(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143707
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】音響拡散体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/20 20060101AFI20220926BHJP
E04B 1/99 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G10K11/20
E04B1/99 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044368
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】390029023
【氏名又は名称】日本音響エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 心耳
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF12
2E001FA41
2E001GA01
2E001HC01
(57)【要約】
【課題】音響拡散体を設置した音響空間内の音響特性を効率的に向上させる。
【解決手段】本発明の音響拡散体は、複数の柱状部材1と、これら複数の柱状部材1における長手方向の一方側端部1aを固定した一方側ベース部材2と有する。複数の柱状部材1は、長手方向に直交する方向にて互いに間隔を空けて配置されている。さらに、音響拡散体は、複数の柱状部材1のうち2つ以上の柱状部材1における長手方向の中間部1bを連結する連結要素10,20,30を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱状部材と、
前記複数の柱状部材における長手方向の一方側端部を固定した一方側ベース部材と
を備え、
前記複数の柱状部材が、前記長手方向に直交する方向にて互いに間隔を空けて配置されている、音響拡散体であって、
前記複数の柱状部材のうち2つ以上の柱状部材における長手方向の中間部を連結する連結要素を備えている音響拡散体。
【請求項2】
前記連結要素から前記複数の柱状部材における長手方向の一方側端部まで延びる一方側空間が形成され、
前記連結要素から前記複数の柱状部材における長手方向の他方側端部まで延びる他方側空間が形成されている、請求項1に記載の音響拡散体。
【請求項3】
前記複数の柱状部材における長手方向の他方側端部を固定した他方側ベース部材を備えている請求項1又は2に記載の音響拡散体。
【請求項4】
前記連結要素が、前記複数の柱状部材の全てにおける長手方向の中間部を連結している、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響拡散体。
【請求項5】
前記連結要素が、それを貫通するように形成される開口孔を有し、
前記開口孔が、前記複数の柱状部材間に位置している、請求項4に記載の音響拡散体。
【請求項6】
複数の前記連結要素が、剛性を有するように構成される1つ以上の前記連結要素と、弾性を有するように構成される1つ以上の前記連結要素とから成る、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響拡散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の柱状部材を有し、これら複数の柱状部材がその長手方向に直交する方向にて互いに間隔を空けて配置されている、音響拡散体に関する。
【背景技術】
【0002】
スタジオ、試聴室、ホール等の音響諸室においては、音響諸室内の人間がより良い音を聴くことができるように音響特性を調整すべく、音響諸室の壁面、例えば、側壁面、天井面等に沿って音響拡散体が設置されることがある。音響拡散体は、複数の柱状部材を有しており、これら複数の柱状部材は、入力される音を拡散する音響拡散特性、入力される音を反射する音響反射特性、及び入力される音を吸収する吸音特性によって、音響拡散体を設置した音響諸室内の音響特性を向上することができる。(例えば、特許文献1~4を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-142267号公報
【特許文献2】特開2010-189841号公報
【特許文献3】特開2010-191386号公報
【特許文献4】特開2010-256847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記音響拡散体において、音響諸室の内部等の音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させるためには、音響拡散特性、音響反射特性、及び吸音特性のバランスを取ることが重要となる。しかしながら、音響空間内の音響特性に影響する音響拡散体の音響拡散特性、音響反射特性、及び吸音特性間の関係性は、極めて複雑であり、十分には解明できていない。また、どのような複数の柱状部材の構成が音響拡散特性、音響反射特性、及び吸音特性に影響するかもまた、十分には解明できていない。そのため、上記音響拡散体は、それを設置した音響空間内の音響特性を効率的に向上させることができているとは言えない状況にある。
【0005】
このような実情を鑑みると、音響拡散体においては、それを設置した音響空間内の音響特性を効率的に向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するために、一態様に係る音響拡散体は、複数の柱状部材と、前記複数の柱状部材における長手方向の一方側端部を固定した一方側ベース部材とを備え、前記複数の柱状部材が、前記長手方向に直交する方向にて互いに間隔を空けて配置されている、音響拡散体であって、前記複数の柱状部材のうち2つ以上の柱状部材における長手方向の中間部を連結する連結要素を備えている。
【発明の効果】
【0007】
一態様に係る音響拡散体においては、それを設置した音響空間内の音響特性を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る音響拡散体を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る音響拡散体を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1及び第2実施形態に係る音響拡散体について以下に説明する。各実施形態に係る音響拡散体は、それを設置する音響空間の音響特性を調整可能とするように構成される。ここで、音響空間は、部屋等の床面、側壁面等によって画定される空間とすることができる。音響空間は、人が立ち入ることができるような空間とすることができる。音響空間はまた、実質的に外部に対して閉鎖された空間とすることができる。しかしながら、音響空間は、その一部分を外部に向けて開放する一方で音響空間の残りの部分を外部に対して閉鎖した空間とすることもできる。
【0010】
このような音響空間を有する部屋(以下、「音響調整室」という)としては、例えば、スタジオ、試聴室、ホール等のような音響諸室、会議室、オフィスルーム、エントランスホール、待合室、一般家屋の部屋等が挙げられる。しかしながら、音響調整室は、ここで例示したもの以外とすることができる。さらに、音響空間は、ここで述べた条件以外の条件に基づく空間とすることもできる。
【0011】
ここで、以下の説明にて用いられる
図1~
図4においては、音響拡散体を基準とした方向を次のように示す。
図2及び
図4において、音響拡散体の正面側を片側矢印Fにより示す。音響拡散体の背面側を片側矢印Bにより示す。音響拡散体の奥行方向は、これら2つの片側矢印F,Bにより示される。
【0012】
図1及び
図3において、音響拡散体の左側面側を片側矢印Lにより示す。音響拡散体の右側面側を片側矢印Rにより示す。音響拡散体の幅方向は、これら2つの片側矢印L,Rにより示される。
【0013】
図1~
図4において、音響拡散体の頂面側を片側矢印Uにより示す。音響拡散体の底面側を片側矢印Dにより示す。音響拡散体の高さ方向は、これら2つの片側矢印U,Dにより示される。
【0014】
「第1実施形態」
第1実施形態に係る音響拡散体について説明する。
【0015】
「音響拡散体の概略」
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る音響拡散体の概略について説明する。すなわち、本実施形態に係る音響拡散体は概略的には以下のように構成される。音響拡散体は、複数の柱状部材1を有する。複数の柱状部材1は、これらの長手方向に略直交する方向にて互いに間隔を空けて配置される。
【0016】
音響拡散体は、複数の柱状部材1における長手方向の一方側端部1aを固定した一方側ベース部材2を有する。さらに、音響拡散体は、複数の柱状部材1のうち2つ以上の柱状部材1における長手方向の中間部1bを連結する連結要素10を有する。
【0017】
さらに、本実施形態に係る音響拡散体は概略的には以下のように構成することができる。音響拡散体は、複数の柱状部材1における長手方向の他方側端部1cを固定した他方側ベース部材3を有する。しかしながら、音響拡散体は、複数の柱状部材における長手方向の他方側端部を自由端部とするように構成することもできる。言い換えれば、音響拡散体は、他方側ベース部材を有さないように構成することもできる。
【0018】
音響拡散体においては、連結要素10から複数の柱状部材1における長手方向の一方側端部1aまで延びる一方側空間Pが形成される。音響拡散体においてはまた、連結要素10から複数の柱状部材1における長手方向の他方側端部1cまで延びる他方側空間Qが形成される。
【0019】
このような音響拡散体は、例えば、Acoustic Grove System(AGS)の柱状音響拡散体とすることができる(「Acoustic Grove」は登録商標)。しかしながら、音響拡散体は、これに限定されない。
【0020】
「音響拡散体の詳細」
図1及び
図2を参照すると、本実施形態に係る音響拡散体は詳細には以下のように構成することができる。音響拡散体において、連結要素10は、複数の柱状部材1の全てにおける長手方向の中間部1bを連結している。
図2に示すように、連結要素10は、それを貫通するように形成される開口孔11を有する。開口孔11は、複数の柱状部材1間に位置している。
【0021】
「柱状部材の詳細」
図1及び
図2を参照すると、柱状部材1は詳細には以下のように構成することができる。各柱状部材1は木製となっている。すなわち、各柱状部材1の素材は、木となっている。各柱状部材1は、1つの素材から成る一体品とすることができる。しかしながら、柱状部材の素材は、音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させることができるのであれば、木に限定されない。
【0022】
各柱状部材1は略円柱形状に形成されている。言い換えれば、各柱状部材1は、略円形形状の横断面を有するように形成されている。しかしながら、複数の柱状部材のうち少なくとも1つを、略円形形状以外の形状から成る横断面を有するように形成することもできる。例えば、複数の柱状部材のうち少なくとも1つを、略三角形状、略四角形状、略五角形状、略六角形状等のような略多角形状、略楕円形状、略半円形状、略扇形状等から成る横断面を有するように形成することもできる。
【0023】
複数の柱状部材1の横断面形状は、実質的に互いに同じになっている。複数の柱状部材1の長さは、互いに略等しくなっている。しかしながら、複数の柱状部材のうち少なくとも1つの横断面形状を、これらのうち他の横断面形状と異ならせることもできる。複数の柱状部材のうち少なくとも1つの長さを、これらのうち他の長さと異ならせることもできる。
【0024】
「一方側及び他方側ベース部材の詳細」
図1及び
図2を参照すると、一方側及び他方側ベース部材2,3は詳細には以下のように構成することができる。一方側及び他方側ベース部材2,3のそれぞれは、木製となっている。すなわち、一方側及び他方側ベース部材2,3のそれぞれの素材は、木となっている。しかしながら、一方側及び/又は他方側ベース部材の素材は、音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させることができるのであれば、木に限定されない。
【0025】
一方側ベース部材2は、音響拡散体の高さ方向にて複数の柱状部材1側を向く内方面2aを有する。この内方面2aは略平坦に形成される。複数の柱状部材1の一方側端部1aは、音響拡散体の高さ方向にて一方側ベース部材2の内方面2aと当接する。
【0026】
一方側ベース部材2は、音響拡散体の高さ方向にて複数の柱状部材1とは反対側を向く外方面2bを有する。この外方面2bは、一方側ベース部材2の内方面2aに対して高さ方向にて反対側を向く。一方側ベース部材2の外方面2bは略平坦に形成される。
【0027】
一方側ベース部材2の内方面2a及び外方面2bは、互いに対して略平行となっている。しかしながら、一方側ベース部材の内方面及び外方面は、互いに対して非平行とすることもできる。
【0028】
各柱状部材1の一方側端部1aは、一方側ベース部材2の内方面2aと当接しながら、ネジを用いて一方側ベース部材2に固定されている。しかしながら、複数の柱状部材のうち少なくとも1つの一方側端部を、このようなネジ以外の固定手段によって一方側ベース部材に固定することもできる。例えば、この固定手段は、ハンガーボルト及び鬼目ナットから構成することもできる。
【0029】
他方側ベース部材3は、音響拡散体の高さ方向にて複数の柱状部材1側を向く内方面3aを有する。この内方面3aは略平坦に形成される。複数の柱状部材1の一方側端部1aは、音響拡散体の高さ方向にて他方側ベース部材3の内方面3aと当接する。
【0030】
他方側ベース部材3は、音響拡散体の高さ方向にて複数の柱状部材1とは反対側を向く外方面3bを有する。この外方面3bは、他方側ベース部材3の内方面3aに対して高さ方向にて反対側を向く。他方側ベース部材3の外方面3bは略平坦に形成される。
【0031】
他方側ベース部材3の内方面3a及び外方面3bは、互いに対して略平行となっている。しかしながら、他方側ベース部材の内方面及び外方面は、互いに対して非平行とすることもできる。
【0032】
各柱状部材1の他方側端部1cは、他方側ベース部材3の内方面3aと当接しながら、ハンガーボルト及び鬼目ナットを用いて他方側ベース部材3に固定されている。しかしながら、複数の柱状部材のうち少なくとも1つの他方側端部を、このようなハンガーボルト及び鬼目ナット以外の固定手段によって他方側ベース部材に固定することもできる。例えば、この固定手段は、ネジとすることもできる。
【0033】
複数の柱状部材1に起因する音響特性に影響を与えないようにする観点、音響拡散体を安定的に設置する観点等によれば、一方側ベース部材2の重量は、他方側ベース部材3の重量と略等しくすることができる。しかしながら、一方側ベース部材の重量は、他方側ベース部材の重量よりも大きくすることもできる。
【0034】
「連結要素の詳細」
図1及び
図2を参照すると、連結要素10は詳細には以下のように構成することができる。連結要素10は、剛性を有するように構成することができる。連結要素10は単一の部材となっている。連結要素10はまた木製となっている。すなわち、連結要素10の素材は木となっている。しかしながら、連結要素は、音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させることができるのであれば、これらに限定されない。
【0035】
例えば、連結要素は、複数の部材から成る組立体とすることもできる。例えば、連結要素の素材は木以外とすることもできる。例えば、連結要素の素材は、チタン合金等の金属、炭素繊維等のような剛性素材とすることができる。例えば、連結要素は、弾性を有するように構成することもできる。例えば、連結要素の素材は、ゴム、発泡樹脂等のような弾性素材とすることもできる。例えば、連結要素をゴムバンド、ゴムチューブ等とした場合において、この連結要素を全ての柱状部材と当接するように引き回すことができる。例えば、連結要素は、弾性に加えて減衰性を有するように構成することもできる。例えば、連結要素は、ショックアブソーバー、ダンパー等とすることもできる。
【0036】
連結要素10は、音響拡散体の高さ方向にて一方側ベース部材2側を向く一方面10aを有する。この一方面10aは略平坦に形成される。連結要素10は、音響拡散体の高さ方向にて他方側ベース部材3側を向く他方面10bを有する。この他方面10bは略平坦に形成される。
【0037】
連結要素10の一方面10a及び他方面10bは、互いに対して略平行となっている。連結要素10の一方面10aは、一方側ベース部材2の内方面2aと略平行になっている。連結要素10の他方面10bは、他方側ベース部材3の内方面3aと略平行になっている。
【0038】
しかしながら、連結要素の一方面及び他方面は、互いに対して非平行とすることもできる。連結要素の一方面は、一方側ベース部材の内方面に対して非平行とすることもできる。連結要素の他方面は、他方側ベース部材の内方面に対して非平行とすることもできる。
【0039】
図2に示すように、連結要素10は複数の開口孔11を有する。このような連結要素10は、略グリル状に形成することができる。
【0040】
連結要素10は、複数の柱状部材1をそれぞれ挿入可能とするように形成される複数の挿入孔12を有する。複数の柱状部材1が連結要素10の複数の挿入孔12にそれぞれ挿入された状態では、複数の柱状部材1は、これら複数の挿入孔12の内周面12aに当接する。
【0041】
複数の柱状部材1は、このように連結要素10の複数の挿入孔12にそれぞれ挿入された状態で、連結要素10に対して固定される。各柱状部材1を連結要素10に固定するための固定手段としては、接着剤、ネジ、ピン、ストッパ等が挙げられる。
【0042】
しかしながら、固定手段は、これに限定されない。例えば、複数の柱状部材のうち少なくとも1つをこれに対応する連結要素の挿入孔に圧入し、これによって、複数の柱状部材のうち少なくとも1つを連結要素に対して固定することもできる。
【0043】
特に、複数の柱状部材1における低周波数領域の振動を抑制する観点においては、
図1及び
図2に示すように、連結要素10は、複数の柱状部材1のうち最長の柱状部材1における長手方向の中央領域に位置する。複数の柱状部材1の長さが略等しい場合においては、連結要素10は、複数の柱状部材1における長手方向の中央領域に位置する。
【0044】
各柱状部材1の中央領域は、この柱状部材1の長さの約1/4から約3/4までの範囲とすることができる。好ましくは、各柱状部材1の中央領域は、この柱状部材1の長さの約1/3から約2/3までの範囲とすることができる。
【0045】
複数の柱状部材1に起因する音響特性に影響を与えないようにする観点、音響拡散体を安定的に設置する観点、音響拡散体の外観を良くする観点等によれば、連結要素10の高さ方向の厚さは、一方側ベース部材2の高さ方向の厚さ以下となっている。特に、連結要素10の高さ方向の厚さは、一方側ベース部材2の高さ方向の厚さよりも小さくすることができる。
【0046】
連結要素10の高さ方向の厚さもまた、他方側ベース部材3の高さ方向の厚さ以下となっている。特に、連結要素10の高さ方向の厚さは、他方側ベース部材3の高さ方向の厚さよりも小さくすることができる。
【0047】
複数の柱状部材1に起因する音響特性に影響を与えないようにする観点、音響拡散体を安定的に設置する観点等によれば、連結要素10の重量は、一方側ベース部材2の重量よりも小さくなっている。連結要素10の重量は、他方側ベース部材3の重量よりも小さくなっている。
【0048】
しかしながら、連結要素の重量は、一方側ベース部材の重量と略等しくすることもできる。連結要素の重量は、他方側ベース部材の重量と略等しくすることもできる。さらに、連結要素の重量は、一方側ベース部材の重量よりも小さい一方で、他方側ベース部材の重量よりも大きくすることもできる。
【0049】
「音響拡散体の設置姿勢」
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る音響拡散体の設置姿勢について説明する。
図1及び
図2に示すように、音響拡散体は、典型的には、その底面を音響調整室の床面Gに当接させた状態である縦置き状態にて使用される。縦置き状態においては、音響拡散体の一方側ベース部材2の外方面2bが、音響調整室の床面Gに当接する。さらに、音響拡散体は、典型的には縦置き状態において、その背面を音響調整室の側壁面Wに当接させるように配置される。
【0050】
特に明確に図示はしないが、音響拡散体は、縦置き状態において、その背面を音響調整室の側壁面と間隔を空けるように配置することもできる。音響拡散体は、その左又は右側面を床面に当接させた状態である横置き状態にて使用することもできる。音響拡散体は、その背面を床面又は天井面に当接させた状態である平置き状態にて使用することもできる。
【0051】
以上、本実施形態に係る音響拡散体の概略によれば、音響拡散体は、複数の柱状部材1と、前記複数の柱状部材1における長手方向の一方側端部1aを固定した一方側ベース部材2とを備え、前記複数の柱状部材1が、前記長手方向に直交する方向にて互いに間隔を空けて配置されている、音響拡散体であって、前記複数の柱状部材1のうち2つ以上の柱状部材1における長手方向の中間部1bを連結する連結要素10を備えている。
【0052】
ここで、一般的に複数の柱状部材を有する音響拡散体においては、音響拡散体により得られる反射音、拡散音等に基づいた音響特性を向上させるためには、複数の柱状部材をできる裸の状態で設置することが望まれる。その一方で、このような音響拡散体において、入力音が音響拡散体に入力され、その後、音響拡散体から反射かつ拡散されるときに、音響拡散体の柱状部材の振動に起因するノイズの混入が、音響拡散体により得られる音響特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る音響拡散体の概略によれば、連結要素10によって柱状部材1の振動を効率的に抑制することができて、その結果、音響拡散体からの反射音及び拡散音が、柱状部材1の振動に起因するノイズによって悪化することを抑えることができる。よって、音響拡散体を設置した音響空間内の音響特性を効率的に向上させることができる。
【0054】
本実施形態に係る音響拡散体の概略においては、前記連結要素10から前記複数の柱状部材1における長手方向の一方側端部1aまで延びる一方側空間Pが形成され、前記連結要素10から前記複数の柱状部材1における長手方向の他方側端部1cまで延びる他方側空間Qが形成されている。
【0055】
このような音響拡散体の概略によれば、連結要素10を連結した柱状部材1の中間部1bでは、柱状部材1の振動に起因するノイズによって反射音及び拡散音が悪化することを抑えることができる。これに加えて、連結要素10に対して複数の柱状部材1の一方側端部1a寄りに位置する一方側領域、及び連結要素10に対して複数の柱状部材1の他方側端部1c寄りに位置する他方側領域においては、入力された音を効率的に反射及び拡散することができる。
【0056】
本実施形態に係る音響拡散体の概略によれば、音響拡散体は、前記複数の柱状部材1における長手方向の他方側端部1cを固定した他方側ベース部材3を備えている。このような音響拡散体の概略によれば、複数の柱状部材1の一方側及び他方側端部1a,1cがそれぞれ一方側及び他方側ベース部材2,3に固定される場合であっても、連結要素10によって柱状部材1の振動を効率的に抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係る音響拡散体の詳細においては、前記連結要素10が、前記複数の柱状部材1の全てにおける長手方向の中間部1bを連結している。このような音響拡散体の詳細によれば、連結要素10によって、全ての柱状部材1の振動を効率的に抑制することができる。そのため、音響拡散体から反射された反射音と、音響拡散体から拡散された拡散音とが、全ての柱状部材1の振動に起因するノイズによって悪化することを効率的に抑えることができる。
【0058】
本実施形態に係る音響拡散体の詳細においては、前記連結要素10が、それを貫通するように形成される開口孔11を有し、前記開口孔11が、前記複数の柱状部材1間に位置している。このような音響拡散体の詳細によれば、連結要素10及び一方側ベース部材2間でフラッターエコーが生じることを効率的に抑制することができる。さらには、連結要素10及び他方側ベース部材3間でフラッターエコーが生じることもまた効率的に抑制することができる。なお、一方側及び他方側ベース部材の少なくとも一方に、連結部材と同様に開口孔を設けると、フラッターエコーをより効率的に抑制することができる。
【0059】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る音響拡散体について説明する。
【0060】
「音響拡散体」
図3及び
図4を参照すると、本実施形態に係る音響拡散体は、以下のように構成される。本実施形態に係る音響拡散体は、第1実施形態に係る音響拡散体と同様の柱状部材1、一方側ベース部材2、及び他方側ベース部材3を有する。このような音響拡散体は、概略的には第1実施形態に係る音響拡散体と同様に構成されている。なお、本実施形態に係る音響拡散体の設置姿勢もまた、第1実施形態に係る音響拡散体の設置姿勢と同様である。
【0061】
本実施形態に係る音響拡散体は、概略的には第1実施形態に係る音響拡散体の連結要素10と同様にそれぞれ構成される複数の連結要素20,30を有する。しかしながら、本実施形態に係る音響拡散体は、詳細には第1実施形態に係る音響拡散体と異なっている。本実施形態に係る音響拡散体は、詳細には、以下のように構成される。複数の連結要素20,30は、剛性を有するように構成される1つ以上の連結要素(以下、必要に応じて「剛性連結要素」という)20と、弾性を有するように構成される1つ以上の連結要素(以下、必要に応じて「弾性連結要素」という)30とから成る。
【0062】
「連結要素の詳細」
図3及び
図4を参照すると、連結要素20,30は、詳細には以下のように構成される。剛性連結要素20は単一の部材となっている。剛性連結要素20はまた木製となっている。すなわち、剛性連結要素20の素材は木となっている。しかしながら、剛性連結要素の素材は、音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させることができるのであれば、これらに限定されない。
【0063】
例えば、剛性連結要素は、複数の部材から成る組立体とすることもできる。例えば、剛性連結要素の素材は、木以外とすることができる。例えば、剛性連結要素の素材は、チタン合金等の金属、炭素繊維等のような剛性素材とすることができる。
【0064】
弾性連結要素30は単一の部材となっている。弾性連結要素30はゴム製となっている。すなわち、弾性連結要素30の素材はゴムとなっている。しかしながら、弾性連結要素の素材は、音響空間内の人間がより良い音を聴くことができるように音響空間の音響特性を向上させることができるのであれば、これらに限定されない。
【0065】
例えば、弾性連結要素は、複数の部材から成る組立体とすることもできる。例えば、弾性連結要素の素材はゴム以外とすることができる。例えば、弾性連結要素の素材は、発泡樹脂等のような弾性素材とすることもできる。例えば、弾性連結要素をゴムバンド、ゴムチューブ等とした場合において、この弾性連結要素を全ての柱状部材と当接するように引き回すことができる。例えば、弾性連結要素は、弾性に加えて減衰性を有するように構成することもできる。例えば、弾性連結要素は、ショックアブソーバー、ダンパー等とすることもできる。
【0066】
図3においては、音響拡散体は、その幅方向の両側方領域にそれぞれ位置する2つの剛性連結要素20を有する。音響拡散体は、その幅方向の中央領域に位置する1つの弾性連結要素30を有する。しかしながら、剛性及び弾性連結要素の位置及び数は、これらに限定されない。音響拡散体は、1つ又は3つ以上の剛性連結要素を有することができる。音響拡散体は、2つ以上の弾性連結要素を有することができる。
【0067】
各連結要素20,30は、音響拡散体の高さ方向にて一方側ベース部材2側を向く一方面20a,30aを有する。この一方面20a,30aは略平坦に形成される。各連結要素20,30は、音響拡散体の高さ方向にて他方側ベース部材3側を向く他方面20b,30bを有する。この他方面20b,30bは略平坦に形成される。
【0068】
各連結要素20,30の一方面20a,30a及び他方面20b,30bは、互いに対して略平行となっている。各連結要素20,30の一方面20a,30aは、一方側ベース部材2の内方面2aと略平行になっている。各連結要素20,30の他方面20b,30bは、他方側ベース部材3の内方面3aと略平行になっている。
【0069】
しかしながら、少なくとも1つの連結要素の一方面及び他方面を、互いに対して非平行とすることもできる。少なくとも1つの連結要素の一方面を、一方側ベース部材の内方面に対して非平行とすることもできる。少なくとも1つの連結要素の他方面を、他方側ベース部材の内方面に対して非平行とすることもできる。
【0070】
各連結要素20,30は、複数の柱状部材1をそれぞれ挿入可能とするように形成される複数の挿入孔21,31を有する。複数の柱状部材1が各連結要素20,30の複数の挿入孔21,31にそれぞれ挿入された状態では、複数の柱状部材1は、これら複数の挿入孔21,31の内周面21a,31aに当接する。
【0071】
複数の柱状部材1は、このように各連結要素20,30の複数の挿入孔21,31にそれぞれ挿入された状態で、各連結要素20,30に対して固定される。各柱状部材1を各連結要素20,30に固定するための固定手段としては、接着剤、ネジ、ピン、ストッパ等が挙げられる。
【0072】
しかしながら、固定手段は、これに限定されない。例えば、複数の柱状部材のうち少なくとも1つをこれに対応する連結要素の挿入孔に圧入し、これによって、複数の柱状部材のうち少なくとも1つをこの連結要素に対して固定することもできる。
【0073】
特に、複数の柱状部材1における低周波数領域の振動を抑制する観点においては、
図3及び
図4に示すように、各連結要素20,30は、複数の柱状部材1のうち最長の柱状部材1における長手方向の中央領域に位置することができる。複数の柱状部材1の長さが略等しい場合においては、各連結要素20,30は、複数の柱状部材1における長手方向の中央領域に位置することができる。
【0074】
各柱状部材1の中央領域は、この柱状部材1の長さの約1/4から約3/4までの範囲とすることができる。好ましくは、各柱状部材1の中央領域は、この柱状部材1の長さの約1/3から約2/3までの範囲とすることができる。
【0075】
複数の柱状部材1に起因する音響特性に影響を与えないようにする観点、音響拡散体を安定的に設置する観点、音響拡散体の外観を良くする観点等によれば、各連結要素20,30の高さ方向の厚さは、一方側ベース部材2の高さ方向の厚さ以下となっている。特に、各連結要素20,30の高さ方向の厚さは、一方側ベース部材2の高さ方向の厚さよりも小さくすることができる。
【0076】
各連結要素20,30の高さ方向の厚さもまた、他方側ベース部材3の高さ方向の厚さ以下となっている。特に、各連結要素20,30の高さ方向の厚さは、他方側ベース部材3の高さ方向の厚さよりも小さくすることができる。
【0077】
複数の柱状部材1に起因する音響特性に影響を与えないようにする観点、音響拡散体を安定的に設置する観点等によれば、複数の連結要素20,30の総重量は、一方側ベース部材2の重量よりも小さくなっている。複数の連結要素20,30の総重量は、他方側ベース部材3の重量よりも小さくなっている。
【0078】
しかしながら、複数の連結要素の総重量は、一方側ベース部材の重量と略等しくすることもできる。複数の連結要素の総重量は、他方側ベース部材の重量と略等しくすることもできる。さらに、複数の連結要素の総重量は、一方側ベース部材の重量よりも小さい一方で、他方側ベース部材の重量よりも大きくすることもできる。
【0079】
複数の連結要素20,30は、奥行方向及び幅方向を含む水平方向にて間隔を空けて配置される。これら複数の連結要素20,30の間には隙間が形成されている。しかしながら、複数の連結要素の少なくとも1つが、それを貫通するように形成され、かつ複数の柱状部材間に位置する開口孔を有することもできる。
【0080】
以上、本実施形態に係る音響拡散体の概略によれば、第1実施形態に係る音響拡散体の概略と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態に係る音響拡散体の詳細によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
本実施形態に係る音響拡散体においては、複数の前記連結要素20,30が、剛性を有するように構成される1つ以上の前記連結要素20と、弾性を有するように構成される1つ以上の前記連結要素30とから成る。このような音響拡散体によれば、剛性を有する連結要素20と、弾性を有する連結要素30とを複数の柱状部材1に対して効率的に分配することによって、柱状部材1の振動を効率的に抑制することができる。
【0082】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…柱状部材、1a…一方側端部、1b…中間部、1c…他方側端部
2…一方側ベース部材
3…他方側ベース部材
10,20,30…連結要素、11…開口孔
P…一方側空間、Q…他方側空間