(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143591
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】道路形状認識装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/06 20120101AFI20220926BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B60W40/06
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044191
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】植松 巧
(72)【発明者】
【氏名】波切 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 成
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE06
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DC35Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
(57)【要約】
【課題】道路形状を認識できる技術を提供する。
【解決手段】カメラ122を有する車両10に搭載される道路形状認識装置110は、周辺情報認識部111と、周辺情報に基づいて、車両が走行している道路の形状を表す点列を設定する点列設定部112と、点列に含まれる各点の第1信頼度を設定する第1信頼度設定部113と、点列と第1信頼度と道路モデルが過去に算出した道路モデルとに基づいて、車両が走行している道路の形状を線で表す新たな道路モデルを算出する、道路モデル算出部114と、道路モデルの第2信頼度を設定する第2信頼度設定部と、道路モデルを出力する出力部117とを備える。道路モデル算出部は、第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける第2信頼度よりも低い場合、過去に設定した点列に基づいて道路モデルを算出し、第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける第2信頼度よりも高い場合、点列に基づいて道路モデルを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(122)を有する車両(10)に搭載される道路形状認識装置(110)であって、
周辺情報を認識する周辺情報認識部(111)であって、前記カメラが前記車両の周辺を撮像した画像である周辺画像に基づいて、道路の1以上の区画線のそれぞれの形状である画像情報を、前記周辺情報の少なくとも一部として認識できる周辺情報認識部(111)と、
前記周辺情報認識部によって認識された前記周辺情報に基づいて、前記車両が走行している道路の形状を表す点列を設定する点列設定部(112)と、
前記点列設定部が設定した前記点列に含まれる各点の第1信頼度を設定する第1信頼度設定部(113)と、
前記車両が走行している道路の形状を線で表す道路モデルを算出する道路モデル算出部(114)であって、前記点列設定部が設定した前記点列と、前記第1信頼度設定部が設定した前記第1信頼度と、前記道路モデルが過去に算出した道路モデルと、に基づいて、新たな道路モデルを算出する、道路モデル算出部と、
前記点列設定部が設定した前記点に設定される第1信頼度の大きさの範囲と同じ大きさの範囲内において、前記道路モデルの第2信頼度を設定する第2信頼度設定部(115)と、
前記道路モデルを出力する出力部(117)と、を備え、
前記第1信頼度設定部は、前記周辺情報が前記車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状を含む区間における点列に含まれる点の第1信頼度を、前記周辺情報が前記車両の左右両方の区画線の形状を含む区間の点列に含まれる点の第1信頼度よりも低く設定し、
前記第2信頼度設定部は、前記道路モデルが対応する区間の前記点列の第1信頼度が高いほど、前記道路モデルの第2信頼度が高くなるように、前記第2信頼度を設定し、
前記道路モデル算出部は、
前記点列に基づいて道路モデル候補を決定し、
前記車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルと前記道路モデル候補とが前記道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、
前記点列に含まれる点における前記第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記第2信頼度よりも低い場合、過去に設定した点列に基づいて前記道路モデルを算出し、
前記点列に含まれる点における前記第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記第2信頼度よりも高い場合、前記点列に基づいて前記道路モデルを算出する、道路形状認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路形状認識装置であって、
前記車両は、前記車両の周辺の物体までの距離を測距できる周辺物体センサ(124)を有し、
前記周辺情報認識部は、前記周辺物体センサの出力に基づいて、路側物の形状と、他車両の移動軌跡と、のうちの1つ以上であるセンサ情報を、前記周辺情報の一部として認識でき、
前記第1信頼度設定部は、前記車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状である前記画像情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の信頼度を、前記センサ情報に基づいて認識された区間の点列の信頼度よりも低く設定する、道路形状認識装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の道路形状認識装置であって、
前記道路モデル算出部は、過去に算出した道路モデルと前記道路モデル候補とが前記道路の幅方向について前記閾値距離以上離れていない区間において、前記点列設定部が新たに設定した点列と過去に設定した点列とに基づいて道路モデルを算出し、
前記新たに設定した点列と過去に設定した点列とに基づく前記道路モデルの算出は、前記点列設定部が新たに設定した点列と過去に設定した点列とに前記点列設定部が点列を設定した時刻に応じた重みを付して行われる、道路形状認識装置。
【請求項4】
カメラと物体までの距離を測距できる周辺物体センサを有する車両に搭載される道路形状認識装置であって、
前記カメラが前記車両の周辺を撮像した画像である周辺画像に基づいて、道路の1以上の区画線のそれぞれの形状である画像情報を含む周辺情報と、前記周辺物体センサの出力に基づいて、路側物の形状と他車両の移動軌跡とのうちの1つ以上であるセンサ情報を含む周辺情報と、を認識できる周辺情報認識部と、
前記周辺情報認識部によって認識された前記周辺情報に基づいて、前記車両が走行している道路の形状を表す点列を設定する点列設定部と、
前記点列設定部が設定した前記点列に含まれる各点の第1信頼度を設定する第1信頼度設定部と、
前記車両が走行している道路の形状を線で表す道路モデルを算出する道路モデル算出部であって、前記点列設定部が設定した前記点列と、前記第1信頼度設定部が設定した前記第1信頼度と、前記道路モデルが過去に算出した道路モデルと、に基づいて、新たな道路モデルを算出する、道路モデル算出部と、
前記点列設定部が設定した前記点に設定される第1信頼度の大きさの範囲と同じ大きさの範囲内の数値で、前記道路モデルの第2信頼度を設定する第2信頼度設定部と、
前記道路モデルを出力する出力部と、を備え、
前記第1信頼度設定部は前記車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状である前記画像情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の信頼度を、前記センサ情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の信頼度よりも低く設定し、
前記第2信頼度設定部は、前記点列の信頼度が低い区間における信頼度を前記点列の信頼度が高い区間における信頼度よりも低く設定し、
前記道路モデル算出部は、
前記点列に基づいて道路モデル候補を決定し、
前記車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルと前記道路モデル候補とが前記道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、
前記点列に含まれる点における前記信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記信頼度よりも低い場合、過去に設定した点列に基づいて前記道路モデルを算出し、
前記点列に含まれる点における前記信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記信頼度よりも高い場合、前記点列に基づいて前記道路モデルを算出する、道路形状認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路形状認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路形状認識装置として、カメラで認識した道路の区画線のエッジ点から道路形状を線で表す道路モデルを算出して道路形状を認識するものが知られている。特許文献1には、前回認識した道路モデルに基づいて、道路モデルを算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、過去に算出した道路モデルが必ずしも実際の道路形状に則しているとは限らない。過去に算出した道路認識モデルが誤っている場合、道路モデルが適切に算出できず、道路形状を認識できないおそれがある。そのため、道路形状を認識できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によればカメラ(122)を有する車両(10)に搭載される道路形状認識装置(110)が提供される。道路形状認識装置は、周辺情報を認識する周辺情報認識部(111)であって、前記カメラが前記車両の周辺を撮像した画像である周辺画像に基づいて、道路の1以上の区画線のそれぞれの形状である画像情報を、前記周辺情報の少なくとも一部として認識できる周辺情報認識部(111)と、前記周辺情報認識部によって認識された前記周辺情報に基づいて、前記車両が走行している道路の形状を表す点列を設定する点列設定部(112)と、前記点列設定部が設定した前記点列に含まれる各点の第1信頼度を設定する第1信頼度設定部(113)と、前記車両が走行している道路の形状を線で表す道路モデルを算出する道路モデル算出部(114)であって、前記点列設定部が設定した前記点列と、前記第1信頼度設定部が設定した前記第1信頼度と、前記道路モデルが過去に算出した道路モデルと、に基づいて、新たな道路モデルを算出する、道路モデル算出部と、前記道路モデル算出部が算出した前記点に設定される第1信頼度の大きさの範囲と同じ大きさの範囲内において、前記道路モデルの第2信頼度を設定する第2信頼度設定部(115)と、前記道路モデルを出力する出力部(117)と、を備える。前記第1信頼度設定部は、前記周辺情報が前記車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状を含む区間における点列に含まれる点の第1信頼度を、前記周辺情報が前記車両の左右両方の区画線の形状を含む区間の点列に含まれる点の第1信頼度よりも低く設定する。前記第2信頼度設定部は、前記道路モデルが対応する区間の前記点列の第1信頼度が高いほど、前記道路モデルの第2信頼度が高くなるように、前記第2信頼度を設定する。前記道路モデル算出部は、前記点列に基づいて道路モデル候補を決定し、前記車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルと前記道路モデル候補とが前記道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、前記点列に含まれる点における前記第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記第2信頼度よりも低い場合、過去に設定した点列に基づいて前記道路モデルを算出し、前記点列に含まれる点における前記第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記第2信頼度よりも高い場合、前記点列に基づいて前記道路モデルを算出する。
【0007】
本開示の第2の形態によれば、カメラと物体までの距離を測距できる周辺物体センサを有する車両に搭載される道路形状認識装置が提供される。道路形状認識装置は、前記カメラが前記車両の周辺を撮像した画像である周辺画像に基づいて、道路の1以上の区画線のそれぞれの形状である画像情報を含む周辺情報と、前記周辺物体センサの出力に基づいて、路側物の形状と他車両の移動軌跡とのうちの1つ以上であるセンサ情報を含む周辺情報と、を認識できる周辺情報認識部と、前記周辺情報認識部によって認識された前記周辺情報に基づいて、前記車両が走行している道路の形状を表す点列を設定する点列設定部と、前記点列設定部が設定した前記点列に含まれる各点の第1信頼度を設定する第1信頼度設定部と、前記車両が走行している道路の形状を線で表す道路モデルを算出する道路モデル算出部であって、前記点列設定部が設定した前記点列と、前記第1信頼度設定部が設定した前記第1信頼度と、前記道路モデルが過去に算出した道路モデルと、に基づいて、新たな道路モデルを算出する、道路モデル算出部と、前記道路モデル算出部が算出した前記点に設定される第1信頼度の大きさの範囲と同じ大きさの範囲内の数値で、前記道路モデルの第2信頼度を設定する第2信頼度設定部と、前記道路モデルを出力する出力部と、を備える。前記第1信頼度設定部は前記車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状である前記画像情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の信頼度を、前記センサ情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の信頼度よりも低く設定する。前記第2信頼度設定部は、前記点列の信頼度が低い区間における信頼度を前記点列の信頼度が高い区間における信頼度よりも低く設定する。前記道路モデル算出部は、前記点列に基づいて道路モデル候補を決定し、前記車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルと前記道路モデル候補とが前記道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、前記点列に含まれる点における前記信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記信頼度よりも低い場合、過去に設定した点列に基づいて前記道路モデルを算出し、前記点列に含まれる点における前記信頼度が過去に算出した道路モデルにおける前記信頼度よりも高い場合、前記点列に基づいて前記道路モデルを算出する。
【0008】
これらの形態の道路形状認識装置によれば、道路モデル算出部は、過去に算出した道路モデルと道路モデル候補とが道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、信頼度に応じて、道路モデルの算出の基準となる点列を過去に設定した点列と今回設定した点列とのいずれかに決定する。すなわち、過去に算出した道路モデルと道路モデル候補とが乖離している区間において、道路モデル算出部は、信頼度の高い点列に基づいて道路モデルを算出する。そのため、実際の道路形状に則して道路形状を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】自動運転制御システムの構成を示す概要図である。
【
図2】道路形状認識処理を表わすフローチャートである。
【
図3】周辺情報と点列と道路モデル候補の一例を示す図である。
【
図4】過去に算出した道路モデルの一例を示す図である。
【
図5】道路モデルの算出の一例を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態における自動運転制御システムの構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
図1に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。本実施形態において、自動運転制御システム100は、車両10の自動運転を実行する。本実施形態において、自動運転制御システム100は、道路形状認識装置110と、カメラ122と、運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。道路形状認識装置110と、運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。なお、車両10は、自動運転に限らず、運転手によって手動で行われる手動運転によって運転されてもよい。
【0011】
カメラ122は、自車両10の周囲を撮像して画像を取得する。
【0012】
道路形状認識装置110は、周辺情報認識部111と、第1信頼度設定部113と、点列設定部112と、道路モデル算出部114と、第2信頼度設定部115と、記憶部116と、出力部117と、を備える。道路形状認識装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0013】
周辺情報認識部111は、カメラ122が撮像した画像である周辺画像に基づいて画像情報を周辺情報の少なくとも一部として認識できる。「画像情報」とは、道路の1以上の区画線のそれぞれの形状である。「周辺情報」とは、画像情報や、第2実施形態で説明するセンサ情報を含む、車両10の周辺に関する情報である。本実施形態において、周辺情報認識部111は、カメラ122が撮像した画像から、走行している道路の左右の区画線の存在とその位置等を認識する。なお、周辺情報認識部111は、例えば、カルマンフィルタや最小二乗法を用いて、これらの情報から区画線の形状等を認識する。
【0014】
点列設定部112は、周辺情報認識部111によって認識された周辺情報に基づいて、車両10が走行している道路の形状を表す点列を設定する。本実施形態において、点列設定部は、周辺情報認識部111によって認識された道路の区画線の形状に基づいて点列の座標位置を推定する。
【0015】
第1信頼度設定部113は、点列設定部が設定した点列に含まれる各点のそれぞれの第1信頼度を設定する。「第1信頼度」とは各点が示す道路の形状の確かさの度合いを示す。第1信頼度が高いほど、形状を信頼できる可能性が高い。第1信頼度設定部113は、点列の設定に用いられた周辺情報に応じて第1信頼度を設定することができる。本実施形態において、第1信頼度設定部113は、周辺情報が車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状を含む区間における点列に含まれる点の第1信頼度を、周辺情報が車両の左右両方の区画線の形状を含む区間の点列に含まれる点の第1信頼度よりも低く設定する。
【0016】
道路モデル算出部114は、車両が走行している道路の形状を線で表す道路モデルを算出する。道路モデル算出部114は、点列設定部が設定した点列と、第1信頼度設定部が設定した第1信頼度と、道路モデルが過去に算出した道路モデルと、に基づいて、道路モデルを算出する。道路モデルの算出の詳細については後述する。
【0017】
第2信頼度設定部115は、第1信頼度設定部が設定する第1信頼度の大きさの範囲と同じ大きさの範囲内の数値で、道路モデルの第2信頼度を設定する。「第2信頼度」とは道路モデルが示す道路の形状の確かさの度合いを示す。第2信頼度が高いほど、形状を信頼できる可能性が高い。第2信頼度設定部115は、道路モデルが対応する区間の点列の第1信頼度が高いほど、道路モデルの第2信頼度が高くなるように、第2信頼度を設定する。
【0018】
記憶部116は、設定した点列や、算出した道路モデル、道路モデルの第2信頼度を記憶する。
【0019】
出力部117は、道路モデル算出部114が算出した道路モデルを、車載ネットワーク250を通じて運転制御部210等に出力する。
【0020】
運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。運転制御部210は、例えば、点列設定部112が設定した道路形状を表す点列を用いて駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。
【0021】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0022】
制動力制御ECU230は、車両の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0023】
操舵制御ECU240は、車両の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、運転者が少量の力でステアリングを操作でき、車両の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0024】
図2に示す道路形状認識処理は、道路モデル算出部114が車両10の走行路線の道路形状を認識する一連の処理である。この処理は車両10の走行中、道路形状認識装置110により繰り返し実行される処理であり、例えば、100ms毎に繰り返し実行される処理である。
【0025】
ステップS100において、周辺情報認識部111は、周辺情報を認識する。本実施形態において、周辺情報認識部111は、カメラ122が撮像した画像である周辺画像に基づいて画像情報を周辺情報の少なくとも一部として認識する。
【0026】
ステップS110において、点列設定部112は、ステップS100で認識した周辺情報に基づき、道路形状を点で表す点列を設定する。
【0027】
ステップS120において、第1信頼度設定部113は、ステップS110で設定した点列に含まれる各点の第1信頼度を、ステップS100で認識した周辺情報に基づいて設定する。
【0028】
ステップS130において、道路モデル算出部114は、ステップS110において設定した点列に基づいて道路モデル候補を決定する。「道路モデル候補」とは、道路形状を表す線の候補である。
【0029】
ステップS140において、道路モデル算出部114は、道路モデルを算出する。本実施形態において、道路モデル算出部114は、車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルとステップS130において決定した道路モデル候補とが道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間において、その区間におけるステップS120で設定した点列に含まれる点における第1信頼度とその区間における過去に算出した道路モデルにおける第2信頼度との関係に応じて新たな道路モデルを算出する。点列に含まれる点における第1信頼度が、過去に算出した道路モデルにおける第2信頼度よりも低い場合、道路モデル算出部114は、過去に設定した点列に基づいて、新たな道路モデルを算出する。一方、点列に含まれる点における第1信頼度が過去に算出した道路モデルにおける第2信頼度よりも高い場合、道路モデル算出部114は、ステップS110において設定した点列に基づいて、新たな道路モデルを算出する。
【0030】
ステップS150において、第2信頼度設定部115は、ステップS140において算出した道路モデルに第2信頼度を設定する。なお、この処理はステップS140よりも前に行っても良い。この場合、道路モデル算出部114は、前回の道路形状認識処理においてステップS140で算出した新たな道路モデルの第2信頼度を設定する。
【0031】
図3に示すように、道路形状認識処理におけるステップS100(
図2参照)において認識した周辺情報は、車両10が走行している車線Ln1の右側の区画線LnRの形状と左側の区画線LnLの形状である。区画線LnRの形状は、点Pr1~点Pr7の点列で示される。区画線LnLの形状は、点Pl1~点Pl4の点列で示される。周辺情報認識部111は、撮影画像を鳥瞰図に変換して画像情報を認識する。そのため、車両10から遠方であるほど、道路の勾配や車両10のピッチングによって、周辺情報認識部111が認識する画像情報は実際の区画線の形状から乖離する傾向がある。
【0032】
図3において、点列設定部112がステップS110(
図2参照)において周辺情報に基づいて設定した点列に含まれる各点P1~P7は×印で表される。点列設定部112は、例えば、周辺情報が車線Ln1の左右の区画線の形状を含む区間については、区画線LnRの形状を示す点Pr1~点Pr4の点列と区画線LnLの形状を示す点Pl1~点Pl4とのそれぞれ対応する位置における点の車線Ln1の幅方向における中央に点列を設定する。また、周辺情報が車線Ln1の左右いずれか一方のみの区画線の形状を含む区間については、区画線LnRの形状を示す点Pr5~点Pr7に基づいて点列を設定する。そのため、
図3に示すように、点列設定部112が設定した点列は、区画線LnR側に曲がっている。
【0033】
図3において、道路モデル算出部114がステップS130(
図2参照)において決定した道路モデル候補MC1は破線で表される。道路モデル算出部は、点列に基づいて道路モデル候補を決定する。そのため、道路モデル候補MC1は、区画線LnR側に曲がっている。
【0034】
図4に示す前回の道路形状認識処理におけるステップS100(
図2参照)で認識した周辺情報は、車両10が走行している車線Ln1の右側の区画線LnRの形状と左側の区画線LnLの形状である。
図4に示すように、区画線LnRの形状は、点Pr1~点Pr7の点列で示される。区画線LnLの形状は、点Pl1~点Pl7の点列で示される。
【0035】
図4において、点列設定部112が前回の道路形状認識処理におけるステップS110(
図2参照)において周辺情報に基づいて設定した点列に含まれる各点P01~P07は△印で表される。
図4において、道路モデル算出部114が前回の道路形状認識処理におけるステップS140(
図2参照)において算出した道路モデルM0は一点鎖線で表される。
【0036】
図5に示すように、車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルM0と道路モデル候補MC1との距離dが道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間S2における道路モデルの算出について説明する。区間S2における点列に含まれる点は、周辺情報が車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状を含む区間における点列に含まれる点である。区間S2における過去に算出した道路モデルは、周辺情報が車両の左右両方の区画線の形状を含む区間の点列に含まれる点P05~P07(
図4参照)に基づいて算出されている。そのため、点列に含まれる点P05~P07における第1信頼度は過去に算出した道路モデルM0における第2信頼度よりも低い。従って、道路モデル算出部114は、区間S2において、過去に設定した点列に基づいて道路モデルを算出する。
【0037】
道路モデル算出部114は、車両の前方の道路の区間のうち、過去に算出した道路モデルM0と道路モデル候補MC1とが道路の幅方向について閾値距離以上離れていない区間S1においては、今回の道路認識処理のステップS110において設定した点列に基づいて道路モデルを算出する。すなわち、道路モデル算出部は、ステップS140(
図2参照)においては、ステップS130で決定した道路モデル候補MC1を道路モデルとして採用する。
【0038】
図6に実線で示すように、道路モデル算出部114は、道路モデルM1を算出する。
【0039】
以上で説明した本実施形態の道路形状認識装置110によれば、道路モデル算出部114は、過去に算出した道路モデルM0と道路モデル候補MC1とが道路の幅方向について閾値距離以上離れている区間S2において、信頼度に応じて、道路モデルM1の算出の基準となる点列を過去に設定した点列と今回設定した点列とのいずれかに決定する。例えば、過去に算出した道路モデルM0が、左右両方の区画線の形状に基づいて算出され、今回決定した道路モデル候補MC1が、左右片側のみの区画線の形状に基づいて決定された場合、道路モデル算出部114は、当該区間S2において、過去に設定した点列に基づいて道路モデルM1を算出する。また、過去に算出した道路モデルM0が、左右片側のみの区画線の形状に基づいて算出され、今回決定した道路モデル候補MC1が、左右両方の区画線の形状に基づいて決定された場合、道路モデル算出部114は、当該区間S2において、今回設定した点列に基づいて道路モデルM1を算出する。すなわち、過去に算出した道路モデルM0と道路モデル候補MC1とが乖離している区間S2において、道路モデル算出部114は、信頼度の高い点列に基づいて道路モデルM1を算出する。そのため、実際の道路形状に則して道路形状を認識できる。
【0040】
B.第2実施形態:
図7に示す第2実施形態の自動運転制御システム100Bの構成は、周辺物体センサ124を備える点が第1実施形態と異なり、他の構成は同一である。
【0041】
周辺物体センサ124は、自車両10の周辺の物体までの距離を測距する。周辺物体センサ124として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、Lidar(Light Detection and Ranging)、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。
【0042】
本実施形態において、周辺情報認識部111は、周辺物体センサ124の出力に基づいて、路側物の形状と、他車両の移動軌跡と、のうちの1つ以上であるセンサ情報を、周辺情報の一部として認識する。
【0043】
図8に示す周辺情報は、車両10の前方を走行する他車両20の移動軌跡を示すセンサ情報である。
図8において、道路モデルM2は一点鎖線で表される。
【0044】
本実施形態において、第1信頼度設定部113部は、車両の左右のいずれか一方のみの区画線の形状である画像情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の第1信頼度を、センサ情報に基づいて認識された区間の点列の第1信頼度よりも低く設定する。
【0045】
例えば、過去に算出した道路モデルが道路モデルM2(
図8参照)であり、今回決定した道路モデル候補が道路モデル候補MC1(
図5参照)の場合を例として、道路モデルの算出を説明する。過去に算出した道路モデルM2(
図8参照)が、Lidarの検出した路側物の形状や他車両の移動軌跡に基づいて算出され、今回決定した道路モデル候補MC1(
図5参照)が、左右片側のみの区画線の形状に基づいて決定された場合、道路モデル算出部114は、当該区間において、過去に設定した点列に基づいて道路モデルM2を算出する。
【0046】
また、過去に算出した道路モデルが道路モデル候補MC1(
図5参照)であり、今回決定した道路モデル候補が道路モデルM2(
図8参照)の場合を例として、道路モデルの算出を説明する。過去に算出した道路モデルである道路モデル候補MC1(
図5参照)が、左右片側のみの区画線の形状に基づいて算出され、今回決定した道路モデル候補である道路モデルM2(
図8参照)が、Lidarの検出した路側物の形状や他車両の移動軌跡に基づいて決定された場合、道路モデル算出部114は、当該区間において、今回設定した点列に基づいて道路モデルM2を算出する。
【0047】
以上で説明した本実施形態の第1信頼度設定部113によれば、第1信頼度設定部113は、車両10の左右のいずれか一方のみの区画線の形状である画像情報に基づいて認識された区間の点列に含まれる点の第1信頼度を、センサ情報に基づいて認識された区間の点列の第1信頼度よりも低く設定する。左右片側のみの区画線の形状に基づいて設定した点列に基づいて算出される道路モデルよりも、Lidarの検出した路側物の形状や他車両20の移動軌跡に基づいて算出される道路モデルの方が、実際の道路形状に則している。そのため、この形態によれば、実際の道路形状に則して道路形状を認識できる。
【0048】
C.その他の実施形態:
(C1)上述した実施形態において、道路モデル算出部114は、過去に算出した道路モデルM0と道路モデル候補MC1とが道路の幅方向について閾値距離以上離れていない区間S1において、今回の道路認識処理において設定した点列に基づいて道路モデルM1を算出している。これに限らず、道路モデル算出部114は、点列設定部112が今回の道路形状認識処理において新たに設定した点列と過去に設定した点列とに基づいて道路モデルM1を算出してもよい。道路モデル算出部114は、新たに設定した点列と過去に設定した点列とに基づく道路モデルM1の算出は、点列設定部112が新たに設定した点列と過去に設定した点列とに点列設定部112が点列を設定した時刻に応じた重みを付して道路モデルM1を算出できる。道路モデル算出部114は、例えば、点列を設定した時刻が現在時刻に近い値ほど重くなるよう重み付けを行うことができる。これにより、過去に設定した点列よりも、新たに設定した点列に基づいて道路モデルを算出できる。
【0049】
(C2)第2実施形態において、第1信頼度設定部113は、車両10の左右両方の区画線の形状である画像情報に基づいて認識された区間S2の点列に含まれる点の第1信頼度を、センサ情報に基づいて認識された区間S2の点列の第1信頼度よりも高く設定してもよい。
【0050】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…車両、20…他車両、100、100B…自動運転制御システム、110…道路形状認識装置、111…周辺情報認識部、112…点列設定部、113…第1信頼度設定部、114…道路モデル算出部、115…第2信頼度設定部、116…記憶部、117…出力部、122…カメラ、124…周辺物体センサ、210…運転制御部、220…駆動力制御ECU、230…制動力制御ECU、240…操舵制御ECU、250…車載ネットワーク