥および/または焼結することを特徴とするポリシリコン膜の製造方法も包含される。
【0039】
ポリシリコン化合物を溶媒に溶解して得られる溶液は、所望の基板上に塗布して塗膜を形成すればよい。
当該溶媒は、上記の有機溶媒と同様であってもよく、好ましくは炭化水素系溶媒、より好ましくは炭素数6~10の炭化水素系溶媒である。
【0040】
ポリシリコン化合物と溶媒を含む溶液において、溶媒の含有量は、溶液100質量%中、例えば1~99質量%、好ましくは30~95質量%、より好ましくは60~95質量%である。
【0041】
当該溶液は、ポリシリコン化合物、溶媒の他に、基板との密着性、クラック防止の観点から、シリコン粒子等を含んでいてもよい。
シリコン粒子は、従来公知のものを使用することができ、アモルファス粒子でも結晶粒子でもよい。
シリコン粒子の粒子径は、例えば0.001~100μm、好ましくは0.005~50μmであり、膜厚に応じて適宜選択すればよく、シリコン粒子の形状または粒径分布は特に制限されない。
【0042】
シリコン粒子の量は、ポリシリコン化合物と溶媒の合計量100質量部に対し、例えば0.01~300質量部、好ましくは0.1~150質量部、より好ましくは1~100質量部である。
【0043】
基板は、例えばガラス、金属、またはプラスチックから構成される基板である。
ガラスとしては、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等が挙げられる。
金属としては、金、銀、銅、ニッケル、シリコン、アルミニウム、鉄、タングステン、チタン、ステンレス等が挙げられる。
プラスチックとしては、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
この他、導電性金属又はITO等の導電性金属酸化膜を表面に有するガラス、プラスチック等を使用してもよい。
【0044】
基板の形状は、例えば板状、フィルム状等であってもよく、それらの表面は、平面であってもよく凹凸形状を有する非平面等であってもよい。
【0045】
当該組成物を基板に塗布する手段としては、流し込み塗布若しくはブレード塗布、又は印刷法若しくはコーティング法(例えばフレキソ/グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、デジタルオフセット印刷及びスクリーン印刷)、噴霧法、回転塗工法(スピンコーティング)、浸漬法(ディップコーティング)、メニスカスコーティング、スリットコーティング、スロットダイコーティング、及びカーテンコーティングが挙げられる。
中でも、スピンコーティング、流延塗布、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディスペンサー等が好ましい。
【0046】
塗布工程は不活性ガス雰囲気下で行なってもよく、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスを流しながら行なってもよい。
塗膜の膜厚は、例えば0.001~10μm、好ましくは0.01~5μm程度である。
【0047】
基板上に形成した塗膜は、次に乾燥および/または焼結に供される。
乾燥温度は、例えば20~50℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは25~30℃である。
焼結温度は、例えば100~500℃、好ましくは150~450℃、より好ましくは200~400℃である。
乾燥時間又は焼結時間は、適宜調節すればよいが、例えば1分~5時間、好ましくは5分~2時間である。
乾燥および/または焼結は不活性ガス雰囲気下で行なってもよく、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスを流しながら行なってもよい。
【0048】
得られたポリシリコン膜は、アモルファス状の膜であってもよく、結晶状の膜であってもよく、これらが混在した膜であってもよい。
ポリシリコン膜はまた、必要に応じて紫外線を照射してアモルファス状の膜を結晶状の膜に変換してもよい。紫外線の照射条件は、上記と同様であってもよい。
【0049】
ポリシリコン膜の膜厚は、例えば1~500nm、好ましくは5~400nm、より好ましくは10~300nmである。
当該膜厚は、例えば分光干渉又は蛍光X線を用いた非接触式膜厚測定器により求めることが可能である。
【0050】
ポリシリコン膜の屈折率は、例えばアモルファス状又は結晶状に応じて所定の範囲を満たせばよく、アモルファス状のポリシリコン膜の屈折率は、例えば4.5以上、アモルファス状及び結晶状が混在したポリシリコン膜の屈折率は、例えば4.24以上4.5未満、結晶状のポリシリコン膜の屈折率は、例えば4.24未満である。当該屈折率は、例えば従来のアッベ屈折計を用い、温度20℃、光源ナトリウムスペクトルのD線の条件下で測定することにより求めることができる。
【0051】
ポリシリコン膜は、必要に応じて表面改質してもよく、単体酸素及び/若しくはO3、二酸化炭素、ガス状にされた1種以上の酸素含有化合物又はそれらのガス混合物でガス処理されてもよい。
【0052】
本発明のポリシリコン化合物及びポリシリコン膜は、太陽電池、半導体等の分野に好適に使用することができる。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0054】
実施例1
窒素気流中(酸素濃度3ppm以下)、ネオペンタシラン0.9mLとシクロヘキサシラン0.1mLを石英製サンプル管に入れ、撹拌し、200W水銀キセノンランプ(HOYA Candeo Optronics株式会社、EXECURE 3000)から発せられる光線を照射する。
この重合サンプルを、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターで濾過し、不溶分を除いて、この濾過後の溶液中に含まれるポリシリコン化合物を得る。
【0055】
比較例1
窒素気流中(酸素濃度3ppm以下)、ネオペンタシラン1.0mLを石英製サンプル管に入れ、撹拌し、200W水銀キセノンランプ(HOYA Candeo Optronics株式会社、EXECURE 3000)から発せられる光線を照射する。
この重合サンプルを、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターで濾過し、不溶分を除いて、この濾過後の溶液中に含まれるポリシリコン化合物を得る。