(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014355
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220112BHJP
A61B 1/05 20060101ALI20220112BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20220112BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220112BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/05
A61B1/045 618
G02B23/24 B
G02B23/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116639
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】福島 哲治
(72)【発明者】
【氏名】黒田 容平
(72)【発明者】
【氏名】戸松 景
(72)【発明者】
【氏名】北出 修大
(72)【発明者】
【氏名】永井 信之
(72)【発明者】
【氏名】石田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】深谷 孝
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA04
2H040DA12
2H040GA03
4C161AA24
4C161CC06
4C161DD01
4C161DD03
4C161FF40
4C161GG13
4C161HH42
4C161HH47
4C161HH51
4C161LL02
4C161PP09
(57)【要約】
【課題】観察したい部位を容易に観察することが可能な医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る医療用観察システムは、受光素子、支持部材、圧電コイル、及び制御部を具備する。前記受光素子は、内視鏡の先端部に設けられる。前記支持部材は、前記受光素子を傾動可能に支持する。前記圧電コイルは、前記支持部材に接続され、電圧の印加に応じて伸縮可能である。前記制御部は、前記圧電コイルへの電圧の印加を制御する。これにより、観察したい部位を容易に観察することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部に設けられた受光素子と、
前記受光素子を傾動可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に接続され、電圧の印加に応じて伸縮可能な圧電コイルと、
前記圧電コイルへの電圧の印可を制御する制御部と
を具備する医療用観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記圧電コイルは、前記指示部材に3本以上接続される
医療用観察システム。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記圧電コイルの伸縮による前記受光素子の傾動に関する電圧パラメータに基づいて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用観察システムであって、
前記電圧パラメータは、前記圧電コイルの各々に印可される電圧の組み合わせを含む
医療用観察システム。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記受光素子から取得される術野画像に基づいて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用観察システムであって、さらに、
取得された前記術野画像内の物体を認識する物体認識部を具備する
医療用観察システム。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用観察システムであって、
前記物体認識部は、前記術野画像内の患部又は術具の少なくとも一方を認識する
医療用観察システム。
【請求項8】
請求項6に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記物体認識部により認識された前記物体が、前記受光素子の視野に入るように電圧を制御する
医療用観察システム。
【請求項9】
請求項5に記載の医療用観察システムであって、さらに、
取得された前記術野画像に基づいて、前記電圧パラメータを学習する学習部を具備する
医療用観察システム。
【請求項10】
請求項4に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、印加された前記電圧パラメータを学習データとして生成された学習済モデルを用いて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
【請求項11】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、
前記圧電コイルは、圧電リニアアクチュエータである
医療用観察システム。
【請求項12】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、さらに、
前記支持部材を支持するバネ部を具備する
医療用観察システム。
【請求項13】
請求項1に記載の医療用観察システムであって、さらに、
前記内視鏡に沿って延伸するように設けられ、前記圧電コイルの伸縮に応じて屈曲する弾性部を具備する
医療用観察システム。
【請求項14】
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御する制御部
を具備する制御装置。
【請求項15】
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御する
ことをコンピュータシステムが実行する制御方法。
【請求項16】
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御するステップ
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、内視鏡等に適用可能な医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の超広角内視鏡では、広角レンズで捉えられた光学像から、ポインティングデバイスで指示された方向を中心とする一定範囲の画像が出力される。出力された画像の歪みが取り除かれるように画像処理が行われる。これにより、作業時で必要とする方向の視野を良好に確保することが図られている(特許文献1の段落[0015][0025]
図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、観察したい部位を容易に観察することが可能とする技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、観察したい部位を容易に観察することが可能な医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る医療用観察システムは、受光素子、支持部材、圧電コイル、及び制御部を具備する。
前記受光素子は、内視鏡の先端部に設けられる。
前記支持部材は、前記受光素子を傾動可能に支持する。
前記圧電コイルは、前記支持部材に接続され、電圧の印加に応じて伸縮可能である。
前記制御部は、前記圧電コイルへの電圧の印加を制御する。
【0007】
この医療用観察システムでは、内視鏡の先端部に設けられる受光素子を傾動可能に支持する支持部材を有する。電圧の印加に応じて伸縮可能な圧電コイルにかかる、圧電コイルへの電圧の印加が制御される。これにより、観察したい部位を容易に観察することが可能となる。
【0008】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る制御装置は、制御部を具備する。
前記制御部は、内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御する。
【0009】
本技術の一形態に係る制御方法は、コンピュータシステムが実行する制御方法であって、内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御することを含む。
【0010】
本技術の一形態に係るプログラムは、コンピュータシステムに以下のステップを実行させる。
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図3】圧電リニアアクチュエータを示す模式図である。
【
図4】内視鏡手術システムの機能的な構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム100の概略的な構成の一例を示す図である。
図1では、術者(医師)32が、内視鏡手術システム100を用いて、患者ベッド33上の患者34に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム100は、内視鏡1と、その他の術具9と、内視鏡1を支持する支持アーム装置14と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート19とから構成される。
【0014】
内視鏡手術では、腹壁を切って開腹する代わりに、トロッカ13a~13dと呼ばれる筒状の開孔器具が腹壁に複数穿刺される。そして、トロッカ13a~13dから、内視鏡1の鏡筒2や、その他の術具9が患者34の体腔内に挿入される。図示する例では、その他の術具9として、気腹チューブ10、エネルギー処置具11及び鉗子12が、患者34の体腔内に挿入されている。また、エネルギー処置具11は、高周波電流や超音波振動により、組織の切開及び剥離、又は血管の封止等を行う処置具である。ただし、図示する術具9はあくまで一例であり、術具9としては、例えば攝子、レトラクタ等、一般的に内視鏡下手術において用いられる各種の術具が用いられてよい。
【0015】
内視鏡1によって撮影された患者34の体腔内の術部を映す術野画像が、表示装置21に表示される。術者32は、表示装置21に表示された術野画像をリアルタイムで見ながら、エネルギー処置具11や鉗子12を用いて、例えば患部を切除する等の処置を行う。なお、図示は省略しているが、気腹チューブ10、エネルギー処置具11及び鉗子12は、手術中に、術者32又は助手等によって支持される。
【0016】
[支持アーム装置]
支持アーム装置14は、ベース部15から延伸するアーム部16を備える。図示する例では、アーム部16は、関節部17a、17b、17c、及びリンク18a、18bから構成されており、アーム制御装置23からの制御により駆動される。アーム部16によって内視鏡1が支持され、その位置及び姿勢が制御される。これにより、内視鏡1の安定的な位置の固定が実現され得る。なお、内視鏡1は支持アームにより支持されるのではなく、術者(スコピスト)が手に持って支持し、動かしてもよい。
【0017】
[内視鏡]
内視鏡1は、先端から所定の長さの領域が患者34の体腔内に挿入される鏡筒2と、鏡筒2の基端に接続されるヘッド3とから構成される。図示する例では、硬性の鏡筒2を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡1を図示しているが、内視鏡1は、軟性の鏡筒2を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0018】
また内視鏡1は、先端に支持部材を有し、該支持部材に受光素子が支持される。例えば、術者32は、受光素子により取得された、患者34の体腔内の患部等を映した術野画像を確認することができる。
受光素子は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子が用いられる。本実施形態では、受光素子により取得された画像情報がカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)39に送信される。
【0019】
また本実施形態では、受光素子を支持するプレートに3本の圧電リニアアクチュエータが接続される。3本の圧電リニアアクチュエータは、電圧に応じて伸縮可能であり、各圧電リニアアクチュエータの各々が伸縮することで接続されたプレートが傾動する。すなわち、プレートに接続された受光素子の視野が傾動する。内視鏡1の具体的な構成は、
図2等を用いて説明する。
【0020】
また鏡筒2の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡1には光源装置22が接続されており、当該光源装置22によって生成された光が、鏡筒2の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者34の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡1は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0021】
ヘッド3は、内部に光学系を有し、患部等の観察対象に観察光を照射する。またヘッド3は、観察光の照射している位置を把握するための各種センサを有する。例えば、ヘッド3の傾き、回転角度、モータ等の駆動装置の回転数、方向指示入力の操作量等を検出するためのセンサ等が用いられてもよい。例えば、センサにより検出された情報がCCU39に送信され、ヘッド3が照射している位置が解析されてもよい。
【0022】
[カートに搭載される各種の装置]
制御装置40は、圧電リニアアクチュエータにかかる電圧の印加を制御する。本実施形態では、圧電リニアアクチュエータの伸縮による受光素子の傾動に関する電圧パラメータが制御される。
電圧パラメータは、各圧電リニアアクチュエータにかかる電圧に関するパラメータである。例えば、受光素子を所定の角度に傾けさせる際に、1つの圧電リニアアクチュエータを縮ませ、他の2つの圧電リニアアクチュエータを伸ばすような電圧がかけられる。すなわち、電圧パラメータは、受光素子を所定の角度に傾けるための、圧電リニアアクチュエータを伸縮させる電圧の組み合わせとも言える。
例えば、制御装置40は、入力装置24を介して、ユーザの所望する電圧パラメータを出力する。
【0023】
CCU20は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡1及び表示装置21の動作を統括的に制御する。具体的には、CCU20は、受光素子から受け取った画素信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画素信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
本実施形態では、CCU20は、当該画像処理を施した画像信号を表示装置21に提供する。
【0024】
表示装置21は、CCU20からの制御により、当該CCU20によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。内視鏡1が例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)又は8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)等の高解像度の撮影に対応したものである場合、及び/又は3D表示に対応したものである場合には、表示装置21としては、それぞれに対応して、高解像度の表示が可能なもの、及び/又は3D表示可能なものが用いられ得る。4K又は8K等の高解像度の撮影に対応したものである場合、表示装置21として55インチ以上のサイズのものを用いることで一層の没入感が得られる。また、用途に応じて、解像度、サイズが異なる複数の表示装置21が設けられてもよい。
【0025】
光源装置22は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部を撮影する際の照射光を内視鏡1に供給する。
【0026】
アーム制御装置23は、例えばCPU等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、所定の制御方式に従って支持アーム装置14のアーム部16の駆動を制御する。
またアーム制御装置23は、制御装置40から出力される信号に従い、圧電リニアアクチュエータにかかる電圧の印加を制御する。支持アーム装置14ではなく、スコピストが内視鏡1を支持、操作する場合、アーム制御装置23は、圧電リニアアクチュエータにかかる電圧の印加のみを制御する。
【0027】
入力装置24は、内視鏡手術システム100に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置24を介して、内視鏡手術システム100に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、入力装置24を介して、患者の身体情報や、手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を入力する。また、例えば、ユーザは、入力装置24を介して、アーム部16を駆動させる旨の指示や、内視鏡1による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示、エネルギー処置具11を駆動させる旨の指示等を入力する。
【0028】
入力装置24の種類は限定されず、入力装置24は各種の公知の入力装置であってよい。入力装置24としては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、スイッチ、フットスイッチ27及び/又はレバー等が適用され得る。入力装置24としてタッチパネルが用いられる場合には、当該タッチパネルは表示装置21の表示面上に設けられてもよい。
【0029】
あるいは、入力装置24は、例えばメガネ型のウェアラブルデバイスやHMD(Head Mounted Display)等の、ユーザによって装着されるデバイスであり、これらのデバイスによって検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。また、入力装置24は、ユーザの動きを検出可能なカメラを含み、当該カメラによって撮像された映像から検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。更に、入力装置24は、ユーザの声を収音可能なマイクロフォンを含み、当該マイクロフォンを介して音声によって各種の入力が行われる。このように、入力装置24が非接触で各種の情報を入力可能に構成されることにより、特に清潔域に属するユーザ(例えば術者32)が、不潔域に属する機器を非接触で操作することが可能となる。また、ユーザは、所持している術具から手を離すことなく機器を操作することが可能となるため、ユーザの利便性が向上する。
【0030】
処置具制御装置25は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11の駆動を制御する。気腹装置26は、内視鏡1による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者34の体腔を膨らめるために、気腹チューブ10を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ35は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ36は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0031】
以下、内視鏡手術システム100において特に特徴的な構成について、更に詳細に説明する。
【0032】
[支持アーム装置]
支持アーム装置14は、基台であるベース部15と、ベース部15から延伸するアーム部16とを備える。図示する例では、アーム部16は、複数の関節部17a、17b、17cと、関節部17bによって連結される複数のリンク18a、18bとから構成されているが、
図1では、簡単のため、アーム部16の構成を簡略化して図示している。実際には、アーム部16が所望の自由度を有するように、関節部17a~17c及びリンク18a、18bの形状、数及び配置、並びに関節部17a~17cの回転軸の方向等が適宜設定され得る。例えば、アーム部16は、好適に、6自由度以上の自由度を有するように構成され得る。これにより、アーム部16の可動範囲内において内視鏡1を自由に移動させることが可能になるため、所望の方向から内視鏡1の鏡筒2を患者34の体腔内に挿入することが可能になる。
【0033】
関節部17a~17cにはアクチュエータが設けられており、関節部17a~17cは当該アクチュエータの駆動により所定の回転軸まわりに回転可能に構成されている。当該アクチュエータの駆動がアーム制御装置23によって制御されることにより、各関節部17a~17cの回転角度が制御され、アーム部16の駆動が制御される。これにより、内視鏡1の位置及び姿勢の制御が実現され得る。この際、アーム制御装置23は、力制御又は位置制御等、各種の公知の制御方式によってアーム部16の駆動を制御することができる。
【0034】
例えば、術者32が、入力装置24(フットスイッチ27を含む)を介して適宜操作入力を行うことにより、当該操作入力に応じてアーム制御装置23によってアーム部16の駆動が適宜制御され、内視鏡1の位置及び姿勢が制御されてよい。当該制御により、アーム部16の先端の内視鏡1を任意の位置から任意の位置まで移動させた後、その移動後の位置で固定的に支持することができる。なお、アーム部16は、いわゆるマスタースレイブ方式で操作されてもよい。この場合、アーム部16は、手術室から離れた場所に設置される入力装置24を介してユーザによって遠隔操作され得る。
【0035】
また、力制御が適用される場合には、アーム制御装置23は、ユーザからの外力を受け、その外力にならってスムーズにアーム部16が移動するように、各関節部17a~17cのアクチュエータを駆動させる、いわゆるパワーアシスト制御を行ってもよい。これにより、ユーザが直接アーム部16に触れながらアーム部16を移動させる際に、比較的軽い力で当該アーム部16を移動させることができる。従って、より直感的に、より簡易な操作で内視鏡1を移動させることが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0036】
ここで、一般的に、内視鏡下手術では、スコピストと呼ばれる医師によって内視鏡1が支持されていた。これに対して、支持アーム装置14を用いることにより、人手によらずに内視鏡1の位置をより確実に固定することが可能になるため、術野画像を安定的に得ることができ、手術を円滑に行うことが可能になる。
【0037】
なお、アーム制御装置23は必ずしもカート19に設けられなくてもよい。また、アーム制御装置23は必ずしも1つの装置でなくてもよい。例えば、アーム制御装置23は、支持アーム装置14のアーム部16の各関節部17a~17cにそれぞれ設けられてもよく、複数のアーム制御装置23が互いに協働することにより、アーム部16の駆動制御が実現されてもよい。
【0038】
[光源装置]
光源装置22は、ヘッド3により照射される、内視鏡1に術部を撮影する際の照射光の信号を供給する。例えば、光源装置22は、赤色、緑色、及び青色を組み合わせた白色光がヘッド3から出力される旨の信号を供給する。このとき、RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光が組み合わされる場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置22において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また光源装置22は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動を制御してもよい。
【0039】
また、光源装置22は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察するもの(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得るもの等が行われ得る。光源装置22は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0040】
図2は、内視鏡1の先端部の構成を示す模式図である。
図2に示すように、内視鏡1は、受光素子41、プレート42、及び圧電リニアアクチュエータ43を具備する。
【0041】
受光素子41は、内視鏡1の先端部に設けられ、内視鏡1の延伸方向44と略同一方向を撮影する。本実施形態では、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮により、プレート42が傾動することで、受光素子の視野45が変更される。すなわち、圧電リニアアクチュエータ43が伸縮していない場合、受光素子41の観察方向46が内視鏡1の延伸方向と略平行となる。
また受光素子41は、RGB画像を取得するためのイメージセンサ(撮像素子)、デプス情報を取得するためのToF(Time of Flight)センサ、又はイメージセンサ及びToFセンサの組み合わせを含む。これ以外にも、蛍光観察画像を取得可能なイメージセンサや用途に応じた種々のセンサが用いられてもよい。
【0042】
プレート46は、表面48と背面49とを有する。表面48は、受光素子41の観察方向46と垂直に交わる面であり、プレート42の表面48に受光素子41が支持される。
背面49は、表面48とは相対する面であり、圧電リニアアクチュエータ43が接続される。
また背面49には、圧電リニアアクチュエータ43が接続される。本実施形態では、受光素子41が任意の部位を撮影できるように、プレート42を3つの自由度(XYZ軸方向)に傾けることが可能な配置で3本の圧電リニアアクチュエータ43が配置される。
例えば、
図2Bに示すように、圧電リニアアクチュエータ43がプレート42の中心から同じ距離、かつ120度ごとに配置される。もちろんこれに限定されず、受光素子41が任意の部位が撮影可能であれば、圧電リニアアクチュエータ43の本数及び配置は限定されない。
圧電リニアアクチュエータ43は、コイルバネ状に構成されており(
図3参照)、電圧に応じて伸縮することが可能である。例えば、圧電リニアアクチュエータ43は、バイモルフ型の圧電アクチュエータが用いられる。本実施形態では、3本の圧電リニアアクチュエータ43の各々が伸縮することで、プレート42が任意に傾く。すなわち、プレート42の傾きに応じて、受光素子41の視野45が任意の方向を向くことが可能となる。
【0043】
図3は、圧電リニアアクチュエータ43を示す模式図である。
図3Aに示すように圧電リニアアクチュエータ43は、コイル状の芯材50と、芯材50の長さ方向(一点鎖線51)に沿って、互いに交互に配置されるように芯材50に螺旋状に巻回された帯状の複数の圧電材52とを備えている。
【0044】
芯材50は、コイルバネ状に構成されており、その断面(芯材50の長さ方向に垂直な断面)が円形とされている。なお、芯材50の断面については、楕円形、多角形などであってもよく、この断面の形状については、特に限定されない。
また芯材50は、例えば、グラファイト、Mg合金、Al、Ti、SUS、W、Au、Ag、Cu、Pt、セラミックス、又はポリマー樹脂から選択された少なくとも1種類以上の材料により構成される。
【0045】
圧電材52は、芯材50の長さ方向(一点鎖線51)に沿って、複数の種類の材料が交互に配置されながら、所定の角度で巻回される。例えば、
図2では、圧電材52a、圧電材52b、圧電材52c、圧電材52d、圧電材52a、圧電材52b、圧電材52c、圧電材52d、・・のように互いに交互に配置されるように、芯材50に対して螺旋状に巻回されている。
また互いに隣接する各圧電材52の間に、絶縁部53が設けられる。絶縁部53は、各圧電材52同士を電気的に絶縁することが可能である。
なお、圧電材52の材料、芯材50に巻き付けられる角度、及び数等は限定されない。また絶縁部53の材料も限定されない。例えば、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮を阻害しない柔軟性が高い材料が用いられてもよい。
【0046】
図3Bに示すように、芯材50に巻き付けるように固定した圧電材52に電圧を加えることにより、ねじり応力T=WR(R:コイル半径)が発生され、芯材50がねじりθだけねじれる。このねじれθにより、圧電リニアアクチュエータ43が縮む方向に変位δが発生する。このδの合計が圧電リニアアクチュエータ43の変位量となる。
また逆電圧をかける事により、逆方向にねじり応力が発生され、伸びる方向に変位することも可能である。すなわち、圧電リニアアクチュエータ43は、縮む方向、伸びる方向共に制御可能である。
【0047】
図4は、内視鏡手術システム100の機能的な構成例を示す模式図である。
図4に示すように、内視鏡手術システム100は、アーム制御装置23、入力装置24、制御装置40、及び受光素子41を有する。なお、
図4では、説明の簡略化のために
図1に示すカート19に搭載されるアーム制御装置23、入力装置24、及び制御装置40以外の各ブロックが省略されて図示される。
【0048】
アーム制御装置23は、圧電リニアアクチュエータコントローラ55及びアーム制御部56を有する。
圧電リニアアクチュエータコントローラ55は、圧電リニアアクチュエータ43に任意の電圧をかけることが可能な電圧指令値を出力する。本実施形態では、圧電リニアアクチュエータコントローラ55は、制御装置40から出力される電圧パラメータに基づいて、電圧指令値を出力する。
また圧電リニアアクチュエータコントローラ55は、ジョイスティック等の入力装置24を介してユーザ(例えば術者32)の操作が入力される入力情報に基づいて、電圧指令値が出力される。
また本実施形態では、圧電リニアアクチュエータコントローラ55により出力された電圧指令値がアーム制御装置23に供給される。
【0049】
圧電リニアアクチュエータコントローラ55は、圧電リニアアクチュエータ43にかかる電圧の印加を制御することが可能である。本実施形態では、制御装置40により出力された電圧パラメータに従い、圧電リニアアクチュエータ43にかかる電圧の印加を制御する。
なお、圧電リニアアクチュエータコントローラ55の制御する信号は限定されず、例えば、入力装置24にプレート42を所定の角度に傾動させる旨の指示が入力された場合、該所定の角度になるように電圧の印加が制御されてもよい。
【0050】
アーム制御部56は、制御装置40から出力される信号に従い、圧電リニアアクチュエータにかかる電圧の印加を制御する。本実施形態では、学習部62により学習された学習モデルに従い、支持アーム装置14のアーム部16の駆動を制御する。
またアーム制御部56は、入力装置24に入力されたスコピストの操作入力に従い、アーム部16の駆動を制御してもよい。
【0051】
受光素子41は、受光素子処理部60を有し、さらに状態認識部61や学習部62、及び記憶部63のうち少なくとも一つを有してもよい。
【0052】
受光素子処理部60は、受光素子41により撮影された画像情報(術野画像)を取得する。例えば、ユーザは、表示装置21に表示される画像情報を見ることが可能である。本実施形態では、受光素子処理部60は、取得された画像情報を状態認識部61に出力する。
【0053】
また、受光素子41は状態認識部61を備えてもよい。状態認識部61は、内視鏡1に関する状態を認識する。本実施形態では、状態認識部61は、受光素子処理部60により取得された画像情報に基づいて、受光素子41の撮影している患者34の部位や内視鏡1の方向及び位置を認識する。具体的には、患部、術具、内臓等の箇所が画像認識により認識される。
なお、状態を認識する方法は限定されない。例えば、内視鏡1の現在の位置等を取得可能なセンサが内視鏡1に内蔵されることで内視鏡1の方向及び位置が認識されてもよい。
なお、認識の方法は限定されない。画像認識、閾値処理、セグメンテーション、画像信号の解析等を用いて、解析を行う。解析方法は限定されず、任意の方法が用いられてよい。例えば、機械学習により、画像の解析が行われてもよい。
また本実施形態では、状態認識部61により認識された内視鏡1の状態に関する情報及び画像情報が学習部62に出力される。
【0054】
また、受光素子41は学習部62を備えてもよい。学習部62は、施術に関する種々の情報を学習してもよい。例えば、学習部62は、画像情報に基づいて、施術内容と内視鏡1の撮影している箇所を紐づけることで、ユーザの撮影したい適切な部位を学習することができる。
本実施形態では、学習部62は、ユーザの観察したい部位に向けて、受光素子41を向けるためのパラメータを学習する。また学習部62は、該パラメータを学習データとして学習済モデルを生成する。
なお、学習部62は、パラメータの学習、及び学習済モデルの生成を実行するか否かユーザ(例えば術者32)により決定されてもよい。例えば、予め生成された学習済モデルが記憶部63に格納され、学習部62が該学習済モデルを使用してパラメータを出力してもよい。すなわち、学習部62は、常に学習するとは限らない。
【0055】
なお、学習方法は限定されない。例えば、DNN(Deep Neural Network:深層ニューラルネットワーク)等を用いた任意の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。例えばディープラーニング(深層学習)を行うAI(人工知能)等が用いられてもよい。
例えば画像認識を行うために学習部に加え識別部が構築される。学習部は、入力された情報(学習データ)に基づいて機械学習を行い、学習結果を出力する。また、識別部は、入力された情報と学習結果に基づいて、当該入力された情報の識別(判断や予測等)を行う。
学習部における学習手法には、例えばニューラルネットワークやディープラーニングが用いられる。ニューラルネットワークとは、人間の脳神経回路を模倣したモデルであって、入力層、中間層(隠れ層)、出力層の3種類の層から成る。
ディープラーニングとは、多層構造のニューラルネットワークを用いたモデルであって、各層で特徴的な学習を繰り返し、大量データの中に潜んでいる複雑なパターンを学習することができる。
ディープラーニングは、例えば動画像内のオブジェクトを識別する用途として用いられる。例えば、画像や動画の認識に用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)等が用いられる。
また、このような機械学習を実現するハードウェア構造としては、ニューラルネットワークの概念を組み込まれたニューロチップ/ニューロモーフィック・チップが用いられ得る。
本実施形態では、学習部62により学習されたデータに基づいて、適切な部位を観察するために圧電リニアアクチュエータ43の方向を制御するパラメータが制御装置40に出力される。
【0056】
また学習部62は、記憶部63により記憶された学習データに基づいて、圧電リニアアクチュエータ43を自動で観察したい部位を観察するためのパラメータを出力する。また本実施形態では、学習部62は、術野画像を該学習済モデルに入れて、パラメータを出力する。
【0057】
記憶部63は、学習部62により学習されたデータを記憶する。例えば、学習部62により学習されたパラメータが記憶される。また例えば、患部等の撮影箇所に対して、術具の種類や施術内容、病気の種類等を紐づけて記憶される。
【0058】
なお、本実施形態において、受光素子41は、内視鏡の先端部に設けられた受光素子に相当する。
なお、本実施形態において、プレート42は、受光素子を傾動可能に支持する支持部材に相当する。
なお、本実施形態において、圧電リニアアクチュエータ43は、電圧の印加に応じて伸縮可能な圧電コイルに相当する。
なお、本実施形態において、制御装置40は、ユーザの観察したい部位に向けて、受光素子41を向けるための制御を行う制御部に相当する。
なお、本実施形態において、状態認識部61は、取得された前記術野画像内の物体を認識する物体認識部に相当する。
なお、本実施形態において、内視鏡手術システム100は、医療用観察システムに相当する。
【0059】
図5は、内視鏡1の構成を示す模式図である。
図5Aは、内視鏡1を横から見た場合の模式図である。
図5Bは、内視鏡1を正面から見た場合の模式図である。なお、
図5A及び
図5Bでは、受光素子41が省略されている。
【0060】
図5A及び
図5Bに示すように、内視鏡1は、板バネ固定プレート65、バネ69、プレート42、及び圧電リニアアクチュエータ43を有する。
【0061】
板バネ固定プレート65は、表面66及び背面67を有する。
図5に示すように表面66及び背面67は、YZ平面に平行な面である。本実施形態では、板バネ固定プレート65は、プレート42を囲うように円筒状に配置され、プレート42と略一致する厚さ(X軸方向の長さ)を有する。また板バネ固定プレート65は、直径が内視鏡1の外形と略一致するような大きさである。例えば、板バネ固定プレート65の直径は、10mmである。
もちろん、板バネ固定プレート65の大きさや形状は限定されず、任意に構成されてもよい。
また本実施形態では、板バネ固定プレート65は、3つのバネ69が接続される。
【0062】
バネ69は、板バネ固定プレート65に接続され、プレート42を支持する。本実施形態では、
図5Bに示すように、バネ69は、プレート42を中心にプレート42の周囲を120度の間隔で配置される。またバネ69は、板バネ固定プレート65及びプレート42に同一平面上に配置され、プレート42の傾きに対して同一平面上に戻るような復元力をかける。
なお、
図5では、バネ69は、矩形状に図示される。これに限定されず、バネの巻きの回数や材料は限定されない。また柔軟性が高い材料によりバネ69が再現されてもよい。
なお、本実施形態において、バネ69は、プレート部を支持するバネ部に相当する。
【0063】
プレート42は、表面48及び背面49を有する。前述したように、表面48は、受光素子を支持する。本実施形態では、背面49に3本の圧電リニアアクチュエータ43が接続される。
図5に示すように、プレート42の表面48及び背面49は、YZ平面に平行な面である。またプレート42は、板バネ固定プレート65と略一致する厚さを有する円状のプレートである。
本実施形態では、プレート42は、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮により、任意の角度に傾く。例えば、圧電リニアアクチュエータ43の変位量が2mmの場合、プレート42の傾きは、略60度となる。またプレート42の大きさは、板バネ固定プレート65の内部に配置されるだけの大きさであり、例えば、直径8mmである。
【0064】
圧電リニアアクチュエータ43は、電圧に応じて伸縮可能であり、プレート42を任意の方向に傾ける。本実施形態では、プレート42を中心に120度の間隔で配置される。すなわち、本実施形態では、圧電リニアアクチュエータ43がプレート42に3本接続される。これにより、プレート42の傾きは3つの自由度を有し、任意の方向に傾けることが可能である。
なお、圧電リニアアクチュエータ42の大きさは限定されず、内視鏡1や板バネ固定プレート65の大きさ(直径10mm)の中に3本入るほどの線径が望ましい。
【0065】
以上、本実施形態に係る内視鏡手術システム100は、内視鏡1の先端部に設けられる受光素子41を傾動可能に支持するプレート42を有する。電圧の印加に応じて伸縮可能な圧電リニアアクチュエータ43にかかる、圧電リニアアクチュエータ43への電圧の印加が制御される。これにより、観察したい部位を容易に観察することが可能となる。
【0066】
一般に、内視鏡手術(腹腔鏡下手術)では、開腹手術と異なり、視野が狭いため体内の状況を把握することが難しい。そのため体内の状況を観察するために、内視鏡(スコープ)を大きく動かす必要がある。
患部など観察したい部位を見るために、内視鏡を大きく動かすと術者が操作する鉗子等の術具と、スコピストが保持又は操作する内視鏡とが干渉するリスクや、内視鏡が臓器に干渉するリスクが生じる可能性がある。
そのため従来では、先端が屈曲する内視鏡が考えられるが、手動でワイヤ駆動させるものであり、屈曲半径も大きく操作が難しい等の課題がある。またモータを使ってワイヤ駆動をさせる場合、自由度の数だけモータが必要になり、モータ駆動部分が大きく、重くなるためデッドスペースが大きくなる。このため取り回しが困難になる。
【0067】
また内視鏡を屈曲させるために、形状記憶合金アクチュエータや繊維状ポリマーアクチュエータ、誘電エラストマアクチュエータのような人工筋が用いられることがある。この場合、一方向の変位は自由に制御することが出来るが、戻る方向は自由に制御するのが難しい。
例えば、形状記憶合金アクチュエータは電流を流すことで発熱し、その熱によって縮む。しかし、伸びる方向は放熱しないと元に戻らず、電流を流すのを止めただけでは伸びる方向を制御することができない。制御する場合は、放熱を制御するための冷却機構をつける必要がある。また例えば、繊維状ポリマーアクチュエータは形状記憶合金アクチュエータと同様に加熱する事で伸び、冷却する事で縮むため、加熱冷却機構が必要になる。また誘電エラストマアクチュエータは、電圧をかけることで伸びるが、縮む方向は弾性体であるエラストマの復元力に頼っており、自由な制御が難しい。
【0068】
また形状記憶合金アクチュエータや繊維状ポリマーアクチュエータは100度近い高温度で変位する。また誘電エラストマアクチュエータは駆動させるのに、数千ボルトという高電圧が必要である。内視鏡では、体内に挿入されるため、人体への影響が懸念される。
【0069】
そこで本技術では、電圧をかけることで、自身が伸縮するコイル状ワイヤの圧電リニアアクチュエータとChip-on Tipが可能な小型イメージセンサの組み合わせにより、電圧制御により、自動で駆動することができるシステムを提案する。これにより、観察したい部位を容易に観察することが可能となる。
また電圧により受光素子が制御されるため、内視鏡を大きく動かす必要がなくなる。これにより、術者が操作する鉗子等の術具と、スコピストが保持又は操作する内視鏡とが干渉するリスクや、内視鏡が臓器に干渉するリスクを低減できる。
また単純な構成で構築することができるため、内視鏡の径を細くする等の小型化及び軽量化が可能となる。これによりスコピストの負担を低減できる。内視鏡が手術ロボットに搭載された場合、手術ロボットの小型化及び軽量化も可能となる。
【0070】
また本技術では、受光素子に搭載されたAIによるエッジ側の処理を使うことで、例えばセンサ内での画像認識に基づき後段の処理で必要な情報のみを出力することが可能であり、その結果、画像処理を高速で行うことができ、学習も行われる。これにより、画像情報を基に術者が観察したい部位を高速かつ自動で観察することが可能である。
【0071】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0072】
上記の実施形態では、圧電リニアアクチュエータ43によりプレート42が傾き、受光素子41の撮影箇所が制御された。これに限定されず、プレート42以外を曲げることで受光素子41の撮影箇所が制御されてもよい。
【0073】
図6は、内視鏡70の構成を示す模式図である。
図6に示すように、内視鏡70は、受光素子41、弾性チューブ71、圧電リニアアクチュエータ43、及びガイドチューブ72を有する。
受光素子41は、図示しないプレートに支持される。受光素子41は、内視鏡1と同様に、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮に応じて傾動されるプレートに合わせて、観察方向が変更される。本実施形態では、弾性チューブ71の先端部73にプレートに支持された受光素子41が設けられる。
【0074】
弾性チューブ71は、内視鏡70の先端部から延伸方向75に延伸された円筒形状のチューブである。本実施形態では、
図6Bに示すように、弾性チューブ71は、プレートに接続された圧電リニアアクチュエータ43の伸縮に応じて屈曲する。すなわち、弾性チューブ71の先端部73に垂直な方向と、受光素子41の観察方向76とが略一致するように屈曲される。
【0075】
圧電リニアアクチュエータ43は、ガイドチューブ72に導かれ、弾性チューブ71を通り、受光素子41を支持するプレートに接続される。本実施形態では、3本の圧電リニアアクチュエータ43がプレートに接続される。3本の圧電リニアアクチュエータ43が各々にかかる電圧に応じて伸縮されることで、ユーザは、観察したい部位を観察できるようになる。
【0076】
ガイドチューブ72は、内視鏡70を通る円筒形状のチューブである。本実施形態では、ガイドチューブ72の内部には、3本の圧電リニアアクチュエータ43が挿入されており、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮が他の機器と干渉しないように保護される。
なお、本実施形態において、弾性チューブ71は、内視鏡に沿って延伸するように設けられた弾性部に相当する。
【0077】
図7は、内視鏡80の構成を示す模式図である。
図7Aは、内視鏡80を用いた実施例を示す模式図である。
図7では、患者34の体内に内視鏡80が挿入されている状態を示す。
図7Aに示すように、内視鏡80は、先端に受光素子41を有し、胴体部81に複数の屈曲部82を有する軟性内視鏡である。
受光素子41は、図示しないプレートに支持され、患者の体内の任意の箇所を撮影することが可能である。
【0078】
屈曲部82は、複数の筒状部材83及び複数の接続部84を有する。
図7Bに示すように、複数の筒状部材83が接続部84により回転自在に接続されることで屈曲部82が構成される。
筒状部材83は、一端に接続部84を有し、内部に圧電リニアアクチュエータ43が挿入される。本実施形態では、筒状部材83の内部に3本の圧電リニアアクチュエータ43が挿入され、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮に応じて屈曲部82が屈曲される。
また筒状部材83の接続部84が設けられていない他の端部には、他の筒状部材83の有する接続部84と接続するための構造が設けられる。
なお、筒状部材83の形状等は限定されず、例えば、内視鏡80が観察したい部位を観察するために十分な柔軟性が維持される構成が用いられてもよい。
接続部84は、各筒状部材83の一端に設けられる。例えば、接続部84は、回転軸85を中心に円筒形状に構成される。接続部84は、筒状部材83の接続部84が設けられていない他の端部に接続され、圧電リニアアクチュエータ43の伸縮に応じて回転軸85を中心に駆動される。
なお、屈曲部82の構成は限定されず、柔軟性が高い材料により実現されてもよい。
【0079】
上記の実施形態では、内視鏡1に3本の圧電リニアアクチュエータ43が接続された。これに限定されず、適宜圧電リニアアクチュエータ43が接続されてもよい。例えば、内視鏡1が任意の部位を観察できることが可能な自由度が確保されるように圧電リニアアクチュエータ43の数及び接続箇所が調節されてもよい。
【0080】
図8は、内視鏡90の構成の他の例を示す模式図である。
図8Aは、内視鏡90を横から見た場合の模式図である。
図8Bは、内視鏡90を正面から見た場合の模式図である。なお、
図8A及び
図8Bでは、受光素子41が省略されている。
なお、各構成の説明は
図5の内視鏡1と同様のため、省略する。
【0081】
図8A及び
図8Bに示すように、内視鏡90は、板バネ固定プレート65、バネ69、プレート42、及び圧電リニアアクチュエータ43を有する。
【0082】
本実施形態では、バネ69が板バネ固定プレート65に4本接続され、プレート42を支持する。またバネ69は、プレート42を中心にプレート42の周囲を90度の間隔で配置される。
例えば、板バネ固定プレート65の直径は、内視鏡90の外形と略一致するように直径10mmで構成される。
【0083】
また本実施形態では、圧電リニアアクチュエータ43は、プレート42に4本接続され、プレート42を中心にプレート42の周囲を90度の間隔で配置される。例えば、プレート42の直径は、8mmで構成される。
またプレート42は、表面48及び背面49を有する。表面48は、図示しない受光素子を支持する。本実施形態では、背面49に3本の圧電リニアアクチュエータ43が接続される。
図8に示すように、プレート42の表面48及び背面49は、YZ平面に平行な面である。またプレート42は、板バネ固定プレート65と略一致する厚さを有する円状のプレートである。
【0084】
これにより、内視鏡90は、3本の圧電リニアアクチュエータ43を有する内視鏡1と比べ、よりプレート42の傾きを自由に調節することができる。
【0085】
上記の実施形態では、医療用観察システム100は、内視鏡1に適用された。これに限定されず、軟性内視鏡やカテーテル等の様々な医療用装置に適用されてもよい。
【0086】
上記の実施形態では、受光素子41は、Chip-on Tip型が用いられた。これに限定されず、内視鏡の外形の大きさの範囲内であれば、任意の受光素子が用いられてもよい。
【0087】
上記の実施形態では、圧電リニアアクチュエータ43は、芯材50に圧電材52が巻き付けられて固定された。これに限定されず、任意の構成の圧電リニアアクチュエータ43が用いられてもよい。例えば、圧電材が蒸着等により芯材50に固定されてもよい。
【0088】
上記の実施形態では、受光素子41の画像情報の処理、収集、解析及び学習がAIエッジにより行われた。これに限定されず、外部のコンピュータにより処理が行われてもよい。
例えば、CPUやGPU、DSP等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、HDD等の記憶デバイス等、コンピュータの構成に必要なハードウェアを有する制御装置により処理が行われてもよい。例えばCPUがROM等に予め記録されている本技術に係るプログラムをRAMにロードして実行することにより、本技術に係る制御方法が実行される。
また例えばPC等の任意のコンピュータにより、制御装置を実現することが可能である。もちろんFPGA、ASIC等のハードウェアが用いられてもよい。
本実施形態では、CPUが所定のプログラムを実行することで、機能ブロックとしての制御部が構成される。もちろん機能ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが用いられてもよい。
プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して制御装置40にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
プログラムが記録される記録媒体の種類等は限定されず、コンピュータが読み取り可能な任意の記録媒体が用いられてよい。例えば、コンピュータが読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0089】
通信端末に搭載されたコンピュータとネットワーク等を介して通信可能な他のコンピュータとが連動することにより本技術に係る医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムが実行されてもよい。
【0090】
すなわち本技術に係る医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムは、単体のコンピュータにより構成されたコンピュータシステムのみならず、複数のコンピュータが連動して動作するコンピュータシステムにおいても実行可能である。なお、本開示において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれもシステムである。
【0091】
コンピュータシステムによる本技術に係る医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムの実行は、例えば、電圧の制御、状態認識、及び電圧パラメータの学習等が、単体のコンピュータにより実行される場合、及び各処理が異なるコンピュータにより実行される場合の両方を含む。また所定のコンピュータによる各処理の実行は、当該処理の一部又は全部を他のコンピュータに実行させその結果を取得することを含む。
【0092】
すなわち本技術に係る医療用観察システム、制御装置、制御方法、及びプログラムは、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成にも適用することが可能である。
【0093】
各図面を参照して説明した状態認識部、制御部、学習部等の各構成、通信システムの制御フロー等はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成やアルゴリズム等が採用されてよい。
【0094】
なお、本開示中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。上記の複数の効果の記載は、それらの効果が必ずしも同時に発揮されるということを意味しているのではない。条件等により、少なくとも上記した効果のいずれかが得られることを意味しており、もちろん本開示中に記載されていない効果が発揮される可能性もある。
【0095】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。
【0096】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
内視鏡の先端部に設けられた受光素子と、
前記受光素子を傾動可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に接続され、電圧の印加に応じて伸縮可能な圧電コイルと、
前記圧電コイルへの電圧の印可を制御する制御部と
を具備する医療用観察システム。
(2)(1)に記載の医療用観察システムであって、
前記圧電コイルは、前記指示部材に3本以上接続される
医療用観察システム。
(3)(1)に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記圧電コイルの伸縮による前記受光素子の傾動に関する電圧パラメータに基づいて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
(4)(3)に記載の医療用観察システムであって、
前記電圧パラメータは、前記圧電コイルの各々に印可される電圧の組み合わせを含む
医療用観察システム。
(5)(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記受光素子から取得される術野画像に基づいて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
(6)(5)に記載の医療用観察システムであって、さらに、
取得された前記術野画像内の物体を認識する物体認識部を具備する
医療用観察システム。
(7)(6)に記載の医療用観察システムであって、
前記物体認識部は、前記術野画像内の患部又は術具の少なくとも一方を認識する
医療用観察システム。
(8)(6)又は(7)に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、前記物体認識部により認識された前記物体が、前記受光素子の視野に入るように電圧を制御する
医療用観察システム。
(9)(5)から(8)のうちいずれか1つに記載の医療用観察システムであって、さらに、
取得された前記術野画像に基づいて、前記電圧パラメータを学習する学習部を具備する
医療用観察システム。
(10)(4)に記載の医療用観察システムであって、
前記制御部は、印加された前記電圧パラメータを学習データとして生成された学習済モデルを用いて、前記電圧の印加を制御する
医療用観察システム。
(11)(1)から(10)のうちいずれか1つに記載の医療用観察システムであって、
前記圧電コイルは、圧電リニアアクチュエータである
医療用観察システム。
(12)(1)から(11)のうちいずれか1つに記載の医療用観察システムであって、さらに、
前記支持部材を支持するバネ部を具備する
医療用観察システム。
(13)(1)から(12)のうちいずれか1つに記載の医療用観察システムであって、さらに、
前記内視鏡に沿って延伸するように設けられ、前記圧電コイルの伸縮に応じて屈曲する弾性部を具備する
医療用観察システム。
(12)
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御する制御部
を具備する制御装置。
(13)
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御する
ことをコンピュータシステムが実行する制御方法。
(14)
内視鏡の先端部に設けられた受光素子を傾動可能に支持する支持部材に接続された伸縮可能な圧電コイルへの電圧の印加を制御するステップ
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0097】
1…内視鏡
40…制御装置
41…受光素子
42…プレート
43…圧電リニアアクチュエータ
61…状態認識部
62…学習部
71…弾性チューブ