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特開2022-143651配管監視装置、配管監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143651
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】配管監視装置、配管監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220926BHJP
   B65G 53/66 20060101ALI20220926BHJP
   F17D 5/06 20060101ALI20220926BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220926BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
B65G53/66 C
F17D5/06
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044287
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】富樫 敏侑
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3F047
3J071
【Fターム(参考)】
2G024AD33
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
3F047AA03
3J071EE06
3J071EE19
3J071EE31
3J071FF01
(57)【要約】
【課題】運転条件に応じた配管の状態判定を容易に行うことが可能な配管監視装置、配管監視方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】前段から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けたセンサ装置が検出する、配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、取得部が取得する信号に基づきパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、第1の期間に得られたパワースペクトル重心の周波数の第1の移動平均値と、第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られたパワースペクトル重心の周波数の第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、第1の移動平均値と第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、輸送対象の輸送状態が正常かどうか判定する判定部とを備える配管監視装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、
前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、
第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、
前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、
を備える、配管監視装置。
【請求項2】
前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、
前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、
第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、
前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、
を備える、配管監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記輸送対象の輸送状態が正常でないと判定した場合、前記設備の動作状態に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを再度判定する、
請求項1又は請求項2に記載の配管監視装置。
【請求項4】
前記移動平均値算出部は、前記第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心に基づき前記第1の移動平均値を算出し、前記第2の期間において得られた前記パワースペクトルの重心に基づき前記第2の移動平均値を算出する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配管監視装置。
【請求項5】
前記移動平均値算出部は、前記第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心に基づき前記第1の移動平均値を算出し、算出した前記第1の移動平均値の内、前記第2の期間に含まれる前記第1の移動平均値に基づき前記第2の移動平均値を算出する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配管監視装置。
【請求項6】
前記第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心及び前記移動平均値算出部によって算出された前記第1の移動平均値は、リングバッファに保存される
請求項5に記載の配管監視装置。
【請求項7】
前記取得部は、可聴領域の音の音響信号を取得する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配管監視装置。
【請求項8】
取得部が、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する過程と、
パワースペクトル算出部が、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出する過程と、
重心算出部が、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する過程と、
移動平均値算出部が、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する過程と、
判定部が、前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する過程と、
を含む、配管監視方法。
【請求項9】
取得部が、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する過程と、
パワースペクトル算出部が、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出する過程と、
重心算出部が、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する過程と、
移動平均値算出部が、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する過程と、
判定部が、前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する過程と、
を含む、配管監視方法。
【請求項10】
コンピュータを、
前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、
前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、
第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、
前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、
として機能させる、プログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、
前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、
第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、
前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管監視装置、配管監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理施設等のプラントにおいて乾燥処理や、炭化処理された汚泥を輸送する際に、配管内を空気輸送させる技術が採用されている場合がある。当該技術では、配管内を輸送されている汚泥が配管に付着することで、配管に詰まりが生じ、設備の停止を余技なくされる場合がある。そこで、配管の詰まりを検出するための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、配管内で生じる音に基づき、配管内に詰まりが生じているか否かを判定する技術が開示されている。例えば、特許文献1の技術では、配管に取り付けた音響センサによって配管内における粉粒体の衝突音を取得し、取得した衝突音の周波数解析結果に基づき、配管の詰まりを検出する。具体的に、衝突音の周波数スペクトルが予め決めた規定量を下回った場合、配管に詰まりが生じていると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-206546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配管内における衝突音の周波数スペクトルは、配管に詰まりが生じているか否かだけでなく、設備の運転条件に応じて変化し得る。そのため、配管に詰まりが生じているか否かの判定基準には、特許文献1の技術のように規定量が設定されるのではなく、運転条件に応じた判定基準が設定されることが望ましい。しかしながら、運転条件を変更する度に運転条件に応じた判定基準を設定することは、ユーザにとって手間である。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、運転条件に応じた配管の状態判定を容易に行うことが可能な配管監視装置、配管監視方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る配管監視装置は、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る、配管監視装置は、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る、配管監視方法は、取得部が、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する過程と、パワースペクトル算出部が、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出する過程と、重心算出部が、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する過程と、移動平均値算出部が、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する過程と、判定部が、前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する過程と、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係る、配管監視方法は、取得部が、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する過程と、パワースペクトル算出部が、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出する過程と、重心算出部が、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する過程と、移動平均値算出部が、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する過程と、判定部が、前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する過程と、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、前記第1の移動平均値と前記第2の移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、として機能させる。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管に取り付けられたセンサ装置によって検出される、前記配管を伝播する音の信号を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記信号に基づいてパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出部と、前記パワースペクトル算出部によって算出された前記パワースペクトルの重心を算出する重心算出部と、第1の期間において得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第1の移動平均値を算出し、前記第1の期間の少なくとも一部の期間を含み、当該第1の期間よりも長い期間である第2の期間に得られた前記パワースペクトルの重心の移動平均である第2の移動平均値を算出する移動平均値算出部と、前記第1の期間または前記第2の期間に応じて定まる第3の期間における前記第2の移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、前記輸送対象の輸送状態が正常であるか否かを判定する判定部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転条件に応じた配管の状態判定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る配管監視システムの概要を示す図である。
図2】本実施形態に係る配管監視装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る移動平均値算出の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る内部状態の判定の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る配管監視装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、前段の設備から後段の設備へ輸送対象を輸送する配管における、輸送対象の輸送状態を監視するための技術に関する。
配管は、固体、液体、気体、粉体等の輸送対象を輸送するための管である。配管では、輸送対象が配管の内壁に付着したり堆積したりすることによって配管に詰まりが生じ得る。配管の詰まりは、輸送対象の輸送状態に影響し得る。また、配管2に詰まりが生じると、詰まりを解消するために設備を停止せざるを得なくなり、設備の稼働率が低下してしまう。そこで、配管の詰まりを検知する技術が求められる。しかしながら、配管が詰まりきってから詰まりを検知しても、設備を停止せざるを得ないことに変わりはない。そこで、本発明では、配管を伝播する音に基づき、輸送対象の輸送状態の変化を監視し、当該輸送状態の変化から配管が詰まりきる前に詰まりを検知する。これにより、配管の詰まりを早期に検知し、早期に対処することが可能となり、設備の稼働率を向上することができる。
【0016】
以下で説明する実施形態では、水処理施設の設備(設備の一例)にて、汚泥(輸送対象の一例)を空気輸送(輸送方式の一例)する配管における汚泥の輸送状態を監視する例について説明する。また、汚泥の輸送状態が正常な状態は、例えば、汚泥の輸送速度が安定している状態や、汚泥の輸送量が安定している状態である。汚泥の輸送速度や輸送量は、例えば、配管の内壁に対する汚泥の付着や堆積の程度(即ち詰まり具合)等の状態(以下、「内部状態」とも称される)に影響を受け、輸送状態が正常でない状態となり得る。一例として、汚泥の輸送速度の低下や輸送量の減少等の正常でない輸送状態は、配管の内壁に対する汚泥の付着量や堆積量の増加によって起こり得る。即ち、汚泥の輸送状態が正常な状態であれば配管内部も内部状態がなく正常であり、汚泥の輸送状態が正常ではない状態であれば配管も内部状態があり正常ではない状態であるといえる。なお、以下で説明する実施形態では、汚泥の輸送状態を監視するために、配管2の内部状態を監視する例について説明する。配管2において、内部状態がない状態であることは、配管2に詰まりが生じていないことを意味する。一方、配管2において、内部状態がある状態であることは、詰まりの具合に関わらず、少なくとも汚泥の輸送が正常でない状態(異常な状態)になり始めていることを意味する。
なお、輸送対象、輸送方式、及び監視対象はかかる例に限定されない。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0017】
<1.システム概要>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る配管監視システムの概要について説明する。図1は、本実施形態に係る配管監視システムの概要を示す図である。図1に示すように、配管監視システム1は、マイクロホン10と配管監視装置20で構成される。
マイクロホン10は、配管2に取り付けられている。また、マイクロホン10は、配管監視装置20と無線或いは有線で接続されている。
【0018】
マイクロホン10は、音を検出するセンサ装置である。本実施形態に係るマイクロホン10は、周波数が可聴領域(下限は20Hz、上限は20kHz)の音を検出可能なものが好ましい。
マイクロホン10は、図1に示すように配管2の外側(具体的には配管2の外壁)に取り付けられることで、配管2を伝播する音を検出することができる。配管2を伝播する音は、例えば、配管2の内壁と、配管2を流れる汚泥との摩擦によって生じる摩擦音である。マイクロホン10は、当該摩擦音を検出する。マイクロホン10は、検出した音を電気信号に変換し、変換した電気信号を配管監視装置20へ送信する。以下、マイクロホン10が検出した音の電気信号は、「音響信号」とも称される。
【0019】
マイクロホン10は、例えば、コンクリートマイクである。本実施形態では、コンクリートマイクが有するピエゾ素子が配管2に直接取り付け可能な構造であることが好ましい。コンクリートマイクは、ピエゾ素子が配管2に直接取り付けられることで、配管2の周囲で生じる環境音などの外乱となる音の検出を最小限に抑えることができる。これにより、マイクロホン10から配管監視装置20へ送信される音響信号におけるSN(signal-noise)比が高くなる。即ち、マイクロホン10による配管2を伝播する音の検出精度が高くなる。
なお、配管2に取り付けるマイクロホン10の数は、特に限定されない。例えば、配管2の内部状態の発生が想定される箇所の外側に少なくとも1つのマイクロホン10が取り付けられればよい。また、配管2に置いてマイクロホン10が取り付けられる位置は、特に限定されない。例えば、マイクロホン10は、配管2の内壁が形成する空間(即ち汚泥の輸送路)に設けられてもよいし、配管2の内壁と外壁との間に設けられてもよい。また、マイクロホン10は、配管2の外壁に対して間接的に取り付けられてもよい。
【0020】
配管監視装置20は、配管2の内部状態を監視する装置である。例えば、配管監視装置20は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、サーバ装置等によって実現される。
【0021】
配管監視装置20は、マイクロホン10による配管2を伝播する音の検出結果を利用して、配管2の内部状態を判定する。配管2を伝播する摩擦音は定常性が高く、ほとんどの運転時間が正常(安定)状態のため、摩擦音のパワースペクトルの重心(以下、「パワースペクトル重心」とも称される)は、ほぼ一定の振幅で変動している(ある一定の振幅で移動平均でみた絶対値は安定した状態)。しかしながら、配管2に詰まりが生じ始めると、摩擦音に変化が生じ、摩擦音のパワースペクトル重心の振幅にばらつきが生じえる(振動の振幅が不安定となり移動平均でみた絶対値も変動した状態)。そこで、本実施形態に係る配管監視装置20は、配管2を伝播する摩擦音のパワースペクトル重心の変化に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。具体的に、配管監視装置20は、摩擦音のパワースペクトル重心の移動平均値を利用し、パワースペクトル重心の移動平均値の長時間の変化傾向と、現時刻のパワースペクトル重心の移動平均値の差より、正常ではない状態(即ち異常状態)を判定する。
【0022】
ところで、配管監視装置20による判定の結果、正常ではない状態、即ち配管2に詰まりが生じ始めていると判断したとしても、配管2に詰まりが生じていない場合も想定される。例えば、前段にある設備(上流工程の設備)が停止することで汚泥の輸送量が変化した場合などに起こり得る。上流工程の設備は、例えば、乾燥機、脱水機、消化タンクなどの輸送前に処理する機器、ポンプ、及び送風機等である。
そこで、配管監視装置20は、摩擦音に基づく判定結果と各種設備の運転状態とを併せて、配管2の内部状態を最終的に判定する。これにより、配管2の異常状態の誤検出と設備の誤停止を防ぎ、設備の稼働率を低下させることを防ぐことができる。
【0023】
配管監視装置20は、最終的に配管2が内部状態のある状態であると判定した場合、上流工程の設備や運転員へ異常を検知したことを通知する。これにより、例えば上流工程の設備は、異常に応じて、設備の運転条件を変更することができる。また、例えば運転員は、配管2の異常状態の対処を行うことができる。
【0024】
<2.配管監視装置の構成>
以上、本実施形態に係る配管監視システム1の概要について説明した。続いて、図2から図4を参照して、本実施形態に係る配管監視装置20の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る配管監視装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、配管監視装置20は、通信部200、制御部210、記憶部220、及び出力部230を備える。
【0025】
(1)通信部200
通信部200は、各種通信を行う機能を有する。例えば、通信部200は、有線LAN(Local Area Network)通信または無線LAN通信を利用して、他の設備(機器)と各種通信を行う。例えば、通信部200は、マイクロホン10との通信によって、音響信号をマイクロホン10から受信する。また、通信部200は、上流工程の設備不図示)との通信によって、配管2の内部状態が異常状態であることの通知や制御信号等を上流工程の設備へ送信する。また、通信部200は、ユーザ端末(不図示)との通信によって、配管2の内部状態が異常状態であることの通知(例えばメール)をユーザ端末へ送信する。
【0026】
(2)制御部210
制御部210は、配管監視装置20の動作全般を制御する機能を有する。例えば、制御部210は、例えば、配管監視装置20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部210は、取得部211、パワースペクトル算出部212、重心算出部213、移動平均値算出部214、判定部215、及び出力処理部216を備える。
【0027】
(2-1)取得部211
取得部211は、音響信号を取得する機能を有する。例えば、取得部211は、通信部200を介して、マイクロホン10が検出した配管2を伝播する音の音響信号を取得する。本実施形態の取得部211は、一例として、連続的に音響信号を取得する。取得部211は、計測時刻が到来するごとに音響信号を取得してもよい。即ち、取得部211は、継続的に音響信号を取得している。取得部211は、取得した音響信号をパワースペクトル算出部212へ出力する。なお、本実施形態において取得部211が取得する音響信号は、周波数が可聴領域の音の音響信号である。
【0028】
(2-2)パワースペクトル算出部212
パワースペクトル算出部212は、音響信号のパワースペクトルを算出する機能を有する。例えば、パワースペクトル算出部212は、連続的に取得部211によって取得される音響信号に基づいてパワースペクトルを算出する。具体的に、パワースペクトル算出部212は、音響信号を所定の時間間隔(例えば数十ミリ秒間隔)に分割し、分割した音響信号ごとにFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を行うことで、各音響信号のパワースペクトルを算出する。パワースペクトル算出部212は、算出したパワースペクトルを重心算出部213へ出力する。
【0029】
なお、音響信号にノイズがある場合など周波数領域での雑音成分が多い場合がある。雑音成分が多い音響信号を用いてパワースペクトルが算出されると、後述の処理の精度に影響し得る。例えば、後述する重心算出部213にて算出されるパワースペクトル重心の値が大きく変動する可能性がある。そこで、パワースペクトル算出部212は、再度FFTを行うことでケプストラムを取得し、パワースペクトルの概形であるスペクトル包絡を求める。概形であるパワースペクトル包絡を用いることで、重心算出部213が算出するパワースペクトル重心の安定性は高くなる。
【0030】
(2-3)重心算出部213
重心算出部213は、音響信号のパワースペクトル重心を算出する機能を有する。例えば、重心算出部213は、パワースペクトル算出部212によって算出されたパワースペクトルのパワースペクトル重心を算出する。重心算出部213は、算出したパワースペクトル重心を記憶部220へ出力し、一時的に記憶させる。なお、本実施形態では、重心算出部213は、算出したパワースペクトル重心を記憶部220のリングバッファ(第1のリングバッファ)に一時的に記憶(保存)させる。
【0031】
なお、音響信号によってノイズが多い場合、重心算出部213は、上述したようにパワースペクトル算出部212が求めたパワースペクトル包絡を用いて、パワースペクトル重心を算出する。摩擦音が定常的な音である場合、パワースペクトル及びその概形であるパワースペクトル包絡の形状はほぼ一定であり、その重心値は短時間で変化せず、一定の値で推移する。
【0032】
(2-4)移動平均値算出部214
移動平均値算出部214は、パワースペクトル重心に関する移動平均値を算出する機能を有する。例えば、移動平均値算出部214は、所定の期間に算出された複数のパワースペクトル重心から、パワースペクトル重心の移動平均値を算出する。本実施形態では、移動平均値算出部214は、短期移動平均値(第1の移動平均値)と長期移動平均値(第2の移動平均値)を算出する。
【0033】
短期移動平均値は、短期期間(第1の期間)において得られたパワースペクトル重心の移動平均である。短期期間は、例えば、30秒から2分程度である。
例えば、移動平均値算出部214は、短期期間において得られたパワースペクトル重心に基づき短期移動平均値を算出する。なお、短期移動平均値の算出に用いるパワースペクトル重心は、記憶部220の第1のリングバッファに格納されているものである。移動平均値算出部214は、例えば、記憶部220の第1のリングバッファの最後のバッファにパワースペクトル重心が格納された際に、当該第1のリングバッファに格納されている複数のパワースペクトル重心の各々から短期移動平均値を算出する。そのため、第1のリングバッファにおいてパワースペクトル重心が格納されるバッファの数は、例えば、短期期間として設定される時間に基づき、当該短期期間に算出されるパワースペクトル重心を格納可能に設定される。
移動平均値算出部214は、算出した短期移動平均値を記憶部220へ出力し、一時的に記憶(保存)させる。なお、本実施形態では、移動平均値算出部214は、算出した短期移動平均値を記憶部220のリングバッファ(第2のリングバッファ)に一時的に記憶させる。
【0034】
長期移動平均値は、短期期間の少なくとも一部の期間を含み、当該短期期間よりも長い期間である長期期間(第2の期間)に得られたパワースペクトル重心の移動平均値である。長期期間は、例えば、20分から1時間程度である。
例えば、移動平均値算出部214は、算出した短期移動平均値の内、長期期間に含まれる短期移動平均値に基づき長期移動平均値を算出する。なお、長期移動平均値の算出に用いる短期移動平均値は、記憶部220の第2のリングバッファに格納されているものである。移動平均値算出部214は、例えば、記憶部220の第2のリングバッファの最後のバッファに短期移動平均値が格納された際に、当該第2のリングバッファに格納されている複数の短期移動平均値から長期移動平均値を算出する。そのため、第2のリングバッファにおいて短期移動平均値が格納されるバッファの数は、例えば、長期期間として設定される時間に基づき、当該長期期間に算出される短期移動平均値を格納可能に設定される。
【0035】
ここで、図3を参照して、移動平均値の算出の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る移動平均値算出の一例を示す図である。図3に示す音響信号30は、取得部211によって取得される音響信号である。
【0036】
まず、パワースペクトル算出部212は、取得部211によって取得された音響信号30を所定の時間間隔に分割する。例えば、図3に示すように、パワースペクトル算出部212は、分割したn個(nは自然数)の音響信号30-1~30-nの各々に対してFFTを行い、n個のパワースペクトル(不図示)を算出する。なお、パワースペクトル算出部212は、n個のパワースペクトルの算出を繰り返し行う。
【0037】
次いで、重心算出部213は、パワースペクトル算出部212が算出したn個のパワースペクトルに基づいて、n個のパワースペクトル重心40-1~40-nを算出する。重心算出部213は、算出したパワースペクトル重心40-1~40-nを順に第1のリングバッファ50へ格納する。具体的に、重心算出部213は、パワースペクトル重心40-1をバッファ50-1へ、パワースペクトル重心40-2をバッファ50-2へ、パワースペクトル重心40-nをバッファ50-nへ格納する。なお、バッファ50-nへパワースペクトル重心40-nを格納した場合、重心算出部213は、次に算出されるパワースペクトル重心をバッファ50-1へ格納し、n個のパワースペクトル重心の格納を繰り返す。
【0038】
次いで、移動平均値算出部214は、第1のリングバッファ50のバッファ50-nにパワースペクトル重心40-nが格納された際に、第1のリングバッファ50に格納されたn個のパワースペクトル重心に基づいて、パワースペクトル重心の短期移動平均値60を算出する。移動平均値算出部214は、算出した短期移動平均値60を第2のリングバッファ70へ格納する。具体的に、移動平均値算出部214は、第1のリングバッファ50のバッファ50-nにパワースペクトル重心40-nが格納される度に、算出した短期移動平均値60を順に、第2のリングバッファ70のバッファ70-1~70-m(mは自然数)へ格納する。なお、バッファ70-mへ短期移動平均値60-mを格納した場合、移動平均値算出部214は、次に算出される短期移動平均値をバッファ70-1へ格納し、m個の短期移動平均値の格納を繰り返す。
【0039】
最後に、移動平均値算出部214は、第2のリングバッファ70のバッファ70-mに短期移動平均値60-mが格納された際に、第2のリングバッファ70に格納されたm個の短期移動平均値に基づいて、長期移動平均値80を算出する。
【0040】
(2-5)判定部215
判定部215は、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する機能を有する。例えば、判定部215は、移動平均値算出部214が算出したパワースペクトル重心の移動平均値に基づき、配管2の内部状態が正常な状態であるか否かを判定する。具体的に、判定部215は、短期移動平均値と長期移動平均値との差分(例えば偏差)を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。より具体的に、短期移動平均値と長期移動平均値との差分が基準値以上である場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常な状態でないと判定する。一方、短期移動平均と長期移動平均との差分が基準値以上でない場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常な状態であると判定する。なお、判定部215は、当該差分が基準値以上である場合に配管2の内部状態が正常な状態であると判定し、当該差分が基準値以上でない場合に配管2の内部状態が正常な状態でないと判定してもよい。
【0041】
ところで、配管2に汚泥が流れている状態が正常な内部状態であり、配管2に汚泥が流れていない状態が正常ではない内部状態であるとする。配管2に汚泥が流れていない状態は、配管2が詰まっている場合や、上流工程にて汚泥を流す設備の動作が停止した場合に起こり得る。即ち、実際には配管2が詰まっておらず正常な内部状態であっても、上流工程で設備の動作が停止している場合には、移動平均値のみに基づく判定によって、正常ではない内部状態であると判定される場合がある。そこで、判定部215は、移動平均値に基づき配管2の内部状態が正常ではないと判定した場合、設備の動作状態に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを再度判定する。例えば、上流工程の設備が停止している場合、即ち上流工程の設備の動作状態に基づく異常判定が行われた場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常ではないと判定してもよい。上流工程の設備の動作状態は、例えば、当該設備から受信する動作パラメータ等によって判定可能である。
【0042】
ここで、図4を参照して、内部状態の判定の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る内部状態の判定の一例を示す図である。図4の横軸は時間、縦軸はパワースペクトル重心を示す。図4のグラフG1はパワースペクトル重心、グラフG2は短期移動平均値、グラフG3は長期移動平均値を示す。図4中の「両矢印(異常判定時間)」は、配管2の内部状態が異常であると判定された時間を示す。なお、図4に示す時間tから時間tの間では、上流工程において汚泥を輸送するための設備の運転が一次的に停止されたものとする。
【0043】
例えば、図4に示す時間t1からt2の間にて、グラフG2が示す短期移動平均値とグラフG3が示す長期移動平均値の差分が基準値以上であったとする。この場合、判定部215は、移動平均値に基づき、配管2の内部状態が正常な状態ではないとひとまず判定する。しかしながら、上述したように、時間tから時間tの間では、上流工程において汚泥を輸送するための設備の運転が一次的に停止されている。よって、判定部215は、上流工程の設備の運転状態も考慮し、時間tからtの間における配管2の内部状態が正常な状態であると判定する。
また、図4の時間t以降において、グラフG2が示す短期移動平均値とグラフG3が示す長期移動平均値の差分が基準値以上であることから、異常と判定された箇所が複数存在している。なお、時間tから時間tの間以外では、上流工程において汚泥を輸送するための設備の運転は継続されている。よって時間t以降においてグラフG2が示す短期移動平均値とグラフG3が示す長期移動平均値の差分が基準値以上である場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常な状態ではないと判定する。
【0044】
(2-6)出力処理部216
出力処理部216は、各種の出力を制御する機能を有する。
例えば、出力処理部216は、出力部230への出力を制御する。一例として、出力処理部216は、判定部215による判定結果や図4に示したグラフ等を出力部230に表示させる。
また、出力処理部216は、上流工程の設備への出力を制御する。一例として、出力処理部216は、配管2の内部状態が異常状態であることの通知や制御信号等を上流工程の設備へ送信させる。
また、出力処理部216は、ユーザ端末への出力を制御する。一例として、出力処理部216は、配管2の内部状態が異常状態であることの通知(例えばメール)をユーザ端末へ送信させる。
【0045】
(3)記憶部220
記憶部220は、配管監視装置20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0046】
記憶部220は、各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部220は、重心算出部213によって算出されたパワースペクトル重心を第1のリングバッファに記憶する。また、記憶部220は、移動平均値算出部214によって算出された短期移動平均値を第2のリングバッファに記憶する。
【0047】
(4)出力部230
出力部230は、各種情報を出力する機能を有する。例えば、出力部230は、出力処理部216から入力される判定部215による判定結果や図4に示したグラフ等を表示する。
【0048】
<3.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る配管監視装置20の機能構成について説明した。続いて、図5を参照して、本実施形態に係る配管監視装置20における処理の流れの一例について説明する。図5は、本実施形態に係る配管監視装置20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
図5に示すように、まず、取得部211は、通信部200がマイクロホン10から受信した音響信号を取得する(ステップS100)。
次いで、パワースペクトル算出部212は、取得部211が取得した音響信号からパワースペクトルを算出する(ステップS101)。
次いで、重心算出部213は、パワースペクトル算出部212が算出したパワースペクトルから、パワースペクトル重心を算出する(ステップS102)。重心算出部213は、算出したパワースペクトル重心を記憶部220の第1のリングバッファに記憶させる。
【0050】
次いで、移動平均値算出部214は、移動平均値を算出する(ステップS103)。具体的に、移動平均値算出部214は、記憶部220の第1のリングバッファの全てのバッファにパワースペクトル重心が格納された際に、当該第1のリングバッファに格納されている複数のパワースペクトル重心に基づき、短期移動平均値を算出する。移動平均値算出部214は、算出した短期移動平均値を記憶部220の第2のリングバッファに記憶させる。移動平均値算出部214は、短期移動平均値の算出と記憶部220の第2のリングバッファへの格納を繰り返す。そして、第2のリングバッファの全てのバッファに短期移動平均値が格納された際に、当該第2のリングバッファに格納されている複数の短期移動平均値に基づき、長期移動平均値を算出する。
【0051】
次いで、判定部215は、移動平均値算出部214が算出した短期移動平均値と長期移動平均値の差分が基準値以上であるか否かを確認する(ステップS104)。当該差分が基準値以上でない場合(ステップS104/NO)、処理を終了する。即ち、判定部215は、配管2の内部状態が正常であると判定する。一方、当該差分が基準値以上である場合(ステップS104/YES)、処理をステップS105へ進める。即ち、判定部215は、配管2の内部状態が正常ではない(即ち異常状態)と判定する。
【0052】
ステップS105では、判定部215は、ステップS104にて判定した異常状態が、設備の動作状態に起因するものであるか否かを判定する。異常状態が設備の動作状態に起因するものである場合(ステップS105/YES)、処理を終了する。即ち、判定部215は、配管2の内部状態が正常であると判定する。一方、異常状態が設備の動作状態に起因するものでない場合(ステップS105/NO)、処理をステップS106へ進める。即ち、判定部215は、配管2の内部状態が正常ではない(即ち異常状態)と判定する。
【0053】
ステップS106では、出力処理部216は、ステップS106にて配管2の内部状態が異常判定であると判定されたため、異常の通知を行う。例えば、出力処理部216は、出力部230に異常判定の結果を表示させる。また、出力処理部216は、上流工程の設備やユーザ端末へ異常判定の結果を通知してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る配管監視装置20は、取得部211、パワースペクトル算出部212、重心算出部213、移動平均値算出部214、及び判定部215を備える。
取得部211は、前段の設備から後段の設備へ汚泥を輸送する配管2を伝播する音の音響信号を取得する。パワースペクトル算出部212は、取得部211によって取得される音響信号に基づいてパワースペクトルを算出する。重心算出部213は、パワースペクトル算出部212によって算出されたパワースペクトルの重心を算出する。移動平均値算出部214は、短期移動平均値と長期移動平均値を算出する。判定部215は、短期移動平均値と長期移動平均値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。
【0055】
かかる構成により、本実施形態に係る配管監視装置20は、短期移動平均値と長期移動平均値との比較によって、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。短期移動平均値と長期移動平均値は、配管2の内部状態だけでなく、運転条件によっても変化し得る値である。即ち、配管監視装置20は、予め決められた規定量を判定基準として用いることなく、運転条件も考慮された移動平均値同士の比較によって配管2の内部状態を判定することできる。
これにより、ユーザは、運転条件も考慮して配管2の内部状態を判定するために、運転条件に応じた判定基準を都度設定する必要がなくなる。
よって、本実施形態に係る配管監視装置20は、運転条件に応じた配管の状態判定を容易に行うことを可能とする。
【0056】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の各実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、移動平均値算出部214が第1のリングバッファと第2のリングバッファを用いて、短期移動平均値から長期移動平均値を算出する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、移動平均値算出部214は、所定の期間において得られたパワースペクトル重心に基づき短期移動平均値を算出するとともに、当該所定期間より長期間において得られたパワースペクトル重心に基づき長期移動平均値を算出してもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、判定部215が、短期移動平均値と長期移動平均値との差分に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、判定部215は、短期期間におけるパワースペクトル重心の分散値と長期移動平均値の分散値との差分(偏差)に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定してもよい。具体的に、短期期間におけるパワースペクトル重心の分散値と長期移動平均値の分散値との差分を求め、基準値に対する当該差分の大小関係に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。当該差分が基準値以上である場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常でないと判定する。一方、当該差分が基準値以上でない場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常であると判定する。
【0059】
また、判定部215は、移動平均値算出部214によって算出される長期移動平均値のみに基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定してもよい。具体的に、第3の期間における長期移動平均値の変化率を求め、基準値に対する当該変化率の大小関係に基づき、配管2の内部状態が正常であるか否かを判定する。例えば、当該変化率が基準値以上である場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常でないと判定する。一方、当該変化率が基準値以上でない場合、判定部215は、配管2の内部状態が正常であると判定する。
ここで、変化率は、例えば、図4に示した長期移動平均値のグラフG3において、短期期間または長期期間に応じて定まる任意の期間(第3の期間)におけるグラフの傾きである。図4に示すように、短期移動平均値と長期移動平均値の差分によって異常と判定された場合、長期移動平均値のグラフG3の傾きが増加傾向にある。よって、判定部215は、長期移動平均値のグラフG3の傾きが基準値以上であり、長期移動平均値が増加傾向であることを示す場合、配管2の内部状態が異常であると判定することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。なお、上述した実施形態における配管監視装置20をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0061】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 配管監視システム
2 配管
10 マイクロホン
20 配管監視装置
30 音響信号
40 パワースペクトル重心
50 第1のリングバッファ
60 短期移動平均値
70 第2のリングバッファ
80 長期移動平均値
200 通信部
210 制御部
211 取得部
212 パワースペクトル算出部
213 重心算出部
214 移動平均値算出部
215 判定部
216 出力処理部
図1
図2
図3
図4
図5