(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143635
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】タモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 18/65 20180101AFI20220926BHJP
A01G 18/68 20180101ALI20220926BHJP
A01G 18/69 20180101ALI20220926BHJP
【FI】
A01G18/65
A01G18/68
A01G18/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044255
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】517049138
【氏名又は名称】株式会社ケージェー・マーリック
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】小澤 高久
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011AA07
2B011DA01
2B011EA03
2B011EA06
2B011FA01
2B011GA03
2B011GA08
2B011GA09
2B011GA10
(57)【要約】
【課題】エルゴチオネインの含有量を富化することが可能なタモギタケの栽培方法を提供する。
【解決手段】このタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法によれば、培養キャップ50が培地表面の中央部分に子実体原基の形成を誘導し、育成キャップ80が生長する子実体の数(茎の数)を制限するとともに、中央側の優位な子実体の傘部をより大型化させる。これにより、この栽培方法によるタモギタケは、従来のものよりも大型化し、且つエルゴチオネインを多く含む傘部分の比率が高くなる。これにより、タモギタケのエルゴチオネインの含有量を富化することができる。そして、特に補助食品、サプリメント等に加工する際には、従来よりもエルゴチオネインを高濃度で含有する製品を製造することができる。また、同量のタモギタケで従来よりも多くの製品を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネインを含有するタモギタケの栽培方法であって、
栽培容器に培地を充填する工程と、
前記培地を殺菌する工程と、
前記培地にタモギタケの種菌を植菌する工程と、
上面に通気性を備えたフィルタを有し前記上面側が小さい略円錐台形状の空間部を有する培養キャップを前記栽培容器に被せ、所定の温度、湿度に維持してタモギタケの菌糸を生長させるとともに前記フィルタの下方に子実体原基の形成を誘導する培養工程と、
前記培養キャップを、上方に開口を備え前記開口側が小さい略円錐台形状の空間部を有する育成キャップに替えて前記栽培容器を所定の温度、湿度に維持し、前記子実体原基を前記開口を通した子実体に生長させる発生工程と、を有し、
前記発生工程は、前記育成キャップの開口が生長する子実体の茎の数を制限することで子実体の傘を大型化し、前記子実体中のエルゴチオネインの含有量を富化させることを特徴とするタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法。
【請求項2】
育成キャップの開口の直径が15mm~50mmであることを特徴とする請求項1記載のタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法。
【請求項3】
育成キャップの略円錐台形状の空間部の底角が培養キャップと同等であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タモギタケ中のエルゴチオネインの含有量を富化させるタモギタケの栽培方法(エルゴチオネイン富化栽培方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネイン(EGT)とは希少アミノ酸の一種であり、天然素材の中で極めて優れた抗酸化作用を有している。また、このエルゴチオネインはタモギタケに多く含まれることが知られている。このため、例えば下記[特許文献1]にはタモギタケの人工栽培方法に関する発明が開示されている。そして、これらタモギタケは食用として販売される他、エルゴチオネインを含有した補助食品、サプリメント等に加工され販売されている。
【0003】
また、本願発明者らは舞茸の栽培に適した、下記[特許文献2]に示す舞茸栽培装置に関する発明を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-180120号公報
【特許文献2】特許第3542082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、より多くのエルゴチオネインを得るためには、タモギタケ中のエルゴチオネインの含有量を増加(富化)させることが重要となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エルゴチオネインの含有量を富化することが可能なタモギタケの栽培方法(エルゴチオネイン富化栽培方法)の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)エルゴチオネインを含有するタモギタケの栽培方法であって、
栽培容器10に培地を充填する工程(培地充填工程S200)と、前記培地を殺菌する工程(殺菌工程S202)と、前記培地にタモギタケの種菌を植菌する工程(植菌工程S204)と、
上面34に通気性を備えたフィルタ20を有し前記上面34側が小さい略円錐台形状の空間部40aを有する培養キャップ50を前記栽培容器10に被せ、所定の温度、湿度に維持してタモギタケの菌糸を生長させるとともに前記フィルタ20の下方に子実体原基の形成を誘導する培養工程S206と、
前記培養キャップ50を、上方に開口42を備え前記開口42側が小さい略円錐台形状の空間部40bを有する育成キャップ80に替えて前記栽培容器10を所定の温度、湿度に維持し、前記子実体原基を前記開口42を通した子実体に生長させる発生工程S208と、を有し、
前記発生工程S208は、前記育成キャップ80の開口42が生長する子実体の茎の数を制限することで子実体の傘を大型化し、前記子実体中のエルゴチオネインの含有量を富化させることを特徴とするタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)育成キャップ80の開口42の直径L2が15mm~50mmであることを特徴とする上記(1)記載のタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)育成キャップ80の略円錐台形状の空間部40bの底角θ2が培養キャップ50と同等であることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載のタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法によれば、従来のものよりも大型で、且つエルゴチオネインを多く含む傘部分の比率が高いエルゴチオネインの含有量が富化したタモギタケを栽培することができる。これにより、従来のタモギタケよりも多くのエルゴチオネインを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法に用いる培養キャップ、育成キャップを示す図である。
【
図2】本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を説明する図である。
【
図5】本発明によるタモギタケの部位別のエルゴチオネイン量を示すグラフである。
【
図6】本発明によるタモギタケのエルゴチオネイン量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。先ず、本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法に用いる培養キャップ50及び育成キャップ80に関して説明を行う。ここで、
図1(a)、(b)は本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法に用いる培養キャップ50の斜視図及び断面図である。また、
図1(c)、(d)は本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法に用いる育成キャップ80の斜視図及び断面図である。
【0011】
図1に示す培養キャップ50及び育成キャップ80は共通する構成として、栽培容器10の口部12のフタとして機能するフランジ部30と、このフランジ部30の下方に設けられ培養キャップ50もしくは育成キャップ80を栽培容器10の口部12に着脱可能に装着する装着部32と、フランジ部30の上側に設けられ上方が小さい略円錐台形状の空間部40a、40bと、を有している。尚、栽培容器10はキノコ栽培に用いられる周知の合成樹脂製の瓶であって、一般的には透明もしくは半透明のポリプロピレン等で形成される。
【0012】
そして、本発明の培養キャップ50は空間部40aが上面34を有し、この上面34の中央に通気口26と、この通気口26に設けられ通気性を備えたフィルタ20とを有している。そして、このフィルタ20は雑菌等の進入を阻害しながら、水蒸気や酸素、二酸化炭素等を空間部40aの内外で流通させる機能を有し、紙フィルタや合成樹脂製のフィルタ、不織布など、キノコ栽培に適した周知のものを用いることができる。尚、このフィルタ20の設置方法には特に限定はないが、
図1(b)に示すように、培養キャップ50の上面34の周縁に側壁を形成して凹状とし、この凹状部に所定の径の開口を備えたフィルタ押さえ22を嵌め込み、フィルタ20を培養キャップ50の上面34とフィルタ押さえ22の下面とで挟み込んで固定することが好ましい。また、培養キャップ50の通気口26の直径L1(本例ではフィルタ押さえ22の開口の径)は、口部12の径の1/10~1/3とすることが好ましく、1/10~1/4とすることが特に好ましい。よって、例えば口部12の内径が58mmの栽培容器10の場合、通気口26の直径L1は概ね6mm~20mmが好ましく、6mm~15mmが特に好ましい値となる。
【0013】
そして、培養キャップ50の略円錐台形の空間部40aは、通気口26の下に位置する培地表面の中央部分を外部(培養室内)寄りの湿度(基本的に低湿度)とし、培地表面の周縁部との間で湿度勾配を形成することを目的としている。このため、空間部40aの底角(空間部40aの仮想底面と側壁36とのなす角)θ1は70°を超えると垂直に近くなって適度な湿度勾配を形成することが難しくなり、また底角θ1が30°未満であると空間部40aの天井が低く後述する菌糸の盛り上がりの障害となる。従って、培養キャップ50の空間部40aの底角θ1は30°~70°とすることが好ましい。
【0014】
また、
図1(c)、(d)に示す、育成キャップ80の空間部40bは上方に開口42を備えている。この開口42の直径L2は生長させる子実体の数に関与し、開口42の直径L2が15mm未満であると、十分な数の子実体を得ることができず、また直径L2が40mmを超えると適正な数よりも子実体の茎数が多く形成されて、いずれもエルゴチオネインの富化量が低下する。よって、開口42の直径L2は15mm~50mmとすることが好ましく、20mm~30mmとすることが特に好ましい。
【0015】
尚、育成キャップ80は培養キャップ50の空間部40a内に菌糸が盛り上がった状態で交換を行う可能性がある。このため、空間部40bの底角θ2(空間部40bの仮想底面と側壁36とのなす角)が培養キャップ50の底角θ1よりも小さいと盛り上がった菌糸を押し潰す可能性がある。また、育成キャップ80の開口42は栽培容器10の開口を狭め菌糸と側壁36との間の隙間を小さくし、この部分からの雑菌等の進入を阻害する機能をも有する。従って、空間部40bの底角θ2はできるだけ小さくすることが好ましく、これらのことから空間部40bの底角θ2は、70°≧θ2≧θ1とし、θ2=θ1とすることが最も好ましい。
【0016】
次に、本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法に関して説明を行う。ここで、
図2は本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法のフローチャートである。また、
図3は本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法を説明するための模式図である。
【0017】
本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法は、先ず
図3(a)に示すように、例えばおが屑と米糠等の栄養源とを混合した周知の培地を栽培容器10に充填する。この際、充填する培地の中央部に1.5cm径程度の接種穴を形成しておくことが好ましい(培地充填工程S200)。
【0018】
次に、栽培容器10を周知の殺菌釜等で加熱して充填した培地の殺菌を行う(殺菌工程S202)。次に、
図3(b)に示すように、栽培容器10の培地にタモギタケの種菌を植菌する(植菌工程S204)。尚、この植菌は無菌室等で接種穴に対して行う。そして、
図3(c)に示すように、植菌後の栽培容器10の口部12に本発明に係る培養キャップ50を嵌め込み閉塞する。
【0019】
次に、培養キャップ50が装着された栽培容器10を所定の温度、湿度、例えば温度20℃~25℃、湿度60%~70%に維持された培養室で所定の期間保持する。これにより、植菌されたタモギタケの種菌は培地内で菌糸を生長させる。また、このとき培地の上表面より発生する水蒸気は、培養キャップ50の略円錐台形の空間部40aの側壁36に沿って内側に収束し、空間部40aの上面34中央に設けられた通気口26のフィルタ20を通して培養室内に放出される。このとき一部の水蒸気は側壁36の内面に結露して栽培容器10内の周縁部に滴下する。これにより、培地表面の周縁部は培地表面の中央部分と比較して高湿度となり、中央部分が低湿度で周縁部が高湿度の湿度勾配が形成される。尚、培養室内の温度、湿度はタモギタケの生長に適した雰囲気に維持されているから、空気の流通が良く且つ生長に適した雰囲気の中央部分は周縁部よりも菌糸の生長が良く、
図3(d)に示すように中央部分の菌糸が盛り上がることとなる。そしてこの中央部分に子実体原基が形成されるもしくは形成可能な状態となる。このようにして、培養キャップ50はフィルタ20(通気口26)の下方の中央部分に子実体原基の形成を誘導する(培養工程S206)。
【0020】
そして、培地表面に子実体原基が形成もしくは形成可能な状態になると、
図3(e)に示すように、栽培容器10に装着されていた培養キャップ50を育成キャップ80に付け替え、発生室に移動させる(発生工程S208)。この発生室は子実体の形成、生長に好適な所定の温度、湿度、例えば温度15℃~25℃、湿度85%~95%に維持されており、また適度な光が照射され、栽培容器10はこの発生室内で所定の期間保持される。尚、栽培容器10によるキノコの栽培方法では、子実体への生長を行う前に培地表面の菌糸を削り取る菌掻きを行うことが一般的である。しかしながら、本発明に係るタモギタケの栽培方法では、菌掻きを行わずに子実体の生長を行う。これにより、タモギタケの収穫を1週間程度早めることができる。
【0021】
このとき、本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法では、培養工程S206にて培地表面の中央部分が盛り上がり子実体原基の形成が誘導されているから、中央部分の優位な子実体原基が優先的に大きな子実体を形成する。また、中央部分の上方は空間部40bの開口42が存在し、中央部分の優位な子実体は何ら制約を受けることなく生長を続ける。しかしながら、周縁部では中央部分と比較して子実体の形成が遅いことに加え、空間部40bの側壁36が子実体の形成を阻害するとともに菌糸の生長を中央側に誘導する。これにより、育成キャップ80は生長する茎数(柄の数)を制限するとともに、中央側の優位な子実体の傘部をより大型化させる。またこのとき、空間部40bの開口42が栽培容器10の開口を狭めることで、菌糸の盛り上がりと側壁36との間の隙間を小さくし、この部分からの雑菌等の進入を阻害する。
【0022】
ここで、育成キャップ80を用いた本発明の栽培方法によるタモギタケの画像を
図4(a)に示す。また、比較のため育成キャップ80を装着せずに生長させたタモギタケの画像を
図4(b)に示す。
図4から、育成キャップ80を用いて栽培したタモギタケは、育成キャップ80を用いずに栽培したタモギタケと比較して、その傘が遥かに大きいことが判る。また、1つの栽培容器10で収穫されたタモギタケの傘部分と柄部分の乾燥重量をそれぞれ測定したところ、育成キャップ80を用いて栽培したタモギタケの傘部分の総重量は柄部分の約2.5倍で、タモギタケの全体の重量比で約70wt%を占めたのに対し、育成キャップ80を用いずに栽培したタモギタケの傘部分の乾燥重量は柄部分とほぼ同等で、タモギタケの全体の約50wt%であった。さらに、収穫されたタモギタケの乾燥重量自体を比較した場合でも、本発明の栽培方法によるものの方が大きい値を示した。これらのことから、育成キャップ80を用いた本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法によるタモギタケは、従来のものよりも大型化し、且つ傘部分の比率が高くなる事が判る。
【0023】
次に、タモギタケの部位別のエルゴチオネインの含有量を以下のようにして測定した。先ず、本発明の栽培方法によるタモギタケを収穫し野菜乾燥機(ラボネクト株式会社製:ドラミニ)を用いて40℃で24時間乾燥させた。次に、タモギタケを子実体(傘+柄部分)と傘部分のみと柄部分のみとに分け、それぞれミキサ(タイガー魔法瓶株式会社製:SKR-J250)により粉砕した。次に、粉砕した試料5.0gに対し水90mLを加え、オートクレーブ(株式会社トミー精工製:LSX-700)を用い90℃で30分、加熱抽出した。次に、抽出後の試料を吸引濾過した。次に濾過後の残渣に再度水を加え全量100gとし、同様に加熱抽出した後、吸引濾過し、これらの操作を3回行った。そして、合計4回分の濾液を抽出液とした。次に、抽出液中のエルゴチオネイン量を高速液体クロマトグラフィー(UPLC)によって測定した。その結果を
図5に示す。
【0024】
図5より、傘部分のエルゴチオネイン量は1250mg/100g-dryであったのに対し、柄部分のエルゴチオネイン量は800mg/100g-dryであり、タモギタケのエルゴチオネインは傘部分に多く存在していることが判る。
【0025】
次に、育成キャップ80を用いた本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法で得られたタモギタケ(傘+柄部分)のエルゴチオネイン量と、育成キャップ80を用いずに同条件で栽培したタモギタケのエルゴチオネイン量との測定結果を
図6に示す。
図6より、育成キャップ80を用いた本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法によるタモギタケのエルゴチオネイン量は1000~1200mg/100g-dryであったのに対し、育成キャップ80を用いずに栽培したタモギタケのエルゴチオネイン量は400~800mg/100g-dryであり、このことからも本発明の栽培方法によるタモギタケのエルゴチオネイン量が明らかに富化していることが判る。これは、第一に本発明の栽培方法によるタモギタケの方がエルゴチオネインを多く含む傘部分の比率が多いためと考えられる。また、傘部分の比率を同等として試算しても育成キャップ80を用いた本発明によるタモギタケの方がエルゴチオネイン量が多い傾向が認められた。従って、本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法は、タモギタケ自体のエルゴチオネインの含有量も富化させると考えられる。
【0026】
そして、上記のようにして栽培されたタモギタケは収穫され(収穫工程S210)、その後の工程で食用や乾燥、その他、然るべき加工が行われる。この際、本発明のエルゴチオネイン富化栽培方法によるタモギタケは前述のようにエルゴチオネイン量が富化しているから、従来のタモギタケよりも多くのエルゴチオネインを得ることができる。これにより、特に補助食品、サプリメント等に加工する際には、従来よりもエルゴチオネインを高濃度で含有する製品を製造することができる。また、同量のタモギタケで従来よりも多くの製品を製造することができる。
【0027】
以上のように、本発明に係るタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法によれば、培養キャップ50が培地表面の中央部分に子実体原基の形成を誘導し、育成キャップ80が生長する子実体の数(茎の数)を制限するとともに、中央側の優位な子実体の傘部をより大型化させる。これにより、本発明によるタモギタケは、従来のものよりも大型化し、且つエルゴチオネインを多く含む傘部分の比率が高くなる。これにより、タモギタケのエルゴチオネインの含有量を富化することができる。
【0028】
尚、本例で示したタモギタケのエルゴチオネイン富化栽培方法の各工程、手順、栽培温度湿度、栽培方法、栽培設備、また培養キャップ50及び育成キャップ80の形状、寸法、デザイン、構成等は一例であるから上記の例に限定されるわけでは無く、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 栽培容器
20 フィルタ
34 (培養キャップの)上面
40a (培養キャップの)空間部
40b (育成キャップの)空間部
42 開口
50 培養キャップ
80 育成キャップ
S206 培養工程
S208 発生工程