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特開2022-143648波長変換膜形成用組成物及び波長変換膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143648
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】波長変換膜形成用組成物及び波長変換膜
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220926BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220926BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220926BHJP
   C07F 9/6568 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/06
C09K11/06 630
H01L33/50
C07F9/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044283
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
(72)【発明者】
【氏名】吉成 聡士
【テーマコード(参考)】
2H148
4H050
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA11
2H148AA19
4H050AA01
4H050AB90
5F142AA02
5F142AA62
5F142DA15
5F142DA49
5F142DA73
5F142DB36
(57)【要約】
【課題】波長変換効率が高く、耐光性に優れる波長変換膜を与える組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記式(A)で表されるホスホール化合物からなる蛍光体を含む波長変換膜形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(A)で表されるホスホール化合物からなる蛍光体を含む波長変換膜形成用組成物。
【化1】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基であり;
3は、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基であり;
Ar1は、式中の炭素原子C1及びC2を含む、ベンゼン環、ナフタレン環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり;
Ar2は、下記式(1)~(3)のいずれかで表される、式中の炭素原子C3及びC4を含む環構造である。
【化2】
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基又は置換されたアリール基である。)]
【請求項2】
更に、(B)ポリマーを含む請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項3】
更に、(C)光散乱粒子を含む請求項1又は2記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項4】
(A)成分の含有量が、固形分中1質量%以上である請求項1~3のいずれか1項記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の波長変換膜形成用組成物から得られる波長変換膜。
【請求項6】
ヘイズ値が50%以上である請求項5記載の波長変換膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換膜形成用組成物及び波長変換膜に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラーディスプレイの作製方式として、3色の発光ダイオード(LED)を実装するRGB-LED方式が挙げられる。しかし、RGB-LED方式では、LEDの発光制御の複雑さや、赤色LEDの性能の低さ(エネルギー効率が低い、高温で輝度及びピーク波長が変わる)が課題の1つであり、これを解決できる波長変換方式が注目されている。
【0003】
波長変換方式では、青色LEDのみを使用し、波長変換材料を使用して青色光を赤や緑の光に変換する。波長変換材料には、入射光の変換効率(波長変換効率)が優れること、入射光による劣化が起こりにくいこと(耐光性)、変換光の色純度がよいこと等が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、波長変換効率が高く、耐光性に優れる波長変換膜、及びこのような波長変換膜を与える組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、所定のホスホール化合物からなる蛍光体が、波長変換効率が高く、高濃度で使用しても変換効率が低下しにくく、耐光性にも優れ、波長変換膜の材料として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記波長変換膜形成用組成物及び波長変換膜を提供する。
1.(A)下記式(A)で表されるホスホール化合物からなる蛍光体を含む波長変換膜形成用組成物。
【化1】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基であり;
3は、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基であり;
Ar1は、式中の炭素原子C1及びC2を含む、ベンゼン環、ナフタレン環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり;
Ar2は、下記式(1)~(3)のいずれかで表される、式中の炭素原子C3及びC4を含む環構造である。
【化2】
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基又は置換されたアリール基である。)]
2.更に、(B)ポリマーを含む1の波長変換膜形成用組成物。
3.更に、(C)光散乱粒子を含む1又は2の波長変換膜形成用組成物。
4.(A)成分の含有量が、固形分中1質量%以上である1~3のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
5.1~4のいずれかの波長変換膜形成用組成物から得られる波長変換膜。
6.ヘイズ値が50%以上である5の波長変換膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明の波長変換膜形成用組成物によれば、波長変換効率が高く、耐光性に優れる波長変換膜を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[波長変換膜形成用組成物]
本発明の波長変換膜形成用組成物は、(A)下記式(A)で表されるホスホール化合物からなる蛍光体を含む。
【化3】
【0009】
式(A)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基である。R3は、アリール基、置換されたアリール基、ヘテロアリール基又は置換されたヘテロアリール基である。
【0010】
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のものが好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記置換されたアルキル基としては、前述したアルキル基の具体例の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基等で置換されたものが挙げられる。前記モノ又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の具体例としては、前述したものが挙げられる。前記モノ又はジアリールアミノ基に含まれるアリール基としては、後述するものが挙げられる。
【0011】
前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。前記ヘテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、ピリジル基等が挙げられる。前記置換されたアリール基及び置換されたヘテロアリール基としては、前述したアリール基及びヘテロアリール基の具体例の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシル基、シアノ基、ニトロ基等で置換されたものが挙げられる。前記アルキル基の具体例としては、前述したものが挙げられる。
【0012】
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。
【0013】
前記アルコキシ基は、-ORで表される基であり、Rは、アルキル基、又はエーテル結合を含むアルキル基である。前記アルキル基の具体例としては、前述したものが挙げられる。前記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、-O((CH2)pO)qCH3(pは1~3の整数であり、qは1~10の整数である)等が挙げられる。
【0014】
1及びR2としては、無置換又は置換されたフェニル基、炭素数1~12のアルコキシ基で置換されたフェニル基、-O((CH2)pO)qCH3で置換されたフェニル基が好ましい。R3としては、無置換又は置換されたフェニル基が好ましく、無置換のフェニル基がより好ましい。
【0015】
式(A)中、Ar1は、式中の炭素原子C1及びC2を含むベンゼン環、ナフタレン環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環である。前記ヘテロ芳香環の具体例としては、チオフェン環、チアゾール環、ピロール環、イミダゾール環、フラン環、オキサゾール環、ピリジン環等のほか、ヘテロ芳香環と炭化水素芳香環との縮合環やヘテロ芳香環同士の縮合環等が挙げられる。置換ヘテロ芳香環としては、例えば、ヘテロ芳香環の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等で置換されたものが挙げられる。Ar1としては、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
【0016】
式(A)中、Ar2は、下記式(1)~(3)のいずれかで表される、式中の炭素原子C3及びC4を含む環構造である。
【化4】
【0017】
式(1)~(3)中、式中、R4及びR5は、それぞれ独立に、アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基又は置換されたアリール基である。前記アルキル基、置換されたアルキル基、アリール基及び置換されたアリール基の具体例としては、前述したものが挙げられる。
【0018】
Ar2としては、式(1)又は(2)で表されるものが好ましい。特に、式(1)又は(2)で表されるもののうち、R4及びR5が、フェニル基、炭素数1~12のアルコキシ基で置換されたフェニル基、-O((CH2)pO)qCH3で置換されたフェニル基であるものが好ましく、フェニル基であるものがより好ましい。
【0019】
本発明の波長変換膜形成用組成物中、(A)前記ホスホール化合物からなる蛍光体の含有量は、固形分中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。その上限は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、固形分中、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。なお、固形分とは、本発明の波長変換膜形成用組成物に含まれる成分のうち、溶媒以外の成分を意味する。
【0020】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、更に、(B)ポリマーを含んでもよい。前記ポリマーとしては、波長変換膜に用いられる従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリレートポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の透明樹脂が挙げられる。
【0021】
(B)ポリマーは、市販品を使用してもよく、従来公知の方法で合成してもよい。例えば、(メタ)アクリレートポリマーは、モノマーを溶媒中で重合させることで合成することができる。重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を採用し得るが、本発明で好適な重量平均分子量(Mw)を有するポリマーを比較的簡便に製造できることから、ラジカル重合が好ましい。
【0022】
前記モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
ラジカル重合の重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物等が挙げられる。このような開始剤の使用量は、モノマーの種類や量、反応温度によって異なるため一概に規定できないが、通常、モノマー1モルに対し、0.005~0.05モル程度である。重合時の反応温度は、0℃から使用する溶媒の沸点までで適宜設定すればよいが、通常20~100℃程度である。また、反応時間は、0.1~30時間程度である。
【0024】
重合反応に用いる溶媒は、この種の反応で一般的に使用される溶媒を使用することができる。具体的には、後述する(D)溶媒の具体例として例示するものと同様のものが挙げられる。これらから、モノマーや開始剤の種類や量、反応温度等を考慮して、使用する溶媒が適宜選択される。
【0025】
反応終了後、例えば、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させることで、得られたポリマーを回収し、回収したポリマーを用いて波長変換膜形成用組成物を調製してもよく、反応溶液をそのまま又は濃縮若しくは希釈して波長変換膜形成用組成物の調製に使用してもよい。
【0026】
(メタ)アクリレートポリマーが2種以上のモノマーを用いて製造される場合、当該(メタ)アクリレートポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0027】
(B)ポリマーのMwは、成膜性及び取り扱いの容易さの点から、好ましくは3,000~100,000であり、より好ましくは5,000~30,000である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0028】
本発明の波長変換膜形成用組成物中、(B)ポリマーの含有量は、固形分中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。その上限は、固形分中、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、更に、(C)光散乱粒子を含んでもよい。前記光散乱粒子は、波長変換膜に入ってきた光を膜中で散乱させることで、実質的に波長変換膜中での光路長が伸びて光吸収率が向上し、波長変換膜の界面で反射されて波長変換膜内に戻ってきた光を再度散乱することで、発光効率を向上させる機能を有する。
【0030】
前記光散乱粒子は、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよい。このうち、粒子の散乱性能を高める点から、屈折率が大きい無機微粒子が好ましい。
【0031】
前記有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ及びベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
【0032】
前記無機微粒子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、インジウム、亜鉛、アンチモン、セリウム、ニオブ、タングステン等の中から選ばれる少なくとも1つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。前記無機酸化物粒子として具体的には、SiO2、ZrO2、TiO2、BaTiO3、In23、ZnO、Sb23、ITO、CeO2、Nb25及びWO3等が挙げられる。これらのうち、TiO2、BaTiO3、ZrO2、CeO2及びNb25が好ましく、TiO2がより好ましい。また、TiO2の中でも、アナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性が低いため膜の耐候性が高くなり、更に屈折率も高いことから好ましい。
【0033】
これらの粒子は、波長変換フィルターに含有させるために、分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理を行う場合、表面処理剤としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理剤としては、異種無機酸化物又は金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。前記表面処理剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
前記光散乱粒子の平均粒子径は、0.01~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましく、0.2~1μmであることがさらに好ましい。前記範囲であれば充分な光散乱効果が得られる。なお、本発明において平均粒子径は、動的光散乱法による体積基準の粒度分布測定における累積頻度分布が50%になる粒子径(メジアン径D50)である。
【0035】
光散乱粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。
【0036】
本発明の波長変換膜形成用組成物中、(C)光散乱粒子の含有量は、固形分中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。その上限は、固形分中、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%がより一層好ましい。前記光散乱粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、前述した各成分や後述する添加剤を溶解又は分散させることができる(D)溶媒を含むことが好ましい。その具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族又はハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ノルマルヘキシル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、マロン酸ジイソプロピル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、2-ベンゾオキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等のグリコール系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。
【0038】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、溶媒として水を含んでもよいが、通常、本発明の波長変換膜形成用組成物は、溶媒として有機溶媒のみを含む。この場合において、固形分や有機溶媒に微量含まれる水の存在は否定されない。
【0039】
本発明の波長変換膜形成用組成物中、(D)溶媒の含有量は、目的とする波長変換膜の厚みや塗布方法等に応じて変動するものであるため一概には規定できないが、本発明の組成物中の固形分濃度が、10~70質量%となる量が好ましく、20~60質量%となる量がより好ましい。(D)溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
[(E)界面活性剤]
本発明の波長変換膜形成用組成物は、更に、(E)界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を添加することで、基板に対する前記組成物の塗布性を向上させることができる。前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。
【0041】
前記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0042】
前記フッ素系界面活性剤等としては、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、F173、F251、F411、F444、F477、F554、F559、F563、R-30、R-40、R-40-LM、DS-21(DIC(株)製)、FLUORAD(登録商標)FC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)、フタージェント(登録商標)FTX-218、DFX18(ネオス社製)等が挙げられる。
【0043】
また、シリコーン系界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0044】
本発明の波長変換膜形成用組成物が(E)界面活性剤を含む場合、その含有量は、固形分中、0.01~1質量%が好ましく、0.03~0.5質量%がより好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
[その他の成分]
本発明の波長変換膜形成用組成物は、更に、密着性向上剤を含んでもよい。密着性向上剤を含むことによって、波長変換膜の基板への密着性を向上させることができる。前記密着性向上剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0046】
本発明の波長変換膜形成用組成物が前記密着性向上剤を含む場合、その含有量は、固形分中、0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。前記密着性向上剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、更に、(C)成分の光散乱粒子やその他の非相溶成分を分散させるための分散剤を含んでもよい。前記分散剤としては、例えば、顔料の中間体や顔料誘導体等の低分子分散剤、高分子分散剤等が挙げられる。
【0048】
前記顔料誘導体としては、例えば、顔料の適度な湿潤や安定化に資する、顔料骨格のアルキルアミン変性体、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体等が挙げられる。これらのうち、微細顔料の安定化に顕著な効果を有することから、スルホン酸誘導体が好ましい。
【0049】
前記高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリマーやこれらの共重合体等が挙げられる。これらのうち、固形分換算のアミン価が5~200mgKOH/gであり、かつ酸価が1~100mgKOH/gであるものが好ましい。特に、保存安定性を向上させることができるという点から、塩基性基を有する高分子分散剤がより好ましい。塩基性基を有する高分子分散剤としては、市販品を使用することができる。
【0050】
本発明の波長変換膜形成用組成物が前記分散剤を含む場合、その含有量は、固形分中、0.05~5質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。前記密着性向上剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、レベリング剤、レオロジー調整剤、保存安定剤、消泡剤、熱架橋剤を含んでもよい。
【0052】
本発明の波長変換膜形成用組成物の調製方法は、特に限定されない。前記調製方法としては、例えば、(A)前記ホスホール化合物からなる蛍光体を溶媒に溶解し、得られた溶液に必要に応じて(C)光散乱粒子やその他の成分を同時に又は任意の順で所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。
【0053】
また、本発明の波長変換膜形成用組成物が(B)ポリマーを含む場合、(B)ポリマーの重合反応によって得られた反応溶液をそのまま使用することができる。この場合、前記ポリマー溶液に、(A)前記ホスホール化合物からなる蛍光体、及び必要に応じて(C)光散乱粒子やその他の成分を同時に又は任意の順で所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。このとき、濃度調整を目的として更に溶媒を追加してもよく、前記溶媒は、(B)ポリマーの重合反応において使用した溶媒と同一でもよく、異なってもよい。
【0054】
このようにして調製された波長変換膜形成用組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0055】
[波長変換膜]
本発明の波長変換膜形成用組成物を、基板上に塗布して加熱し、乾燥させることで波長変換膜を形成することができる。
【0056】
具体的には、本発明の波長変換膜形成用組成物を、石英、ガラス、ITO基板、透明フィルム(トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の透明基材上に、バーコート法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スリットコート法、スリットコートに続いたスピンコート法、インクジェット法、印刷法等の方法によって塗布する。塗布した後、自然乾燥したり、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブン等の加熱手段により加熱したりして、溶媒を蒸発させることで波長変換膜を得ることができる。加熱手段により加熱する場合、その温度は特に限定されないが、30~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて異なるため一概に規定できないが、通常5分~2時間であり、好ましくは15分~1時間である。
【0057】
本発明の波長変換膜の膜厚は、蛍光色素による十分な光吸収率を確保し、また膜厚が過剰に厚いことによる工程性低下を避ける観点から、3~50μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。
【0058】
このようにして得られた本発明の波長変換膜は、入射光を膜内で散乱させることにより蛍光体が吸収することのできる光の量を多くする観点から、そのヘイズ値が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40以上であることがより一層好ましく、50%以上であることが更に好ましい。ヘイズ値の上限は、特に限定されないが、通常95%程度である。なお、本発明においてヘイズ値は、ASTM D 1003-61に従って測定される値である。
【実施例0059】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0060】
重合体の分子量は、装置として日本分光(株)製GPCシステムを用い、カラムとしてShodex(登録商標)KF-804L及び803Lを用い、下記の条件にて測定した。
カラムオーブン:40℃
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
【0061】
以下の実施例で用いる略記号は、次のとおりである。
・MMA:メチルメタクリレート
・MAA:メタクリル酸
・AIBN:α,α'-アゾビスイソブチロニトリル
・PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・C-Nap:5,12-ジヒドロ-12,12-ビス[4-[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]-N,N,5-トリフェニル-ベンゾ[f]インデノ[1,2-b]ホスフィンドール-2-アミン5-オキシド(東京化成工業(株)製、商品名C-Naphox-TEG
・R110:ローダミン110クロライド(東京化成工業(株)製)
・CR-97:酸化チタン粒子(平均粒子径0.25μm、石原産業(株)製)
・DFX-18:フタージェント(登録商標)DFX-18(ネオス(株)製)
【0062】
[合成例1]ポリマー溶液の調製
MMA80.0g、MAA20.0g、AIBN2.5gをPGME190.0gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液P1(固形分濃度30質量%)を得た。得られたアクリル重合体のMnは9,900、Mwは17,300であった。
【0063】
[実施例1~3、比較例1]波長変換膜形成用組成物の調製及びその評価
(1)波長変換膜形成用組成物の調製
表1に示す組成で各成分を混合し、得られた混合物を孔径が0.2μmのPTFEフィルターを用いて濾過することで、波長変換膜形成用組成物を調製した。なお、表1中の組成比は固形分での比を表すものとする。
【0064】
【表1】
【0065】
(2)評価1:膜特性の評価
実施例1~3及び比較例1の波長変換膜形成用組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、100℃で120秒間、ホットプレート上でプリベークを行い、膜厚10μmの塗膜試料を得た。その後、実施例1~3の塗膜試料については160℃で30分間のポストベークを行った。得られた塗膜試料について、日本電色工業(株)製濁度計NDH5000を用いて、ASTM D 1003-61に即した測定方法でヘイズ値を測定した。
次に、塗膜試料を(株)シーシーエス製青色LEDライト(発光ピーク波長450nm)の上に重ね、LEDライトを点灯し、塗膜試料を介して発せられた光を、ウシオ電機(株)製分光放射照度計USR-45を用いて測定し、結果(1)とした。結果(1)における480nm以上の波長領域で最大の放射照度を示す波長を「発光波長」とした。ただし、波長480nmでの照度が最大となる場合は塗膜試料からの発光とLEDライトの透過光の波長の重なりにより測定が困難であることから「<480」と記載した。
同様に、塗膜試料を除きLEDライトのみから発せられた光を同様に測定し、結果(2)とした。得られた分光放射照度スペクトルから、結果(2)の480nm以下の波長の光の光子数を「励起光光子数」とした。同様に、結果(1)の480nm以下の波長の光の光子数を「透過光光子数」とした。同様に結果(1)の480nmを超える波長の光の光子数を「発光光子数」とした。
以下の式により「青色光吸収率」及び「変換効率」を算出した。
青色光吸収率 = (励起光光子数 - 透過光光子数)÷ 励起光光子数
変換効率 = 発光光子数 ÷ 励起光光子数
【0066】
(3)評価2:耐光性の評価
評価1で用いた塗膜試料に対し、HOYA(株)製シャープカットフィルターL42を重ね合わせ、Q-Lab社製キセノン試験機Q-SUN Xe-1を用いて、window-Qフィルターを取り付けた状態でブラックパネル温度63℃、60μW/m2(TUV)の条件で20時間の光照射を行った。光照射後の塗膜試料に対し、評価1と同様に発光波長、青色光吸収率、変換効率の測定を行った。光照射前後の発光波長の差を発光波長の「変化」とした。光照射後の青色光吸収率を光照射前の青色光吸収率で割った値を青色光吸収率の「維持率」、光照射後の変換効率を光照射前の変換効率で割った値を変換効率の「維持率」とした。
評価1及び2の結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示したように、本発明の要件を満たす実施例1~3では、いずれも評価1における変換効率が高く、評価2における青色光吸収率及び変換効率の維持率が高かった。さらに、実施例2及び3では、評価2における発光波長の変化も小さかった。これに対し、本発明の要件を満たさない色素を用いた比較例1では、評価1における変換効率が低く、評価2における青色光吸収率及び変換効率の維持率が低く、また、実施例2及び3に比べて評価2における発光波長の変化が大きかった。