IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-回転方向判定装置 図1
  • 特開-回転方向判定装置 図2
  • 特開-回転方向判定装置 図3
  • 特開-回転方向判定装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143560
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】回転方向判定装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/182 20160101AFI20220926BHJP
【FI】
H02P6/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044120
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹太朗
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA01
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA13
5H560DB13
5H560DC06
5H560EB01
5H560EC02
5H560TT15
(57)【要約】
【課題】モータの誘起電圧にノイズが重畳した場合でも、ファンモータの空転方向を正確に判定すること。
【解決手段】回転方向判定装置20において、第一電圧検出部21は、ファンモータMにおける3相のうちの何れか1相に発生する第一誘起電圧を検出し、第二電圧検出部23は、3相のうち第一誘起電圧が発生する1相以外の残りの2相のうちの何れか1相に発生する第二誘起電圧を検出し、期間算出部26は、第一誘起電圧に基づいて第一期間と第二期間とを算出し、積分値算出部27は、第二誘起電圧を第一期間と第二期間とのそれぞれで積分することにより第一積分値と第二積分値とを算出し、回転方向判定部28は、第一積分値と第二積分値とを比較することにより、ファンモータMが起動する際にファンモータMの空転方向を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相モータにおける3相のうちの何れか1相に発生する第一誘起電圧を検出する第一電圧検出部と、
前記3相のうち前記第一誘起電圧が発生する前記1相以外の残りの2相のうちの何れか1相に発生する第二誘起電圧を検出する第二電圧検出部と、
前記第一誘起電圧に基づいて第一期間と第二期間とを算出する期間算出部と、
前記第二誘起電圧を前記第一期間と前記第二期間とのそれぞれで積分することにより第一積分値と第二積分値とを算出する積分値算出部と、
前記第一積分値と前記第二積分値とを比較することにより、前記3相モータが起動する際に前記3相モータの回転方向を判定する判定部と、
を具備する回転方向判定装置。
【請求項2】
前記第一誘起電圧を第一閾値と比較することにより第一矩形波を生成する第一矩形波生成部と、
前記第二誘起電圧を第二閾値と比較することにより第二矩形波を生成する第二矩形波生成部と、をさらに具備し、
前記期間算出部は、前記第一矩形波に基づいて前記第一期間と前記第二期間とを算出し、
前記積分値算出部は、前記第二矩形波を前記第一期間と前記第二期間とのそれぞれで積分することにより前記第二誘起電圧を前記第一期間と前記第二期間とのそれぞれで積分する、
請求項1に記載の回転方向判定装置。
【請求項3】
前記期間算出部は、前記第一矩形波の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を二等分することにより前記第一期間と前記第二期間とを算出する、
請求項2に記載の回転方向判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転方向判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機は、熱交換機と、熱交換機用のファン(以下では「室外機ファン」と呼ぶことがある)と、室外機ファンを回転させるモータ(以下では「ファンモータ」と呼ぶことがある)とを有する。
【0003】
室外機のファンモータは、ファンモータの起動前に(つまり、ファンモータが駆動されていないときに)、室外機ファンが風などの外力を受けて空転することにより、室外機ファンと共に回転する。室外機ファンが正転方向に空転するときはファンモータも正転方向に回転し、室外機ファンが正転方向とは逆方向、つまり逆転方向に空転するときはファンモータも逆転方向に回転する。以下では、正転方向の回転を「正転」と呼び、逆転方向の回転を「逆転」と呼ぶことがある。また、以下では、ファンモータの起動前のファンモータの回転を、室外機ファンの空転と同様に「空転」と呼び、ファンモータの空転の方向を「空転方向」と呼ぶことがある。
【0004】
空気調和機の室外機は、運転時に室外機ファンを正転方向に回転させる。従って、ファンモータは正転方向に回転するように起動する。しかし、ファンモータの起動前に室外機ファンが逆転方向に空転している状態でファンモータを正転方向に起動させてしまうと、ファンモータの回転磁界の方向と空転方向が異なるため、ファンモータの起動に失敗するおそれがある。
【0005】
そこで、ファンモータの起動前に、ファンモータに生じる誘起電圧(以下では「モータ誘起電圧」と呼ぶことがある)に基づいて、ファンモータの空転方向を判定する技術が提案されている。例えば、3相のモータ誘起電圧(以下では「3相誘起電圧」と呼ぶことがある)のうち、何れか2相のモータ誘起電圧のそれぞれの位相に基づいてファンモータの空転方向を判定する技術がある。これにより、ファンモータを起動する際に空転方向を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-153178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ファンモータの空転方向の判定に用いられるモータ誘起電圧にノイズが重畳することがあり、モータ誘起電圧にノイズが重畳するとファンモータの空転方向の判定に誤りが生じることがある。
【0008】
そこで、本開示は、モータ誘起電圧にノイズが重畳した場合でも、ファンモータの空転方向を正確に判定できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の回転方向判定装置は、第一電圧検出部と、第二電圧検出部と、期間算出部と、積分値算出部と、判定部とを有する。前記第一電圧検出部は、3相モータにおける3相のうちの何れか1相に発生する第一誘起電圧を検出する。前記第二電圧検出部は、前記3相のうち前記第一誘起電圧が発生する前記1相以外の残りの2相のうちの何れか1相に発生する第二誘起電圧を検出する。前記期間算出部は、前記第一誘起電圧に基づいて第一期間と第二期間とを算出する。前記積分値算出部は、前記第二誘起電圧を前記第一期間と前記第二期間とのそれぞれで積分することにより第一積分値と第二積分値とを算出する。前記判定部は、前記第一積分値と前記第二積分値とを比較することにより、前記3相モータが起動する際に前記3相モータの回転方向を判定する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、モータ誘起電圧にノイズが重畳した場合でも、ファンモータの空転方向を正確に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施例の回転方向判定装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施例の回転方向判定装置の動作例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施例の回転方向判定装置の動作例を示す図である。
図4図4は、本開示の実施例の回転方向判定装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0013】
[実施例]
<回転方向判定装置の構成>
図1は、本開示の実施例の回転方向判定装置の構成例を示す図である。図1において、回転方向判定装置20は、IPM(Intelligent Power Module)10とファンモータMとの間に接続され、第一電圧検出部21と、第一矩形波生成部22と、第二電圧検出部23と、第二矩形波生成部24と、期間算出部26と、積分値算出部27と、回転方向判定部28とを有する。第一電圧検出部21は、ファンモータMのU相に接続され、第二電圧検出部23は、ファンモータMのV相に接続される。ファンモータMは、3相モータである。第一電圧検出部21、第一矩形波生成部22、第二電圧検出部23、第二矩形波生成部24、期間算出部26、積分値算出部27、及び、回転方向判定部28は、ハードウェアとして、例えばMCU(Micro Control Unit)により実現される。
【0014】
IPM10は、インバータのスイッチング制御により、IPM10の外部から印加される直流電圧Vdcから、3相の交流電圧Vu,Vv,Vwを生成し、生成した各相の交流電圧をファンモータMのU相,V相,W相の各相へ印加することによりファンモータMを駆動する。IPM10は、ファンモータMを駆動する駆動部の一例である。
【0015】
ファンモータMは、空転時にも、3相誘起電圧であるU相、V相、W相の各相の誘起電圧を発生する。以下では、U相の誘起電圧を「U相誘起電圧」と、V相の誘起電圧を「V相誘起電圧」と、W相の誘起電圧を「W相誘起電圧」と呼ぶことがある。
【0016】
第一電圧検出部21は、ファンモータMの起動前のU相誘起電圧の瞬時値(以下では「U相電圧値」と呼ぶことがある)を逐次検出し、検出したU相電圧値を第一矩形波生成部22へ出力する。
【0017】
第一矩形波生成部22は、U相電圧値が閾値TH未満から閾値TH以上に変化した時点でハイレベルHを出力し、U相電圧値が閾値TH以上から閾値TH未満に変化した時点でローレベルLを出力する。この結果、第一矩形波生成部22は、第一電圧検出部21で検出されたU相電圧値から矩形波(以下では「U相矩形波」と呼ぶことがある)を生成し、生成したU相矩形波を期間算出部26へ出力する。
【0018】
第二電圧検出部23は、ファンモータMの起動前のV相誘起電圧の瞬時値(以下では「V相電圧値」と呼ぶことがある)を逐次検出し、検出したV相電圧値を第二矩形波生成部24へ出力する。
【0019】
第二矩形波生成部24は、V相電圧値が閾値TH未満から閾値TH以上に変化した時点でハイレベルHを出力し、V相電圧値が閾値TH以上から閾値TH未満に変化した時点でローレベルLを出力する。この結果、第二矩形波生成部24は、第二電圧検出部23で検出されたV相電圧値から矩形波(以下では「V相矩形波」と呼ぶことがある)を生成し、生成したV相矩形波を積分値算出部27へ出力する。
【0020】
期間算出部26は、第一矩形波生成部22で生成されたU相矩形波に基づいて第一期間と第二期間とを算出し、算出した第一期間と第二期間とを積分値算出部27へ出力する。第一期間及び第二期間の詳細については後述する。
【0021】
積分値算出部27は、第二矩形波生成部24で生成されたV相矩形波を第一期間と第二期間のそれぞれで積分することにより、第一期間のV相誘起電圧の積分値(以下では「V相前半積分値」と呼ぶことがある)と、第一期間に続く第二期間のV相誘起電圧の積分値(以下では「V相後半積分値」と呼ぶことがある)とを算出する。積分値算出部27は、算出したV相前半積分値とV相後半積分値とを回転方向判定部28へ出力する。
【0022】
回転方向判定部28は、V相前半積分値とV相後半積分値とを比較することにより、ファンモータMの起動前に、ファンモータMの回転方向が正転方向であるか逆転方向であるかを判定し、判定結果を出力する。
【0023】
<回転方向判定装置の動作>
図2及び図3は、本開示の実施例の回転方向判定装置の動作例を示す図である。以下では、U相誘起電圧の波形を「U相波形」と、V相誘起電圧の波形を「V相波形」と、W相誘起電圧の波形を「W相波形」と呼ぶことがある。図2には、ファンモータMが正転方向に空転したときのU相波形Wu及びV相波形Wvを示し、図3には、ファンモータMが逆転方向に空転したときのU相波形Wu及びV相波形Wvを示す。以下では、ファンモータMの正転方向の空転時(以下では「正転空転時」と呼ぶことがある)の動作例と、ファンモータMの逆転方向の空転時(以下では「逆転空転時」と呼ぶことがある)の動作例とに分けて説明する。
【0024】
<正転空転時の動作例(図2)>
ファンモータMが正転方向で空転しているときには、U相波形→V相波形→W相波形→U相波形→V相波形→W相波形→…の順序で各相の誘起電圧の波形が出現する。そこで、図2に示すように、3相の誘起電圧の波形のうち、U相波形WuとV相波形Wvとに着目する。なお、図2において、U相波形Wu及びV相波形Wvには、IPM10からグランド(GND)へ流れる漏れ電流によりオフセット電圧OSが重畳される。
【0025】
第一電圧検出部21は、U相電圧値を逐次検出してU相波形Wuを生成し、第二電圧検出部23は、V相電圧値を逐次検出してV相波形Wvを生成する。
【0026】
第一矩形波生成部22は、U相電圧値に対する閾値(以下では「U相閾値THu」と呼ぶことがある)に基づいて第一矩形波であるU相矩形波PUを生成し、第二矩形波生成部24は、V相電圧値に対する閾値(以下では「V相閾値THv」と呼ぶことがある)に基づいて第二矩形波であるV相矩形波PVを生成する。第一矩形波生成部22は、U相電圧値の最大値と最小値との中間値(中間値=(最大値+最小値)/2)をU相閾値THuとして設定し、第二矩形波生成部24は、V相電圧値の最大値と最小値との中間値をV相閾値THvとして設定する。なお、図2では便宜上、U相波形Wuの振幅とV相波形Wvの振幅とが同一の振幅として表され、U相閾値THuとV相閾値THvとが同一の閾値THとして表されている。また、U相閾値THu及びV相閾値THvの設定は、U相誘起電圧及びV相誘起電圧のそれぞれの周期毎に行われる。
【0027】
ここで、U相波形とV相波形とW相波形との間の位相差は互いに120度である。また、ファンモータMが正転方向で空転しているときには、各相の誘起電圧の波形がU相波形→V相波形→W相波形→U相波形→V相波形→W相波形→…の順序で出現する。また、U相閾値THu及びV相閾値THvは、上記のようにそれぞれの波形振幅の中間値に設定される。このようにU相閾値THu及びV相閾値THvが波形振幅の中間値に設定されるため、ファンモータMが正転方向で空転しているときは、理想的には、矩形波においてハイレベルHの期間(以下では「ハイレベル期間」と呼ぶことがある)とローレベルLの期間(以下では「ローレベル期間」と呼ぶことがある)とがそれぞれ2分の1周期となる。よって、U相矩形波PUの立上り時点からU相誘起電圧の周期(以下では「U相周期Tu」と呼ぶことがある)の2分の1の時間が経過した時点がU相矩形波PUの立下り時点となり、U相矩形波PUの立上り時点からU相周期Tuの3分の1の時間(位相差120度に相当する時間)が経過した時点がV相矩形波PVの立上り時点となり、U相矩形波PUの立下り時点ではV相矩形波PVはハイレベルHの状態にある。そこで、期間算出部26は、U相周期Tuのハイレベル期間(2分の1周期)を等分して、U相周期Tuの4分の1の時間をそれぞれ有する前半の第一期間S1と後半の第二期間S2とを算出する。
【0028】
積分値算出部27は、U相矩形波PUを基準にし、U相矩形波PUの立上り時点を起点とする第一期間S1でV相矩形波PVを積分することによりV相前半積分値を算出する。また、積分値算出部27は、第一期間S1の終了時点を起点とする第二期間S2でV相矩形波PVを積分することによりV相後半積分値を算出する。
【0029】
上記のように、ファンモータMが正転方向で空転しているときには、各相の誘起電圧の波形がU相波形→V相波形→W相波形→U相波形→V相波形→W相波形→…の順序で出現するため、図2に示すように、V相後半積分値がV相前半積分値より大きな値となる。そこで、回転方向判定部28は、V相前半積分値とV相後半積分値とを比較し、V相後半積分値がV相前半積分値より大きいときは、ファンモータMの空転方向が正転方向であると判定する。
【0030】
<逆転空転時の動作例(図3)>
以下では、逆転空転時の動作例において上記の正転空転時の動作例と同一の説明は省略する。
【0031】
ファンモータMが逆転方向で空転しているときには、W相波形→V相波形→U相波形→W相波形→V相波形→U相波形→…の順序で各相の誘起電圧の波形が出現する。そこで、図3に示すように、3相の誘起電圧の波形のうち、V相波形WvとU相波形Wuとに着目する。なお、図3において、図2と同様に、U相波形Wu及びV相波形Wvには、IPM10からグランド(GND)へ流れる漏れ電流によりオフセット電圧OSが重畳される。また、図3では便宜上、U相波形Wuの振幅とV相波形Wvの振幅とが同一の振幅として表され、U相閾値THuとV相閾値THvとが同一の閾値THとして表されている。
【0032】
ここで、U相波形とV相波形とW相波形との間の位相差は互いに120度である。また、ファンモータMが逆転方向で空転しているときには、各相の誘起電圧の波形がW相波形→V相波形→U相波形→W相波形→V相波形→U相波形→…の順序で出現する。また、U相閾値THu及びV相閾値THvは、上記のようにそれぞれの波形振幅の中間値に設定される。このようにU相閾値THu及びV相閾値THvが波形振幅の中間値に設定されるため、ファンモータMが逆転方向で空転しているときは、理想的には、矩形波においてハイレベル期間とローレベル期間とがそれぞれ2分の1周期となる。よって、U相矩形波PUの立上り時点からU相周期Tuの2分の1の時間が経過した時点がU相矩形波PUの立下り時点となり、U相矩形波PUの立上り時点からU相周期Tuの6分の1の時間(つまり、位相差60度に相当する時間)が経過した時点がV相矩形波PVの立下り時点となり、U相矩形波PUの立下り時点ではV相矩形波PVはローレベルLの状態にある。そこで、上記の正転空転時の動作例と同様に、期間算出部26は、U相周期Tuのハイレベル期間(2分の1周期)を等分して、U相周期Tuの4分の1の時間をそれぞれ有する前半の第一期間S1と後半の第二期間S2とを算出する。
【0033】
上記のように、ファンモータMが逆転方向で空転しているときには、各相の誘起電圧の波形がW相波形→V相波形→U相波形→W相波形→V相波形→U相波形→…の順序で出現するため、図3に示すように、V相前半積分値がV相後半積分値より大きな値となる。そこで、回転方向判定部28は、V相前半積分値とV相後半積分値とを比較し、V相後半積分値がV相前半積分値以下のときは、ファンモータMの空転方向が逆転方向であると判定する。
【0034】
<回転方向判定装置における処理手順>
図4は、本開示の実施例の回転方向判定装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。空気調和機の運転停止中には、図4に示すフローチャートによる処理が常に実行されている。
【0035】
図4において、ステップS105では、回転方向判定装置20は、U相電圧値及びV相電圧値を検出する。
【0036】
次いで、ステップS110では、回転方向判定装置20は、U相閾値に基づいてU相電圧値からU相矩形波を生成し、V相閾値に基づいてV相電圧値からV相矩形波を生成する。
【0037】
次いで、ステップS120では、回転方向判定装置20は、第一期間及び第二期間を算出する。
【0038】
次いで、ステップS125では、回転方向判定装置20は、V相前半積分値を算出する。
【0039】
次いで、ステップS130では、回転方向判定装置20は、V相後半積分値を算出する。
【0040】
次いで、ステップS135では、回転方向判定装置20は、V相後半積分値がV相前半積分値より大きいか否かを判定する。
【0041】
V相後半積分値がV相前半積分値より大きいときは(ステップS135:Yes)、ステップS140において、回転方向判定装置20は、ファンモータMの空転方向が正転方向であると判定する。
【0042】
一方で、V相後半積分値がV相前半積分値以下であるときは(ステップS135:No)、ステップS145において、回転方向判定装置20は、ファンモータMの空転方向が逆転方向であると判定する。
【0043】
ステップS140またはステップS145の処理により、空転方向の判定処理は終了する。なお、空転方向の判定結果は、ファンモータMを起動させる制御部(図示省略)に送られる。制御部は、ファンモータMを起動する際に、空転方向を回転方向として同期運転を開始する。
【0044】
なお、図1における上記説明では、ファンモータMのU相に第一電圧検出部21が接続され、かつ、ファンモータMのV相に第二電圧検出部23が接続される接続例1が採用される場合について説明した。
【0045】
しかし、上記の接続例1に代えて、ファンモータMのV相に第一電圧検出部21が接続され、かつ、ファンモータMのW相に第二電圧検出部23が接続される接続例2が採用されても良い。接続例2が採用される場合は、接続例1における上記の説明においてU相をV相と読み替え、V相をW相と読み替えることにより、接続例1と同様にしてファンモータMの空転方向を判定することができる。つまり、接続例2が採用される場合は、回転方向判定装置20は、V相矩形波を基準にしてW相前半積分値及びW相後半積分値を算出し、W相後半積分値がW相前半積分値より大きいときはファンモータMの空転方向が正転方向であると判定し、W相後半積分値がW相前半積分値以下であるときはファンモータMの空転方向が逆転方向であると判定する。
【0046】
また、上記の接続例1に代えて、ファンモータMのW相に第一電圧検出部21が接続され、かつ、ファンモータMのU相に第二電圧検出部23が接続される接続例3が採用されても良い。接続例3が採用される場合は、接続例1における上記の説明においてU相をW相と読み替え、V相をU相と読み替えることにより、接続例1と同様にしてファンモータMの空転方向を判定することができる。つまり、接続例3が採用される場合は、回転方向判定装置20は、W相矩形波を基準にしてU相前半積分値及びU相後半積分値を算出し、U相後半積分値がU相前半積分値より大きいときはファンモータMの空転方向が正転方向であると判定し、U相後半積分値がU相前半積分値以下であるときはファンモータMの空転方向が逆転方向であると判定する。
【0047】
また、期間算出部26が、第二矩形波生成部24で生成されたV相矩形波に基づいて第一期間と第二期間とを算出し、積分値算出部27が、第一矩形波生成部22で生成されたU相矩形波を上記と同様にして積分することにより、接続例1と同様にファンモータMの空転方向を判定することができる。この場合、空転方向の判定基準は、接続例1の基準と逆になる。
【0048】
また、図4に示すフローチャートの処理は、ファンモータMが起動する際に行われても良い。
【0049】
以上、実施例について説明した。
【0050】
以上のように、本開示の回転方向判定装置(実施例の回転方向判定装置20)は、第一電圧検出部(実施例の第一電圧検出部21)と、第二電圧検出部(実施例の第二電圧検出部23)と、期間算出部(実施例の期間算出部26)と、積分値算出部(実施例の積分値算出部27)と、判定部(実施例の回転方向判定部28)とを有する。第一電圧検出部は、3相モータにおける3相のうちの何れか1相に発生する第一誘起電圧を検出する。第二電圧検出部は、3相のうち第一誘起電圧が発生する1相以外の残りの2相のうちの何れか1相に発生する第二誘起電圧を検出する。期間算出部は、第一誘起電圧に基づいて第一期間と第二期間とを算出する。積分値算出部は、第二誘起電圧を第一期間と第二期間とのそれぞれで積分することにより第一積分値と第二積分値とを算出する。判定部は、第一積分値と第二積分値とを比較することにより、3相モータが起動する際に3相モータの回転方向を判定する。
【0051】
例えば、回転方向判定装置は、第一矩形波生成部(実施例の第一矩形波生成部22)と、第二矩形波生成部(実施例の第二矩形波生成部24)とを有する。第一矩形波生成部は、第一誘起電圧を第一閾値と比較することにより第一矩形波を生成する。第二矩形波生成部は、第二誘起電圧を第二閾値と比較することにより第二矩形波を生成する。期間算出部は、第一矩形波に基づいて第一期間と第二期間とを算出する。積分値算出部は、第二矩形波を第一期間と第二期間とのそれぞれで積分することにより第二誘起電圧を第一期間と第二期間とのそれぞれで積分する。
【0052】
また例えば、期間算出部は、第一矩形波の立ち上がりから立ち下がりまでの期間を二等分することにより第一期間と第二期間とを算出する。
【0053】
このように3相モータの起動前に第一積分値と第二積分値との比較結果に基づいて3相モータの回転方向を判定することで、モータ誘起電圧にノイズが重畳した場合でもノイズの影響が抑えられるため、ファンモータの空転方向を正確に判定することができる。
【0054】
なお、上記では、第二誘起電圧を第一期間及び第二期間のそれぞれで積分した値を比較することにより空転方向を判定しているが、第一期間における第二誘起電圧の瞬時値と、第二期間における第二誘起電圧の瞬時値とを比較することにより空転方向を判定しても良い。第二誘起電圧の瞬時値を用いて空転方向を判定する際には、第一期間と第二期間との間での瞬時値の差がはっきりと表れるような瞬時値を用いることが好ましい。
【0055】
例えば、図2を参照して検討すると、期間算出部26が、第一誘起電圧(Wu)に重畳されるオフセット電圧OSを基準として、第一誘起電圧の立ち上がりから立ち下がりまでの期間(つまり、位相差120度に相当する期間)を二等分にすることにより第一期間と第二期間とを算出する。この場合、第二誘起電圧(Wv)に重畳されるオフセット電圧OSは、第一期間では小さい値となり、また、第二期間では位相が180度以降のときに大きい値となる。従って、第一期間の中間点(位相60度)での第二誘起電圧の瞬時値と、第二期間の中間点(位相180度)以降での(例えば位相210度での)第二誘起電圧の瞬時値とを比較することにより空転方向を判定することができる。
【0056】
また、第一矩形波生成部22で第一誘起電圧から矩形波を生成した後に第一期間と第二期間とを算出する場合も、上記と同様にして瞬時値を比較することにより空転方向を判定することができる。
【0057】
なお、第二矩形波生成部24で第二誘起電圧から矩形波を生成した後に比較を行う場合は、ローレベル(ゼロ)とハイレベル(1)との比較となる。
【符号の説明】
【0058】
M ファンモータ
20 回転方向判定装置
21 第一電圧検出部
22 第一矩形波生成部
23 第二電圧検出部
24 第二矩形波生成部
26 期間算出部
27 積分値算出部
28 回転方向判定部
図1
図2
図3
図4