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特開2022-143680負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143680
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/60 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A62C35/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044330
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 徹
(72)【発明者】
【氏名】川尻 朋之
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CA08
2E189CA10
(57)【要約】
【課題】 監視時において配管やスプリンクラーヘッドが破損したときにおいて二次側配管内の漏水を防ぐに足りる負圧を維持する時間を引き延ばすことができるようにする。
【解決手段】 吸引管108における二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aへの接続部108Aに近い側の部分の上部に、負圧空気容量増大装置であるバッファタンク2を接続する。バッファタンク2は、吸引管108におけるそれの接続部からオリフィス付き自動弁112に至る部分の負圧空気容積よりも大きい容積とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動式流水検知装置と、
前記予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、
一端側を前記二次側配管の立ち上げ分岐管に接続すると共に、多端側を真空ポンプに連通し、途中部に、二次側配管側から真空スイッチ、オリフィス付き自動弁を配置した吸引管とからなり、
前記真空ポンプをもって前記二次側配管の内部を吸引することで、該二次側配管内に充填された水を常態として負圧状態に維持する負圧湿式予作動式スプリンクラー設備において、
負圧空気容量増大装置により前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめたことを特徴とする負圧湿式予作動式スプリンクラー設備。
【請求項2】
前記負圧空気容量増大装置は、バッファタンクであり、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分の上部に、前記バッファタンクを接続し、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめた請求項1記載の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備。
【請求項3】
前記バッファタンクと前記吸引管との接続部のバッファタンク側に、該バッファタンクに流入する水の流量を調節するオリフィスを設けてなる請求項2記載の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備。
【請求項4】
前記負圧空気容量増大装置は、バイパス管であり、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分に、前記バイパス管を設け、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめた請求項1記載の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備。
【請求項5】
前記負圧空気容量増大装置は、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分の管径を、他の部分に比して大径としたものであり、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめた請求項1記載の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動式スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動式スプリンクラー設備がある。
【0003】
図10は斯かる負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動式スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。スプリンクラーヘッド105は、火災の熱により開放する閉鎖型である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aに一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管である。
【0007】
112は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常監視時には少量の、配管破損やスプリンクラーヘッド破損等の異常時には多量の流通量とし、放水時には閉止するオリフィス付き自動弁である。
【0008】
113は前記吸引管108の途中部における前記オリフィス付き自動弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0009】
114は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0010】
115は前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とする。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0011】
そして、火災発生時以外のときには一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0012】
而して、火災発生時においては、火災感知器107が火災を感知すると火災信号を信号受信盤114に送信し、そして該信号受信盤114から該信号を制御盤115に送信する。該信号を受信した制御盤115は予作動式流水検知装置106を開状態とする。その後配管内の圧力変化を検知して、送水ポンプ103が起動する。これにより火災の熱により開放しているスプリンクラーヘッド105から放水が連続して行われるものである。尚、斯かる際には、オリフィス付き自動弁112は、オリフィスを通して少量の流量になり、真空ポンプ109の作動は停止される。そして、上記の通り二次側配管104内には常時水が充填されていることから、火災発生時には速やかに放水することができるものである。
【0013】
また、火災発生時以外の監視時にあって配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が発生したときには、二次側配管104内が負圧であるため漏水は発生しないが、次第に圧力が上昇してゆく。圧力が上昇してゆき所定の圧力まで達すると、吸引管108の途中部に設置された真空スイッチ113によってこれが検知され、オリフィス付き自動弁112が通電されてその弁体が開き、多量の流通量とすると共に、真空ポンプ109も作動を開始し、もって多量の吸引が継続して行われるようになり、漏水が防止されることになるものである。
【0014】
従来における負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の構成及び作用は上記の通りである。而して、従来の斯かる設備において監視時における配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が発生したときにおける作用は、上記説明した通りである。然るに、斯かる異常事態の発生時における作用において、真空スイッチ113の作動から真空ポンプ109が作動を開始して充分な連続吸引が行われるまでの間には僅かなタイムラグがある。そして、このタイムラグにより二次側配管104内の負圧が維持できなくなり、破損した箇所から僅かながらではあるが漏水する虞があった。
【0015】
即ち、破損した箇所から吸い込まれる空気によって配管内を逆流し、押し出された水が二次側配管104から吸引管108内に流入し、そしてこの流入した水によって吸引管108内が満水状態になると、吸引管108部分内の負圧空気が減少し、二次側配管104内の漏水を防ぐに足りる負圧が維持できなくなる。そして、これにより破損した箇所から僅かながらではあるが漏水するという問題がある。尚、吸引管108の配管容積(負圧空気容積)には限りがあるため、スプリンクラーヘッドが大破した等、破損部分が大きいと2~3秒の間に吸引管108が満水状態となり、破損部分が大気圧となって水漏れしてしまうことになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、負圧空気容量増大装置により吸引管の部分の負圧空気容積を増大させることにより、吸引管の部分により多くの負圧空気を保持することができるようにして、監視時において配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が発生したとき、特に破損部分が大きく、二次側配管内の圧力上昇が急激なときにおいて、二次側配管内の漏水を防ぐに足りる負圧を維持する時間を引き延ばすことができるようになし、もって破損箇所からの漏水を効率よく防ぐことができるようになした負圧湿式予作動式スプリンクラー設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して、本発明の要旨とするところは、
予作動式流水検知装置と、
前記予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、
一端側を前記二次側配管の立ち上げ分岐管に接続すると共に、多端側を真空ポンプに連通し、途中部に、二次側配管側から真空スイッチ、オリフィス付き自動弁を配置した吸引管とからなり、
前記真空ポンプをもって前記二次側配管の内部を吸引することで、該二次側配管内に充填された水を常態として負圧状態に維持する負圧湿式予作動式スプリンクラー設備において、
負圧空気容量増大装置により前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめたことを特徴とする負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
にある。
【0018】
また、上記構成において、前記負圧空気容量増大装置は、バッファタンクであり、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分の上部に、前記バッファタンクを接続し、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめるようにしてもよい。
【0019】
また、上記構成において、前記バッファタンクと前記吸引管との接続部のバッファタンク側に、該バッファタンクに流入する水の流量を調節するオリフィスを設けるようにしてもよい。
【0020】
また、上記構成において、前記負圧空気容量増大装置は、バイパス管であり、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分に、前記バイパス管を設け、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめるようにしてもよい。
【0021】
また、上記構成において、前記負圧空気容量増大装置は、前記吸引管における前記二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部に近い側の部分の管径を、他の部分に比して大径としたものであり、もって前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記の如き構成であり、負圧空気容量増大装置により吸引管部分の負圧空気容積を増大せしめたものである。したがって、吸引管の部分により多くの負圧空気を保持することができるようになり、監視時において配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が発生したとき、特に破損部分が大きく、二次側配管内の圧力上昇が急激なときにおいて、二次側配管内の漏水を防ぐに足りる負圧を維持する時間を引き延ばすことができるようになるものである。即ち、配管やスプリンクラーヘッドの破損直後より真空スイッチが作動し、真空ポンプが作動を開始して充分な連続吸引が行われるまでの間において、破損箇所からの漏水を効率よく防ぐことができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の概略的説明図である。
図2】同第1実施形態におけるバッファタンクの正面図である。
図3】同第1実施形態の作用説明図であり、監視中の状態を示すものである。
図4】同第1実施形態の作用説明図であり、スプリンクラーヘッドの破損直後の状態を示すものである。
図5】同第1実施形態の作用説明図であり、真空スイッチの作動直後の状態を示すものである。
図6】同第1実施形態の作用説明図であり、バッファタンクに水が浸入し始めた状態を示すものである。
図7】本発明の第2実施形態に係る負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の概略的説明図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の要部の説明図である。
図9】スプリンクラーヘッドの大破損時における圧力変化を示すグラフである。
図10】従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
先ず、図1乃至図6に示した本発明の第1実施形態について説明する。
【0026】
基本的な構成においては、図10に示した従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備と同様である。したがって、同一の部材には同一の符号を付して説明する。
【0027】
図中、1は本発明の第1実施形態に係る負圧湿式予作動式スプリンクラー設備である。また、該負圧湿式予作動式スプリンクラー設備1は、消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管101と、前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管104と、前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置106と、天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器107と、前記二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aに一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管108と、前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常監視時には少量の、配管破損やスプリンクラーヘッド破損等の異常時には多量の流通量とし、放水時には閉止するオリフィス付き自動弁112と、前記吸引管108の途中部における前記オリフィス付き自動弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチ113と、火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤114と、前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプ103を作動させる制御盤115とからなるものである。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0028】
そして、火災発生時以外の正常時には一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0029】
また、本実施形態における火災が発生したとき並びに監視時において配管の破損やスプリンクラーヘッドの破損等の異常事態が発生したときにおける作用は、前記従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備と同様であるから、その説明は省略する。
【0030】
而して、本発明の特徴とするところは、負圧空気容量増大装置により前記吸引管の部分の負圧空気容積を増大せしめたことにあり、そして、本実施形態は、吸引管108における二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aへの接続部108Aに近い側の部分の上部に、負圧空気容量増大装置であるバッファタンク2を接続し、もって吸引管108の部分の負圧空気容積を増大せしめたものである。尚、前記バッファタンク2は、吸引管108におけるそれの接続部からオリフィス付き自動弁112に至る部分の負圧空気容積よりも大きい容積であることが望ましい。
【0031】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
図3は監視時における状態を示しており、二次側配管104のスプリンクラーヘッド105付近は、吸引管108を経由した真空ポンプ109で作られる負圧(図においては-0.08MPa)によって負圧(図においては-0.04MPa)が維持されている。また、吸引管108の部分より二次側配管104のスプリンクラーヘッド105付近の負圧値が低いのは、吸引管108と二次側配管104のスプリンクラーヘッド取付部(充水の最高部)との高低差(図では4m)が作用した位置水頭によるものである。尚、図においてPは気液分岐点を示す。
【0032】
二次側配管104内の圧力(負圧)が所定値まで下がると、真空ポンプ109は停止するが、該二次側配管104内の負圧は保たれる。そして、吸引管108の上部に接続されたバッファタンク2の内部も負圧に保たれる。尚、バッファタンク2を吸引管108の上部に接続する理由は、吸引管108内に流入した水がバッファタンク2内に浸入することを防ぎ、負圧空気のみとしておくためである。
【0033】
図4はスプリンクラーヘッドが破損した直後の状態を示しており、二次側配管104内が負圧であるため、スプリンクラーヘッド105の破損部分から空気Aが二次側配管104内に流れ込み始める。その結果、スプリンクラーヘッド105の破損部分の圧力は、図において-0.02MPaまで上昇している。同様に吸引管108内の圧力も、図において-0.06MPaまで上昇している。そして、空気Aの流れ込みにより、二次側配管104内の水は押し押し込まれ、吸引管108の内部に浸入し始める。図4においては水がバッファタンク2に迫っている様子を示している。
【0034】
図5は真空スイッチ作動直後の状態を示しており、吸引管108内は通常監視時においては負圧の空気で満たされているが、上記の通りスプリンクラーヘッド105の破損により空気Aが二次側配管104内に流れ込んだために、二次側配管104内の水が吸引管108内に流れ込み、そして真空スイッチ113が作動した後において更にこの水が吸引管108の内部全体に満ちてきたときにおいても、バッファタンク2内に負圧空気が存在することから、吸引管108内はまだそれまでの負圧(-0.06MPa)が維持されている。そして、これによりスプリンクラーヘッド105の破損部分の負圧も、それまでの負圧(-0.02MPa)に保たれ、漏水が防がれている。
【0035】
図6はバッファタンク2に水が浸入し始めた状態を示すものであり、バッファタンク2内も通常時は負圧(-0.08MPa)の空気で充満しているが、吸引管108内が満水状態となることにより該バッファタンク2内にも水が浸入し始める。
【0036】
前記図5に示す如く、吸引管108内に水が浸入し、吸引管108内の圧力が所定値(図においては-0.04MPa)になると、真空スイッチ113が作動する。そして、オリフィス付き自動弁112に通電されると共に、真空ポンプ109が作動を開始する。そして、このように真空ポンプ109が作動を開始すると、充分な連続吸引により吸引管108内と二次側配管104内は充分な負圧を保つことができるようになり、スプリンクラーヘッド105の破損部分からの漏水が防がれることになる。しかし、真空スイッチ113の作動から真空ポンプ109の連続吸引が始まるまでの間にはタイムラグがあり、この間スプリンクラーヘッド105の破損部分の負圧が大気圧と同じ(0.00MPa)になるまで吸引管108内の負圧空気を維持することができなければ漏水を防ぐことができないことになる。尚、スプリンクラーヘッド105の破損から真空ポンプの再稼働による圧力低下維持まで、配管状態や破損状況によるが最大2~3秒が見込まれる。
【0037】
そこで、所定の負圧空気容積をもつバッファタンク2を接続することにより、吸引管108を、この期間だけ負圧を維持することができる負圧空気容積とすれば、漏水を防ぐことができることになるものである。よって、図6に示す如く、バッファタンク2内に浸入した水が徐々に増えて満水に近くなったとしても、その内部に残存する負圧空気によって吸引管108内の負圧が維持されるようになるものである。
【0038】
また、上記実施形態において、図示はしないが、バッファタンク2と吸引管108との接続部のバッファタンク2側に、該バッファタンク2に流入する水の流量を調節するオリフィスを設けるようにしてもよい。
【0039】
このようになした場合には、バッファタンク2内に存在する負圧空気の、水の流入による減少速度を調節することができるようになり、効率が一層向上することになるものである。
【0040】
次に、図7に示した本発明の第2実施形態について説明する。
基本的な構成においては上記実施形態と同様である。而して、本実施形態は、吸引管108における二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aへの接続部108Aに近い側の部分に、負圧空気容量増大装置であるバイパス管3を設け、もって吸引管108の部分の負圧空気容積を増大せしめたものである。
【0041】
本実施形態においては、バイパス管3が上記実施形態におけるバッファタンク2と同様の役割をするものである。
【0042】
即ち、スプリンクラーヘッド105の破損により空気が二次側配管104内に流れ込んだために、二次側配管104内の水が吸引管108内に流れ込み、そしてこの水が吸引管108の内部全体に充満するとバイパス管3にも流れ込むことになるが、該バイパス管3は上記実施形態におけるバッファタンク2と同様の負圧空気容積を有することから、該バッファタンク2と同様の作用をなして、スプリンクラーヘッド105の破損部分からの漏水を防止することができるものである。
【0043】
次に、図8に示した本発明の第3実施形態について説明する。
【0044】
基本的な構成においては上記実施形態と同様である。而して、本実施形態は、負圧空気容量増大装置として、吸引管108における二次側配管104の立ち上げ分岐管104Aへの接続部108Aに近い側の部分108′の管径を、他の部分に比して大径としたものであり、もって吸引管108の部分の負圧空気容積を増大せしめたものである。
【0045】
本実施形態においては、負圧空気容量増大装置である吸引管108における他の部分に比して管径を大径とした部分108′が上記実施形態におけるバッファタンク2と同様の役割をするものである。
【0046】
即ち、スプリンクラーヘッド105の破損により空気が二次側配管104内に流れ込むと、押された水が二次側配管104から吸引管108内に流れ込む。そして、この流れ込んだ水は、吸引管108の管径を拡大した部分108′内の底部に沿って流れる。そして、やがて水が吸引管108の管径を拡大した部分108′以降の内部に充満すると、吸引管108の管径を拡大した部分108′の水嵩が増し始める。そこで、該吸引管108の管径を拡大した部分108′は上記実施形態におけるバッファタンク2と同様の負圧空気容積を有することから、該バッファタンク2と同様の作用をなして、スプリンクラーヘッド105の破損部分からの漏水を防止することができるものである。
【0047】
次に、図9に示したスプリンクラーヘッドの破損時における圧力変化の一例を示すグラフについて説明する。
【0048】
尚、該図9は真空ポンプが接続されていない場合の図であり、真空スイッチが作動しても負圧は改善されないため、グラフの線は上昇を続けている。
【0049】
また、図において、細い実線及び破線は、従来例(バッファタンクが無い)の圧力変化の一例、細い一点鎖線及び二点鎖線は、吸引管における二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部付近の管径を拡大(40Aを80Aとした場合)した場合における圧力変化の一例、太い実線及び破線は、吸引管にバッファタンクを接続した場合における圧力変化の一例を示すものである。
【0050】
また、横軸の時間軸「0」は、スプリンクラーヘッドが大きく破損した時点を示している。縦軸は圧力軸であり、上方が正圧、下方が負圧を示しており、-0.08MPaは、真空ポンプによる吸引管内の値(破損しても漏水しない圧力値)である。また、-0.04MPaはスプリンクラーヘッド部の値(破損しても漏水しない圧力値)である。また、0.00MPaは、破損時に漏水が始まる圧力値である。
【0051】
スプリンクラーヘッド部の圧力が吸引管内の値より高圧なのは、本例ではスプリンクラーヘッド部が、吸引管における二次側配管の立ち上げ分岐管への接続部より4m下方に設置されているからであり、位置水頭によって吸引管内よりも0.04MPaだけ高圧になっている。
【0052】
また、ヘッド圧とは、スプリンクラーヘッド部(二次側配管のヘッド取付部内)の圧力を示し、真空スイッチ圧とは、吸引管内の圧力を示している。
【0053】
前記の如く、スプリンクラーヘッド部が破損すると、二次側配管内の圧力が大気圧に押されて上昇し始める。やがて、スプリンクラーヘッド部内の圧力が0.00MPaに達すると漏水が始まるが、その前に吸引管108内の圧力が-0.04MPaを超えると真空スイッチが作動しオリフィス付き自動弁が開き、真空ポンプが稼働を開始する設定とした場合である。そして、これにより充分な連続吸引が行われ、配管内は充分な負圧に回復する。
【0054】
しかし、真空スイッチが作動してから真空ポンプの稼働による充分な連続吸引が行われるまでには、僅かではあるがタイムラグがある。そこで、このタイムラグの間、二次側配管のスプリンクラーヘッド接続部内の圧力が0.00MPaに至らないようにすることができれば、漏水を完全に防ぐことができる。
【0055】
スプリンクラーヘッド部の破損が大きい場合を示している図9のグラフにおいて、従来例では、真空スイッチが作動(-0.04MPa)してから、スプリンクラーヘッド部の圧力が0.00MPaになるまでに0.1秒かかっており、真空スイッチが動作しても、0.1秒後、即ち、破損から0.6秒後には漏水が始まってしまう限界に達するので、本例のように破損が大きいと配管内が充分な負圧になるまでに漏水してしまう可能性があることが分かる。真空スイッチが作動しても真空ポンプの動的慣性による遅れがあるため、充分な負圧に達するまでに僅かではあるが時間を要することになる。したがって、前記の0.6秒をできるだけ長く引き延ばすことができる工夫が望まれる。
【0056】
図9の場合、負圧空気容量増大装置を設置することで、約3.6秒まで引き延ばせることを示しており、吸引管108が満水状態になる前に、真空ポンプが作動し、充分な負圧が確保できるので、スプリンクラーヘッドが大破しても漏水の虞がないことを示している。また、吸引管の管径を拡大した場合には、スプリンクラーヘッドの破損から破損部が大気圧(0.00MPa)になるまで約2.5秒となっており、引き延ばすことができることが分かる。これらのことから、本発明によれば配管内が負圧を保つ時間が長くなり、漏水を効率よく防ぐことができることが分かる。尚、図9のグラフにおいて、「40A→80A」は、40A=内径約40mm、80A=内径約80mmであり、同一の長さのときには管内容積が4倍になるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
2 バッファタンク
3 バイパス管
100 負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
101 一次側配管
102 消火水槽
103 送水ポンプ
104 二次側配管
104A 二次側配管の立ち上げ分岐管
105 スプリンクラーヘッド
106 予作動式流水検知装置
107 火災感知器
108 吸引管
108′ 吸引管の拡径部分
109 真空ポンプ
110 吸気管
111 排水管
112 オリフィス付き自動弁
113 真空スイッチ
114 信号受信盤
115 制御盤
116 気水分離器
117 逆止弁
図1
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