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特開2022-143577樹木保護具および樹木保護具製造方法
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  • 特開-樹木保護具および樹木保護具製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143577
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】樹木保護具および樹木保護具製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A01G13/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044163
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】300030060
【氏名又は名称】信友株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 義郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史治
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024EA11
(57)【要約】
【課題】安価でかつ耐久性の高い樹木保護具を提供する。安価な樹木保護具の製造方法を提供する。
【解決手段】樹木保護具1は、樹木を保護するための保護具である。樹木保護具1は、筒状ネット2を含む。筒状ネット2は、筒編地3を用いて形成されている。筒編地3を構成する繊維の繊度が、11デシテックス~330デシテックスである。植設されている樹木Tに筒状ネット2が上から被せられることにより、筒状ネット2が樹木Tに装着される。この状態で、筒状ネット2は樹木Tの周囲を取り囲み、これにより、害獣による食害から樹木Tが保護される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を保護するための樹木保護具であって、
前記樹木の周囲を取り囲む筒状のネットであって、筒編地を用いて形成された筒状ネットを含む、樹木保護具。
【請求項2】
前記筒編地を構成する繊維の繊度が、11デシテックス~330デシテックスである、請求項1に記載の樹木保護具。
【請求項3】
樹木の周囲を取り囲む筒状ネットを有し、前記樹木を保護するための樹木保護具を製造するための方法であって、
筒編み機を用いて原料繊維を筒編みして筒編物を得る筒編み工程を含み、
前記筒状ネットが、前記筒編物を用いて形成されている、樹木保護具製造方法。
【請求項4】
前記筒編物を拡径することにより前記筒状ネットを形成する拡径工程をさらに含む、請求項3に記載の樹木保護具製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹木を保護するための樹木保護具、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、害獣による食害から幼齢木等の樹木を保護するための樹木保護具が知られている。このような樹木保護具として、下記の特許文献1,2に記載のように、保護対象の樹木の周囲を筒状のネットで取り囲む構成が知られている。下記の特許文献1,2に記載の発明では、光透過性および通気性(通風性)の優れるネットによって樹木保護具を構成するので、樹木の周囲を外気環境に近い状態に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4029905号公報
【特許文献2】特許第5144580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の筒状ネットは、袋織により形成されている。袋織は、一般的な織物の組織である一重織物に対し緯密度が約2倍になるため、生産速度が遅い(約半分である)。また、整経、糊付け工程が必要になるなど、工程数も多い。そのため、袋織では工数および時間を要する。したがって、特許文献1に記載の筒状ネットはコスト高になるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献2に記載の食害防止用プロテクターは、1枚のネット状の編物の縁部を重ね合わせ、当該縁部を縫合することにより筒状に形成したり、2枚のネット編物を重ね、その左右の縁部で縫合して筒状に形成したりしている。特許文献2に記載の手法では、縫合工程が必要になるために工程数が増え、その結果、コスト高になるおそれがある。しかも、筒状ネットに縫合部が存在するため、その縫合部からほつれが生じるおそれがある。
【0006】
すなわち、筒状ネットの製造工程を工夫して、コストダウンすることが望まれていた。併せて、樹木保護具の耐久性を高めることも望まれていた。
そこで、この発明の一の目的は、安価でかつ耐久性の高い樹木保護具を提供することである。
また、この発明の他の目的は、安価な樹木保護具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、樹木を保護するための樹木保護具であって、前記樹木の周囲を取り囲む筒状のネットであって、筒編地を用いて形成された筒状ネットを含む、樹木保護具を提供する。
この構成によれば、筒状ネットが筒編地を用いて形成されているので、縫合工程や袋織を用いることなく筒状ネットが形成される。筒編みは生産速度が速く、かつ要する工程数が少ない。そのため、筒編地は比較的安価である。これにより、安価な筒状ネットを提供できる。
【0008】
また、筒状ネットが筒編地を用いて形成されているので、筒状ネットに縫合部が存在しない。そのため、縫合部に起因するほつれが発生しない。これにより、樹木保護具の耐久性を向上させることができる。
ゆえに、安価でかつ耐久性の高い樹木保護具を提供できる。
この発明の一実施形態では、前記筒編地を構成する繊維の繊度(糸状態の全体の繊度)が、11デシテックス(dtex)~330デシテックス(dtex)が好ましく、より好ましくは22デシテックス~167デシテックスである。
【0009】
経編や袋織は、細い繊維を用いて編む(織る)ことに適していない。そのため、筒編地でない他の編地(経編地や袋織地)を用いて筒状ネットを形成しようとすると、筒状ネットの重量が重くなるおそれがある。樹木保護具を樹木に取り付ける作業では、多数の樹木保護具を一度に山林に運搬する必要があり、そのため、個々の樹木保護具の重量は、できる限り軽いことが望ましい。
【0010】
これに対し、本発明の一実施形態によれば、細い繊維でも筒編みすることが可能である。細い繊維を筒編みして筒状ネットを形成することにより、筒状ネットの軽量化、すなわち、樹木保護具の軽量化を図ることができる。この発明の一実施形態のように、前記筒編地を構成する繊維として、11デシテックス~330デシテックスの繊維を採用することが望ましい。
【0011】
本願発明者らは、筒編地を用いて筒状ネットを形成することを着想した。この着想は、今までになかった斬新な着想である。この場合、筒編地をそのままあるいは筒状地に簡単な加工を施すことにより筒状ネットを形成できるから、コスト面でも製造面でも大きなメリットがある。
この発明の一実施形態は、樹木の周囲を取り囲む筒状ネットを有し、前記樹木を保護するための樹木保護具を製造するための方法であって、筒編み機を用いて原料繊維を筒編みして筒編物を得る筒編み工程を含み、前記筒状ネットが、前記筒編物を用いて形成されている、樹木保護具製造方法を提供する。
【0012】
この方法によれば、筒編み機を用いて繊維を筒編みすることにより編物を得るので、縫合工程や袋織を用いることなく筒状ネットを形成できる。そのため、筒状ネットを安価に形成できる。ゆえに、安価な樹木保護具の製造方法を提供できる。
この発明の一実施形態では、前記樹木保護具製造方法が、前記筒編物を拡径することにより前記筒状ネットを形成する拡径工程をさらに含む。
【0013】
筒編み工程の後に筒編物を拡径する。拡径工程における拡径の度合いを調節することにより、筒状ネットの直径および筒状ネットの開口を所望の大きさにすることができる。
本願発明者らは、筒編み工程を用いて筒状ネットを形成することを着想した。この場合、筒編み工程により、または筒編み工程に拡径工程を追加することにより、筒状ネットを形成できるから、コスト面でも製造面でも大きなメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る樹木保護具の斜視図である。
図2図2は、前記樹木保護具を樹木に装着した状態を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示す筒状ネットの要部の拡大図である。
図4図4は、前記筒状ネットの製造方法を説明するための工程図である。
図5図5は、図4に示すセット(S3)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る樹木保護具1の斜視図である。図2は、樹木保護具1を樹木Tに装着した状態を示す斜視図である。
樹木保護具1は、樹木Tを保護するための保護具である。より具体的には、樹木保護具1は、山林に植設されている樹木Tの周囲を取り囲むことで、害獣(クマ、シカ、カモシカ、サル、ウサギ、ネズミ等)による食害から樹木Tを保護する。樹木Tはたとえば幼齢木であるが、樹木Tが成木であってもよい。
【0016】
樹木保護具1は、筒状ネット2と、支柱6とを含む。筒状ネット2が樹木Tに上から被せられることにより、筒状ネット2は、その軸方向が上下方向に沿う状態で樹木Tに装着される。その装着状態において、筒状ネット2は、樹木Tの周囲を取り囲む。
筒状ネット2の軸方向長さは、100cm~200cmである。筒状ネット2の直径は、筒状ネット2を円筒にしたときに、15cm~60cmである。筒状ネット2は、上下端に開口が形成されている。すなわち、筒状ネット2は、上開口部2aおよび下開口部2bを有している。
【0017】
筒状ネット2が樹木Tに装着された状態で、筒状ネット2は樹木Tの周囲を覆う起立姿勢に保たれ、筒状ネット2の下開口部2bは、地面Gに当接する。この装着状態では、樹木Tの少なくとも下部分の周囲が、筒状ネット2によって取り囲まれるので、樹木Tを害獣による食害から保護できる。光透過性および通気性(通風性)の優れる筒状ネット2によって樹木Tを保護するため、樹木Tに注がれる太陽光や風を遮ることなく、樹木Tの周囲を外気環境に近い状態に保つことができる。
【0018】
筒状ネット2は、筒編地3を用いて形成されている。筒編地3を用いて形成される筒状ネット2は、縫合工程を経ることなく形成される。筒編みは生産速度が速く、かつ要する工程数が少ない。そのため、筒編地3は比較的安価である。そのため、筒状ネット2を安価に提供できる。
また、筒状ネット2が筒編地3を用いて形成されているので、筒状ネット2に縫合部が存在しない。そのため、縫合部に起因するほつれが発生しない。また、筒状ネット2の外観がきれいである。
【0019】
上開口部2aおよび下開口部2bには、編み止めが施されている。そのため、上開口部2aおよび下開口部2bにおいて、ほつれを防止できる。上開口部2aおよび下開口部2bは外側に若干カールしている。しかし、このカールは、筒状ネット2(樹木保護具1)の使用に特段の悪影響を及ぼさない。
支柱6は、筒状ネット2を、樹木Tの周囲を覆う起立姿勢に保つものであり、地面Gからたとえば鉛直上方に向けて延びている。図1図2の例では、支柱6は、筒状ネット2の内側に配置されており、連結金具7を介して筒状ネット2に接続されている。たとえば、支柱6は、連結金具7を介して筒状ネット2の上端部を支持する。
【0020】
支柱6は、筒状ネット2の外側に配置されていてもよい。また、筒状ネット2の上下に亘って設けられる複数の連結金具によって支柱6と筒状ネット2との接続が図られていてもよい。また、連結金具(連結金具7)が廃止されて、支柱6が筒状ネット2に直接接続されていてもよい。
図3は、筒状ネット2の要部の拡大図である。
【0021】
筒状ネット2の筒編地3は、多数の開口4を有している。具体的には、繊維5が緯方向(横方向)に編み込まれながらループを形成しており、そのループによって多数の開口4が形成されている。このようにして形成される筒編地3は伸縮性が大きく、そのため、筒状ネット2は、その軸方向および径方向に伸縮可能に設けられている。後述するように、筒状ネット2の筒編地3は、筒編み機を用いて原料繊維を筒編みして筒編物8を得る筒編み工程(図4のS1)と、この筒編物8を拡径することにより筒状ネット2(筒編地3)を形成するセット(拡径工程、図4のS3)とを含む製造方法によって製造されている。
【0022】
筒状ネット2の筒編地3の目付けは、5g/m~100g/mであることが好ましい。
この実施形態では、繊維5は、マルチフィラメントが好ましいが、モノフィラメントであってもよい。繊維5は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の疎水性樹脂を含む。また、繊維5が、植物(たとえば、トウモロコシ)由来の生分解性繊維を含んでいてもよい。生分解性繊維を採用する場合、樹木T(たとえば幼齢木)が大きく成長して保護が不要となる数年後には、その生分解性により筒状ネット2も自然分解する。そのため、放置しておいても、環境汚染を引き起こすことがない。さらには後述するように、繊維表面に低融点成分が露出された高融点成分と複合紡糸された糸を含んでいてもよい。
【0023】
繊維5の繊度(糸状体全体の繊度)が、11デシテックス~330デシテックスが好ましく、より好ましくは22デシテックス~167デシテックスである。
経編や袋織は、細い繊維を用いて編む(織る)ことに適していない。そのため、筒編地3でない他の編地(経編地や袋織地)を用いて筒状ネット2を形成しようとすると、筒状ネット2の重量が重くなるおそれがある。樹木保護具1を樹木Tに取り付ける作業では、多数の樹木保護具1を一度に山林に運搬する必要があり、そのため、個々の樹木保護具1の重量は、できる限り軽いことが望ましい。なお、樹木保護具1の筒状ネット2は、平たく折り畳まれた状態で運搬される。
【0024】
これに対し、細い繊維でも筒編みすることが可能である。この実施形態のように、細い繊維(原料繊維)を筒編みして筒状ネットを形成することにより、筒状ネット2の軽量化、すなわち、樹木保護具1の軽量化を図ることができる。具体的には、筒編地3を構成する繊維5として、11デシテックス~330デシテックスの繊維が採用されている。これにより、樹木保護具1の運搬性を高めることができる。
【0025】
筒状ネット2の開口4の大きさは、経幅W1が0.5mm~10mmであり、緯幅W2が1mm~10mmである。但し、筒状ネット2の開口4の大きさは、太陽光や風を遮らない程度に広くかつ、害獣の口が入りにくい程度に狭ければ、上記の数値範囲に限定されるものではない。
以上により、この実施形態によれば、安価でかつ耐久性の高い樹木保護具1を提供できる。
【0026】
従来、筒編地を用いて筒状ネットを形成するという着想がなかった。その要因としては、筒編みによって得られる筒編物の直径は、通常比較的大きいことが挙げられる(50cm~百数十cm)。このような径の大きな筒編物をベースとして筒状ネットを作成しようとすると、裁断工程や縫製工程が必要になる。また、筒状ネットに縫合部も存在するようになってしまい、結局のところ、特許文献1,2と同等の問題が生じるおそれがある。
【0027】
本願発明者らは、筒編地3を用いて筒状ネット2を形成することを着想した。この着想は、今までになかった斬新な着想である。この場合、筒編物8をそのまま用いた筒編地3にあるいは簡単な加工を施した筒編地3を用いて筒状ネット2を形成できるから、コスト面でも製造面でも大きなメリットがある。
とくに、筒編みによって比較的小径の筒編物8を得て、この筒編物8をベースとして比較的小径の筒編地3を形成したところに、本願の特徴の一つがある。この点は、次に述べる。
【0028】
次に、筒状ネット2の製造方法について説明する。図4は、筒状ネット2の製造方法を説明するための工程図である。
筒状ネット2の筒編地3の製造方法は、筒編み工程(S1)と、染色工程(S2)と、セット(拡径工程、S3)とを含む。
筒編み工程(S1)は、筒編み機を用いて原料繊維を筒編みして筒編物8を得る工程である。原料繊維として、非捲縮糸が用いられる。上記の筒編み機として、丸編み機(たとえばシングルジャージー丸編み機)が用いられる。筒編み工程(S1)により、たとえば10cm~50cmの直径を有する筒編物8が得られる。
【0029】
筒編み工程(S1)による筒編み対象の原料繊維が未着色繊維である場合、筒編み工程(S1)の後に染色工程(S2)が実行される。染色工程(S2)は、筒編み工程(S1)によって得られた筒編物8を染色する工程である。染色工程(S2)では、筒編物8が布袋に入れられ、染色機(たとえばドラム染色機)を用いて染色される。染色工程(S2)では、精錬、染色、色止め、柔軟および脱水の各工程が、合計で数十分~数時間かけて実行される。染色工程(S2)の後にセット(S3)が実行される。
【0030】
筒編み工程(S1)による筒編み対象の原料繊維が着色繊維である場合、染色工程(S2)が実行されずに、筒編み工程(S1)に次いでセット(S3)が実行される。また、原料繊維が未着色繊維であってもそもそも筒状ネット2の染色を行わない場合、染色工程(S2)が実行されずに、筒編み工程(S1)に次いでセット(S3)が実行される。
図5(b)~5(c)は、セット(S3)を説明するための図である。セット(S3)では、図5(b)に示すように、筒編物8(図5(a)参照)の中に、型9(たとえばジュラルミン製または樹脂製)が挿入される。型9として、平板状の型を例示できる。型9の挿入により上記の筒編物8が押し拡げられ、この筒編物8が拡径(換言すると、筒編物8の幅が拡大)する。筒編物8の拡径により、筒編物8の直径が拡大するだけでなく、筒編物8の開口が拡大して、所望の大きさ(筒編地3の開口4)になる。そして、型9が挿入された状態で、筒編物8に対し高温(たとえば60℃~120℃)の蒸気が十数秒間~数十秒間(たとえば15秒間~60秒間)吹き付けられる。これにより、筒編物8が拡径状態に保持されるようになり、この状態で、図5(c)に示すように、筒編みされた筒編地3が形成される。また、このセット(S3)により、しわ等が取り除かれ、筒編地3を美しい生地に仕上げることができる。
【0031】
また、このセット(S3)において、筒編物8の直径が、たとえば1.1倍~2.0倍に拡大して、筒編地3が得られる。筒編物8(拡径前)の直径を10cm~50cmとし、筒編地3(拡径後)の直径を15cm~60cmとするのが好ましい。
蒸気の吹き付け開始から所定時間が経過した後、筒編地3から、型9が取り外される。
なお、筒編み工程(S1)によって形成された筒編物8の直径や筒編物8の開口の大きさが、それぞれ所望の筒編地3の直径や開口4の大きさになっている場合には、セット(S3)は実行されない。
【0032】
以上により、この製造方法によれば、筒編み機を用いて原料繊維を筒編みすることにより編物を得るので、縫合工程や袋織を用いる筒状ネット2を形成できる。そのため、筒状ネット2を安価に形成できる。ゆえに、安価な筒状ネット2の製造方法、すなわち安価な樹木保護具1の製造方法を提供できる。
また、筒編み工程(S1)の後にセット(S3)を実行することにより、筒編物8を拡径できる。そして、セット(S3)における拡径度合いを調節することにより、筒状ネット2の直径および筒状ネット2の開口4を所望の大きさにすることができる。
【0033】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
また、筒状ネット2の原料繊維が、繊維表面に低融点成分が露出された高融点成分と混合紡糸された糸からなる場合(ポリエチレンとポリプロピレンとの複合紡糸、またはポリエチレンとポリエステルとの複合紡糸など)、低融点繊維と高融点繊維とが混繊された糸からなる場合、または低融点繊維と高融点繊維とが交編されてなる筒編み地の場合、筒編地3に低融点繊維と同等の温度の熱処理を施すことにより、熱融着が生じる。これにより、編み目が固定され、筒状ネット2にスナッグが発生することを抑制または防止できる。また、熱融着により、上開口部2aおよび下開口部2bのカールの発生も抑制または防止できる。
【0034】
同様に筒編地3をホットメルト樹脂溶液に浸漬した後、乾燥熱融着処理することで編み目を固定し、同様効果を得ることができる。
これらの熱融着により、樹木Tに装着されている状態の筒状ネット2の網目(開口4)が固定されることにより張り感が付与され、筒状ネット2の保形性を高めることができる。
【0035】
また、樹木保護具1において支柱6を廃止してもよい。この場合、筒状ネット2が樹木Tに装着された状態で、筒状ネット2が、樹木Tに接触して樹木Tによって支持される。
この場合、筒状ネット2の装着状態において、筒状ネット2の上開口部2aおよび下開口部2bの双方を開放状態としてもよいし、上開口部2aを縛る、上開口部2aおよび下開口部2bの双方を縛る等して閉塞するようにしてもよい。支柱6が廃止される場合であっても、樹木Tに装着されている状態の筒状ネット2を、容易に起立状態に保つことができる。
【0036】
また、筒状ネット2の上開口部2aを熱融着により閉塞するようにしてもよい。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 :樹木保護具
2 :筒状ネット
3 :筒編地
5 :繊維
8 :筒編物
T :樹木
図1
図2
図3
図4
図5