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特開2022-143610多形式データ解析システムおよび多形式データ解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143610
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】多形式データ解析システムおよび多形式データ解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 5/02 20060101AFI20220926BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220926BHJP
   G06N 3/08 20060101ALI20220926BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20220926BHJP
   G06F 16/2458 20190101ALI20220926BHJP
【FI】
G06N5/02 150
G06N20/00
G06N3/08
G06F16/28
G06F16/2458
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044220
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】501158538
【氏名又は名称】三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 晴香
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175FB04
(57)【要約】
【課題】多形式データをまとめて解析できるようにする。
【解決手段】形式変換部112は、互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する。正規化部113は、前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する。出力部115は、前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部と、
を備える多形式データ解析システム。
【請求項2】
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値を基に前記規定数値列を生成する
請求項1に記載の多形式データ解析システム。
【請求項3】
前記規定数値列に含まれる各数値は、規定進数で表される数値であり、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の進数を設定進数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記設定進数の数値から前記規定進数の数値に変換する
請求項2に記載の多形式データ解析システム。
【請求項4】
前記規定数値列は、規定個数の数値から成り、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに個別数値列に含まれる数値の個数を設定個数として示し、
前記形式変換部は、前記形式情報データから前記複数の個別数値列に対応する複数の設定個数を抽出し、前記複数の設定個数の最小公倍数を前記規定個数として算出し、個別数値列ごとに前記規定個数を前記設定個数で割って商を算出し、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記商が示す数と同じ個数に増やすことによって前記1つ以上の数値を前記規定個数の数値に変換する
請求項2または請求項3に記載の多形式データ解析システム。
【請求項5】
前記多形式データ解析システムは、
複数のカテゴリのうちの特定のカテゴリを識別するカテゴリ識別子を示すカテゴリデータを受け付ける受付部と、
前記特定のカテゴリのための個別数値列と、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列と、を生成することによって、前記複数の個別数値列を得る数値化部と、を備える
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項6】
前記特定のカテゴリのための個別数値列が肯定値を示し、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列が否定値を示す
請求項5に記載の多形式データ解析システム。
【請求項7】
前記形式情報データは、個別数値列ごとに、前記個別数値列に含まれる各数値の桁数である設定桁数と、個別数値列に含まれる各数値の進数である設定進数と、を示し、
前記正規化部は、前記規定数値列に対応する個別数値列の設定桁数と前記規定数値列に対応する個別数値列の設定進数とを前記形式情報データから抽出し、抽出された設定進数を底とし抽出された設定桁数を冪指数として求まる冪から1を引いた値を除数として算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を前記除数で割って商を算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を算出された商に置き換えることによって前記規定数値列を正規化する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項8】
前記多形式データ解析システムは、
前記複数の正規化数値列を前記2次元データとして用いて2次元画像を生成する可視化部を備え、
前記出力部は、前記解析結果として前記2次元画像を表示する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項9】
前記多形式データ解析システムは、
前記複数の正規化数値列を、畳み込みニューラルネットワークのモデルの入力となる前記2次元データとして用いて、前記モデルを演算するモデル適用部と、
前記モデルの演算結果を表す演算結果グラフを生成する可視化部と、を備え、
前記出力部は、前記解析結果として前記演算結果グラフを表示する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項10】
前記モデル適用部は、前記モデルの演算において正規化数値列ごとに1次元畳み込みを実行する
請求項9に記載の多形式データ解析システム。
【請求項11】
前記多形式データ解析システムは、
2次元データとラベルとの組であるデータセットを学習データにして前記モデルを構築するモデル構築部を備え、
前記モデル適用部は、前記モデルを演算することによって、前記モデルの入力となった前記2次元データに対するラベルの情報を前記演算結果として得る
請求項9または請求項10に記載の多形式データ解析システム。
【請求項12】
前記モデル構築部は、前記データセットに含まれる2次元データに対応する1つ以上の知見データを受け付け、前記1つ以上の知見データに示される文書に基づいて前記データセットに含まれるラベルを決定する
請求項11に記載の多形式データ解析システム。
【請求項13】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部として
コンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多形式データの解析に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器の状態を確認するために複数種類のセンサが利用される。また、センサによって、計測の時間間隔、計測によって得られる値の個数、および、計測によって得られる値の種類などが異なる。そのため、互いに異なる形式を有する複数のセンサデータを解析する必要がある。
しかし、互いに異なる形式を有する複数のセンサデータをまとめて解析するための手法が確立されていない。さらに、センサデータのような時系列データと共に数値データまたはカテゴリデータなどのデータを解析するための手法が存在しない。
【0003】
特許文献1は、センサデータの並び順に対する依存関係をなくすために入力層、全結合層、複数の畳み込み層、出力層の順番で畳み込みニューラルネットワークの演算を行うことを開示している。
しかし、特許文献1は、互いに異なる形式を有する複数のセンサデータをまとめて解析するための手法を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-027375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、多形式データをまとめて解析できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の多形式データ解析システムは、
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値を基に前記規定数値列を生成する。
【0008】
前記規定数値列に含まれる各数値は、規定進数で表される数値であり、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の進数を設定進数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記設定進数の数値から前記規定進数の数値に変換する。
【0009】
前記規定数値列は、規定個数の数値から成り、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに個別数値列に含まれる数値の個数を設定個数として示し、
前記形式変換部は、前記形式情報データから前記複数の個別数値列に対応する複数の設定個数を抽出し、前記複数の設定個数の最小公倍数を前記規定個数として算出し、個別数値列ごとに前記規定個数を前記設定個数で割って商を算出し、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記商が示す数と同じ個数に増やすことによって前記1つ以上の数値を前記規定個数の数値に変換する。
【0010】
前記多形式データ解析システムは、
複数のカテゴリのうちの特定のカテゴリを識別するカテゴリ識別子を示すカテゴリデータを受け付ける受付部と、
前記特定のカテゴリのための個別数値列と、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列と、を生成することによって、前記複数の個別数値列を得る数値化部と、を備える。
【0011】
前記特定のカテゴリのための個別数値列が肯定値を示し、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列が否定値を示す。
【0012】
前記形式情報データは、個別数値列ごとに、前記個別数値列に含まれる各数値の桁数である設定桁数と、個別数値列に含まれる各数値の進数である設定進数と、を示し、
前記正規化部は、前記規定数値列に対応する個別数値列の設定桁数と前記規定数値列に対応する個別数値列の設定進数とを前記形式情報データから抽出し、抽出された設定進数を底とし抽出された設定桁数を冪指数として求まる冪から1を引いた値を除数として算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を前記除数で割って商を算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を算出された商に置き換えることによって前記規定数値列を正規化する。
【0013】
前記多形式データ解析システムは、
前記複数の正規化数値列を前記2次元データとして用いて2次元画像を生成する可視化部を備え、
前記出力部は、前記解析結果として前記2次元画像を表示する。
【0014】
前記多形式データ解析システムは、
前記複数の正規化数値列を、畳み込みニューラルネットワークのモデルの入力となる前記2次元データとして用いて、前記モデルを演算するモデル適用部と、
前記モデルの演算結果を表す演算結果グラフを生成する可視化部と、を備え、
前記出力部は、前記解析結果として前記演算結果グラフを表示する。
【0015】
前記モデル適用部は、前記モデルの演算において正規化数値列ごとに1次元畳み込みを実行する。
【0016】
前記多形式データ解析システムは、
2次元データとラベルとの組であるデータセットを学習データにして前記モデルを構築するモデル構築部を備え、
前記モデル適用部は、前記モデルを演算することによって、前記モデルの入力となった前記2次元データに対するラベルの情報を前記演算結果として得る。
【0017】
前記モデル構築部は、前記データセットに含まれる2次元データに対応する1つ以上の知見データを受け付け、前記1つ以上の知見データに示される文書に基づいて前記データセットに含まれるラベルを決定する。
【0018】
本開示の多形式データ解析プログラムは、
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部として
コンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、多形式データを2次元データに変換することができる。その結果、多形式データをまとめて解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1における多形式データ解析システム100の構成図。
図2】実施の形態1における多形式データ解析方法のフローチャート。
図3】実施の形態1におけるセンサデータの形式表現の一例を示す図。
図4】実施の形態1における多形式データ191および形式情報データ192を示す図。
図5】実施の形態1におけるステップS120のフローチャート。
図6】実施の形態1におけるステップS121の具体例を示す図。
図7】実施の形態1におけるステップS122の具体例を示す図。
図8】実施の形態1におけるステップS123の具体例を示す図。
図9】実施の形態1におけるステップS130の具体例を示す図。
図10】実施の形態1における2次元画像193を示す図。
図11】実施の形態2における多形式データ解析システム100の構成図。
図12】実施の形態2における多形式データ解析方法のフローチャート。
図13】実施の形態2における形式情報データ192およびカテゴリデータ194を示す図。
図14】実施の形態2におけるステップS222の具体例を示す図。
図15】実施の形態3における多形式データ解析システム100の構成図。
図16】実施の形態3における多形式データ解析方法(構築)のフローチャート。
図17】実施の形態3における多形式データ解析方法(適用)のフローチャート。
図18】実施の形態3におけるCNNモデル195の構成図。
図19】実施の形態3における1次元畳み込みの説明図。
図20】実施の形態3における演算結果グラフ(196、197)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。
【0022】
実施の形態1.
多形式データ解析システム100について、図1から図10に基づいて説明する。
【0023】
***構成の説明***
図1に基づいて、多形式データ解析システム100の構成を説明する。
多形式データ解析システム100は、プロセッサ101とメモリ102と補助記憶装置103と通信装置104と入出力インタフェース105といったハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
但し、多形式データ解析システム100は、2台以上のコンピュータで構成されてもよい。
【0024】
プロセッサ101は、演算処理を行うICであり、他のハードウェアを制御する。例えば、プロセッサ101は、CPU、DSPまたはGPUである。
ICは、Integrated Circuitの略称である。
CPUは、Central Processing Unitの略称である。
DSPは、Digital Signal Processorの略称である。
GPUは、Graphics Processing Unitの略称である。
【0025】
メモリ102は揮発性または不揮発性の記憶装置である。メモリ102は、主記憶装置またはメインメモリとも呼ばれる。例えば、メモリ102はRAMである。メモリ102に記憶されたデータは必要に応じて補助記憶装置103に保存される。
RAMは、Random Access Memoryの略称である。
【0026】
補助記憶装置103は不揮発性の記憶装置である。例えば、補助記憶装置103は、ROM、HDDまたはフラッシュメモリである。補助記憶装置103に記憶されたデータは必要に応じてメモリ102にロードされる。
ROMは、Read Only Memoryの略称である。
HDDは、Hard Disk Driveの略称である。
【0027】
通信装置104はレシーバ及びトランスミッタである。例えば、通信装置104は通信チップまたはNICである。多形式データ解析システム100の通信は通信装置104を用いて行われる。
NICは、Network Interface Cardの略称である。
【0028】
入出力インタフェース105は、入力装置および出力装置が接続されるポートである。例えば、入出力インタフェース105はUSB端子であり、入力装置はキーボードおよびマウスであり、出力装置はディスプレイである。多形式データ解析システム100の入出力は入出力インタフェース105を用いて行われる。
USBは、Universal Serial Busの略称である。
【0029】
多形式データ解析システム100は、受付部111と形式変換部112と正規化部113と可視化部114と出力部115といった要素を備える。これらの要素はソフトウェアで実現される。
【0030】
補助記憶装置103には、受付部111と形式変換部112と正規化部113と可視化部114と出力部115としてコンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラムが記憶されている。多形式データ解析プログラムは、メモリ102にロードされて、プロセッサ101によって実行される。
補助記憶装置103には、さらに、OSが記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ102にロードされて、プロセッサ101によって実行される。
プロセッサ101は、OSを実行しながら、多形式データ解析プログラムを実行する。
OSは、Operating Systemの略称である。
【0031】
多形式データ解析プログラムの入出力データは記憶部190に記憶される。
メモリ102は記憶部190として機能する。但し、補助記憶装置103、プロセッサ101内のレジスタおよびプロセッサ101内のキャッシュメモリなどの記憶装置が、メモリ102の代わりに、又は、メモリ102と共に、記憶部190として機能してもよい。
【0032】
多形式データ解析システム100は、プロセッサ101を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。
【0033】
多形式データ解析プログラムは、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録(格納)することができる。
【0034】
***動作の説明***
多形式データ解析システム100の動作の手順は多形式データ解析方法に相当する。また、多形式データ解析システム100の動作の手順は多形式データ解析プログラムによる処理の手順に相当する。
【0035】
図2に基づいて、多形式データ解析方法を説明する。
ステップS110において、利用者は、多形式データおよび形式情報データを多形式データ解析システム100に入力する。
そして、受付部111は、多形式データおよび形式情報データを受け付ける。
【0036】
多形式データは、互いに異なる形式を有する複数のデータである。多形式データに含まれる各データを「対象データ」と称する。
各対象データは、1つ以上の数値から成る数値列を示す。各対象データの数値列を「個別数値列」と称する。
【0037】
複数のセンサから得られる複数のセンサデータは、多形式データの一例である。
センサデータは、時系列データまたは数値データであり、対象データの一例である。
数値の桁数、数値の進数、数値の個数、数値列における時間間隔、および、数値列における時間長は、データ形式を特定する要素の一例である。
【0038】
形式情報データは、複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す。
【0039】
なお、センサ別にセンサデータの形式を示すセンサ情報データが記憶部190に予め記憶されてもよい。その場合、受付部111は、対象データとしてセンサデータを受け付け、受け付けたセンサデータに対応するセンサ情報データを選択し、選択したセンサ情報データからセンサデータの形式を取得する。取得される形式は形式情報データに示される形式として扱われる。
【0040】
図3に、センサデータの形式表現の一例を示す。
例えば、センサデータの形式は、図3のように表され、桁数と進数と個数とを特定する。
進数が“bit”で表される場合、数値の進数は2進数である。
進数が“byte”で表される場合、数値の進数は16進数である。また、1byteは2文字に相当するため、「N×2」が桁数となる。
個数の記載が無い場合、個数は1である。
多くのセンサデータは、時系列の数値が左から並んでいる。
【0041】
図4に、多形式データ191および形式情報データ192を示す。
多形式データ191は多形式データの一例であり、形式情報データ192は形式情報データの一例である。
時系列A、時系列Bおよび時系列Cは、時系列データである。
数値Aは、数値データである。
時系列A、時系列B、時系列Cおよび数値Aは、桁数と進数と個数といった形式が互いに異なっている。
【0042】
図2に戻り、ステップS120から説明を続ける。
ステップS120において、形式変換部112は、形式情報データに基づいて、多形式データを規定形式データに変換する。
つまり、形式変換部112は、形式情報データに基づいて、複数の個別数値列のそれぞれを規定数値列に変換する。
規定数値列は、規定の形式を有する数値列である。具体的には、規定数値列は、規定個数の数値から成る。また、規定数値列に含まれる各数値は、規定進数で表される数値である。規定個数および規定進数について後述する。
【0043】
図5に基づいて、ステップS120の手順を説明する。
形式情報データは、個別数値列(対象データ)ごとに設定桁数と設定進数と設定個数とを示す。
設定桁数は、個別数値列に含まれる各数値の桁数である。
設定進数は、個別数値列に含まれる各数値の進数である。
設定個数は、個別数値列に含まれる数値の個数である。
【0044】
ステップS121において、形式変換部112は、個別数値列ごとに、個別数値列を設定桁数で分割する。これにより、個別数値列ごとに、1つ以上の数値が得られる。
【0045】
ステップS121で得られる1つ以上の数値から成る数値列を「分割数値列」と称する。
【0046】
図6に、ステップS121の具体例を示す。
時系列Aの設定桁数は「2」である。そのため、形式変換部112は、時系列Aの個別数値列を2桁ずつに分割する。これにより、32個の数値が得られる。
時系列Bの設定桁数は「4」である。そのため、形式変換部112は、時系列Bの個別数値列を4桁ずつに分割する。これにより、16個の数値が得られる。
時系列Cの設定桁数は「8」である。そのため、形式変換部112は、時系列Cの個別数値列を8桁ずつに分割する。これにより、4個の数値が得られる。
数値Aの設定桁数は「2」である。そのため、形式変換部112は、数値Aの個別数値列を2桁ずつに分割する。これにより、1個の数値が得られる。
【0047】
図5に戻り、ステップS122から説明を続ける。
ステップS122において、形式変換部112は、個別数値列ごとに、1つ以上の数値のそれぞれを、設定進数の数値から規定進数の数値に変換する。
規定進数は、予め決められた進数である。規定進数の具体例は10進数である。
【0048】
ステップS122で得られる1つ以上の数値から成る数値列を「進数数値列」と称する。
【0049】
図7に、ステップS122の具体例を示す。規定進数は10進数である。
時系列Aの設定進数は「16」である。そのため、形式変換部112は、時系列Aの1つ以上の数値のそれぞれを、16進数の数値から10進数の数値に変換する。例えば、16進数の「05」は10進数の「5」に変換される。
時系列Bの設定進数は「16」である。そのため、形式変換部112は、時系列Bの1つ以上の数値のそれぞれを、16進数の数値から10進数の数値に変換する。例えば、16進数の「14FA」は10進数の「5370」に変換される。
時系列Cの設定進数は「2」である。そのため、形式変換部112は、時系列Cの1つ以上の数値のそれぞれを、2進数の数値から10進数の数値に変換する。例えば、2進数の「00000000」は10進数の「0」に変換される。
数値Aの設定進数は「16」である。そのため、形式変換部112は、数値Aの1つ以上の数値のそれぞれを、16進数の数値から10進数の数値に変換する。例えば、16進数の「08」は10進数の「8」に変換される。
【0050】
図5に戻り、ステップS123から説明を続ける。
ステップS123において、形式変換部112は、個別数値列ごとに、1つ以上の数値を規定個数の数値に変換する。
【0051】
具体的には、形式変換部112は以下のように動作する。
まず、形式変換部112は、形式情報データから、複数の個別数値列に対応する複数の設定個数を抽出する。
次に、形式変換部112は、複数の設定個数の最小公倍数を算出する。算出される最小公倍数が「規定個数」である。
次に、形式変換部112は、個別数値列ごとに、規定個数を設定個数で割って商を算出する。
そして、形式変換部112は、個別数値列ごとに、1つ以上の数値のそれぞれを商が示す数と同じ個数に増やす。
【0052】
ステップS123で得られる規定個数の数値を「個数数値列」と称する。個数数値列は規定数値列である。
【0053】
図8に、ステップS123の具体例を示す。
時系列Aの設定個数は「32」である。時系列Bの設定個数は「16」である。時系列Cの設定個数は「4」である。数値Aの設定個数は「1」である。これらの設定個数の最小公倍数は「32」である。そのため、規定個数は「32」である。
規定個数「32」を時系列Aの設定個数「32」で割ると商「1」が得られる。そのため、形式変換部112は、時系列Aの各数値の個数を増やさない。
規定個数「32」を時系列Bの設定個数「16」で割ると商「2」が得られる。そのため、形式変換部112は、時系列Bの各数値を2個に増やす。例えば、形式変換部112は、時系列Bの1つ目の数値「5370」を2個に増やす。
規定個数「32」を時系列Cの設定個数「4」で割ると商「8」が得られる。そのため、形式変換部112は、時系列Cの各数値を8個に増やす。例えば、形式変換部112は、時系列Cの1つ目の数値「0」を8個に増やす。
規定個数「32」を数値Aの設定個数「1」で割ると商「32」が得られる。そのため、形式変換部112は、数値Aの各数値を32個に増やす。つまり、形式変換部112は、数値Aの1個の数値「8」を32個に増やす。
【0054】
図5に戻り、ステップS120の手順を補足する。
ステップS122とS123の順番は入れ替えても構わない。
つまり、形式変換部112は、分割数値列(S121)を個数数値列(S123)に変換した後に、個数数値列(S123)を進数数値列(S122)に変換してもよい。この場合、進数数値列(S122)が規定数値列となる。
【0055】
図2に戻り、ステップS130から説明を続ける。
ステップS130において、正規化部113は、規定形式データを正規化する。
つまり、正規化部113は、複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化数値列に変換する。
正規化数値列は、正規化された規定数値列である。
【0056】
具体的には、正規化部113は、各規定数値列を以下のように正規化数値列に変換する。
まず、正規化部113は、規定数値列に対応する個別数値列の設定桁数と、規定数値列に対応する個別数値列の設定進数と、を形式情報データから抽出する。
次に、正規化部113は、抽出された設定進数を底とし、抽出された設定桁数を冪指数として、冪を算出する。そして、正規化部113は、算出した冪から1を引いた値を算出する。つまり、設定進数が「x」であり、設定桁数が「y」である場合、正規化部113は、「x-1」を算出する。算出される値は規定数値列における数値の最大値である。
次に、正規化部113は、算出された最大値を除数にして、規定数値列に含まれる各数値を除数で割って商を算出する。算出される商は0以上1以下の値である。
そして、正規化部113は、規定数値列に含まれる各数値を、算出された商に置き換える。
【0057】
図9に、ステップS130の具体例を示す。
時系列Aの設定桁数は「2」であり、時系列Aの設定進数は「16」である。したがって、時系列Aの規定数値列における数値の最大値は「255(=16-1)」である。そのため、正規化部113は、時系列Aの規定数値列の各数値を「255」で割って商に置き換える。例えば、「5」は「0.02(=5/255)」に置き換えられる。
時系列Bの設定桁数は「4」であり、時系列Bの設定進数は「16」である。したがって、時系列Bの規定数値列における数値の最大値は「65535(=16-1)」である。そのため、正規化部113は、時系列Bの規定数値列の各数値を「65535」で割って商に置き換える。例えば、「5370」は「0.08(=5370/65535)」に置き換えられる。
時系列Cの設定桁数は「8」であり、時系列Cの設定進数は「2」である。したがって、時系列Cの規定数値列における数値の最大値は「255(=2-1)」である。そのため、正規化部113は、時系列Cの規定数値列の各数値を「255」で割って商に置き換える。例えば、「0」は「0.00(=0/255)」に置き換えられる。
数値Aの設定桁数は「2」であり、数値Aの設定進数は「16」である。したがって、数値Aの規定数値列における数値の最大値は「255(=16-1)」である。そのため、正規化部113は、数値Aの規定数値列の各数値を「255」で割って商に置き換える。例えば、「8」は「0.03(=8/255)」に置き換えられる。
【0058】
図2に戻り、ステップS140から説明を続ける。
ステップS140において、可視化部114は、正規化データを2次元データとして用いて2次元画像を生成する。
つまり、可視化部114は、複数の正規化数値列を2次元データとして用いて2次元画像を生成する。
【0059】
図10に、2次元画像193を示す。
2次元画像193は、ステップS140で生成される2次元画像の一例である。
2次元画像193は、「時系列×センサ」の2次元データを可視化した画像に相当する。
2次元画像193の一行は、1つの正規化数値列を表している。
2次元画像193の1つのマスは、正規化数値列の1つの数値を表している。
各数値は網掛けの密度で区別されており、数値が小さいほど網掛けの密度が低く、数値が大きいほど網掛けの密度が高い。
但し、各数値は、色のグラデーションで区別されてもよいし、色、模様または色彩で区別されてもよいし、その他の方法で区別されてもよい。
【0060】
図2に戻り、ステップS150を説明する。
ステップS150において、出力部115は、2次元画像をディスプレイに表示する。
2次元画像は、多形式データの解析結果の一例である。表示は出力の一例である。
利用者は、2次元画像を参照することにより、多形式データの内容を視覚的に把握することができる。例えば、利用者は、故障発生前に得られた多形式データの2次元画像と故障発生後に得られた多形式データの2次元画像とを見比べることにより、故障発生前後における多形式データの変化を視覚的に把握することができる。
【0061】
***実施の形態1の効果***
実施の形態1により、多形式データを2次元データに変換することができる。その結果、多形式データをまとめて解析することが可能となる。
また、2次元データを可視化することができる。これにより、利用者が多形式データの内容を視覚的に把握することが可能となる。
【0062】
実施の形態2.
多形式データにカテゴリデータが含まれる形態について、主に実施の形態1と異なる点を図11から図14に基づいて説明する。
【0063】
***構成の説明***
図11に基づいて、多形式データ解析システム100の構成を説明する。
多形式データ解析システム100は、さらに、数値化部121を備える。
多形式データ解析プログラムは、さらに、数値化部121としてコンピュータを機能させる。
【0064】
***動作の説明***
図12に基づいて、多形式データ解析方法を説明する。
ステップS210において、受付部111は、多形式データおよび形式情報データを受け付ける。
ステップS210は、実施の形態1のステップS110と同じである。
【0065】
ステップS221において、数値化部121は、多形式データにカテゴリデータが含まれるか判定する。
カテゴリデータは、カテゴリ識別子を示すデータである。
カテゴリ識別子は、複数のカテゴリのうちの特定のカテゴリを識別する。例えば、カテゴリ識別子は、文字、記号、数字またはこれらの組み合わせで表される。
【0066】
例えば、数値化部121は、多形式データに含まれる対象データごとに、形式情報データに示される形式に基づいて、対象データがカテゴリデータであるか判定する。設定進数が無い対象データはカテゴリデータである。
【0067】
多形式データにカテゴリデータが含まれる場合、処理はステップS222に進む。
多形式データにカテゴリデータが含まれない場合、処理はステップS230に進む。
【0068】
図13に、カテゴリデータ194を示す。
カテゴリデータ194は、カテゴリデータの一例である。
カテゴリ識別子が取り得る値は「A」「B」または「C」である。
カテゴリデータ194は、カテゴリ識別子「A」を示している。
【0069】
図12に戻り、ステップS222を説明する。
ステップS222において、数値化部121は、カテゴリデータに基づいて、複数のカテゴリに対応する複数の個別数値列データを生成する。
そして、数値化部121は、多形式データに含まれるカテゴリデータを複数の個別数値列データに置き換える。
また、数値化部121は、複数の個別数値列データのために形式情報データを更新する。
【0070】
個別数値列データは、個別数値列を示すデータである。
カテゴリデータに対応する複数の個別数値列データは、特定のカテゴリのための個別数値列データと、特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列データと、で構成される。
特定のカテゴリは、カテゴリデータに示されるカテゴリ識別子によって識別されるカテゴリである。
【0071】
カテゴリデータに対応する各個別数値列データは、数値データである。
特定のカテゴリのための個別数値列データは、個別数値列として肯定値を示す。肯定値は、対応するカテゴリが特定のカテゴリであることを意味する。
特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列データは、個別数値列として否定値を示す。否定値は、対応するカテゴリが特定のカテゴリでないことを意味する。
【0072】
図14に、ステップS222の具体例を示す。
3つのカテゴリ「A」「B」「C」が有るため、数値化部121は、カテゴリAとカテゴリBとカテゴリCとの3つの個別数値列データを生成する。設定進数は「2」であり、肯定値は「1」であり、否定値は「0」である。
カテゴリAの個別数値列は「1」であり、カテゴリBとカテゴリCのそれぞれの個別数値列は「0」である。
【0073】
図12に戻り、ステップS230からステップS260を説明する。
ステップS230からステップS260は、実施の形態1のステップS120からステップS150と同じである。
【0074】
***実施の形態2の効果***
実施の形態2により、カテゴリデータを含んだ多形式データを2次元データに変換することができる。その結果、カテゴリデータを含めて多形式データをまとめて解析することが可能となる。
【0075】
実施の形態3.
CNNモデルを使って多形式データを解析する形態について、主に実施の形態1と異なる点を図15から図20に基づいて説明する。
【0076】
CNNは、畳み込みニューラルネットワークの略称である。
CNNモデルは、畳み込みニューラルネットワークのモデルである。
【0077】
***構成の説明***
図15に基づいて、多形式データ解析システム100の構成を説明する。
多形式データ解析システム100は、さらに、モデル構築部131とモデル適用部132とを備える。
多形式データ解析プログラムは、さらに、モデル構築部131とモデル適用部132としてコンピュータを機能させる。
【0078】
***動作の説明***
図16に基づいて、多形式データ解析方法(構築)を説明する。
多形式データ解析方法(構築)は、CNNモデルを構築するための方法である。
【0079】
ステップS301からステップS303は、実施の形態1のステップS110からステップS130と同じである。
これにより、複数の正規化数値列である2次元データが得られる。
【0080】
ステップS304において、モデル構築部131は、2次元データに対するラベルを決定する。
【0081】
具体的には、2次元データに対するラベルは以下のように決定される。
利用者は、多形式データに対応する知見データ、つまり、2次元データに対応する知見データを多形式データ解析システム100に入力する。知見データは、利用者によって特定される文書データである。
【0082】
例えば、利用者は、知見データを以下のように特定する。
ステップS301において、利用者は、機器の故障が発生したときに得られた多形式データを多形式データ解析システム100に入力する。
ステップS304において、利用者は、故障した機器の基本情報または発生した故障に対する診断情報に基づいて、発生した故障に対するトラブルシュートマニュアルを特定する。また、利用者は、発生した故障に対する対応履歴を特定する。
特定されたトラブルシュートマニュアルおよび特定された故障対応履歴が、2次元データに対応する1つ以上の知見データとなる。
【0083】
モデル構築部131は、1つ以上の知見データを受け付け、1つ以上の知見データに示される文書を自然言語解析などによって解析し、解析結果に基づいて2次元データに対するラベルを決定する。例えば、モデル構築部131は、トラブルシュートマニュアルと故障対応履歴とに共通する用語を検索し、見つけた用語を2次元データに対するラベルに決定する。
【0084】
2次元データとラベルとの組を「データセット」と称する。
ステップS301からステップS304は複数の多形式データに対して実行され、複数のデータセットが得られる。
【0085】
ステップS305において、モデル構築部131は、複数のデータセットを学習データにしてディープラーニング(深層学習)を行うことによって、CNNモデルを構築する。
具体的には、モデル構築部131は、複数のデータセットに含まれる2次元データごとに、2次元データを入力にしてCNNモデルを演算して2次元データの特徴量の重みを学習する。そして、モデル構築部131は、複数のデータセットに含まれる2次元データごとに、2次元データの特徴量の重みとラベルとの組をCNNモデルに登録する。
CNNモデルの演算について後述する。
【0086】
図17に基づいて、多形式データ解析方法(適用)を説明する。
多形式データ解析方法(適用)は、CNNモデルを適用するための方法である。
【0087】
ステップS311からステップS313は、実施の形態1のステップS110からステップS130と同じである。
これにより、複数の正規化数値列である2次元データが得られる。
【0088】
ステップS314において、モデル適用部132は、2次元データを入力にしてCNNモデルを演算する。
【0089】
図18に基づいて、CNNモデル195の演算を説明する。
CNNモデル195は、CNNモデルの一例である。
【0090】
CNNモデル195は、入力層と、複数の畳み込み層と、複数のプーリング層と、2つの全結合層と、出力層と、を有する。
まず、入力層が、2次元データを受け付けて出力する。
次に、畳み込み層とプーリング層が繰り返し実行される。畳み込み層は、正規化数値列ごとに1次元畳み込みを行う。プーリング層はプーリングを行う。
次に、2つの全結合層が、正則化とドロップアウトを行う。
そして、出力層が、シグモイド関数またはソフトマックス関数を演算して結果を出力する。
【0091】
図19に基づいて、第1畳み込み層を例にして1次元畳み込みを説明する。
入力層が、「w×h」の2次元データを受け付けたものとする。
第1畳み込み層は、行ごとに、先頭(左端)から最終(右端)まで順番にカーネルを選択し、カーネルに含まれる複数の数値に対して畳み込みを行う。カーネルは、カーネルサイズに対応する個数の数値である。カーネルサイズが4(=1×4)である場合、カーネルは連続して並んだ4個の数値である。
これにより、列数が少なくなった2次元データが得られる。カーネルサイズが4(=1×4)である場合、「(w-3)×h」の2次元データが得られる。
【0092】
図17に戻り、説明を続ける。
ステップS314により、2次元データに対するラベルの情報が演算結果として得られる。例えば、演算結果は、ラベルごとに2次元データが該当する確率を示す。
【0093】
ステップS315において、可視化部114は、演算結果を表すグラフを生成する。生成されるグラフを「演算結果グラフ」と称する。
【0094】
図20に、演算結果グラフ196および演算結果グラフ197を示す。
演算結果グラフ196と演算結果グラフ197のそれぞれは、演算結果グラフの一例である。
演算結果グラフ196は、「01」から「06」の6つのラベルのそれぞれに対する確率を示す棒グラフである。
演算結果グラフ197は、「復旧可能」と「復旧不可」との2つのラベルのそれぞれに対する確率を示す円グラフである。
【0095】
図17に戻り、ステップS315を説明する。
ステップS315において、出力部115は、演算結果グラフをディスプレイに表示する。
演算結果グラフは、多形式データの解析結果の一例である。
利用者は、演算結果グラフを参照することにより、多形式データの内容を視覚的に把握することができる。例えば、利用者は、故障発生時に得られた多形式データの演算結果グラフを参照することにより、機器の故障の状態を視覚的に把握することができる。
【0096】
***実施の形態3の効果***
実施の形態3により、多形式データを2次元データに変換し、2次元データを入力にして畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用することができる。その結果、多形式データをまとめて解析することが可能となる。
また、CNNを適用して得らえた結果を可視化することができる。これにより、利用者が多形式データの内容を視覚的には把握することが可能となる。
【0097】
***実施例の説明***
実施の形態3は、実施の形態1と組み合わせても構わない。つまり、可視化部114が2次元画像を生成し、出力部115が2次元画像を表示してもよい。
実施の形態3は、実施の形態2と組み合わせても構わない。つまり、多形式データ解析システム100は数値化部121を備えてもよい。
【0098】
***実施の形態のまとめ***
実施の形態1から実施の形態3において、多形式センサデータの2次元変換について説明した。
多形式データ解析システム100は、取得間隔および取得回数が異なる時系列データと時系列以外の数値データとカテゴリデータといった様々な形式のデータ(センサデータ、基本情報、稼働情報)を2次元データに変換する。2次元データにおいて、センサ等の項目が縦方向に示され、時系列が横方向に示される。また、多形式データ解析システム100は、2次元データに対して畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用する。
これにより、取得間隔および取得回数が異なる時系列データ、及び、時系列データ以外のデータ(カテゴリデータ、数値データ)の情報を保持したまま、データの値と時間変化をCNNで学習することができる。
CNNは、センサデータ、基本情報および稼働情報の特徴量の重みを学習し、データに対応する特定ラベルの確率を算出するために利用される。
【0099】
実施の形態3において、2次元データの1次元畳み込みについて説明した。
画像認識のためのCNNの畳み込み層は、2次元畳み込みを行う。一方、実施の形態3におけるCNNの畳み込み層は、センサごとに1次元畳み込みを行う。
これにより、センサの並び順をモデルの学習に反映させずに、時間軸に沿ったデータの変化を学習できる。
【0100】
実施の形態3において、有識者の知見の活用について説明した。
CNNモデルの構築時に、正解ラベルを得るために、技術者の知見情報が活用される。具体的には、設計情報(トラブルシュートマニュアル、機器の故障診断情報)、及び、故障対応履歴が活用される。
エレベータ(機器の一例)の故障の発生時のセンサデータ、基本情報および稼働情報に対する正解ラベルに有識者の知見を利用することで、故障原因、及び、遠隔故障の復旧の成功確率などを推定できる。
深層学習と有識者の知見の融合により、実施の形態3を導入したシステムに関わる全ての人(経営者、管理者、技術者)が納得できる推定が実現される。
【0101】
***実施の形態の補足***
各実施の形態は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。各実施の形態は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【0102】
多形式データ解析システム100の各要素は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで実現されてもよい。
多形式データ解析システム100の要素である「部」は、「処理」、「工程」、「回路」または「サーキットリ」と読み替えてもよい。
【符号の説明】
【0103】
100 多形式データ解析システム、101 プロセッサ、102 メモリ、103 補助記憶装置、104 通信装置、105 入出力インタフェース、111 受付部、112 形式変換部、113 正規化部、114 可視化部、115 出力部、121 数値化部、131 モデル構築部、132 モデル適用部、190 記憶部、191 多形式データ、192 形式情報データ、193 2次元画像、194 カテゴリデータ、195 CNNモデル、196 演算結果グラフ、197 演算結果グラフ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部と、
を備え
前記複数の個別数値列が、時系列で並んだ1つ以上の数値から成る個別数値列と、時系列以外の1つ以上の数値から成る個別数値列と、を含む
多形式データ解析システム。
【請求項2】
前記多形式データ解析システムは、
時系列の前記個別数値列と、時系列以外の前記個別数値列と、複数のカテゴリのうちの特定のカテゴリを識別するカテゴリ識別子を示すカテゴリデータと、を受け付ける受付部と、
前記特定のカテゴリのための個別数値列と、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための個別数値列と、を生成する数値化部と、を備え
前記複数の個別数値列が、前記特定のカテゴリのための前記個別数値列と、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための前記個別数値列と、を含む
請求項1に記載の多形式データ解析システム。
【請求項3】
前記特定のカテゴリのための前記個別数値列が肯定値を示し、前記特定のカテゴリ以外の各カテゴリのための前記個別数値列が否定値を示す
請求項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項4】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定進数で表される数値から成る規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部と、
を備え
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の進数を設定進数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記設定進数の数値から前記規定進数の数値に変換する
多形式データ解析システム。
【請求項5】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定個数の数値から成る規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部と、
を備え
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる数値の個数を設定個数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、前記形式情報データから前記複数の個別数値列に対応する複数の設定個数を抽出し、前記複数の設定個数の最小公倍数を前記規定個数として算出し、個別数値列ごとに前記規定個数を前記設定個数で割って商を算出し、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記商が示す数と同じ個数に増やすことによって前記1つ以上の数値を前記規定個数の数値に変換する
多形式データ解析システム。
【請求項6】
前記形式情報データは、個別数値列ごとに、前記個別数値列に含まれる各数値の桁数である設定桁数と、個別数値列に含まれる各数値の進数である設定進数と、を示し、
前記正規化部は、前記規定数値列に対応する個別数値列の設定桁数と前記規定数値列に対応する個別数値列の設定進数とを前記形式情報データから抽出し、抽出された設定進数を底とし抽出された設定桁数を冪指数として求まる冪から1を引いた値を除数として算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を前記除数で割って商を算出し、前記規定数値列に含まれる各数値を算出された商に置き換えることによって前記規定数値列を正規化する
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項7】
前記多形式データ解析システムは、
前記複数の正規化数値列を前記2次元データとして用いて2次元画像を生成する可視化部を備え、
前記出力部は、前記解析結果として前記2次元画像を表示する
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項8】
2次元データと機器の故障の原因に関するラベルとの組であるデータセットを学習データにして畳み込みニューラルネットワークのモデルを構築するモデル構築部と、
前記機器の故障が発生したときに得られて互いに異なる形式を有する複数の個別数値列を受け付ける受付部と、
前記複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を前記モデルの入力となる2次元データとして用いて前記モデルを演算することによって、前記モデルの入力となった前記2次元データに対するラベルの情報を演算結果として得るモデル適用部と、
前記演算結果に基づいて前記機器の故障原因の予測を表す演算結果グラフを生成する可視化部と、
前記演算結果グラフを表示する出力部と、
を備える多形式データ解析システム。
【請求項9】
前記モデル構築部は、前記データセットに含まれる2次元データに対応する1つ以上の知見データを受け付け、前記1つ以上の知見データに示される文書に基づいて前記データセットに含まれるラベルを決定する
請求項に記載の多形式データ解析システム。
【請求項10】
前記モデル適用部は、前記モデルの演算において正規化数値列ごとに1次元畳み込みを実行する
請求項8または請求項9に記載の多形式データ解析システム。
【請求項11】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部として
コンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラムであって、
前記複数の個別数値列が、時系列で並んだ1つ以上の数値から成る個別数値列と、時系列以外の1つ以上の数値から成る個別数値列と、含む
多形式データ解析プログラム。
【請求項12】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定進数で表される数値から成る規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部として
コンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラムであって、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の進数を設定進数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記設定進数の数値から前記規定進数の数値に変換する
多形式データ解析プログラム。
【請求項13】
互いに異なる形式を有する複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定個数の数値から成る規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を2次元データとして用いて得られる解析結果を出力する出力部として
コンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラムであって、
前記形式情報データは、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる各数値の桁数を設定桁数として示し、個別数値列ごとに前記個別数値列に含まれる数値の個数を設定個数として示し、
前記形式変換部は、個別数値列ごとに前記個別数値列を前記設定桁数で分割することによって1つ以上の数値を得て、前記形式情報データから前記複数の個別数値列に対応する複数の設定個数を抽出し、前記複数の設定個数の最小公倍数を前記規定個数として算出し、個別数値列ごとに前記規定個数を前記設定個数で割って商を算出し、個別数値列ごとに前記1つ以上の数値のそれぞれを前記商が示す数と同じ個数に増やすことによって前記1つ以上の数値を前記規定個数の数値に変換する
多形式データ解析プログラム。
【請求項14】
2次元データと機器の故障の原因に関するラベルとの組であるデータセットを学習データにして畳み込みニューラルネットワークのモデルを構築するモデル構築部と、
前記機器の故障が発生したときに得られて互いに異なる形式を有する複数の個別数値列を受け付ける受付部と、
前記複数の個別数値列のそれぞれの形式を示す形式情報データに基づいて、前記複数の個別数値列のそれぞれを、規定の形式を有する規定数値列に変換する形式変換部と、
前記複数の個別数値列に対応する複数の規定数値列のそれぞれを、正規化された規定数値列である正規化数値列に変換する正規化部と、
前記複数の規定数値列に対応する複数の正規化数値列を前記モデルの入力となる2次元データとして用いて前記モデルを演算することによって、前記モデルの入力となった前記2次元データに対するラベルの情報を演算結果として得るモデル適用部と、
前記演算結果に基づいて前記機器の故障原因の予測を表す演算結果グラフを生成する可視化部と、
前記演算結果グラフを表示する出力部として
コンピュータを機能させるための多形式データ解析プログラム。