(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143528
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
A62B 17/00 20060101AFI20220926BHJP
A41D 13/015 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A62B17/00
A41D13/015 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044080
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA10
2E185CC58
2E185CC74
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC04
3B011AC21
(57)【要約】
【課題】エアバッグを迅速に膨張させることができ、かつ、膨張したエアバッグにより保護対象部位を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置。内部に膨張用ガスを流入させて保護対象部位を覆うように膨張する構成のエアバッグ20を、備える。エアバッグが、保護対象部位よりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部22を有し、膨張完了時に、柱状膨張部の並設状態を保持されて、保護対象部位を保護可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
内部に膨張用ガスを流入させて前記保護対象部位を覆うように膨張する構成のエアバッグを、備え、
該エアバッグが、前記保護対象部位よりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部を有し、膨張完了時に、前記柱状膨張部の並設状態を保持されて、前記保護対象部位を保護可能に構成されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記保護対象部位が、前記装着者の左右の大腿骨転子部周縁部位と、頭部と、から構成され、
前記エアバッグが、前記大腿骨転子部周縁部位の側方を覆うように膨張する腰部保護部と、前記頭部の少なくとも後方を覆うように膨張する頭部保護部と、を備えて、前記腰部保護部を膨張用ガスの流れの上流側に位置させ、前記腰部保護部の膨張後に前記頭部保護部を膨張させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、膨張完了時に、前記柱状膨張部を前記保護対象部位の表面上で積層させるように配置させた重なり領域を、有する構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、前記柱状膨張部を一筆書き状に配置させて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグが、前記柱状膨張部を、交差部により、相互に連通させる構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、腰部に巻き付けるようにして装着者に装着させ、袋状のエアバッグを膨張させることにより、転倒時に腰部を保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の着用エアバッグ装置では、人体に装着させた状態で、エアバッグを膨張させる構成であることから、エアバッグに膨張用ガスを供給するガス供給部材として、通常車両に搭載されるエアバッグ装置に用いられるインフレーターではなく、小型で軽量な圧縮ガスを封入させたガスボンベが、使用されている。そして、ガスボンベは、急速にガスを流出させる構造ではないことから、腰部を広く覆うような袋状のエアバッグを膨張させるためには、ある程度の時間を要することとなり、エアバッグを、迅速かつ効率よく膨張させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを迅速に膨張させることができ、かつ、膨張したエアバッグにより保護対象部位を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、装着者の保護対象部位を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
内部に膨張用ガスを流入させて保護対象部位を覆うように膨張する構成のエアバッグを、備え、
エアバッグが、保護対象部位よりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部を有し、膨張完了時に、柱状膨張部の並設状態を保持されて、保護対象部位を保護可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグが、保護対象部位よりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部を有する構成とされていることから、エアバッグを単なる袋状とする場合と比較して、容積を小さくすることができる。また、このエアバッグは、膨張完了時に、柱状膨張部の並設状態を保持されることから、膨張完了時に、保護対象部位を安定して保護することができる。
【0008】
したがって、本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグを迅速に膨張させることができ、かつ、膨張したエアバッグにより保護対象部位を安定して保護することができる。
【0009】
具体的には、本発明の着用エアバッグ装置において、保護対象部位を、装着者の左右の大腿骨転子部周縁部位と、頭部と、から構成し、
エアバッグを、大腿骨転子部周縁部位の側方を覆うように膨張する腰部保護部と、頭部の少なくとも後方を覆うように膨張する頭部保護部と、を備えて、腰部保護部を膨張用ガスの流れの上流側に位置させ、腰部保護部の膨張後に頭部保護部を膨張させるように、構成することが、好ましい。
【0010】
着用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、複数の柱状膨張部を有する構成とすることにより、容積が増大することを抑制でき、エアバッグが、腰部保護部と頭部保護部とを備える構成であっても、迅速に膨張させることができる。そして、装着者の転倒時における転倒先部位との接触順序に対応して、膨張した腰部保護部により、大腿骨転子部周縁部位を迅速に保護することができ、その後、膨張した頭部保護部により、装着者の頭部も、的確に保護することができる。
【0011】
さらに、上記構成の着用エアバッグ装置において、エアバッグに、膨張完了時に、柱状膨張部を保護対象部位の表面上で積層させるように配置させた重なり領域を、配設させるように構成すれば、エアバッグを、所定箇所を厚く膨張させることも可能となって、好ましい。
【0012】
具体的には、エアバッグは、柱状膨張部を一筆書き状に配置させて構成してもよく、さらには、エアバッグを、柱状膨張部を、交差部により相互に連通させるように、構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
【
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置において使用されるエアバッグの平面図である。
【
図5】第1実施形態の着用エアバッグ装置において、装着者の転倒時における作動状態を説明する概略図である。
【
図6】第1実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の腰部保護部における前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
【
図7】第1実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張完了させた状態の腰部保護部における概略縦断面図である。
【
図8】第1実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張完了させた状態の頭部保護部における概略横断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
【
図10】第2実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の平面図である。
【
図11】第2実施形態の着用エアバッグ装置において使用するエアバッグと、エアバッグ用基材と、を、平らに並べた状態の平面図である。
【
図13】第2実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
【
図14】第2実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態であるエアバッグの平面図である。
【
図18】
図15のXVIII-XVIII部位の断面図である。
【
図19】
図15のエアバッグが膨張を完了させた状態の装着状態における前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
【
図20】
図15のエアバッグが膨張完了させた状態の装着状態における概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態の着用エアバッグ装置S1は、装着者Mの上半身MUに装着させるベスト型とされるもので、
図1に示すように、エアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2を備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ20を収納保持させる収納部としての着衣部10と、を備える構成とされている。第1実施形態の着用エアバッグ装置S1は、エアバッグ20の膨張完了時に、保護対象部位として、装着者Mの左右の大腿骨転子部TPを含めた転子部周縁部位TOと、頭部MHと、を保護する構成である。
【0015】
作動制御装置1は、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部2を、備えるとともに、センサ部2からの信号によって、装着者Mの通常動作と異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器5を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置1は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器5を作動させることとなる。この作動制御装置1には、センサ部2の作動用やガス発生器5の作動用の信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0016】
着衣部10は、装着者Mの上半身MUに装着可能なベストとして構成されるもので、装着者Mの上半身MUの正面を覆う左前部11及び右前部12と、装着者Mの上半身MUの背面を覆う背面部13と、を備える構成とされている。左前部11及び右前部12は、対向する内縁相互を、ファスナー等の締結具15によって、結合可能に、構成されている。換言すれば、着衣部10は、背面部13の左部の前方側に、左前部11を連ならせるように配設させ、背面部13の右部の前方側に、右前部12を連ならせるように配設させて、構成されている。着衣部10は、可撓性を有したシート体(織布)から構成されるもので、折り畳まれたエアバッグ20の外周側を覆うように、構成されている。
【0017】
エアバッグ20は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から、形成されている。実施形態の場合、エアバッグ20は、幅寸法を、保護対象部位(頭部MH,転子部周縁部位TO)の幅寸法W1,W2(
図6,8参照)よりも小さく設定される柱状膨張部22を、一筆書き状に配置させるようにして、構成されている。具体的には、エアバッグ20は、
図2に示すように、外形形状を同一として構成されて、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部20aと、外側に配置される外側壁部20bと、を平らに展開した状態で重ねて、所定箇所を、連続的な結合部位21を形成するように、結合(縫合糸を用いて縫合)させることにより、内側壁部20aと外側壁部20bとを離隔させるように膨張可能な柱状膨張部22を、ガス発生器5の配置部位を起点として二又に延ばすようにして一筆書き状に配設させるとともに、柱状膨張部22間の領域を、内側壁部20aと外側壁部20bとを重ねられるように配置される非膨張連結部23によって全面にわたって連結させるようにして、構成されている(
図2~4参照)。柱状膨張部22は、膨張完了時に、上下方向あるいは水平方向に略沿うように配置される柱状本体部22aと、柱状本体部22aを相互に連結させる連結部22bと、を備える構成とされており、実施形態の場合、幅寸法を、全長にわたって略一定として、構成されている。この柱状膨張部22は、幅寸法を、保護対象部位としての頭部MHや転子部周縁部位TOの幅寸法W1,W2(
図6,8参照)よりも小さく設定されるもので、膨張完了時に、保護対象部位(大腿骨転子部TP周縁部位及び頭部MH)を適切に保護可能な厚みを確保可能な寸法に設定されている。柱状本体部22aは、実施形態の場合、後述する横柱状本体部26a,縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27ad,横柱状本体部27b,縦柱状本体部29a,縦柱状本体部31aa,31ab,31acを備える構成であり、連結部22bは、後述する連結部27ca,27cb,27cc,27cd,27ce,連結部31ba,31bbを備える構成である。
【0018】
また、エアバッグ20は、膨張完了時に装着者Mの腰部MWを保護可能に構成される腰部保護部25と、膨張完了時に装着者Mの頭部MHを保護可能に構成される頭部保護部31と、腰部保護部25と頭部保護部31とを連通させる連通路部29と、を備える構成とされている。エアバッグ20は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0019】
腰部保護部25は、着衣部10における背面部13から左右の左前部11及び右前部12にかけての下端側に、折り畳まれて収納されるものであり、膨張時に、着衣部10から下方に突出して、装着者Mの腰部MW(保護対象部位としての大腿骨転子部TP)の外側を覆うように膨張する構成とされている。腰部保護部25は、具体的には、
図2に示すように、装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護本体部27(27L,27R)と、保護本体部27の上端相互を連結する連結膨張部26と、を備えている。
【0020】
連結膨張部26は、膨張完了時に左右方向に略沿って配設される一本の横柱状本体部26aから、構成されている。この連結膨張部26は、詳細な図示は省略するが、エアバッグ20の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの後側となる位置に、配置される。また、実施形態では、この連結膨張部26の部位に、ガス発生器5が、エアバッグ20の内部に膨張用ガスを供給可能に連結されている(
図2参照)。ガス発生器5は、連結膨張部26(横柱状本体部26a)の長さ方向の中央付近に配置されるもので、図示しないリテーナを用いて、エアバッグ20に連結されている。ガス発生器5は、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ20内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器5は、上述した作動制御装置1と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置1からの作動信号を入力させて、作動される構成である。実施形態の場合、ガス発生器5から吐出される膨張用ガスGは、連結膨張部26(横柱状本体部26a)内を左右に流れて、各保護本体部27(27L,27R)側に流れることとなる。
【0021】
各保護本体部27(27L,27R)は、エアバッグ20を平らに展開した状態において、連結膨張部26から左右の外方に延びつつ下方に延びるように、形成されるもので、平らに展開した状態の外形形状を略長方形状として、膨張完了時に、保護対象部位としての装着者Mの大腿骨転子部TPの周縁となる転子部周縁部位TOの外側を覆う構成とされている(
図6,7参照)。実施形態の場合、各保護本体部27は、平らに展開した状態での上下左右の幅寸法を、エアバッグ20の膨張完了時に、大腿骨転子部TPの周囲を、大腿骨転子部TPの前後上下を含めて、広く覆い可能な寸法に、設定されている。各保護本体部27は、実施形態の場合、膨張完了時に上下方向に略沿うように配設される4本の縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adと、各縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adの上方において縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adと略直交するように配設される1本の横柱状本体部27bと、縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adと横柱状本体部27bとをそれぞれ連結させる連結部27ca,27cb,27cc,27cd,27ceと、を一筆書き状に配設させるようにして、構成されるもので、エアバッグ20を平らに展開した状態で左右の内側に配置される縦柱状本体部27aaを、連結部27caを介して連結膨張部26(横柱状本体部26a)に連通させるように、構成されている。各保護本体部27では、縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adは、略等間隔で配設されており、縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27ad間に配置される非膨張連結部23は、幅寸法を、平らに展開した状態の縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adよりも小さく設定されている。そして、各保護本体部27においては、縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adは、間を、非膨張連結部23により全面にわたって連結されていることから、膨張時に、縦柱状本体部27aa,27ab,27ac,27adの並設状態を保持されることとなる。横柱状本体部27bは、連結膨張部26を構成している横柱状本体部26aの上方において、横柱状本体部26aに略沿うように配設されるとともに、この横柱状本体部26aの左右の中央付近まで延びるように、構成されている(
図2参照)。そして、各保護本体部27は、連結膨張部26から流出される膨張用ガスGを、連結膨張部26側に配置される縦柱状本体部27aaから、縦柱状本体部27ab,27ac,27ad内に順次流入させ、横柱状本体部27bから連通路部29側へ流出させるようにして、膨張する構成とされている。
【0022】
連通路部29は、左右の各保護本体部27に配置される横柱状本体部27bから、それぞれ延びるように形成される2つの縦柱状本体部29a,29aを、左右方向側で並設させるようにして構成されて、上下方向に略沿って配設されるもので、この横柱状本体部27bを経て、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する構成とされている。この連通路部29は、着衣部10における背面部13の中央部の内側に、取り付けられている。
【0023】
頭部保護部31は、着衣部10における背面部13の上端側に、折り畳まれて収納されるものであり、膨張時に、着衣部10から上方に突出して、装着者Mの頭部MHの後側を覆うように膨張する構成とされている。頭部保護部31は、平らに展開した状態の外形形状を、略長方形状として、膨張完了時に、頭部MHの後面側を上下左右に広く覆い可能に、構成されている。具体的には、頭部保護部31は、膨張完了形状を、頭部MHよりも左右に幅広とするように、構成されている。頭部保護部31は、実施形態の場合、それぞれ、連通路部29を構成している各縦柱状本体部29aから延ばすようにして形成される3本の縦柱状本体部31aa,31ab,31ac及び縦柱状本体部31aa,31ab,31ac間を連結する連結部31ba,31bbを、左右対称的に配設させるようにして、構成されている(
図2参照)。左右方向の中央側に配設される縦柱状本体部31aaは、それぞれ、連通路部29を構成している各縦柱状本体部29aから上方に延びるように構成され、この中央側の縦柱状本体部31aaに隣接している各縦柱状本体部31abは、先端側(上端側)を閉塞するように、構成されている。そして、頭部保護部31は、膨張用ガスGを、連通路部29を経て、左右の中央側に配置される2つの縦柱状本体部31aaから、縦柱状本体部31ab,31ac内に順次流入させるようにして、膨張する構成とされている。頭部保護部31において、縦柱状本体部31aa,31ab,31ac間に配置される非膨張連結部23は、幅寸法を、平らに展開した状態の縦柱状本体部31aa,31ab,31acよりも小さく設定されている。そして、頭部保護部31においては、縦柱状本体部31aa,31aa,31ab,31ab,31ac,31acは、間を、非膨張連結部23により全面にわたって連結されていることから、膨張時に、縦柱状本体部31aa,31aa,31ab,31ab,31ac,31acの並設状態を保持されることとなる。
【0024】
なお、エアバッグ20は、
図2に示すように、腰部保護部25の上縁側、頭部保護部31の下縁側、連通路部29の側縁側の所定箇所に、複数の取付タブ20cを配設させ、これらの取付タブ20cを、縫製等により、着衣部10の内周面側に取り付けて、着衣部10に保持されている。
【0025】
第1実施形態の着用エアバッグ装置S1は、締結具15を利用して、装着者Mの上半身MUを覆うように、装着者Mに装着されることとなる。そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が、装着者Mの
図5のA,Bに示すような転倒を検知すると、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ20の内部に膨張用ガスが流入することとなる。実施形態では、まず、エアバッグ20の腰部保護部25が、着衣部10から下方に突出するように膨張して、腰部MWの周囲を覆うこととなり(
図5のB参照)、その後、連通路部29を経て、頭部保護部31内に膨張用ガスが流入すると、頭部保護部31が、着衣部10の背面部13から上方に突出するように膨張して、頭部MHの後方を覆うように、膨張を完了させることとなる(
図5のC,D参照)。
【0026】
そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ20が、保護対象部位(頭部MH及び転子部周縁部位TO)よりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部22を有する構成とされていることから、エアバッグ20を単なる袋状とする場合と比較して、容積を小さくすることができる。また、このエアバッグ20は、膨張完了時に、間に非膨張連結部23を配置させることにより、柱状膨張部22の並設状態を保持されることから、膨張完了時に、保護対象部位としての頭部MH及び大腿骨転子部TPを含めた転子部周縁部位TOを安定して保護することができる。
【0027】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ20を迅速に膨張させることができ、かつ、膨張したエアバッグ20により保護対象部位としての頭部MH及び転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができる。
【0028】
第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ20は、転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)の側方を覆うように膨張する腰部保護部25と、頭部MHの後方を覆うように膨張する頭部保護部31と、を備える構成であるが、腰部保護部25及び頭部保護部31は、それぞれ、複数の柱状膨張部22(柱状本体部22a)を有する構成とされていることから、容積が増大することを抑制でき、エアバッグ20が、腰部保護部25と頭部保護部31とを備える構成であっても、迅速に膨張させることができる。また、エアバッグ20は、ガス発生器5から吐出される膨張用ガスGを、まず、腰部保護部25における各保護本体部27(27L,27R)内に流入させ、その後、連通路部29を経て、頭部保護部31内に流入させるように、構成されている。すなわち、エアバッグ20は、腰部保護部25を膨張用ガスの流れの上流側に位置させ、腰部保護部25の膨張後に、頭部保護部31を膨張させるように構成されている。そのため、装着者Mの転倒時における転倒先部位Fとの接触順序に対応して、膨張した腰部保護部25により、転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を迅速に保護することができ、その後、膨張した頭部保護部31により、装着者Mの頭部MHも、的確に保護することができる。
【0029】
次に、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2について説明する。第2実施形態の着用エアバッグ装置S2は、
図9に示すように、装着者Mの腰部MWの周囲に巻き付けるようにして、装着される構成である。この第2実施形態の着用エアバッグ装置S2は、エアバッグ40の膨張完了時に、保護対象部位として、装着者Mの左右の転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を、保護する構成である。
【0030】
着用エアバッグ装置S2は、
図10に示すように、エアバッグ40と、エアバッグ40に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、作動制御装置1と、エアバッグ40の外周側を覆うアウタカバー60と、を備える構成とされている。作動制御装置1とガス発生器5とは、前述の着用エアバッグ装置S1における作動制御装置1及びガス発生器5と同様の構成であることから、詳細な説明を省略する。着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ40は、平らに展開した状態で、アウタカバー60の内部に収納されている。
【0031】
エアバッグ40は、前述のエアバッグ20と同様に、可撓性を有したシート体(具体的には、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布)から形成されるもので、
図11のBに示すように、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護本体部48(48L,48R)と、保護本体部48の上端相互を連結する連結膨張部47と、を備えている。エアバッグ40は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。実施形態の場合、エアバッグ40は、
図11のAに示すようなエアバッグ用基材42の一部を折り返して、折り返し状態を維持可能に、所定箇所を結合させることにより、構成されている。
【0032】
エアバッグ用基材42は、幅寸法を、保護対象部位(転子部周縁部位TO)の幅寸法W1(
図13参照)よりも小さく設定される柱状膨張部44を、一筆書き状に配置させる構成とされている。エアバッグ用基材42は、外形形状を同一として構成されて、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部42aと、外側に配置される外側壁部42bと、を平らに展開した状態で重ねて、所定箇所を、連続的な結合部位43を形成するように、結合(縫合糸を用いて縫合)させることにより、内側壁部42aと外側壁部42bとを離隔させるように膨張可能な柱状膨張部44を、ガス発生器5の配置部位を起点として二又に延ばすようにして一筆書き状に配設させるとともに、柱状膨張部44間の領域を、内側壁部42aと外側壁部42bとを重ねられるように配置される非膨張連結部45によって全面にわたって連結させるようにして、構成されている(
図11のA参照)。柱状膨張部44は、膨張完了時に、上下方向あるいは水平方向に略沿うように配置される柱状本体部44aと、柱状本体部44aを相互に連結させる連結部44bと、を備える構成とされており、実施形態の場合、幅寸法を、全長にわたって略一定として、構成されている。柱状膨張部44は、幅寸法を、保護対象部位としての転子部周縁部位TOの幅寸法W1(
図13参照)よりも小さく設定されるもので、膨張完了時の柱状本体部44aの十分な厚みを確保可能な寸法に設定されている。柱状本体部44aは、実施形態の場合、後述する横柱状本体部47a,縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afを備える構成とされ、連結部44bは、後述する連結部50ba,50bb,50bc,50bd,50be,50bfを備える構成とされている。
【0033】
エアバッグ用基材42は、
図11のAに示すように、連結膨張部47と、各保護本体部48(48L,48R)を構成する2つの保護本体構成部50(50L,50R)と、を備えている。
【0034】
連結膨張部47は、前述のエアバッグ20における腰部保護部25の連結膨張部26と同様の構成とされるもので、膨張完了時に左右方向に略沿って配設される一本の横柱状本体部47aから、構成されている。この連結膨張部47は、アウタカバー60における後述する巻付部位62の領域内に配置されるもので、詳細な図示は省略するが、エアバッグ40の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの後側となる位置に、配置される構成である。連結膨張部47は、前述の連結膨張部26と同様に、長さ方向(左右方向)の中央付近に、ガス発生器5を連結させている。
【0035】
各保護本体構成部50(50L,50R)は、実施形態の場合、膨張完了時に上下方向に略沿うように配設される6本の縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afと、各縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afをそれぞれ連結させる連結部50ba,50bb,50bc,50bd,50be,50bfと、を一筆書き状に配設させるようにして、構成されている(
図11のA参照)。各縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afは、それぞれ、上下方向に略沿うとともに、左右方向側で並設されるもので、エアバッグ用基材42を平らに展開した状態で左右の内側に配置される縦柱状本体部50aaが、連結部50baを介して連結膨張部47(横柱状本体部47a)に連通され、左右方向の端側に配置される縦柱状本体部50afが、端末(上端側)を閉塞させる構成とされている。各縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afは、保護本体構成部50の上下の略全域にわたって、配設されている。各保護本体構成部50は、連結膨張部47から流出される膨張用ガスGを、連結膨張部47側に配置される縦柱状本体部50aaから、縦柱状本体部50ab,50ac,50ad,50ae,50af内に順次流入させるようにして、膨張する構成とされている(
図11のA参照)。各保護本体構成部50は、平らに展開した状態での左右方向の端縁側の領域を、重ね部53として、左右方向の中央側の領域からなる被重ね部54に重ねて、重ね部53の上縁側と下縁側とを、被重ね部54の上縁側と下縁側とに、それぞれ、結合させることにより、保護本体部48を、構成することとなる。すなわち、保護本体部48は、平らに展開した状態における左右方向の端側の領域(装着時における前側の領域)を、重ね部53と被重ね部54とを保護対象部位(転子部周縁部位TO)の表面上で積層させるように配置させた構成とされており、この重なり領域においては、柱状膨張部44(縦柱状本体部50ab,50ac,50ae,50af)が、保護対象部位(転子部周縁部位TO)の表面上で積層されるように、内外で重なって配置されることとなる(
図13,14参照)。実施形態の場合、重ね部53は、被重ね部54の外側に重ねられている。
【0036】
各保護本体部48(48L,48R)は、平らに展開した状態の外形形状を略長方形状として、膨張完了時に、保護対象部位としての装着者Mの大腿骨転子部TPの周縁となる転子部周縁部位TOの外側を覆う構成とされている。実施形態の場合、各保護本体部48(48L,48R)は、平らに展開した状態での上下左右の幅寸法を、エアバッグ40の膨張完了時に、大腿骨転子部TPの周囲(転子部周縁部位TO)を、大腿骨転子部TPの前後上下を含めて、広く覆い可能な寸法に、設定されている(
図13,14参照)。そして、各保護本体部48は、上述したように、連通路部46から流出される膨張用ガスGを、まず、縦柱状本体部50aa内に流入させ、順次、縦柱状本体部50ab,50ac,50ad,50ae,50af内に流入させるようにして、膨張することとなる。また、この各保護本体部48においても、縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afは、間を、非膨張連結部45により全面にわたって連結されていることから、膨張時に、縦柱状本体部50aa,50ab,50ac,50ad,50ae,50afの並設状態を保持されることとなる。
【0037】
アウタカバー60は、可撓性を有した織布から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル製の織布から形成されている。アウタカバー60は、外形形状を略同一として、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部60aと、装着時に外側に配置される外側壁部60bと、を有し、内側壁部60aと外側壁部60bとの外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされるもので、内部でエアバッグ40を円滑に膨張可能に構成されている。アウタカバー60は、
図10に示すように、上縁側に配置されて装着者Mの骨盤MPの上側の領域の周囲に巻き付けられる略帯状の巻付部位62と、巻付部位62から下方に延びるように形成されてそれぞれ各保護本体部48(48L,48R)の外周側を覆う2つのメインカバー部65(65L,65R)と、を備える構成とされている。巻付部位62の端部62a,62b側には、装着手段としての一対の面状ファスナー63が、配設されている。面状ファスナー63は、それぞれ、巻付部位62の端部62a,62b側に配置される鉤状側部63aとループ側部63bとを有して、巻付部位62の端部62a,62b相互を連結可能に構成されている。メインカバー部65L,65Rは、巻付部位62から下方に延びるように形成されるもので、それぞれ、内部で保護本体部48(48L,48R)を円滑に膨張可能なように、構成されている。
【0038】
第2実施形態の着用エアバッグ装置S2は、アウタカバー60における巻付部位62の端部62a,62b相互を、装着手段としての面状ファスナー63を利用して連結させることにより、装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着されることとなる(
図9参照)。そして、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が、装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ40の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ40が、
図13,14に示すように膨張を完了させることとなる。
【0039】
第2実施形態の着用エアバッグ装置S2においても、エアバッグ40が、保護対象部位としての転子部周縁部位TOよりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部44(柱状本体部44a)を有する構成とされていることから、エアバッグ40を単なる袋状とする場合と比較して、容積を小さくすることができる。また、このエアバッグ40は、膨張完了時に、間に非膨張連結部45を介在させることにより、柱状膨張部44(柱状本体部44a)の並設状態を保持されることから、膨張完了時に、保護対象部位としての転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができる。
【0040】
また、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ40が、膨張完了時に、柱状膨張部44(縦柱状本体部50ab,50ac,50ae,50af)を保護対象部位(転子部周縁部位TO)の表面上で積層させるように配置させた重なり領域を、配設させる構成とされていることから、エアバッグ40を、所定箇所を厚く膨張させることができる。具体的には、第2実施形態では、エアバッグ40における各保護本体部48が、装着状態において、前縁側から、大腿骨転子部TPの側方を覆うこととなる前後の中央付近の領域にかけてを、重ね部53と被重ね部54を保護対象部位(転子部周縁部位TO)の表面上で積層させるように、構成されていることから、大腿骨転子部TPを覆う領域を、厚く膨張させることができて、大腿骨転子部TP周縁の部位を、安定して保護することができる。
【0041】
さらに、エアバッグ70としては、
図15~20に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ70は、前述の第2実施形態のエアバッグ40と同様に、装着者Mの腰部MWの周囲に巻き付けるようにして、装着されて、膨張完了時に、保護対象部位として、装着者Mの左右の大腿骨転子部TP周縁部位を、保護する構成である。エアバッグ70は、前述のエアバッグ40と同様に、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護本体部86(86L,86R)と、保護本体部86の上端相互を連結する連結膨張部85と、を備えている。
【0042】
エアバッグ70は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から、形成されている。実施形態の場合、エアバッグ70は、保護対象部位(転子部周縁部位TO)の幅寸法W1(
図19参照)よりも幅寸法を小さく設定される柱状膨張部73を、交差部78により相互に連通させるようにして、複数個並設させるように、構成されている。具体的には、エアバッグ70は、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部70aと、外側に配置される外側壁部70bと、内側壁部70aと外側壁部70bとを連結する側壁部70cと、エアバッグ70の内部領域を区画する区画壁部71と、を、有する構成とされている(
図15~18参照)。区画壁部71(71UL,71UR,71DL,71DR)は、柱状膨張部73の周壁を構成するとともに、エアバッグ70の内部領域を、内部に膨張用ガスを流入させる流入領域(柱状膨張部73)と、膨張用ガスを流入させない非流入領域80と、に区画する構成であり、実施形態の場合、上壁部71aと、下壁部71bと、上壁部71a及び下壁部71bを連結する側壁部71cと、を有して、扁平な略コ字形状として、各保護本体部86の領域内に、上下方向側で2個並設されている(
図15,16,18参照)。実施形態の場合、柱状膨張部73は、エアバッグ70の上端側において、幅方向の略全域にわたって左右方向に略沿って配置される上側横膨張部74と、上側横膨張部74と略直交するようにして上側横膨張部74から下方に延びるように配置される2つの縦膨張部76L,76Rと、各縦膨張部76L,76Rの上下の中央付近と下端側とから分岐するように左右方向に略沿って延びる2つの下側横膨張部75UL,75UR,75DL,75DR(計4つ)と、を備える構成とされている。上側横膨張部74と、縦膨張部76L,76Rと、下側横膨張部75UL,75UR,75DL,75DRと、は、それぞれ、交差部78(78UL,78UR,78CL,78CR,78DL,78DR)により、相互に連通されている。また、上側横膨張部74の端部と、下側横膨張部75UL,75UR,75DL,75DRにおける縦膨張部76L,76Rから離隔した側となる先端と、は、閉塞されている。実施形態の場合、柱状膨張部73は、後述するごとく連結膨張部85を構成する上側横膨張部74の中央側部位74aを除いて、幅寸法を、全長にわたって略一定として、構成されている。
【0043】
連結膨張部85は、柱状膨張部73における上側横膨張部74の左右の中央側の領域(縦膨張部76L,76R間の領域)である中央側部位74aから、構成されるもので、長さ方向(左右方向)の中央付近に、ガス発生器5を連結させる構成である(
図15参照)。連結膨張部85を構成している上側横膨張部74の中央側部位74aは、柱状膨張部73における他の部位よりも、幅寸法を大きく設定されている。この連結膨張部85も、詳細な図示は省略するが、装着者Mに装着させた状態での膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの後側となる位置に、配置される構成である。
【0044】
各保護本体部86(86L,86R)は、外形形状を略長方形状として、膨張完了時に、保護対象部位としての装着者Mの大腿骨転子部TPの周縁部位の外側を覆う構成とされている。実施形態の場合、各保護本体部86は、平らに展開した状態での上下左右の幅寸法を、エアバッグ70の膨張完了時に、大腿骨転子部TPの周囲(転子部周縁部位TO)を、大腿骨転子部TPの前後上下を含めて、広く覆い可能な寸法に、設定されている(
図19,20参照)。各保護本体部86は、上述したごとく、内部領域を、2つの区画壁部71U,71Dによって区画されるもので、平らに展開した状態で、左右方向の内端側に、縦膨張部76を配設させるとともに、縦膨張部76の左右の外方において、上側横膨張部74の端側部位74bと、2つの下側横膨張部75U,75Dと、を、上下方向側で、間に非流入領域80U,80Dを介在させるようにして、並設させるようにして、構成されている。各保護本体部86は、連結膨張部85(上側横膨張部74の中央側部位74a)の内部に流入した膨張用ガスGを、縦膨張部67を経て、下側横膨張部75U,75Dに流入させるようにして、膨張することとなる。各保護本体部86においては、上側横膨張部74,下側横膨張部75U,75Dは、間を、非流入領域80U,80Dによって、連結されていることから、膨張時に、上側横膨張部74,下側横膨張部75U,75Dの並設状態を保持されることとなる。
【0045】
このようなエアバッグ70を使用した場合にも、エアバッグ70は、保護対象部位としての転子部周縁部位TOよりも幅寸法を小さく設定される複数の柱状膨張部73を有する構成とされていることから、エアバッグを単なる袋状とする場合と比較して、容積を小さくすることができる。また、このエアバッグ70は、膨張完了時に、非流入領域80U,80Dによって、相互に連結されるようにして、柱状膨張部73(上側横膨張部74,下側横膨張部75U,75D)の並設状態を保持されることから、膨張完了時に、保護対象部位としての転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができる。
【0046】
また、上記構成のエアバッグ70では、内部に区画壁部71U,71Dを配置させることにより、膨張完了時に、非流入領域80U,80Dにおいても、内側壁部70aと外側壁部70bとが離隔して配置される構成である(
図20参照)。換言すれば、非流入領域80U,80Dは、上下方向側の幅寸法(区画壁部71における上壁部71aと下壁部71bとの離隔距離を)を、内側壁部70aと外側壁部70bとを相互に接触させない(底付きしない)寸法に、設定されている。すなわち、上記構成のエアバッグ70では、膨張完了時に、非流入領域80U,80Dもある程度厚みを有した状態で配置され、また、この非流入領域80U,80Dにも、膨張した柱状膨張部73により張力が発生することから、柱状膨張部73(下側横膨張部75U,75D)を、大腿骨転子部TPに対して交差させるように配置させる構成であっても、全体を厚く膨張させるエアバッグと同様に、保護対象部位としての転子部周縁部位TO(大腿骨転子部TP)を、安定して保護することができる。勿論、交差部により柱状膨張部を相互に連通させるタイプのエアバッグであっても、上述したエアバッグのごとく、2枚の基布を直接結合(縫着)させることにより、形成してもよい。
【0047】
実施形態では、エアバッグ20,40は、内側壁部20a,42aと外側壁部20b,42bとを連続的な結合部位21,43を設けるように縫着させて、柱状膨張部22,44を形成し、柱状膨張部22,44間の領域を、内側壁部20a,42aと外側壁部20b,42bとを重ねられるように配置される非膨張連結部23,45によって全面にわたって連結させている。また、エアバッグ70は、内側壁部70aと外側壁部70bとの間に、区画壁部71を配設させて、柱状膨張部73と非流入領域80とを区画している構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ20,40,70は、いずれも、エアバッグ20,40,70自体で、膨張完了時の柱状膨張部22,44,73の並設状態を保持可能な構成とされているが、エアバッグの構成は、実施形態に限定されるものではない。例えば、エアバッグとして、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な筒状体から柱状膨張部を構成し、膨張完了時の柱状膨張部の並設状態を保持可能な保持体を、別途、配設させるような構成ものを使用してもよい。また、第2実施形態のごとく、アウタカバー内でエアバッグを膨張させる構成とする場合、このようなエアバッグの柱状膨張部を、アウタカバーによって保持させるように、構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
20…エアバッグ、22…柱状膨張部、25…腰部保護部、31…頭部保護部、40…エアバッグ、44…柱状膨張部、48…保護本体部、53…重ね部、54…被重ね部、70…エアバッグ、73…柱状膨張部、78…交差部、F…転倒先部位、M…装着者、MH…頭部(保護対象部位)、MW…腰部、TP…大腿骨転子部、TO…転子部周縁部位(保護対象部位)、S1,S2…着用エアバッグ装置。