(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143693
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】充電制御装置及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220926BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220926BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02J7/04 L
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044348
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA19
5H030AA10
5H030AS11
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
(57)【要約】
【課題】この発明は、二次電池の温度及び充電率と、予め設定した演算式とに基づく簡易な方式により、二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止管理を行う。
【解決手段】記憶部103にて累積されたカウント値の大きさに基づき、カウント値が大きくなるに従い二次電池を充電する充電終止電圧値が段階的に小さくなるよう充電終止電圧値を設定する充電制御部104を具備する。カウント値を演算する演算部102では、二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、二次電池のカウント値を算出する演算式を1又は複数設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の温度及び充電率等のパラメータを所定のタイミングで検出する検出部と、
該検出部で検出した温度及び充電率の値に基づき、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する演算部と、
該演算部にて算出が行われる毎に得られたカウント値を累積しかつ当該カウント値を累積カウント値として記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された累積カウント値の大きさに基づき、該累積カウント値が大きくなるに従って、前記二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を複数設定する充電制御部と、を具備し、
前記演算部は、前記検出部により前記二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、当該二次電池のカウント値を算出するための演算式を1又は複数設定することを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記演算式が複数設定されている場合に、これら演算式の中から前記累積カウント値の大きさに基づき最適なものを選択することを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記演算式は過去における温度、充電率と電池ストレス度を示すカウント値との関係に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記検出部で読み取った温度や充電率を、必要に応じて補正する補正値情報部がさらに設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記演算部では前記演算式により演算するカウント値を小数点以下可能な限り多数の桁数まで算出することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記充電制御部では、段階的に変更する充電終止電圧の最終設定を、十分膨れリスクが少ない充電終止電圧値設定とし、使用する電池のストレス限界点に相当した累積カウント値までに、充電終止電圧設定の最終設定に到達するように設定することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記記憶部では、前記二次電池が物理的に外されない限り、記憶された累積カウント値は保持又は復元可能とすることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項8】
前記演算部では、前記検出部で検出する充電率を、該充電率と等価の関係にある電池電圧に変更してカウント値を算出することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項9】
二次電池の温度及び充電率等のパラメータを所定のタイミングで検出する検出段階と、
該検出段階で検出した温度及び充電率の値に基づき、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する演算段階と、
該演算段階にて算出が行われる毎に得られたカウント値を累積しかつ当該カウント値を累積カウント値として記憶する記憶段階と、
該記憶段階に記憶された累積カウント値の大きさに基づき、該累積カウント値が大きくなるに従って、前記二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を複数設定する充電制御段階と、を具備し、
前記演算段階は、前記検出段階により前記二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、当該二次電池のカウント値を算出するための演算式を1又は複数設定することを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の膨れ抑制を可能とする充電制御装置及び充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル用途などで使用する通信機器の電源は、充放電の繰り返し使用が可能なリチウムイオン二次電池を使用していることが多い。
このリチウムイオン二次電池は、温度が高い環境下や満充電(充電率が高い)に近い状態で長期間使用すると、内部電極と電解質の副反応によりガスが発生し、電池が膨れてしまう。
【0003】
この膨れ現象は、電池温度が高ければ高いほど、また電池電圧(充電率)が高ければ高いほど顕著に現れ、これらのストレスが蓄積され限界を超えると膨れに至る。
特にスマートフォンに広く使われているリチウムイオンポリマー二次電池は、外装がラミネート材であるため、ストレス限界を超えると、急激に大きな膨れに至ってしまうことがある。
【0004】
近年では、機器の通信速度の高速化が進み、内部発熱が高くなる一方で、機器内部の高密度実装化も進み、電池部の温度が高くなり易い傾向にある。さらに、近年ではモバイルバッテリーの普及で外出先でも容易に充電できる環境となり、電池が満充電(高電圧、高充電率)に近い状態で使用されるシーンが増えている。
つまり、現状においては、電池が膨れる要因となる高い温度、高い電圧(高い充電率)の使用シーンが増え、電池の膨れが加速するという懸念がある。
【0005】
そして、このような問題を解決するために特許文献1及び2に示される技術が示されている。
特許文献1の充電制御装置では、二次電池の温度及び残容量を検出する検出部と、ここで検出した温度及び残容量に基づき所定時間内での算出値を算出する演算部と、該演算部での算出値が所定値よりも大きいときにカウント値を所定数増加させる加算部と、該加算部でのカウント値の大きさに基づき二次電池を充電するときの充電終止電圧値を設定する充電設定部と、を備える。
具体的には、特許文献1の充電制御装置では、加算部にて、演算部が温度及び残容量に基づく算出値を算出する毎に、当該算出値に対応する所定の数値、例えば、0,1,2などをカウント値に加算する。また、充電設定部では、カウント値の大きさに基づいて、二次電池を充電するときの充電終止電圧値を設定するが、その際、カウント値が大きくなるに従って充電終止電圧値が小さくなるようにその値を変更して設定する。
【0006】
特許文献2に示す二次電池の制御装置では、二次電池の状態をモニタリングする監視ユニットでモニタリングされた二次電池の状態を履歴として記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された履歴に基づき電池ケース内でのガス発生量に相関した係数を取得し、該係数と履歴とから二次電池の劣化量を算出する算出部と、からなる制御装置を有する。
また、特許文献2の監視ユニットでは、電池モジュールの状態として、該電池モジュールの温度、充放電電流、充電率(SOC:State of Charge)をそれぞれ検出し、検出した各情報を制御装置に伝達する。
【0007】
そして、この制御装置では、各電池モジュールの温度/充放電電流/充電率からなる履歴に基づいてセルケース内でのガス発生量に相関した係数を取得し、この係数と履歴とから電池セルの劣化量としての膨らみ量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-068628号公報
【特許文献2】特開2016-093066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1では、温度、容量率の一定の閾値を境に、予め定めた1(又は2)か0のいずれかを電池ストレス度に相当する整数カウント値としているので、大まかな充電終止電圧値しか設定することができない。
また、特許文献2では、通信状態と保存状態とで異なる温度及び電流、又は温度及びSОCといったパラメータを用いてガス発生量に相関した係数を算出しており、これによって電池ストレス度の計算が面倒になるという不具合がある。
【0010】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、二次電池の温度及び充電率と、予め設定した演算式とに基づく簡易な方式により、二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止管理を行うことが可能な充電制御装置及び充電制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1態様に示す充電制御装置では、二次電池の温度及び充電率等のパラメータを所定のタイミングで検出する検出部と、該検出部で検出した温度及び充電率の値に基づき、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する演算部と、該演算部にて算出が行われる毎に得られたカウント値を累積しかつ当該カウント値を累積カウント値として記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された累積カウント値の大きさに基づき、該累積カウント値が大きくなるに従って前記二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を複数設定する充電制御部と、を具備し、前記演算部は、前記検出部により前記二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、当該二次電池のカウント値を算出するための演算式を1又は複数設定することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2態様に示す充電制御方法では、二次電池の温度及び充電率等のパラメータを所定のタイミングで検出する検出段階と、該検出段階で検出した温度及び充電率の値に基づき、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する演算段階と、該演算段階にて算出が行われる毎に得られたカウント値を累積しかつ当該カウント値を累積カウント値として記憶する記憶段階と、該記憶段階に記憶された累積カウント値の大きさに基づき、該累積カウント値が大きくなるに従って前記二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を複数設定する充電制御段階と、を具備し、前記演算段階は、前記検出段階により前記二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、当該二次電池のカウント値を算出するための演算式を1又は複数設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、二次電池の温度及び充電率と、予め設定した演算式とに基づく簡易な方式により、使用する二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る充電制御装置の最小構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る充電制御装置を示す概略図である。
【
図3】
図2の充電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】(A)電池抜き操作をした場合のフローチャート、(B)再起動をした場合のフローチャート、(C)休止/電源OFF操作をした場合のフローチャートである。
【
図7】(A-1)は温度とカウンタ値との関係を示す数値、(A-2)は(A-1)をグラフ化したもの、(B-1)充電率とカウンタ値との関係を示す数値、(B-2)は(B-1)をグラフ化したものである。
【
図8】累積カウント値に対する充電終止電圧設定と電池膨れ推移例である。
【
図9】第1実施形態における各Stepの制御設定例である。
【
図10】Step移行と累積カウント値との関係をグラフである。
【
図11】(A)電池温度と膨れ発生期間の関係、(B)充電率と膨れ発生期間の関係、(C)充電電圧と充電率の関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る充電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】(A-1)は温度とカウンタ値との関係を示す数値、(A-2)は(A-1)をグラフ化したもの、(B-1)電圧とカウンタ値との関係を示す数値、(B-2)は(B-1)をグラフ化したものである。
【
図14】第2実施形態における各Stepの制御設定例である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る充電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図16】(A-1)は温度とカウンタ値との関係を示す数値、(A-2)は(A-1)をグラフ化したもの、(B-1)充電率とカウンタ値との関係を示す数値、(B-2)は(B-1)をグラフ化したものである。
【
図17】第3実施形態における各Stepの制御設定例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る充電制御装置100の最小構成について
図1を参照して説明する。
この充電制御装置100は検出部101、演算部102、記憶部103及び充電制御部104を有する。
【0016】
検出部101は、二次電池の温度及び充電率といったパラメータを所定のタイミングで検出する。
演算部102は、検出部101で検出した温度及び充電率の値に基づき、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する。
また、この演算部102では、検出部101により二次電池から検出された温度及び充電率に基づき、当該二次電池のカウント値を算出するための演算式を1又は複数設定している。
記憶部103は、演算部102にて算出が行われる毎に得られたカウント値を累積し、その累積値を累積カウント値として記憶する。
【0017】
充電制御部104は、記憶部103にて累積された累積カウント値の大きさに基づき、該累積カウント値が大きくなるに従って、二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を複数設定する。
【0018】
そして、以上のような本発明に係る充電制御装置100によれば、演算部102にて、所定のタイミングにより検出部101で検出した二次電池の温度及び充電率と、予め設定した1又は複数の演算式とに基づいて、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する。
その後、記憶部103では、演算部102にて算出がなされる毎に得られたカウント値を累積し、かつその累積値を累積カウント値として記憶する。
このとき、充電制御部104では、記憶部103に記憶された累積カウント値が大きくなるに従って、二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を設定する。
【0019】
これにより本発明の充電制御装置100では、二次電池の温度及び充電率と、予め設定した演算式とに基づく簡易な方式により、使用する二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止管理を行うことが可能となる。
【0020】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態に係る充電制御装置200について、
図2~
図11を参照して説明する。
まず、充電制御装置200(
図2参照)の概要について説明する。
この充電制御装置200では、リチウムイオン電池の膨れ要因である、電池温度(℃)及び電池残量値に相当する電池充電率(%)といったパラメータを定期的に読み取り、これらパラメータに相当したストレス値(以下カウント値と称す)を算出する。
【0021】
この充電制御装置200では、定期的に読み取った電池温度(℃)及び電池充電率(%)の値を基にして、予め設定した演算式(後述する)に従いカウント値を算出して記憶するとともに、当該カウント値を算出する毎に、カウントアップした累積カウント値を記憶かつ更新して行く。
また、この充電制御装置200では、カウントアップされた累積カウント値に応じて段階的に充電終止電圧の設定値を低下させ、次回以降、電池を充電する際に、変更後の低い充電終止電圧設定により充電を行い膨れ抑制を図る。
一般的に、リチウムイオン電池は、電池温度(℃)や電池充電率(%)が高いほどストレスが蓄積され、限界を超えると膨れ始める性質があるが、逆に限界点以下であれば大きな膨れは発生しない(
図11(A)、
図11(B)参照)。
【0022】
図11(A)には、今回使用した電池における高充電率(100%)で長期放置したときの電池温度(℃)に対する膨れ特性イメージが示されている。ここでの膨れ量(mm)は、温度(℃)が高いほど開始が早くなり、温度が10℃下がると膨れ始めまでの期間が約2倍に、20℃下がると期間が約4倍になると考えられる。つまり、温度に対する膨れ影響度は、10℃2倍則に近似することが確認されている。
【0023】
図11(B)には、今回使用した電池における高温環境下(60℃)で長期放置したときの電池充電率(%)に対する膨れ特性イメージが示されている。ここでの膨れ量(mm)は、充電率(%)が高いほど開始が早くなり、充電率が10%下がると膨れ始めまでの期間が約2倍に、20%下がると期間が約4倍になると考えられる。つまり、充電率に対する膨れ影響度は、10%2倍則に近似することが確認されている。
【0024】
図11(C)には、電池終止電圧に対する充電率(%)の特性が示されている。ここでの特性は、充電終止電圧が下がるほど電池の充電率が下がることが示され、充電率が低いほど膨れ抑制の効果が大きいが、その反面で電池容量が減るため使用時間が少なくなる。
ただ、通常使用で充放電を繰り返した場合であっても、使用時間の減少は徐々進んでいく。このため、長期にわたる機器を使用後の使用時間の減少は、ユーザーにとって違和感は少ない。
従って、現状では、膨れによって電池カバー外れの発生や、ユーザーに与える安全性への不安等を考慮すると、使用時間の減少よりも膨れ抑制を優先するべきと考える。
【0025】
具体的な解決手段として本実施形態に係る充電制御装置200では、使用する電池のストレス限界点(膨れ始めるまでの累積カウント値)を事前に把握し、電池固有特性(本実施形態では、温度:10℃2倍則、充電率:10%2倍則に近似する前提で説明)に相当した演算式(数式1参照)を用いてストレス値に相当するカウント値を算出し、カウントアップする。
さらに、上記充電制御装置200では、ストレス限界点となる累積カウント値に到達するまでに膨れリスクの少ない充電終止電圧値まで低下するよう、当該充電終止電圧値、切り替え段階数(以降Stepと称す)、Step移行期間設定を適宜決定する。
このとき、上記充電制御装置200では、読み取る温度(℃)や充電率(%)を、必要に応じて補正値の加算が可能なように設定しておく。
【0026】
また、上記充電制御装置200では、充電終止電圧の設定を変更する際に、電圧矛盾による誤動作を防止するため、新しい充電終止電圧設定と現状態の電池電圧値とを比較し、電池電圧が十分低い状態であること、かつ非充電状態であることを条件とし、設定値の変更を実施可能とする。
また、上記充電制御装置200では、充電終止電圧値の変更後、新設定の終止電圧値で満充電制御となるが、機器上の残量表示も、新しく設定された充電終止電圧で充電率100%に補正する制御を行う。
【0027】
次に、
図2のブロック図を参照して充電制御装置200の具体的構成について説明する。
この充電制御装置200は、負荷部1、制御部2、電源回路部3、カウンタ値加算/記憶部4、充電条件設定部5、充放電制御部6、外部電源7、残容量検出部8、温度検出部9、二次電池10及びクロック部13を有する。
また、制御部2は、カウンタ値演算部12、充電率/温度補正値情報部14及び累積カウンタ閾値判定部15を有する。
【0028】
また、この充電制御装置200は、
図1との対比において、残容量検出部8及び温度検出部9により「検出部201」が構成され、カウンタ値演算部12、クロック部13及び充電率/温度補正値情報部14により「演算部202」が構成され、カウンタ値加算/記憶部4により「記憶部203」が構成され、電源回路部3、充電条件設定部5、充放電制御部6及び累積カウンタ閾値判定部15により「充電制御部204」が構成される。
【0029】
各構成要素について説明する。
負荷部1は、例えば、電源から供給された電源電圧により動作する回路などである。
二次電池10は電源供給源となるものであって、機器に電力を供給する。
電源回路部3は二次電池10からの給電を基にして各部の仕様に則した電圧源を生成し、各部に電源供給している。
二次電池10は充放電が可能なリチウムイオン電池を使用し、外部電源7が接続されることで、充放電制御部6を介して所定の条件にて充電が行われる。
【0030】
そして、二次電池10は、各部が動作すると充放電制御部6を介して放電を行う。残容量検出部8は、二次電池10の入出力された電荷量を監視し、二次電池10の残容量(以下、充電率と称す)を算出している。
残容量検出部8は、一般的にクーロンカウンタやガスゲージICの名称で知られている。この充電率情報は、ユーザーが機器表示上で確認可能ないわゆる電池残量情報としてパーセント表示されているものであり、電池満充電状態を充電率100%、機器の起動が不能となる状態を充電率0%とする(100%以上、0%以下の数値は存在しない)。
【0031】
温度検出部9は、機器の温度を測定しており、サーミスタなどを基板上に実装して構成するケースが多い。
制御部2には、各種機能制御の他に、温度検出部9の温度情報と残容量検出部8の電池充電率情報を演算するカウンタ値演算部12、読み取った温度及び充電率の補正値情報を格納している充電率/温度補正値情報部14、及び累積カウント値の閾値判定を行い、充電条件の変更指示を送出する累積カウンタ閾値判定部15を有している。
なお、カウンタ値演算部12には近似演算式F1(後述する)が予め記憶されている。
【0032】
カウンタ値加算/記憶部4は、RAM(Random Access memory)やROM(Read Only Member)を有しており、カウンタ値演算部12で算出したカウント値をこれまでのカウント値に都度加算(カウントアップ)して記憶する。クロック部13は制御部2の動作用のクロックである。
通常、制御部2ではこのクロック周波数をベースにほぼ毎秒のペースで各種情報の読み取りを行っており、今回も同じタイミングで温度(℃)、充電率(%)の読み取り、カウント値の計算、カウント値の加算、カウント値の記憶処理を行う。
【0033】
次に、
図3~
図5のフローチャートを参照して、充電制御装置200の制御部2の動作内容について説明する。
〔ステップS101~S104〕
図3に示すように、カウンタ値演算部12にて、クロックを基にした定期タイミング(本実施形態では約毎秒タイミング)で、温度検出部9から温度(℃)情報と、残容量検出部8から電池充電率(%)情報とを読み取る(ステップS101、102)。
【0034】
温度(℃)情報は、温度の大きさを示す値である。この温度は、例えば、通常待ち受け状態では30℃程度、通信時や鞄に入れた状態などでは50℃超となることもある。
また、電池充電率(%)情報は、電池の充電率の大きさを示す%値である。満充電状態を100%(最大値)、機器の起動が不能となる充電率を0%(最小値)とする。充電率(%)のデータは先に述べた通り、残容量検出部8で検出した情報を用いる。
その後、カウンタ値演算部12では、両情報に対して、必要に応じて補正値を加算する(ステップS103、104)。当該補正値は、サーミスタが読み取る温度と実際の電池温度との補正、及びStep移行後の充電率の補正のために用いる。
【0035】
〔ステップS201〕
ステップS103及びS104の補正処理で得た各算出値を、予め設定した演算式に入力してカウント値の計算を行う。
なお、本実施形態では演算式として、使用するリチウムイオン電池のストレス度を近似した、温度が10℃2倍則、充電率が10%2倍則に基づく以下の近似演算式F1を用いる。
[数式1]
近似演算式F1=(0.0156eA)×(0.0010eB1)
ただし、A=0.0693×温度(℃)、B1=0.0693×充電率(%)
【0036】
この近似演算式F1は、温度60℃、充電率100%の条件で「カウント値≒1」となり、
図7(A-1)(A-2)に示すように温度(℃)が10℃下がるとカウント値は「半分≒0.5」となり、
図7(B-1)(B-2)示すように充電率(%)が10%下がるとカウント値は「半分≒0.5」となり、両方とも下がるとカウント値は1/4(≒0.25)が導き出される式とする。
つまり、この近似演算式F1では、温度値、充電率値が小さければ小さいほど、カウント値は小さくなり、温度値、充電率値が高ければ高いほどカウント値は大きくなる関係が示されている。
なお、カウント値は温度が60℃を超えた場合に1より大きくなる。また、温度検出部9では温度を1℃刻み、残容量検出部8にて充電率を1%刻みの数値で読み出しすることができ、これら数値に従いカウンタ値演算部12にてカウント値を算出可能とする。
【0037】
〔ステップS401〕
そして、カウンタ値演算部12では、予め設定した近似演算式F1に基づき計算したカウンタ算出値を、ほぼ毎秒毎に、カウンタ値加算/記憶部4のRAMにカウントアップ記憶していくが、このとき、精度を高めるため、カウンタ算出値を小数点以下のできるだけ多くの桁数(例えば10桁など)まで演算する。
毎秒読み込むカウンタ算出値はその瞬間での電池ストレス度に相当し、カウントアップされた累積カウント値はこれまで蓄積された電池の総ストレス量に相当することになる。
そして、カウンタ値演算部12では、この一連の動作を定期タイミング(本実施形態では約毎秒タイミング)で繰り返し、カウント値のカウントアップをするとともに、記憶も上記演算がされる毎に同じタイミングで行う。なお、累積カウント値は永久的に増加していく。
【0038】
〔ステップS501〕
次に、累積カウンタ閾値判定部15では、
図4に示すように、カウンタ値加算/記憶部4の累積カウント値が、予め設定したカウンタ閾値に到達したか否かを比較判定するとともに、該比較判定処理を前述した定期タイミング(本実施形態では約毎秒タイミング)の度に行なう。
このとき、累積カウンタ閾値判定部15では、カウンタ値加算/記憶部4の累積カウント値が、予め設定したカウンタ閾値540kカウント(kは1000倍を表す)、920kカウント、1740kカウント、2310kカウント、2580kカウント又は3240kカウントに到達したか否かで、次に進むStep1~6を選択する。
【0039】
〔ステップS901〕
ステップS501にて累積カウント値が540kカウント(kは1000倍を表す)に達するまでは、ステップS901に示すように、充電終止電圧の設定を、機器購入時の初期設定である4.20Vとしかつ電池電圧4.20Vに達するまで充電を行う。
【0040】
〔ステップS602、702、802、902〕(Step1)
その後、二次電池10の長期間の使用を経て、カウンタ値加算/記憶部4の累積カウント値が540kカウントに達すると、累積カウンタ閾値判定部15ではStep1へ移行すると判断し、充電条件設定部5に対して充電終止電圧設定値を0.05V低くした「4.20V→4.15V」に変更するよう指示を出す(ステップS902)。
【0041】
ここで、設定値を変更する際は、変更指示から適用までのタイムラグで電池電圧が変動(特に電圧が高くなる)してしまう場合や電池電圧値が設定電圧よりも高い場合(例えば設定電圧4.15Vに対して電池電圧値が4.20Vなど)に電圧矛盾による誤動作の懸念がある。
このため、ステップS702にて充電中ではないことと、ステップS802にて現状の電池電圧が変更後の充電終止電圧設定値4.15Vよりも十分低いこと(本実施形態では余裕度を見て3.95V以下であることで設定)の双方を確認する。
その後、ステップS902にて、ステップS702及びS802の双方の条件を満たしたタイミング(ステップS702及びS802共にNO)で、充電条件設定部5の充電終止電圧値を4.15Vに初めて切り替える。それ以降の充電は4.15Vで行う。
【0042】
その際、充放電制御部6では、変更後の充電終止電圧設定(4.15V)に達するまで充電を行い、充電完了した状態を満充電とし、この状態で充電率が100%になるよう補正を行う。実際には、充電電圧を0.05V低くしているため、使用できる電池容量は5%程度劣化(
図11(C)参照)してしまうが、満充電状態では残容量100%補正表示を行うことでユーザーが感じる違和感を少なくすることができる。
【0043】
〔ステップS603、703、803、903〕(Step2)
その後、継続使用で累積カウント値が増加していき、920kカウント(kは1000倍を表す)に達した場合には、累積カウンタ閾値判定部15ではStep2へ移行したと判断し、充電条件設定部5に対して、充電終止電圧値を更に0.05V低くして「4.15V→4.10V」に切り替えるように指示を出す(ステップS903)
それ以降の充電は、4.10Vに達するまで行い、Step1と同じく変更後の充電終止電圧における満充電状態で充電率が100%になるよう補正する。
また、ステップS903での充電は、ステップS703にて充電中ではないことと、ステップ803にて現状の電池電圧が変更後の充電終止電圧設定値3.9Vよりも低いという条件を満たしたタイミングで実施する。
また、これらステップS703,S803の条件が満たされないYESの場合には、ステップS902にて充電終止電圧値が4.15Vでの充電を継続する。
【0044】
〔ステップS604、704、804、904〕(Step3)
その後、継続使用で累積カウント値が増加していき、1740kカウント(kは1000倍を表す)に達した場合には、累積カウンタ閾値判定部15ではStep3へ移行したと判断し、充電条件設定部5に対して、充電終止電圧値を更に0.05V低くして、「4.10V→4.05V」に切り替えるように指示を出す(ステップS904)
それ以降の充電は4.05Vで行い、Step1、Step2と同じく変更後の充電終止電圧における満充電状態で充電率が100%になるよう補正する。
また、ステップS904での充電は、ステップS704にて充電中ではないことと、ステップ804にて現状の電池電圧が変更後の充電終止電圧設定値3.85Vよりも低いという条件を満たしたタイミングで実施する。また、これらステップS704,S804の条件が満たされないYESの場合には、ステップS903にて充電終止電圧値が4.10Vでの充電を継続する。
【0045】
〔ステップS605~607、705~707、805~807、905~907〕(Step4~6)
以降、累積カウンタ閾値判定部15では、
図5に示すように累積カウント値が2310kを超過した場合にStep4(ステップS605、705、805、905)に進み、2580kを超過した場合にStep5(ステップS606、706、806、906)に進み、3240kを超過した場合に最終のStep6(ステップS607、707、807、907)に進む。
また、ステップS605~607,ステップS905~907での判断及び設定する充電終止電圧設定は、0.05Vずつ低減させる設定とする。また、100%補正についてはStep1~3までと同様であるため重複した説明を省略する。
【0046】
なお、
図5のフローチャートに示す最終のStep6の3240kは、
図11(A)から、温度60℃、充電率100%環境下における膨れ始めまでの期間45日と、カウント値の計算、加算が1.2秒に1回のタイミングの条件から導き出した累積カウント値(≒電池ストレス限界点)である。
具体的には、以下の数式2により求められる。
[数式2]
60秒/1.2秒×60分×24時間×45日=3240k
ただし、kは1000倍を表す
【0047】
図6(A)は二次電池10を機器から取り外した場合の動作を示すフローチャートである。
このフローチャートでは、電池が抜かれた場合(ステップS1101)に、制御部2(カウンタ値加算/記憶部4)への電源供給が途絶えるため、これまでの累積カウント値はリセット(初期値のゼロ)される(ステップS1102)。
通常、電池膨れは、電池抜き行為を行わず、同一電池を長期間使用し続けているユーザーで発生し易いと考えられる。このため、ステップS1102で示される電池抜きによるカウント値リセットは、影響度が小さいとされる。
【0048】
図6(B)は、再起動時の動作を示すフローチャートである。
表示機能を持つモバイル通信機器では、誤動作時のデバックのために、メニュー上の操作やハードスイッチで再起動に移行できることが多い。
【0049】
このため、
図6(B)のフローチャートでは、ユーザーが機能上から再起動の操作を実施した場合や機器がフリーズし強制電源OFFなどの操作を行ったときに(ステップS1201)、カウント値記憶部(RAM)の累積カウント値情報をカウント値記憶部(ROM)に一旦記憶させる(ステップS1202)。
その後、再び機器起動が行われた際には(ステップS1203~S1204)、前記ROMで一時的に格納しておいた累積カウント値情報をRAMに復元させる(ステップS1205)。これにより、再起動実施後でも直前の累積カウント値を引き継ぐことを可能とする。
【0050】
図6(C)は、休止や電源OFF操作時の動作を示すフローチャートである。
この動作時は、前述の再起動時と異なり、カウンタ値加算/記憶部4(RAM)の累積カウント値情報は消失せず保持される(ステップS1302)。このため、機器を休止、電源OFFから復帰した際(ステップS1303~S1304)は、直前までの累積カウント値を引き継ぐことを可能とする。
そして、これらの制御では、電池を抜く行為以外の電源OFFや休止、再起動時においては累積カウント値情報の保持又は復元を可能とし、カウント値リセットによる膨れ発生リスクをできるだけ抑制することができる。
【0051】
図8は、累積カウンタ閾値に対する充電終止電圧設定と電池の膨れ量の推移を示すグラフである。実線で示すグラフが本発明を適用した場合を示し、破線で示すグラフが対策しない場合の特性を示している。
そして、本発明を適用した場合には、累積カウント値が540kカウントに達すると、以降の充電終止電圧値を初期設定の4.20Vから4.15Vに低減させる(Step1の処理)。
以降は、累積カウント値が920kカウントに達すると、充電終止電圧値を4.15Vから4.10Vに低減させ(Step2の処理)、累積カウント値が1740kカウントに達すると、充電終止電圧値を4.10Vから4.05Vに低減させる(Step3の処理)。
【0052】
以降は、累積カウント値が2340kカウントに達すると、充電終止電圧値を4.05Vから4.00Vに低減させ(Step4の処理)、累積カウント値が2850kカウントに達すると、充電終止電圧値を4.00Vを3.95Vに低減させる(Step5の処理)。
さらに以降は、累積カウント値が3240kカウントに達すると、充電終止電圧値を3.95Vから3.90Vに低減させるというように、設定した累積カウンタ閾値を更新していく毎に、充電終止電圧値を0.05Vずつ段階的に低減させる。そして、最終ステップ(Step6の処理)では、充電終止電圧は3.90Vに設定する。
【0053】
一方、電池の膨れ量については、対策しない場合、累積カウント値が電池のストレス限界点(累積カウント値3240k)を超えると膨れ始め、その後、急峻な膨れに至る可能性がある。
このため、
図3~
図5での制御では、ストレス限界点に到達するまでには、膨れリスクの少ない充電終止電圧設定まで段階的に移行を完了させておくことで、ストレス限界点3240kカウント以降の膨れリスクを低減することが可能となる。
【0054】
なお、Step6にて示す充電終止電圧3.90Vは、4.20V時と比較して充電率が約30%低いため(
図11(C)参照)、膨れリスクは単純計算で1/8程度に低減できる。これにより、本発明が適用された二次電池10では、長期使用後の膨れ抑制効果が見込める。
また、一般的に機器の使用期間が増えてきた場合には、電池内部に析出物が発生し易くなり、内部短絡による熱暴走での発火リスクが高まる。
しかしながら、本発明の制御では、
図3~
図5での処理がStep1からStep6へと進むに従い、電池電圧が低くなることで容量密度も下がり、万が一、内部短絡が発生した際に熱暴走を防止する効果も期待できる。
【0055】
図9は、本発明の主な制御設定例を示した表である。
この制御設定例では、演算前に、必要に応じて温度と充電率に補正値を加算できるように設定しておく。例えば、温度(℃)については、温度監視デバイス(サーミスタ等)の検出温度が必ずしも電池温度と一致するとは限らないため、事前に相関を検証し補正値を加えられるようにしておく。
【0056】
図9の例では、温度検出部9の温度情報が電池温度よりも5℃程度高いため演算前に温度値-5℃の補正を行う仕様としている。
温度の補正値はStepが進んでも変化するものではないため補正値を一律としている。一方、充電率(%)については、Stepが進むに従って充電終止電圧が低くなるため、充電中や充電完了時(満充電時)の電池電圧が初期に比べて低くなる。
そして、
図3~
図5のフローチャートでは、前述した通り、Step1~Step6において満充電時の充電率を100%となるよう補正しているため、Step毎に充電率100%時の電池電圧が異なる。
【0057】
また、
図11(C)では、電池電圧(V)と充電率(%)との関係を表す特性グラフに示すように、電池電圧(V)と充電率(%)がほぼ比例関係にあり、Stepが進んだ状態では、見かけ上、同じ充電率(%)であっても電池電圧(V)が全体的に低くなる。
このため、
図3~
図5の制御では、Stepが進むほど、大きな補正値を付加してカウント値(電池ストレス度)を調整する。
【0058】
なお、本実施形態では、各Stepでそれぞれ-5%、-10%、-15%、-20%、-25%、-30%の補正値としている。また、このときの補正値は使用機器の温度検出能力や使用電池の特性で変化するため、適宜、値を設定すれば良い。
また、補正後の温度や充電率はマイナスになる場合が出てくる。その条件下では、温度が十分低いことや充電率が十分低い状態、又はStep移行が進んだ状態であり、膨れリスクが少ない。このときは、誤演算の可能性を回避するため、マイナス時はカウント値を一律ゼロとしてもよい。勿論、そのまま計算して得られたカウント値をカウントアップしても良い。
また、カウント値がある一定以下(例えば、0.1以下)の条件下では、カウント値を累積しないなどの追加設定をしても良い。
また、このときには、リスクの少ないカウント値をカウントアップしないことで最終Step6までの移行期間をより長く確保できる。
【0059】
また、
図3~
図5の制御では、各Step1~Step6において、ステップS902~S907での充電終止電圧設定を、電池電圧の判定ステップ(ステップS802~S807)の電圧に対して0.2V低い値を条件とし、電池電圧がこの電圧値以下であることを充電終止電圧設定の変更の条件とすることで、電池電圧より充電終止電圧設定値が高くなることでの誤動作を未然に防止する。
今回の実施形態で説明した演算式(数式1)では、温度、充電率に対するリチウムイオン二次電池の膨れ影響度を近似化した一例であり、必ずしも固定特性ではない。この演算式(数式1)は、使用するリチウムイオン電池の特性に応じて影響度が近似できるものであれば、任意に設定すれば良い。
【0060】
また、
図3~
図5の制御では、Step1~Step6において、ステップS902~S907での充電終止電圧設定を0.05V刻みで低減する説明としたが、使用電池の膨れ特性を考慮して低減幅を決定すれば良く、Step数も更に細分化し、Step毎の充電終止電圧の低減幅をより小さくすることで、ユーザーへの電池劣化に対する違和感をより軽減することができる。
また、ステップS501での判別に使用される累積カウンタ閾値についても、機器保証の耐用年数や客先契約の中で想定される使用期間を参考に膨れ影響が出ないように、Step移行のタイミングや各Stepの間隔、頻度は最適化を行えば良い。
【0061】
本実施形態の説明では、
図9の制御設定例で示した累積カウンタ閾値からも分かる通り、Step1からStep2への移行期間を、他Step移行期間より早めた設定としている。これにより
図3~
図5の制御では、Step1、Step2終了時点から電池のストレス限界累積カウント値3240kまでのカウント値が多く確保できるため、その結果、Step6移行までの期間を延ばすことができる。
【0062】
また、
図9の制御設定例では、Stepが進むに従い、充電率(%)の補正値を大きく設定している。これはStepが進行して行くと、充電終止電圧が低くなる一方で、各Stepで設定された充電終止電圧により充電率が100%になるよう補正しているためである。
【0063】
これにより
図3~
図5の制御では、読み取った温度(℃)と充電率(%)の大きさは同じでも、Stepによって上記補正値が加味されるため、算出されるカウント値がStepの進行に従って小さくなる。
すなわち、
図3~
図5の制御では、同環境下での使用の場合、初期のStepほどカウント値は大きくなり、累積カウント値の積み上げスピードが速くなり、逆にStep数が進むほどカウント値は小さくなり、累積カウント値の積み上げスピードは遅くなる。
【0064】
図10は本実施形態に示すStep移行期間と累積カウント値の一例である。
図10の例では、1日の総カウント値を約15kカウントと仮定した時のStep移行タイミングをグラフ化している。例えば、本制御を行わない場合には、破線で示すように約200日後に電池の膨れが発生すると推測される。
一方、本実施形態の制御を行なった場合には、実線で示すように、少なくとも600日までストレス限界を超えず、かつ、限界点到達時には既に十分低い充電終止電圧設定となっているためその後の膨れリスクも低いことが明らかとなった。
なお、本実施形態の制御においては、勿論、Step6までの期間を確保するよりも充電終止電圧が高い期間(例えば初期やStep1やStep2)を優先し、できるだけ初期に、機器使用時間を確保する設定にしても良いし、全てのStep移行間隔を均一に設定しても良い。
【0065】
そして、以上のような本実施形態に係る充電制御装置200によれば、演算部202のカウンタ値演算部12にて、所定のタイミングにより検出部201(残容量検出部8,温度検出部9)で検出した二次電池の温度及び充電率と、予め設定した演算式F1とに基づいて、電池のストレス度に相当するカウント値を算出する。
その後、記憶部203となるカウンタ値加算/記憶部4では、演算部202にて算出がなされる毎に得られたカウント値を累積し、かつその累積値を累積カウント値として記憶する。
このとき、充電制御部204となる累積カウンタ閾値判定部15では、記憶部203に記憶された累積カウント値が大きくなるに従って、二次電池を充電するときの充電終止電圧値が段階的に小さくなるように当該充電終止電圧値を設定する(
図3~
図5のStep1~Step6参照)。
【0066】
これにより本実施形態の充電制御装置200では、予め記憶部203に設定された演算式F1に基づき、カウント値及びそれを累積した累積カウント値を演算することができ、これにより使用する二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができる。
すなわち、本実施形態の充電制御装置200では、予め記憶部203に設定された演算式F1に基づきカウント値を演算するという簡易な方式により、二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止の管理を行うことができる。
【0067】
また、上記充電制御装置100では、電池の膨れ要因である電池温度(℃)と電池充電率(%)を1℃、1%単位で電池ストレス度に相当するカウント値として算出、カウントアップ及び記憶し、累積カウンタ数に応じて段階的に充電終止電圧の設定値を低減していくことで、電池の膨れ抑制を可能とする。
【0068】
また、上記充電制御装置100では、1℃、1%単位の電池ストレス度を数値化し、カウント値として累積していくことで、電池の膨れ限界点(膨れ始めまでの総ストレス値)に到達するまでに十分低い充電終止電圧設定まで移行させ、より精度の高い膨れ抑制制御を実現する。
【0069】
また、上記充電制御装置100では、使用する二次電池10の温度℃、充電率%一定条件下における膨れ始め期間をストレス限界点として、相当する累積カウンタ閾値までに充電終止電圧を低減する手法となる。このため、上記充電制御装置100では、電池が膨れ始めるまでの期間とその条件を事前に把握しておけば、膨れ抑制のパラメータ設計が容易になる。
【0070】
また、一般的な機器では、使用期間が増えてくると電池内部に析出物が発生し易くなり、内部短絡による熱暴走での発火リスクが高まる。
しかしながら、上記充電制御装置100では、今回の制御によりStepが進むことで電池電圧が低くなり容量密度も下がるため、万一、内部短絡が発生した際には熱暴走を防止する効果も期待できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る充電制御装置200について、
図12~
図14を参照して説明する。
第1実施形態では、二次電池10の温度(℃)及び充電率(%)の情報を基にして、カウント値を算出した。しかし、第2実施形態では、充電率(%)と等価の関係にある電池電圧(V)を使用してカウント値を算出する。
【0072】
充電率と電池電圧とは、
図11(C)のグラフに示すように、電池電圧が0.1V下がると充電率が約10%下がるという関係性がある。つまり、二次電池10には、0.1V2倍則の関係があると仮定できる。
そして、
図13(B-1)及び(B-2)に示す電圧とカウント値の関係グラフを基にして、第1実施形態で用いた充電率を電圧値に変更した以下の近似式F2から、カウント値を計算する。
[数式3]
近似演算式F2=(0.0156e
A)×(2.274E-13e
B2)
ただし、A=0.0693×温度(℃)、B2=6.9315×電圧V(V)
【0073】
これに伴い、
図3のフローチャートのステップS102及びS104は、
図12のフローチャートのステップS105及びS106に示すように変更する。
【0074】
〔ステップS101,S103〕
カウンタ値演算部12にて、定期的なタイミングで温度検出部9からの温度(℃)情報を読み取った後(ステップS101)、必要に応じて温度値補正を行う(ステップS103)。
【0075】
〔ステップS105,S106〕
カウンタ値演算部12にて、温度読取と同じタイミングで、残容量検出部8を介して二次電池10の電池電圧(V)に関する情報を読み取った後(ステップS105)、必要に応じて電圧値補正を行う(ステップS106)。
【0076】
〔ステップS202〕
ステップS103及びS106の補正処理で得た各算出値を、予め設定した上記近似演算式F2に入力することで電池ストレスに相当するカウント値の計算を行った後、次のステップS401に進む。
なお、
図12において、ステップS401及び「B」以降は第1実施形態と同様のためここでの説明を省略する。
【0077】
図14に各Step1~6時の制御設定例を示す。第1実施形態から変更している点は、カウント値を計算するための近似演算式F2及び電圧補正値であり、他は同様の設定値とする。なお、電圧補正値はここでの値をゼロとしているが、必要に応じて補正値をかけても良い。
【0078】
以上説明した第2実施形態の充電制御装置200では、温度(℃)、充電率(%)と等価の関係にある電池電圧(V)、及び予め記憶部203に設定された相応の演算式F2に基づき、カウント値及びそれを累積した累積カウント値を演算することができ、これにより二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができる。
すなわち、本実施形態の充電制御装置200では、予め記憶部203に設定された相応の演算式に基づきカウント値を演算するという簡易な方式により、第1実施形態と同様、二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができ、高い精度で二次電池の膨れ防止の管理を行うことができる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る充電制御装置200について、
図15~
図17を参照して説明する。
第1及び第2実施形態では、カウント値の計算として各Step共通の演算式F1,F2を用いたが、使用する電池種類よっては、電池の劣化が進んだ際、特性グラフ(倍測特性)が変化する場合が想定される。
【0080】
このため、第3実施形態のカウンタ値演算部12では、特性変化後でも近似のカウント値が演算できるよう複数の演算式F1,F3を設定できるようにする。
例えば、電池の劣化が進んだ際、これまでより劣化度(電池のストレス度)が1.2倍加速することが想定される電池を使用する場合は、
図16(B-1)(B-2)に示すように、温度60℃、充電率100%時にカウント値が「≒1」ではなく「≒1.2」になるような以下の近似演算式F3を用いる。
[数式4]
近似演算式F3=(0.0188e
A)×(0.0010e
B1)
ただし、A=0.0693×温度(℃)、B1=0.0693×充電率%
【0081】
図15のフローチャートは近似演算式F1及びF3を用いた具体的な処理を示している。
そして、この
図15のフローチャートでは、第1実施形態における
図3のフローチャートと比較して処理内容が異なるのがステップS203である。
【0082】
〔ステップS203〕
(初期状態からStep1~3までの処理)
このときの処理では、第1実施形態と同様、定期タイミングで読み取った温度(℃)情報と充電率(%)情報を基にして、必要に応じて温度補正、充電率補正をかけた後、予め設定した近似演算式F1によりカウント値を演算、加算、記憶する。
【0083】
(Step4~6までの処理)
その後、カウント値が累積し、Step4まで移行が進んだ場合には、近似演算式F3に切り替え、以降は同演算式でカウント値の計算、加算、記憶をしていく。
【0084】
図17は各Step1~6での制御設定例を示すものである。
第1実施形態から変更している点は、ステップS203にてカウント値演算式を複数設定し、Step4以降で使用する演算式をF1からF3にした点であり、これによりステップS401でのカウント値加算を加速してStep移行を早め、より膨れにくい制御を行うことが可能となる。
【0085】
なお、ステップS203で設定した演算式は、使用する電池の性能によって任意に変更可能である。
また、ステップS203での演算式設定に際しては、温度(℃)におけるカウント値に重み付け(≒1.2)をしたが、充電率(%)側に重み付けしても良いし、両方に重み付けしても良い。
【0086】
以上説明した第3実施形態の充電制御装置200では、二次電池10の温度(℃)及び充電率(%)、及び予め記憶部203に設定された相応の演算式F1,F3に基づき、カウント値及びそれを累積した累積カウント値を演算することができ、これにより二次電池性能に対応した最適な充電終止電圧値を得ることができる。
特に、本実施形態の充電制御装置200では、カウント値演算式を複数設定し、Step4以降で使用する演算式F1を演算式F3に変更することで、ステップS401でのカウント値加算を加速してStep移行を早め、より膨れにくい制御を行うことが可能となる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の活用例として、リチウムイオン二次電池を有しているウエラブル端末機、スマートフォン、モバイルルータ、タブレット機、音楽プレーヤ、ノートPC、自動車(EV(Electric Vehicle)、ハイブリッドカー、ECallなど)及び航空機などが挙げられる。
【符号の説明】
【0089】
1 負荷部
2 制御部
3 電源回路部
4 カウンタ値加算/記憶部
5 充電条件設定部
6 充放電制御部
7 外部電源
8 残容量検出部
9 温度検出部
10 二次電池
12 カウンタ値演算部
13 クロック部
14 充電率/温度補正値情報部
15 累積カウンタ閾値判定部
100 充電制御装置
101 検出部
102 演算部
103 記憶部
104 充電制御部
200 充電制御装置
201 検出部
202 演算部
203 記憶部
204 充電制御部