(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143502
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】離職リスクチェック装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220926BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044039
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】521091192
【氏名又は名称】スタートビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】永井 正史
(72)【発明者】
【氏名】中富 康仁
(72)【発明者】
【氏名】中道 弘人
(72)【発明者】
【氏名】野口 肇
(72)【発明者】
【氏名】細谷 友樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 貴
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】ストレスチェックでAのグループに分類された被験者において、職場に満足しておらず離職の可能性のある被験者や、労働生産性や会社への貢献度に問題がある者を分類できる離職リスクチェック装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】ストレスチェックにおいてA判定である被験者に対する離職リスクのチェックを行うための離職リスクチェック装置であって、被験者とのインターフェイスを構成するHMIと、HMIからの入力により、被験者の離職リスクの判断を行う制御部と、を備え、制御部は、被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての被験者からの回答と、被験者が、所定の運動習慣の有無についての被験者からの回答と、被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての被験者からの回答と、に基づき、被験者の離職リスクの判断を行う離職リスクチェック装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレスチェックにおいてA判定である被験者に対する離職リスクのチェックを行うための離職リスクチェック装置であって、
前記被験者とのインターフェイスを構成するHMIと、
前記HMIからの入力により、前記被験者の離職リスクの判断を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての前記被験者からの回答と、
前記被験者の、所定の運動習慣の有無についての前記被験者からの回答と、
前記被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての前記被験者からの回答と、
に基づき、前記被験者の離職リスクの判断を行う離職リスクチェック装置。
【請求項2】
前記所定の運動習慣は、1週間に150分間以上の運動を行っていることを含む請求項1に記載の離職リスクチェック装置。
【請求項3】
ストレスチェックにおいてA判定である被験者に対する離職リスクのチェックを行うためのプログラムであって、
前記被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての前記被験者からの回答と、
前記被験者の、所定の運動習慣の有無についての前記被験者からの回答と、
前記被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての前記被験者からの回答と、
に基づき、前記被験者の離職リスクの判断を行うステップを実行させるためのプログラム。
【請求項4】
前記所定の運動習慣は、1週間に150分間以上の運動を行っていることを含む請求項3に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離職リスクチェック装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、職場等においては、ストレスチェックが行われている(例えば、特許文献1参照)。ストレスチェックでは、A、B、C、Dの各グループに分類された複数の質問に対して、被験者が回答し、回答に応じた点数が、各グループ毎に集計される。集計された点数に応じて、被験者は、A、B1、B2、C1、C2、Dの各グループに分類される。A、B1、B2、C1、C2、Dの各グループは、この順で、AからDに向かってストレスの度合いが高いことが分かり、問題がないと考えられるAグループ以外の各グループに適したストレスの対策が採られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストレスチェックが行われAのグループに分類された被験者は、ストレスの度合いが低く、職場におけるストレスに関して問題ないと判断される。しかし、実際には、Aのグループに分類された被験者の中には、その後1年以内の離職者は少なくない。また、Aのグループに分類された被験者の中には、労働生産性に問題がある者や、被験者を雇用する会社への貢献度に問題がある者もいる。
【0005】
本発明は、ストレスチェックでAのグループに分類された被験者において、職場に満足しておらず離職の可能性のある被験者や、労働生産性や会社への貢献度に問題がある者を分類できる離職リスクチェック装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ストレスチェックにおいてA判定である被験者に対する離職リスクのチェックを行うための離職リスクチェック装置であって、前記被験者とのインターフェイスを構成するHMIと、前記HMIからの入力により、前記被験者の離職リスクの判断を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての前記被験者からの回答と、前記被験者が、所定の運動習慣の有無についての前記被験者からの回答と、前記被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての前記被験者からの回答と、に基づき、前記被験者の離職リスクの判断を行う離職リスクチェック装置に関する。
【0007】
また、前記所定の運動習慣は、1週間に150分間以上の運動を行っていることを含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明は、ストレスチェックにおいてA判定である被験者に対する離職リスクのチェックを行うためのプログラムであって、前記被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての前記被験者からの回答と、前記被験者の、所定の運動習慣の有無についての前記被験者からの回答と、前記被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての前記被験者からの回答と、に基づき、前記被験者の離職リスクの判断を行うステップを実行させるためのプログラムに関する。
【0009】
また、前記所定の運動習慣は、1週間に150分間以上の運動を行っていることを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストレスチェックでAのグループに分類された被験者において、職場に満足しておらず離職の可能性のある被験者や、労働生産性や会社への貢献度に問題がある者を分類できる離職リスクチェック装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置の制御部による制御を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置の制御部による制御のアルゴリズムを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置の制御部による制御により分類された各グループを示す図である。
【
図5】両脚起立40cm起立テストを示す説明図である。
【
図7】起立テストと筋肉量との関係を示す図である。
【
図9】起立テストとCSIとの関係を示す図である。
【
図10】起立テストとストレスB領域との関係を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、S、A1、A2、A3の各グループに分類されたそれぞれの人数を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、S、A1、A2、A3の各グループに分類されたそれぞれの平均年齢を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、分類された各グループのCSI-9の値を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、分類された各グループのワーカホリズムの値を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、分類された各グループのアテネ尺度の値を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、分類された各グループの絶対的プレゼンティーズムの値を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態による離職リスクチェック装置により、分類された各グループのワークエンゲージメントの値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。離職リスクチェック装置は、
図1に示すように、制御部100と、HMI101を有しており、例えば、パーソナルコンピュータや、携帯端末装置や、専用のチェック装置等により構成される。
【0013】
HMI101は、被験者と、制御部100と、の間で、情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI101は、例えば、被験者に画像情報を表示するためのディスプレイや、音声出力のためのスピーカや、被験者が入力操作を行うための操作ボタン及びタッチパネル等を有している。HMI101は、無線により接続された携帯情報端末を利用して、被験者に対する情報の出力等が可能であり、携帯情報端末を介して、被験者による入力操作を受け付け可能である。
【0014】
制御部100は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを有して構成される。制御部100は、ROM等に記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。制御部100は、HMI101からの入力に基づいて各種の判断を行う。
【0015】
次に、制御部100においてプログラムが実行されることにより行われる判断の制御について説明する。
図2に示すように、ステップS101において、制御部100は、周知のストレスチェックである「職業性ストレス簡易調査票」の被験者をストレスチェックの結果に基づいて、A、B1、B2、C1、C2、Dのいずれかのグループに分類する処理を行う。この分類は、ストレスチェックにおけるA、B、C、Dの各グループに分類された複数の質問に対して、被験者が回答し、回答に応じた点数により行われる周知の方法により行われる。そして、制御部100による処理は、ステップS102へと進む。
【0016】
ステップS102において、制御部100は、ステップS101において、Aのグループに分類された被験者を、
図3、
図4に示すように、S、A1、A2、A3のいずれかのグループに分類する処理を行う。
【0017】
具体的には、制御部100は、ステップS102において、運動習慣と、食生活と、片脚起立テストの3つにおいて肯定的な回答をした被験者をSのグループに分類する。また、制御部100は、ステップS102において、運動習慣と、食生活と、片脚起立テストの3つのうちの2つにおいて肯定的な回答をした被験者を、A1のグループに分類する。また、制御部100は、ステップS102において、運動習慣と、食生活と、片脚起立テストの3つのうちの1つにおいて肯定的な回答をした被験者を、A2のグループに分類する。また、制御部100は、ステップS102において、運動習慣と、食生活と、片脚起立テストの3つのいずれも否定的な回答をした被験者を、A3のグループに分類する。そして、制御部100による処理は終了する。
【0018】
上述の運動習慣については、1週間に150分以上の有酸素運動をする運動習慣を被験者が有しているか否かの質問に対する回答に基づく。運動については具体的には、散歩等の時間は含まれない。会話は可能だがじんわりと汗をかくくらいの強度の運動を意味しており、具体的には、例えば、軽い筋トレや、子供と遊ぶことや、やや速足での歩行や、ゴルフ(ラウンド)や、階段を昇ることや、ジョギング等が含まれる。
【0019】
また、食生活については、バランスのよい食生活を心がけているか否かの質問に対する回答に基づく。バランスのよい食生活とは、具体的には、被験者が主観的に自らバランスのよい食生活をしていると判断していることを意味する。
【0020】
片脚起立テストについては、
図6に示すように、足首に対して膝を被験者の前方へ位置させるように下腿を70度の角度で前傾させた状態で、被験者が40cmの高さのboxに着座した状態から、片脚で起立できるか否かの質問に対する回答に基づく。
【0021】
片脚起立テストが、両脚起立テストよりも適切である点については、
図7~
図10に示すとおりである。具体的には、
図7に示すように、片脚起立テストにおける肯定的な回答の被験者においては、筋肉量を測定すると70%の被験者が約40kg~約50kgであるのに対して、前述の片脚起立テストにおいて片脚ではなく
図5に示すように両脚で起立テストを行い(以下、「両脚起立40cm起立テスト」という)、これに対して肯定的な回答をした被験者や、前述の片脚起立テストにおいて片脚ではなく両脚で、更に、40cmの高さのboxに代えて20cmの高さのboxを用いて起立テストを行い(以下、「両脚起立20cm起立テスト」という)、これに対して肯定的な回答をした被験者では、筋肉量を測定すると30%の被験者が約35kg~約40kgである。このため、片脚起立テストにおいて肯定的な回答の被験者の多くは、筋肉量が多く体力的なレベルが高いことが分かる。
【0022】
また、
図8に示すように、片脚起立テストにおける肯定的な回答の被験者においては、被験者が主観的に、日常的に抱えている痛みを認識しているときの当該痛みの値であるNRSの値が4未満であるのに対して、両脚起立40cm起立テストや両脚起立20cm起立テストの被験者は、3~6である。このため、片脚起立テストにおいて肯定的な回答の被験者の多くは、痛みを強く感じていないことが分かる。
【0023】
また、
図9に示すように、片脚起立テストにおける肯定的な回答の被験者においては、CSI(Central Sensitization Inventory)の値が、15点以下であるのに対して、両脚起立40cm起立テストや両脚起立20cm起立テストの被験者は、20点以下である。このため、片脚起立テストにおいて肯定的な回答の被験者の多くは、ストレスを強く感じていないことが分かる。
【0024】
また、
図10に示すように、片脚起立テストにおける肯定的な回答の被験者においては、ストレスチェックにおけるストレスB(グループBに分類されるストレスチェックの質問における点数)の値が、50点未満であるのに対して、両脚起立40cm起立テストや両脚起立20cm起立テストの被験者は、50点以上である。このため、片脚起立テストにおいて肯定的な回答の被験者の多くは、ストレスを強く感じていないことが分かる。
【0025】
ここで、S、A1、A2、A3のグループに分類された被験者の人数については、
図11に示すとおりである。
図10より、S、A2に含まれる人数が多く、Sのグループに分類された被験者の人数よりも、A1、A2、A3のグループに分類された被験者の人数の方が多いことが分かる。また、S、A1、A2、A3のグループに分類された被験者の平均年齢は
図12に示すとおりであり、これらの全体の平均年齢は43.3歳である。
【0026】
S、A1、A2、A3の各グループにおける、CSIのショートフォームであるCSI-9の値の平均値については、
図13に示すとおりである。ここで、10点以上で中枢性感作あり、と判断し、この10点をcut-off値とする。A3のグループの値は、B1、B2、C1、C、2Dの各グループの値と同様に、cut-off値を超える値となっており、運動習慣のある生活を推奨する必要があることが分かる。このため、A3のグループに分類された被験者に対しては、運動習慣のある生活を推奨することにより、離職リスクを低下させることが可能となることが分かる。
【0027】
S、A1、A2、A3の各グループにおける、ワーカホリズム(DUWAS)の値の平均値については、
図14に示すとおりである。A3のグループの値は、B1、B2、C1、C、2Dの各グループの値と同様に、20点を超える値となっており、仕事依存度が高いことが分かる。このため、A3のグループに分類された被験者に対しては、ワーカホリック対策を行うことにより、離職リスクを低下させることが可能となることが分かる。
【0028】
S、A1、A2、A3の各グループにおける、アテネ尺度に基づく睡眠の値の平均値については、
図15に示すとおりである。A1、A2、A3のグループの値は、B1、B2、C1、C、2Dの各グループの値と同様に、4以上の値となっており、睡眠の質に何らかの問題があることが分かる。このため、A1、A2、A3のグループに分類された被験者に対しては、睡眠の質を改善する対策を行うことにより、離職リスクを低下させることが可能となることが分かる。
【0029】
S、A1、A2、A3の各グループにおける、絶対的プレゼンティーズムの値の平均値については、
図16に示すとおりである。A1、A2、A3のグループの値は、B1、B2、C1、C、2Dの各グループの値と同様に、70未満の値となっており、労働生産性に何らかの問題があることが分かる。このため、A1、A2、A3のグループに分類された被験者に対しては、労働生産性を改善する対策を行うことにより、離職リスクを低下させることが可能となることが分かる。
【0030】
S、A1、A2、A3の各グループにおける、ワークエンゲージメントの値の平均値については、
図17に示すとおりである。A1、A2、A3のグループの値は、B1、B2、C1、C、2Dの各グループの値と同様に、40未満の値となっており、勤務先である会社等への貢献度に何らかの問題があることが分かる。このため、A1、A2、A3のグループに分類された被験者に対しては、勤務先である会社等への貢献度を改善する対策を行うことにより、離職リスクを低下させることが可能となることが分かる。
【0031】
上記構成の本実施形態による操作状況評価装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0032】
本実施形態では、制御部100は、被験者が、片脚立ち上がり可能か否かについての被験者からの回答と、被験者が、所定の運動習慣の有無についての被験者からの回答と、被験者が、バランスの良い所定の食生活を心掛けているか否かについての被験者からの回答と、に基づき、被験者の離職リスクの判断を行う。
【0033】
これにより、ストレスチェックにおいてA判定である被験者において、明らかになっていない問題を把握することが可能となり、職場における離職リスクの低下を促す対策や、労働生産性や会社への貢献度の改善を促す対策を行うことが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、所定の運動習慣は、1週間に150分間以上の運動を行っていることを含む。これにより、運動習慣の有無を加味した職場リスクのチェックを行うことが可能となる。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
100 制御部
110 HMI